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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068073
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】複合研削盤
(51)【国際特許分類】
   B24B 1/00 20060101AFI20240510BHJP
   B24B 5/04 20060101ALI20240510BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20240510BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20240510BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240510BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20240510BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240510BHJP
【FI】
B24B1/00 Z
B24B5/04
B24B55/02 A
B24B55/06
B23K26/21 Z
B23K26/34
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023080038
(22)【出願日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2022178029
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 史樹
(72)【発明者】
【氏名】澁川 大朗
【テーマコード(参考)】
3C043
3C047
3C049
4E168
【Fターム(参考)】
3C043AA03
3C043CC03
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD06
3C047FF01
3C047FF09
3C047FF17
3C047GG01
3C047HH01
3C047HH11
3C047HH18
3C049AA03
3C049AC01
3C049BA02
3C049BA07
3C049BB02
3C049BB06
3C049BB08
3C049BC02
3C049BC03
3C049CB03
3C049CB04
4E168BA35
4E168BA81
4E168BA86
4E168BA87
4E168CB07
4E168EA24
(57)【要約】
【課題】円筒状のへの付加加工および研削加工における加工装置への基材の取り付けおよび取り外しの負荷を軽減する。
【解決手段】この複合研削盤は、工作物を保持し回転させることができ、かつ前記工作物を前記回転の軸方向に沿って移動させることができる保持部と、ビームを照射するビーム照射部を備え、前記保持部に対して前記軸方向とは異なる方向に前記ビーム照射部を移動できる付加製造部であって、前記保持部に保持された前記工作物の表面に対して材料を供給しつつ、前記ビームにより前記材料を溶融させることによって、前記表面に前記材料を付着させる付加製造部と、砥石を備え前記砥石を回転させる研削部であって、前記保持部に対して前記軸方向とは異なる方向に前記砥石を移動できる研削部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合研削盤であって、
工作物を保持し回転させることができ、かつ前記工作物を前記回転の軸方向に沿って移動させることができる保持部と、
ビームを照射するビーム照射部を備え、前記保持部に対して前記軸方向とは異なる方向に前記ビーム照射部を移動できる付加製造部であって、前記保持部に保持された前記工作物の表面に対して材料を供給しつつ、前記ビームにより前記材料を溶融させることによって、前記表面に前記材料を付着させる付加製造部と、
砥石を備え前記砥石を回転させる研削部であって、前記保持部に対して前記軸方向とは異なる方向に前記砥石を移動できる研削部と、を備える、複合研削盤。
【請求項2】
請求項1に記載の複合研削盤であって、
前記軸方向は、水平方向であり、
前記保持部は、前記表面に前記材料を付着させる処理において、前記工作物の前記表面の各部が、前記砥石に最も接近した後に上に移動するように、前記工作物を回転させ、
前記付加製造部は、前記表面に前記材料を付着させる処理において、前記回転の軸に対して、前記砥石とは逆の側に位置する部位に前記ビームを照射するように構成されている、複合研削盤。
【請求項3】
請求項1に記載の複合研削盤であって、
前記研削部は、前記砥石を支持する砥石支持部であって、前記砥石として、それぞれ円板状の外形を有し、互いに異なる厚みを有する複数の砥石を交換可能に支持する砥石支持部を備え、
前記付加製造部は、前記軸方向について、前記砥石支持部が前記円板状の砥石を取り付けられる面と同じ位置に、前記ビーム照射部により前記ビームを照射することができる、複合研削盤。
【請求項4】
請求項1記載の複合研削盤であって、さらに、
前記保持部に保持された前記工作物と前記砥石とが接触する部位にクーラントを供給するクーラント供給部と、
前記ビーム照射部を覆うことができる保護カバーであって、前記ビーム照射部を通過させるための開口と、前記開口を開閉可能な蓋部と、を有する保護カバーと、を備え、
前記付加製造部は、前記保持部に対する前記ビーム照射部の前記移動により、前記工作物に前記表面に前記材料を付着させるときの作業位置と、前記保護カバー内の退避位置と、に前記ビーム照射部を配することができ、
前記保護カバーは、前記回転の軸よりも上方であって、前記軸方向について、前記砥石が存在しうる範囲の外に配されている、複合研削盤。
【請求項5】
請求項4記載の複合研削盤であって、
前記保護カバーは、前記保護カバー内の空間の圧力を高めることができる加圧部を備える、複合研削盤。
【請求項6】
請求項4記載の複合研削盤であって、
前記軸方向は、水平方向であり、
前記研削部は、前記保持部に対する前記砥石の移動として、水平方向であって前記軸方向に垂直な方向に前記砥石を移動させ、
前記付加製造部は、
前記ビーム照射部を鉛直方向に移動させることができる昇降部と、
前記ビーム照射部および前記昇降部を支持し、前記ビーム照射部および前記昇降部を前記軸方向に沿って移動させることができる梁部と、を備え、
前記保持部に対する前記ビーム照射部の移動として、前記昇降部および前記梁部により前記ビーム照射部を移動させて、前記作業位置と前記退避位置とに前記ビーム照射部を配する、複合研削盤。
【請求項7】
請求項4に記載の複合研削盤であって、
前記保護カバーは、
前記軸方向について、前記保持部によって保持された工作物が存在しうる範囲と重なる範囲に設けられており、
鉛直方向について、前記保持部によって保持された工作物および前記保持部が存在しうる範囲の外に配されている、複合研削盤。
【請求項8】
請求項4から6のいずれか1項に記載の複合研削盤であって、
前記複合研削盤を制御する制御部であって、
前記研削部による前記工作物の研削の前に、前記付加製造部に、前記保護カバー内に前記ビーム照射部を移動させ、
前記付加製造部による前記表面への前記材料の付着の前に、前記研削部に、前記砥石による前記工作物の研削が行われる位置よりも前記軸から離れた位置に、前記砥石を移動させる、制御部を、さらに備える、複合研削盤。
【請求項9】
請求項8に記載の複合研削盤であって、さらに、
前記保持部と、前記保持部に保持されている工作物と、前記付加製造部と、前記研削部と、前記クーラント供給部と、前記保護カバーと、を収容し、開閉可能な粉塵カバーと、
前記粉塵カバー内における前記付加製造部による前記表面への前記材料の付着において生じた粉塵を吸引する第1吸引部と、
前記粉塵カバー内における前記研削部による前記工作物の研削において生じたクーラントのミストを吸引する第2吸引部と、を備え、
前記制御部は、
前記付加製造部による前記表面への前記材料の付着において、第1吸引部に、前記粉塵を吸引させ、
前記研削部による前記工作物の研削において、前記第2吸引部に、前記ミストを吸引させる、複合研削盤。
【請求項10】
請求項1記載の複合研削盤であって、さらに、
前記保持部に保持された前記工作物と前記砥石とが接触する部位にクーラントを供給するクーラント供給部と、
前記ビーム照射部を覆うことができる保護カバーであって、前記ビーム照射部を通過させるための開口と、前記開口を開閉可能な蓋部と、を有する保護カバーと、を備え、
前記付加製造部は、前記保持部に対する前記ビーム照射部の前記移動により、前記工作物の前記表面に前記材料を付着させるときの作業位置と、前記保護カバー内の退避位置と、に前記ビーム照射部を配することができ、
前記軸方向は、水平方向であり、
前記研削部は、前記保持部に対する前記砥石の移動として、水平方向であって、前記軸方向に垂直な方向に、前記砥石を移動させ、
前記保護カバーは、
前記保持部に対する前記砥石の移動方向、および鉛直方向について、前記砥石が存在しうる範囲の外に配されており、
前記軸方向と鉛直方向とに垂直な方向、ならびに鉛直方向について、前記保持部によって保持された工作物および前記保持部が存在しうる範囲の外であって、前記回転の軸よりも上方に配されている、複合研削盤。
【請求項11】
請求項10記載の複合研削盤であって、
前記付加製造部は、
前記ビーム照射部を鉛直方向に移動させることができる昇降部と、
前記ビーム照射部および前記昇降部を支持し、前記ビーム照射部および前記昇降部を前記軸方向と交わる方向に沿って移動させることができる梁部と、を備え、
前記保持部に対する前記ビーム照射部の移動として、前記昇降部および前記梁部により前記ビーム照射部を移動させて、前記作業位置と前記退避位置とに前記ビーム照射部を配する、複合研削盤。
【請求項12】
請求項1記載の複合研削盤であって、さらに、
前記保持部に保持された前記工作物と前記砥石とが接触する部位にクーラントを供給するクーラント供給部と、
前記ビーム照射部を覆うことができる保護カバーであって、前記ビーム照射部を通過させるための開口と、前記開口を開閉可能な蓋部と、を有する保護カバーと、を備え、
前記付加製造部は、前記保持部に対する前記ビーム照射部の前記移動により、前記工作物の前記表面に前記材料を付着させるときの作業位置と、前記保護カバー内の退避位置と、に前記ビーム照射部を配することができ、
前記軸方向は、水平方向であり、
前記研削部は、前記保持部に対する前記砥石の移動として、水平方向であって、前記軸方向に垂直な方向に、前記砥石を移動させ、
前記保護カバーは、
前記軸方向について、前記研削部とは異なる位置に設けられており、
前記軸方向と鉛直方向とに垂直な方向、ならびに鉛直方向について、前記保持部によって保持された工作物および前記保持部が存在しうる範囲の外であって、前記回転の軸よりも上方に配されている、複合研削盤。
【請求項13】
請求項12記載の複合研削盤であって、
前記付加製造部は、
前記ビーム照射部を鉛直方向に移動させることができる昇降部と、
前記ビーム照射部および前記昇降部を支持し、前記ビーム照射部および前記昇降部を前記軸方向に沿って移動させることができる第1梁部と、
前記ビーム照射部と前記昇降部と前記第1梁部とを支持し、前記ビーム照射部と前記昇降部と前記第1梁部とを前記軸方向に垂直な方向に沿って移動させることができる第2梁部と、を備え、
前記保持部に対する前記ビーム照射部の移動として、前記昇降部と前記第1梁部と前記第2梁部とにより前記ビーム照射部を移動させて、前記作業位置と前記退避位置とに前記ビーム照射部を配する、複合研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の技術においては、円筒状の基材にレーザー・メタル・デポジション(LMD;Laser Metal Deposition)による肉盛り加工が行われ、形成された肉盛り部が研削される。その結果、円筒状の基材の表面に、タングステンカーバイトやクロムから構成される硬質金属皮膜が形成される。
【0003】
特許文献1の技術においては、以下の処理が順に実行される。LMDを実行する装置に円筒状の基材が取り付けられる。円筒状の基材が回転されつつ、基材に対してLMDが実行される。LMDを実行する装置から円筒状の基材が取り外される。研削盤に円筒状の基材が取り付けられる。研削盤において、円筒状の基材が回転されつつ、基材の肉盛り部の表面に対して研削が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-110239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術においては、LMDを実行する装置と、研削盤とが、円筒状の基材への肉盛り加工と、円筒状の機材の研削と、に必要な装置を備えるため、装置全体として大きなスペースを必要とする。また、LMDを実行する装置への円筒状の基材の取り付けおよび取り外し、ならびに研削盤への円筒状の基材の取り付けおよび取り外しが必要となるため、作業者の作業が繁雑である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、複合研削盤が提供される。この複合研削盤は、工作物を保持し回転させることができ、かつ前記工作物を前記回転の軸方向に沿って移動させることができる保持部と、ビームを照射するビーム照射部を備え、前記保持部に対して前記軸方向とは異なる方向に前記ビーム照射部を移動できる付加製造部であって、前記保持部に保持された前記工作物の表面に対して材料を供給しつつ、前記ビームにより前記材料を溶融させることによって、前記表面に前記材料を付着させる付加製造部と、砥石を備え前記砥石を回転させる研削部であって、前記保持部に対して前記軸方向とは異なる方向に前記砥石を移動できる研削部と、を備える。
このような態様においては、保持部と付加製造部とにより、工作物の表面への材料の付着を行うことができる。保持部と研削部とにより、工作物の研削を行うことができる。このため、工作物の表面への材料の付着のための専用の保持部と、工作物の研削のための専用の保持部と、をそれぞれ備える態様に比べて、上記態様においては、複合研削盤が占めるスペースを小さくすることができる。また、工作物の取り外しおよび再度の取り付けを行うことなく、工作物の表面への材料の層の形成と、その層の研削と、を行うことができる。
(2)上記形態の複合研削盤において、前記軸方向は、水平方向であり、前記保持部は、前記表面に前記材料を付着させる処理において、前記工作物の前記表面の各部が、前記砥石に最も接近した後に上に移動するように、前記工作物を回転させ、前記付加製造部は、前記表面に前記材料を付着させる処理において、前記回転の軸に対して、前記砥石とは逆の側に位置する部位に前記ビームを照射するように構成されている、態様とすることができる。 このような態様とすれば、表面に前記材料を付着させる際に生じたスパッタが、研削部の砥石に付着する可能性を低減できる。
(3)上記形態の複合研削盤において、前記研削部は、前記砥石を支持する砥石支持部であって、前記砥石として、それぞれ円板状の外形を有し、互いに異なる厚みを有する複数の砥石を交換可能に支持する砥石支持部を備え、前記付加製造部は、前記軸方向について、前記砥石支持部が前記円板状の砥石を取り付けられる面と同じ位置に、前記ビーム照射部により前記ビームを照射することができる、態様とすることができる。
このような態様においては、軸方向について、砥石支持部が円板状の砥石を取り付けられる面の位置には、砥石支持部に砥石が取り付けられている限り、砥石支持部に取り付けられる砥石の厚みによらず、砥石が存在する。このため、研削部は、保持部に取りつけられた工作物のうち、軸方向について、砥石支持部が円板状の砥石を取り付けられる面の位置にある部位は、研削可能である。上記態様においては、付加製造部は、軸方向について、砥石支持部が円板状の砥石を取り付けられる面と同じ位置に、ビーム照射部により前記ビームを照射することができる。このため、付加製造部は、保持部に取りつけられた工作物のうち研削可能な範囲と同じ範囲について、表面に前記材料を付着させることができる。
(4)上記形態の複合研削盤において、さらに、前記保持部に保持された前記工作物と前記砥石とが接触する部位にクーラントを供給するクーラント供給部と、前記ビーム照射部を覆うことができる保護カバーであって、前記ビーム照射部を通過させるための開口と、前記開口を開閉可能な蓋部と、を有する保護カバーと、を備え、前記付加製造部は、前記保持部に対する前記ビーム照射部の前記移動により、前記工作物に前記表面に前記材料を付着させるときの作業位置と、前記保護カバー内の退避位置と、に前記ビーム照射部を配することができ、前記保護カバーは、前記回転の軸よりも上方であって、前記軸方向について、前記砥石が存在しうる範囲の外に配されている、態様とすることができる。
このような態様とすれば、研削部と付加製造部とを備える複合研削盤において、回転する砥石と回転する工作物とによって飛散されるクーラントがビーム照射部に付着し、付加製造部による表面への材料の付着の性能が低下する可能性を、低減できる。また、保護カバーが、軸方向について砥石が存在しうる範囲の外に配されているため、保護カバーが砥石による工作物の研削の邪魔になる可能性が低い。保護カバーが回転の軸よりも上方にあるため、研削において生じ得るクーラントのミストが保護カバー内に進入しにくい。
(5)上記形態の複合研削盤において、前記保護カバーは、前記保護カバー内の空間の圧力を高めることができる加圧部を備える、態様とすることができる。
このような態様とすれば、保護カバーの周囲を浮遊するクーラントのミストが存在する場合にも、そのミストがカバー内の空間内に侵入して、ビーム照射部に付着する可能性を低減できる。
(6)上記形態の複合研削盤において、前記軸方向は、水平方向であり、前記研削部は、前記保持部に対する前記砥石の移動として、水平方向であって前記軸方向に垂直な方向に前記砥石を移動させ、前記付加製造部は、前記ビーム照射部を鉛直方向に移動させることができる昇降部と、前記ビーム照射部および前記昇降部を支持し、前記ビーム照射部および前記昇降部を前記軸方向に沿って移動させることができる梁部と、を備え、
前記保持部に対する前記ビーム照射部の移動として、前記昇降部および前記梁部により前記ビーム照射部を移動させて、前記作業位置と前記退避位置とに前記ビーム照射部を配する、態様とすることができる。
このような態様においては、研削部は、保持部に保持された工作物に対して、水平方向から接近する。一方、付加製造部のビーム照射部は、保持部に保持された工作物に対して、水平方向であって研削部の接近方向とは垂直な方向から接近する。このため、研削部とビーム照射部とが干渉しにくい。
(7)上記形態の複合研削盤において、前記保護カバーは、前記軸方向について、前記保持部によって保持された工作物が存在しうる範囲と重なる範囲に設けられており、鉛直方向について、前記保持部によって保持された工作物および前記保持部が存在しうる範囲の外に配されている、態様とすることができる。
このような態様とすれば、前記軸方向について、前記保持部によって保持された工作物が存在しうる範囲の外に、保護カバーが配される態様に比べて、軸方向について、複合研削盤の寸法を小さくすることができる。
(8)上記形態の複合研削盤において、前記複合研削盤を制御する制御部であって、前記研削部による前記工作物の研削の前に、前記付加製造部に、前記保護カバー内に前記ビーム照射部を移動させ、前記付加製造部による前記表面への前記材料の付着の前に、前記研削部に、前記砥石による前記工作物の研削が行われる位置よりも前記軸から離れた位置に、前記砥石を移動させる、制御部を、さらに備える、態様とすることができる。
このような態様とすれば、研削部と付加製造部とを備える複合研削盤において、制御部によるビーム照射部の自動的な移動によって、研削時に飛散されるクーラントがビーム照射部に付着する可能性を低減できる。また、制御部による砥石の自動的な移動によって、付加製造部による工作物の表面への材料の付着を研削部が阻害する可能性を低減できる。
(9)上記形態の複合研削盤において、さらに、前記保持部と、前記保持部に保持されている工作物と、前記付加製造部と、前記研削部と、前記クーラント供給部と、前記保護カバーと、を収容し、開閉可能な粉塵カバーと、前記粉塵カバー内における前記付加製造部による前記表面への前記材料の付着において生じた粉塵を吸引する第1吸引部と、前記粉塵カバー内における前記研削部による前記工作物の研削において生じたクーラントのミストを吸引する第2吸引部と、を備え、前記制御部は、前記付加製造部による前記表面への前記材料の付着において、第1吸引部に、前記粉塵を吸引させ、前記研削部による前記工作物の研削において、前記第2吸引部に、前記ミストを吸引させる、態様とすることができる。
このような態様においては、粉塵カバーが保護カバーを収容している。このため、粉塵カバーの外に保護カバーを備える態様に比べて、工作物の表面への材料の付着の後、工作物の研削の前に、ビーム照射部を保護カバー内に移動させるのに要する時間を、短くすることができる。
(10)上記形態の複合研削盤において、さらに、前記保持部に保持された前記工作物と前記砥石とが接触する部位にクーラントを供給するクーラント供給部と、前記ビーム照射部を覆うことができる保護カバーであって、前記ビーム照射部を通過させるための開口と、前記開口を開閉可能な蓋部と、を有する保護カバーと、を備え、前記付加製造部は、前記保持部に対する前記ビーム照射部の前記移動により、前記工作物の前記表面に前記材料を付着させるときの作業位置と、前記保護カバー内の退避位置と、に前記ビーム照射部を配することができ、前記軸方向は、水平方向であり、前記研削部は、前記保持部に対する前記砥石の移動として、水平方向であって、前記軸方向に垂直な方向に、前記砥石を移動させ、前記保護カバーは、前記保持部に対する前記砥石の移動方向、および鉛直方向について、前記砥石が存在しうる範囲の外に配されており、前記軸方向と鉛直方向とに垂直な方向、ならびに鉛直方向について、前記保持部によって保持された工作物および前記保持部が存在しうる範囲の外であって、前記回転の軸よりも上方に配されている、態様とすることができる。
このような態様とすれば、研削部と付加製造部とを備える複合研削盤において、回転する砥石と回転する工作物とによって飛散されるクーラントがビーム照射部に付着し、付加製造部による表面への材料の付着の性能が低下する可能性を、低減できる。また、保護カバーが、前記保持部に対する前記砥石の移動方向、および鉛直方向について砥石が存在しうる範囲の外に配されているため、保護カバーが、研削部の砥石を交換する作業の邪魔になる可能性が、低い。保護カバーが、前記軸方向と鉛直方向とに垂直な方向、ならびに鉛直方向について、前記保持部によって保持された工作物および前記保持部が存在しうる範囲の外にあるため、保護カバーが、前記保持部に対する工作物の取り付けおよび取り外しの作業の邪魔になる可能性が低い。
(11)上記形態の複合研削盤において、前記付加製造部は、前記ビーム照射部を鉛直方向に移動させることができる昇降部と、前記ビーム照射部および前記昇降部を支持し、前記ビーム照射部および前記昇降部を前記軸方向と交わる方向に沿って移動させることができる梁部と、を備え、前記保持部に対する前記ビーム照射部の移動として、前記昇降部および前記梁部により前記ビーム照射部を移動させて、前記作業位置と前記退避位置とに前記ビーム照射部を配する、態様とすることができる。
(12)上記形態の複合研削盤において、さらに、前記保持部に保持された前記工作物と前記砥石とが接触する部位にクーラントを供給するクーラント供給部と、前記ビーム照射部を覆うことができる保護カバーであって、前記ビーム照射部を通過させるための開口と、前記開口を開閉可能な蓋部と、を有する保護カバーと、を備え、前記付加製造部は、前記保持部に対する前記ビーム照射部の前記移動により、前記工作物の前記表面に前記材料を付着させるときの作業位置と、前記保護カバー内の退避位置と、に前記ビーム照射部を配することができ、前記軸方向は、水平方向であり、前記研削部は、前記保持部に対する前記砥石の移動として、水平方向であって、前記軸方向に垂直な方向に、前記砥石を移動させ、前記保護カバーは、前記軸方向について、前記研削部とは異なる位置に設けられており、前記軸方向と鉛直方向とに垂直な方向、ならびに鉛直方向について、前記保持部によって保持された工作物および前記保持部が存在しうる範囲の外であって、前記回転の軸よりも上方に配されている、態様とすることができる。
このような態様とすれば、研削部と付加製造部とを備える複合研削盤において、回転する砥石と回転する工作物とによって飛散されるクーラントがビーム照射部に付着し、付加製造部による表面への材料の付着の性能が低下する可能性を、低減できる。また、保護カバーが、前記軸方向について、前記研削部とは異なる位置に設けられているため、保護カバーが、研削部の砥石を交換する作業の邪魔になる可能性が、低い。保護カバーが、前記軸方向と鉛直方向とに垂直な方向、ならびに鉛直方向について、前記保持部によって保持された工作物および前記保持部が存在しうる範囲の外にあるため、保護カバーが、前記保持部に対する工作物の取り付けおよび取り外しの作業の邪魔になる可能性が低い。
(13)上記形態の複合研削盤において、前記付加製造部は、前記ビーム照射部を鉛直方向に移動させることができる昇降部と、前記ビーム照射部および前記昇降部を支持し、前記ビーム照射部および前記昇降部を前記軸方向に沿って移動させることができる第1梁部と、前記ビーム照射部と前記昇降部と前記第1梁部とを支持し、前記ビーム照射部と前記昇降部と前記第1梁部とを前記軸方向に垂直な方向に沿って移動させることができる第2梁部と、を備え、前記保持部に対する前記ビーム照射部の移動として、前記昇降部と前記第1梁部と前記第2梁部とにより前記ビーム照射部を移動させて、前記作業位置と前記退避位置とに前記ビーム照射部を配する、態様とすることができる。
本開示は、複合研削盤以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、加工装置、加工装置の製造方法や加工装置の制御方法、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の複合研削盤1を示す説明図である。
図2】付加製造部300の一部の構成を詳細に示す説明図である。
図3】複合研削盤1の概略構成を示す正面図である。
図4】複合研削盤1の概略構成を示す平面図である。
図5】複合研削盤1の概略構成を示す側面図である。
図6】複合研削盤1の概略構成を示す正面図である。
図7】複合研削盤1の概略構成を示す平面図である。
図8】複合研削盤1における工作物WPの加工の処理を示すフロー図である。
図9】工作物WPの加工の従来の処理を示すフロー図である。
図10】第2実施形態の複合研削盤2の斜視図である。
図11】第2実施形態の複合研削盤2を示す説明図である。
図12】複合研削盤3の斜視図である。
図13】複合研削盤3の正面図である。
図14】複合研削盤3の平面図である。
図15】複合研削盤3の側面図である。
図16】複合研削盤3の斜視図である。
図17】複合研削盤3の平面図である。
図18】複合研削盤3の側面図である。
図19】複合研削盤4の斜視図である。
図20】複合研削盤4の正面図である。
図21】複合研削盤4の平面図である。
図22】複合研削盤4の側面図である。
図23】複合研削盤4の斜視図である。
図24】複合研削盤4の正面図である。
図25】複合研削盤4の平面図である。
図26】複合研削盤4の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.複合研削盤の構成および機能:
図1は、第1実施形態の複合研削盤1を示す説明図である。図1は、各部の構成の寸法、形状および配置を正確に表すものではない。また、技術の理解を容易にするため、図1においては、複合研削盤1が備える一部の構成が省略されている。
【0010】
複合研削盤1は、円柱状の工作物WPに対して、付加製造(Additive Manufacturing;AM)と、除去加工である研削と、を行うことができる。複合研削盤1は、保持部100と、研削部200と、付加製造部300と、クーラント供給部400と、防護部500と、ベッド800と、制御部900と、を備える。
【0011】
保持部100は、工作物WPを保持し回転させることができる。工作物WPの回転の軸ARの方向は、水平方向である。保持部100による工作物WPの回転の軸ARの方向を、本明細書において、「X軸方向」と呼ぶ。図1において、主軸台13の回転軸ARを、X軸方向に平行な一点鎖線で示す(図1の下段右部参照)。保持部100による工作物WPの回転を矢印Rndで示す(図1の下段中央部参照)。
【0012】
保持部100は、工作物WPを回転の軸ARの方向、すなわち、X軸方向に沿って移動させることができる。図1において、工作物WPの移動を矢印Ax1で示す(図1の下段右部参照)。保持部100は、テーブル12と、主軸台13と、心押台14と、を備える。
【0013】
テーブル12は、ベッド800上に設けられている。テーブル12は、ベッド800に対して水平方向に移動可能に設けられている。テーブル12が移動する方向は、具体的には、X軸方向である。テーブル12が移動することにより、保持部100が保持する工作物WPが、X軸方向に移動される。
【0014】
主軸台13は、テーブル12上に設けられている。主軸台13は、チャック15を備える。チャック15は、円柱状の工作物WPの一端を保持する。主軸台13は、チャック15を回転させることができる。
【0015】
心押台14は、テーブル12上に設けられている。心押台14は、センタ16を備える。センタ16は、円柱状の工作物WPの他端を支持する。工作物WPは、主軸台13のチャック15と心押台14のセンタ16とによって両端を支持され、主軸台13によって、回転軸ARを中心として回転される。
【0016】
研削部200は、工作物WPの表面を研削する機能を奏する(図1の中段右部参照)。研削部200は、砥石台20と、砥石車21と、砥石駆動モータ22と、砥石軸23と、ベルト伝動機構24と、を備える。
【0017】
砥石台20は、ベッド800上に設けられている。砥石台20は、ベッド800に対して水平方向に移動可能に設けられている。砥石台20が移動する方向は、テーブル12が移動する方向に対して垂直である。すなわち、研削部200は、水平方向であってX軸方向に垂直な方向に砥石車21を移動させることができる。砥石台20が移動する方向を、本明細書において、「Z軸方向」と呼ぶ。図1において、研削部200の移動を矢印Az2で示す(図1の中段右部参照)。また、本明細書において、鉛直方向を「Y軸方向」と呼び、鉛直上方をY軸正方向とする。なお、図1は、複合研削盤1の各部の機能を説明するための図であり、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に沿って複合研削盤1の各部を示してはいない。
【0018】
砥石車21は、円板状の砥石である。砥石車21は、円板の中心軸と砥石軸23の中心軸とが一致するように、砥石軸23に接続されている。砥石車21は円板の外周面に、X軸方向と平行な円筒研削面21aを有する。
【0019】
砥石軸23は、砥石車21を支持する。砥石軸23は、砥石台20によって、X軸方向に平行な方向を中心として回転可能に支持されている。砥石軸23は、それぞれ円板状の外形を有し、互いに異なる厚みを有する複数の砥石車21のうちの一つを、交換可能に取り付けられる。それぞれの円板状の砥石車21は、砥石軸23のX軸に垂直な面23Sに接して、取り付けられる。
【0020】
砥石駆動モータ22は、電力を供給されて、回転出力を出力する。砥石駆動モータ22は、砥石台20に固定されている。ベルト伝動機構24は、砥石駆動モータ22の回転出力を砥石軸23に伝達する。すなわち、研削部200は、ベルト伝動機構24を介して、砥石駆動モータ22によって砥石車21を回転させる。
【0021】
円柱状の工作物WPの表面Swが研削される際には、以下の処理が行われる。保持部100によって工作物WPが回転されつつ、回転している砥石車21の円筒研削面21aが研削部200によって工作物WPの表面Swに押圧される。
【0022】
より具体的には、研削部200は、砥石駆動モータ22によって、砥石車21を回転させる。研削部200は、砥石台20によって、保持部100に対してZ軸方向に砥石車21を移動させる(図1の中段右部のAz2参照)。一方、保持部100は、工作物WPを回転させつつ、X軸方向に移動することができる(図1の下段右部のAx1参照)。このため、制御部900に制御された研削部200および保持部100によって、保持部100に保持された工作物WPに対して、除去加工としてのトラバース研削が実行されることができる。
【0023】
クーラント供給部400は、保持部100に保持された工作物WPと砥石車21とが接触する部位CPにクーラントCLを供給する(図1の下段右部参照)。クーラント供給部400は、研削部200に対して固定されている。ただし、図1においては、技術の理解を容易にするため、クーラント供給部400を、研削部200と独立して示している。クーラント供給部400は、クーラントCLを貯留するタンクと、タンク内のクーラントCLを工作物WPと砥石車21とが接触する部位CPに送出するポンプとを備える。
【0024】
図2は、付加製造部300の一部の構成を詳細に示す説明図である。図2は、各部の構成の寸法、形状および配置を正確に表すものではない。
【0025】
付加製造部300は、工作物WPの表面Swに付加製造を行う(図1の下段中央部参照)。付加製造部300は、保持部100に対してX軸方向およびY軸方向に移動できる。図1において、付加製造部300のX軸方向の移動を矢印Ax3で示す(図1の中央部参照)。付加製造部300のY軸方向の移動を矢印Ay3で示す。なお、技術の理解を容易にするため、図1においては、複合研削盤1の各構成の動作は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に沿って記載されてはいない。
【0026】
付加製造部300は、ビーム照射部32と、材料供給部33と、昇降部32Vと、梁部32Hと、を備える。なお、技術の理解を容易にするため、図2においては、昇降部32Vと、梁部32Hとは、記載されてはいない。昇降部32Vと梁部32Hの構成および機能については、後に説明する。
【0027】
ビーム照射部32は、光ビームLBを付加製造部300の外部に照射する(図2の中央部参照)。ビーム照射部32は、発振部34と、光学系35と、を備える。発振部34は光ビームを射出する。光学系35は、発振部34が射出した光ビームを、ビーム照射部32に対してあらかじめ定められた位置にある焦点に、収束させる。技術の理解を容易にするため、図2においては、光学系35は1個の凸レンズの形状で示されている。光学系35を備えるビーム照射部32は、工作物WPの表面Swへの材料の付着のために使用される光学機器である。
【0028】
材料供給部33は、超硬合金の粉末Mfを付加製造部300の外部に供給する(図2の中央部参照)。ビーム照射部32による光ビームLBの射出方向と、材料供給部33による超硬合金の粉末Mfの射出方向とは、光ビームLBの焦点において交差する。その結果、材料供給部33によって供給される超硬合金の粉末Mfは、光ビームLBによって、溶融される。すなわち、付加製造部300は、保持部100に保持された工作物WPの表面Swに対して、材料としての超硬合金の粉末Mfを供給しつつ、材料を溶融させることによって、工作物WPの表面Swに材料を付着させることができる。すなわち、付加製造部300は、指向性エネルギー堆積法(DED;Directed Energy Deposition)を行う。より具体的には、付加製造部300は、レーザー・メタル・デポジション(LMD;Laser Metal Deposition)を行う。
【0029】
本明細書では、粉末状態の材料を、「粉末Mf」と呼ぶ。粉末Mfが溶融され工作物WPの表面Swに付着されて形成された構造を、「付加部Md」または「付加層Md」と呼ぶ。粉末Mfおよび付加層Mdを構成する材料を総称するときは、「材料Mx」と呼ぶ。
【0030】
保持部100によって工作物WPが回転されつつ、付加製造部300により、工作物WPの表面Swに材料Mxが付着されることにより、円柱状の工作物WPの表面Sw上に、工作物WPの中心軸を中心とする環状の付加部Mdが形成される。
【0031】
付加製造部300は、保持部100に対してY軸方向に移動することができる(図1の中央部のAy3参照)。一方、保持部100は、工作物WPを回転させつつ、X軸方向に移動することができる(図1の下段右部のAx1参照)。このため、制御部900に制御された付加製造部300および保持部100によって、保持部100に保持され回転されている工作物WPの表面Swに超硬合金が付着されることにより、工作物WPの表面Swに付加層Mdが形成される。ただし、付加層Mdの表面は、平坦ではなく、円柱状の工作物WPの周方向に略平行な、峰および谷を有する。
【0032】
このような構成とすることにより、保持部100と付加製造部300とによって、工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着を行うことができる。また、保持部100と研削部200とによって、工作物WPの研削を行うことができる。このため、工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着のための専用の保持部と、工作物WPの研削のための専用の保持部と、をそれぞれ備える態様に比べて、上記態様においては、複合研削盤1が占めるスペースを小さくすることができる。
【0033】
また、上記の構成とすることにより、複合研削盤1に対して、工作物WPの取り外しおよび再度の取り付けを行うことなく、複合研削盤1において、工作物WPの表面Swへの材料の付加層Mdの形成と、その付加層Mdの研削と、を行うことができる。このため、複数回の工作物WPの取り付けにおける回転中心の位置のずれが、工作物WPの表面Swに形成される材料の付加層Mdの形状および寸法の精度に影響を与えない。よって、工作物WPの表面Swへの材料の付加層Mdの形成と、その付加層Mdの研削とが異なる装置で行われる態様に比べて、工作物WPの表面Swに形成される材料の付加層Mdにおいて、製品に必要な厚みを超える部分、いわゆる加工取りしろを小さくすることができる。
【0034】
防護部500は、付加製造部300のビーム照射部32および材料供給部33を覆うことができる(図1の中央部参照)。その結果、防護部500は、ビーム照射部32へのクーラントCLの付着を防止する。防護部500の構成および機能については、後に説明する。
【0035】
ベッド800は、保持部100と、研削部200と、付加製造部300と、クーラント供給部400と、防護部500と、を支持する。保持部100は、ベッド800上で、X軸方向に移動することができる(図1の下段右部のAx1参照)。付加製造部300は、ベッド800上で、ビーム照射部32と材料供給部33を、X軸方向およびY軸方向に、移動させることができる(図1のAx3およびAy3参照)。研削部200と、研削部200に固定されているクーラント供給部400とは、一体で、Z軸方向に移動することができる(図1の下段右部のAz2参照)。
【0036】
制御部900は、保持部100と、研削部200と、付加製造部300と、クーラント供給部400と、防護部500と、を制御する。制御部900は、出力装置として機能するディスプレイ970と、入力装置として機能するキーボード980と、を備えたコンピュータである(図1の上段左部参照)。制御部900は、さらに、プロセッサーであるCPU940と、RAM950と、ROM960と、を備えている。CPU940は、ROM960に記憶されたコンピュータプログラムをRAM950にロードして実行することによって、保持部100と、研削部200と、付加製造部300と、クーラント供給部400と、防護部500とに、後述する様々な機能を実現させる。
【0037】
A2.複合研削盤の各構成の配置および動作:
図3は、複合研削盤1の概略構成を示す正面図である。図4は、複合研削盤1の概略構成を示す平面図である。図5は、複合研削盤1の概略構成を示す側面図である。図3図5において、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を示す。ただし、図3図5は、複合研削盤1の各部の構成の寸法および形状を正確に表すものではない。また、技術の理解を容易にするため、図3図5においては、複合研削盤1が備える一部の構成が省略されている。以下で言及する図6および図7においても同様である。
【0038】
図3図5は、研削部200が、研削を行う状態よりも主軸台13の回転軸ARから遠い位置に移動している状態を示している。図3図5は、付加製造部300が、防護部500内の退避位置Psにビーム照射部32を配している状態を、示している。ただし、図5においては、防護部500外の作業位置Pwに配されているビーム照射部32を破線で示している。
【0039】
防護部500は、ビーム照射部32へのクーラントCLの付着を防止する(図3の上段左部、図4の中段左部、および図5の上段左部参照)。防護部500は、カバー本体51と、接続管58と、加圧部57と、を有する。
【0040】
カバー本体51は、付加製造部300のビーム照射部32を覆うことができる。カバー本体51は、直方体状の箱である。カバー本体51は、X軸方向について、保持部100によって保持された工作物WPが存在しうる範囲Rwpと重なる範囲に設けられている(図3の下段参照)。工作物WPが存在しうる範囲Rwpは、保持部100によって保持されることができる様々な大きさの工作物WPが、保持部100によって、X軸正方向の端の位置からX軸負方向の端の位置まで移動された場合に占める範囲である。
【0041】
このような構成とすることにより、X軸方向について、保持部100によって保持された工作物WPが存在しうる範囲Rwpの外に、カバー本体51が配される態様に比べて、X軸方向について、複合研削盤1の寸法を小さくすることができる。
【0042】
カバー本体51は、Y軸方向について、工作物WPの回転の軸ARよりも上方であって、X軸方向について、砥石車21が存在しうる範囲R21の外に配されている(図3の上段中央部、および図4の中央部参照)。さらに、カバー本体51は、鉛直方向Yについて、保持部100によって保持された工作物WPおよび保持部100が存在しうる範囲R100の外に配されている(図3の中央部参照)。
【0043】
本実施形態においては、カバー本体51が、X軸方向について砥石車21が存在しうる範囲R21の外に配されているため、カバー本体51が砥石車21による工作物WPの研削の邪魔になる可能性が低い。さらに、カバー本体51が、工作物WPの回転の軸ARよりも上方にあるため、研削において生じ得るクーラントCLのミストがカバー本体51内に進入しにくい。
【0044】
カバー本体51は、開口53と、蓋部52と、加圧部57と、接続管58と、を有する。
【0045】
開口53は、カバー本体51の一方の端面に位置する開口である。より具体的には、開口53は、直方体状のカバー本体51を構成する4個の平面に囲まれている四角形の開口である。開口53は、ビーム照射部32を通過させることができる形状および大きさで設けられている。
【0046】
蓋部52は、直方体状のカバー本体51の6個の平面のうちの一つの平面を構成する板状の部材である(図3の中央部、図4の中央部、および図5の上段左部参照)。蓋部52は、付加製造部300の梁部32Hに対して固定されている。蓋部52は、カバー本体51の開口53を開閉可能である。より具体的には、蓋部52は、付加製造部300により、ビーム照射部32とともにX軸方向に移動されることにより、開口53を開き、または閉じる(図3上段左部のAx3、および図1中央部のAx3参照)。図3図5は、蓋部52が開口53を閉じている状態を示す。
【0047】
加圧部57は、防護部500内の空間の圧力を高めることができる(図3の中段左部参照)。加圧部57は、より具体的には、ブロワである。接続管58は、ケーブルと、空気管と、を含む。ケーブルは、付加製造部300を駆動するための電力を、電源から付加製造部300に送る。空気管は、加圧部57としてのブロワが作り出す空気の流れを防護部500内の空間に送る。開口53が蓋部52によって閉じられている状態において、加圧部57が防護部500内に空気を送ることにより、防護部500内の空間の圧力が、防護部500の外部の圧力よりも、高くされる。
【0048】
このような構成とすることにより、防護部500の周囲を浮遊する研削用のクーラントCLのミストが存在する場合にも、そのミストがカバー内の空間内に侵入して、光学機器であるビーム照射部32に付着する可能性を低減できる。
【0049】
図6は、複合研削盤1の概略構成を示す正面図である。図7は、複合研削盤1の概略構成を示す平面図である。図6および図7は、付加製造部300が、工作物WPに表面Swに材料Mxを付着させるときの作業位置Pwに、ビーム照射部32を配している状態を示している。ただし、図6および図7においては、技術の理解を容易にするため、研削部200およびクーラント供給部400など、複合研削盤1が備える一部の構成が省略されている。たとえば、図6および図7においては、材料供給部33およびビーム照射部32に接続される配管、ならびに材料供給部33が省略されている。
【0050】
図6および図7においては、保持部100によって保持された工作物WPの位置が、図3図5とは異なっている。図3図5においては、工作物WPは、保持部100によって保持された工作物WPが存在しうる範囲Rwpのうち、X軸正方向の端に配されている。これに対して、図6および図7においては、工作物WPは、保持部100によって保持された工作物WPが存在しうる範囲Rwpのうち、X軸負方向の端に配されている。
【0051】
付加製造部300は、保持部100に対するビーム照射部32の移動により、作業位置Pwと退避位置Psとに、ビーム照射部32を配することができる(図6の上段中央部、および図3の上段左部参照)。前述のように、作業位置Pwは、工作物WPに表面Swに材料Mxを付着させるときのビーム照射部32の位置である(図7の中央部、図6の上段中央部参照)。退避位置Psは、ビーム照射部32が防護部500内にある位置である(図3の上段中央部、図4の中央部)。
【0052】
このような構成とすることにより、研削部200と付加製造部300とを備える複合研削盤1において、回転する砥石車21と回転する工作物WPとによって飛散されるクーラントCLがビーム照射部32に付着し、付加製造部300による表面Swへの材料Mxの付着の性能が低下する可能性を、低減できる(図3および図4参照)。
【0053】
付加製造部300は、昇降部32Vと、梁部32Hと、を備えている(図6の上段中央部参照)。
【0054】
昇降部32Vは、梁部32Hの先端に取り付けられている(図6の上段中央部参照)。昇降部32Vは、Y軸方向に伸縮可能に設けられている部材である。昇降部32Vには、ビーム照射部32および材料供給部33が取り付けられている。その結果、昇降部32Vは、ビーム照射部32および材料供給部33を鉛直方向Yに移動させることができる(図6の矢印Ay3参照)。
【0055】
梁部32Hは、ベッド800に対して固定されている(図6の上段中央部、および中段左部参照)。梁部32Hは、ビーム照射部32および昇降部32Vを支持している。梁部32Hは、X軸方向に伸縮可能に設けられている。その結果、梁部32Hは、ビーム照射部32および昇降部32VをX軸方向に沿って移動させることができる(図6の矢印Ax3参照)。
【0056】
付加製造部300は、昇降部32Vおよび梁部32Hによりビーム照射部32を移動させて、作業位置Pwと退避位置Psとにビーム照射部32を配する(図3図5、ならびに図6および図7参照)。
【0057】
本実施形態においては、研削部200は、保持部100に保持された工作物WPに対して、水平方向、より具体的にはZ軸方向から接近する(図4のAz2および図5のAz2参照)。一方、付加製造部300のビーム照射部32は、保持部100に保持された工作物WPに対して、Z軸方向とは垂直なY軸方向から接近する(図6のAy3参照)。このため、研削部200とビーム照射部32とが互いに干渉しにくい。
【0058】
ビーム照射部32は、作業位置Pwに配されているとき、X軸方向について、砥石軸23が円板状の砥石車21を取り付けられる面23Sと同じ位置に、光ビームLBを照射することができる(図6の上段中央部、および図3の中央部参照)。
【0059】
X軸方向について、砥石軸23が円板状の砥石車21を取り付けられる面23Sの位置には、砥石軸23に砥石車21が取り付けられている限り、砥石軸23に取り付けられている砥石車21の厚みによらず、砥石車21が存在する。このため、研削部200は、保持部100に取りつけられた工作物WPのうち、X軸方向について、面23Sの位置にある部位は、研削可能である。本実施形態においては、付加製造部300は、X軸方向について、砥石軸23が円板状の砥石車21を取り付けられる面23Sと同じ位置に、ビーム照射部32により光ビームLBを照射することができる。このため、付加製造部300は、保持部100に取りつけられた工作物WPのうち研削部200が研削可能な全範囲と同じ範囲について、表面Swに材料Mxを付着させることができる。
【0060】
以下で、研削時および付加製造時の各部の動作の連携について説明する。
【0061】
保持部100により保持されている工作物WPが研削部200の砥石車21によって研削されるときは、研削部200は、図4および図5に示す状態よりも主軸台13の回転軸ARに近い位置に移動する(図4のAz2参照)。その結果、研削部200によって回転されている砥石車21の円筒研削面21aが研削部200によって工作物WPの表面Swに押圧される。
【0062】
保持部100により保持されている工作物WPが研削部200の砥石車21によって研削されるときは、防護部500の蓋部52は、閉位置Pclに配される(図3の上段中央部および図4の中央部参照)。この状態においては、ビーム照射部32はカバー本体51内の退避位置Psにある。すなわち、ビーム照射部32は、カバー本体51に覆われている。
【0063】
このような構成とすることにより、研削部200と付加製造部300とを備える複合研削盤1において、回転する砥石車21と回転する工作物WPとによって飛散されるクーラントCLが、ビーム照射部32に付着し、付加製造部300による表面Swへの材料Mxの付着の精度が低下する可能性を低減できる。また、クーラントCLが、ビーム照射部32に付着し、ビーム照射部32が故障する可能性を低減できる。
【0064】
すなわち、回転する砥石車21と回転する工作物WPとによって飛散されるクーラントCLの液滴がビーム照射部32に向かって飛翔した場合にも、その滴は、蓋部52が閉じておりビーム照射部32を覆っているカバー本体51に、付着する。このため、クーラントCLがビーム照射部32に付着する可能性を低減できる。
【0065】
一方、付加製造部300が工作物WPの表面Swに材料Mxを付着させるときには、研削部200は、砥石車21によって研削を行う状態よりも主軸台13の回転軸ARから遠い位置に移動する(図5参照)。
【0066】
付加製造部300が工作物WPの表面Swに材料Mxを付着させるときには、蓋部52は、開位置Popに配される(図6の中央部および図7の中央部参照)。蓋部52が開位置Popにあるとき、カバー本体51の開口53が開かれている。付加製造部300は、カバー本体51の開口53を通じて、図3および図4の状態よりも心押台14に近い位置に、X軸方向に沿って移動している(図6のAx3および図7のAx3参照)。すなわち、ビーム照射部32は、カバー本体51に覆われていない。
【0067】
この状態において、ビーム照射部32は、工作物WPの表面Swに光ビームLBを射出する(図2参照)。材料供給部33は、開口53を通じて、工作物WPの表面Swに、超硬合金の粉末Mfを供給する。なお、技術の理解を容易にするため、図3図7において、材料供給部33の符号は、示されていない。
【0068】
付加製造部300は、工作物WPの表面Swに材料Mxを付着させる処理において、工作物WPの回転軸ARに対して、砥石車21とは逆の側に位置する部位に光ビームLBを照射する(図5の中段左部参照)。保持部100は、表面Swに材料Mxを付着させる処理において、工作物WPの表面Swの各部が、砥石車21に最も接近した後に上に移動するように、工作物WPを回転させる(図5の矢印Rnd参照)。
【0069】
このような構成とすることにより、工作物WPの表面Swに材料Mxを付着させる際に生じたスパッタが、研削部200の砥石車21に付着する可能性を低減できる。このため、砥石車21の性能が、スパッタによって低下されにくい。
【0070】
複合研削盤1の制御部900は、研削部200による工作物WPの研削の前に、付加製造部300に、防護部500内にビーム照射部32を移動させる(図3および図4参照)。制御部900は、付加製造部300による工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着の前に、研削部200に、砥石車21による工作物WPの研削が行われる位置よりも、工作物WPの回転の軸ARから離れた位置に、砥石車21を移動させる(図4および図5参照)。
【0071】
このような処理を行うことにより、研削部200と付加製造部300とを備える複合研削盤1において、制御部900によるビーム照射部32の自動的な移動によって、研削時に飛散されるクーラントCLがビーム照射部32に付着する可能性を低減できる。また、制御部900による砥石車21の自動的な移動によって、付加製造部300による工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着を研削部200が阻害する可能性を低減できる。
【0072】
A3.工作物の加工:
図8は、複合研削盤1における工作物WPの加工の処理を示すフロー図である。まず、処理の対象となる素材として、処理前の円柱状の工作物WPが、準備される。なお、本明細書においては、図8の処理が行われる前の対象物も、図8の処理が行われた後の対象物も、ともに工作物WPと表記する。ただし、図8の処理が行われる前の対象物を「素材」とも呼ぶ(図8の左部参照)。
【0073】
ステップS10において、複合研削盤1とは異なる切削機に、素材としての工作物WPが運搬され、切削機のチャックに取り付けられる。
【0074】
ステップS20においては、切削機を使用して、素材としての工作物WPに対して、旋削および穴開け加工が行われる。ステップS30においては、工作物WPが切削機から取り外される。そして、第1実施形態の複合研削盤1に工作物WPが運搬され、複合研削盤1の主軸台13に取り付けられる(図1の下段参照)。
【0075】
ステップS40においては、複合研削盤1を使用して、工作物WPに対して、付加製造と、除去加工である研削と、が行われる。ステップS40は、ステップS42,S44,S46,S48を含む。ステップS42,S44,S46,S48が行われる間、工作物WPは、主軸台13および心押台14から取りはずされることはなく、主軸台13および心押台14によって保持され続ける。
【0076】
ステップS42においては、工作物WPに対して荒研削が行われる。より具体的には、保持部100によって回転されている工作物WPに対して、研削部200が、砥石車21を回転させつつ接触させることにより、荒研削が行われる。クーラント供給部400は、保持部100に保持された工作物WPと砥石車21とが接触する部位CPにクーラントCLを供給する。このとき、研削部200には、ステップS42の荒研削用の砥石車21が取り付けられている。防護部500の蓋部52は、閉位置Pclに配されている(図3の上段中央部参照)。ビーム照射部32は、防護部500内の退避位置Psにあり、カバー本体51に覆われている。ステップS42において各部を制御して荒研削を行う処理を実現するCPU940の機能部を、図1において、第1荒研削部942として示す。
【0077】
荒研削の完了後、研削部200は、ステップS42において荒研削が行われる位置よりも主軸台13の回転軸ARから遠い位置に移動する(図5のAz2参照)。防護部500の蓋部52は、開位置Popに配される(図6の上段中央部参照)。そして、ビーム照射部32は、制御部900に制御されて、カバー本体51の開口を通じて、図3の退避位置Psよりも心押台14に近い作業位置Pwに、移動する(図6のAx3参照)。
【0078】
その後、研削部200に取り付けられているステップS42の荒研削用の砥石車が、ステップS46の荒研削用の砥石車に交換される。
【0079】
ステップS44においては、硬質材料の肉盛り加工が行われる。より具体的には、付加製造部300によって、工作物WPの表面Swに超硬合金による付加層Mdが形成される(図2参照)。ステップS44において各部を制御して肉盛り加工を行う処理を実現するCPU940の機能部を、図1において、肉盛り部944として示す。
【0080】
付加製造処理の後、付加製造部300は、制御部900に制御されて、カバー本体51内の退避位置Psにビーム照射部32を移動する(図3のAy3およびAx3参照)。防護部500の蓋部52は、閉位置Pclに配される(図3の上段中央部参照)。蓋部52が閉位置Pclにあるとき、カバー本体51の開口53は、蓋部52によって閉じられる。研削部200は、図4および図5の状態よりも主軸台13の回転軸ARに近い位置に移動する(図5のAz2参照)。
【0081】
ステップS46においては、工作物WPに対して荒研削が行われる。より具体的には、研削部200が、保持部100によって回転されている工作物WPに対して、砥石車21を回転させつつ接触させることにより、工作物WPに形成された付加層Mdに対して、荒研削を行う。クーラント供給部400は、保持部100に保持された工作物WPと砥石車21とが接触する部位CPにクーラントCLを供給する。その結果、付加層Mdの表面に形成されている峰が、大まかに除去される。このとき、研削部200には、ステップS46の荒研削用の砥石車21が取り付けられている。防護部500の蓋部52は、閉位置Pclに配されている(図3の上段中央部参照)。ビーム照射部32は、防護部500内の退避位置Psにあり、カバー本体51に覆われている。ステップS46において各部を制御して荒研削を行う処理を実現するCPU940の機能部を、図1において、第2荒研削部946として示す。
【0082】
荒研削の完了後、研削部200は、ステップS46において荒研削が行われる位置よりも主軸台13の回転軸ARから遠い位置に移動する(図4のAz2および図5のAz2参照)。研削部200に取り付けられているステップS46の荒研削用の砥石車が、ステップS48の仕上げ研削用の砥石車に交換される。その後、研削部200は、図4および図5の状態よりも主軸台13の回転軸ARに近い位置に移動する(図4のAz2および図5のAz2参照)。
【0083】
ステップS48においては、工作物WPに対して仕上げ研削が行われる。より具体的には、研削部200が、保持部100によって回転されている工作物WPに対して、砥石車21を回転させつつ接触させることにより、工作物WPに形成された付加層Mdに対して、仕上げ研削を行う。クーラント供給部400は、保持部100に保持された工作物WPと砥石車21とが接触する部位CPにクーラントCLを供給する。その結果、付加層Mdの表面は平坦に加工される。このとき、研削部200には、ステップS48の仕上げ研削用の砥石車21が取り付けられている。防護部500の蓋部52は、閉位置Pclに配されている(図3の上段中央部参照)。ビーム照射部32は、防護部500内の退避位置Psにあり、カバー本体51に覆われている。ステップS48において各部を制御して仕上げ研削を行う処理を実現するCPU940の機能部を、図1において、仕上げ研削部948として示す。
【0084】
仕上げ研削の完了後、研削部200は、ステップS48において仕上げ研削が行われる位置よりも主軸台13の回転軸から遠い位置に移動する(図4のAz2および図5のAz2参照)。
【0085】
ステップS50においては、工作物WPが複合研削盤1の主軸台13から取りはずされ(図1の下段参照)、所定の完成品置き場に運搬される。以上の処理により、工作物WPの加工の処理が完了する。
【0086】
図9は、工作物WPの加工の従来の処理を示すフロー図である。工作物WPの加工の従来の処理において、処理の対象となる素材の準備からステップS120までの処理は、本実施形態の図8の処理の対象となる素材の準備からS20までの処理と同じである。
【0087】
ステップS130においては、工作物WPが切削機から取り外される。そして、従来の研削盤に工作物WPが運搬され、研削盤の主軸台に取り付けられる。
【0088】
ステップS142においては、研削盤において、工作物WPに対して荒研削が行われる。このとき、研削盤には、ステップS142の荒研削用の砥石車21が取り付けられている。
【0089】
荒研削の後、研削盤に取り付けられているステップS142の荒研削用の砥石車が、ステップS146の荒研削用の砥石車に交換される。
【0090】
ステップS143においては、工作物WPが研削盤から取り外される。そして、DED加工機に工作物WPが運搬され、DED加工機に工作物WPが取り付けられる。
【0091】
ステップS144においては、硬質材料の肉盛り加工が行われる。より具体的には、DED加工機によって、工作物WPの表面Swに超硬合金による付加層Mdが形成される(図2参照)。
【0092】
ステップS145においては、工作物WPがDED加工機から取り外される。そして、従来の研削盤に工作物WPが運搬され、研削盤の主軸台に工作物WPが取り付けられる。
【0093】
ステップS146においては、工作物WPに対して荒研削が行われる。このとき、研削盤には、ステップS146の荒研削用の砥石車21が取り付けられている。
【0094】
ステップS147においては、研削盤に取り付けられているステップS146の荒研削用の砥石車が、ステップS148の仕上げ研削用の砥石車に交換される。
【0095】
ステップS148においては、工作物WPに対して仕上げ研削が行われる。このとき、研削部200には、ステップS48の仕上げ研削用の砥石車21が取り付けられている。
【0096】
ステップS150においては、工作物WPが研削盤の主軸台から取りはずされ、所定の完成品置き場に運搬される。以上の処理により、工作物WPの加工の従来の処理が完了する。
【0097】
従来の処理においては、ステップS142~S148が行われる間、工作物WPは、順に、研削盤、DED加工機、研削盤に取り付けられる。最初の研削盤への取り付け、DED加工機への取り付け、2回目の研削盤への取り付けにおいて、工作物WPの各加工機械への取り付け位置、その結果としての各加工機械における工作物WPの回転中心は、相互にずれる。このため、従来の研削盤およびDED加工機を利用する工作物WPの処理においては、いわゆる加工取りしろを大きく設定する必要がある。
【0098】
これに対して、本実施形態のステップS42,S44,S46,S48においては、複合研削盤1を使用して、工作物WPに対して、付加製造と、除去加工である研削と、が行われる(図8のS40参照)。このため、その間、複合研削盤1からの工作物WPの取り外しおよび取付が行われない。よって、いわゆる加工取りしろを小さく設定することができる。また、複合研削盤1においては、工作物WPの加工装置間の搬送および各加工装置における段取り作業の必要がない。このため、複合研削盤1においては、図9の処理に比べて、工作物WPの加工に要する時間を短くすることができる。その結果、工作物WPの加工コストを低減することもできる。
【0099】
また、本実施形態においては、1台の複合研削盤1によって、付加製造と、除去加工である研削と、が行われる。このため、研削盤とDED加工機を使用する図9の態様に比べて、工場内においてそれらの処理に要するスペースを小さくすることができる(図4および図7参照)。
【0100】
また、工作物WPに対してDEDではなくめっきを行う態様においては、六価クロムが使用される。しかし、本実施形態においては、めっきではなくDEDによって、工作物WPの表面Swに付加層Mdが形成される。このため、六価クロムの処理および管理が不要である。
【0101】
本実施形態における砥石車21を、「砥石」とも呼ぶ。砥石軸23を、「砥石支持部」とも呼ぶ。カバー本体51を、「保護カバー」とも呼ぶ。カバー本体51を含む防護部500を、「保護カバー」とも呼ぶ。
【0102】
B.第2実施形態:
第2実施形態の複合研削盤2は、粉塵カバー700と、第1吸引部710と、第2吸引部720と、を備える。第2実施形態の複合研削盤2の他の点は、第1実施形態の複合研削盤1と同じである。
【0103】
図10は、第2実施形態の複合研削盤2の斜視図である。図10は、複合研削盤2の各部の構成の寸法および形状を正確に表すものではない。また、技術の理解を容易にするため、図10においては、複合研削盤2が備える一部の構成が省略されている。
【0104】
粉塵カバー700は、保持部100と、保持部100に保持されている工作物WPと、研削部200と、付加製造部300と、クーラント供給部400と、防護部500と、を収容する。複合研削盤2が備える保持部100と、研削部200と、付加製造部300と、クーラント供給部400と、防護部500と、の構成は、第1実施形態の複合研削盤1が備える保持部100と、研削部200と、付加製造部300と、クーラント供給部400と、防護部500と、の構成同じである。粉塵カバー700は、それら各部を収容する開閉可能なカバーである。
【0105】
本実施形態においては、粉塵カバー700が防護部500を収容している。このため、粉塵カバーの外に保護カバーを備える態様に比べて、工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着の後、工作物WPの研削の前に、ビーム照射部32を防護部500内に移動させるのに要する時間を、短くすることができる。また、ビーム照射部32の移動においてエラーが発生する可能性を低減できる。
【0106】
粉塵カバー700は、固定カバー702,704と、移動カバー706,708と、を備える(図10参照)。固定カバー702,704と、移動カバー706,708とは、保持部100と、保持部100に保持されている工作物WPと、研削部200と、付加製造部300と、クーラント供給部400と、防護部500と、を覆うことができる。
【0107】
移動カバー706は、X軸方向に沿って移動可能に構成されている。その結果、移動カバー706は、閉位置と、開位置とを取り得る。移動カバー706の閉位置は、同じく閉位置にある移動カバー708に接触して、固定カバー702,704と移動カバー706,708とが覆う内部空間を、固定カバー702,704ならびに移動カバー708とともに密閉する位置である。移動カバー706の開位置は、移動カバー706が固定カバー702内に収容される位置である。移動カバー706が開位置にあるとき、粉塵カバー700は、開口している。
【0108】
移動カバー708も、X軸方向に沿って移動可能に構成されている。その結果、移動カバー708は、閉位置と、開位置とを取り得る。移動カバー708の閉位置は、同じく閉位置にある移動カバー706に接触して、固定カバー702,704と移動カバー706,708とが覆う内部空間を、固定カバー702,704ならびに移動カバー706とともに密閉する位置である。移動カバー708の開位置は、移動カバー708が固定カバー704内に収容される位置である。移動カバー708が開位置にあるとき、粉塵カバー700は、開口している。
【0109】
付加製造部300による工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着、および砥石車21による工作物WPの研削が行われるとき、が行われるとき、移動カバー706,708はいずれも閉位置に配される。
【0110】
このような構成とすることにより、付加製造部300による工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着および研削部200による工作物WPの研削が行われても、スパッタや、クーラントCLの液滴やミストが、粉塵カバー700外の環境に移動することがない。その結果、粉塵カバー700外にいる複合研削盤2の操作者の環境が悪化することがない。また、工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着の際にビーム照射部32が照射する光ビームLBによって、操作者が悪影響を受ける可能性を低減できる。
【0111】
移動カバー706,708がいずれも開位置にあるとき、移動カバー706,708の移動によって形成された粉塵カバー700の開口を通じて、工作物WPが保持部100に取り付けられる。また、移動カバー706,708がいずれも開位置にあるとき、移動カバー706,708の移動によって形成された粉塵カバー700の開口を通じて、保持部100に保持されている工作物WPが取り外される。
【0112】
図11は、第2実施形態の複合研削盤2を示す平面図である。図11は、複合研削盤2の各部の構成の寸法、形状および配置を正確に表すものではない。また、技術の理解を容易にするため、図11においては、複合研削盤2が備える一部の構成が省略されている。
【0113】
第1吸引部710は、粉塵カバー700に接続されている。第1吸引部710は、ブロワと、集塵フィルタとを備えている。付加製造部300による工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着においては、粉塵が生じる。第1吸引部710は、制御部900に制御されて、粉塵カバー700内において生じた粉塵を、吸引する。より具体的には、制御部900が、付加製造部300による工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着において、第1吸引部710に、粉塵を吸引させる(図8のS44参照)。
【0114】
第2吸引部720は、粉塵カバー700に接続されている。第2吸引部720は、ブロワと、気液分離器とを備えている。研削部200による工作物WPの研削においては、クーラントCLのミストが生じる。第2吸引部720は、制御部900に制御されて、粉塵カバー700内において生じたクーラントCLのミストを、吸引する。より具体的には、制御部900が、研削部200による工作物WPの研削において、第2吸引部720に、ミストを吸引させる(図8のS42,S46,S48参照)。
【0115】
このような構成を備えることにより、付加製造部300による工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着が行われる場合に、第1吸引部710に、粉塵を吸引させることにより、粉塵カバー700内に存在する粉塵を低減することができる。研削部200による工作物WPの研削が行われる場合に、第2吸引部720に、ミストを吸引させることにより、粉塵カバー700内に存在するクーラントCLのミストを低減することができる。その結果、それらの処理後に粉塵カバー700が開かれても、粉塵カバー700の周囲の環境を清浄に保つことができる。
【0116】
C.第3実施形態:
第3実施形態の複合研削盤3においては、付加製造部300Cおよび防護部500Cの構成が、第1実施形態の複合研削盤1の付加製造部300および防護部500の構成とは異なっている。第3実施形態の複合研削盤3の他の点は、第1実施形態の複合研削盤1と同じである。
【0117】
図12は、複合研削盤3の斜視図である。図13は、複合研削盤3の正面図である。図14は、複合研削盤3の平面図である。図15は、複合研削盤3の側面図である。図12図15において、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を示す。図12図15においては、複合研削盤3が備える一部の構成が省略されている。
【0118】
図12図15は、研削部200が、研削を行う際の位置よりも主軸台13の回転軸ARから遠い位置にある状態を、示している。図12図15は、付加製造部300Cが、防護部500C内の退避位置Psにビーム照射部32を配している状態を、示している。図13図15において、防護部500Cを破線で示す。技術の理解を容易にするため、図12において、防護部500Cの図示を省略する。
【0119】
付加製造部300Cの主要部分は、研削部200の上面上に設けられている。付加製造部300Cは、複合研削盤1の付加製造部300と同様に、昇降部32Vを備える。昇降部32Vは、ビーム照射部32を鉛直方向Yに移動させることができる。複合研削盤3が備える昇降部32Vの構成は、複合研削盤1が備える昇降部32Vの構成と同じである。
【0120】
付加製造部300Cは、梁部32Hに代えて、梁部32HCを備える。梁部32HCは、研削部200の上面において、略L字型の構造部材により支持されている(図12の上段右部、図13の上段中央部、および図15の上段右部参照)。梁部32HCは、方向D3に延びる長尺状の部材である。方向D3は、水平方向であって、X軸正方向の成分とZ軸正方向の成分とで表すことができる方向である(図12の下段右部参照)。梁部32HCは、研削部200に対して方向D3に移動可能に設けられている。梁部32HCは、ビーム照射部32および昇降部32Vを支持している。その結果、梁部32HCは、ビーム照射部32および昇降部32Vを、X軸方向すなわち工作物WPの回転の軸ARの方向と交わる方向D3に沿って、移動させることができる。図12図14、および図15において、ビーム照射部32および昇降部32Vの移動を矢印Az3で示す。付加製造部300Cの他の構成は、複合研削盤1の付加製造部300の構成と同じである。
【0121】
防護部500Cは、カバー本体51Cを有する。カバー本体51Cは、梁部32HCを支持している部材に固定されている。カバー本体51Cは、複合研削盤1のカバー本体51と同様に、略直方体の箱である。カバー本体51Cは、カバー本体51Cの各辺がX軸、Y軸、またはZ軸に平行になる姿勢で配されている(図13の上段中央部、図14の上段中央部、および図15の上段右部参照)。
【0122】
カバー本体51Cは、開口53Cと、蓋部52Cと、を有する。複合研削盤3において、開口53Cは、直方体状の箱であるカバー本体51CのZ軸負方向の端の面の開口である。蓋部52Cは、直方体状のカバー本体51の6個の平面のうちの一つの平面、より具体的には、カバー本体51CのZ軸負方向の端の面を構成する四角形の板状の部材である(図14の中央部、図15の上段中央部参照)。蓋部52Cは、上辺において蝶番を介してカバー本体51Cに取り付けられている。蓋部52Cは、図示しないモータにより蝶番を支点として回転されることにより、開口53Cを開閉する。
【0123】
防護部500Cは、Z軸方向およびY軸方向について、砥石車21が存在しうる範囲R21yzの外に配されている(図15の上段右部および中央部参照)。防護部500Cは、Z軸方向およびY軸方向について、保持部100によって保持された工作物WPおよび保持部100が存在しうる範囲R100yzの外に配されている(図15の上段右部および中段左部参照)。防護部500Cは、工作物WPの回転の軸ARよりも上方に配されている(図13の上段中央部および中段参照)。防護部500Cの他の点は、複合研削盤1の防護部500と同じである。
【0124】
図16は、複合研削盤3の斜視図である。図17は、複合研削盤3の平面図である。図18は、複合研削盤3の側面図である。図16図18において、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を示す。図16図18においては、複合研削盤3が備える一部の構成が省略されている。
【0125】
図16図18は、研削部200が、研削を行う際の位置よりも主軸台13の回転軸ARから遠い位置にある状態を、示している。図16図18は、付加製造部300Cが、防護部500C外の作業位置Pwにビーム照射部32を配している状態を、示している。図17および図18において、防護部500Cを破線で示す。技術の理解を容易にするため、図17および図18において、蓋部52Cの図示を省略する。同様に、技術の理解を容易にするため、図16において、防護部500Cの図示を省略する。
【0126】
付加製造部300Cは、昇降部32Vおよび梁部32HCによりビーム照射部32を移動させて、作業位置Pwと退避位置Psとにビーム照射部32を配する(図12図15、ならびに図16図18参照)。
【0127】
研削部200の砥石車21を交換する作業は、研削部200に対してX軸正方向の側から行われる(図13および図14参照)。本実施形態においては、保持部100に対する砥石車21の移動方向、すなわちZ軸方向、および鉛直方向Yについて、砥石車21が存在しうる範囲R21yzの外に、防護部500Cが配されている(図15の上段右部および中央部参照)。その結果、研削部200のX軸正方向側の空間は、防護部500Cに占められていない。このため、防護部500Cが、研削部200の砥石車21を交換する作業の邪魔になる可能性が、低い。言い換えれば、研削部200の砥石車21を交換する作業に使用できる空間が、防護部500Cによって制限されない。
【0128】
また、本実施形態においては、軸AR方向と鉛直方向Yとに垂直なZ軸方向、ならびに鉛直方向Yについて、保持部100によって保持された工作物WPおよび保持部100が存在しうる範囲R100yzの外に、防護部500Cがある(図15の上段右部および中段左部参照)。このため、防護部500Cが、保持部100に対する工作物WPの取り付けおよび取り外し、ならびに心押台14の調整の作業の邪魔になる可能性が、低い。そして、防護部500Cと範囲R100yzとがZ軸方向に付いて重複しない(図15参照)。このため、保持部100に対する工作物WPの取り付けおよび取り外しの際に上から吊り下げられる工作物WPと、防護部500Cとが、干渉することもない。その結果、保持部100に対する工作物WPの取り付けおよび取り外しの作業に使用できる空間が、防護部500Cによって制限されない。
【0129】
さらに、本実施形態においては、ビーム照射部32が作業位置Pwと退避位置Psとの間を梁部32HCによって移動される。このため、後述する第4実施形態に比べて、作業位置Pwと退避位置Psとの間のビーム照射部32の移動距離が短い。その結果、第4実施形態に比べて、ビーム照射部32の移動を含めた付加製造部300によるLMDに要する時間を短くすることができる。
【0130】
D.第4実施形態:
第4実施形態の複合研削盤4においては、付加製造部300Dおよび防護部500Dの構成が、第1実施形態の複合研削盤1の付加製造部300および防護部500の構成とは異なっている。第4実施形態の複合研削盤4の他の点は、第1実施形態の複合研削盤1と同じである。
【0131】
図19は、複合研削盤4の斜視図である。図20は、複合研削盤4の正面図である。図21は、複合研削盤4の平面図である。図22は、複合研削盤4の側面図である。図19図22において、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を示す。図19図22においては、複合研削盤4が備える一部の構成が省略されている。
【0132】
図19図22は、研削部200が、研削を行う際の位置よりも主軸台13の回転軸ARから遠い位置にある状態を、示している。図19図22は、付加製造部300Dが、防護部500D内の退避位置Psにビーム照射部32を配している状態を、示している。図19図22において、防護部500Dを破線で示す。技術の理解を容易にするため、図19において、防護部500Cの図示を省略する。
【0133】
付加製造部300Dの主要部分は、ベッド800上に支持されている。付加製造部300Dは、複合研削盤1の付加製造部300と同様に、昇降部32Vを備える。昇降部32Vは、ビーム照射部32を鉛直方向Yに移動させることができる。複合研削盤3が備える昇降部32Vの構成は、複合研削盤1が備える昇降部32Vの構成と同じである。
【0134】
付加製造部300Dは、梁部32Hに代えて、第1梁部32H1と、第2梁部32H2と、を備える。第1梁部32H1は、X軸方向に延びる長尺状の部材である。第1梁部32H1は、保持部100に対してX軸方向に移動可能に設けられている。第1梁部32H1は、ビーム照射部32および昇降部32Vを支持している。その結果、第1梁部32H1は、ビーム照射部32および昇降部32Vを、工作物WPの回転の軸AR方向に沿って移動させることができる。図19図21において、第1梁部32H1によるビーム照射部32および昇降部32Vの移動を矢印Ay3dで示す。
【0135】
第2梁部32H2は、ベッド800上において鉛直方向Yに延びる長尺状の部材により支持されている(図19の右部、図20の右部、および図22の中央部参照)。第2梁部32H2は、Z軸方向に延びる長尺状の部材である。第2梁部32H2は、保持部100および鉛直方向Yに延びる長尺状の部材に対してZ軸方向に移動可能に設けられている。第2梁部32H2は、ビーム照射部32と昇降部32Vと第1梁部32H1とを支持している。その結果、第2梁部32H2は、ビーム照射部32と昇降部32Vと第1梁部32H1とを、Z軸方向に沿って移動させることができる。図19図21、および図22において、第2梁部32H2によるビーム照射部32および昇降部32Vの移動を矢印Az3dで示す。付加製造部300Dの他の構成は、複合研削盤1の付加製造部300の構成と同じである。
【0136】
防護部500Dは、カバー本体51Dを有する。カバー本体51Dは、第2梁部32H2を支持している部材に固定されている。カバー本体51Dは、複合研削盤1のカバー本体51と同様に、直方体状の箱である。カバー本体51Dは、カバー本体51Dの各辺がX軸、Y軸、またはZ軸に平行となる姿勢で配されている(図20の上段右部、図21の上段右部、および図22の上段右部参照)。
【0137】
カバー本体51Dは、開口53Dと、蓋部52Dと、を有する。複合研削盤3において、開口53Dは、直方体状の箱であるカバー本体51DのZ軸負方向の端の面の開口である。蓋部52Dの構成および機能は、複合研削盤3の蓋部52Cの構成および機能と同様である。
【0138】
防護部500Dは、軸AR方向、すなわちX軸方向について、研削部200とは異なる位置に設けられている。より具体的には、防護部500Dは、研削部200に対して、X軸負方向の側にある(図19図21参照)。防護部500Dは、Z軸方向およびY軸方向について、保持部100によって保持された工作物WPおよび保持部100が存在しうる範囲R100yzの外に配されている(図22の上段右部および中段左部参照)。防護部500Dは、工作物WPの回転の軸ARよりも上方に配されている(図20の上段右部および中段参照)。防護部500Dの他の点は、複合研削盤1の防護部500と同じである。
【0139】
図23は、複合研削盤4の斜視図である。図24は、複合研削盤4の正面図である。図25は、複合研削盤4の平面図である。図26は、複合研削盤4の側面図である。図23図26において、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を示す。図23図26においては、複合研削盤3が備える一部の構成が省略されている。
【0140】
図23図26は、研削部200が、研削を行う際の位置よりも主軸台13の回転軸ARから遠い位置にある状態を、示している。図23図26は、付加製造部300Dが、防護部500D外の作業位置Pwにビーム照射部32を配している状態を、示している。図25および図26において、防護部500Dを破線で示す。技術の理解を容易にするため、図25および図26において、蓋部52Dの図示を省略する。同様に、技術の理解を容易にするため、図23および図24において、防護部500Dの図示を省略する。
【0141】
付加製造部300Dは、昇降部32Vと第1梁部32H1と第2梁部32H2とによりビーム照射部32を移動させて、作業位置Pwと退避位置Psとにビーム照射部32を配する(図19図22、ならびに図23図25参照)。
【0142】
本実施形態においては、防護部500Dが、工作物WPの回転の軸AR方向について、研削部200とは異なる位置に設けられている(図20および図21参照)。このため、その結果、研削部200のX軸正方向側の空間は、防護部500Dに占められていない。このため、防護部500Dが、研削部200の砥石車21を交換する作業の邪魔になる可能性が、低い。言い換えれば、研削部200の砥石車21を交換する作業に使用できる空間が、防護部500Dによって制限されない。
【0143】
また、本実施形態においては、防護部500Dが、軸AR方向と鉛直方向Yとに垂直なZ軸方向、ならびに鉛直方向Yについて、保持部100によって保持された工作物WPおよび保持部100が存在しうる範囲R100yzの外にある(図22の中央部および上段右部参照)。このため、防護部500Dが、保持部100に対する工作物WPの取り付けおよび取り外しの作業の邪魔になる可能性が、低い。そして、防護部500Dと範囲R100yzとがZ軸方向に付いて重複しない(図22参照)。このため、保持部100に対する工作物WPの取り付けおよび取り外しの際に上から吊り下げられる工作物WPと、防護部500Dとが、干渉することもない。言い換えれば、保持部100に対する工作物WPの取り付けおよび取り外しの作業に使用できる空間が、防護部500Dによって制限されない。
【0144】
E.他の実施形態:
E1.他の実施形態1:
(1)上記実施形態においては、材料供給部33は、超硬合金の粉末Mfを付加製造部300の外部に供給する。しかし、付加層Mdの材料としては、Feベースの合金、Niベースの合金、Coベースの合金、Cuベースの合金、Alベースの合金、セラミクスなど、様々な材料を採用することができる。それらの合金は、クロム、コバルト、バナジウムなどを添加された合金とすることができる。
【0145】
また、工作物の素材としては、炭素鋼、軸受鋼、ステンレス、アルミニウムなど、様々な材料を採用することができる。
【0146】
(2)上記実施形態においては、材料供給部33は、超硬合金の粉末Mfを付加製造部300の外部に供給する(図2参照)。しかし、材料供給部は、ワイヤの形態で、材料を供給することもできる。また、材料供給部が供給する材料は、超硬合金のほか、高速度鋼とすることもできる。
【0147】
(3)上記実施形態においては、付加製造部300のビーム照射部32は、レーザービームを照射する。しかし、付加製造部は、レーザービームに代えて、アークプラズマや、電子ビームを照射することにより、材料を加熱し、溶融させてもよい。
【0148】
(4)上記実施形態においては、加圧部57は、ブロワである(図3の中段左部参照)。しかし、加圧部はブロワに限らず、保護カバー内の空間の圧力を高めることができるものであれば、エアコンプレッサなど、他の構成であってもよい。
【0149】
(5)上記実施形態においては、研削部200がZ軸方向に移動し、保持部100がX軸方向に移動する(図4参照)。しかし、研削部と保持部の一方が、互いに垂直な2方向に移動できるように構成されていてもよい。すなわち、複合研削盤は、研削部が、保持部に対して、相対的に平面内の任意の位置を取り得るように構成されていればよい。
【0150】
(6)上記実施形態においては、付加製造部300のビーム照射部32および材料供給部33がY軸方向およびX軸方向に移動し、保持部100がX軸方向に移動する(図5参照)。しかし、付加製造部のビーム照射部および材料供給部と、保持部と、の一方が、互いに垂直な2方向に移動できるように構成されていてもよい。すなわち、複合研削盤は、付加製造部のビーム照射部が、保持部に対して、相対的に任意の位置を取り得るように構成されていればよい。
【0151】
(7)上記第2実施形態においては、粉塵カバー700は、移動カバー706,708により開閉可能に構成されている(図10および図11参照)。しかし、粉塵カバーは、開閉可能ではなく、たとえば、全体としてベッドに対して取り付け可能であり、ベッドから取り外し可能である態様として、構成されてもよい。
【0152】
(8)第3実施形態においては、Z軸方向ならびに鉛直方向Yについて、保持部100によって保持された工作物WPおよび保持部100が存在しうる範囲R100yzの外に、防護部500Cがある(図15の上段右部および中段左部参照)。そのような複合研削盤3であって、さらに、第2実施形態の複合研削盤2の粉塵カバー700と同様の粉塵カバーを備える態様の複合研削盤を想定する。そのような複合研削盤においては、保持部100に対する工作物WPの取り付けおよび取り外しの作業は、粉塵カバー700を開いて行われる(図10参照)。そのような態様においても、第3実施形態の防護部500Cの位置すなわち、研削部200の上に防護部を配することにより、防護部に一部の空間を占有されることなく、保持部100に対してZ軸正方向側の粉塵カバーの開口スペースを活用して、工作物WPの取り付けおよび取り外しの作業を行うことができる(図12図18参照)。
【0153】
E2.他の実施形態2:
上記実施形態においては、付加製造部300は、工作物WPの表面Swに材料Mxを付着させる処理において、工作物WPの回転軸ARに対して、砥石車21とは逆の側に位置する部位に光ビームLBを照射する(図5の中段左部参照)。しかし、付加製造部は、工作物の回転軸に対して、砥石と同じ側に位置する部位にビームを照射してもよい。また、付加製造部は、工作物の回転軸に向かってビームを照射してもよい。
【0154】
E3.他の実施形態3:
上記実施形態においては、ビーム照射部32は、作業位置Pwに配されているとき、X軸方向について、砥石軸23が円板状の砥石車21を取り付けられる面23Sと同じ位置に、光ビームLBを照射することができる(図6の上段中央部、および図3の下段中央部参照)。しかし、ビーム照射部は、作業位置に配されているとき、工作物の回転軸方向について、砥石支持部が砥石を取り付けられる面とは異なる位置に、光ビームLBを照射する態様であってもよい。
【0155】
E4.他の実施形態4:
上記実施形態においては、防護部500は、工作物WPの回転の軸ARよりも上方であって、軸ARの方向について、砥石車21が存在しうる範囲R21の外に配されている(図3の上段中央部、および図4の中央部参照)。しかし、防護部の一部または全部は、工作物の回転の軸よりも下方に配されていてもよい。
【0156】
E5.他の実施形態5:
上記実施形態においては、防護部500は、加圧部57を有する(図3の中段左部参照)。しかし、防護部は、加圧部を備えない態様とすることもできる。そのような態様においては、防護部は、たとえば、工作物と砥石とが接触する部位と、ビーム照射部を含む光学機器との間に、空気の流れを起こすことができるエアカーテンを備えることができる。このような態様としても、クーラントが光学機器および防護部に付着する可能性を低減できる。また、防護部は、加圧部とエアカーテンの両方を備えてもよい。
【0157】
E6.他の実施形態6:
上記実施形態においては、付加製造部300は、昇降部32Vと、梁部32Hと、を備えている(図6の上段中央部参照)。しかし、付加製造部は、工作物に対してビーム照射部を移動させる手段として、たとえば、6軸のロボットアームなど、他の構成を備えていてもよい。
【0158】
E7.他の実施形態7:
上記実施形態においては、カバー本体51は、X軸方向について、保持部100によって保持された工作物WPが存在しうる範囲Rwpと重なる範囲に設けられている(図3の下段参照)。しかし、カバー本体は、工作物の回転軸方向について、保持部によって保持された工作物が存在しうる範囲と重ならない範囲に設けられていてもよい。
【0159】
上記実施形態においては、カバー本体51は、鉛直方向Yについて、保持部100によって保持された工作物WPおよび保持部100が存在しうる範囲R100の外に配されている(図3の中央部参照)。しかし、カバー本体は、工作物の回転軸方向に垂直な方向について、保持部によって保持された工作物および保持部が存在しうる範囲内に配されていてもよい。すなわち、カバー本体は、3次元空間内において、保持部によって保持された工作物および保持部と干渉しない範囲に設けられていればよい。
【0160】
E8.他の実施形態8:
上記実施形態においては、複合研削盤1の制御部900は、研削部200による工作物WPの研削の前に、付加製造部300に、防護部500内にビーム照射部32を移動させる(図3および図4参照)。制御部900は、付加製造部300による工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着の前に、研削部200に、砥石車21による工作物WPの研削が行われる位置よりも、工作物WPの回転の軸ARから離れた位置に、砥石車21を移動させる(図4および図5参照)。しかし、複合研削盤は、そのような機能を奏する制御部を備えず、複合研削盤の操作者が上記の処理を行う態様とすることもできる。
【0161】
E9.他の実施形態9:
上記第2実施形態においては、制御部900が、付加製造部300による工作物WPの表面Swへの材料Mxの付着において、第1吸引部710に、粉塵を吸引させる(図11参照)。制御部900が、研削部200による工作物WPの研削において、第2吸引部720に、ミストを吸引させる(図11参照)。しかし、複合研削盤は、そのような機能を奏する制御部を備えず、複合研削盤の操作者が上記の処理を行う態様とすることもできる。
【0162】
E10.他の実施形態10:
上記第3実施形態においては、梁部32HCは、研削部200に対して方向D3に移動可能に設けられている(図12図14、および図15の矢印Az3参照)。しかし、梁部は、Z軸方向に延びる長尺状の部材であって、研削部200に固定されている態様とすることもできる。そのような態様においては、研削部200を移動させる手段によって、研削部200とともにZ軸方向に移動させることにより、ビーム照射部32をZ軸方向に移動させることができる。そのような態様においては、ビーム照射部32は、砥石車21のZ軸正方向の端よりもさらにZ軸正方向に突出する位置に配されている。ビーム照射部32と砥石車21とは、互いに選択的に工作物WP配される。
【0163】
E11.他の実施形態11:
上記第4実施形態においては、付加製造部300Dは、第1梁部32H1と、第2梁部32H2と、を備える。第1梁部32H1は、ビーム照射部32および昇降部32Vを、工作物WPの回転の軸AR方向に沿って移動させる。第2梁部32H2は、第1梁部32H1を支持している。第2梁部32H2は、ビーム照射部32と昇降部32Vと第1梁部32H1とを、Z軸方向に沿って移動させる。しかし、複合研削盤は、第1梁部32H1が第2梁部32H2を支持している態様とすることもできる。
【0164】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0165】
1…複合研削盤、2…複合研削盤、3…複合研削盤、4…複合研削盤、12…テーブル、13…主軸台、14…心押台、15…チャック、16…センタ、20…砥石台、21…砥石車、21a…円筒研削面、22…砥石駆動モータ、23…砥石軸、23S…砥石車が取り付けられる面、24…ベルト伝動機構、32…ビーム照射部、32H…梁部、32H1…第1梁部、32H2…第2梁部、32HC…梁部、32V…昇降部、33…材料供給部、34…発振部、35…光学系、51…カバー本体、51C…カバー本体、51D…カバー本体、52…蓋部、52C…蓋部、52D…蓋部、53…開口、53C…開口、53D…開口、57…加圧部、58…接続管、100…保持部、200…研削部、300…付加製造部、300C…付加製造部、300D…付加製造部、400…クーラント供給部、500…防護部、500C…防護部、500D…防護部、700…粉塵カバー、702…固定カバー、704…固定カバー、706…移動カバー、708…移動カバー、710…第1吸引部、720…第2吸引部、800…ベッド、900…制御部、940…CPU、942…第1荒研削部、944…肉盛り部、946…第2荒研削部、948…研削部、950…RAM、960…ROM、970…ディスプレイ、980…キーボード、AR…回転軸、Ax1…工作物の移動を示す矢印、Ax3…付加製造部のX軸方向の移動を示す矢印、Ay3…付加製造部のY軸方向の移動を示す矢印、Ay3d…ビーム照射部のY軸方向の移動を示す矢印、Az2…研削部の移動を示す矢印、Az3…ビーム照射部のY軸方向の移動を示す矢印、Az3d…ビーム照射部のY軸方向の移動を示す矢印、CL…クーラント、CP…工作物と砥石車が接触する部位、D3…梁部の移動方向、LB…光ビーム、Md…付加層、Mf…粉末、Mx…材料、Pcl…蓋部の閉位置、Pop…蓋部の開位置、Ps…ビーム照射部の退避位置、Pw…ビーム照射部の作業位置、R100…Y軸方向について工作物および保持部が存在しうる範囲、R100yz…Y軸方向およびZ軸方向について工作物および保持部が存在しうる範囲、R21…X軸方向について砥石車が存在しうる範囲、R21yz…Y軸方向およびZ軸方向について砥石車が存在しうる範囲、Rnd…工作物の回転を示す矢印、Rwp…保持部によって保持された工作物WPが存在しうる範囲、Sw…工作物の表面、WP…工作物
図1
図2
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