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  • 特開-不同沈下の修正工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068039
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】不同沈下の修正工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/34 20060101AFI20240510BHJP
   E02D 35/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
E02D27/34 Z
E02D35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022188739
(22)【出願日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】503170536
【氏名又は名称】橋本 光則
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光則
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA17
(57)【要約】
【課題】不同沈下が発生した建物を容易に修正することが可能な施工方法を提供する。
【解決手段】不同沈下した建物に対し、新たに構成される軽量な現有地盤4を簡単な計算式を用いて算出し、地盤を置き換えることでその後に発生する更なる不同沈下を抑制することが可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不同沈下を修正した住宅において、基礎部分より下の現有地盤部分の土質の値により、現有地盤に掛かる荷重を軽減させるために基礎部分に接する現有地盤の必要量を軽量な地盤に置き換え、建物を含む単位面積当たりの荷重を新たに構成される現有地盤の土質に影響を与えない荷重に変更することを特徴とする不同沈下の修正工法。
【請求項2】
前記新たに構成される軽量な現有地盤の厚さを算出する計算式として、X=(m×H1×(P1×H3+L×P1-L×q)+S2×(H3+L)-S1×(H3+L))/(m×H1×(γ2×L-γ1×L+P1)+S2-2×S1)の計算方法で置換え厚さが算出されることを特徴とする請求項1記載の不同沈下の修正工法。
【請求項3】
埋め戻し土を投入する基礎部分の下の空間部分の底面及び壁面部分に、クリープ特性の高い繊維が用いられたシートが敷設されていることを特徴とする不同沈下の修正工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不同沈下が発生した住宅を修正し、予見される更なる不同沈下も防止するための修正工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不同沈下が発生した住宅を修正し、それ以降の不同沈下を防止する工法としては、不同沈下した基礎部分の下を開削し、その空間部分を用いて住宅を水平になるようにジャッキアップし、セメントを用いた埋め戻し土を投入するような方法が採られていた。
【0003】
また、特許文献1が開示する不同沈下の修正方法は、発泡スチロール製の人工地盤に支承させて建てられ不同沈下を起こした建物を対象とし、人工地盤の上面部の高い部分を熱で除去し、除去した側に建物を自重で沈ませて、建物の不同沈下を修正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2004-253439
【0005】
しかしながらこの工法では、高い部分を除去し、不同沈下した低い方のレベルで水平に保つように成るため、道路部分から住宅が低く成ったり、周辺との段差が発生したりするようになってしまうという問題が発生する。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の不同沈下の修正方法では、新築時に土質のサンプリングをして将来的に発生するであろう沈下量を予測し、現有地盤と発泡スチロールとを入れ替えて沈下を防止しようとするのであるが、建物下の土質のサンプリング数が少なかったり、深層的に土質にばらつきが多く、予測できない様な土質に遭遇したり、年間を通じて地盤中の水位の増減が発生したりすることで沈下量が増大することもある。
【0007】
また、この工法では、他の支持杭と併用することが困難であり、通常の現有地盤においても発生することであるが、住宅基礎部分と接する天端の部分の支持力に差が発生しやすいため基礎部分との間に空間が出来たり、その部分に水が溜まったりすることで空間部分が増大したりするため、実際の沈下量が反映されないこともあり、修正ができない場合が発生している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果、不同沈下の修正方法として開発したものが、不同沈下した住宅の基礎部分から下側を必要に応じ数個の区画に分け、沈下量に合わせて必要量掘り下げ、ジャッキアップ等の工事により沈下修正された住宅において、基礎部分より下の現有地盤部分の土質の値により、現有地盤に掛かる荷重を軽減させるために基礎部分に接する現有地盤の必要量を軽量な地盤に置き換え、建物を含む単位面積当たりの荷重を新たに構成される現有地盤の土質に影響を与えない荷重に変更するようにしている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の手法は、実際に沈下した住宅の沈下量を測定し、今後の沈下量を正確に予測して置換え厚さを決めることが出来るため、沈下予測精度とそれ以後の不同沈下を防止する効果が極めて高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】住宅、基礎、地盤を表す断面図である。
図2】基礎部分より下を表す断面図である。
図3】柱状杭の周囲を開削した空間部分の底及び側面に布製のシートが敷設された態様を示す斜視図である。
図4】空間部分の底及び側面に布製のシートが敷設された態様を示す斜視図である。
図5】各種サイズの発泡スチロールやその隙間を埋める軽量充填剤が施工された態様を示す断面斜視図である。
図6】各種サイズの発泡スチロールを充填した後に、楔を打ち込む態様を示す斜視図である。
図7】空隙部分に注入ノズルを差し込み、軽量な充填剤を注入する態様を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の不同沈下の修正工法は、図1のように建物1の住宅基礎3の下に必要量の開削により設けられた空間を用いて建物1の沈下修正をジャッキを用いて行い、新たに構成される現有地盤4を確保するとともに沈下対象土5のサンプリングも複数個所で実施しておくようにしておく。
【0012】
図2は基礎下の硬質地盤までの構成を示すもので、硬質地盤までの土質や深さなども考慮して新たに構成される地盤の量などを決める様にしている。
【0013】
次に、第2の発明として、この空間、即ち置換え厚さ8の算出方法としては、置換え厚さ8=(沈下対象土の体積圧縮係数11×沈下対象土の厚さ10×(沈下対象土中央深さの増加応力17×基礎下から沈下対象土中央までの深さ16+建物載荷幅15×沈下対象土中央深さの増加応力17-建物載荷幅15×上部建物荷重14)+沈下修正時の沈下量9×(基礎下から沈下対象土中央までの深さ16+建物載荷幅15)-荷重載荷時の予測最終沈下量18×(基礎下から沈下対象土中央までの深さ16+建物載荷幅15))/(沈下対象土の体積圧縮係数11×沈下対象土の厚さ10×(新たに構成される軽量な現有地盤の単位体積重量13×建物載荷幅15-基礎部分に接する現有地盤の単位体積重量12×建物載荷幅15+沈下対象土中央深さの増加応力17)+沈下修正時の沈下量9-2×荷重載荷時の予測最終沈下量18)の計算式で容易に得られる。
【0014】
この発明による計算式は、例えば硬質支持地盤7まで届いていない摩擦杭などの柱状杭26等が敷設されていたとしてもそれらを抜いて新たに構成される軽量な現有地盤4に置き換える必要は無いが、ジャッキアップした時に住宅基礎3と杭26に隙間が発生する場合にはセメント系のコンクリートの充填や金属製の楔などで空隙を無くすようにしている。
【0015】
次に第3の発明は、図3図4のように新たに構成される軽量な現有地盤4の周囲に布帛シート20を敷設することで周囲の地盤からの水の侵入による地盤形状の破壊などから新たに構成される軽量な現有地盤4を守るために用いられるもので、周囲の地盤に空間が出来、クリープが発生してシートが破断したりしないよう、なるべくクリープ特性の悪いオレフィン系の布帛ではなく、ビニロンなどのセメントなどと密着性の高い繊維素材が好ましい。
【0016】
次に図5及び図6を基に新たに構成される軽量な現有地盤4に用いられる材料について説明する。この構成材としては、作業員が手で投入可能な大型発泡スチロール21や中型発泡スチロール22を予め奥側から詰めて行き、基礎との間には楔27や充填剤で空隙を無くすようにする。
【0017】
この楔27の素材としては、密度の高い発泡スチロール製のものや、比重の軽いポリプロピレンやポリエチレン製やナイロン製の物でも、防腐処理が行われた木製の物でも良い。
【0018】
図7は最後に空間を埋めるために、軽量なポーラス状に成るセメントミルク、粒状発泡スチロール23や土、軽石とセメントミルクや酢酸ビニル樹脂などから出来た接着剤を混錬し、粒の周囲をコーティングしながら注入ポンプ28から注入ノズル29を用いて充填し、空間の発生を抑えるようにしている。
【0019】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれらだけに限られるものではなく、現場によっては粒状の発泡スチロールとエポキシ系の2液の接着剤を混合噴射して充填するようなことも、本計算式で算出される数値を満たす軽量な素材であれば適宜利用することが可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 建物
2 GL
3 住宅基礎
4 新たに構成される軽量な現有地盤
5 基礎部分に接する現有地盤
6 沈下対象土
7 硬質支持地盤
8 置換え厚さ X
9 沈下修正時の沈下量 S2
10 沈下対象土の厚さ H1
11 沈下対象土の体積圧縮係数 m
12 基礎部分に接する現有地盤の単位体積重量 γ1
13 新たに構成される現有地盤の単位体積重量 γ2
14 上部建物荷重 q
15 建物載荷幅 L
16 基礎下から沈下対象土中央までの深さ H3
17 沈下対象土中央深さの増加応力 P1
18 荷重載荷時の予測最終沈下量 S1
19 沈下対象層 H1
20 布帛シート
21 大型発泡スチロール
22 中型発泡スチロール
23 粒状発泡スチロール
24 接着剤
25 セメント系固化材
26 杭
27 楔
28 注入ポンプ
29 注入ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7