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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006808
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電気回路体および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240110BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240110BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240110BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20240110BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L23/36 A
H01L23/36 D
H01L25/04 C
H01L23/28 J
H01L23/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108047
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯 寧
(72)【発明者】
【氏名】露野 円丈
(72)【発明者】
【氏名】金子 裕二朗
【テーマコード(参考)】
4M109
5F136
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA01
4M109CA21
4M109DA07
5F136BC05
5F136BC06
5F136CB06
5F136DA07
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA53
5F136FA62
5F136FA63
5F136FA82
5F136GA02
5F136GA11
5F136GA14
(57)【要約】
【課題】半導体装置より突出している端子に対して熱伝導部材の流出による絶縁性の低下等の対策は考慮されておらず、装置の信頼性が低下する。
【解決手段】半導体素子を封止材で封止して内蔵し、少なくとも一方面に前記半導体素子の熱を放熱する放熱面が形成された半導体装置と、前記半導体装置の前記放熱面と対向して配置され、前記半導体素子を冷却する冷却部材と、前記半導体装置と前記冷却部材との間に配置された熱伝導部材とを備え、前記半導体装置の少なくとも一側面より前記半導体素子と接続される端子が突出し、前記端子が突出している前記半導体装置の前記一側面における前記封止材と前記冷却部材との間の第1間隔は、前記端子が突出していない前記半導体装置の他側面における前記封止材と前記冷却部材との間の第2間隔より狭い電気回路体。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を封止材で封止して内蔵し、少なくとも一方面に前記半導体素子の熱を放熱する放熱面が形成された半導体装置と、
前記半導体装置の前記放熱面と対向して配置され、前記半導体素子を冷却する冷却部材と、
前記半導体装置と前記冷却部材との間に配置された熱伝導部材とを備え、
前記半導体装置の少なくとも一側面より前記半導体素子と接続される端子が突出し、
前記端子が突出している前記半導体装置の前記一側面における前記封止材と前記冷却部材との間の第1間隔は、前記端子が突出していない前記半導体装置の他側面における前記封止材と前記冷却部材との間の第2間隔より狭い電気回路体。
【請求項2】
請求項1に記載の電気回路体において、
前記第1間隔は、前記熱伝導部材の厚さ以下であり、前記第2間隔が前記熱伝導部材の厚さより広い場合は、前記第1間隔と前記熱伝導部材の厚さは等しい電気回路体。
【請求項3】
請求項1に記載の電気回路体において、
前記第2間隔は、前記熱伝導部材の厚さ以上であり、前記第1間隔が前記熱伝導部材の厚さより狭い場合は、前記第2間隔と前記熱伝導部材の厚さは等しい電気回路体。
【請求項4】
請求項1に記載の電気回路体において、
前記端子が突出している前記半導体装置の前記一側面における前記封止材に、前記放熱面の面より突出している凸部を形成し、
前記凸部と前記冷却部材との間隔は、前記第1間隔である電気回路体。
【請求項5】
請求項4に記載の電気回路体において、
前記凸部は、前記冷却部材の端部を外側から覆う高さに形成した電気回路体。
【請求項6】
請求項5に記載の電気回路体において、
前記凸部と前記放熱面との間の前記封止材に凹部を形成した電気回路体。
【請求項7】
請求項1に記載の電気回路体において、
前記端子が突出している前記半導体装置の前記一側面における前記冷却部材の端部に、前記封止材と対向する凸部を形成し、
前記凸部と前記冷却部材との間隔は、前記第1間隔である電気回路体。
【請求項8】
請求項4から請求項7までのいずれか一項に記載の電気回路体において、
前記端子は複数個の端子を備え、
前記凸部は、前記複数個の端子の位置に対応して複数個形成される電気回路体。
【請求項9】
請求項4から請求項7までのいずれか一項に記載の電気回路体において、
前記端子が突出していない前記半導体装置の他側面における前記封止材に前記放熱面よりも窪んでいる凹部を形成し、
前記凹部と前記冷却部材との間隔は、前記第2間隔である電気回路体。
【請求項10】
請求項9に記載の電気回路体において、
前記凹部の外側であって、前記半導体装置の他側面における前記封止材に凸部を形成した電気回路体。
【請求項11】
請求項4から請求項7までのいずれか一項に記載の電気回路体において、
前記端子が突出していない前記半導体装置の他側面における前記冷却部材の端部に凹部を形成し、
前記凹部と前記封止材との間隔は、前記第2間隔である電気回路体。
【請求項12】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電気回路体において、
前記熱伝導部材の熱伝導率は、5~8W/(m・K)である電気回路体。
【請求項13】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電気回路体において、
前記半導体装置は、前記半導体素子と接合する導体板を備え、
前記半導体装置は、前記導体板と前記熱伝導部材との間に絶縁シートを備える電気回路体。
【請求項14】
請求項9に記載の電気回路体において、
前記半導体素子の両面に前記放熱面が形成され、
前記冷却部材は、前記半導体装置の前記放熱面と対向して両面に配置され、
前記熱伝導部材は、前記半導体装置と前記冷却部材との間であって両面に配置される電気回路体。
【請求項15】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電気回路体を備え、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路体および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子のスイッチング動作による電力変換装置は、変換効率が高いため、民生用、車載用、鉄道用、変電設備等に幅広く利用されている。半導体素子は通電により発熱する。このため、半導体素子を冷却する冷却部材が設けられ、さらに、半導体素子を内蔵した半導体装置と、半導体装置と対向して配置される冷却部材との間には、熱伝導部材が配置されている。この熱伝導部材は、半導体装置と冷却部材との間を密着することにより、半導体素子からの発熱を冷却部材へ伝導する。半導体装置の冷却は、特に、車載用途においては、放熱性を維持するための高い信頼性が求められる。
【0003】
特許文献1には、金属放熱板を囲んで樹脂封止部の表面にグリス溜め部が形成され、半導体モジュールの厚さ方向の膨張収縮サイクルによりグリスが面方向に移動しても、外気が金属放熱板と絶縁シートとの間に侵入し難い半導体モジュール実装構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-310987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された半導体装置は、半導体装置より突出している端子に対して熱伝導部材の流出による絶縁性の低下等の対策は考慮されておらず、装置の信頼性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電気回路体は、半導体素子を封止材で封止して内蔵し、少なくとも一方面に前記半導体素子の熱を放熱する放熱面が形成された半導体装置と、前記半導体装置の前記放熱面と対向して配置され、前記半導体素子を冷却する冷却部材と、前記半導体装置と前記冷却部材との間に配置された熱伝導部材とを備え、前記半導体装置の少なくとも一側面より前記半導体素子と接続される端子が突出し、前記端子が突出している前記半導体装置の前記一側面における前記封止材と前記冷却部材との間の第1間隔は、前記端子が突出していない前記半導体装置の他側面における前記封止材と前記冷却部材との間の第2間隔より狭い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱伝導部材の流出を抑制し、信頼性の高い装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態にかかる電気回路体の平面図である。
図2】電気回路体のX-X線における断面図である。
図3】電気回路体のY-Y線における断面斜視図である。
図4】電気回路体のX-X線における断面斜視図である。
図5】電気回路体のY-Y線における断面斜視図である。
図6】半導体装置の半透過平面図である。
図7】半導体装置の回路図である。
図8】(a)~(c)電気回路体の製造工程を説明するための断面図である。
図9】(d)~(f)電気回路体の製造工程を説明するための断面図である。
図10】比較例における電気回路体のX-X線における断面図である。
図11】変形例1における電気回路体のX-X線における断面図である。
図12】(a)(b)変形例2における電気回路体のX-X線における断面図である。
図13】(a)(b)変形例3における電気回路体の側面図である。
図14】変形例4における電気回路体のX-X線における断面図である。
図15】変形例5における電気回路体のY-Y線における断面図である。
図16】変形例6における電気回路体のY-Y線における断面図である。
図17】半導体装置を用いた電力変換装置の回路図である。
図18】電力変換装置の外観斜視図である。
図19】電力変換装置のXV-XV線の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0010】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0011】
同一あるいは同様な機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0012】
図1は、実施形態にかかる電気回路体400の平面図である。
電気回路体400は、半導体装置300と冷却部材340からなる。図1に示す例では、電気回路体400は、半導体装置300を3個並列に設けてなる。
【0013】
半導体装置300は、後述する半導体素子155、157を封止材360により封止して内蔵している。半導体素子155、157と接続されている端子が半導体装置300の側面の封止材360より導出されている。これらの端子は、直流回路のコンデンサモジュール500(図17参照)に連結する正極側端子315Bおよび負極側端子319B、交流回路のモータジェネレータ192、194(図17参照)に連結する交流側端子320B等の大電流が流れるパワー端子である。また、半導体装置300の側面の封止材360より導出される端子は、下アームゲート端子325L、コレクタセンス端子325C、エミッタセンス端子325E、上アームゲート端子325Uなどの端子である。半導体装置300を3個並列に設けた電気回路体400は、半導体素子155、157のスイッチング動作により直流電流と交流電流を変換する電力変換装置として機能する。なお、電気回路体400が有する半導体装置300の個数は3個に限らず、電気回路体400の種々の形態に合わせて任意に設定される。
【0014】
冷却部材340は、半導体装置300の放熱面301(図2参照)と対向して配置され、半導体素子155、157のスイッチング動作による発熱を冷却する。具体的には、冷却部材340は、内部に冷媒が流通する流路が形成され、流路を流通する冷媒により半導体装置300の発熱を冷却する。冷媒には、水や水にエチレングリコールを混入した不凍液等を用いることができる。冷却部材340は、熱伝導率が高く軽量なアルミ系が望ましい。押し出し成型や、鍛造、ろう付け等で作製する。
【0015】
図2は、図1に示す電気回路体400のX-X線における断面図、図3は、図1に示す電気回路体400のY-Y線における断面斜視図である。
電気回路体400は、半導体装置300の両面に設けられた冷却部材340を両面から挟んで加圧する加圧機構を備えている。加圧機構は、図示を省略するが、例えば、両面の冷却部材340を互いにビス等で連結して半導体装置300側に加圧する機構である。
【0016】
図2に示すように、電力変換装置の上アーム回路を形成する第1半導体素子として、能動素子155、ダイオード156を備える(後述の図6図7参照)。能動素子155のボディダイオードを用いる場合は、ダイオード156を省略してもよい。第1半導体素子155のコレクタ側は、第2導体板431に接合されている。この接合には、はんだを用いてもよいし、焼結金属を用いてもよい。第1半導体素子155のエミッタ側には第1導体板430が接合されている。
【0017】
図3に示すように、下アーム回路を形成する第2半導体素子として、能動素子157、ダイオード158を備える(後述の図6図7参照)。第2半導体素子157のコレクタ側は、第4導体板433に接合されている。第2半導体素子157のエミッタ側には第3導体板432が接合されている。
【0018】
なお、能動素子155、157としては、Si、SiC、GaN、GaO、C等を用いることができる。能動素子155、157は、例えば、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラートランジスタ)、MOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)などのパワー半導体素子である。能動素子155、157としてMOSFETを用いた場合は、上アーム用のダイオード156、下アーム用のダイオード158は不要となる。
【0019】
導体板430、431、432、433は、電気伝導性と熱伝導率が高い材料であれば特に限定されないが、銅系又はアルミ系材料等の金属系材料や、金属系材料と高熱伝導率のダイヤモンド、カーボンやセラミック等の複合材料等を用いることが望ましい。これらは、単独で用いてもよいが、はんだや、焼結金属との接合性を高めるためNiやAg等のめっきを施してもよい。
【0020】
図2図3に示すように、導体板430、431、432、433は、電流を通電する役割の他に、半導体素子155、156、157、158が発する熱を冷却部材340に伝熱する伝熱部材としての役割をはたしている。導体板430、431、432、433と冷却部材340は電位が異なるため、この間に絶縁シート440、441を用いることが望ましい。半導体素子155、156、157、158、導体板430、431、432、433、絶縁シート440、441は、トランスファーモールド成型により封止材360で封止され、半導体装置300を構成する。半導体装置300と冷却部材340との間の接触熱抵抗を低減するために、半導体装置300と冷却部材340との間には熱伝導部材453が配置される。
【0021】
絶縁シート440、441の樹脂絶縁層442、443は、放熱板と接着性を有するものであれば特に限定されないが、粉末状の無機充填剤を分散したエポキシ樹脂系の樹脂絶縁層が望ましい。これは、接着性と放熱性のバランスが良いためである。絶縁シート440、441は、樹脂絶縁層単体でもよいが、熱伝導部材453と接する側に金属箔444を設けることが望ましい。トランスファーモールド成型工程において、絶縁シート440、441を金型に搭載する際、金型への接着を防ぐため、絶縁シート440、441の金型との接触面には、離型シート又は、金属箔444を設ける。離型シートは、熱伝導率が悪いためトランスファーモールド後に剥離する工程が必要となるが、金属箔444の場合は、銅系や、アルミ系の熱伝導率の高い金属を選択することで、トランスファーモールド後に剥離することなく使用することができる。絶縁シート440、441を含めてトランスファーモールドする事で、絶縁シート440、441の端部が封止材360で被覆されることで信頼性が向上する効果がある。
【0022】
熱伝導部材453は、熱伝導率が高い材料であれば特に限定されないが、金属、セラミックス、炭素系材料等の高熱伝導材料を樹脂材料と組み合わせて用いることが好ましい。これは、高熱伝導材料と高熱伝導材料の間、高熱伝導材料と冷却部材340の間、高熱伝導部材と絶縁シート440、441の間を樹脂材料が補填し、接触熱抵抗が低減するためである。樹脂材料は特に制限されない。例えば、シリコーン系の樹脂を主成分とする電気的な絶縁性が良好な材料が好ましい。
【0023】
熱伝導部材453の熱伝導率は5~8W/(m・K)程度である。熱伝導率の測定方法は、特に限定されない。例えば、熱伝導部材453の密度と比重と熱拡散率を測定し、密度×比重×熱拡散率で求められる。
【0024】
電気回路体400は、半導体素子155、157のスイッチング動作に応じて発熱と冷却を繰り返す、所謂、冷熱サイクルが掛かる。この冷熱サイクルにより、半導体装置300と冷却部材340の熱膨張係数が異なるため、熱伝導部材453が圧縮されて半導体装置300の外に流出する傾向にある。
【0025】
半導体装置300は、図2に示すように、半導体装置300の両側面より半導体素子155、156、157、158と接続される端子315B、325Cが突出している。端子315B、325Cが突出している半導体装置300の両側面における封止材360には、半導体装置300の放熱面301の面よりも突出している凸部454、455が形成されている。エミッタ側の凸部454の頂部と冷却部材340との間隔は、第1間隔h1である。同様に、コレクタ側の凸部455の頂部と冷却部材340の間隔は、第1間隔h1である。
【0026】
熱伝導部材453の厚さdは、エミッタ側では、半導体装置300と冷却部材340の積層方向における厚さであり、コレクタ側では、半導体装置300と冷却部材340の積層方向における厚さである。熱伝導部材453は、半導体装置300と冷却部材340の積層方向における導体板430、432の投影領域450(図4図5参照)を含む放熱面301に配置されるが、熱伝導部材453の厚さdは、少なくともこの放熱面301に配置された部分の厚さである。
【0027】
また、図3に示すように、端子315B、325Cが突出していない半導体装置300の両側面における封止材360には、半導体装置300の放熱面301の面よりも窪んでいる凹部456、457が形成されている。エミッタ側の凹部456の底部と冷却部材340との間隔は、第2間隔h2である。同様に、コレクタ側の凹部457の底部と冷却部材340の間隔は、第2間隔h2である。
【0028】
エミッタ側の凸部454の頂部と冷却部材340の間の第1間隔h1、または、コレクタ側の凸部455の頂部と冷却部材340の間の第1間隔h1は、熱伝導部材453の厚さd以下である。ここで、端子315B、325Cが突出していない半導体装置300の側面における封止材360と冷却部材340との第2間隔h2が厚さdより広い場合は、第1間隔h1と熱伝導部材453の厚さdは等しくてもよい。
【0029】
エミッタ側の凹部456の底部と冷却部材340の間の第2間隔h2、または、コレクタ側の凹部457の底部と冷却部材340の間の第2間隔h2は、熱伝導部材453の厚さd以上である。ここで、第1間隔h1が熱伝導部材453の厚さdより狭い場合は、第2間隔h2と熱伝導部材453の厚さdは等しくてもよい。
【0030】
このように、電気回路体400は、端子が突出している半導体装置300の一側面における封止材360と冷却部材340との間の第1間隔h1は、端子が突出していない半導体装置300の他側面における封止材360と冷却部材340との間の第2間隔h2より狭い。これにより、冷熱サイクルにより、半導体装置300が膨張収縮を繰り返しても、熱伝導部材453は端子が突出していない側にはみ出しやすく、端子が突出している側にはみ出し難い。そのため、冷熱サイクルを繰り返す際に、熱伝導部材453は端子が突出していない側にはみ出しやすく、この場合は隣接する半導体装置300の間の隙間を埋め、半導体装置300をより固定する効果がある。そして、熱伝導部材453は、端子が突出している側にはみ出し難いので、仮に、はみ出した熱伝導部材453が端子に付着して、マイグレーション現象等により端子間の絶縁性が低下するのを防止できる。
【0031】
図4は、図1に示す電気回路体400のX-X線における断面斜視図、図5は、図1に示す電気回路体400のY-Y線における断面斜視図である。これらの断面斜視図は、電気回路体400から冷却部材340と熱伝導部材453を取り除いた状態で、かつ半導体装置300のエミッタ側を示す。
【0032】
熱伝導部材453は、図4に示す、半導体装置300と冷却部材340の積層方向における導体板430、432の投影領域450を含む放熱面301を覆うように配置される。半導体装置300の放熱面301は、少なくとも投影領域450を含む面である。図4に示すように、端子315B、325C側における半導体装置300の側面における封止材360には、放熱面301の範囲外において、半導体装置300の放熱面301の面よりも突出している凸部454が形成されている。後述する製造工程において、封止材360を形成する際に金型に凹みを設けることで、凸部454を形成する。凸部454の形状は、特に限定されない。例えば、下の辺が長い台形が製造しやすい。また、絶縁距離を確保するために、投影領域450側における凸部454の沿線と絶縁シート440、441の外周の間に1mm以上の沿面距離を有することが望ましい。
【0033】
図5に示すように、端子315B、325Cが突出していない半導体装置300の側面における封止材360には、半導体装置300の放熱面301の面よりも窪んでいる凹部456が形成されている。後述する製造工程において、封止材360を形成する際に金型に凸部を設けることで、凹部456を形成する。凹部456の形状は、特に限定されない。例えば、下の辺が短い台形が製造しやすい。また、絶縁距離を確保するために、投影領域450側における凹部456の沿線と絶縁シート440、441の外周の間に1mm以上の沿面距離を有することが望ましい。
【0034】
図6は、半導体装置300の半透過平面図である。図7は、半導体装置300の回路図である。
図6図7に示すように、正極側端子315Bは、上アーム回路のコレクタ側から出力しており、バッテリ又はコンデンサの正極側に接続される。上アームゲート端子325Uは、上アーム回路の能動素子155のゲートから出力している。負極側端子319Bは、下アーム回路のエミッタ側から出力しており、バッテリ若しくはコンデンサの負極側、又はGNDに接続される。下アームゲート端子325Lは、下アーム回路の能動素子157のゲートから出力している。交流側端子320Bは、下アーム回路のコレクタ側から出力しており、モータに接続される。中性点接地をする場合は、下アーム回路は、GNDでなくコンデンサの負極側に接続する。
【0035】
上アームのエミッタセンス端子325Eは、上アーム回路の能動素子155のエミッタから、下アームのエミッタセンス端子325Eは、下アーム回路の能動素子157のエミッタから出力される。上アームのコレクタセンス端子325Cは、上アーム回路の能動素子155のコレクタから、下アームのコレクタセンス端子325Cは、下アーム回路の能動素子157のコレクタから出力される。
【0036】
また、半導体素子(上アーム回路)の能動素子155およびダイオード156の上下に導体板(上アーム回路エミッタ側)430、導体板(上アーム回路コレクタ側)431が配置される。半導体素子(下アーム回路)の能動素子157およびダイオード158の上下に導体板(下アーム回路エミッタ側)432、導体板(下アーム回路コレクタ側)433が配置される。
【0037】
本実施形態の半導体装置300は、上アーム回路及び下アーム回路の2つのアーム回路を、1つのモジュールに一体化した構造である2in1構造である。この他に、複数の上アーム回路及び下アーム回路を、1つのモジュールに一体化した構造を用いてもよい。この場合は、半導体装置300からの出力端子の数を低減し小型化することができる。
【0038】
図8(a)~図8(c)、図9(d)~9(f)は、電気回路体400の製造工程を説明するための断面図である。各図の左側にX-X線の断面図を、右側にY-Y線の半導体装置300の1個分の断面図を示す。
【0039】
図8(a)は、はんだ接続工程及びワイヤボンディング工程である。第2導体板431に半導体素子155のコレクタ側と半導体素子156のカソード側を接続し、半導体素子155のゲート電極、エミッタ電極、コレクタ電極をワイヤボンディングで上アームのゲート端子325U、エミッタセンス端子325E、コレクタセンス端子325Cにそれぞれ接続する。さらに、半導体素子155のエミッタ側と半導体素子156のアノード側を第1導体板430に接続して、上アーム側の回路体310を作製する。同様に、第4導体板433に半導体素子157のコレクタ側と半導体素子158のカソード側を接続し、半導体素子157のゲート電極、エミッタ電極、コレクタ電極をワイヤボンディングで下アームのゲート端子325L、エミッタセンス端子325E、コレクタセンス端子325Cにそれぞれ接続する。さらに、半導体素子157のエミッタ側と半導体素子158のアノード側を第3導体板432に接続して、下アーム側の回路体310を作製する。ただし図8(a)では、上アーム側の回路体310のみを図示し、下アーム側の回路体310については図示していない。
【0040】
図8(b)~図8(c)は、トランスファーモールド工程である。
トランスファーモールド工程において、トランスファーモールド装置601は、スプリング602、金型603を備え、さらに、絶縁シート440、441を真空吸着する機構及び、真空脱気機構を備える。図8(b)に示すように、あらかじめ175℃の恒温状態に加熱した金型603内に、絶縁シート440、441を仮置きし、絶縁シート440、441を真空吸着にて保持する。そこに、あらかじめ175℃に予熱した回路体310を絶縁シート440、441から離れた位置に金型603内にセットする。
【0041】
次に、図8(c)に示すように、上下の金型603をクランプする。このとき、スプリング602により、絶縁シート440、441と導体板430、431は加圧され密着する。次に、金型キャビティを真空排気する。所定の気圧以下になるよう真空排気が完了すると、パッキンをさらに押しつぶし、上下の金型603を完全にクランプする。この時、絶縁シート440、441と回路体310は接触する。真空状態で、絶縁シート440、441と回路体310が接触し、スプリング602による加圧力で密着するため、ボイドを巻き込まず密着することができる。そして、封止材360を金型キャビティ内に注入する。なお、絶縁シート440、441の周囲の端部は、封止材360に埋没させる。
【0042】
ここで、金型603は、X-X線の断面図に示すように、凹部604、605が、さらにY-Y線の断面図に示すように、凸部606、607を備える。凹部604、605は、図2を参照して説明したように、半導体装置300の放熱面301の面よりも突出している凸部454、455を形成する。凸部606、607は、図3を参照して説明したように、半導体装置300の放熱面301の面よりも窪んでいる凹部456、457を形成する。その後、トランスファーモールド装置601から封止材360を封止した半導体装置300を取り出し、175℃にて2時間以上の後硬化を行う。
【0043】
図9(d)は、トランスファーモールド装置601から取り出された半導体装置300を示す。半導体装置300には、端子が突出している半導体装置300の側面に放熱面301よりも突出している凸部454、455が形成されている。さらに、端子が突出していない側面に放熱面301の面よりも窪んでいる凹部456、457が形成されている。
図9(e)は、塗布工程である。冷却部材340に熱伝導部材453を塗布する。
【0044】
図9(f)は、密着・硬化工程である。熱伝導部材453が塗布された冷却部材340を半導体装置300に密着する。そして、熱伝導部材453を介して冷却部材340を半導体装置300に押し当て、熱伝導部材453を硬化することで電気回路体400を作製する。これにより、凸部454、455と冷却部材340の間隔、および凹部456、457と冷却部材340の間隔は、図2図3を参照して説明した間隔に設定される。
【0045】
図10は、比較例における電気回路体400のX-X線における断面図である。この比較例は、本実施形態と比較するために本実施形態を適用しない場合の一例を示す。
図10に示すように、半導体装置300の側面における半導体装置300の封止材360と冷却部材340との間の間隔は、半導体装置300の放熱面301と冷却部材340との間の間隔と同じである。このため、冷熱サイクルにより、熱伝導部材453が圧縮されて熱伝導部材453が半導体装置300の側面から外部へ流出する可能性がある。熱伝導部材453が、端子が突出している側にはみ出した場合は、はみ出した熱伝導部材453が端子に付着して、マイグレーション現象等により端子間の絶縁性を低下させる。
【0046】
本実施形態では、図2図3を参照して説明したように、端子が突出している半導体装置300の一側面における封止材360と冷却部材340との間の第1間隔h1は、端子が突出していない半導体装置300の他側面における封止材360と冷却部材340との間の第2間隔h2より狭い。これにより、熱伝導部材453は端子が突出している側にはみ出すのを抑制する。
【0047】
図11は、変形例1における電気回路体400のX-X線における断面図である。なお、電気回路体400のY-Y線における断面図は図3と同様である。
図2に示す実施形態では、端子が突出している半導体装置300の一側面における封止材360に凸部454、455を形成した。変形例1では、図11に示すように、放熱面301の外側における冷却部材340の端部に、封止材360と対向する凸部458、459を形成する。凸部458、459の頂部と封止材360と間隔である第1間隔h1は熱伝導部材453の厚さdより狭い。絶縁性を確保するために、冷却部材340の凸部458、459の内側の沿線は絶縁シート440、441の外周と1mm以上離すことが望ましい。変形例1に示す構成でも実施形態と同様の効果がある。さらに、トランスファーモールド工程で金型603の凹部604、605を形成する必要がなく、金型603の製造性が向上する。
【0048】
図12(a)、図12(b)は、変形例2における電気回路体400のX-X線における断面図である。図12(a)は、全体図、図12(b)は、部分拡大図である。なお、電気回路体400のY-Y線における断面図は図3と同様である。
【0049】
図2に示す実施形態では、封止材360に形成した凸部454、455は、その頂部が冷却部材340に到達しない高さに形成したが、変形例2では、図12(a)に示すように、半導体装置300と冷却部材340の積層方向において、放熱面301よりも冷却部材340の方向に高く、冷却部材340の端部を外側から覆う高さの凸部460、461を形成する。図12(b)に示すように、冷却部材340の端部において、封止材360の凸部460と冷却部材340との間隔は、第1間隔h1である。封止材360の端部に設けた凸部460、461の内側の沿線と冷却部材340の外側の沿線との第1間隔h1は熱伝導部材453の厚さdより狭い。変形例2に示す構成でも実施形態と同様の効果がある。さらに、熱伝導部材453が外部に流出しにくくなるため、熱伝導部材453の厚さdを薄くすることができ、熱抵抗が良くなり、放熱性に優れる。
【0050】
図13(a)、図13(b)は、変形例3における電気回路体400の側面図である。図13(a)は、図4の右側に相当する一方の端子側から見た側面図、図13(b)は、図4の左側に相当する他方の端子側から見た側面図である。なお、電気回路体400のY-Y線における断面図は図3と同様である。
【0051】
図4に示す実施形態では、半導体装置300の端子側の側面に沿って均一の高さの凸部454を形成した。変形例3では、図13(a)、図13(b)に示すように、半導体装置300の一側面である端子側に設けられた複数個の端子の位置に対応して複数個の凸部454を形成する。複数の凸部454は、端子の投影面に位置することにより、仮に、熱伝導部材453が凸部454と凸部454との間から半導体装置300の外に流出しても端子に付着することを防ぐことができる。変形例3に示す構成でも実施形態と同様の効果がある。なお、半導体装置300の片面(エミッタ側)のみを図示して説明したが、他の面(コレクタ側)においても同様に各端子の位置に対応してそれぞれ凸部を形成してもよい。
【0052】
また、変形例1、変形例2に、変形例3で示した構成を適用してもよい。すなわち、端子が突出している半導体装置300の一側面における冷却部材340の端部に封止材360と対向して形成する凸部458、459は、各端子の位置に対応してそれぞれ凸部を形成してもよい。さらに、端子が突出している半導体装置300の一側面における封止材360に、冷却部材340の端部を外側から覆う高さに形成した凸部460、461は、各端子の位置に対応してそれぞれ凸部を形成してもよい。
【0053】
図14は、変形例4における電気回路体400のX-X線における断面図である。なお、電気回路体400のY-Y線における断面図は図3と同様である。
図2に示す実施形態では、封止材360に凸部454、455を形成したが、変形例4では、図14に示すように、封止材360に凸部462、463を形成し、さらにこの凸部462、463と放熱面301との間の封止材360に凹部464、465を形成する。そして、凸部462、463と冷却部材340との間隔を第1間隔h1とする。第1間隔h1は熱伝導部材453の厚さdより狭い。変形例4に示す構成でも実施形態と同様の効果がある。さらに、冷熱サイクルにより熱伝導部材453が外部に流出する前に熱伝導部材453が封止材360の凹部464、465に溜まり、その結果、熱伝導部材453が外部に流出しにくいため、熱伝導部材453が端子に付着するのを効果的に防止できる。
【0054】
この変形例4に、変形例3で示した構成を適用してもよい。すなわち、端子が突出している半導体装置300の一側面における封止材360に形成する凸部462、463および凹部464、465は、各端子の位置に対応してそれぞれ形成してもよい。
【0055】
図15は、変形例5における電気回路体400のY-Y線における断面図である。なお、電気回路体400のX-X線における断面図は図2と同様であってもよく、その他、変形例1~変形例4を適用してもよい。
【0056】
図3に示す実施形態では、封止材360に凹部456、457を形成したが、変形例5では、図15に示すように、凹部456、457の外側であって封止材360に凸部466、467を形成する。換言すれば、封止材360に凸部466、467を形成し、さらにこの凸部466、467と放熱面301との間に凹部456、457を形成する。凹部456、457の底部と冷却部材340との間隔を第2間隔h2にする。第2間隔h2は熱伝導部材453の厚さdより広い。凸部466、467の頂部と冷却部材340との間隔は第2間隔h2より狭い。この変形例5に示す構成でも実施形態と同様の効果がある。さらに、冷熱サイクルにより熱伝導部材453が流出する前に封止材360の凹部456、457に溜まり、粘度が低い熱伝導部材453であってもこれが外部に流出することを防ぐ効果がある。
【0057】
図16は、変形例6における電気回路体400のY-Y線における断面図である。なお、電気回路体400のX-X線における断面図は図2と同様であってもよく、その他、変形例1~変形例4を適用してもよい。
【0058】
図3に示す実施形態では、封止材360に凹部456、457を形成したが、変形例6では、図16に示すように、冷却部材340の端部に凹部470、471を形成する。凹部470、471の底部と封止材360との間隔を第2間隔h2にする。第2間隔h2は熱伝導部材453の厚さdより広い。変形例6に示す構成でも実施形態と同様の効果がある。さらに、冷熱サイクルにより熱伝導部材453が流出する前に、冷却部材340の凹部470、471と封止材360との間に溜まり、粘度が低い熱伝導部材453であってもこれが外部に流出することを防ぐ効果がある。
【0059】
図17は、半導体装置300を用いた電力変換装置200の回路図である。
電力変換装置200は、インバータ回路部140、142と、補機用のインバータ回路部43と、コンデンサモジュール500とを備えている。インバータ回路部140及び142は、半導体装置300を複数個備えており、それらを接続することにより三相ブリッジ回路を構成している。電流容量が大きい場合には、更に半導体装置300を並列接続し、これら並列接続を三相インバータ回路の各相に対応して行うことにより、電流容量の増大に対応できる。また、半導体装置300に内蔵している半導体素子である能動素子155、157やダイオード156、158を並列接続することでも電流容量の増大に対応できる。
【0060】
インバータ回路部140とインバータ回路部142とは、基本的な回路構成は同じであり、制御方法や動作も基本的には同じである。インバータ回路部140等の回路的な動作の概要は周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0061】
上述のように、上アーム回路は、スイッチング用の半導体素子として上アーム用の能動素子155と上アーム用のダイオード156とを備えており、下アーム回路は、スイッチング用の半導体素子として下アーム用の能動素子157と下アーム用のダイオード158とを備えている。能動素子155、157は、ドライバ回路174を構成する2つのドライバ回路の一方あるいは他方から出力された駆動信号を受けてスイッチング動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。
【0062】
上述したように、上アーム用の能動素子155および下アーム用の能動素子157は、コレクタ電極、エミッタ電極、ゲート電極を備えている。上アーム用のダイオード156および下アーム用のダイオード158は、カソード電極およびアノード電極の2つの電極を備えている。図7に示すように、ダイオード156、158のカソード電極が能動素子155、157のコレクタ電極に、アノード電極が能動素子155、157のエミッタ電極にそれぞれ電気的に接続されている。これにより、上アーム用の能動素子155および下アーム用の能動素子157のエミッタ電極からコレクタ電極に向かう電流の流れが順方向となっている。能動素子155、157は、例えばIGBTである。
【0063】
なお、能動素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いても良く、この場合は、上アーム用のダイオード156、下アーム用のダイオード158は不要となる。
【0064】
各上・下アーム直列回路の正極側端子315Bと負極側端子319Bとはコンデンサモジュール500のコンデンサ接続用の直流端子にそれぞれ接続されている。上アーム回路と下アーム回路の接続部にはそれぞれ交流電力が発生し、各上・下アーム直列回路の上アーム回路と下アーム回路の接続部は各半導体装置300の交流側端子320Bに接続されている。各相の各半導体装置300の交流側端子320Bはそれぞれ電力変換装置200の交流出力端子に接続され、発生した交流電力はモータジェネレータ192または194の固定子巻線に供給される。
【0065】
制御回路172は、車両側の制御装置やセンサ(例えば、電流センサ180)などからの入力情報に基づいて、上アーム用の能動素子155、下アーム用の能動素子157のスイッチングタイミングを制御するためのタイミング信号を生成する。ドライバ回路174は、制御回路172から出力されたタイミング信号に基づいて、上アーム用の能動素子155、下アーム用の能動素子157をスイッチング動作させるための駆動信号を生成する。なお、181、182、188はコネクタである。
【0066】
上・下アーム直列回路は、不図示の温度センサを含み、上・下アーム直列回路の温度情報がマイコンに入力される。また、マイコンには上・下アーム直列回路の直流正極側の電圧情報が入力される。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知および過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全ての上アーム用の能動素子155、下アーム用の能動素子157のスイッチング動作を停止させ、上・下アーム直列回路を過温度或いは過電圧から保護する。
【0067】
図18は、図17に示す電力変換装置200の外観斜視図であり、図19は、図18に示す電力変換装置200のXV-XV線の断面斜視図である。
【0068】
電力変換装置200は、下部ケース11および上部ケース10により構成され、ほぼ直方体形状に形成された筐体12を備えている。筐体12の内部には、電気回路体400、コンデンサモジュール500等が収容されている。電気回路体400は冷却部材340へ流れる冷却流路を有しており、筐体12の一側面からは、冷却流路に連通する冷却水流入管13および冷却水流出管14が突出している。下部ケース11は、上部側が開口され、上部ケース10は、下部ケース11の開口を塞いで下部ケース11に取り付けられている。上部ケース10と下部ケース11とは、アルミニウム合金等により形成され、外部に対して密封して固定される。上部ケース10と下部ケース11とを一体化して構成してもよい。筐体12を、単純な直方体形状としたことで、車両等への取り付けが容易となり、また、生産もし易い。
【0069】
筐体12の長手方向の一側面に、コネクタ17が取り付けられており、このコネクタ17には、交流ターミナル18が接続されている。また、冷却水流入管13および冷却水流出管14が導出された面には、コネクタ21が設けられている。
【0070】
図19に図示されるように、筐体12内には、電気回路体400が収容されている。電気回路体400の上方には、制御回路172およびドライバ回路174が配置され、電気回路体400の直流端子側には、コンデンサモジュール500が収容されている。コンデンサモジュールを電気回路体400と同一高さに配置することで、電力変換装置200を薄型化でき、車両への設置自由度が向上する。電気回路体400の交流側端子320Bは、電流センサ180を貫通してコネクタ188に接続されている。また、半導体装置300の直流端子である、正極側端子315Bおよび負極側端子319Bは、それぞれ、コンデンサモジュール500の正・負極端子362A、362Bに接合される。
【0071】
以上説明した実施形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)電気回路体400は、半導体素子155、157を封止材360で封止して内蔵し、少なくとも一方面に半導体素子155、157の熱を放熱する放熱面301が形成された半導体装置300と、半導体装置300の放熱面301と対向して配置され、半導体素子155、157を冷却する冷却部材340と、半導体装置300と冷却部材340との間に配置された熱伝導部材453とを備え、半導体装置300の少なくとも一側面より半導体素子155、157と接続される端子が突出し、端子が突出している半導体装置300の一側面における封止材360と冷却部材340との間の第1間隔h1は、端子が突出していない半導体装置300の他側面における封止材360と冷却部材340との間の第2間隔h2より狭い。これにより、熱伝導部材の流出を抑制し、信頼性の高い装置を提供することができる。
【0072】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。また、上述の実施形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10・・・上部ケース、11・・・下部ケース、13・・・冷却水流入管、14・・・冷却水流出管、17、21、181、182、188・・・コネクタ、18・・・交流ターミナル、43、140、142・・・インバータ回路部、155・・・第1半導体素子(上アーム回路能動素子)、156・・・第1半導体素子(上アーム回路ダイオード)、157・・・第2半導体素子(下アーム回路能動素子)、158・・・第2半導体素子(下アーム回路ダイオード)、172・・・制御回路、174・・・ドライバ回路、180・・・電流センサ、192、194・・・モータジェネレータ、200・・・電力変換装置、300・・・半導体装置、301・・・放熱面、315B・・・正極側端子、319B・・・負極側端子、320B・・・交流側端子、325E・・・エミッタセンス端子、325L・・・下アームゲート端子、325C・・・コレクタセンス端子、325U・・・上アームゲート端子、340・・・冷却部材、360・・・封止材、400・・・電気回路体、420・・・導体板、430・・・第1導体板(上アーム回路エミッタ側)、431・・・第2導体板(上アーム回路コレクタ側)、432・・・第3導体板(下アーム回路エミッタ側)、433・・・第4導体板(下アーム回路コレクタ側)、440・・・第1絶縁シート(エミッタ側)、441・・・第2絶縁シート(コレクタ側)、442・・・第1樹脂絶縁層(エミッタ側)、443・・・第2樹脂絶縁層(コレクタ側)、444・・・金属箔、450・・・導体板の投影領域、453・・・熱伝導部材、454、460、462、466・・・エミッタ側の封止材の凸部、455、461、463、467・・・コレクタ側の封止材の凸部、456、464・・・エミッタ側の封止材の凹部、
457、465・・・コレクタ側の封止材の凹部、458・・・エミッタ側の冷却部材の凸部、459・・・コレクタ側の冷却部材の凸部、470・・・エミッタ側の冷却部材の凹部、471・・・コレクタ側の冷却部材の凹部、500・・・コンデンサモジュール、601・・・トランスファーモールド装置、602・・・スプリング。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19