(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068097
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】脈診装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A61B5/02 310P
A61B5/02 310L
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023128084
(22)【出願日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2022177642
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522433535
【氏名又は名称】株式会社パルセック
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(72)【発明者】
【氏名】丸山 昌二
(72)【発明者】
【氏名】今中 健二
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA09
4C017AB02
4C017AC03
4C017DD11
4C017FF15
(57)【要約】
【課題】診断精度を維持可能な脈診装置を提供する。
【解決手段】脈診装置1は、使用者の手首の脈診位置Pにおける脈圧を検知可能な脈圧検知部4を備える。脈圧検知部4は、その長手方向が手首の動脈Aの延び方向に交差する方向に延びる姿勢で脈診位置Pにセットすることが可能となっている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の手首の脈診位置における脈圧を検知可能な脈圧検知部を備えた脈診装置であって、
前記脈圧検知部は、その長手方向が前記手首の動脈の延び方向に交差する方向に延びる姿勢で前記脈診位置にセットすることが可能であることを特徴とする脈診装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脈診装置において、
前記脈圧検知部は、強誘電性材料で構成された圧電体を備えるとともに、前記圧電体の前記長手方向の変形に基づいて脈圧を検知可能であることを特徴とする脈診装置。
【請求項3】
請求項2に記載の脈診装置において、
前記脈圧検知部が固定される被固定部を備え、
前記被固定部における前記脈圧検知部が固定される面は、前記長手方向に沿って湾曲していることを特徴とする脈診装置。
【請求項4】
請求項3に記載の脈診装置において、
前記脈圧検知部における前記長手方向の一端には、端子部が設けられ、
前記脈圧検知部は、前記端子部が前記被固定部の湾曲部分に位置するように該被固定部に固定されていることを特徴とする脈診装置。
【請求項5】
請求項4に記載の脈診装置において、
裏面側に前記脈圧検知部が備えられた本体ケース部と、
各々が帯状をなす一対のバンドを有し、かつ、筒形状の形態をとることにより、前記本体ケース部をその裏面が手首側となる姿勢で前記手首に装着可能なバンド部と、を更に有し、
前記脈圧検知部は、その長手方向が前記バンドの長手方向と同方向に延びるよう構成されていることを特徴とする脈診装置。
【請求項6】
請求項5に記載の脈診装置において、
前記本体ケース部の表面には、前記バンド部の筒中心線方向の一方開口側が指先側になる姿勢で右手首に前記バンド部を装着することを前記使用者に促す第1表示部、及び、前記バンド部の筒中心線方向の他方開口側が指先側になる姿勢で左手首に前記バンド部を装着することを前記使用者に促す第2表示部が設けられていることを特徴とする脈診装置。
【請求項7】
請求項3に記載の脈診装置において、
前記被固定部と前記脈圧検知部との間には、軟性部材が介設されていることを特徴とする脈診装置。
【請求項8】
請求項1に記載の脈診装置において、
前記脈圧検知部は、前記脈診位置における寸部、関部及び尺部に対応するように3つ設けられ、
前記脈圧検知部の各々が対応する前記脈診位置にセットされた状態において、前記3つの脈圧検知部が前記手首の動脈の延び方向に沿って並設されていることを特徴とする脈診装置。
【請求項9】
請求項1に記載の脈診装置において、
前記脈圧検知部の位置を調整可能な位置調整部を更に備えていることを特徴とする脈診装置。
【請求項10】
請求項1に記載の脈診装置において、
前記脈圧検知部は、前記脈診位置における寸部、関部及び尺部に対応するように3つ設けられ、
隣り合う前記脈圧検知部の間隔を調整可能な間隔調整部を更に備えていることを特徴とする脈診装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の脈診装置において、
前記脈圧検知部を押圧可能な押圧部を更に備え、
前記押圧部は、前記脈圧検知部が固定される被固定部と、前記脈圧検知部を前記脈診位置にセットした状態で前記被固定部を前記脈診位置に対して直線運動で進退させることが可能な直動部と、回転運動を出力可能な駆動部と、前記駆動部と前記直動部とを連絡するよう設けられるとともに、前記駆動部の出力による回転運動を前記直動部の直線運動に変換可能な変換部と、を備えていることを特徴とする脈診装置。
【請求項12】
請求項11に記載の脈診装置において、
前記駆動部に設けられるとともに、前記回転運動を出力する出力部と、
前記出力部により回転駆動される従動回転体と、を更に有し、
前記直動部は、棒状体をなしており、
前記変換部は、前記直動部の外面に設けられた螺子山部と、前記従動回転体の回転中心に貫通形成され、当該従動回転体の回転動作により、前記直動部を螺進退させる螺子孔部とで構成されていることを特徴とする脈診装置。
【請求項13】
請求項12に記載の脈診装置において、
前記出力部は、駆動ギヤであり、
前記従動回転体は、その外周面において前記駆動ギヤと噛合可能な従動ギヤであり、
前記従動ギヤの歯数は、前記駆動ギヤの歯数よりも多いことを特徴とする脈診装置。
【請求項14】
請求項12に記載の脈診装置において、
前記直動部の外面における前記螺子山部の直線運動方向の両側には、それぞれ螺子山のない螺子無部が設けられていることを特徴とする脈診装置。
【請求項15】
請求項14に記載の脈診装置において、
前記押圧部は、前記直動部が前進した際には当該直動部を後退させる方向に付勢する一方、前記直動部が後退した際には当該直動部を前進させる方向に付勢する付勢部を更に備えていることを特徴とする脈診装置。
【請求項16】
請求項11に記載の脈診装置において、
前記駆動部は、ステッピングモータであることを特徴とする脈診装置。
【請求項17】
請求項16に記載の脈診装置において、
前記ステッピングモータは、永久磁石を含むロータを備えていることを特徴とする脈診装置。
【請求項18】
請求項11に記載の脈診装置において、
前記脈圧検知部は、前記脈診位置における寸部、関部及び尺部に対応するように3つ設けられ、
前記各脈圧検知部には、前記被固定部、前記直動部及び前記駆動部が個別に設けられていることを特徴とする脈診装置。
【請求項19】
請求項1に記載の脈診装置において、
前記脈診位置に対する前記脈圧検知部のストロークを変更することが可能な変更機構を更に備えていることを特徴とする脈診装置。
【請求項20】
請求項19に記載の脈診装置において、
前記使用者の手首を下側から支持可能な支持部と、前記支持部に上下動自在又は回動自在に支持されている基端部及び前記脈圧検知部が固定されている先端部を有するアーム部と、を更に備え、
前記アーム部は、前記脈診位置が上側を向く姿勢で前記使用者の手首が前記支持部にセットされている場合において前記脈診位置の上側から該脈診位置に対して前記脈圧検知部を押圧可能に構成されていることを特徴とする脈診装置。
【請求項21】
請求項20に記載の脈診装置において、
前記変更機構は、前記アーム部を上下動又は回動させる駆動力を発生させる他の駆動部を備え、
前記アーム部が前記他の駆動部により下側に移動される場合又は回動方向一側に回動される場合、前記脈診位置に対する前記脈圧検知部の押圧力が高くなり、かつ、前記アーム部が前記他の駆動部により上側に移動される場合又は回動方向他側に回動される場合、前記脈診位置に対する前記脈圧検知部の押圧力が低くなるように構成されていることを特徴とする脈診装置。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の脈診装置において、
前記支持部を下側から支持するベース部と、
前記脈診位置における尺部に対応する第1脈診部と、
前記脈診位置における関部に対応する第2脈診部と、
前記脈診位置における寸部に対応する第3脈診部と、を更に備え、
前記第1脈診部、前記第2脈診部及び前記第3脈診部の各々は、前記支持部及び前記アーム部を備え、
前記第1脈診部、前記第2脈診部及び前記第3脈診部は、前記手首の動脈の延び方向に沿って並設され、
前記第1脈診部及び前記第3脈診部は、前記動脈の延び方向に沿って移動可能に前記ベース部に支持され、
前記第2脈診部は、前記第1脈診部及び前記第3脈診部との間に配設され、かつ、前記ベース部に固定支持されていることを特徴とする脈診装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の健康状態等を診断する際に用いられる脈診装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、中国医学では、手首の脈の速さ、強さ、深さ等から患者の健康状態等を診断する脈診が行われている。該脈診は、病院等において医師が自身の手の指を患者の手首の動脈に当てて行うのが一般的であるが、近年、自宅等において患者自身で脈診を行うことが可能な脈診装置が提案されている。例えば、特許文献1に開示されている脈診装置は、使用者の手首の脈診位置における脈圧を検知可能な脈圧検知部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の如き脈診装置を用いた脈診時において、該脈診装置の脈圧検知部を使用者の手首にセットした際に、該脈圧検知部のセット位置が脈診位置に対して動脈の延び方向に交差する方向一側(小指側)或いは他側(親指側)にずれてしまうことがある。該ずれが生じると、脈圧検知部が脈圧を適切に検知できなくなるので、脈診装置の診断精度に影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、診断精度を維持可能な脈診装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、脈圧検知部の構造に工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、使用者の手首の脈診位置における脈圧を検知可能な脈圧検知部を備えた脈診装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明では、前記脈圧検知部は、その長手方向が前記手首の動脈の延び方向に交差する方向に延びる姿勢で前記脈診位置にセットすることが可能であることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、前記脈圧検知部は、強誘電性材料で構成された圧電体を備えるとともに、前記圧電体の前記長手方向の変形に基づいて脈圧を検知可能であることを特徴とする。
【0010】
第3の発明では、第2の発明において、前記脈圧検知部が固定される被固定部を備え、前記被固定部における前記脈圧検知部が固定される面は、前記長手方向に沿って湾曲していることを特徴とする。
【0011】
第4の発明では、第3の発明において、前記脈圧検知部における前記長手方向の一端には、端子部が設けられ、前記脈圧検知部は、前記端子部が前記被固定部の湾曲部分に位置するように該被固定部に固定されていることを特徴とする。
【0012】
第5の発明では、第4の発明において、裏面側に前記脈圧検知部が備えられた本体ケース部と、各々が帯状をなす一対のバンドを有し、かつ、筒形状の形態をとることにより、前記本体ケース部をその裏面が手首側となる姿勢で前記手首に装着可能なバンド部と、を更に有し、前記脈圧検知部は、その長手方向が前記バンドの長手方向と同方向に延びるよう構成されていることを特徴とする。
【0013】
第6の発明では、第5の発明において、前記本体ケース部の表面には、前記バンド部の筒中心線方向の一方開口側が指先側になる姿勢で右手首に前記バンド部を装着することを前記使用者に促す第1表示部、及び、前記バンド部の筒中心線方向の他方開口側が指先側になる姿勢で左手首に前記バンド部を装着することを前記使用者に促す第2表示部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
第7の発明では、第3の発明において、前記被固定部と前記脈圧検知部との間には、軟性部材が介設されていることを特徴とする。
【0015】
第8の発明では、第1の発明において、前記脈圧検知部は、前記脈診位置における寸部、関部及び尺部に対応するように3つ設けられ、前記脈圧検知部の各々が対応する前記脈診位置にセットされた状態において、前記3つの脈圧検知部が前記手首の動脈の延び方向に沿って並設されていることを特徴とする。
【0016】
第9の発明では、第1の発明において、前記脈圧検知部の位置を調整可能な位置調整部を更に備えていることを特徴とする。
【0017】
第10の発明では、第1の発明において、前記脈圧検知部は、前記脈診位置における寸部、関部及び尺部に対応するように3つ設けられ、隣り合う前記脈圧検知部の間隔を調整可能な間隔調整部を更に備えていることを特徴とする。
【0018】
第11の発明では、第1~第10のいずれかの発明において、前記脈圧検知部を押圧可能な押圧部を更に備え、前記押圧部は、前記脈圧検知部が固定される被固定部と、前記脈圧検知部を前記脈診位置にセットした状態で前記被固定部を前記脈診位置に対して直線運動で進退させることが可能な直動部と、回転運動を出力可能な駆動部と、前記駆動部と前記直動部とを連絡するよう設けられるとともに、前記駆動部の出力による回転運動を前記直動部の直線運動に変換可能な変換部と、を備えていることを特徴とする。
【0019】
第12の発明では、第11の発明において、前記駆動部に設けられるとともに、前記回転運動を出力する出力部と、前記出力部により回転駆動される従動回転体と、を更に有し、前記直動部は、棒状体をなしており、前記変換部は、前記直動部の外面に設けられた螺子山部と、前記従動回転体の回転中心に貫通形成され、当該従動回転体の回転動作により、前記直動部を螺進退させる螺子孔部とで構成されていることを特徴とする。
【0020】
第13の発明では、第12の発明において、前記出力部は、駆動ギヤであり、前記従動回転体は、その外周面において前記駆動ギヤと噛合可能な従動ギヤであり、前記従動ギヤの歯数は、前記駆動ギヤの歯数よりも多いことを特徴とする。
【0021】
第14の発明では、第12の発明において、前記直動部の外面における前記螺子山部の直線運動方向の両側には、それぞれ螺子山のない螺子無部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
第15の発明では、第14の発明において、前記押圧部は、前記直動部が前進した際には当該直動部を後退させる方向に付勢する一方、前記直動部が後退した際には当該直動部を前進させる方向に付勢する付勢部を更に備えていることを特徴とする。
【0023】
第16の発明では、第11の発明において、前記駆動部は、ステッピングモータであることを特徴とする。
【0024】
第17の発明では、第16の発明において、前記ステッピングモータは、永久磁石を含むロータを備えていることを特徴とする。
【0025】
第18の発明では、第11の発明において、前記脈圧検知部は、前記脈診位置における寸部、関部及び尺部に対応するように3つ設けられ、前記各脈圧検知部には、前記被固定部、前記直動部及び前記駆動部が個別に設けられていることを特徴とする。
【0026】
第19の発明では、第1の発明において、前記脈診位置に対する前記脈圧検知部のストロークを変更することが可能な変更機構を更に備えていることを特徴とする。
【0027】
第20の発明では、第19の発明において、前記使用者の手首を下側から支持可能な支持部と、前記支持部に上下動自在又は回動自在に支持されている基端部及び前記脈圧検知部が固定されている先端部を有するアーム部と、を更に備え、前記アーム部は、前記脈診位置が上側を向く姿勢で前記使用者の手首が前記支持部にセットされている場合において前記脈診位置の上側から該脈診位置に対して前記脈圧検知部を押圧可能に構成されていることを特徴とする。
【0028】
第21の発明では、第20の発明において、前記変更機構は、前記アーム部を上下動又は回動させる駆動力を発生させる他の駆動部を備え、前記アーム部が前記他の駆動部により下側に移動される場合又は回動方向一側に回動される場合、前記脈診位置に対する前記脈圧検知部の押圧力が高くなり、かつ、前記アーム部が前記他の駆動部により上側に移動される場合又は回動方向他側に回動される場合、前記脈診位置に対する前記脈圧検知部の押圧力が低くなるように構成されていることを特徴とする。
【0029】
第22の発明では、第20又は第21の発明において、前記支持部を下側から支持するベース部と、前記脈診位置における尺部に対応する第1脈診部と、前記脈診位置における関部に対応する第2脈診部と、前記脈診位置における寸部に対応する第3脈診部と、を更に備え、前記第1脈診部、前記第2脈診部及び前記第3脈診部の各々は、前記支持部及び前記アーム部を備え、前記第1脈診部、前記第2脈診部及び前記第3脈診部は、前記手首の動脈の延び方向に沿って並設され、前記第1脈診部及び前記第3脈診部は、前記動脈の延び方向に沿って移動可能に前記ベース部に支持され、前記第2脈診部は、前記第1脈診部及び前記第3脈診部との間に配設され、かつ、前記ベース部に固定支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
第1の発明では、脈圧検知部が、その長手方向が使用者の手首の動脈の延び方向に交差する方向に延びる姿勢で脈診位置にセットされた場合、脈圧検知部における上記交差する方向の寸法が比較的大きくなっているので、脈圧検知部と脈診位置とが上記交差する方向にずれてしまうのを抑制することが可能となる。したがって、上記ずれによって脈圧検知部が脈圧を適正に検知できない事態が発生するのを回避可能となるので、脈診装置の診断精度へ影響を与えてしまうのを防ぐことができる。
【0031】
第2の発明では、心臓から送り出された血液によって動脈における脈診位置に対応する部分が脈を打つと、該脈が脈圧検知部に作用して、圧電体が変形するようになる。圧電体に用いられる強誘電性材料は、変形する際に発生する応力によって電圧を出力する特性を有しているので、該特性を利用することで、脈診位置の脈圧を適切に検知することが可能となる。ここで、脈圧検知部は、動脈の延び方向の寸法よりも該延び方向に交差する方向の寸法が大きくなっているので、脈圧検知部に脈が作用した際、圧電体が上記延び方向よりも上記交差する方向に変形し易くなる。したがって、該脈圧検知部により、変形し易い上記交差する方向の変形に基づいて脈圧が検知されることで、例えば、比較的小さな脈圧や脈圧の微小な変化を検知することができる。
【0032】
第3の発明では、被固定部における脈圧検知部が固定される面が長手方向に沿って湾曲しているので、手首の脈診位置周辺が骨などにより起伏があっても、脈圧検知部を脈診位置に密着させた状態でセットすることが可能となる。これにより、脈圧エネルギーを脈圧検知部に作用させる際のロスを少なくすることが可能となるので、例えば、比較的小さな脈圧や脈圧の微小な変化を検知することができる。
【0033】
第4の発明では、端子部が被固定部における湾曲部分に位置しているので、該被固定部に固定された脈圧検知部を脈診位置にセットした際、端子部を手首から離間させることが可能となる。該端子部と手首とが接触することにより、脈圧検知部においてノイズが発生するのを抑制することができる。
【0034】
第5の発明では、バンド部が筒形状となるように使用者の手首に巻かれることにより、脈診装置の本体ケース部が手首に装着されると、該本体ケース部の裏面側に備えられた脈圧検知部の長手方向が動脈の延び方向に交差する方向に向くようになる。これにより、バンド部を用いて本体ケース部を手首に装着するだけで、脈圧検知部と脈診位置とが上記交差する方向にずれ難い姿勢で使用者の手首に装着することが可能となる。
【0035】
第6の発明では、使用者が右手首の脈診位置において脈診をする場合、第1表示部を視認して、筒中心線方向一方開口側が指先側になるようバンド部を右手首に装着するようになる。一方、使用者が左手首の脈診位置において脈診をする場合、第2表示部を視認して、筒中心線方向他方開口側が指先側になるようにバンド部を左手首に装着するようになる。これにより、使用者の各手首に装着するバンド部の方向を変更することで、一台の脈診装置で右手首及び左手首の脈診位置において脈診をすることができる。
【0036】
第7の発明では、脈圧検知部と被固定部との間に軟性部材が介設されているので、該軟性部材の柔軟な性質を利用して脈圧検知部が変形し易くなる。これにより、脈圧検知部の変形が阻害されることで、脈圧を適切に検知できない事態が発生するのを回避することができる。
【0037】
第8の発明では、各脈圧検知部がそれぞれに対応する脈診位置にセットされると、各脈圧検知部における動脈の延び方向に対応する寸法が比較的小さくなる。つまり、各脈圧検知部における短手方向が動脈の延び方向と略同方向を向くようになる。これにより、1つの脈圧検知部が複数の脈診位置に誤ってセットされることで、脈診の際に誤検出してしまうのを抑制することが可能となる。
【0038】
第9の発明では、脈診装置を用いて脈診する際、使用者の手首の脈診位置と脈圧検知部のセット位置とがずれている場合であっても、該ずれを無くすように脈圧検知部のセット位置が位置調整部により調整可能となる。これにより、脈診位置と脈圧検知部のセット位置とがずれてしまうことで、脈診装置の診断精度が悪化するのを防ぐことができる。
【0039】
第10の発明では、使用者の年齢や身長等により異なる各脈診位置(寸部、関部及び尺部)の位置に応じて隣り合う脈圧検知部の間隔が調整可能となる。これにより、各脈診位置に対して各脈圧検知部が適切にセットされるようになるので、脈診位置と脈圧検知部のセット位置とがずれてしまうことで、脈診装置の診断精度が悪化するのを防ぐことができる。
【0040】
第11の発明では、脈圧検知部が脈診位置にセットされた状態において、駆動部が回転運動を出力すると、該回転運動が変換部によって直動部の直線運動に変換されるようになる。これにより、被固定部が脈診位置に近づく方向或いは脈診位置から遠ざかる方向に直線的に移動して脈診位置に対する脈診検知部の押圧状態を変化させるようになる。ここで、該脈診位置に対する脈圧検知部の押圧力は、直動部の直線的な位置変化により決定され、押圧力を発生させる部分に空気圧の変動が生じる空気袋を使用していないので、例えば、上記押圧力を検知可能なセンサを用いない場合であっても、駆動部により上記押圧力を適切に制御してばらつかないようにすることが可能となり、低コストで、かつ、診断精度を維持可能な脈診装置を提供することができる。
【0041】
第12の発明では、駆動部の出力部が回転運動すると、該回転運動が螺子山部及び螺子孔部による螺子機構の螺進退動作によって直動体の直線運動に変換されるようになる。これにより、脈診位置に対する脈圧検知部の押圧力に対応する被固定部の位置が螺子山部と螺子孔部との螺合位置によって定まるようになる。したがって、例えば、脈診位置に対する脈圧検知部の押圧力を検知可能なセンサを備えなくても、上記押圧力を適切に制御することが可能となる。また、変換部として上記螺子機構を用いることで、ラックアンドピニオン機構を用いる場合に比べてバックラッシュが小さくすることができる。これにより、直動体を直線運動させる際に発生する騒音や振動によって、脈診装置の使用者に不快感を与えてしまうのを防ぐことが可能となる。
【0042】
第13の発明では、駆動部の駆動ギヤが回転運動すると、該駆動ギヤに噛合する従動ギヤが回転運動するようになる。ここで、該従動ギヤの回転数は、該従動ギヤの歯数が駆動ギヤの歯数よりも多いため、駆動ギヤの回転数よりも低くなる。これにより、駆動ギヤと従動ギヤとで減速ギヤ機構が形成されるようになる。したがって、該減速ギヤ機構においてトルクが増大するようになるので、従動ギヤを回転駆動する駆動部を小型化することができる。
【0043】
第14の発明では、螺子山部及び螺子孔部が螺進退動作することで、螺子山のない螺子無部に到達すると、該螺子無部により上記螺子山部及び螺子孔部の螺進退動作が規制されるようになる。これにより、直動体及び被固定部の過剰な直線運動が規制されるようになるので、例えば、脈診位置に対する脈圧検知部の押圧力が過大となるのを防ぐことができる。
【0044】
第15の発明では、上記螺子山部及び螺子孔部が螺子無部に到達している状態、つまり、螺子無部により上記螺子山部及び螺子孔部による螺進退動作が規制されている状態において、付勢部により直動体の螺子山部が従動ギヤの螺子孔部に対して押し付けられるようになる。これにより、螺子山部と螺子孔部とが常時噛合するようになるので、駆動部により従動回転体が回転駆動された際、螺子山部及び螺子孔部による螺進退動作が行われない事態が発生するのを回避することができる。
【0045】
第16の発明では、駆動部としてステッピングモータが用いられるようになるので、外乱等が作用した際にサーボモータに比べて停止位置を保持し易くなる。これにより、外乱等によりステッピングモータが意図せず回転運動することで、上記押圧力が変化するのを防ぐことができる。したがって、外乱等がステッピングモータに作用した場合であっても、脈圧検知部による診断精度を維持することが可能となる。
【0046】
第17の発明では、駆動部として永久磁石を含むロータを備えたステッピングモータが用いられるようになるので、永久磁石を備えない可変リラクタンス型のステッピングモータに比べて回転運動時や停止時の応答性が高くなる。これにより、被固定部による脈圧検知部の押圧力を速やかに変更することが可能となるので、脈診装置の脈診時間を短縮することができる。
【0047】
第18の発明では、脈圧検知部毎に、被固定部、直動部及び駆動部が設けられるようになるので、被固定部による押圧力を個別に変更可能となる。これにより、脈圧検知部毎に異なる押圧力が作用した状態の脈圧を検知可能となるので、脈診装置の診断精度をより一層高めることができる。
【0048】
第19の発明では、変更機構により、脈診位置に対する脈圧検知部のストロークが変更されるようになる。これにより、上記脈圧検知部のストロークを変更して、脈圧を検知することが可能となるので、脈診装置の診断精度をより一層高めることができる。
【0049】
第20の発明では、例えば、使用者は、アーム部に固定された脈圧検知部が自身の手首のどの位置に接触しているかを上方から視認することができる。これにより、例えば、使用者は、自身の手首における脈圧検知部が接触している位置と脈診位置との関係を上方から視認しながら手首を動かすことで、脈圧検知部が接触している位置と脈診位置とを一致させることが可能となる。したがって、脈圧検知部と脈診位置とがずれてしまうのを抑えることができる。
【0050】
第21の発明では、他の駆動部によりアーム部が上下動又は回動方向一側及び回動方向他側に回動されることで、脈診位置に対する脈圧検知部の押圧力を変更することが可能となる。これにより、例えば、脈診時に、脈圧検知部により、押圧力が比較的高い状態の脈圧と、押圧力が比較的低い状態の脈圧とを検知することが可能となる。したがって、脈診装置の診断精度を高めることができる。
【0051】
第22の発明では、例えば、使用者は、ベース部に固定支持された第2脈診部の脈圧検知部を自身の関部(脈診位置)に位置合わせした状態で、第1脈診部を移動させて該第1脈診部の脈圧検知部を自身の尺部(脈診位置)に位置合わせするとともに、第3脈診部を移動させて該第3脈診部の脈圧検知部を自身の寸部(脈診位置)に位置合わせすることが可能となる。これにより、使用者毎に異なる脈診位置の間隔に応じて、各脈診部の脈圧検知部の間隔を容易に調整することが可能となる。したがって、各脈圧検知部と各脈診位置とが動脈の延び方向にずれてしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る脈診装置が使用者の左腕に装着された状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線における概略断面図である。
【
図3】使用者の左腕における脈診位置を示す斜視図である。
【
図4】
図1のIV-IV線における概略断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る脈圧検知部の出力波形と変形例に係る脈圧検知部の出力波形とを示す図である。
【
図7】押圧部における被固定部が脈診位置から遠ざかる方向に移動した状態を示す概略側面図である。
【
図8】脈圧検知部及び押圧部の一部構成を示す概略側面図である。
【
図9】押圧部における被固定部が脈診位置に近づく方向に移動した状態を示す概略側面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る脈診装置が使用者の左腕に装着された場合において、各脈圧検知部がその長手方向が使用者の左手首の動脈の延び方向に交差する方向に延びる姿勢で各脈診位置にセットされている状態を示す斜視図である。
【
図11】押圧部が脈診位置に対して脈圧検知部を押圧している様子を示す概略側面図である。
【
図12】本発明の第1実施形態に係る脈診装置が使用者の右腕に装着された状態を示す斜視図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る脈診装置の使用例を示す斜視図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係る脈診装置を並設方向他側から見た図である。
【
図15】本発明の第3実施形態に係る脈診装置を並設方向他側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0054】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る脈診装置1を示す。該脈診装置1は、使用者が自身の左腕LAの左手首LW、或いは、右腕RAの右手首RW(
図12参照)に装着して、使用者自身で脈診を行う際に用いられるようになっている。
【0055】
また、脈診装置1は、厚みを有する略矩形板状をなす本体ケース部2と、該本体ケース部2に固定されたバンド部3とを備えている。該脈診装置1は、本体ケース部2の裏面が左手首LWに直接接触する姿勢で該左手首LWに装着されるようになっている。本実施形態では、説明の便宜上、本体ケース部2の厚み方向を単に「厚み方向」といい、該本体ケース部2の長手方向を単に「長手方向」といい、該長手方向に直交するよう交差する方向を単に「交差方向」というものとする。
【0056】
本体ケース部2には、厚み方向一側の面、つまり、表面の中央領域に、操作部2a及びディスプレイ部2bが設けられている。操作部2aは、交差方向に沿って4つのボタンが並設されており、各ボタンは、例えば、脈診装置1の電源のオンオフを切り替えるボタン、脈診を開始或いは停止するボタン等で構成されている。ディスプレイ部2bは、操作部2aの長手方向一側に設けられており、例えば、脈診結果や操作部2aの操作状態等に応じた表示を行うよう構成されている。
【0057】
操作部2aの長手方向他側の位置には、第1表示部2cが設けられている。該第1表示部2cは、長手方向他側を上として英語で右を意味する「RIGHT」と表示がなされている。
【0058】
ディスプレイ部2bの長手方向一側の位置には、第2表示部2dが設けられている。該第2表示部2dは、長手方向一側を上として英語で左を意味する「LEFT」と表示がなされている。
【0059】
バンド部3は、一対のバンド3aを備えている。各バンド3aは、帯状をなし、かつ、その長手方向の一端が本体ケース部2の厚み方向他側面、つまり、底面に固定されるようになっている。バンド3a同士は、例えば、面ファスナーにより、着脱自在に構成されている。また、バンド部3は、
図2に示すように、各バンド3aを使用者の左手首LWに巻き付けて筒形状の形態とすることにより、脈診装置1が使用者の左手首LWに着脱自在に装着されるようになっている。また、脈診装置1が使用者の左手首LWから取り外された状態では、各バンド3aは、その長手方向が交差方向にそれぞれ延びるように構成されている。
【0060】
左腕LAにバンド部3を巻き付けて装着する際、使用者は、第2表示部2dの表示(LEFT)によって、バンド部3の筒中心線方向の他方開口側が指先側となる姿勢で左手首LWにバンド部3を装着するよう促される。これにより、使用者は、本体ケース部2の第1表示部2cが肘側、本体ケース部2の第2表示部2dが指先側となる姿勢で使用者の左手首LWに脈診装置1を装着するようになる。なお、該左手首LWに脈診装置1が装着された状態では、指先側と本体ケース部2の長手方向一側と、肘側と本体ケース部2の長手方向他側とがそれぞれ一致している。
【0061】
一方、右腕RAにバンド部3を巻き付けて装着する際、使用者は、第1表示部2cの表示(RIGHT)によって、バンド部3の筒中心線方向の一方開口側が指先側となる姿勢で右手首RWにバンド部3を装着するよう促される。これにより、使用者は、本体ケース部2の第1表示部2cが指先側、本体ケース部2の第2表示部2dが肘側となる姿勢(
図12参照)で使用者の右手首RWに脈診装置1を装着するようになる。なお、右手首RWに脈診装置1が装着された状態では、指先側と本体ケース部2の長手方向他側と、肘側と本体ケース部2の長手方向一側とがそれぞれ一致している。
【0062】
使用者の左手首LWには、
図2及び
図3に示すように、左手首LWにおける骨BOの外周側、つまり、手の平側かつ親指側の位置において肘側から指先側に向かって延びる動脈(橈骨動脈)Aが存在している。本実施形態における本体ケース部2の長手方向が、特許請求の範囲における「動脈の延び方向」に相当する。また、本実施形態における本体ケース部2の長手方向に交差する方向(交差方向)が、特許請求の範囲における「手首の動脈の延び方向に交差する方向」に相当する。
【0063】
また、該左手首LWには、
図3に示すように、動脈Aに沿って、「尺部」、「関部」及び「寸部」と呼ばれる3つの脈診位置Pが肘側から指先側に向かって順に存在している。なお、右手首RWの脈診位置P(「尺部」、「関部」及び「寸部」)は、左手首LWの脈診位置Pと略対称の位置に存在している。
【0064】
本体ケース部2の厚み方向他側の面側、つまり、裏面側には、
図4に示すように、3つの脈圧検知部4が長手方向に沿って、かつ、互いに所定の間隔をあけて並設されている。換言すると、バンド部3を用いて本体ケース部2を左手首LWに装着した状態において、3つの脈圧検知部4が各脈診位置P(「尺部」、「関部」及び「寸部」)にそれぞれセットされるように、その位置及び間隔が設定されている。
【0065】
該脈圧検知部4は、ピエゾフィルムセンサであって、
図5に示すように、脈圧検知部4の厚み方向視で長方形状をなすとともに、脈圧検知部4の長手方向に沿って電極部4aと端子部4bとが並設されている。本実施形態では、脈圧検知部4の長手方向は、本体ケース部2の長手方向に交差する方向(交差方向)と同方向、つまり、バンド3aの長手方向と同方向に延びるよう構成されている。
【0066】
電極部4aには、圧電体としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)系強誘電性材料により構成されたピエゾフィルム4cが2つ備えられている。該ピエゾフィルム4cは、脈圧検知部4の長手方向に伸縮変形した際の応力によって電圧を発生させる特性を備えている。脈圧検知部4の厚み方向において2つのピエゾフィルム4cの間には、シグナル層(図示せず)が設けられている。また、上記厚み方向において各ピエゾフィルム4cにおけるシグナル層の反対側には、アースされたノイズ防止用のグランド層(図示せず)が設けられている。換言すると、電極部4aは、上記厚み方向において、グランド層、ピエゾフィルム4c、シグナル層、ピエゾフィルム4c、グランド層の順に積層されている。
【0067】
端子部4bには、電極部4aと電気的に接続されたプラス端子4dとマイナス端子4eとが設けられている。該プラス端子4d及びマイナス端子4eは、図示しない電線を介してコントローラ2e(
図2参照)と電気的に接続されている。また、プラス端子4d及びマイナス端子4eは、電極部4aのようなノイズ防止用のグランド層が設けられておらず、かつ、コート材により皮膜されていない構造となっている。換言すると、プラス端子4d及びマイナス端子4eは、脈圧検知部4の外部に露出する構造となっている。また、脈圧検知部4は、端子部4bにおける外部に露出する部分が、本体ケース部2の裏面側(厚み方向他側)となるように該本体ケース部2に取り付けられている。これにより、本体ケース部2が使用者の左手首LWに装着されると、上記端子部4bにおける外部に露出する部分が使用者の左手首LWと対向するようになっている。
【0068】
また、本出願人は、同一条件において脈圧を検知した場合における本実施形態に係る脈圧検知部4及び変形例に係る脈圧検知部の評価を行った。
図6は、上記評価の結果を示しており、縦軸が脈圧検知部の出力(電圧)、横軸が時間をそれぞれ示している。また、
図6において、第1出力波形W1は、本実施形態に係る脈圧検知部4が出力する電圧の波形を示し、第2出力波形W2は、変形例に係る脈圧検知部が出力する電圧の波形を示している。本実施形態に係る脈圧検知部4は、幅S1が約5mm、長さS2が約40mm、ピエゾフィルム4cの幅S3が約2mm、ピエゾフィルム4cの長さS4が約32mm、及び、ピエゾフィルム4cの厚みが約40mmに設定されている。一方、変形例に係る脈圧検知部は、幅が約5mm、長さが約20mm、ピエゾフィルムの幅が約2mm、ピエゾフィルムの長さが約12mm、及び、ピエゾフィルムの厚みが約40mmに設定されている。また、本実施形態に係る脈圧検知部4と変形例に係る脈圧検知部とは、圧力感度(pC/N)が同一に設定され、かつ、本実施形態に係る脈圧検知部4は、変形例に係る脈圧検知部よりも引っ張り感度(nC/N)が高く設定されている。圧力感度(pC/N)とは、ピエゾフィルム4cの厚み方向の圧縮変形に対する電圧の出力特性であり、引っ張り感度(nC/N)とは、ピエゾフィルム4cの長手方向の伸縮変形に対する電圧の出力特性である。なお、本実施形態では、一つの脈圧検知部4が複数の脈診位置Pにセットされるのを防止するよう、つまり、1つに脈圧検知部4が複数の脈診位置Pの脈圧を誤って検出するのを防止するよう、脈圧検知部4の幅S1が設定されている。
【0069】
図6に示すように、第1出力波形W1は、第2出力波形W2よりも変化が大きくなっている。このことから、引っ張り感度(nC/N)が高い方が同一の脈圧エネルギーから得られる出力が大きいことがわかる。換言すると、脈圧検知部4は、引っ張り感度が高いほど、脈圧エネルギーから電圧への変換効率が高くなるので、より小さな脈圧や脈圧の微小な変化が検知可能となることがわかる。ここで、引っ張り感度は、脈圧検知部4の長さS2、つまり、ピエゾフィルム4cの長さS4が長いほど、高くなる特性がある。ピエゾフィルム4cの長さS4が長いほど、ピエゾフィルム4cが脈圧検知部4の長手方向に伸縮変形し易くなるからである。そこで、本実施形態に係る脈圧検知部4では、変形例に係る脈圧検知部よりもピエゾフィルム4cの長さS4を長くして、引っ張り感度を高めることで、変形例に係る脈圧検知部よりも小さな脈圧や脈圧の微小な変化を検知することが可能となっている。
【0070】
また、本体ケース部2の内部には、
図2及び
図4に示すように、脈診位置Pに対して脈圧検知部4を押圧可能な押圧部5が収容されている。本実施形態では、押圧部5が3つ、つまり、脈圧検知部4毎に設けられている。これにより、押圧部5は、脈診位置Pに対する脈圧検知部4を押圧する力を個別に変更することが可能となっている。
【0071】
次に、
図7~
図9を用いて、押圧部5について説明する。なお、
図7~
図9では、説明の便宜上、本体ケース部2の外殻を省略している。
【0072】
押圧部5は、
図7に示すように、駆動モータ6、従動ギヤ7、直動体8、被固定部9、軟性部材10、第1支持体11、第2支持体12、第3支持体13、支持プレート14、及び、付勢部材15を備えている。
【0073】
駆動モータ6は、例えば、回転運動を出力可能かつ停止状態を保持可能なステッピングモータであって、コントローラ2e(
図2参照)により制御されるようになっている。該駆動モータ6には、永久磁石を含むロータ6aと、本体ケース部2の厚み方向に沿って延びる出力軸6bとが設けられている。該出力軸6bにおける厚み方向他側の先端には、出力軸6bと一体的に回転運動するよう駆動ギヤ6cが取り付けられている。該駆動ギヤ6cは、その外周領域が全周に亘って第1歯部6dが設けられている。
【0074】
駆動ギヤ6cの交差方向他側には、該駆動ギヤ6cよりも大径かつ逆T字状をなす従動ギヤ7が配設されている。該従動ギヤ7には、
図8に示すように、外周領域の全周に亘って設けられた第2歯部7aと、中央領域、つまり、回転中心に従動ギヤ7の厚み方向に貫通する螺子孔部7bとが設けられている。
【0075】
第2歯部7aは、駆動ギヤ6cの第1歯部6dと常時噛合している。本実施形態では、第2歯部7aの歯数は、第1歯部6dの歯数よりも多く設けられている。これにより、駆動ギヤ6cと従動ギヤ7とにより構成された減速ギヤ機構によって、駆動モータ6が出力したトルクを増大している。
【0076】
螺子孔部7bには、厚み方向に延びる棒状体をなす直動体8が挿通されている。厚み方向において、直動体8の中途領域の外面には、従動ギヤ7の螺子孔部7bと螺合する螺子山部8aが設けられている。該螺子山部8aと螺子孔部7bとは螺子機構を構成しており、該螺子機構の螺進動作或いは螺退動作により、従動ギヤ7の回転運動を直動体8の厚み方向一側或いは他側、つまり、直動体8の延び方向一側或いは他側の直線運動に変換するようになっている。本実施形態では、駆動ギヤ6cが正方向に回転動作すると、螺子山部8aが螺子孔部7bに対して螺進動作して、
図9に示すように、直動体8が厚み方向他側に向けて前進する一方、駆動ギヤ6cが逆方向に回転動作すると、螺子山部8aが螺子孔部7bに対して螺退動作して、
図7に示すように、直動体8が厚み方向一側に向けて後退するようになっている。
【0077】
直動体8における螺子山部8aの厚み方向の両側、つまり、直動体8の長手方向両側には、螺子山のない螺子無部8bがそれぞれ設けられている。
図9に示すように、螺子山部8aが螺子孔部7bに対して厚み方向一側の螺子無部8bまで螺進動作すると、該螺子無部8bにより、厚み方向他側への更なる螺進動作、つまり、直動体8の前進が規制されるようになっている。また、
図7に示すように、螺子山部8aが螺子孔部7bに対して厚み方向他側の螺子無部8bまで螺退動作すると、該螺子無部8bにより、厚み方向一側への更なる螺退動作、つまり、直動体8の後退が規制されるようになっている。
【0078】
被固定部9は、略逆T字状をなし、かつ、直動体8の厚み方向他側端部に該直動体8と一体的に移動可能に取り付けられている。該被固定部9は、例えば、樹脂材で構成され、かつ、厚み方向一側から視て交差方向(本体ケース部2の長手方向に交差する方向)の寸法が長手方向(本体ケース部2の長手方向)の寸法よりも長い長方形状をなしている。また、被固定部9には、厚み方向他側の面に押圧面9aが形成されている。該押圧面9aは、長手方向他側から視て被固定部9の長手方向、つまり、交差方向に沿って湾曲している。換言すると、押圧面9aにおける交差方向の中央領域がその交差方向両側の領域よりも厚み方向他側の位置となるよう略弓状に形成されている。本実施形態では、押圧面9aにおける交差方向一側の湾曲部分9bが、上記中央領域の交差方向他側の領域よりも厚み方向一側に位置するよう湾曲している。
【0079】
被固定部9の押圧面9aには、厚み方向視で被固定部9と略同形状をなす軟性部材10が固定されている。該軟性部材10は、被固定部9よりもやわらかい軟質材(例えば、ソルボセイン(登録商標))で構成されることにより、押圧面9aに倣って湾曲した姿勢で被固定部9に固定されている。
【0080】
また、軟性部材10の厚み方向他側の面には、脈圧検知部4が固定されている。これにより、該脈圧検知部4は、軟性部材10を介して被固定部9の押圧面9aに固定されている。換言すると、脈圧検知部4と被固定部9との間に軟性部材10が介設されている。そして、脈圧検知部4は、軟性部材10を介して被固定部9に固定されることで、被固定部9が取り付けられた直動体8と一体的に厚み方向一側或いは他側に移動、つまり、前進或いは後退可能となっている。
【0081】
本実施形態では、脈圧検知部4は、その長手方向が交差方向と一致するとともに、押圧面9aに倣って湾曲した姿勢で軟性部材10に固定されている。これにより、脈圧検知部4は、その端子部4bが押圧面9aの湾曲部分9bに位置するように、軟性部材10を介して押圧面9aに固定されている。したがって、脈診の際、つまり、脈診位置Pに対して脈圧検知部4がセットされた状態において、端子部4bを使用者の手首から離間させることが可能となるので、端子部4bが使用者の手首に接触することによって、ノイズが発生してしまうのを防ぐことが可能となっている。
【0082】
第1支持体11は、交差方向に延びる略板状をなし、かつ、交差方向一側端部の厚み方向一側面に駆動モータ6が固定されている。該第1支持体11における駆動モータ6の出力軸6bに対応する部位が該出力軸6bを挿通させるよう厚み方向に貫通しており、第1支持体11の厚み方向他側の位置に出力軸6bに取り付けられた駆動ギヤ6cが配設されている。また、第1支持体11における従動ギヤ7及び直動体8に対応する部位には、従動ギヤ7及び直動体8を挿通させる図示しない貫通孔が厚み方向に貫通形成されている。さらに、第1支持体11の交差方向他側端部には、厚み方向他側に突出する第1突出部11aが設けられている。該第1突出部11aの交差方向一側端部には、交差方向に延びる支持プレート14の交差方向他端が固定されている。
【0083】
該支持プレート14の中央領域には、直動体8を挿通させる図示しない貫通孔が厚み方向に貫通形成されている。また、支持プレート14における交差方向一側領域は、交差方向一側にいくにしたがって厚み方向他側となるように湾曲している。
【0084】
厚み方向において、支持プレート14と第1支持体11との間には、従動ギヤ7が配設されている。本実施形態では、第1支持体11と従動ギヤ7との間に図示しない樹脂製のワッシャーが介設されている。これにより、従動ギヤ7に第1支持体11側(厚み方向一側)に向かう力が作用する場合において、従動ギヤ7の回転時に生じる該従動ギヤ7と第1支持体11との摺動抵抗を低減することが可能となっている。
【0085】
第2支持体12は、交差方向に延び、かつ、第1支持体11よりも板厚の厚い略板状をなしている。そして、第2支持体12は、その交差方向他側端部において厚み方向一側に突出する第2突出部12aと、交差方向中途部において厚み方向他側に突出する第3突出部12bと、交差方向一側端部において厚み方向他側に突出する第4突出部12cとが設けられている。
【0086】
第2突出部12aにおける交差方向他側端部は、第1支持体11の交差方向一側端部かつ厚み方向他側の面に固定されている。また、第2突出部12aにおける交差方向他側の面は、交差方向一側に向けて凹設されており、該凹設された領域に駆動ギヤ6cが配設されている。
【0087】
第3突出部12bは、厚み方向他側の先端が平坦形状をなす第1当接面12dが形成されている。
【0088】
第4突出部12cの厚み方向の他側の端部には、第3支持体13が固定されている。該第3支持体13は、交差方向に延びる略鉤状をなしている。また、第3支持体13における交差方向他側の先端の領域には、厚み方向一側に向けて突出する第5突出部13aが設けられている。該第5突出部13aの厚み方向一側の先端には、平坦形状をなす第2当接面13bが設けられている。
【0089】
付勢部材15は、交差方向に延び、かつ、例えば、金属製の板ばねで構成されている。また、付勢部材15の交差方向一側端部が第2支持体12の第4突出部12cと第3支持体13における交差方向一側端部とにより厚み方向に挟持されている一方、付勢部材15の交差方向他側端部が被固定部9に固定されている。ここで、
図9に示すように、被固定部9が厚み方向他側に向けて移動、つまり、前進すると、付勢部材15が第2当接面13bに当接するとともに、該付勢部材15における第2当接面13bに当接している部位よりも交差方向他側領域が厚み方向他側に弾性変形するようになる。この付勢部材15の弾性変形から復元する力によって、直動体8が厚み方向一側、つまり、直動体8を後退させる方向に付勢されるようになる。これにより、直動体8の螺子山部8aが従動ギヤ7の螺子孔部7bに対して厚み方向一側の螺子無部8bまで螺進している状態であっても、付勢部材15により螺子山部8aを螺子孔部7bに対して押し付けることで、螺子山部8aと螺子孔部7bとが常時螺合させることが可能となっている。
【0090】
一方、
図7に示すように、被固定部9が厚み方向一側に向けて移動、つまり、後退すると、付勢部材15が第1当接面12dに当接するとともに、該付勢部材15における第1当接面12dに当接している部位よりも交差方向他側領域が厚み方向一側に弾性変形するようになる。この付勢部材15の弾性変形から復元する力によって、直動体8が厚み方向他側、つまり、直動体8を前進させる方向に付勢されるようになる。これにより、螺子山部8aが螺子孔部7bに対して厚み方向他側の螺子無部8bまで螺退している状態であっても、付勢部材15により螺子山部8aを螺子孔部7bに対して押し付けることで、螺子山部8aと螺子孔部7bとが常時螺合させることが可能となっている。
【0091】
次に、脈診装置1の使用方法について説明する。
【0092】
左腕LAで脈診をする場合、使用者は、第2表示部2dを視認して、
図1に示すように、左腕LAの指先側と本体ケース部2の長手方向一側とが一致するように脈診装置1を左手首LWに装着する。該脈診装置1が左手首LWに装着されると、
図10に示すように、脈診装置1における各脈圧検知部4は、その長手方向が動脈Aの延び方向(
図10における長手方向)に交差する方向(
図10における交差方向)に延びる姿勢で各脈診位置Pにセットされる。これにより、該脈圧検知部4のセット位置が脈診位置Pに対して交差方向にずれてしまうのを防ぐことが可能となっている。なお、
図10では、説明の便宜上、操作部2a、ディスプレイ部2b、第1表示部2c、及び、第2表示部2dを省略している。
【0093】
次に、使用者が脈診装置1の操作部2a(例えば、脈診の開始ボタン)を操作すると、脈診装置1による脈診が開始される。より詳細には、上記操作に応答して、コントローラ2e(
図2参照)が、押圧部5の駆動モータ6に回転運動を出力するよう指令する。すると、
図11に示すように、押圧部5の直動体8が脈診位置Pに近づく方向に直線的に移動、つまり、前進動作して、押圧部5の被固定部9に取り付けられた脈圧検知部4が脈診位置Pに対して押圧される。
【0094】
そして、心臓から送り出される血液によって動脈Aにおける脈診位置Pに対応する部分が脈を打つと、該脈により脈診位置Pに対して押圧されている脈圧検知部4が変形する。該脈圧検知部4は、該変形により発生する応力に応じた電圧を脈圧検知情報としてコントローラ2eに送信する。本実施形態では、押圧部5の直動体8が前進動作或いは後退動作することで、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力が10段階に変更される。該脈圧検知部4は、各段階の押圧力が作用した状態の脈圧検知情報をコントローラ2eに送信する。該コントローラ2eは、脈圧検知部4から受信した脈圧検知情報に基づいて脈診を行い(例えば、脈圧検知情報を予め設定した基準情報と比較することにより行う)、その診断結果をディスプレイ部2bに表示する。使用者は、ディスプレイ部2bに表示された診断結果を視認することで、自身の健康状態等を把握することができる。
【0095】
一方、右腕RAの脈診をする場合、使用者は、第1表示部2cを視認して、
図12に示すように、右腕RAの指先側と本体ケース部2の長手方向他側とが一致するように脈診装置1を右手首RWに装着する。そして、操作部2aにより、脈診装置1の操作部2a(例えば、脈診の開始ボタン)を操作することで、脈診装置1による脈診を行うことができる。
【0096】
以上より、本実施形態によれば、脈圧検知部4が、その長手方向が使用者の手首の動脈Aの延び方向に交差する方向に延びる姿勢で脈診位置Pにセットされた場合、脈圧検知部4における上記交差する方向の寸法が比較的大きくなっているので、脈圧検知部4と脈診位置Pとが上記交差する方向にずれてしまうのを抑制することが可能となる。したがって、上記ずれによって脈圧検知部4が脈圧を適正に検知できない事態が発生するのを回避可能となるので、脈診装置1の診断精度へ影響を与えてしまうのを防ぐことができる。
【0097】
また、心臓から送り出された血液によって動脈Aにおける脈診位置Pに対応する部分が脈を打つと、該脈が脈圧検知部4に作用して、ピエゾフィルム4cが変形するようになる。ピエゾフィルム4cに用いられる強誘電性材料は、変形する際に発生する応力によって電圧を出力する特性を有しているので、該特性を利用することで、脈診位置Pの脈圧を適切に検知することが可能となる。ここで、脈圧検知部4は、動脈Aの延び方向の寸法よりも該延び方向に交差する方向の寸法が大きくなっているので、脈圧検知部4に脈が作用した際、ピエゾフィルム4cが上記延び方向よりも上記交差する方向に変形し易くなる。したがって、該脈圧検知部4により、変形し易い上記交差する方向の変形に基づいて脈圧が検知されることで、例えば、比較的小さな脈圧や脈圧の微小な変化を検知することができる。
【0098】
また、被固定部9における脈圧検知部4が固定される押圧面9aが長手方向に沿って湾曲しているので、手首の脈診位置P周辺が骨などにより起伏があっても、脈圧検知部4を脈診位置Pに密着させた状態でセットすることが可能となる。これにより、脈圧エネルギーを脈圧検知部4に作用させる際のロスを少なくすることが可能となるので、例えば、比較的小さな脈圧や脈圧の微小な変化を検知することができる。さらに、例えば、脈圧検知部4が、該脈圧検知部4における動脈Aの延び方向に交差する方向の中央から上記交差する方向一側或いは他側にずれた領域において脈診位置Pにセットされる場合であっても、脈圧検知部4における上記ずれた領域が脈診位置Pと脈圧検知部4の厚み方向に重なっているので、該脈圧検知部4を用いて脈圧を適切に検知することが可能となる。
【0099】
また、端子部4bが被固定部9における湾曲部分9bに位置しているので、該被固定部9に固定された脈圧検知部4を脈診位置Pにセットした際、端子部4bを手首から離間させることが可能となる。該端子部4bと手首とが接触することにより、脈圧検知部4においてノイズが発生するのを抑制することができる。
【0100】
また、バンド部3が筒形状となるように使用者の手首に巻かれることにより、脈診装置1の本体ケース部2が手首に装着されると、該本体ケース部2の裏面側に備えられた脈圧検知部4の長手方向が動脈Aの延び方向に交差する方向に向くようになる。これにより、バンド部3を用いて本体ケース部2を手首に装着するだけで、脈圧検知部4と脈診位置Pとが上記交差する方向にずれ難い姿勢で使用者の手首に装着することが可能となる。
【0101】
また、使用者が右手首RWの脈診位置Pにおいて脈診をする場合、第1表示部2cを視認して、筒中心線方向一方開口側が指先側になるようバンド部3を右手首RWに装着するようになる。一方、使用者が左手首LWの脈診位置Pにおいて脈診をする場合、第2表示部2dを視認して、筒中心線方向他方開口側が指先側になるようにバンド部3を左手首LWに装着するようになる。これにより、使用者の各手首に装着するバンド部3の方向を変更することで、一台の脈診装置1で右手首RW及び左手首LWの各脈診位置Pにおいて脈診をすることができる。
【0102】
また、脈圧検知部4と被固定部9との間に軟性部材10が介設されているので、該軟性部材10の柔軟な性質を利用して脈圧検知部4が変形し易くなる。これにより、脈圧検知部4の変形が阻害されることで、脈圧を適切に検知できない事態が発生するのを回避することができる。
【0103】
また、各脈圧検知部4がそれぞれに対応する脈診位置Pにセットされると、各脈圧検知部4における動脈Aの延び方向に対応する寸法が比較的小さくなる。つまり、各脈圧検知部4における短手方向が動脈Aの延び方向と略同方向を向くようになる。これにより、1つの脈圧検知部4が複数の脈診位置Pに誤ってセットされることで、脈診の際に誤検出してしまうのを抑制することが可能となる。
【0104】
また、脈圧検知部4が脈診位置Pにセットされた状態において、駆動モータ6が回転運動を出力すると、該回転運動が螺子山部8a及び螺子孔部7bによって直動体8の直線運動に変換されるようになる。これにより、被固定部9が脈診位置Pに近づく方向或いは脈診位置Pから遠ざかる方向に直線的に移動して脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧状態を変化させるようになる。ここで、該脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力は、直動体8の直線的な位置変化により決定され、押圧力を発生させる部分に空気圧の変動が生じる空気袋を使用していないので、例えば、上記押圧力を検知可能なセンサを用いない場合であっても、駆動モータ6により上記押圧力を適切に制御してばらつかないようにすることが可能となり、低コストで、かつ、診断精度を維持可能な脈診装置1を提供することができる。
【0105】
また、駆動モータ6の駆動ギヤ6cが回転運動すると、該回転運動が螺子山部8a及び螺子孔部7bによる螺子機構の螺進退動作によって直動体8の直線運動に変換されるようになる。これにより、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力に対応する被固定部9の位置が螺子山部8aと螺子孔部7bとの螺合位置によって定まるようになる。したがって、例えば、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力を検知可能なセンサを備えなくても、上記押圧力を適切に制御することが可能となる。また、変換部として上記螺子機構を用いることで、ラックアンドピニオン機構を用いる場合に比べてバックラッシュが小さくすることができる。これにより、直動体8を直線運動させる際に発生する騒音や振動によって、脈診装置1の使用者に不快感を与えてしまうのを防ぐことが可能となる。
【0106】
また、駆動モータ6の駆動ギヤ6cが回転運動すると、該駆動ギヤ6cに噛合する従動ギヤ7が回転運動するようになる。ここで、該従動ギヤ7の回転数は、該従動ギヤ7の歯数が駆動ギヤ6cの歯数よりも多いため、駆動ギヤ6cの回転数よりも低くなる。これにより、駆動ギヤ6cと従動ギヤ7とで減速ギヤ機構が形成されるようになる。したがって、該減速ギヤ機構においてトルクが増大するようになるので、従動ギヤ7を回転駆動する駆動モータ6を小型化することができる。
【0107】
また、螺子山部8a及び螺子孔部7bが螺進退動作することで、螺子山のない螺子無部8bに到達すると、該螺子無部8bにより上記螺子山部8a及び螺子孔部7bの螺進退動作が規制されるようになる。これにより、直動体8及び被固定部9の過剰な直線運動が規制されるようになるので、例えば、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力が過大となるのを防ぐことができる。
【0108】
また、上記螺子山部8a及び螺子孔部7bが螺子無部8bに到達している状態、つまり、螺子無部8bにより上記螺子山部8a及び螺子孔部7bによる螺進退動作が規制されている状態において、付勢部材15により直動体8の螺子山部8aが従動ギヤ7の螺子孔部7bに対して押し付けられるようになる。これにより、螺子山部8aと螺子孔部7bとが常時噛合するようになるので、駆動モータ6により従動ギヤ7が回転駆動された際、螺子山部8a及び螺子孔部7bによる螺進退動作が行われない事態が発生するのを回避することができる。
【0109】
また、駆動モータ6としてステッピングモータが用いられるようになるので、外乱等が作用した際にサーボモータに比べて停止位置を保持し易くなる。これにより、外乱等によりステッピングモータが意図せず回転運動することで、上記押圧力が変化するのを防ぐことができる。したがって、外乱等がステッピングモータに作用した場合であっても、脈圧検知部4による診断精度を維持することが可能となる。
【0110】
また、駆動モータ6として永久磁石を含むロータ6aを備えたステッピングモータが用いられるようになるので、永久磁石を備えない可変リラクタンス型のステッピングモータに比べて回転運動時や停止時の応答性が高くなる。これにより、被固定部9による脈圧検知部4の押圧力を速やかに変更することが可能となるので、脈診装置1の脈診時間を短縮することができる。
【0111】
また、脈圧検知部4毎に、被固定部9、直動体8及び駆動モータ6が設けられるようになるので、被固定部9による押圧力を個別に変更可能となる。これにより、脈圧検知部4毎に異なる押圧力が作用した状態の脈圧を検知可能となるので、脈診装置1の診断精度をより一層高めることができる。
【0112】
なお、本実施形態では、脈圧検知部4の位置は固定されていたが、該脈圧検知部4の位置を調整可能な位置調整部を設けるようにしてもよい。このようにすることで、脈診装置1を用いて脈診する際、使用者の手首の脈診位置Pと脈圧検知部4のセット位置とがずれている場合であっても、該ずれを無くすように脈圧検知部4のセット位置が位置調整部により調整可能となる。これにより、脈診位置Pと脈圧検知部4のセット位置とがずれてしまうことで、脈診装置1の診断精度が悪化するのを防ぐことができる。
【0113】
また、本実施形態では、各脈診位置P(寸部、関部及び尺部)に対応するように3つ設けられた脈圧検知部4の位置は固定されていたが、隣り合う脈圧検知部4の間隔を調整可能な間隔調整部を設けるようにしてもよい。このようにすることで、使用者の年齢や身長等により異なる各脈診位置P(寸部、関部及び尺部)の位置に応じて隣り合う脈圧検知部4の間隔が調整可能となる。これにより、各脈診位置Pに対して各脈圧検知部4が適切にセットされるようになるので、脈診位置Pと脈圧検知部4のセット位置とがずれてしまうことで、脈診装置1の診断精度が悪化するのを防ぐことができる。なお、上記間隔調整部は、予め設定された使用者の身長、体重、性別、年齢、BMI(Body Mass Index)に応じて脈圧検知部4の間隔が自動調整されるようにしてもよい。
【0114】
また、本実施形態では、使用者の手首に脈診装置1を装着するためのバンド部3が備えられていたが、例えば、使用者が本体ケース部2を自身の手で押さえるようにすることで、バンド部3を備えないようにしてもよい。
【0115】
また、本実施形態では、第1表示部2cは、本体ケース部2の表面に「RIGHT」と表示がなされていたが、「RIGHT」に代えて、「R」、「右」、「ライト」、「右腕」或いは「右手首」と表示がなされていてもよく、また、これらの表示がディスプレイを用いて行われるようにしてもよい。
【0116】
また、本実施形態では、第2表示部2dは、本体ケース部2の表面に「LEFT」と表示がなされていたが、「LEFT」に代えて、「L」、「左」、「レフト」、「左腕」或いは「左手首」と表示がなされていてもよく、また、これらの表示がディスプレイを用いて行われるようにしてもよい。
【0117】
また、本実施形態では、脈圧検知部4及び押圧部5は、脈診位置Pの数に合わせて3つ設けられていたが、1つ或いは2つ、又は、4つ以上備えるようにしてもよい。
【0118】
また、本実施形態では、各脈圧検知部4には、被固定部9、直動体8及び駆動モータ6が個別に設けられていたが、1つ或いは2つの被固定部9、直動体8及び駆動モータ6により3つの脈圧検知部4を押圧するようにしてもよい。
【0119】
また、本実施形態では、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力は、駆動モータ6や直動体8により調整されていたが、これらに代えて、脈圧検知部4を空気袋に取り付け、該空気袋内の空気量の制御により、その膨張度合を変更することで、上記押圧力を調整するようにしてもよい。
【0120】
また、本実施形態では、脈圧検知部4は、その圧電体がポリフッ化ビニリデン(PVDF)系強誘電性材料で構成されていたが、脈圧を検知可能であれば他の材料(例えば、酸化チタン、チタン酸バリウム系の強誘電性材料)や圧電素子方式以外の方式(例えば、光学式、超音波式)で構成されていてもよい。
【0121】
また、本実施形態では、脈圧検知部4は、その長手方向の伸縮変形に応じた電圧を出力するよう構成されていたが、脈圧検知部4の厚み方向の圧縮変形に応じた電圧を出力するようにしてもよく、或いは、上記長手方向の伸縮変形及び上記厚み方向の圧縮変形に応じた電圧を出力するようにしてもよい。
【0122】
また、本実施形態では、脈圧検知部4は、長方形状で構成されていたが、該長方形状以外の形状(例えば、台形状、平行四辺形状、菱形状、凧形状、楕円形状)であってもよく、例えば、脈圧検知部4が楕円形状で構成された場合は、その長軸方向が特許請求の範囲における「脈圧検知部の長手方向」に相当する。
【0123】
また、本実施形態では、3つの脈診位置Pに対応する各脈圧検知部4は、2つのピエゾフィルム4cを厚み方向に積層されていたが、各脈圧検知部4が、1つのピエゾフィルム4cで構成されるようにしてもよく、或いは、例えば、長方形状、正方形状又は円形状をなす複数のピエゾフィルムを一列に並べて構成するようにしてもよい。この場合、複数のピエゾフィルムの並設方向が、特許請求の範囲における「脈圧検知部の長手方向」に相当する。
【0124】
また、本実施形態では、脈診装置1が使用者の手首に装着された状態において、脈圧検知部4は、その長手方向が手首の動脈Aの延び方向に直交する方向に延びるよう構成されていたが、上記脈圧検知部4の長手方向が上記動脈Aの延び方向に交差する方向に延びていればよく、上記脈圧検知部4の長手方向が動脈Aの延び方向に直交する方向に延びていなくてもよい。
【0125】
また、本実施形態では、駆動モータ6は、永久磁石を含むロータ6aを備えるステッピングモータで構成されていたが、該ロータ6aに永久磁石を備えなくてもよく、或いは、サーボモータなどの他の電気モータであってもよい。
【0126】
また、本実施形態では、駆動ギヤ6cの回転運動が従動ギヤ7に伝達される際減速するように構成されていたが、増速、或いは、等速で伝達するようにしてもよい。
【0127】
また、本実施形態では、駆動ギヤ6cと従動ギヤ7とは噛合していたが、ベルトやチェーンにより連絡されるようにしてもよい。
【0128】
また、本実施形態では、駆動モータ6の回転運動は、従動ギヤ7を介して直動体8に伝達されていたが、従動ギヤ7を介さずに、駆動モータ6の回転運動を直動体8に伝達するようにしてもよい。
【0129】
また、本実施形態では、螺子山部8aと螺子孔部7bとによる螺子機構により、駆動モータ6が出力する回転運動を直動体8の直線運動に変換していたが、駆動モータ6が出力する回転運動を直動体8の直線運動に変換できるものであれば螺子機構に限定されない。該螺子機構の代わりに、例えば、ランクアンドピニオン機構、クランク機構、リンク機構、カム機構、歯車機構などを用いてもよい。
【0130】
また、本実施形態では、被固定部9の押圧面9aが湾曲するよう形成されていたが、平坦な形状であってもよい。
【0131】
また、本実施形態では、軟性部材10がソルボセイン(登録商標)で構成されていたが、ソルボセイン(登録商標)以外の軟質材(例えば、シリコーン系粘着剤等のシリコン系材料を用いた両面テープやポリウレタン系緩衝材)を用いてもよい。
【0132】
また、本実施形態では、被固定部9と脈圧検知部4との間に軟性部材10が介設されていたが、被固定部9の押圧面9aに脈圧検知部4を直接取り付けるようにしてもよい。
【0133】
<第2実施形態>
次に、
図13及び
図14を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。
図13及び
図14は、本発明の第2実施形態に係る脈診装置50に使用者が自身の左腕LAの左手首LW(手首)をセットしている例を示している。
【0134】
脈診装置50は、
図13に示すように、ベース部51と、脈診部52とを備えている。ベース部51は、略矩形板状、つまり、上面及び下面が平面形状をなしている。ベース部51の上面には、脈診部52が取り付けられている。換言すると、ベース部51は、脈診部52を下方から支持するように構成されている。また、ベース部51の下面は、脈診装置50が載置されるテーブル等の上面と接触するようになっている。
【0135】
本実施形態では、ベース部51と脈診部52とが重ねられている方向を脈診装置50の厚み方向とする。該厚み方向は、上下方向と略一致しており、厚み方向一側は上側であり、厚み方向他側は下側である。
【0136】
脈診部52は、脈診位置Pにおける尺部に対応する第1脈診部53と、脈診位置Pにおける関部に対応する第2脈診部54と、脈診位置Pにおける寸部に対応する第3脈診部55とを備えている。第1脈診部53、第2脈診部54及び第3脈診部55は、使用者の左手首LW(手首)の動脈Aの延び方向に沿って並設されている。
【0137】
第1脈診部53、第2脈診部54及び第3脈診部55の並設されている方向を並設方向とし、第2脈診部54を基準として第3脈診部55が配設されている側を並設方向一側、第1脈診部53が配設されている側を並設方向他側とする。本実施形態では、並設方向が動脈Aの延び方向と略一致している。
【0138】
第1脈診部53は、第1支持部53aと、第1アーム部53bとを備えている。第2脈診部54は、第2支持部54aと、第2アーム部54bとを備えている。第3脈診部55は、第3支持部55aと、第3アーム部55bとを備えている。
【0139】
第1支持部53a、第2支持部54a、第3支持部55a、第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55bは、樹脂材で構成されている。
【0140】
第1支持部53a、第2支持部54a及び第3支持部55aは、並設方向一側から見て略L字状をなし、かつ、並設方向に厚みを有している。これにより、第1支持部53a、第2支持部54a及び第3支持部55aは、使用者の左手首LW(手首)を厚み方向他側(下側)から支持可能に構成されている。
【0141】
第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55bは、並設方向他側から見て各先端部分(交差方向他側の部分)が厚み方向他側(下側)に屈曲する略フック状をなし、かつ、並設方向に厚みを有している。第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55bの並設方向の厚みは、第1支持部53a、第2支持部54a及び第3支持部55aの並設方向の厚みよりも小さくなっている。そして、第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55bには、各基端部が対応する支持部に回動自在に支持されるとともに、各先端部には脈圧検知部4が固定されている(
図13参照)。
【0142】
該脈圧検知部4は、本発明の第1実施形態にかかる脈診装置1と同様の構成であるため、説明を省略する。また、第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55bにおける各先端部と各脈圧検知部4との間には、図示しない軟性部材が介設されている。該軟性部材は、本発明の第1実施形態に係る脈診装置1の軟性部材10と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0143】
次に、脈診部52の詳細構造について、第1脈診部53を用いて説明する。
【0144】
第1支持部53aは、交差方向(水平方向)に延びるロア支持部53cと、ロア支持部53cの交差方向一側端部に連続して設けられ、厚み方向一側(上側)に延びるサイド支持部53dとを備えている。ロア支持部53cは、使用者の左手首LW(手首)を厚み方向他側(下側)から支持するように構成されている。サイド支持部53dは、使用者の左手首LW(手首)を交差方向一側(右側)から支持するように構成されている。
【0145】
ロア支持部53cは、その交差方向の他側端部が厚み方向一側に向けて湾曲している。これにより、ロア支持部53cは、左下側から使用者の左手首LW(手首)を支持するようになっている。
【0146】
また、ロア支持部53cは、その交差方向の中央部分から厚み方向他側に向けて突出する第6突出部53jが設けられている。該第6突出部53jは、ベース部51における交差方向の中央部分に設けられた溝部51aと嵌合している(
図14参照)。該溝部51aは、ベース部51における交差方向の中央部分において並設方向に沿って延びるように設けられている。
【0147】
本実施形態では、第6突出部53jの外面には、ラックギヤ(不図示)が設けられている。また、ベース部51には、ラックギヤに常時噛合するピニオンギヤ(不図示)が設けられている。そして、使用者が図示しない操作部(例えば、ピニオンギヤに連結されたつまみ)を回転操作すると、操作部に連結されたピニオンギヤが回転し、該ピニオンギヤと噛合するラックギヤが並設方向に沿って移動するようになっている。該ラックギヤが並設方向に移動すると、ラックギヤが設けられている第1脈診部53(第1支持部53a及び第1アーム部53b)が並設方向に沿って移動するようになる。本実施形態では、第1脈診部53は、第6突出部53jがベース部51の溝部51aに嵌合した状態において、ベース部51に対して並設方向一側及び並設方向他側に沿って移動可能に構成されている。
【0148】
サイド支持部53dの内部には、他の駆動モータ56と、中間ギヤ部57とが備えられている。
【0149】
他の駆動モータ56は、例えば、ステッピングモータであり、第1アーム部53bを回動させる駆動力を発生させるように構成されている。また、他の駆動モータ56には、該他の駆動モータ56の回転駆動力を出力するための他の出力軸56aが設けられている。該他の出力軸56aは、並設方向に沿って延びている。また、他の出力軸56aの先端には、他の駆動ギヤ56bが固定されている。
【0150】
中間ギヤ部57は、サイド支持部53dに固定され、かつ、並設方向に沿って延びる中間軸57aと、中間軸57aに対して回転自在に支持された中間ギヤ57bとを備えている。該中間ギヤ57bは、他の駆動ギヤ56bと常時噛合している。また、中間ギヤ57bの歯数は、他の駆動ギヤ56bの歯数よりも多くなっている。これにより、他の駆動ギヤ56bと中間ギヤ57bとにより、第1減速ギヤ機構が形成されるようになっている。
【0151】
第1アーム部53bは、基端部53eと、連絡部53fと、先端部53gとを備えている。第1アーム部53bは、
図14に示す姿勢の例では、基端部53eが、交差方向一側端部に設けられている。連絡部53fは、基端部53eから交差方向他側と厚み方向一側との間の方向(左斜め上側)に連続して延びるように設けられている。先端部53gは、連絡部53fの交差方向他側端部から厚み方向他側(下側)に連続して延びるように設けられている。本実施形態では、第1アーム部53bは、基端部53eを中心に回動可能に構成されている。これにより、脈診位置Pが上側を向く姿勢(上方に向く姿勢)で使用者の手首が第1支持部53aにセットされている場合において、第1アーム部53bは、脈診位置Pの上側(上方)から脈診位置Pに対して脈圧検知部4を押圧可能に構成されている。
【0152】
基端部53eには、並設方向に沿って延びるアーム軸53hが固定されている。該アーム軸53hには、他の従動ギヤ53iが固定されている。該他の従動ギヤ53iは、中間ギヤ57bと常時噛合している。また、他の従動ギヤ53iの歯数は、中間ギヤ57bの歯数よりも多くなっている。これにより、他の従動ギヤ53iと中間ギヤ57bとにより、第2減速ギヤ機構が形成されるようになっている。
【0153】
先端部53gは、その厚み方向他側(下側)の端部が交差方向に沿って湾曲している。換言すると、先端部53gの厚み方向他側の端面が、厚み方向他側に凸となるように円弧状に形成されている。
【0154】
脈圧検知部4は、その厚み方向から見て長方形状をなしている。また、脈圧検知部4は、その長手方向が交差方向と略一致する姿勢で先端部53gに固定されている。換言すると、脈圧検知部4は、その長手方向に交差する方向が並設方向と略一致する姿勢で先端部53gに固定されている。これにより、脈圧検知部4は、その長手方向が手首の動脈Aの延び方向に交差する方向に延びる姿勢で脈診位置Pにセットすることが可能となっている。
【0155】
次に、第1アーム部53bの回動動作について説明する。
【0156】
他の駆動モータ56により他の駆動ギヤ56bが一側に回転駆動されると、該他の駆動ギヤ56bと噛合する中間ギヤ57bが回転する。中間ギヤ57bが回転すると、該中間ギヤ57bと噛合する他の従動ギヤ53iも回転する。他の従動ギヤ53iが回転すると、該従動ギヤ53iと一体に第1アーム部53bが回動方向一側に回動する。つまり、先端部53gが厚み方向他側(下側)に向けて移動する。これにより、第1アーム部53bの先端部53gが脈診位置Pに近づく方向に移動するので、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力が高くなる。このとき、使用者の左手首LWは、ロア支持部53cにより下方から支持されているため、使用者の左手首LWが第1アーム部53bの先端部53gとロア支持部53cとで厚み方向(上下方向)に挟持されるようになる。これにより、脈圧検知部4を脈診位置Pに対して安定して押圧することが可能となっている。
【0157】
一方、他の駆動モータ56により他の駆動ギヤ56bが他側に回転駆動されると、該他の駆動ギヤ56bの回転が中間ギヤ57bを介して他の従動ギヤ53iに伝達されることで、該他の従動ギヤ53iと一体に第1アーム部53bが回動方向他側に回動する。つまり、先端部53gが厚み方向一側に向けて移動する。これにより、第1アーム部53bの先端部53gが脈診位置Pから遠ざかる方向に移動するので、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力が低くなる。
【0158】
本実施形態では、図示しないコントローラが他の駆動モータ56を制御することで、第1アーム部53bの回動位置を調整可能、つまり、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力を調整可能となっている。
【0159】
また、本実施形態では、アーム部(第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55b)が回動動作すると、脈診位置Pに対する脈圧検知部4のストロークが変更されるようになっている。つまり、例えば、第1アーム部53bが回動方向一側に回動すると、脈圧検知部4が脈診位置Pに近づく方向にストロークすることで、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力が高くなるようになっている。一方、例えば、第1アーム部53bが回動方向他側に回動すると、脈圧検知部4が脈診位置Pから遠ざかる方向にストロークすることで、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力が低くなるようになっている。なお、本実施形態における「他の駆動モータ56、中間ギヤ部57、第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55b」が、特許請求の範囲における「変更機構」に相当する。
【0160】
第2脈診部54は、ベース部51に固定支持されている、つまり、動脈Aの延び方向(並設方向)に沿って移動不能にベース部51に支持されている。第2脈診部54は、ベース部51に固定支持されている以外は、第1脈診部53と共通の構成を有しているため、説明を省略する。本実施形態では、第2脈診部54の第2支持部54aがベース部51に固定されている。
【0161】
第3脈診部55は、第1脈診部53と共通の構成を有しているため、説明を省略する。
【0162】
本実施形態では、第1脈診部53、第2脈診部54及び第3脈診部55は、それぞれに設けられた他の駆動モータ56を制御することにより、各アーム部(第1アーム部53b、第2アーム部54b、第3アーム部55b)の回動位置を個別に調整することが可能となっている。これにより、各脈診位置Pへの各脈圧検知部4の押圧力を個別に調整可能となっている。
【0163】
また、本発明の第2実施形態に係る脈診装置50を用いて使用者の右腕の右手首を脈診する際には、左手首LWを脈診する場合とは並設方向で逆方向から脈診装置50に右手首をセットする。換言すると、左手首LWにおいて脈診する場合には、
図14に示すように左手首LWの右側にサイド支持部53dが位置していたが、右手首において脈診する場合には、右手首の左側にサイド支持部53dが位置するように脈診装置50に右手首をセットする。これにより、各手首の親指側に位置する動脈(橈骨動脈)Aの脈診位置Pに各アーム部(第1アーム部53b、第2アーム部54b、第3アーム部55b)の先端部分に設けられた脈圧検知部4をセットし易くなっている。
【0164】
以上より、本実施形態によれば、変更機構(他の駆動モータ56、中間ギヤ部57、第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55b)により、脈診位置Pに対する脈圧検知部4のストロークが変更されるようになる。これにより、上記脈圧検知部4のストロークを変更して、脈圧を検知することが可能となるので、脈診装置1の診断精度をより一層高めることができる。
【0165】
また、例えば、使用者は、アーム部(第1アーム部53b、第2アーム部54b、第3アーム部55b)に固定された脈圧検知部4が自身の手首のどの位置に接触しているかを上方から視認することができる。これにより、例えば、使用者は、自身の手首における脈圧検知部4が接触している位置と脈診位置Pとの関係を上方から視認しながら手首を動かすことで、脈圧検知部4が接触している位置と脈診位置Pとを一致させることが可能となる。したがって、脈圧検知部4と脈診位置Pとがずれてしまうのを抑えることができる。
【0166】
また、他の駆動モータ56によりアーム部(第1アーム部53b、第2アーム部54b、第3アーム部55b)が回動方向一側及び回動方向他側に回動されることで、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力を変更することが可能となる。これにより、例えば、脈診時に、脈圧検知部4により、押圧力が比較的高い状態の脈圧と、押圧力が比較的低い状態の脈圧とを検知することが可能となる。したがって、脈診装置50の診断精度を高めることができる。
【0167】
また、例えば、使用者は、ベース部51に固定支持された第2脈診部54の脈圧検知部4を自身の関部(脈診位置P)に位置合わせした状態で、第1脈診部53を移動させて該第1脈診部53の脈圧検知部4を自身の尺部(脈診位置P)に位置合わせするとともに、第3脈診部55を移動させて該第3脈診部55の脈圧検知部4を自身の寸部(脈診位置P)に位置合わせすることが可能となる。これにより、使用者毎に異なる脈診位置Pの間隔に応じて、各脈診部(第1脈診部53、第2脈診部54、第3脈診部55)の脈圧検知部4の間隔を容易に調整することが可能となる。したがって、各脈圧検知部4と各脈診位置Pとが動脈Aの延び方向にずれてしまうのを抑制することができる。
【0168】
なお、本実施形態では、ベース部51が備えられていたが、ベース部51をなくしてもよい。
【0169】
また、本実施形態では、脈診部52が3つ(第1脈診部53、第2脈診部54、第3脈診部55)備えられていたが、1以上の脈診部52を備えていればよい。
【0170】
また、本実施形態では、第1脈診部53、第2脈診部54及び第3脈診部55は、各アーム部(第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55b)や各支持部(第1支持部53a、第2支持部54a及び第3支持部55a)の大きさ、形状を個別に異ならせるようにしてもよい。
【0171】
また、本実施形態では、第1支持部53a、第2支持部54a及び第3支持部55aは、並設方向一側から見て、略L字状に形成されていたが、使用者の手首を下側から支持可能であれば略L字状以外の形状(例えば、U字状)であってもよい。
【0172】
また、本実施形態では、第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55bは、並設方向他側から見て、厚み方向他側(下側)に屈曲する略フック状に形成されていたが、各アーム部の脈圧検知部4を脈診位置Pに押圧可能であれば、略フック状以外の形状(例えば、L字状)であってもよい。
【0173】
また、本実施形態では、第1脈診部53及び第3脈診部55が並設方向(動脈Aの延び方向)に沿って移動可能にベース部51に支持されていたが、ベース部51に固定支持するようにしてもよい。
【0174】
また、本実施形態では、第2脈診部54がベース部51に固定支持されていたが、並設方向(動脈Aの延び方向)に沿って移動可能にベース部51に支持するようにしてもよい。
【0175】
また、本実施形態では、他の駆動モータ56を備える例について説明したが、他の駆動モータ56以外の手段(例えば、使用者による手動操作で第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55bを回動させる)を用いてもよい。
【0176】
<第3実施形態>
次に、
図15を用いて、本発明の第3実施形態について説明する。第2実施形態では、アーム部(第1アーム部53b、第2アーム部54b、第3アーム部55b)が回動することにより、脈診位置Pに対する脈圧検知部4のストロークが変更されるようになっていたが、第3実施形態では、アーム部(第1アーム部53b、第2アーム部54b、第3アーム部55b)が厚み方向一側(上側)及び厚み方向他側(下側)に移動することにより、脈診位置Pに対する脈圧検知部4のストロークが変更されるようになっている。その他は、第2実施形態と共通するため、説明を省略する。第3実施形態では、第1脈診部53を用いて説明する。
【0177】
第1アーム部53bは、
図15に示す姿勢の例では、基端部53eが、交差方向一側端部において厚み方向(上下方向)に延びるように設けられている。連絡部53fは、基端部53eの厚み方向一側端部から交差方向他側と厚み方向一側との間の方向(左斜め上側)に連続して延びるように設けられている。先端部53gは、連絡部53fの交差方向他側端部から厚み方向他側(下側)に連続して延びるように設けられている。
【0178】
基端部53eの交差方向他側の面には、他のラックギヤ53kが設けられている。該他のラックギヤ53kは、その交差方向他側に設けられた中間ギヤ部57の中間ギヤ57bと常時噛合している。また、中間ギヤ部57の交差方向他側には、他の駆動モータ56が配設されている。他の駆動モータ56の他の駆動ギヤ56bは、中間ギヤ57bと常時噛合している。
【0179】
本実施形態では、他のラックギヤ53kと中間ギヤ57bとがラックアンドピニオン機構を構成している。これにより、中間ギヤ57bの回転運動が、他のラックギヤ53kを備える第1アーム部の厚み方向一側及び厚み方向他側の直線運動、つまり、上下方向の運動に変換されるようになっている。
【0180】
次に、第1アーム部53bの移動動作について説明する。
【0181】
他の駆動モータ56により他の駆動ギヤ56bが一側に回転駆動されると、該他の駆動ギヤ56bと噛合する中間ギヤ57bが回転する。中間ギヤ57bが回転すると、該中間ギヤ57bの回転が中間ギヤ57bと噛合する他のラックギヤ53kに伝達され、第1アーム部53bが第1支持部53aに対して厚み方向他側(下側)に移動する。これにより、第1アーム部53bの先端部53gが脈診位置Pに近づく方向に移動するので、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力が高くなる。このとき、使用者の左手首LWは、ロア支持部53cにより下方から支持されているため、使用者の左手首LWが第1アーム部53bの先端部53gとロア支持部53cとで厚み方向(上下方向)に挟持されるようになる。これにより、脈圧検知部4を脈診位置Pに対して安定して押圧することが可能となっている。
【0182】
一方、他の駆動モータ56により他の駆動ギヤ56bが他側に回転駆動されると、該他の駆動ギヤ56bの回転が中間ギヤ57bを介して他のラックギヤ53kに伝達されることで、該他のラックギヤ53kと一体に第1アーム部53bが第1支持部53aに対して厚み方向一側(上側)に移動する。これにより、第1アーム部53bの先端部53gが脈診位置Pから遠ざかる方向に移動するので、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力が低くなる。
【0183】
また、本実施形態では、アーム部(第1アーム部53b、第2アーム部54b、第3アーム部55b)が上下動動作すると、脈診位置Pに対する脈圧検知部4のストロークが変更されるようになっている。つまり、例えば、第1アーム部53bが第1支持部53aに対して厚み方向他側(下側)に移動すると、脈圧検知部4が脈診位置Pに近づく方向にストロークすることで、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力が高くなるようになっている。一方、例えば、第1アーム部53bが第1支持部53aに対して厚み方向一側(上側)に移動すると、脈圧検知部4が脈診位置Pから遠ざかる方向にストロークすることで、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力が低くなるようになっている。なお、本実施形態における「他の駆動モータ56、中間ギヤ部57、第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55b」が、特許請求の範囲における「変更機構」に相当する。
【0184】
以上より、本実施形態によれば、変更機構(他の駆動モータ56、中間ギヤ部57、第1アーム部53b、第2アーム部54b及び第3アーム部55b)により、脈診位置Pに対する脈圧検知部4のストロークが変更されるようになる。これにより、上記脈圧検知部4のストロークを変更して、脈圧を検知することが可能となるので、脈診装置1の診断精度をより一層高めることができる。
【0185】
他の駆動モータ56によりアーム部(第1アーム部53b、第2アーム部54b、第3アーム部55b)が上下動されることで、脈診位置Pに対する脈圧検知部4の押圧力を変更することが可能となる。これにより、例えば、脈診時に、脈圧検知部4により、押圧力が比較的高い状態の脈圧と、押圧力が比較的低い状態の脈圧とを検知することが可能となる。したがって、脈診装置1の診断精度を高めることができる。
【0186】
なお、本実施形態では、アーム部(第1アーム部53b、第2アーム部54b、第3アーム部55b)が上下動する例について説明したが、脈診位置に対して垂直方向に移動可能であれば、上下方向以外の方向に上記アーム部を移動させるようにしてもよい。
【0187】
なお、本実施形態では、他のラックギヤ53kと中間ギヤ57bとによりラックアンドピニオン機構を構成していたが、中間ギヤ57bを無くすとともに、他のラックギヤ53kと他の駆動ギヤ56bとを常時噛合させることで、他のラックギヤ53kと他の駆動ギヤ56bとによりラックアンドピニオン機構を構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明は、使用者の健康状態等を診断する際に用いられる脈診装置に適している。
【符号の説明】
【0189】
1、50 脈診装置
2 本体ケース部
2c 第1表示部
2d 第2表示部
3 バンド部
3a バンド
4 脈圧検知部
4b 端子部
4c ピエゾフィルム(圧電体)
5 押圧部
6 駆動モータ(駆動部)
6c 駆動ギヤ(出力部)
7 従動ギヤ(従動回転体)
7b 螺子孔部(変換部)
8 直動体(直動部)
8a 螺子山部(変換部)
8b 螺子無部
9 被固定部
9b 湾曲部分
10 軟性部材
15 付勢部材(付勢部)
51 ベース部
53 第1脈診部
53a 第1支持部(支持部)
53b 第1アーム部(アーム部、変更機構)
53e 基端部
53g 先端部
54 第2脈診部
54a 第2支持部(支持部)
54b 第2アーム部(アーム部、変更機構)
55 第3脈診部
55a 第3支持部(支持部)
55b 第3アーム部(アーム部、変更機構)
56 他の駆動モータ(他の駆動部、変更機構)
57 中間ギヤ部(変更機構)
A 動脈
P 脈診位置