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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006805
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/40 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H01L23/40 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108044
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島津 ひろみ
(72)【発明者】
【氏名】金澤 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】田村 充敏
(72)【発明者】
【氏名】高原 秀彦
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BC01
5F136CB06
5F136DA27
5F136EA02
5F136EA36
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA18
(57)【要約】
【課題】部品点数の低減およびコスト低減を図ることができる半導体装置の提供。
【解決手段】半導体装置1は、一列に配列された複数のパワーモジュール100A~100Cの放熱面に熱的に接触する放熱器7aと、放熱器7aを放熱面に押圧するように固定する固定部材と、を備える。放熱器7aは、パワーモジュール100A~100Cの放熱面に押圧される本体部70と、本体部70と一体にパワーモジュール100A~100Cの配列の方向に沿って複数形成され、曲げ剛性が本体部70よりも小さな片持ち梁形状の固定用フランジ71a,71bと、を有する。固定部材は、固定用フランジ71a,71bを弾性変形させて固定用フランジ71a,71bの弾性力により本体部70をパワーモジュール100A~100Cの放熱面に押圧させるように、放熱器7aを固定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体素子を内蔵すると共に放熱面を有する複数の半導体モジュールと、
一列に配列された前記複数の半導体モジュールの前記放熱面に熱的に接触する放熱器と、
前記放熱器を前記放熱面に押圧するように固定する固定部材と、を備え、
前記放熱器は、
前記半導体モジュールの前記放熱面に押圧される放熱ベース部と、
前記放熱ベース部と一体に前記配列の方向に沿って複数形成され、曲げ剛性が前記放熱ベースよりも小さな片持ち梁形状の固定フランジ部と、を有し、
前記固定部材は、前記固定フランジ部を弾性変形させて該固定フランジ部の弾性力により前記放熱ベース部を前記半導体モジュールの前記放熱面に押圧させるように、前記放熱器を固定する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記固定フランジ部の厚さ寸法は、前記放熱ベース部の厚さ寸法よりも小さく設定されている、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記固定フランジ部の幅寸法は、前記片持ち梁形状の先端に近づくほど小さな値に設定されている、半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記固定部材により固定された前記放熱器の前記固定フランジ部は、前記片持ち梁形状の根元領域と前記固定部材による固定領域との間に弾性変形による屈曲部を有する、半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記放熱面は、前記半導体モジュールの厚さ方向の表裏両面に設けられ、
表面側の前記放熱面に押圧される第1の放熱器と、裏面側の前記放熱面に押圧される第2の放熱器とを備え、
前記第1の放熱器に設けられた前記固定フランジ部の前記固定領域と、前記第2の放熱器に設けられた前記固定フランジ部の前記固定領域との面間距離は、前記第1の放熱器の前記放熱ベース部と前記第2の放熱器の前記放熱ベース部との面間距離よりも小さく設定されている、半導体装置。
【請求項6】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記半導体モジュールの厚さ方向の一方の面に当接するように設けられ、前記固定部材により前記固定フランジ部が連結固定されるプレートをさらに備え、
前記放熱器が押圧される前記放熱面は、前記半導体モジュールの厚さ方向の他方の面に設けられ、
前記放熱器に設けられた前記固定フランジ部の前記固定領域と前記プレートとの面間距離は、前記放熱器の前記放熱ベース部と前記プレートとの面間距離よりも小さく設定されている、半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記配列の方向に沿って設けられた前記複数の固定フランジ部の内、前記配列の方向の両端に配置された前記固定フランジ部の前記曲げ剛性は、その他の前記固定フランジ部の前記曲げ剛性よりも小さく設定されている、半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置において、
前記複数の固定フランジ部のそれぞれの厚さ寸法は等しく、かつ、前記配列の方向の両端に配置された前記固定フランジ部の幅寸法は、その他の前記固定フランジ部の幅寸法よりも小さく設定されている、半導体装置。
【請求項9】
請求項7に記載の半導体装置において、
前記複数の固定フランジ部のそれぞれの幅寸法は等しく、かつ、前記配列の方向の両端に配置された前記固定フランジ部の厚さ寸法は、その他の前記固定フランジ部の厚さ寸法よりも小さく設定されている、半導体装置。
【請求項10】
請求項7に記載の半導体装置において、
前記複数の固定フランジ部のそれぞれの幅寸法は等しく、かつ、前記配列の方向の両端に配置された前記固定フランジ部の長さ寸法は、その他の前記固定フランジ部の長さ寸法よりも大きく設定されている、半導体装置。
【請求項11】
請求項7に記載の半導体装置において、
前記配列の方向の両端に配置された前記固定フランジ部は、前記片持ち梁形状の根元領域と前記固定部材による固定領域との間に、厚さ寸法が前記根元領域よりも小さな薄肉部を有する、半導体装置。
【請求項12】
請求項9に記載の半導体装置において、
前記放熱ベース部は、半導体モジュール側の面の前記半導体モジュールが対向しない領域に、前記配列の方向に対して直交する方向に延在する複数の凸部を有し、
前記固定フランジ部は前記凸部に連続するように形成されている、半導体装置。
【請求項13】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記固定部材による前記固定フランジ部の変形量を所定値に規制する規制部をさらに備える、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への負荷低減のため、ハイブリッド自動車や電気自動車の普及が進められている。ハイブリッド自動車や電気自動車においては搭載される部品の小型化や低コスト化が重要視され、電力変換装置における半導体装置も例外ではなく、小型化や低コスト化が求められている。電力変換装置を構成する電子部品の中で発熱量が大きい半導体装置を小型化するためには、冷却性能を向上させる必要がある。そのため、このような半導体装置においては、一般的に、パワー半導体素子を内蔵した半導体モジュールを冷却するための放熱器や冷却器などの冷却装置を備えている。
【0003】
例えば、特許文献1には、パワー半導体素子を内蔵した半導体モジュールを一対の冷却管で挟み、冷却管を押圧板により半導体モジュールに押圧させる構造が開示されている。押圧板を設けることで、半導体モジュールの放熱面と冷却管との接触面に圧縮力を発生させ、放熱面を冷却管に密着させるようにしている。さらに、押圧板をバネ部材の付勢力で半導体モジュールに押圧する構成とすることで、密着性の向上を図るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-182312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、密着性の確保のために押圧板やバネ部材をさらに必要とし、部品点数の増加やコスト増という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様による半導体装置は、パワー半導体素子を内蔵すると共に放熱面を有する複数の半導体モジュールと、一列に配列された前記複数の半導体モジュールの前記放熱面に熱的に接触する放熱器と、前記放熱器を前記放熱面に押圧するように固定する固定部材と、を備え、前記放熱器は、前記半導体モジュールの前記放熱面に押圧される放熱ベース部と、前記放熱ベース部と一体に前記配列の方向に沿って複数形成され、曲げ剛性が前記放熱ベースよりも小さな片持ち梁形状の固定フランジ部と、を有し、前記固定部材は、前記固定フランジ部を弾性変形させて該固定フランジ部の弾性力により前記放熱ベース部を前記半導体モジュールの前記放熱面に押圧させるように、前記放熱器を固定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、半導体装置の部品点数の低減およびコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、半導体装置の一例を示す平面図である。
図2図2は、パワーモジュールの回路構成の一例を示す回路図である。
図3図3は、パワーモジュールの外観形状を示す平面図である。
図4図4は、図3のB-B断面図である。
図5図5は、図1のA-A断面図である。
図6図6は、図1のC-C断面図である。
図7A図7Aは、ボルトおよびナットで連結する前の固定用フランジの形状を示す図である。
図7B図7Bは、連結後の固定用フランジの形状を示す図である。
図8A図8Aは、固定用フランジの幅寸法が全て同じ場合の半導体装置の平面図である。
図8B図8Bは、放熱器の変形を説明する図である。
図9図9は、変形例1を示す図である。
図10図10は、変形例2を示す図である。
図11A図11Aは、変形例3における放熱器の平面図である。
図11B図11Bは、変形例3における放熱器の側面図である。
図12A図12Aは、変形例3の他の構造を示す図である。
図12B図12Bは、変形例3の他の構造を示す図である。
図13A図13Aは、変形例4を示す平面図である。
図13B図13Bは、変形例4における半導体装置を側方から見た図である。
図14図14は、変形例5を示す図である。
図15図15は、変形例6を示す図である。
図16図16は、変形例7を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、以下の説明では、同一または類似の要素および処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する場合がある。なお、以下に記載する内容はあくまでも本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではなく、他の種々の形態でも実施する事が可能である。
【0010】
図1は、本実施の形態の半導体装置1の一例を示す平面図である。以下では、半導体装置1の長手方向をX方向、半導体装置1の短手方向をY方向、半導体装置1の高さ方向をZ方向のように座標軸を設定する。本実施の形態の半導体装置1は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等に搭載される電力変換装置のインバータ回路に設けられる。電力変換装置は、直流電源と車両走行用のモータジェネレータ(例えば、三相交流方式の回転電機)との間で電力変換を行う。電力変換装置は、平滑コンデンサと電力変換器であるインバータ回路とを備えている。インバータ回路は、入力された直流電力を所定周波数の三相交流に変換し、モータジェネレータに出力する。図1の半導体装置1はインバータ回路に設けられ、三相分のパワーモジュール100A,100B,100Cを備えている。
【0011】
図2は、パワーモジュール100Aの回路構成の一例を示す回路図である。なお、パワーモジュール100A~100Cは同一構成である。パワーモジュール100Aの回路は、直列接続された上アーム100Uおよび下アーム100Lで構成される。上アーム100Uは、パワー半導体素子121Uおよびダイオード122Uを備える。下アーム100Lは、パワー半導体素子121Lおよびダイオード122Lを備える。パワー半導体素子121U,121Lは、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)やMOSFETなどで構成される。上アーム100Uのパワー半導体素子121Uは、上アーム制御端子114に入力される制御信号によりオンオフ制御される。同様に、下アーム100Lのパワー半導体素子121Lは、下アーム制御端子115に入力される制御信号によりオンオフ制御される。
【0012】
上アーム100Uの外部接続P端子111は直流電源の高電位電源ラインに接続され、下アーム100Lの外部接続N端子112は直流電源の低電位電源ラインに接続される。上アーム100Uと下アーム100Lとの接続点には外部接続AC端子113が設けられ、外部接続AC端子113から外部機器(例えば、モータ)に交流の電流を出力する。直流電源ラインには、上下アーム100U,100Lと並列にコンデンサなどが接続される。
【0013】
図3は、パワーモジュール100Aの外観形状を示す平面図である。また、図4は、図3のB-B断面図である。パワーモジュール100Aのパワー半導体素子121U,121Lおよびダイオード122U,122L等は、電気的絶縁材料で形成される封止樹脂10で封止されている。外部接続P端子111、外部接続N端子112、外部接続AC端子113、上アーム制御端子114および下アーム制御端子115は、封止樹脂10から露出している。パワーモジュール100Aの表裏両面には、封止樹脂10から露出するように絶縁層4が配置されている。
【0014】
図4のB-B断面図に示すように、パワー半導体素子121Uの表面電極は接合材2により導体3aと接合されている。パワー半導体素子121Uの裏面電極は接合材2により導体3bと接続されている。同様に、ダイオード122Lの表面電極は接合材2により導体3cと接合されている。ダイオード122Lの裏面電極は接合材2により導体3dと接合されている。導体3a~3dは、例えば、銅、銅合金、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金などにより形成されている。接合材2ははんだ材、焼結材などにより形成されている。なお、図示は省略するが、ダイオード122Uの表裏面の電極は、パワー半導体素子121Uと同様に導体3a,3bに接合されている。また、パワー半導体素子121Lの表裏面の電極は、ダイオード122Lと同様に導体3c,3dに接合されている。
【0015】
導体3a~3dは、素子接合面と、その面とは反対側の放熱面300とを有する。導体3a,3cの放熱面300には、熱伝導性の絶縁層4が設けられている。同様に、導体3b,3dの放熱面300にも絶縁層4が設けられている。絶縁層4は、半導体素子(121U,122U,121L,122U)から発生する熱を、パワーモジュール100Aの表裏両面に配置される放熱部材(後述する放熱器7a,7b)に熱伝導するものであり、熱伝導率が高く、かつ、絶縁耐圧が大きい材料で形成されている。例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等のセラミックス、あるいは、これらの微粉末を含有する絶縁シートまたは接着剤を用いることができる。
【0016】
図1に戻って、3つのパワーモジュール100A,100B,100Cは、半導体装置1の長手方向(X方向)に一列に配置されている。各パワーモジュール100A~100Cは、端子111~115が半導体装置1のY方向側方に突出するように配置されている。
【0017】
図5は、図1のA-A断面図である。図6図1のC-C断面図である。図5に示すように、パワーモジュール100A~100Cは、導体3a~3dの放熱面300を覆っている絶縁層4が表面に露出するように封止樹脂10で封止されている(図4参照)。封止樹脂10から露出している絶縁層4の表面には、熱伝導層5が設けられている。熱伝導層5には、グリース、サーマルインターフェースマテリアル(TIM)等の良熱伝導部材が用いられる。
【0018】
放熱器7a,7bは、熱伝導層5が設けられたパワーモジュール100A,100B,100Cを挟持するように設けられている。本実施の形態では、放熱器7a,7bとして、本体部70に冷却液が流れる流路700を備える冷却器が用いられている。図6に示すように、放熱器7a,7bの本体部70には、長手方向(X方向)に延在する流路700が複数形成されている。
【0019】
図1に示したように、放熱器7aの本体部70のy方向側面には、放熱器7aの長手方向に所定間隔で配置された複数の固定用フランジ71a,71bが形成されている。固定用フランジ71a,71bは片持ち梁形状のフランジであり、本体部70から側方(Y方向)に突出するように形成されている。図1では見えていないが、放熱器7bはパワーモジュール100A~100Cの裏面側に設けられている。放熱器7bも、放熱器7aの固定用フランジ71a,71bと対向する位置に、同様の固定用フランジ71a,71bが形成されている(図6参照)。複数の固定用フランジ71a,71bの厚さ寸法は同一である。しかし、幅寸法に関しては、長手方向両端に配置されている固定用フランジ71bの幅寸法W2は、両端よりも長手方向内側に配置された他の固定用フランジ71aの幅寸法W1よりも小さく設定されている。
【0020】
各固定用フランジ71a,71bには、ボルト11が挿通される貫通孔711がそれぞれ形成されている。図6に示すように、ボルト11およびナット12を用いて、放熱器7aの固定用フランジ71a,71bと放熱器7bの対向する固定用フランジ71a,71bとを連結固定することにより、一列に並んだパワーモジュール100A~100Cの表裏両面に放熱器7a,7bが固定される。
【0021】
放熱器7a,7bは、熱伝導性を有する部材、例えばCu、Cu合金、Cu-C、Cu-CuOなどの複合材、あるいはAl、Al合金、AlSiC、Al-Cなどの複合材などから形成されている。パワーモジュール100A~100Cで発生した熱は、絶縁層4および熱伝導層5を介して放熱器7a,7bの本体部70へ熱伝導され、流路700を流れる冷却液へと放熱される。
【0022】
図7Aは、ボルト11およびナット12で連結する前の固定用フランジ71bの形状を示す図である。図7Bは、連結後の固定用フランジ71bの形状を示す図である。なお、図7A,7Bでは見えていないが、固定用フランジ71aについても図7A,7Bに示す固定用フランジ71bと同様の形状になっている。
【0023】
放熱器7a,7bにおいて、固定用フランジ71a,71bの厚さ寸法は全てt1に設定されている。そして、固定用フランジ71a,71bの厚さ寸法t1は、流路700が形成された本体部70の厚さ寸法t2よりも小さく設定されている。そのため、ボルト11およびナット12により対向する一対の固定用フランジ71b同士を連結し、ボルト11の締め付けトルクを増加させると、本体部70と比べて曲げ剛性が相対的に低い固定用フランジ71a,71bが、矢印で示すように互いに近づくようにパワーモジュール100C側に弾性変形する(図7B参照)。ここでは、変形しやすさの指標として曲げ剛性を用いているが、断面二次モーメント、断面係数などを指標として用いても良い。
【0024】
放熱器7a,7bの本体部70は、固定用フランジ71a,71bの弾性変形による弾性力によってパワーモジュール100A~100Cに押圧される。このように、放熱器7a,7bとパワーモジュール100A~100Cとの間に面圧を与えることにより、パワーモジュール100A~100Cから放熱器7a,7bへの熱伝導効率が向上する。
【0025】
図7Bに示す固定状態では、ボルト固定されている部分における固定用フランジ71b同士の面間距離d2は、放熱器7a,7bの流路700が形成されている本体部70の面間距離d1よりも小さい(d2<d1)。固定用フランジ71aについても同様である。すなわち、図7Bに示す固定状態においては、本体部70側の根元領域713と固定用フランジ71bのボルト固定領域714との間に、変形した屈曲部712(破線で囲んだ部分)が生じることになる。そのため、放熱器7a,7bの流路700が形成されている本体部70の変形は抑制され、パワーモジュール100Cに対する面圧の均一性が得られる。
【0026】
また、図1に示すように、放熱器7a,7bの長手方向に配置されている複数の固定用フランジ71a,71bの内、長手方向両端に配置されている固定用フランジ71bの幅寸法W2を、それらの長手方向内側に配置されている固定用フランジ71aの幅寸法W1よりも小さく設定している。すなわち、固定用フランジ71bの曲げ剛性を固定用フランジ71aの曲げ剛性よりも小さく設定しているので、固定状態において、放熱器7a,7bの本体部70の長手方向における湾曲を防止することができる。
【0027】
例えば、図8A,8Bに示す放熱器17a,17bのように、長手方向に沿って設けられた複数の固定用フランジ171a,171bの幅寸法を全て同一値W2に設定した場合について考える。すなわち、固定用フランジ171a,171bの全てが、厚さ寸法はt1、幅寸法はW2に設定されている。この場合、Z方向に対向する一対の固定用フランジ171a,171b同士を連結固定したとき、固定用フランジ171a,171bの変形量が同一ならば、放熱器17aに及ぼされる固定用フランジ171aの弾性力F1と固定用フランジ171bの弾性力F2とは、F1=F2のように等しくなる。
【0028】
このように、放熱器17aの両端付近に作用する弾性力F2と、内側位置において作用する弾性力F1とが等しい場合には、放熱器17aは、図8Bに示すように上に凸に湾曲するように変形する。下側の放熱器17bに関しても同様であって下に凸に湾曲する。よって、放熱器17a,17bから各パワーモジュール100A~100Cにかかる面圧は、放熱器長手方向の両端では大きく中央に近づくほど小さくなり、長手方向における放熱性能が不均一となり、中央付近のパワーモジュールにおいて放熱性能の悪化が懸念される。
【0029】
一方、図1に示すように、両端の固定用フランジ71bの幅寸法W2を固定用フランジ71aの幅寸法W1よりも小さく設定することで、すなわち、固定用フランジ71aの曲げ剛性を固定用フランジ71bの曲げ剛性よりも大きくすることで、連結固定状態における固定用フランジ71a,71bの変形量が同じでも、固定用フランジ71aの弾性力F1よりも固定用フランジ71bの弾性力F2の方を小さくすることができる(F1>F2)。その結果、放熱器7a,7bの本体部70の長手方向の曲げ変形を抑制することができ、長手方向に配列された複数のパワーモジュール100A~100Cに対する面圧を均一にすることができる。
【0030】
もちろん、図8Aに示すようにW1=W2のような構成であっても、各固定用フランジ71a,71bを連結固定する際の変形量を同一に設定せず、変形による弾性力F1,F2がF1>F2となるように各ボルト11の締め付けトルクを管理することで、本体部70の長手方向の曲げ変形を抑制することは理論的には可能である。しかしながら、各ボルト11の締め付けトルクを管理しながらの組立作業は煩雑となり、作業性低下を招くことになる。一方、図1のようにW1>W2と設定し、全ての固定用フランジ71a,71bに関して連結固定後の間隔がd2(図7B参照)となるように寸法管理する方が、組立作業性に優れており管理もしやすい。
【0031】
上述のように、本実施の形態では、放熱器7a,7bの本体部70に固定用フランジ71a,71bを一体に形成し、固定用フランジ71a,71bを弾性変形させて放熱器7a,7bを固定する構成とした。それにより、従来のように板バネなどの押圧部材を追加で設けることなく、放熱器7a,7bをパワーモジュール100A~100Cに押圧して圧縮面圧を発生させることができる。そして、半導体装置1の部品点数の低減およびコスト低減を図ることができる。
【0032】
さらに、本実施の形態では、固定用フランジ71bの曲げ剛性が固定用フランジ71aの曲げ剛性よりも小さくなるように、幅寸法W1,W2をW1>W2のように設定する。その結果、放熱器長手方向に並べて配置された複数のパワーモジュール100A~100Cに対する面圧を均一にすることができ、放熱性能の向上を図ることができる。
【0033】
(変形例1)
図9は、上述した実施の形態の変形例1を示す図である。図7Bに示したように、連結固定状態における対向する固定用フランジ71a,71b同士の間隔は、全てd2に設定される。そこで、変形例1では間隔d2の管理がしやすいように、図9に示すようなスペーサ13をボルト固定部に設けるようにした。スペーサ13の形状は、断面形状が円環で、長さがd2の柱状体である。放熱器7aの固定用フランジ71a,71bと放熱器7bの固定用フランジ71a,71bとの間にスペーサ13を配置し、スペーサ13の貫通孔130にボルト11を挿通してナット12を締め付ける。そして、上下の固定用フランジ71a,71bが互いに近づくように変形して、それらの間にスペーサ13が挟持されるまでナット12を締め付けることで、連結固定が終了する。このようなスペーサ13を用いることで、上下の固定用フランジ71a,71b同士の間隔を正確な値d2に容易に設定することができる。
【0034】
(変形例2)
図10は、変形例2を示す図である。変形例2では、固定用フランジ71a,71bは、根元部分の幅寸法がW1,W2で、先端に近づくほど幅寸法が小さくなるテーパ形状に形成されている。変形例2においては、固定用フランジ71a,71bを根元部分の幅寸法がW1,W2(<W1)のテーパ形状とすることで、固定用フランジ71bの弾性力を固定用フランジ71aの弾性力より小さくでき、図8Bに示したような放熱器7a,7bの本体部70の湾曲変形を抑制することができる。
【0035】
そして、変形例2では、固定用フランジ71a,71bを、根元部分から先端部分にかけて幅が小さくなるテーパ形状とすることで、放熱器7a,7bの軽量化を図ることができる。また、固定用フランジ71a,71bをテーパ形状とすることで、端子111~115を半導体装置1の側方へ引き出すためのスペースをより大きくすることができ、端子接続作業が行い易くなる。
【0036】
(変形例3)
図11A,11Bは、変形例3における放熱器7aを示す図である。図11Aは放熱器7aの平面図である。図11Bは放熱器7aの側面図である。図示は省略するが、放熱器7bも放熱器7aと同様の形状を有しており、半導体装置1の放熱器7a,7b以外の構成は上述した実施の形態と同様である。上述した実施の形態や変形例2では、固定用フランジ71a,71bの幅寸法を異ならせることで、両端の固定用フランジ71bの変形による弾性力が、内側の固定用フランジ71aの変形による弾性力よりも小さくなるようにした。
【0037】
変形例3では、図11Aに示すように、固定用フランジ71a,71bの幅寸法は同一(W2)に設定し、図11Bに示すように厚さ寸法を異ならせることで、両端の固定用フランジ71bの曲げ剛性が固定用フランジ71aの曲げ剛性よりも小さくなるようにした。図11Bに示すように、固定用フランジ71bの厚さ寸法t1は固定用フランジ71aの厚さ寸法t3よりも小さく、同一変形量の場合には、固定用フランジ71aの弾性力よりも固定用フランジ71bの弾性力の方が小さくなる。
【0038】
なお、図11A,11Bに示す例では、固定用フランジ71bの厚さを、フランジ根元部分から先端部分まで同一の厚さ寸法t1としているが、これ以外に、図12A,12Bに示すような断面形状としても良い。図12A,12Bは、放熱器7aの固定用フランジ71bが設けられている部分の断面図である。
【0039】
図12Aに示す固定用フランジ71bは、固定用フランジ71a(厚さ寸法t3)と同一形状に形成されたフランジ部分の根元領域の一部を除く他の部分を、プレス加工等により厚さ寸法t1に加工したものである。固定用フランジ71bには、プレス加工等により段差715が形成されている。固定用フランジ71bを対向する固定用フランジ71bと連結固定したときには、厚さ寸法t1の薄肉部716が変形する。そのため、変形時には、図11Bに示す固定用フランジ71bの場合と同様の弾性力が生ずる。
【0040】
図12Bに示す固定用フランジ71bは、固定用フランジ71a(厚さ寸法t3)と同一形状に形成されたフランジ部分の長さ方向の中間部分を、プレス加工等により厚さ寸法t1に加工したものである。固定用フランジ71bには、プレス加工等により厚さ寸法t1の凹部717が形成されている。固定用フランジ71bを対向する固定用フランジ71bと連結固定したときには凹部717が変形し、図11Bに示す固定用フランジ71bの場合と同様の弾性力を生ずる。
【0041】
(変形例4)
図13A,13Bは、変形例4を示す図である。図13Aは半導体装置1の平面図である。図13Bは半導体装置1を側方から見た図であり、放熱器7aについては断面図とした。なお、パワーモジュール100A~100Cの端子111~115の図示は省略した。変形例4の場合も、変形例3(図11B参照)の場合と同様に、固定用フランジ71a,71bの幅寸法を全て同じ値W2に設定し、固定用フランジ71aの厚さ寸法をt3、固定用フランジ71bの厚さ寸法をt1(<t3)に設定する。
【0042】
図13A,13Bに示すように、放熱器7a,7bのパワーモジュール100A~100Cに対向する側の面には、Y方向(放熱器7a,7bの短手方向)に延在する凸部718が形成されている。凸部718の高さはhであり、幅寸法は固定用フランジ71a,71bと同じW2である。パワーモジュール100A~100Cは、凸部718と隣接する凸部718との間に配置されている。
【0043】
図13A,13Bに示す放熱器7a,7bの場合、固定用フランジ71a,71bの放熱器長手方向(X方向)の位置は凸部718と同じ位置に設定されており、固定用フランジ71a,71bおよび凸部718のパワーモジュール側の面は、同一面上にある。すなわち、固定用フランジ71a,71bは、凸部718に連続するように形成されている。もちろん、上述した実施の形態および変形例1~3の放熱器7a,7bの本体部70に、凸部718を形成するようにしても良い。
【0044】
Y方向に延在する凸部718を放熱器7a,7bの本体部70に形成することにより、本体部70の短手方向(Y方向)に沿っての変形に対する曲げ剛性を高めることができ、固定用フランジ71a,71bの弾性力による本体部70の変形を抑制することができる。さらに、凸部718を用いて、パワーモジュール100A~100CのX方向の位置決めを行えるので、組立作業性の向上を図ることができる。
【0045】
なお、凸部718の長手方向の位置は、固定用フランジ71a,71bの位置と同一でなくても良い。また、凸部718を放熱器7a,7bの本体部70と一体に形成する代わりに、別部材を本体部70に接合して凸部718とする構成であっても良い。
【0046】
(変形例5)
図14は、変形例5を示す図である。上述した実施の形態や変形例では、固定用フランジ71a,71bの幅寸法や厚さ寸法を異ならせて、固定用フランジ71bの曲げ剛性が、固定用フランジ71aの曲げ剛性より小さくなるようにした。変形例5では、図14に示すように、固定用フランジ71bの長さ寸法L2を固定用フランジ71aの長さ寸法L1よりも大きく設定することで、固定用フランジ71bの曲げ剛性を固定用フランジ71aの曲げ剛性より小さくするようにした。
【0047】
(変形例6)
図15は、変形例6を示す図である。上述した実施の形態や変形例では、放熱器7a,7bの本体部70には、冷却液が流れる流路700が複数設けられていた。一方、変形例6では、図15に示すように、放熱器7a,7bは、本体部70の表面側(パワーモジュール対向面とは反対側の面)に放熱フィン720を有する構成とした。その他の構成は、上述した実施の形態の図6に示した放熱器7a,7bと同様である。図15に示す例では、放熱フィン720はピンフィンで構成されているが、ストレートフィンやコルゲートフィンであっても良い。
【0048】
放熱器7a,7bに用いられる部材には熱伝導性の良い部材が用いられ、例えば、Cu、Cu合金、Cu-C、Cu-CuOなどの複合材、あるいはAl、Al合金、AlSiC、Al-Cなどの複合材などが用いられる。このような放熱フィン720を備える放熱器7a,7bの場合も、パワーモジュール100A~100Cに対向する本体部70の曲げ剛性が固定用フランジ71a,71bの部分の曲げ剛性よりも大きくなるように、固定用フランジ71a,71bの厚さ寸法t1は本体部70の板厚t2よりも大きく設定される。
【0049】
(変形例7)
図16は、変形例7を示す図である。上述した実施の形態や変形例では、パワーモジュール100A~100Cは表裏両面に放熱面300が設けられており、パワーモジュール100A~100Cの表裏両面に放熱器7a,7bが設けられていた。一方、変形例7の半導体装置1は、パワーモジュールの片面側のみに放熱器を備える片面冷却構造の半導体装置である。
【0050】
図16に示す半導体装置1に設けられているパワーモジュール200では、パワー半導体素子210の裏面側電極が接合材2により導体3と接合されている。導体3の放熱面300には、熱伝導性の絶縁層4が設けられている。絶縁層4の裏面側は封止樹脂10から露出しており、その露出した面には熱伝導層5が設けられている。放熱器7は、熱伝導層5を介してパワーモジュール200の裏面側に設けられている。放熱器7の固定用フランジ71a,71bは、パワーモジュール200の表面側に設けられたプレート230に、ボルト11およびナット12により固定される。
【0051】
変形例7の場合も、上述した実施の形態や変形例の場合と同様に、放熱器7の長手方向の両端に設けられた固定用フランジ71bの曲げ剛性は、長手方向内側に設けられた固定用フランジ71aの曲げ剛性よりも小さく設定されている。すなわち、固定状態における固定用フランジ71bの弾性力は固定用フランジ71aの弾性力よりも小さいので、図8Bに示したような放熱器7の変形を防止することができる。
【0052】
上述した実施の形態や変形例では、封止樹脂10が絶縁層4を含み、絶縁層4の表面以外が封止された例を示したが、導体3a~3cや導体3までの構成が封止樹脂10に封止されていて、封止樹脂10から露出している放熱面300を絶縁層4が覆っている構造であっても良い。
【0053】
また、上述した実施の形態および変形例では、パワーモジュールにパワー半導体素子が複数設けられている場合を例に説明したが、パワー半導体素子を一つだけ有するパワーモジュールを備える半導体装置に対しても本発明を同様に適用することができる。
【0054】
以上説明した本発明の実施の形態および変形例によれば、以下の作用効果を奏する。
【0055】
(C1)図1,6等に示すように、半導体装置1は、パワー半導体素子121Lおよびダイオード122Lを内蔵すると共に放熱面300を有する複数のパワーモジュール100A~100Cと、一列に配列された複数のパワーモジュール100A~100Cの放熱面300に熱的に接触する放熱器7a,7bと、放熱器7a,7bを放熱面300に押圧するように固定する固定部材としてのボルト11およびナット12と、を備え、放熱器7a,7bは、パワーモジュール100A~100Cの放熱面300に押圧される本体部70と、本体部70と一体に複数のパワーモジュール100A~100Cの配列の方向に沿って複数形成され、曲げ剛性が本体部70よりも小さな片持ち梁形状の固定用フランジ71a,71bと、を有し、ボルト11およびナット12は、固定用フランジ71a,71bを弾性変形させて固定用フランジ71a,71bの弾性力により本体部70をパワーモジュール100A~100Cの放熱面300に押圧させるように、放熱器7a,7bを固定する。
【0056】
放熱器7a,7bの本体部70に固定用フランジ71a,71bを形成し、その固定用フランジ71a,71bを弾性変形させたときの弾性力により本体部70をパワーモジュール100A~100Cの放熱面300に押圧させるようにしたので、従来のように、バネ板等の付勢部材を別に設けることなく、放熱器7a,7bの本体部70をパワーモジュールに押圧させることができる。その結果、半導体装置の部品点数の低減、およびコスト低減を図ることができる。
【0057】
(C2)上記(C1)において、図7A等に示すように、固定用フランジ71a,71bの厚さ寸法t1を、本体部70の厚さ寸法t2よりも小さく設定することで、固定用フランジ71a,71bの曲げ剛性を本体部70の曲げ剛性よりも小さく設定する。
【0058】
(C3)上記(C1)において、図10等に示すように、固定用フランジ71a,71bの幅寸法W1,W2は、片持ち梁形状の先端に近づくほど小さな値に設定されている。その結果、パワーモジュール100A~100Cに設けられた端子111~115を半導体装置1の側方へ引き出すためのスペースをより大きくすることができ、端子接続作業が行い易くなる。
【0059】
(C4)上記(C1)において、図7B等に示すように、固定部材であるボルト11およびナット12により固定された放熱器7a,7bの固定用フランジ71a,71bは、前記片持ち梁形状の根元領域713とボルト11による固定領域714との間に弾性変形による屈曲部712を有する。固定用フランジ71a,71bの曲げ剛性は本体部70の曲げ剛性よりも小さいので、ボルト固定されると固定用フランジ71a,71bが弾性変形して、屈曲部712が生じる。この屈曲部712の弾性力によって本体部70がパワーモジュール方向に押圧される。
【0060】
(C5)上記(C4)において、図6,7A,7B等に示すように、放熱面300は、パワーモジュール100A~100Cの厚さ方向の表裏両面に設けられ、表面側の放熱面300に押圧される第1の放熱器7aと、裏面側の放熱面300に押圧される第2の放熱器7bとを備え、第1の放熱器7aに設けられた固定用フランジ71a,71bの固定領域714と、第2の放熱器7bに設けられた固定用フランジ71a,71bの固定領域714との面間距離d2は、第1の放熱器7aと第2の放熱器7bとの面間距離d1よりも小さく設定されている。そのため、固定状態においては、変形した固定用フランジ71a,71bの弾性力により、放熱器7a,7bがパワーモジュール100A~100Cの放熱面300の方向に押圧される。
【0061】
(C6)上記(C4)において、図16等に示すように、パワーモジュール200の厚さ方向の一方の面に当接するように設けられ、ボルト11およびナット12により固定用フランジ71a,71bが連結固定されるプレート230をさらに備え、放熱器7が押圧される放熱面300は、パワーモジュール200の厚さ方向の他方の面に設けられ、放熱器7に設けられた固定用フランジ71a,71bの固定領域714とプレート230との面間距離d12は、放熱器7の本体部70とプレート230との面間距離d11よりも小さく設定されている。そのため、固定状態においては、変形した固定用フランジ71a,71bの弾性力により、放熱器7がパワーモジュール200の放熱面300の方向に押圧される。
【0062】
(C7)上記(C1)において、図1等に示すように、パワーモジュール100A~100Cの配列の方向(X方向)に沿って設けられた複数の固定用フランジ71a,71bの内、X方向の両端に配置された固定用フランジ71bの曲げ剛性は、その他の内側に配置された固定用フランジ71aの曲げ剛性よりも小さく設定されている。そのため、固定状態において、放熱器7a,7bの本体部70の長手方向における湾曲を防止することができる。
【0063】
(C8)上記(C7)において、図1等に示すように、複数の固定用フランジ71a,71bのそれぞれの厚さ寸法は等しく、かつ、パワーモジュール100A~100Cの配列の方向の両端に配置された固定用フランジ71bの幅寸法W2は、その他の内側に配置された固定用フランジ71aの幅寸法W1よりも小さく設定されている。このような構成とすることで、固定用フランジ71bの曲げ剛性は、固定用フランジ71aの曲げ剛性よりも小さく設定される。
【0064】
(C9)上記(C7)において、図11A,11B等に示すように、複数の固定用フランジ71a,71bのそれぞれの幅寸法W2は等しく、かつ、パワーモジュール100A~100Cの配列の方向の両端に配置された固定用フランジ71bの厚さ寸法t1は、その他の内側に配置された固定用フランジ71aの厚さ寸法t3よりも小さく設定されている。このような構成とすることで、固定用フランジ71bの曲げ剛性は、固定用フランジ71aの曲げ剛性よりも小さく設定される。
【0065】
(C10)上記(C7)において、図14等に示すように、複数の固定用フランジ71a,71bのそれぞれの幅寸法W2は等しく、かつ、パワーモジュール100A~100Cの配列の方向の両端に配置された固定用フランジ71bの長さ寸法L2は、その他の内側に配置された固定用フランジ71aの長さ寸法L1よりも大きく設定されている。このような構成とすることで、固定用フランジ71bの曲げ剛性は、固定用フランジ71aの曲げ剛性よりも小さく設定される。
【0066】
(C11)上記(C7)において、図12A,12B等に示すように、パワーモジュール100A~100Cの配列の方向の両端に配置された固定用フランジ71bは、片持ち梁形状の根元領域713とボルト11およびナット12による固定領域714との間に、厚さ寸法が根元領域713よりも小さな薄肉部716や凹部717を有する。そのため、固定用フランジ71bはこれらの薄肉部716や凹部717の部分で屈曲し、厚さ寸法t3の固定用フランジ71aよりも曲げ剛性が小さい。
【0067】
(C12)上記(C9)において、図13A,13B等に示すように、本体部70は、パワーモジュール100A~100C側の面のパワーモジュール100A~100Cが対向しない領域に、配列の方向(X方向)に対して直交する方向(Y方向)に延在する凸部718を有し、固定用フランジ71a,71bは凸部718に連続するように形成されている。Y方向に延在する凸部718を本体部70に設けたことにより、本体部70のY方向に沿った曲げ剛性が向上する。また、凸部718を、パワーモジュール100A,100Cを配置する際の位置決め部として用いることができ、組立作業性の向上を図ることができる。
【0068】
(C13)上記(C1)において、図9等に示すように、ボルト11およびナット12による固定用フランジ71a,71bの変形量を所定値d2に規制するスペーサ13をさらに備える。スペーサ13を用いることで、上下の固定用フランジ71a,71b同士の間隔を正確な値d2に容易に設定することができ、作業性向上を図ることができる。
【0069】
以上説明した各実施の形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、上述した実施の形態および変形例を組み合わせても良い。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1…半導体装置、3,3a~3d…導体、7,7a,7b,17a,17b…放熱器、10…封止樹脂、11…ボルト、12…ナット、13…スペーサ、70…本体部、71a,71b,171a,171b…固定用フランジ、100,100A~100C,200…パワーモジュール、121U,121L,210…パワー半導体素子、122U,122L…ダイオード、230…プレート、300…放熱面、712…屈曲部、713…根元領域、714…固定領域、715…段差、716…薄肉部、717…凹部、718…凸部、720…放熱フィン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16