(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068029
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】空気処理装置
(51)【国際特許分類】
F24F 3/147 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
F24F3/147
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022186922
(22)【出願日】2022-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】522455308
【氏名又は名称】海老根 猛
(72)【発明者】
【氏名】海老根 猛
【テーマコード(参考)】
3L053
【Fターム(参考)】
3L053BC09
(57)【要約】
【課題】主に外気の温湿度を調整する空気処理装置では、高効率、省スペース、外部からの冷温熱源供給が不要な一体完結型、また冷房運転ではより低湿度までの除湿、暖房運転では着霜対策が求められている。
【解決手段】熱源空気側の熱交換器を複数段とし、その間に、好ましくは除湿ドレンを給水手段とした気化冷却装置、処理空気と熱源空気双方の最初の熱交換器通過位置に潜熱交換器のどちらか、またはその両方を設置する。これらの装置、構成により、構成する熱交換器による冷凍サイクル又はヒートポンプ冷凍サイクルの吸熱、放熱量の熱収支を合わせ、外部熱源不要の一体完結型空気処理装置とする。なお熱源空気に室内排気を利用する場合には、必要に応じて室内排気側に外気を追加補給する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調の対象となる空気が通過する処理対象空気経路40に、第1の熱交換器20が設置され、熱源空気経路41に、上流側から順に、第2の熱交換器30、気化冷却装置32及び第3の熱交換器35が設置され、前記第1ないし第3の熱交換器及び圧縮機50が冷凍サイクル又はヒートポンプ冷凍サイクルを構成することを特徴とする空気処理装置。
【請求項2】
前記処理対象空気経路40の前記第1の熱交換器20の下流側に、第4の熱交換器23を更に備え、前記第4の熱交換器23が前記冷凍サイクル又は前記ヒートポンプ冷凍サイクルの一部を構成することを特徴とする請求項1に記載の空気処理装置。
【請求項3】
前記熱源空気経路41の前記気化冷却装置32と前記第3の熱交換器35の間に、上流側から順に、第5の熱交換器33及び第2の気化冷却装置34を更に備え、前記第5の熱交換器33が前記冷凍サイクル又は前記ヒートポンプ冷凍サイクルの一部を構成することを特徴とする請求項1に記載の空気処理装置。
【請求項4】
空調の対象となる空気が通過する処理対象空気経路40に、第1の熱交換器20が設置され、熱源空気経路41に、上流側から順に、第2の熱交換器30及び第3の熱交換器35が設置され、前記第1の熱交換器20通過後の前記処理対象空気と、前記第2の熱交換器30通過後の前記熱源空気との間で潜熱交換を行う潜熱交換器21が設置され、前記第1ないし第3の熱交換器及び圧縮機50が冷凍サイクル又はヒートポンプ冷凍サイクルを構成することを特徴とする空気処理装置。
【請求項5】
前記第1の熱交換器20通過後の前記処理対象空気と、前記第2の熱交換器30通過後の前記熱源空気との間で潜熱交換を行う潜熱交換器21を備えたことを特徴とする請求項1ないし3に記載の空気処理装置。
【請求項6】
前記処理対象空気経路40の前記潜熱交換器21の下流側に、前記処理対象空気を冷却する第6の熱交換器22を備え、前記第6の熱交換器22が前記冷凍サイクル又は前記ヒートポンプ冷凍サイクルの一部を構成することを特徴とする請求項5に記載の空気処理装置。
【請求項7】
前記熱源空気経路41の前記潜熱交換器21下流直後に、第7の熱交換器31を備え、前記第7の熱交換器31が前記冷凍サイクル又は前記ヒートポンプ冷凍サイクルの一部を構成することを特徴とする請求項5に記載の空気処理装置。
【請求項8】
前記熱源空気経路41の前記潜熱交換器21下流直後に、第7の熱交換器31を備え、前記第7の熱交換器31が前記冷凍サイクル又は前記ヒートポンプ冷凍サイクルの一部を構成することを特徴とする請求項6に記載の空気処理装置。
【請求項9】
前記処理対象空気経路40の前記第1の熱交換器20の上流側から、前記熱源空気経路41の前記第3の熱交換器35の上流側に、熱源空気を補給する熱源空気補給経路42を備えたことを特徴とする請求項1ないし4に記載の空気処理装置。
【請求項10】
前記処理対象空気経路40の前記第1の熱交換器20の上流側から、前記熱源空気経路41の前記第3の熱交換器35の上流側に、熱源空気を補給する熱源空気補給経路42を備えたことを特徴とする請求項5に記載の空気処理装置。
【請求項11】
前記処理対象空気経路40の前記第1の熱交換器20の上流側から、前記熱源空気経路41の前記第3の熱交換器35の上流側に、熱源空気を補給する熱源空気補給経路42を備えたことを特徴とする請求項6に記載の空気処理装置。
【請求項12】
前記処理対象空気経路40の前記第1の熱交換器20の上流側から、前記熱源空気経路41の前記第3の熱交換器35の上流側に、熱源空気を補給する熱源空気補給経路42を備えたことを特徴とする請求項7に記載の空気処理装置。
【請求項13】
前記処理対象空気経路40の前記第1の熱交換器20の上流側から、前記熱源空気経路41の前記第3の熱交換器35の上流側に、熱源空気を補給する熱源空気補給経路42を備えたことを特徴とする請求項8に記載の空気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に外気の温湿度調整を効率よく行う空気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脱炭素社会の実現に向け建築分野においては省エネルギー対策の強化が求められており、建物断熱性能の強化、照明機器やOA機器の省エネルギー化などの取り組みにより、室内顕熱負荷が低下している。一方、外気負荷の比率が増大し室内顕熱比が低下している。
【0003】
これらの背景から外気の負荷処理に対する省エネは当然ながら、特に除湿システム、具体的には室内設定温湿度、例えば夏季の26℃、50%、絶対湿度10.5g/kg′に対して外気導入分で室内の潜熱負荷を処理できる例えば絶対湿度8g/kg′未満の低湿度空気を供給する外気処理装置の重要性が増している。
【0004】
外気処理の代表的な省エネ装置として、全熱交換器、潜熱交換器がある。特許文献1では全熱交換器と潜熱交換器の両方を組み込み、夏季冷却負荷ピーク時には全熱交換器、除湿中心の中間期には潜熱交換器を選択的に使用し、冬季にはこれらを同時に使用している。特許文献2では、同一装置で回転数を変えることで全熱交換器、潜熱交換器の切り替えを行っている。特許文献3では、冬季のヒートポンプ運転に伴う着霜防止策として潜熱交換器を採用している。特許文献4では、全熱交換器、潜熱交換器の両方に室内排気を利用できるように配置し、室内排気と同程度の絶対湿度まで除湿が可能で、また冷凍機の排熱で外部からの加熱源なしに潜熱交換器の再生が行える外気処理装置としている。
【0005】
特許文献5では、トイレの局所排気などにより導入外気量に対して少なくなった室内排気に、外気を追加補給してヒートポンプ式外調機での吸熱と放熱の熱量収支を合わせた一体完結型の外気処理装置としている。特許文献6では、夏季冷房運転時に室外機に水噴霧を行い気化冷却作用により熱源空気への放熱を補助している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012―145247号公報
【特許文献2】特開平8―61729号公報
【特許文献3】特開2013―130389号公報
【特許文献4】特開2010―54184号公報
【特許文献5】特開2003―185291号公報
【特許文献6】特開2006―162152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1では全熱交換器と潜熱交換器の両方を組み込むことで、外形寸法が大きくなり、夏季冷却除湿負荷ピーク時には全熱交換器として使用するため、低湿度までの最終除湿には低温の冷水が必要となる。また除湿中心の中間期に潜熱交換器を運転するためには再生のための温熱源が必要であり、冷熱、温熱の同時供給が求められ、熱源、配管系とも複雑になる。またこれらを選択的に使用するためのバイパス経路によりダクト系も複雑になる。
【0008】
特許文献2では、乾式ロータ装置の回転数を変えることで全熱交換器、潜熱交換器の切り替えを行っており、外気処理空調機への組込を想定すると特許文献1における低湿度までの最終除湿には低温の冷水が必要という同様の課題がある。
【0009】
特許文献3では、主に暖房時運転に伴う着霜防止策として潜熱交換器を採用しており、室内排気の持つエネルギー利用も考慮されているが、冷房時運転についての効果は考慮されておらず、効果は限定される。
【0010】
特許文献4では、全熱交換器、潜熱交換器の両方に室内排気を利用できるように配置し、また冷凍機の排熱を利用することで外部からの加熱源なしに潜熱交換器の再生が行える外気処理装置としている。室内への給気湿度は室内の潜熱負荷を考慮して室内設定よりもさらに低湿度とすることが好ましいが、外気湿度処理の最終段にて全熱交換器を使用しているため、潜熱交換器出口では給気湿度よりもさらに低湿度とする必要があり、再生温度が高く、また全熱交換器も高効率が必要である。
【0011】
特許文献5では、トイレの局所排気などにより導入外気量に対して少ない室内排気に、外気を追加補給してヒートポンプ式外調機での吸熱と放熱の熱収支を合わせた一体完結型の外気処理装置としている。しかしながら冷房時、暖房時共に処理対象空気の潜熱を含む熱負荷に対して、熱源空気の顕熱のみで熱収支を合わせることから熱源空気風量が多く、また暖房時には熱源空気熱交換器の表面温度が氷点下となり、着霜による加熱能力の低下や連続運転が出来ないといった課題がある。
【0012】
特許文献6では、冷房運転時に室外機に水噴霧を行い気化冷却作用により熱源空気側への放熱を補助している。しかしながら熱交換器への供給水量の多くは気化冷却に利用されず排水され、水道代金の費用等もあり効果は限定される。
【0013】
本発明は上記のような課題を解決する目的で提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、第1の解決手段の空気処理装置は、空調の対象となる空気が通過する処理対象空気経路40に、第1の熱交換器20が設置され、熱源空気経路41に、上流側から順に、第2の熱交換器30、気化冷却装置32及び第3の熱交換器35が設置され、前記第1ないし第3の熱交換器及び圧縮機50が冷凍サイクル又はヒートポンプ冷凍サイクルを構成する。なお冷凍サイクルは冷房時の運転、ヒートポンプ冷凍サイクルは冷房、暖房時の切り替え運転ができるサイクルとする。
【0015】
第1の解決手段によれば、冷房時に冷却器として作用する第1の熱交換器20により、処理対象空気の顕熱及び潜熱が除去される。熱源空気は第2の熱交換器30により加熱され、温度が上昇するとともに相対湿度が低下した後、何らかの給水手段、好ましくは第1の熱交換器20で発生した冷却除湿ドレン供給による第1の気化冷却装置32によって気化冷却され、再度第3の交換器35によって加熱される。すなわち処理対象空気の除湿に要した第1の熱交換器20の潜熱負荷分を、熱源空気側で気化冷却に利用することで、熱源空気温度を降下させ、第3の熱交換器35の放熱に再度利用できる。
【0016】
第2の解決手段の空気処理装置は、第1の解決手段に加えて、前記処理対象空気経路40の前記第1の熱交換器20の下流側に、第4の熱交換器23を更に備え、前記第4の熱交換器23が前記冷凍サイクル又は前記ヒートポンプ冷凍サイクルの一部を構成する。
【0017】
第2の解決手段によれば、冷房時に処理空気による冷え過ぎ防止の再熱効果と共に、処理空気側に放熱できるため、熱源空気風量比を抑えても、冷凍サイクル又はヒートポンプ冷凍サイクルでの熱収支を合わせやすい。
【0018】
第3の解決手段の空気処理装置は、第1の解決手段に加えて、前記熱源空気経路41の前記気化冷却装置32と前記第3の熱交換器35の間に、上流側から順に、第5の熱交換器33及び第2の気化冷却装置34を更に備え、前記第5の熱交換器33が前記冷凍サイクル又は前記ヒートポンプ冷凍サイクルの一部を構成する。
【0019】
上記第3の解決手段によれば、熱源空気の乾球温度を二段階で降下させることができるため、熱収支を合わせるうえでの効果が大きくなる。また第1ないし第2の気化冷却装置への給水手段として冷却除湿ドレンを利用する場合には、ドレンをすべて気化させることも可能であり、ドレン配管を省略できる。
【0020】
第4の解決手段の空気処理装置は、空調の対象となる空気が通過する処理対象空気経路40に、第1の熱交換器20が設置され、熱源空気経路41に、上流側から順に、第2の熱交換器30及び第3の熱交換器35が設置され、前記第1の熱交換器20通過後の前記処理対象空気と、前記第2の熱交換器30通過後の前記熱源空気との間で潜熱交換を行う潜熱交換器21が設置され、前記第1ないし第3の熱交換器及び圧縮機50が冷凍サイクル又はヒートポンプ冷凍サイクルを構成する。
【0021】
上記第4の解決手段によれば、処理対象空気は冷房時に第1の熱交換器20による冷却除湿後、さらに潜熱交換器21により絶対湿度を低下させることができるため、第1の解決手段ないし第3の解決手段による冷却除湿のみによる所定絶対湿度までの除湿に比較して、冷水温度や蒸発温度を高くすることが可能となり冷凍サイクルでの効率が良くなる。なお潜熱交換器21により熱源空気温度が降下し、熱源空気として再度利用しやすくなる。
【0022】
また冷房時の潜熱交換器21に必要な加熱は、第2の熱交換器30によるため、外部からの加熱源が不要の空気処理装置となる。
【0023】
暖房時には処理対象空気は第1の熱交換器20による加熱後、潜熱交換器21により温度は低下するが、絶対湿度は上昇し加湿される。一方熱源空気は第2の熱交換器30により温度が降下し、その後潜熱交換器21により温度が上昇し除湿されて絶対湿度が低下するため、第3の熱交換器35で氷点下の温度まで熱をくみ上げても着霜を防止することが出来る。
【0024】
第5の解決手段の空気処理装置は、第1の解決手段ないし第3の解決手段に加えて、前記第1の熱交換器20通過後の前記処理対象空気と、前記第2の熱交換器30通過後の前記熱源空気との間で潜熱交換を行う潜熱交換器21を備える。
【0025】
第5の解決手段によれば、冷房時には潜熱交換器21での潜熱交換、更に第1の熱交換器20で発生した冷却除湿ドレンが供給される第1の気化冷却装置32によって熱源空気温度が2段階で降下し、暖房時には潜熱交換器21での潜熱交換により熱源空気温度が上昇し、それぞれ熱源空気として利用しやすくなる。
【0026】
第6の解決手段の空気処理装置は、第5の解決手段に加えて、前記処理対象空気経路40の前記潜熱交換器21の下流側に、前記処理対象空気を冷却する第6の熱交換器22を備え、前記第6の熱交換器22が前記冷凍サイクル又は前記ヒートポンプ冷凍サイクルの一部を構成する。
【0027】
第6の解決手段によれば、潜熱交換器21により冷房時には上昇、暖房時には下降した処理対象空気の温度を、それぞれ低下、上昇させることで処理対象空気の給気温度を再調整できる。
【0028】
第7の解決手段の空気処理装置は、第5の解決手段に加えて、前記熱源空気経路41の前記潜熱交換器21下流直後に、第7の熱交換器31を備え、前記第7の熱交換器31が前記冷凍サイクル又は前記ヒートポンプ冷凍サイクルの一部を構成する。
【0029】
第7の解決手段によれば、冷房時に第1の熱交換器20による冷却除湿量を少なめにして潜熱交換器21の除湿量を多くして、潜熱交換器21通過後の熱源空気の温度降下が大きくても、第7の熱交換器31により温度が上昇、相対湿度が低下することで、第1の気化冷却装置32が効率よく熱源空気温度を降下させることができる。また冷凍サイクルでの冷却除湿量が減ることで、圧縮機50への入力エネルギーも減少する。
【0030】
第8の解決手段の空気処理装置は、第6の解決手段に加えて、前記熱源空気経路41の前記潜熱交換器21下流直後に、第7の熱交換器31を備え、前記第7の熱交換器31が前記冷凍サイクル又は前記ヒートポンプ冷凍サイクルの一部を構成する。
【0031】
第9の解決手段の空気処理装置は、第1の解決手段ないし第4の解決手段に加えて、前記処理対象空気経路40の前記第1の熱交換器20の上流側から、前記熱源空気経路41の前記第3の熱交換器35の上流側に、熱源空気を補給する熱源空気補給経路42を備える。
【0032】
第9の解決手段によれば、熱源空気補給経路42は、特に室内排気を熱源空気とする場合のように、トイレの局所排気などにより処理対象空気量に対して室内排気風量比が小さい場合においても冷凍サイクル又はヒートポンプ冷凍サイクルの熱収支を合わせることができる。
【0033】
第10の解決手段の空気処理装置は、第5の解決手段に加えて、前記処理対象空気経路40の前記第1の熱交換器20の上流側から、前記熱源空気経路41の前記第3の熱交換器35の上流側に、熱源空気を補給する熱源空気補給経路42を備える。
【0034】
第11の解決手段の空気処理装置は、第6の解決手段に加えて、前記処理対象空気経路40の前記第1の熱交換器20の上流側から、前記熱源空気経路41の前記第3の熱交換器35の上流側に、熱源空気を補給する熱源空気補給経路42を備える。
【0035】
第12の解決手段の空気処理装置は、第7の解決手段に加えて、前記処理対象空気経路40の前記第1の熱交換器20の上流側から、前記熱源空気経路41の前記第3の熱交換器35の上流側に、熱源空気を補給する熱源空気補給経路42を備える。
【0036】
第13の解決手段の空気処理装置は、第8の解決手段に加えて、前記処理対象空気経路40の前記第1の熱交換器20の上流側から、前記熱源空気経路41の前記第3の熱交換器35の上流側に、熱源空気を補給する熱源空気補給経路42を備える。
【発明の効果】
)
【0037】
発明の効果をまとめると
(冷房運転)
熱源空気側の最初の放熱用熱交換器で温度上昇した熱源空気を、何らかの給水手段、好ましくは処理対象空気の冷却除湿により生じるドレン供給での気化冷却装置による温度降下、あるいは冷却除湿後の処理対象空気との潜熱交換に伴う温度降下のいずれか、またはその両方を利用して熱源空気温度を降下させ、繰り返し熱交換することで熱源空気量を低減及び効率よく利用できる。また処理対象空気は冷却除湿に加えて、潜熱交換器による除湿により、高効率の冷凍サイクルで低湿度空気を得ることができる。なお給水手段として冷却除湿ドレン水が好ましい理由は、吸熱側の潜熱負荷の大きさに応じて、冷却除湿ドレン水量も変化し、放熱側熱源空気に必要な温度降下に対応しているためである。
【0038】
(暖房運転)
処理対象空気と熱源空気それぞれの熱交換器による加熱、冷却で相対湿度差が大きくなり効率良く潜熱交換、すなわち処理対象空気の加湿、熱源空気の除湿が行われる。熱源空気の除湿は氷点下温度での熱回収において熱交換器への着霜が防止され、加熱能力のアップ、連続運転が可能となる。
【0039】
上記のような空気処理装置の構成、作用により、最低限の熱源空気量で冷凍サイクル又はヒートポンプ冷凍サイクルでの吸熱、放熱の熱収支を合わせることが可能となり、高効率、省スペース、省エネ、低コスト及び外部からの熱源を必要としない一体完結型の空気処理装置となる。なおこれらのエネルギー及び温度変化について、実施形態で処理対象空気を外気、熱源空気については主に室内排気を例にとり、具体的な数値によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明に係る空気処理装置の構成要素全体を示す。
【
図2】請求項1に係る空気処理装置の第1の実施形態を示す。
【
図3】第1の実施形態における冷房定常運転時の空気の状態線図である。
【
図4】請求項2に係る空気処理装置の第2の実施形態を示す。
【
図5】第2の実施形態における冷房定常運転時の空気の状態線図である。
【
図6】請求項3に係る空気処理装置の第3の実施形態を示す。
【
図7】第3の実施形態における冷房定常運転時の空気の状態線図である。
【
図8】請求項4に係る空気処理装置の第4の実施形態を示す。
【
図9】第4の実施形態における冷房定常運転時の空気の状態線図である。
【
図10】第4の実施形態における暖房定常運転時の空気の状態線図である。
【
図11】請求項5に係る空気処理装置の第5の実施形態を示す。
【
図12】第5の実施形態における冷房定常運転時の空気の状態線図である。
【
図13】請求項6に係る空気処理装置の第6の実施形態を示す。
【
図14】請求項8に係る空気処理装置の第7の実施形態を示す。
【
図15】第7の実施形態における冷房定常運転時の空気の状態線図である。
【
図16】第7の実施形態における暖房定常運転時の空気の状態線図である。
【
図17】請求項11に係る空気処理装置の第8の実施形態を示す。
【
図18】第8の実施形態における冷房定常運転時の空気の状態線図である。
【
図19】第8の実施形態における暖房定常運転時の空気の状態線図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、処理対象空気を外気、熱源空気については第1の実施形態のみ外気、他は室内排気とした場合について、図面を参照して本発明に係る空気処理装置1を説明する。なお
図1は、参考までに本発明に係る構成要素全体を示した。
【0042】
以下に、凡例および各実施形態での共通条件を示す。
*OA:処理対象空気
外気 夏33℃、62%(19.8g/kg′、83.9kJ/kg′)
冬0℃、34%(1.3g/kg′、3.2kJ/kg′)
*SOA:OAを空調処理した室内への給気
*HSA:熱源空気(上記の外気又は室内排気)
室内空気 夏26℃、50%(10.5g/kg′、52.9kJ/kg′)
冬22℃、40%(6.6g/kg′、38.8kJ/kg′)
*EA:熱源空気を利用した後の排気
*冷凍サイクル、ヒートポンプ冷凍サイクル共に成績係数COP=4とする
*凝縮温度(CT)55℃以下 これによる空気加熱温度を50℃以下とする
*SOA絶対湿度については省エネルギー性の高い潜熱顕熱分離空調方式に必要な下記の値とした
文献資料(空衛便覧14版I基礎編414頁 事務所作業・・)の26℃における
LH:53W/人から、沸騰温度30℃における比蒸発エンタルピ2430.0kJ/kgを用いて
53W/人÷2430J/g×3600s/h=78.5→79g/h・人
1人当たりの外気量=25m3/hで1人当たりの水分発生量=79g/hを処理
従ってSOAと室内排気の絶対湿度差は
79g/h・人÷(25m3/h・人×1.2kg’/m3)=2.6g/kg′により
SOA=10.5-2.6=7.9g/kg′とする
*気化冷却装置、気化式加湿は等エンタルピ変化とする
*気化冷却装置への給水は第1の熱交換器20による冷却除湿ドレンを利用する
*潜熱交換器はデシカントロータとし、熱ロスとして等エンタルピから2℃の顕熱移動とした
*気化冷却装置21は気化式加湿装置として加湿の飽和効率80%とする
*ファンによる昇温は無視する
*冷房運転時熱交換器20の出口空気は相対湿度95%とする
*空気状態は、乾球温度と相対湿度など状態値2つにより他の状態値が決まるので、説明での変化過程を決める表内数値には下線を付した
*発明を実施するための形態における説明では、熱交換器における「第1の」ないし「第7の」、気化冷却装置における「第1の」及び「第2の」の呼称は省略した
【0043】
(第1の実施形態)
図2に請求項1に係る実施形態の構成図を示す。空気処理装置1は、処理対象空気経路40に熱交換器20、室内へ処理空気を送風する給気ファン25が設置される。熱源空気経路41には、上流側から順に熱交換器30、冷房時に熱交換器20より発生する冷却ドレン供給により、気化冷却装置として機能する気化冷却装置32、熱交換器35が設置される。熱交換器20、30、35は、圧縮機50と共に冷凍サイクル又はヒートポンプ冷凍サイクルを構成し、運転に伴う吸熱量と、吸熱量に圧縮機入力を加算した放熱量の熱収支が合う運転となる。なお処理対象空気経路40は熱源空気経路41の上部に位置し、ドレンが重力により気化冷却装置32に落下することが望ましいが、条件によってはドレンポンプによる供給でもよい。通常は熱源空気として室内排気を利用するが本実施例では処理対象空気、熱源空気ともに外気とした場合について、具体的数値を示して運転動作を説明する。
【0044】
(夏季冷房運転動作と空気状態の変化)
図3に第1の実施形態における冷房定常運転時の空気状態の変化を、湿り空気線図にプロットした。以下に各点の空気状態を表内に示すとともに、各構成要素による空気状態の変化過程を説明する。
▲1▼処理対象外気Aは熱交換器20により冷却除湿されBとなる
冷却量=83.9-31.3=52.6kJ/kg′
除湿ドレン量=19.8-7.9=11.9g/kg′
▲2▼熱源空気用外気Aは熱交換器30により加熱されKとなる
▲3▼除湿ドレンが気化冷却装置32に供給される
▲4▼除湿ドレン全量を飽和効率80%の気化冷却装置32で全量蒸発させるための風量比は、Kの等エンタルピ100%RHであるN′=27.8g/kg′により
11.9÷{(27.8-19.8)×0.8}=1.9→2.0とする
▲5▼Kは等エンタルピ変化で
N=19.8+(11.9÷2)=25.8g/kg′となる
▲6▼COP=4により放熱量合計は
52.6×(5/4)=65.8kJ/kg′のため、Nは熱交換器35により加熱されS=(65.8÷2.0)+83.9=116.8kJ/kg′となる
【0045】
本発明の気化冷却装置32を装備しない従来のヒートポンプ冷凍機によれば凝縮温度を本発明と同じ55℃とした顕熱のみの放熱器では、熱源空気用外気の33℃と50℃のエンタルピ差は101.7-83.9=17.8kJ/kg′のため、熱源空気用外気量は、処理対象空気に対して65.8÷17.8=3.7倍必要となる。
【0046】
このように外気を熱源空気とする冷房運転では、本発明の気化冷却装置32の効果により、熱源空気の風量比をほぼ半減することが可能である。
【0047】
(第2の実施形態)
図4に請求項2に係る実施形態の構成図を示す。請求項1による空気処理装置1の熱交換器20と室内へ処理対象空気を送風する給気ファン25との間に、冷房時に加熱、暖房時には冷却を行う第4の熱交換器23が設置される。処理対象空気を外気、熱源空気を室内排気とし、風量比1とした場合について具体的数値を示して運転動作を説明する。
(夏季冷房運転動作と空気状態の変化)
図5に第2の実施形態における冷房定常運転時の空気状態の変化を、湿り空気線図にプロットした。以下に各点の空気状態を表内に示すとともに、各構成要素による空気状態の変化過程を説明する。
▲1▼処理対象外気Aは熱交換器20により冷却除湿されBとなる
冷却量=83.9-31.3=52.6kJ/kg′
除湿ドレン量=19.8-7.9=11.9g/kg′
▲2▼熱源空気用室内排気Jは熱交換器30により加熱されKとなる
▲3▼除湿ドレンが気化冷却装置32に供給される
▲4▼Kの等エンタルピでの100%RHであるN′=20.4g/kg′により、飽和効率80%の気化冷却装置32により気化冷却され
N=(20.4-10.5)×0.8+10.5=18.4g/kg′となる。
なおA→B=19.8-7.9=11.9g/kg′
K→N=18.4-10.5=7.9g/kg′
(A→B)-(K→N)=11.9-7.9=4.0g/kg′は排水される
▲5▼Nは熱交換器35により加熱されSとなる
▲6▼COP=4により放熱量は52.6×(5/4)=65.8kJ/kg′
(J→K)+(N→S)+(B→E)=(77.5-52.9)+(98.0-77.5)+(E-31.3)=65.8kJ/kg′より
Eは52.0kJ/kg′となる
【0048】
第2の実施形態によれば、熱源が室内排気で風量比1の場合でも処理対象空気の給気温度はこの具体例では31.6℃と高いが、ヒートポンプの吸熱、放熱量の熱収支を合わせ、潜熱顕熱分離空調を達成するための給気絶対湿度7.9g/kg′までの除湿処理を、外部からの熱源を要しない一体完結型の外気処理装置で達成できる。
【0049】
(第3の実施形態)
図6に請求項3に係る実施形態の構成図を示す。請求項2による空気処理装置1の熱源空気経路41の気化冷却装置32と熱交換器35の間に、上流側から順に熱交換器33と気化冷却装置34の組み合わせを追加したものである。以下処理対象空気を外気、熱源空気を室内排気、風量比1とした場合について具体的数値を示して運転動作を説明する。
(夏季冷房運転動作と空気状態の変化)
図7に第3の実施形態における冷房定常運転時の空気状態の変化を、湿り空気線図にプロットした。以下に各点の空気状態を表内に示すとともに、各構成要素による空気状態の変化過程を説明する。
▲1▼処理対象外気Aは熱交換器20により冷却除湿されBとなる
冷却量=83.9-31.3=52.6kJ/kg′
除湿ドレン量=19.8-7.9=11.9g/kg′
▲2▼熱源空気用室内排気Jは熱交換器30により加熱されKとなる
▲3▼除湿ドレンが気化冷却装置32、34に分配供給される
▲4▼Kの等エンタルピでの100%RHであるN′=20.4g/kg′により、飽和効率80%の気化冷却装置32により気化冷却され
N=(20.4-10.5)×0.8+10.5=18.4g/kg′となる。
▲5▼Nは熱交換器33により加熱されPとなる
▲6▼Pは気化冷却装置34により
Q={11.9-(18.4-10.5)}+18.4=22.4g/kg′となる
▲7▼Qは熱交換器35により加熱されSとなる。なお
図7では気化冷却装置32に加湿可能な適量分の除湿ドレンを供給した場合を示しているが、気化冷却装置32に除湿ドレン全量を供給し、気化できなかった量をドレンポンプ等で気化冷却装置34に供給しても良い
▲8▼COP=4により放熱量は52.6×(5/4)=65.8kJ/kg′
(J→K)+(N→P)+(Q→S)+(B→E)
=(77.5-52.9)+(98.0-77.5)+(108.4-98.0)+(E-31.3)=65.8kJ/kg′より
Eは41.6kJ/kg′となる
【0050】
第3の実施形態によれば、処理対象空気が外気、熱源空気が室内排気で風量比1の場合でも、処理対象空気の潜熱負荷であるドレン量を全て熱源空気の気化冷却に利用することが可能となり、第2の実施形態の処理空気温度をより低く抑えること、具体例では31.6℃から21.4℃とすることが可能となる。
【0051】
(第4の実施形態)
図8に請求項4に係る実施形態の構成図を示す。室内排気を熱源空気として外気の温湿度調整を行うために、外気を室内に給気する処理対象空気経路40に、熱交換器20が設置され、室内排気を熱源空気とする熱源空気経路41に、上流側から熱交換器30、熱交換器35が設置され、さらに熱交換器20通過後の外気と、熱交換器30通過後の室内排気の潜熱を交換する潜熱交換器21が、熱交換器20の下流側、熱交換器30、35の間に設置されたものである。以下外気と室内排気の風量比1とした場合について具体的数値を示して運転動作を説明する。
【0052】
(夏季冷房運転動作と空気状態の変化)
図9に第4の実施形態における冷房定常運転時の空気状態の変化を、湿り空気線図にプロットした。以下に各点の空気状態を表内に示すとともに、各構成要素による空気状態の変化過程を説明する。
▲1▼処理対象外気Aは熱交換器20により冷却除湿されBとなる
冷却量=83.9-52.3=31.6kJ/kg′
▲2▼Bは潜熱交換器21により除湿されCとなる。なお等エンタルピ変化でのC′より2℃上昇する
▲3▼熱源空気用室内排気Jは熱交換器30により加熱されKとなる
▲4▼Kは潜熱交換器21によりB→Cの潜熱交換分=13.1-7.9=5.2g/kg′によりLとなる。なお等エンタルピ変化での L′より2℃低下する
▲5▼Lは熱交換器35により加熱されSとなる。
Sは、COP=4による放熱量=31.6×5/4=39.5kJ/kg′=(J→K)+(L→S)
=(77.5-52.9)+(S-75.4)により90.3kJ/kg′
【0053】
第4の実施形態によれば、冷房運転において、熱源空気が室内排気で風量比1の場合において,給気温度はこの具体例では33.9℃と高いが、ヒートポンプの吸熱、放熱量の熱収支を合わせ、潜熱顕熱分離空調を達成するための給気絶対湿度7.9g/kg′までの除湿処理を、外部からの熱源を要しない一体完結型の外気処理装置で達成できる。なお冷却量は第2の実施形態52.6kJ/kg′に対して31.6kJ/kg′となり、圧縮機50への入力エネルギーが減少する。
【0054】
(冬季暖房運転動作と空気状態の変化)
図10に第4の実施形態における暖房定常運転時の空気状態の変化を、湿り空気線図にプロットした。以下に各点の空気状態を表内に示すとともに、各構成要素による空気状態の変化過程を説明する。
▲1▼処理対象外気AはC=24℃を想定して熱交換器20により加熱されBとなる
加熱量=43.0-3.2=39.8kJ/kg′
▲2▼Bは潜熱交換器21によりCとなる。なお等エンタルピ変化でのC′より2℃低下する
▲3▼熱源空気用室内排気Jは熱交換器30によりドレンを排出しない80%RHまで冷却されKとなる
▲4▼Kは潜熱交換器21によりLとなる。なお等エンタルピ変化でのL′より2℃上昇する
▲5▼Lは熱交換器35により冷却されSとなる。
SはCOP=4での冷却量=39.8×3/4=29.9kJ/kg′
=(J→K)+(L→S)=(38.8-27.9)+(29.9-S)により10.9kJ/kg′
【0055】
第4の実施形態によれば、潜熱交換器21により、処理対象空気は加湿され、熱源空気は温度が上昇し再度熱源空気として利用することで、熱源空気が室内排気で風量比1の場合でも吸熱、放熱量の熱収支を合わせ、処理対象空気に対しての加湿も可能となり、外部からの熱源を要しない一体完結型の空気処理装置を達成できる。
【0056】
(第5の実施形態)
図11に請求項5に係る実施形態の構成図を示す。請求項1における気化冷却装置32に請求項4における潜熱交換器21を加えたものである。以下処理対象空気を外気、熱源空気を室内排気、風量比1とした場合について具体的数値を示して運転動作を説明する。
【0057】
(夏季冷房運転動作と空気状態の変化)
図12に第5の実施形態における冷房定常運転時の空気状態の変化を、湿り空気線図にプロットした。以下に各点の空気状態を表内に示すとともに、各構成要素による空気状態の変化過程を説明する。
▲1▼処理対象外気Aは熱交換器20により冷却除湿されBとなる
冷却量=83.9-46.3=37.6kJ/kg′
除湿ドレン量=19.8-11.5=8.3g/kg′
▲2▼Bは潜熱交換器21によりCとなる。なお等エンタルピ変化でのC′より2℃上昇する
▲3▼熱源空気用室内排気Jは熱交換器30により加熱されKとなる
▲4▼Kは潜熱交換器21によりB→Cの潜熱交換分=11.5-7.9=3.6g/kg′により、Lとなる。なお等エンタルピ変化での L′より2℃低下する
▲5▼NはLの等エンタルピでの100%RH N′が19.8g/kg′であることから気化冷却装置32により飽和効率80%で気化冷却され
(19.8-14.1)×0.8+14.1=18.7g/kg′となる
▲6▼Nは熱交換器35により加熱されSとなる。
SはCOP=4による放熱量=37.6×5/4=47.0kJ/kg′
=(J→K)+(N→S)=(77.5-52.9)+(S-75.4)により97.8kJ/kg′
※なおA→Bに伴う除湿ドレン水量は8.3g/kg′、L→Nに伴う蒸発量は18.7-14.1=4.6g/kg′であり、その差3.7g/kg′はドレンとして排水される。
【0058】
第5の実施形態によれば、冷房運転において、処理対象空気が外気、熱源空気が室内排気で風量比1の場合において、第2の実施形態に比較して冷却熱量を52.6kJ/kg′から37.6kJ/kg′、給気温度を31.6℃から28.0℃とすることができる。
【0059】
(冬季暖房運転動作と空気状態の変化)
冬季には気化冷却装置は作用しないので、空気状態の変化過程は
図10に準ずる。
【0060】
第5の実施形態によれば、冬季には気化冷却装置は作用しないので、効果は第4の実施形態に準ずる。
【0061】
(第6の実施形態)
図13に請求項6に係る実施形態の構成図を示す。請求項5による空気処理装置1の処理対象空気経路40の潜熱交換器21の下流側に、熱交換器22を追加したものである。
【0062】
(第7の実施形態)
図14に請求項8に係る実施形態の構成図を示す。請求項6による空気処理装置1の熱源空気経路41の潜熱交換器21下流直後に熱交換器31を追加したものである。以下処理対象空気を外気、熱源空気を室内排気、風量比1とした場合について具体的数値を示して運転動作を説明する。
【0063】
(夏季冷房運転動作と空気状態の変化)
図15に第7の実施形態における冷房定常運転時の空気状態の変化を、湿り空気線図にプロットした。以下に各点の空気状態を表内に示すとともに、各構成要素による空気状態の変化過程を説明する。
▲1▼処理対象外気Aは熱交換器20により冷却除湿されBとなる
冷却量=83.9-52.3=31.6kJ/kg′
除湿ドレン量=19.8-13.1=6.7g/kg′
▲2▼Bは潜熱交換器21によりCとなる。なお等エンタルピ変化でのC′より2℃上昇する
▲3▼熱源空気用室内排気Jは熱交換器30により加熱されK=45℃となる
▲4▼Kは潜熱交換器21によりB→Cの潜熱交換分=13.1-7.9=5.2g/kg′により、Lとなる。なお等エンタルピ変化でのL′より2℃低下する
▲5▼Lは熱交換器31により加熱されM=45℃となる
▲6▼Mは等エンタルピでの100%RH N′が22.9g/kg′であることから気化冷却装置32により飽和効率80%で気化冷却されNとなる
▲7▼Nは熱交換器35により加熱されS=45℃となる
▲8▼Cは熱交換器22により冷却されDとなる。
Dは、熱交換器30、31、35による放熱量合計
(J→K)+(L→M)+(N→S)=(72.4-52.9)+(85.8-70.3)+(100.8-85.8)=50.0kJ/kg′
COP=4による冷却量=50.0×4/5=40.0kJ/kg′により
(C→D)=40.0-(A→B)=40.0-31.6=8.4kJ/kg′54.4-8.4=46.0kJ/kg′となる
※なおA→Bに伴う除湿ドレン水量は6.7g/kg′、M→Nに伴う蒸発量は21.5-15.7=5.8g/kg′であり、その差0.9g/kg′はドレンとして排水される
【0064】
第7の実施形態によれば、冷房運転において、処理対象空気が外気、熱源空気が室内排気で風量比1の場合において第5の実施形態に比較して熱交換器20のA→Bの冷却除湿に伴う冷却熱量を減らすこと、具体例では37.6kJ/kg′から31.6kJ/kg′、さらにドレン量を気化冷却により多く使うことで処理対象空気の給気温度を低く抑えること、具体例では28.0℃から25.7℃、さらに凝縮温度を低くすること、具体例では55℃から50℃(排気温度Sは49℃から45℃)とすることが可能となり、より省エネ効果が高くなる。
【0065】
(冬季暖房運転動作と空気状態の変化)
図16に第7の実施形態における暖房定常運転時の空気状態の変化を、湿り空気線図にプロットした。以下に各点の空気状態を表内に示すとともに、各構成要素による空気状態の変化過程を説明する。
▲1▼処理対象外気Aは熱交換器20により加熱されB=38℃となる
▲2▼Bは潜熱交換器21によりCとなる。なお等エンタルピ変化でのC′より2℃低下する
▲3▼熱源空気用室内排気Jは熱交換器30によりドレンを排出しない80%RHまで冷却されKとなる
▲4▼Kは潜熱交換器21によりLとなる。なお等エンタルピ変化でのL′より2℃上昇する
▲5▼熱交換器31及び35によりLを氷点下温度S=-2℃まで冷却する
冷却量=(J→K)+(L→S)=(38.8-27.9)+(29.9-1.2)
=39.6kJ/kg′
▲6▼COP=4による加熱量=(A→B)+(C→D)=39.6×4/3=52.8kJ/kg′によりD=53.9kJ/kg′
【0066】
第7の実施形態によれば、潜熱交換器21により熱源空気は温度が上昇すると共に湿度が低下し、氷点下温度まで利用しても対象熱交換器への着霜がなく、暖房能力の安定した連続運転が可能となる。
【0067】
(第8の実施形態)
図17に請求項11に係る実施形態の構成図を示す。請求項6による外気処理装置1の処理空気経路40の熱交換器20の上流側から、熱源空気経路41の熱交換器35の上流側に外気をバイパスするバイパス経路42を追加したものである。なお処理対象空気経路40の最下流に気化式タイプの加湿装置24を設置している。以下処理対象空気が外気、熱源空気を室内排気、風量比0.9とした場合について具体的数値を示して運転動作を説明する。
【0068】
(夏季冷房運転動作と空気状態の変化)
図18に第8の実施形態における冷房定常運転時の空気状態の変化を、湿り空気線図にプロットした。以下に各点の空気状態を表内に示すとともに、各構成要素による空気状態の変化過程を説明する。
▲1▼処理対象外気Aは熱交換器20により冷却除湿されBとなる
冷却量=83.9-46.3=37.6kJ/kg′
除湿ドレン量=19.8-11.5=8.3g/kg′
▲2▼Bは潜熱交換器21によりCとなる。なお等エンタルピ変化でのC′より2℃上昇する
▲3▼熱源用室内排気Jは熱交換器30により加熱されKとなる
▲4▼Kは潜熱交換器21によりB→Cの潜熱交換分が加湿されてLとなる。なお等エンタルピ変化でのL′より2℃低下する(風量比については数値が細かくなるので考慮しない)
(B→C)の除湿水分=11.5-7.9=3.6g/kg′(風量比1)
(K→L)の加湿水分=3.6×10/9=4.0g/kg′(風量比0.9)
L=10.5+4.0=14.5g/kg′
▲5▼Lは等エンタルピでの100%RH N′が19.8g/kg′であることから気化冷却装置32により飽和効率80%で気化冷却されNとなる
(19.8-14.5)×0.8+14.5=18.7g/kg′
▲6▼Nは処理対象空気の外気量1に対し0.5の外気を熱源空気補給経路42よ
り補給することでRとなる
(33.0-27.5)×0.5/(0.5+0.9)+27.5=29.5℃
(83.9-75.4)×0.5/(0.5+0.9)+75.4=78.4kJ/kg′
▲7▼Rは熱交換器35により加熱されSとなる
▲8▼Cは熱交換器22により冷却されDとなる
Dは熱交換器30、35による放熱量合計
(J→K)×0.9+(R→S)×(0.9+0.5)=52.1kJ/kg′
COP=4による冷却量=52.1×4/5=41.7kJ/kg′
=(A→B)+(C→D)=(83.9-46.3)+(48.3-D)により
D=44.2kJ/kg′
※なお(A→B)に伴うドレン量=8.3g/kg′(L→N)に伴う蒸発量=(18.7-14.5)×0.9=3.8g/kg′の差4.1g/kg′はドレンとして排水される
【0069】
第8の実施形態によれば、冷房運転において、処理対象空気が外気、熱源空気が室内排気で風量比1より小さい、具体例では0.9であっても本発明の気化冷却装置32、潜熱交換器21を大型化することなく、熱源空気最下流の熱交換器35にのみ適宜外気を補給することで、外部からの熱源を要しない一体完結型の外気処理装置を構成できる。
【0070】
(冬季暖房運転動作と空気状態の変化)
図19に第8の実施形態における暖房定常運転時の空気状態の変化を、湿り空気線図にプロットした。以下に各点の空気状態を表内に示すとともに、各構成要素による空気状態の変化過程を説明する。
▲1▼処理対象外気Aは熱交換器20により加熱されB=35℃となる(CT=40℃想定)
▲2▼Bは潜熱交換器21によりCとなる。なお等エンタルピ変化でのC′より2℃低下する
▲3▼Cは熱交換器22により加熱されDとなる
加熱量合計は(A→B)+(C→D)=(38.5-3.2)+(45.0-36.5)=43.8kJ/kg′
▲4▼Dは加湿装置24によりFとなる
▲5▼熱源空気用室内排気Jは熱交換器30によりドレンを排出しない80%まで冷却されKとなる。
▲6▼Kは潜熱交換器21により(B→C)の潜熱交換分が除湿されてLとなる。なお等エンタルピ変化でのL′より2℃上昇する(風量比については数値が細かくなるので考慮しない)
(B→C)の加湿水分=5.4-1.3=4.1g/kg′
(K→L)の除湿水分=(B→C)×10/9=4.6g/kg′
L=6.6-4.6=2.0g/kg′
▲7▼Lは処理対象外気量1に対し風量比0.2の外気を熱源空気である室内排気Lに外気補給経路42より補給することでRとなる
(24.7-0.0)×0.9/(0.2+0.9)+0.0=20.2℃
(29.9-3.2)×0.9/(0.2+0.9)+3.2=25.0kJ/kg′
▲8▼Rは熱交換器35により冷却されSとなる
SはCOP=4により冷却熱量×4/3=加熱量から
{(J→K)×0.9+(R→S)×(0.2+0.9)}×4/3=43.8kJ/kg′(R→S)=20.9kJ/kg′よりS=25.0-20.9=4.1kJ/kg′
【0071】
第8の実施形態によれば、暖房運転において熱源空気が室内排気で風量比が1より小さい、具体例では0.9でかつ加湿装置が外部からの熱源を要しない気化式加湿でも処理空気に対しての十分な加熱及び加湿が可能となる。また更に処理対象空気に対する加熱量を増やし、給気温度を上げるために、熱源空気の排気温度Sをさらに下げても潜熱交換器21による除湿により露点温度が下がり、熱交換器35での着霜が防止され、暖房能力の安定した連続運転が可能となる。
【0072】
(その他の実施形態)
実施形態において潜熱交換器は乾式のデシカントロータを想定してシステムを構成しているが、塩化リチウム溶液などの湿式方式を用いたものでもよい。処理対象空気は外気に限定されず室内空気の一部を混合して循環処理しても良い。また気化冷却装置は実施形態において独立した装置としているが、何らかの給水手段、例えば水道水、雨水貯留水、再生水、好ましくは冷却除湿ドレン水供給及びこれらの組み合わせによって、熱源空気を冷却することが目的であり、保水性、親水性を持つ熱交換器であれば直接滴下、噴霧としても良い。
【0073】
また冷凍サイクル又はヒートポンプ冷凍サイクルを構成する熱交換器と圧縮機50は熱媒体が冷媒ガスを想定しているが、圧縮機50を冷水、温水を発生するヒートポンプチラー、熱交換器を水熱源として構成しても良い。また実施形態での共通条件についてもこれらの数値に限定されるものではなく適宜変更が可能である。従って複数ある熱交換器、気化冷却器および潜熱交換器等についても、それぞれ蒸発温度、凝縮温度および処理対象空気及び熱源空気の最終および変化過程での温湿度条件等を適宜変更しても良い。
【0074】
以上のように本発明は上述の実施形態そのままに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を適宜変形することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 空気処理装置
20 第1の熱交換器SC/WH(冷凍サイクルにおいて夏:冷却 ヒートポンプ
冷凍サイクルにおいて夏:冷却 冬:加熱)
22 第6の熱交換器SC/WH(冷凍サイクルにおいて夏:冷却 ヒートポンプ
冷凍サイクルにおいて夏:冷却 冬:加熱)
23 第4の熱交換器SH/WC(冷凍サイクルにおいて夏:加熱 ヒートポンプ
冷凍サイクルにおいて夏:加熱 冬:冷却)
30 第2の熱交換器SH/WC(冷凍サイクルにおいて夏:加熱 ヒートポンプ
冷凍サイクルにおいて夏:加熱 冬:冷却)
31 第7の熱交換器SH/WC(冷凍サイクルにおいて夏:加熱 ヒートポンプ
冷凍サイクルにおいて夏:加熱 冬:冷却)
33 第5の熱交換器SH/WC(冷凍サイクルにおいて夏:加熱 ヒートポンプ
冷凍サイクルにおいて夏:加熱 冬:冷却)
35 第3の熱交換器SH/WC(冷凍サイクルにおいて夏:加熱 ヒートポンプ
冷凍サイクルにおいて夏:加熱 冬:冷却)
21 潜熱交換器
24 加湿装置
25 給気ファン
32 第1の気化冷却装置
34 第2の気化冷却装置
36 排気ファン
37 循環ファン
40 処理対象空気経路
41 熱源空気経路
42 熱源空気補給経路
51 熱源空気補給調整ダンパ
50 ヒートポンプ冷凍機
その他
OA:処理対象空気(主として外気)
SOA:処理対象空気を空調処理した給気
HSA:ヒートポンプ運転に係る熱源空気(主として室内排気)
EA:熱源空気を利用した後の排気
A B C・・・・・Q R Sは空気処理装置、空気線図内の各点を示す