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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000681
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ハイブリッドシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20231226BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20231226BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20231226BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H02J7/10 L
B60L3/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099519
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003502
【氏名又は名称】弁理士法人芳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 保生
(72)【発明者】
【氏名】小山 和晃
(72)【発明者】
【氏名】堀田 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】永守 由子
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮太
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503DA04
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H125AA20
5H125AC08
5H125AC12
5H125BC18
5H125EE25
5H125EE47
5H125EE48
5H125EE64
(57)【要約】
【課題】ECUに電力を供給するバッテリの消費電力を抑えつつ、モータに電力を供給するバッテリの保管時の温度を検出し記憶することができるハイブリッドシステムを提供すること。
【解決手段】ハイブリッドシステム10は、産業機械に搭載されるハイブリッドシステムであって、モータ2と、モータ2に電力を供給するバッテリ50と、記憶部151を有するとともに、産業機械のイグニッションスイッチがオンになった時のバッテリ50の温度を検出し、検出時の温度を産業機械の保管時の温度として記憶部151に記憶する制御を実行する制御部150と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械に搭載されるハイブリッドシステムであって、
モータと、
前記モータに電力を供給するバッテリと、
記憶部を有するとともに、前記産業機械のイグニッションスイッチがオンになった時の前記バッテリの温度を検出し、前記検出時の温度を前記産業機械の保管時の温度として前記記憶部に記憶する制御を実行する制御部と、
を備えたことを特徴とするハイブリッドシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記イグニッションスイッチが前回オフになってから今回オンになるまでの経過時間を計測し、前記経過時間が所定時間以上である場合に前記検出時の温度を前記保管時の温度として前記記憶部に記憶する制御を実行することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記イグニッションスイッチがオンになった後、前記産業機械の稼動中において所定時間毎に前記バッテリの温度を検出し、前記所定時間毎の温度を前記記憶部にさらに記憶する制御を実行することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドシステム。
【請求項4】
前記記憶部は、前記産業機械が使用される場所の気象データを格納しており、
前記制御部は、前記イグニッションスイッチがオンになった時の時刻、日および月の少なくともいずれかに応じて前記検出時の温度を前記気象データを用いて補正し、前記補正した温度を前記検出時の温度の代わりに前記保管時の温度として前記記憶部に記憶する制御を実行することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドシステム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業機械に搭載されるハイブリッドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータとバッテリとを併用するハイブリッドシステムは、低公害化と化石燃料の省資源化との要求に伴って、産業機械や自動車等のために開発されている。ハイブリッドシステムは、例えば化石燃料を使用し動力を発生する内燃式エンジンと、内燃式エンジンを補助するモータと、モータに電力を供給する例えばリチウムイオン電池等のバッテリと、を備えている。
【0003】
ハイブリッドシステムでは、例えばリチウムイオン電池を含むバッテリパックが、モータを駆動するための電源として用いられている。リチウムイオン電池では、長期の保管や長期の使用によって満充電容量が減少していく劣化現象が生ずる。そこで、特許文献1には、二次電池の寿命をより正確に推定し、これに基づいて出荷の可否を検査することができる二次電池の副反応電流値の測定方法、寿命推定方法、検査方法が開示されている。
【0004】
例えば、ハイブリッドシステムを有する乗用車等の自動車について、自動車メーカは、リチウムイオン電池の劣化保証を独自に実施している。リチウムイオン電池の劣化保証としては、例えば、使用期間が5年以内あるいは走行距離が10万キロメートル以内であるときに基準値以上の劣化がリチウムイオン電池に生じた場合において、リチウムイオン電池を無償で交換する保証などが挙げられる。
【0005】
安全性および寿命の観点から、高温環境下におけるリチウムイオン電池の使用は推奨されていない。そのため、リチウムイオン電池の保証条件の一例として、リチウムイオン電池が一定温度以下で使用されることが挙げられる。ここで、乗用車等の自動車においては、自動車の稼働時だけではなく電源オフ(すなわちイグニッションスイッチがオフ)の時であっても、ECU(Engine Control Unit:エンジンコントロールユニット)が定期的に起動し、自動車の保管時のリチウムイオン電池の温度を検出し記憶する場合がある。この場合には、自動車メーカは、自動車の保管時の温度データに基づいて保証交渉を行うことができる。
【0006】
しかし、産業機械の保管期間は、自動車の保管期間よりも長いことがあるという問題がある。すなわち、産業機械の保管期間が比較的長い場合には、ECUに電力を供給するバッテリ(例えば鉛蓄電池)が、産業機械のユーザによって保管時に産業機械から取り外されることがある。そうすると、ECUは、電力の供給を受けることができないため、電源オフ時に起動できず、産業機械の保管時のリチウムイオン電池の温度を検出し記憶することができない。
【0007】
また、ECUに電力を供給するバッテリが保管時に産業機械に装着されたままの状態であっても、電源オフ時にECUを起動させるための暗電流に起因する電力が、バッテリ(例えば鉛蓄電池)において消費されるという問題がある。すなわち、産業機械の保管期間が比較的長い場合には、暗電流に起因するバッテリ(例えば鉛蓄電池)の消費電力の大きさを無視することができず、電源オフ時のバッテリ(例えば鉛蓄電池)の消費電力は、重要な課題のひとつである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-131344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、ECUに電力を供給するバッテリの消費電力を抑えつつ、モータに電力を供給するバッテリの保管時の温度を検出し記憶することができるハイブリッドシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様は、産業機械に搭載されるハイブリッドシステムであって、モータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、記憶部を有するとともに、前記産業機械のイグニッションスイッチがオンになった時の前記バッテリの温度を検出し、前記検出時の温度を前記産業機械の保管時の温度として前記記憶部に記憶する制御を実行する制御部と、を備えたことを特徴とするハイブリッドシステムである。
【0011】
本発明の第1態様よれば、制御部は、電源オフ(すなわち産業機械のイグニッションスイッチがオフ)の時に起動しなくとも、産業機械のイグニッションスイッチがオンになった時のバッテリの温度を検出し、検出時の温度を産業機械の保管時の温度として記憶部に記憶する。そのため、本発明の第1態様に係るハイブリッドシステムは、ECUなどの制御部に電力を供給するバッテリ(例えば鉛蓄電池)の消費電力を抑えつつ、モータに電力を供給するバッテリ(例えばリチウムイオン電池)の保管時の温度を検出し記憶することができる。これにより、本発明の第1態様に係るハイブリッドシステムは、モータに電力を供給するバッテリの劣化に関して、産業機械の保管時のバッテリの温度を検出し記憶することができ、バッテリの保証交渉に有効に利用できる保管時の温度データを取得できる。
【0012】
本発明の第2態様は、本発明の第1態様において、前記制御部は、前記イグニッションスイッチが前回オフになってから今回オンになるまでの経過時間を計測し、前記経過時間が所定時間以上である場合に前記検出時の温度を前記保管時の温度として前記記憶部に記憶する制御を実行することを特徴とするハイブリッドシステムである。
【0013】
本発明の第2態様によれば、制御部は、イグニッションスイッチが前回オフになってから今回オンになるまでの経過時間が所定時間以上である場合に、イグニッションスイッチがオンになった時のバッテリの温度を産業機械の保管時の温度として記憶部に記憶するため、例えばイグニッションスイッチがオフになった直後に再びオンになったときのバッテリの温度が産業機械の保管時の温度として記憶部に記憶されることを抑えることができる。すなわち、制御部は、産業機械の保管時の温度として不適切な温度が記憶部に記憶されることを抑えることができる。これにより、本発明の第2態様に係るハイブリッドシステムは、バッテリの保証交渉により一層有効に利用できる保管時の温度データを取得できる。
【0014】
本発明の第3態様は、本発明の第1態様または第2態様において、前記制御部は、前記イグニッションスイッチがオンになった後、前記産業機械の稼動中において所定時間毎に前記バッテリの温度を検出し、前記所定時間毎の温度を前記記憶部にさらに記憶する制御を実行することを特徴とするハイブリッドシステムである。
【0015】
本発明の第3態様によれば、制御部は、産業機械の保管時のバッテリの温度と、産業機械の稼働中のバッテリの温度と、の両方の温度を記憶部に記憶する。そのため、本発明の第3態様に係るハイブリッドシステムは、産業機械のユーザが異常な温度でバッテリを使用していないか否かをより一層確実に把握することができる。これにより、本発明の第3態様に係るハイブリッドシステムは、バッテリの保証交渉により一層有効に利用できる保管時および稼働時の温度データを取得できる。
【0016】
本発明の第4態様は、本発明の第1態様~第3態様のいずれかにおいて、前記記憶部は、前記産業機械が使用される場所の気象データを格納しており、前記制御部は、前記イグニッションスイッチがオンになった時の時刻、日および月の少なくともいずれかに応じて前記検出時の温度を前記気象データを用いて補正し、前記補正した温度を前記検出時の温度の代わりに前記保管時の温度として前記記憶部に記憶する制御を実行することを特徴とするハイブリッドシステムである。
【0017】
本発明の第4態様によれば、制御部は、イグニッションスイッチがオンになった時の時刻、日および月の少なくともいずれかに応じて、イグニッションスイッチがオンになった時のバッテリの温度を気象データを用いて補正する。そして、制御部は、イグニッションスイッチがオンになった時のバッテリの温度の代わりに、補正した温度を産業機械の保管時の温度として記憶部に記憶する。そのため、制御部は、産業機械のイグニッションスイッチがオンになった時の時刻、日および月による影響を抑えつつ、産業機械の保管時のバッテリの温度をより高い精度で記憶部に記憶することができる。これにより、本発明の第4態様に係るハイブリッドシステムは、バッテリの保証交渉により一層有効に利用できる保管時の温度データを取得できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ECUに電力を供給するバッテリの消費電力を抑えつつ、モータに電力を供給するバッテリの保管時の温度を検出し記憶することができるハイブリッドシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るハイブリッドシステムを表すブロック図である。
図2】本実施形態に係るハイブリッドシステムの動作の第1具体例を表すフローチャートである。
図3】本実施形態に係るハイブリッドシステムの動作の第2具体例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るハイブリッドシステムを表すブロック図である。
図1に表したハイブリッドシステム10は、エンジン1と、モータジェネレータ2と、バッテリパック40と、を備える。本実施形態のモータジェネレータ2は、本発明の「モータ」の一例である。ハイブリッドシステム10は、DC/DCコンバータ70をさらに備える。
【0022】
エンジン1は、例えばターボチャージを有する過給式の高出力な3気筒エンジンや4気筒エンジン等の多気筒ディーゼルエンジンである。但し、エンジン1は、ディーゼルエンジンに限定されるわけではない。エンジン1は、ECU(Engine Control Unit:エンジンコントロールユニット)150を有する。本実施形態のECU150は、本発明の「制御部」の一例である。ECU150は、エンジン1の動作を制御するとともに、例えばCAN(Controller Area Network)によりモータジェネレータ2およびDC/DCコンバータ70と通信を行いモータジェネレータ2およびDC/DCコンバータ70を制御する。また、ECU150は、記憶部151を有する。
【0023】
モータジェネレータ2は、ハイブリッドシステム10が搭載される産業機械等の発進時や加速時などパワーが必要な時に、バッテリパック40から供給される電力により稼動しエンジン1をサポートする。なお、ハイブリッドシステム10は、例えばフォークリフト等の建設機械およびトラクタ等の農業機械を含む産業機械等に搭載される。また、モータジェネレータ2は、回生ブレーキなどを利用し、ハイブリッドシステム10が搭載される産業機械等の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する。モータジェネレータ2は、インバータを内蔵している。但し、インバータは、必ずしもモータジェネレータ2に内蔵されていなくともよく、モータジェネレータ2とは別体として設けられていてもよい。
【0024】
バッテリパック40は、第1バッテリ50と、正極側コンタクタ75と、負極側コンタクタ76と、電流値検出部65と、BMU(Battery Management Unit:バッテリマネージメントユニット)85と、ヒューズ95と、を有する。第1バッテリ50は、モータジェネレータ2の駆動電源として設けられ、モータジェネレータ2に電力を供給する。第1バッテリ50は、正極端子51と、負極端子52と、を有する。第1バッテリ50としては、例えば48Vの高電圧型のリチウムイオン電池(LiB)などが挙げられる。但し、第1バッテリ50は、リチウムイオン電池に限定されるわけではない。また、第1バッテリ50の電圧は、48Vに限定されるわけではなく、48V以上であってもよい。本実施形態の第1バッテリ50は、本発明の「バッテリ」の一例である。
【0025】
正極側コンタクタ75は、第1バッテリ50の正極端子51とモータジェネレータ2との間における電気回路に設けられている。具体的には、図1に表したように、正極側コンタクタ75は、第1バッテリ50の正極端子51とモータジェネレータ2とを接続する正極配線173、174に設けられている。つまり、第1バッテリ50の正極端子51とモータジェネレータ2との間における電気回路は、正極配線173および正極配線174を含む。正極側コンタクタ75は、信号線181によりECU150に電気的に接続されており、ECU150から信号線181を通して送信される制御信号に基づいて正極配線173、174の開閉を行う。
【0026】
なお、正極側コンタクタ75は、BMU85に電気的に接続されていてもよい。この場合には、正極側コンタクタ75は、BMU85から送信される制御信号に基づいて正極配線173、174の開閉を行う。
【0027】
負極側コンタクタ76は、第1バッテリ50の負極端子52とモータジェネレータ2との間における電気回路に設けられている。具体的には、図1に表したように、負極側コンタクタ76は、第1バッテリ50の負極端子52とモータジェネレータ2とを接続する負極配線175に設けられている。つまり、第1バッテリ50の負極端子52とモータジェネレータ2との間における電気回路は、負極配線175を含む。負極側コンタクタ76は、信号線182によりBMU85に電気的に接続されており、BMU85から信号線182を通して送信される制御信号に基づいて負極配線175の開閉を行う。
【0028】
なお、負極側コンタクタ76は、ECU150に電気的に接続されていてもよい。この場合には、負極側コンタクタ76は、ECU150から送信される制御信号に基づいて負極配線175の開閉を行う。
【0029】
BMU85は、信号線193によりECU150に電気的に接続されており、ECU150から信号線193を通して送信される制御信号に基づいて負極側コンタクタ76を制御する。ECU150およびBMU85は、例えばCANにより互いに通信し互いの状態を監視している。
【0030】
BMU85は、信号線183により第1バッテリ50に電気的に接続されており、第1バッテリ50から信号線183を通して送信される信号に基づいて第1バッテリ50の電圧値を検出する。具体的には、BMU85は、BMU85自体に内蔵された内部回路を用いて、第1バッテリ50に内蔵された各セルの電圧値を検出し、各セルの電圧値の総和を第1バッテリ50の電圧値として検出する。そして、BMU85は、内部回路により検出された第1バッテリ50の電圧値をECU150に送信する。
【0031】
BMU85は、第1バッテリ50の状態を監視しており、第1バッテリ50から信号線183を通して送信される信号に基づいて第1バッテリ50の異常を検出することができる。例えば、BMU85は、第1バッテリ50から信号線183を通して送信される信号に基づいて第1バッテリ50の電圧値を検出し、過充電異常および過放電異常を検出する。
【0032】
BMU85は、CMU(Cell Management Unit:セルマネージメントユニット;図示せず)から信号線183を通して第1バッテリ50のセル温度を取得する。BMU85は、CANによりECU150と通信を行い、取得した第1バッテリ50のセル温度をECU150に送信する。これにより、ECU150は、第1バッテリ50のセル温度を検出できる。BMU85は、CMUから取得したセル温度に基づいて過温度異常を検出する。
【0033】
BMU85は、信号線184により電流値検出部65に電気的に接続されており、信号線184を通して電流値検出部65から電流値を取得する。電流値検出部65は、正極配線174に設けられており、正極配線174を流れる電流値を検出する。つまり、BMU85は、正極配線174を流れる電流値を、信号線184を通して電流値検出部65から取得する。BMU85は、信号線184を通して電流値検出部65から取得した電流値に基づいて過電流異常を検出する。
【0034】
ヒューズ95は、電流値検出部65と正極側コンタクタ75との間における正極配線174に設けられている。ヒューズ95は、過電流が正極配線174に流れると、電気回路すなわち正極配線174を遮断する。
【0035】
前述したように、負極配線175は、第1バッテリ50の負極端子52とモータジェネレータ2とを電気的に接続しており、グランド100Bになっている。例えば、負極配線175は、ハイブリッドシステム10が搭載される産業機械等のボディに接続され接地されている。正極配線173は、第1バッテリ50の正極端子51とモータジェネレータ2とを電気的に接続するとともに、モータジェネレータ2とDC/DCコンバータ70とを電気的に接続している。図1に示すハイブリッドシステム10のように、第1バッテリ50が48Vのリチウムイオン電池である場合には、負極配線175に対する正極配線173、174の電位は、48Vである。
【0036】
DC/DCコンバータ70は、正極配線171および負極配線172を介して第2バッテリ80に電気的に接続されている。負極配線172は、第2バッテリ80の負極端子82とDC/DCコンバータ70とを電気的に接続しており、グランド100Bになっている。例えば、負極配線172は、ハイブリッドシステム10が搭載される産業機械等のボディに接続され接地されている。正極配線171は、第2バッテリ80の正極端子81とDC/DCコンバータ70とを電気的に接続している。図1に示すハイブリッドシステム10のように、第2バッテリ80が12Vの鉛蓄電池である場合には、負極配線172に対する正極配線171の電位は、12Vである。第2バッテリ20は、ECU150に電力を供給する。
【0037】
DC/DCコンバータ70は、DC/DCコンバータ70自体に内蔵された内部回路を用いて、第2バッテリ80の電圧値を検出する。そして、DC/DCコンバータ70は、内部回路により検出された第2バッテリ80の電圧値をECU150に送信する。
【0038】
前述したように、モータジェネレータ2は、回生ブレーキなどを利用し、ハイブリッドシステム10が搭載される産業機械等の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して発電する。そして、モータジェネレータ2は、第1バッテリ50に電圧を供給し第1バッテリ50の充電を行うとともに、第2バッテリ80に電圧を供給し第2バッテリ80の充電を行う。ここで、図1に示すハイブリッドシステム10を例に挙げると、負極配線175に対する正極配線173の電位は、48Vである。つまり、モータジェネレータ2の発電電圧は、48Vである。一方で、負極配線172に対する正極配線171の電位は、12Vである。そこで、DC/DCコンバータ70は、モータジェネレータ2が発電した48Vの電圧を12Vの電圧に変換する。これにより、モータジェネレータ2は、DC/DCコンバータ70を介して12Vの電圧を第2バッテリ80に供給し、第2バッテリ80の充電を行うことができる。
【0039】
また、DC/DCコンバータ70は、第1バッテリ50および第2バッテリ80に電気的に接続されており、ECU150から送信された制御信号に基づいて、第1バッテリ50と第2バッテリ80との間で充電および放電を行うことができる。例えば、DC/DCコンバータ70は、電圧を変換し一定電流(例えば10A)を第1バッテリ50から第2バッテリ80に向かって流すことにより第1バッテリ50の放電および第2バッテリ80の充電を行うことができる。あるいは、例えば、DC/DCコンバータ70は、電圧を変換し一定電流(例えば10A)を第2バッテリ80から第1バッテリ50に向かって流すことにより第2バッテリ80の放電および第1バッテリ50の充電を行うことができる。
【0040】
ここで、安全性および寿命の観点から、高温環境下における第1バッテリ50(例えばリチウムイオン電池など)の使用は推奨されていない。そのため、第1バッテリ50の保証条件の一例として、第1バッテリ50が一定温度以下で使用されることが挙げられる。このとき、ハイブリッドシステム10が搭載される産業機械の保管期間が問題になることがある。すなわち、ハイブリッドシステム10が搭載される産業機械の保管期間が比較的長い場合には、ECU150に電力を供給する第2バッテリ80が、産業機械のユーザによって保管時に産業機械から取り外されることがある。そうすると、ECU150は、電力の供給を受けることができないため、電源オフ(すなわち産業機械のイグニッションスイッチがオフ)の時に起動できず、産業機械の保管時の第1バッテリ50の温度を検出し記憶することができない。
【0041】
また、第2バッテリ80が産業機械の保管時に産業機械に装着されたままの状態であっても、電源オフ時にECU150を起動させるための暗電流に起因する電力が、第2バッテリ80において消費されるという問題がある。すなわち、産業機械の保管期間が比較的長い場合には、暗電流に起因する第2バッテリ80の消費電力の大きさを無視することができず、電源オフ時の第2バッテリ80の消費電力は、重要な課題のひとつである。
【0042】
これに対して、本実施形態に係るハイブリッドシステム10のECU150は、ハイブリッドシステム10が搭載される産業機械のイグニッションスイッチがオンになった時の第1バッテリ50の温度を検出し、検出時の温度を産業機械の保管時の温度として記憶部151に記憶する制御を実行する。具体的には、ハイブリッドシステム10が搭載される産業機械のイグニッションスイッチがオンになった時、ECU150は、CANによりBMU85と通信を行い、BMU85が取得した第1バッテリ50のセル温度を取得する。そして、ECU150は、CANによりBMU85から取得した第1バッテリ50のセル温度を産業機械の保管時の温度として記憶部151に記憶する。
【0043】
本実施形態に係るハイブリッドシステム10によれば、ECU150は、電源オフ(すなわち産業機械のイグニッションスイッチがオフ)の時に起動しなくとも、産業機械のイグニッションスイッチがオンになった時の第1バッテリ50の温度を検出し、検出時の温度を産業機械の保管時の温度として記憶部151に記憶する。そのため、ハイブリッドシステム10は、第2バッテリ80の消費電力を抑えつつ、産業機械の保管時における第1バッテリ50の温度を検出し記憶することができる。これにより、本実施形態に係るハイブリッドシステム10は、第1バッテリ50の劣化に関して、産業機械の保管時の第1バッテリ50の温度を検出し記憶することができ、第1バッテリ50の保証交渉に有効に利用できる保管時の温度データを取得できる。
【0044】
以下、本実施形態に係るハイブリッドシステム10の動作の具体例を、図面を参照して詳しく説明する。
図2は、本実施形態に係るハイブリッドシステムの動作の第1具体例を表すフローチャートである。
【0045】
まず、ステップS11において、ハイブリッドシステム10が搭載された産業機械のユーザ等が、ハイブリッドシステム10を起動するためのスタータキーを押して産業機械のイグニッションスイッチをオンにする。そうすると、ステップS12において、ECU150は、イグニッションスイッチが前回オフになってから今回オンになるまでの経過時間を計測し、経過時間が所定時間以上であるか否かを判断する。図2に表したステップS12では、「所定時間」は、3時間である。但し、ステップS12に関する「所定時間」は、3時間に限定されるわけではなく、例えば1時間以上、5時間以下程度であってもよい。
【0046】
イグニッションスイッチが前回オフになってから今回オンになるまでの経過時間が3時間以上である場合には(ステップS12:YES)、ステップS13において、ECU150は、イグニッションスイッチがオンになった時の第1バッテリ50の温度を検出し、検出時の温度を産業機械の保管時の温度として記憶部151に記憶する。
【0047】
一方で、イグニッションスイッチが前回オフになってから今回オンになるまでの経過時間が3時間未満である場合には(ステップS12:NO)、ステップS12に続くステップS14において、ECU150は、イグニッションスイッチがオンになった時の第1バッテリ50の温度を記憶部151に記憶せず、産業機械の稼動中において所定時間毎に第1バッテリ50の温度を検出し、所定時間毎の温度を記憶部151に記憶する。図2に表したステップS14では、「所定時間」は、1時間である。但し、ステップS14に関する「所定時間」は、1時間に限定されるわけではなく、例えば1時間以上、3時間以下程度であってもよい。
ステップS13に続くステップS14において、ECU150は、ステップS14に関して前述した処理と同様の処理を実行する。
【0048】
続いて、ステップS15において、ハイブリッドシステム10が搭載された産業機械のユーザ等が、産業機械のイグニッションスイッチをオフにする。そうすると、ステップS16において、ECU150は、イグニッションスイッチがオフになってからの経過時間を計測し、経過時間が所定時間以上であるか否かを判断する。ステップS16に関する「所定時間」は、ステップS12に関して前述した「所定時間」と同様である。
【0049】
イグニッションスイッチがオフになってからの経過時間が3時間以上である場合には(ステップS16:YES)、ECU150は、ハイブリッドシステム10の動作を終了(シャットダウン)する。
【0050】
一方で、イグニッションスイッチがオフになってからの経過時間が3時間未満である場合には(ステップS16:NO)、ステップS17において、ECU150は、イグニッションスイッチがオンになったか否かを判断する。イグニッションスイッチがオンになった場合には(ステップS17:YES)、ECU150は、ステップS11に関して前述した処理を実行する。一方で、イグニッションスイッチがオンになっていない場合には(ステップS17:NO)、ECU150は、ステップS16に関して前述した処理を実行する。
【0051】
本具体例によれば、ECU150は、イグニッションスイッチが前回オフになってから今回オンになるまでの経過時間が所定時間以上である場合に、イグニッションスイッチがオンになった時の第1バッテリ50の温度を産業機械の保管時の温度として記憶部151に記憶するため、例えばイグニッションスイッチがオフになった直後に再びオンになったときの第1バッテリ50の温度が産業機械の保管時の温度として記憶部151に記憶されることを抑えることができる。すなわち、ECU150は、産業機械の保管時の温度として不適切な温度が記憶部151に記憶されることを抑えることができる。これにより、本実施形態に係るハイブリッドシステム10は、第1バッテリ50の保証交渉により一層有効に利用できる保管時の温度データを取得できる。
【0052】
また、ステップS14において、ECU150は、産業機械の稼動中において所定時間毎に第1バッテリ50の温度を記憶部151に記憶する。そのため、ECU150は、産業機械の保管時の第1バッテリ50の温度と、産業機械の稼働中の第1バッテリ50の温度と、の両方の温度を記憶部151に記憶することができる。そのため、本実施形態に係るハイブリッドシステム10は、産業機械のユーザが異常な温度で第1バッテリ50を使用していないか否かをより一層確実に把握することができる。これにより、本実施形態に係るハイブリッドシステム10は、第1バッテリ50の保証交渉により一層有効に利用できる保管時および稼働時の温度データを取得できる。
【0053】
図3は、本実施形態に係るハイブリッドシステムの動作の第2具体例を表すフローチャートである。
第2具体例では、図2に関して前述したステップS13が、図3に表したステップS23に置き換えられている。その他のステップは、図2に関して前述したステップと同様である。すなわち、図3に表したステップS21~S22、S24~S27において実行される処理は、図2に関して前述したステップS11~S12、S14~S17の処理と同様である。そのため、本具体例では、ステップS23を中心に説明し、ステップS21~S22、S24~S27の説明を適宜省略する。
【0054】
まず、本具体例のハイブリッドシステム10において、記憶部151は、ハイブリッドシステム10が搭載された産業機械が使用される場所の気象データを格納している。気象データとしては、ハイブリッドシステム10が搭載された産業機械が使用される場所における温度、湿度、風向・風速、および日照時間などが挙げられる。
【0055】
イグニッションスイッチが前回オフになってから今回オンになるまでの経過時間が3時間以上である場合には(ステップS22:YES)、ステップS23において、ECU150は、イグニッションスイッチがオンになった時の時刻、日および月の少なくともいずれかに応じてイグニッションスイッチがオンになった時の温度を気象データを用いて補正し、補正した温度を産業機械の保管時の温度として記憶部151に記憶する。
【0056】
本具体例によれば、ECU150は、産業機械のイグニッションスイッチがオンになった時の時刻、日および月による影響を抑えつつ、産業機械の保管時の第1バッテリ50の温度をより高い精度で記憶部151に記憶することができる。これにより、本実施形態に係るハイブリッドシステム10は、第1バッテリ50の保証交渉により一層有効に利用できる保管時の温度データを取得できる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。上記実施形態の構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせたりすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1:エンジン、 2:モータジェネレータ、 10:ハイブリッドシステム、 20:第2バッテリ、 40:バッテリパック、 50:第1バッテリ、 51:正極端子、 52:負極端子、 65:電流値検出部、 70:DC/DCコンバータ、 75:正極側コンタクタ、 76:負極側コンタクタ、 80:第2バッテリ、 81:正極端子、 82:負極端子、 85:BMU、 95:ヒューズ、 100B:グランド、 150:ECU、 151:記憶部、 171:正極配線、 172:負極配線、 173:正極配線、 174:正極配線、 175:負極配線、 181:信号線、 182:信号線、 183:信号線、 184:信号線、 193:信号線
図1
図2
図3