(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068100
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】面状ユニット
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20240510BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B62D1/06
H05B3/20 312
H05B3/20 327Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130378
(22)【出願日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2022176810
(32)【優先日】2022-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】和田 彰文
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雅嗣
【テーマコード(参考)】
3D030
3K034
【Fターム(参考)】
3D030DA25
3D030DA64
3D030DA65
3D030DA66
3D030DB02
3K034AA12
3K034AA15
3K034JA09
(57)【要約】
【課題】使用者がステアリング操作等の際に違和感を覚えることがなく、生産性に優れ、且つ、均熱性に優れた面状ユニットを提供すること。
【解決手段】 基材と、該基材上に配設される線状体とからなり、ステアリングホイールに設置される面状ユニットであって、上記面状ユニットは、上記ステアリングホイールに巻き付けられて設置されるものであり、上記基材の形状が、上記面状ユニットが上記ステアリングホイールに巻き付けられて設置された状態において、上記線状体が配設されていない領域の少なくとも一部が重なり合うようになっている面状ユニット。上記面状ユニットが上記ステアリングホイールに巻き付けられて設置された状態において、上記基材全体の厚さが、上記基材の重なり合う部分を含めて、概ね均一となっている面状ユニット。上記線状体がヒータ線またはセンサ線の何れかまたは両方である面状ユニット。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に配設される線状体とからなる面状ユニットであって、
上記面状ユニットは、少なくとも外縁部に複数の厚さが小さくなった部分を有し、該厚さが小さくなった部分同士が重なり合うように設置されることを特徴とする面状ユニット。
【請求項2】
基材と、該基材上に配設される線状体とからなり、ステアリングホイールに設置される面状ユニットであって、
上記面状ユニットは、上記ステアリングホイールに巻き付けられて設置されるものであり、
上記基材の形状が、上記面状ユニットが上記ステアリングホイールに巻き付けられて設置された状態において、上記線状体が配設されていない領域の少なくとも一部が重なり合うようになっていることを特徴とする面状ユニット。
【請求項3】
請求項2記載の面状ユニットであって、
上記面状ユニットが上記ステアリングホイールに巻き付けられて設置された状態において、上記基材全体の厚さが、上記基材の重なり合う部分を含めて、概ね均一となっていることを特徴とする面状ユニット。
【請求項4】
基材と、該基材上に配設される線状体とからなり、ステアリングホイールに設置される面状ユニットであって、
上記基材における対向する2つの辺の外縁部の厚さが薄くなっており、上記2つの辺の外縁部を重ねた厚さが、上記基材における他の箇所の厚さと略同厚さとなっていることを特徴とする面状ユニット。
【請求項5】
基材と、該基材上に配設される線状体とからなる面状ユニットであって、
上記基材の少なくとも一部の外縁部が、縁端にいくに従ってなだらかに厚さが小さくなっている傾斜部となっていることを特徴とする面状ユニット。
【請求項6】
請求項5記載の面状ユニットであって、
上記傾斜部が、厚さが小さくなるに従って密度が大きくなっていることを特徴とする面状ユニット。
【請求項7】
請求項5記載の面状ユニットであって、
上記傾斜部には、上記線状体が配設されていないことを特徴とする面状ユニット。
【請求項8】
基材と、該基材上に配設される線状体とからなる面状ユニットであって、
上記基材が低密度部と高密度部を有し、少なくとも一部の外縁部が、低密度部となっていることを特徴とする面状ユニット。
【請求項9】
請求項8記載の面状ユニットであって、
上記低密度部と上記高密度部が略同厚さとなっていることを特徴とする面状ユニット。
【請求項10】
請求項8記載の面状ユニットであって、
上記低密度部には、上記線状体が配設されていないことを特徴とする面状ユニット。
【請求項11】
請求項1~10何れか記載の面状ユニットであって、
上記線状体がヒータ線またはセンサ線の何れかまたは両方であることを特徴とする面状ユニット。
【請求項12】
請求項1~10何れか記載の面状ユニットであって、
上記基材が高分子発泡体からなることを特徴とする面状ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車、船舶などに使用されるステアリングホイールのホイール部を暖めるためのヒータユニットと、ステアリングホイールの温度検知や把持検知を行うためのセンサユニットを含む面状ユニットに係り、特に、使用者がステアリング操作等の際に違和感を覚えることがなく、生産性に優れ、且つ、均熱性に優れた面状ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、寒冷時に運転手の手を温めるために、ステアリングホイールのホイール部にヒータユニットを装着することが提案されている。ステアリングホイールは、ホイール部、スポーク部、ボス部からなり、ホイール部は、金属芯がウレタン樹脂等で覆われてなるホイール芯材と合成樹脂、繊維製品、皮革などからなる被覆材とから形成される。ヒータユニットは、このホイール芯材と被覆材の間に設置され、スポーク部及びボス部を通されたリード線に接続されて給電される。
【0003】
ステアリングホイールに設置されるヒータユニットとしては、例えば、特許文献1~3に示すような、基材上に所定のパターン形状でヒータ線を配設したものが知られている。ここで、基材としては、各種の発泡ウレタンシート、ゴムシート、アルミニウム箔、不織布などが開示されている。また、関連する技術として、例えば、特許文献4が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5975008号公報:豊田合成
【特許文献2】特開2015-189294公報:豊田合成
【特許文献3】特開2018-16279公報:豊田合成
【特許文献4】特開2019-129112公報:クラベ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のヒータユニットは基材上に所定のパターン形状でヒータ線を配設しているが、基材の端部にはヒータ線が配設されていない。基材の端部にまでヒータ線を配設していると基材からヒータ線が脱落する可能性があるためである。一方で、基材の端部にヒータ線が配設されていないヒータユニットをホイール芯材に巻き付けて設置した場合、例えば、ステアリングホイールの周方向などに非発熱領域が発生してしまうことになり、均一な発熱ができなくなってしまう。この非発熱領域を縮小するため、即ち均熱性を向上させるためには、ヒータユニットの基材端部を他の端部に乗り上げて設置することが考えられる。しかし、ヒータユニットの基材端部が他の端部に乗り上げているとこの部分に段差ができてしまい、使用者がステアリング操作等の際に違和感を覚えてしまうことになる。
【0006】
上記特許文献1には、ステアリングホイールのホイール芯材にヒータユニットを巻き付けて設置する際、ヒータユニットの基材端部と他の端部との間に隙間を設け、その隙間を熱伝導シートで覆う構成が記載されている。この構成によって成型後の外観不良を防ぐとともに、均熱性を向上させることができる。しかし、この構成ではヒータユニットの基材に熱伝導シートといった他の部材を溶着しなければならず、ヒータユニットの構成部材が増えることによる生産性の悪化が懸念される。
【0007】
上記特許文献2には、基材が金属箔で構成されたヒータユニットが記載されている。また、ステアリングホイールのホイール芯材にヒータユニット巻き付けて設置する際、一方の端部が他方の端部を覆うオーバーラップ部を形成することで温度ムラを抑制できると記載されている。引用文献2に記載されたヒータユニットの基材は、発泡ウレタンシート、ゴムシート、不織布等と比べて薄い金属箔であり、基材を2枚重ねても操作時に違和感がないため、オーバーラップ部を形成しても使用者が違和感を覚えることはない。しかし、基材に金属箔を用いると、触感や耐久性が悪化することに加え、ヒータ線の絶縁層が破れてしまった場合に電流が漏電してしまうなどの懸念点が多く、扱いにくいものとなってしまう。
【0008】
上記特許文献3のヒータユニットは、基材の端部相互を突き合わせるようにして、ホイール芯材の周囲に設置する構成であり、端末部位が端部側から突出する突状配線部を有する。突状配線部は端部相互の突き合わせ方向と直交する方向側において、相互に重なる重複部を有することで、突き合わせ方向と略直交する線状の領域に生じる温度ムラを抑制できるとしている。しかし、この構成は突き合わせ方向と略直交する線状の非発熱領域を凹凸状に変形させたものであり、非発熱領域を縮小するものではないため、均熱性に優れているとは言い難い。
【0009】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、使用者がステアリング操作等の際に違和感を覚えることがなく、生産性に優れ、且つ、均熱性に優れた面状ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するべく、本発明による面状ユニットは、基材と、該基材上に配設される線状体とからなる面状ユニットであって、上記面状ユニットは、少なくとも外縁部に複数の厚さが小さくなった部分を有し、該厚さが小さくなった部分同士が重なり合うように設置されることを特徴とするものである。
また、本発明による他の形態の面状ユニットは、基材と、該基材上に配設される線状体とからなり、ステアリングホイールに設置される面状ユニットであって、上記面状ユニットは、上記ステアリングホイールに巻き付けられて設置されるものであり、上記基材の形状が、上記面状ユニットが上記ステアリングホイールに巻き付けられて設置された状態において、上記線状体が配設されていない領域の少なくとも一部が重なり合うようになっているものである。
また、上記面状ユニットが上記ステアリングホイールに巻き付けられて設置された状態において、上記基材全体の厚さが、上記基材の重なり合う部分を含めて、概ね均一となっていることが考えられる。
また、本発明による他の形態の面状ユニットは、基材と、該基材上に配設される線状体とからなり、ステアリングホイールに設置される面状ユニットであって、上記基材における対向する2つの辺の外縁部の厚さが薄くなっており、上記2つの辺の外縁部を重ねた厚さが、上記基材における他の箇所の厚さと略同厚さとなっていることを特徴とするものである。
また、本発明による他の形態の面状ユニットは、基材と、該基材上に配設される線状体とからなる面状ユニットであって、上記基材の少なくとも一部の外縁部が、縁端にいくに従ってなだらかに厚さが小さくなっている傾斜部となっていることを特徴とするものである。
また、上記傾斜部が、厚さが小さくなるに従って密度が大きくなっていることが考えられる。
また、上記傾斜部には、上記線状体が配設されていないことが考えられる。
また、本発明による他の形態の面状ユニットは、基材と、該基材上に配設される線状体とからなる面状ユニットであって、上記基材が低密度部と高密度部を有し、少なくとも一部の外縁部が、低密度部となっていることを特徴とするものである。
また、上記低密度部と上記高密度部が略同厚さとなっていることが考えられる。
また、上記低密度部には、上記線状体が配設されていないことが考えられる。
また、上記線状体がヒータ線またはセンサ線の何れかまたは両方であることが考えられる
また、上記基材が高分子発泡体からなることが考えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、面状ユニットがステアリングホイールに巻き付けられた状態において、面状ユニットは概ね平坦な形状となっているため、使用者がステアリング操作等の際に違和感を覚えることがない。
また、線状体としてヒータ線を使用した場合、ヒータ線の配設されていない領域が従来のものよりも小さくなっているため、均熱性に優れている。また、線状体としてセンサ線を使用した場合も同様に、センサ線の配設されていない領域が従来のものよりも小さくなっているため、均一的なセンサ感度を得ることができる。
また、構成部材を増やすことなく上記効果を奏するため、生産性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による面状ユニットの構成を示す平面図である。
【
図2】本発明による実施の形態を示す図で、ホットプレス式ヒータ製造装置の構成を示す図である。
【
図3】本発明のヒータユニットにおいて、ヒータ線を所定のパターン形状に配設する様子を示す一部斜視図である。
【
図4】本発明で使用されるヒータ線の一例を示す一部切欠側面図である。
【
図5】本発明で使用されるヒータ線の一部の一例を示す一部切欠側面図である。
【
図6】本発明で使用されるセンサ線の一例を示す一部切欠側面図である。
【
図7】本発明で使用されるセンサ線の一部の一例を示す一部切欠側面図である。
【
図8】本発明による面状ユニットをステアリングホイール内に埋め込んだ様子を示す一部切欠斜視図である。
【
図9】本発明の面状ユニットをステアリングホイールに設置した状態を示す断面図である。
【
図10】本発明の他の形態の面状ユニットをステアリングホイールに設置した状態を示す断面図である。
【
図11】本発明の他の形態の面状ユニットの構成を示す平面図である。
【
図12】本発明の他の形態の面状ユニットの構成を示す断面図で、
図11におけるXII-XII´断面図である。
【
図13】本発明の他の形態の面状ユニットの構成を示す平面図である。
【
図14】本発明の他の形態の面状ユニットの構成を示す断面図で、
図13におけるXIV-XIV´断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。実施の形態1は、線状体としてヒータ線を使用することを想定した例を示すものである。
【0014】
まず、実施の形態1におけるヒータ線1の構成から説明する。実施の形態1におけるヒータ線1は
図4,
図5に示すような構成になっている。まず、芯線3は外径約0.2mmの芳香族ポリアミド繊維束で形成されている。該芯線3の外周に、素線径0.08mmの硬質錫入り銅合金線である5本の導体素線5aを引き揃えて、ピッチ約1.0mmで、螺旋状に巻装されている。
図4,
図5に示すように、導体素線5aの周囲には、絶縁被膜5bが形成されている。絶縁被膜5bは、ポリウレタン樹脂製の内層5cと、ポリアミドイミド樹脂製の外層5dとから形成されている。絶縁被膜5bの内層5cは、導体素線5aの周囲にポリウレタンワニスを塗布し乾燥させることで厚さ4μmの層となるように形成されている。次に、外層5dは、この内層5cの外周にポリアミドイミドワニスを塗布し乾燥して厚さ4μmの層となるように形成されている。導体素線5aを巻装した芯線3の外周には、絶縁体層が被覆されている。絶縁体層は、難燃剤が配合されたポリエチレン樹脂を0.2mmの厚さとなるように押出被覆して形成されている。この実施の形態では、絶縁体層のポリエチレン樹脂は、熱融着部9として機能する。以上のヒータ線1の仕上外径は0.8mmである。芯線3は屈曲性や引張強度が高くなる点で有効である。芯線3を使用せずに、複数本の導体素線を引き揃えるか或いは撚り合わせたものとすることも可能である。
【0015】
次に、上記構成をなすヒータ線1を接着・固定する基材11の構成について説明する。実施の形態1における基材11は、見かけ密度40kg/m3、(JIS K7222準拠)、硬さ220N(JIS K6400準拠)、厚さ8mmの発泡ポリウレタン樹脂からなる。このような基材11は、型抜き等の公知の手法により所望の形状とされる。
【0016】
次に、上記ヒータ線1を基材11の間に所定のパターン形状で配設して接着・固定する構成について説明する。
図2はヒータ線1が配設された基材を加熱加圧するためのホットプレス式ヒータ製造装置13の構成を示す図である。まず、ホットプレス治具15があり、このホットプレス治具15上には複数個の係り止め機構17が設けられている。上記係り止め機構17は、
図3に示すように、ピン19を備えていて、このピン19はホットプレス冶具15に穿孔された孔21内に下方より差し込まれている。このピン19の上部には先端が針となった係り止め部材23が軸方向に移動可能に取り付けられていて、コイルスプリング25によって常時上方に付勢されている。そして、
図3中仮想線で示すように、これら複数個の係り止め機構17の係り止め部材23にヒータ線1を引っ掛けながら、ヒータ線1を所定のパターン形状にて配設することになる。
【0017】
図2に戻って、上記複数個の係り止め機構17の上方にはプレス熱板27が昇降可能に配置されている。すなわち、ヒータ線1を複数個の係り止め機構17の係り止め部材23に引っ掛けながら所定のパターン形状にて配設し、その上に基材11を置く。その状態で上記プレス熱板27を降下させてヒータ線1と基材11に、例えば、230℃/5秒間の加熱・加圧を施すものである。それによって、ヒータ線1側の熱融着部9と基材11が融着することになり、その結果、ヒータ線1と基材11が接着・固定されることになる。尚、上記プレス熱板27の降下による加熱・加圧時には複数個の係り止め機構17の係り止め部材23はコイルスプリング25の付勢力に抗して下方に移動するものである。
【0018】
ここで、上記ホットプレス治具15又はプレス熱板27の所定の位置に凸部29を形成しておけば、基材11における凸部29に対応する位置にのみ強い圧縮力がかかることになる。そのため、基材11における凸部29に対応する部分の厚さが他の部分よりも薄くなる。本実施の形態1においては、基材11における対向する2つの辺の外縁部について、他の部分よりも厚さが薄くなっている。なお、この外縁部は、基材11におけるヒータ線1が配設されていない領域である。
図1において、斜線で示す部分が外縁部11Gであり、他の部分よりも厚さが薄くなっている。
【0019】
基材11のヒータ線1を配設しない側の面には、接着層の形成、或いは、両面テープの貼り付けがなされても良い。これは、座席に取り付ける際、面状ヒータ31を座席に固定するためのものである。
【0020】
上記作業を行うことにより、
図1に示すような面状ユニット31を得ることができる。基材11は、プレス熱板17によって圧縮されることになるため、ヒータ線1が配設される箇所については、より強く加圧されることになる。これにより、基材11におけるヒータ線1が配設される箇所は、ヒータ線1の形状に沿うような形状で、他の箇所よりも高密度化され且つ薄くなる。これにより、面状ユニット31のヒータ線1が配設される面は、ヒータ線1が配設される箇所においても凹凸がなく、平坦な形状となる。また、このようにして得られた面状ユニット31は、基材11が圧縮され高密度になっているため、機械的強度を向上させることができる。
【0021】
実施の形態1によって得られた面状ユニット31の厚さは2.0mmであり、ヒータ線1が配設された箇所における基材11の厚さは1.4mmであり、ヒータ線1が配設されていない箇所における基材11の厚さは2.0mmであった。また、厚さが薄くなっている外縁部11Gの厚さは1.0mmであった。また、ヒータ線1が配設されていない箇所における基材11の見かけ密度は、160kg/m3(JIS K7222準拠)、硬さASKER C 15(JIS K7312準拠)であった。
【0022】
上記のようにして得られた面状ユニット31について、ヒータ線1の両端は、引き出されてリード線35に接続され、このリード線35により、ヒータ線1、温度制御装置39、及び、コネクタ(図示しない)が接続されている。温度制御装置39はヒータ線1上に配置され、ヒータ線1の発熱によって面状ユニットの温度制御を行うこととなる。そして、上記したコネクタを介して図示しない車両の電気系統に接続されることになる。
【0023】
上記構成をなす面状ユニット31は、
図8に示すような状態で、ステアリングホイール71に設置される。このステアリングホイール71は、ホイール部72、スポーク部73及びボス部74からなり、面状ユニット31は、ホイール部72のホイール芯材77と被覆材78の間に設置されることになる。
【0024】
この際、
図9に示すように、面状ユニット31における基材11の2つの外縁部11Gが重なり合う状態で、面状ユニット31はステアリングホイール71のホイール芯材78に巻き付けられて設置される。上記のように、外縁部11Gの厚さが1.0mmであるのに対し、基材11のその他の部分の厚さが2.0mmであるので、基材11全体の厚さが、基材11の重なり合う部分を含めて、概ね均一となっている。
【0025】
(実施の形態2)
上記した実施の形態1において、線状体として、センサ線とし、他の条件は実施の形態1と同様にして面状ユニット41を得た。実施の形態2におけるセンサ線41は
図6,
図7に示すような構成になっている。まず、芯線43は外径約0.2mmの芳香族ポリアミド繊維束で形成されている。該芯線43の外周に、素線径0.08mmの硬質錫入り銅合金線である2本の導体素線45aを引き揃えて、ピッチ約1.0mmで、螺旋状に巻装されている。
図6,
図7に示すように、導体素線45aの周囲には、絶縁被膜45bが形成されている。絶縁被膜45bは、ポリウレタン樹脂製の内層45cと、ポリアミドイミド樹脂製の外層45dとから形成されている。絶縁被膜45bの内層35cは、導体素線45aの周囲にポリウレタンワニスを塗布し乾燥させることで厚さ4μmの層となるように形成された。次に、外層45dは、この内層45cの外周にポリアミドイミドワニスを塗布し乾燥して厚さ4μmの層となるように形成された。導体素線45aを巻装した芯線43の外周には、絶縁体層が被覆されている。絶縁体層は、難燃剤が配合されたポリエチレン樹脂を0.2mmの厚さとなるように押出被覆して形成されている。この実施の形態では、絶縁体層のポリエチレン樹脂は、熱融着部49として機能する。以上のセンサ線41の仕上外径は0.8mmである。このセンサ線41は、2本の導体素線45a間の静電容量値を検知するものである。
【0026】
上記のようにして得られた実施の形態1,2による面状ユニット31について、それぞれ
図8に示すようにステアリングホイール71に設置した。その状態で、実使用に供し、違和感の確認を行った。確認は、10人の使用者がステアリングホイールを握り、左右10回ずつ操舵作業を行って、凹凸を感じるかを聞き取り、違和感を覚えると回答した人数を調査した。実施の形態1,2の面状ユニット何れにおいても、違和感を覚えると回答した使用者は0人だった。
【0027】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。線状体としては、ヒータ線1でもよいし、センサ線41でもよい。ヒータ線1を使用すれば面状ユニット31はヒータユニットとなり、センサ線41を使用すれば面状ユニット41はセンサユニットとなる。センサ線41としては、静電容量センサの他、温度センサなど他のセンサとして使用することができる。温度センサの一種として、線状体をハンダ線とし、異常温度検知ユニットとすることもできる。電波を検知するという意味で、線状体をアンテナ線としてアンテナユニットとすることも考えられる。また、一つの線状体の中にヒータ機能を奏する導電体とセンサ機能を奏する導電体の両方を含むようなものを使用することもできる。また、線状体をシールド線とすることも考えられる。シールド線は、ヒータ線11からの電磁波の影響を外部に及ぼさないように、又は、センサ線21に外部からの電磁波の影響が及ばないように使用される。一般的に、シールド線の片端または両端はグランドに接続されることになる。
【0028】
ヒータ線1としては、従来公知の種々のコード状ヒータを使用されることができ、例えば、以下の構成とすることができる。
1.上記実施の形態のように、まず、絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aを複数本撚り合わせ又は引き揃えて芯線3上に巻装し、さらに、その外周に熱融着部9を被覆して形成されるヒータ線1。
2.絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aを複数本撚り合わせて形成されるヒータ線1。
3.絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aを複数本引き揃えて形成されるヒータ線1。
4.絶縁被膜5bによって被覆された導体素線5aと、絶縁被膜5bによって被覆されていない導体素線5aとを、交互に配置して形成されるヒータ線1。
5.絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aの本数を更に増やした状態で、絶縁被膜5bにより被覆された導体素線5aを引き揃えて配置して形成されるヒータ線1。
6.熱融着部9とは別の絶縁体層7を形成したヒータ線1。
ヒータ線1は、これら以外にも様々な構成のものが想定でき、例えば上記した特許文献4等も参考にできる。また、芯線3と導体素線5aを撚り合せたものによってヒータ線1を構成することもできる。ヒータ線1でなく、センサ線41としたときも同様である。
【0029】
芯線3としては、例えば、ガラス繊維等の無機繊維や、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、脂肪族ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維等の有機繊維のモノフィラメント、マルチフィラメント、スパン、或いはそれらの繊維材料、若しくは、それらの繊維材料を構成する有機高分子材料を芯材とし、その周上に熱可塑性の有機高分子材料が被覆された構成を有する繊維などが挙げられる。又、熱収縮性及び熱溶融性を有する芯線3を使用した場合、導体素線5aが断線して異常加熱すると、芯線3が溶融して切断されるとともに収縮する。芯線3が収縮すると、芯線3に巻装された導体素線5aは芯線3の動作に追従するため、断線した導体素線5aの端部同士が分離する。そのため、断線した導体素線5aのそれぞれの端部が、接したり離れたりすることを繰り返さなくなる。また、断線した導体素線5aのそれぞれの端部が点接触のようなわずかな接触面積で接することがなくなる。すると、異常発熱が防止される。又、導体素線5aが絶縁被膜5bにより絶縁されている場合、芯線3が絶縁材料で形成されている必要はない。例えば、芯線3として、ステンレス鋼線やチタン合金線等を使用できる。しかし、導体素線5aが断線する可能性があるので、芯線3は絶縁材料で形成される方が良い。
【0030】
導体素線5aとしては、従来公知のものを使用することができ、例えば、銅線、銅合金線、ニッケル線、鉄線、アルミニウム線、ニッケル-クロム合金線、鉄-クロム合金線、などが挙げられ、銅合金線としては、例えば、錫-銅合金線、銅-ニッケル合金線、銅固溶体と銅銀共晶がファイバー状になった銀入り銅合金線などが挙げられる。このうち、コストと特性のバランスの点から、銅線又は銅合金線を使用することが好ましい。これら銅線又は銅合金線には軟質のものと硬質のものがあるが、耐屈曲性の観点から、軟質のものよりも硬質のものの方が特に好ましい。尚、硬質銅線や硬質銅合金線とは、線引き加工等の冷間加工によって個々の金属結晶粒が加工方向に長く引き伸ばされ繊維状組織となったものである。このような硬質銅線や硬質銅合金線は、再結晶温度以上で加熱すると、金属結晶内に生じた加工歪みが解消されるとともに、新たな金属結晶の基点となる結晶核が出現し始める。この結晶核が発達して、順次旧結晶粒と置換される再結晶が起き、更に結晶粒が成長した状態となる。軟質銅線や軟質銅合金線はこのような結晶粒が成長した状態のものである。この軟質銅線や軟質銅合金線は、硬質銅線や硬質銅合金線と比べて伸びや電気抵抗値は高いものの引張強さが低い性質となるため、耐屈曲性は硬質銅線や硬質銅合金線と比べて低くなる。このように、硬質銅線や硬質銅合金線は、熱処理によって耐屈曲性が低い軟質銅線や軟質銅合金線になるため、できるだけ熱履歴の少ない加工を行うことが好ましい。尚、硬質銅線はJIS-C3101(1994)、軟質銅線はJIS-C3102(1984)においても定義がなされており、外径0.10~0.26mmでは伸び15%以上、外径0.29~0.70mmでは伸び20%以上、外径0.80~1.8mmでは伸び25%以上、外径2.0~7.0mmでは伸び30%以上のものが軟質銅線とされる。また、銅線には錫メッキが施されているものも含まれる。錫メッキ硬質銅線はJIS-C3151(1994)、錫メッキ軟質銅線はJIS-C3152(1984)にて定義がなされている。又、導体素線5aの断面形状についても種々のものが使用でき、通常使用される断面円形のものに限られず、いわゆる平角線と称されるものを使用しても良い。
【0031】
線状体として、温度検知のセンサ線とする場合、導体素線45aとしては、温度変化による抵抗値変化が大きい材料が好ましい。例えば、銅線、銅合金線、ニッケル線、鉄線、アルミニウム線、ニッケル-クロム合金線、銅-ニッケル合金、鉄-クロム合金などの各種金属線、炭素繊維線、導電性樹脂線などが挙げられる。これらの中でも、正特性温度係数を有するものが好ましい。特に係数が大きいニッケル線、プラチナ線が好ましく使用できる。正特性温度係数を有するものであると、温度が上昇するに従い抵抗値が大きくなることになるため、抵抗値が大きくなると異常温度と判断され、通電を停止する制御の方式になる。従って、万が一、導体素線35aが断線したときには、抵抗値が∞になることから、異常温度が発生したときと同様、通電を停止することになる。これは、安全装置としてみたときに非常に信頼度の高い方式である。なお、センサ線41の構成については、ヒータ線1の各構成を応用することが考えられる。
【0032】
芯線3に導体素線5aを巻装する場合は、上記した導体素線5aの材料の中でも、巻付けたときのスプリングバックする量が小さいものが好ましい。例えば、銅固溶体と銅銀共晶がファイバー状になった銀入り銅合金線などは、抗張力性に優れ引張強度や屈曲強度には優れるものの、巻付けたときスプリングバックし易い。そのため、芯線3に巻装する際に、導体素線5aの浮きや、過度の巻付けテンションによる導体素線5aの破断が生じ易く、又加工後には撚り癖が生じ易いため好ましくない。特に、導体素線5aに絶縁被膜5bが被覆される形態とした場合は、この絶縁被膜5bによる復元力も加わることになる。そのため、導体素線5aの復元率が小さいものを選定し、絶縁被膜5bによる復元力をカバーすることが重要となる。
【0033】
導体素線5aに被覆される絶縁被膜5bは、上記実施の形態のように、内層5cと外層5dの2層によって形成されても良いし、3層以上の複数層によって形成されても良いし、単層であっても良い。複数層とする場合、内層を構成する材料の熱分解温度は、外層を構成する材料の融点または熱分解温度の内の低い方より低いことが好ましい。ここで、内層とは、導体素線5a上に形成される層である。また、外層とは、この内層より外側であればよいので、外層のさらに外側に他の外層を形成したり、内層と外層の間に他の中間層を形成したりすることも可能である。
【0034】
絶縁被膜5bの材料は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステルナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂など種々の材料が挙げられる。これらの材料は、複数種類を組み合わせて使用しても良いし、難燃剤や老化防止剤などの公知の添加剤を種々配合しても良い。これらの樹脂の中から材料を組み合わせて、内層を構成する材料の熱分解温度が、外層を構成する材料の融点または熱分解温度の内の低い方より、低くなる材料にする。内層の材料は、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール等を選択できる。特に、内層の材料が、熱硬化性樹脂であり、外層を構成する材料が、熱硬化性樹脂であることが好ましい。ここで熱硬化性樹脂には、架橋性材料も含まれる。コード状ヒータとしての発熱特性や、半田付け等の端末加工の容易さの観点から、内層の材料は、ポリウレタン樹脂またはポリエステル樹脂であり、外層の材料は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂またはシリコーン樹脂の何れかであることが好ましい。特に、内層の材料が、ポリウレタン樹脂であり、外層の材料が、ポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。このポリウレタン樹脂は、例えばイミド含有ポリウレタン等、種々の変性や配合をしているようなものであっても良い。
【0035】
また、絶縁被膜5bの厚さは、導体素線5aの直径の3~30%であることが好ましい。3%未満であると、十分な耐電圧特性が得られず、導体素線5aを個別に被覆する意味がなくなる可能性がある。また、30%を超えると、接続端子を圧着する際に絶縁被膜5bの除去が困難となるとともに、ヒータ線が無駄に太くなってしまうことになる。
【0036】
上記導体素線5aを引き揃え又は撚り合せて芯材3上に巻装する際には、撚り合せるよりも、引き揃えた方が好ましい。これは、ヒータ線の径が細くなるとともに、表面も平滑になるためである。又、引き揃え又は撚り合わせの他に、芯材3上に導体素線5aを編組することも考えられる。
【0037】
本発明によるヒータ線1として、導体素線5aの外周に絶縁被覆が形成されているものも考えられる。この絶縁被覆により、万が一導体素線5aが断線した場合にも、他の部材への通電が絶縁されるとともに、スパークが発生した場合も高温の発熱を断熱することになる。絶縁被覆を形成する場合は、押出成形等によって行っても良いし、予めチューブ状に成形した絶縁被覆を被せても良く、形成の方法には特に限定はない。押出成形によって絶縁被覆を形成すると、導体素線5aの位置が固定されるため、位置ズレによる導体素線5aの摩擦や屈曲を防止できることから、耐屈曲性が向上されるため好ましい。絶縁被覆を構成する材料としても、ヒータ線の使用形態や使用環境などによって適宜設計すれば良く、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、脂肪族ポリアミド系樹脂、塩化ビニル樹脂、変性ノリル樹脂(ポリフェニレンオキサイド樹脂)、ナイロン樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、合成ゴム、フッ素ゴム、エチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等、種々のものが挙げられる。特に、難燃性を有する高分子組成物が好ましく使用される。ここでの難燃性を有する高分子組成物とは、JIS-K7201(1999年)燃焼性試験における酸素指数が21以上のものを示す。酸素指数が26以上のものは特に好ましい。このような難燃性を得るため、上記した絶縁被覆7を構成する材料に適宜難燃材等を配合してもよい。難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水和物、酸化アンチモン、メラミン化合物、リン系化合物、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤には公知の方法で適宜表面処理を施しても良い。
【0038】
ヒータ線1の外周に熱融着部9を形成することにより、加熱加圧によりヒータ線1を基材11に熱融着することができる。絶縁被覆を形成した場合、この絶縁被覆の外周に熱融着部9が形成される。熱融着部9を構成する材料は、上記の絶縁被覆を構成する材料と同様のものを使用することができる。これらの中でも、基材との接着性に優れるオレフィン系樹脂が好ましい。オレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-不飽和エステル共重合体などが挙げられる。これらの中でも特に、エチレン-不飽和エステル共重合体が好ましい。エチレン-不飽和エステル共重合体は、分子内に酸素を有する分子構造であるため、ポリエチレンのような炭素と水素のみの分子構造をしている樹脂と比較して燃焼熱が小さくなり、その結果、燃焼の抑制につながることとなる。又、元々の接着性が高いため基材との接着性も良好である上、無機粉末等を配合した際の接着性の低下が少ないため、種々の難燃剤を配合するのに好適である。エチレン-不飽和エステル共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体などが挙げられ、これらの単独又は2種以上の混合物であってもよい。ここで「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の両方を表すものである。これらの内から任意に選択すれば良いが、上記した絶縁被膜5bを構成する材料の分解開始温度以下又は融点以下の温度で溶融する材料である方が良い。又、基材11との接着性に優れる材料として、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル-ポリエステル型、ポリエステル-ポリエーテル型のものがあるが、ポリエステル-ポリエーテル型の方が高い接着性を有するため好ましい。尚、ヒータ線1と基材11を熱融着する場合、ヒータ線1と基材11との接着強度は非常に重要なものである。この接着強度が充分でないと、使用していくうちに基材11からヒータ線1が離脱してしまい、それにより、ヒータ線11には予期せぬ屈曲が加わることになるため、導体素線5aが断線する可能性が高くなる。導体素線5aが断線すると、ヒータとしての役を果たさなくなるだけでなく、チャタリングによりスパークに至るおそれもある。
【0039】
絶縁被覆を形成する場合、絶縁被覆の融点は、熱融着部9の融点よりも高いことが求められる。これにより、加熱加圧等により熱融着部9を融着させる際にも、絶縁被覆の形状が略変形せず、充分な絶縁性能を維持することができる。絶縁被覆の融点としては、215℃~250℃であることが好ましく、熱融着部9の融点としては、100℃~185℃であることが好ましい。また、導体素線5aに絶縁被膜5bを形成する場合は、絶縁被覆の融点は、絶縁被膜5bの融点よりも低いことが好ましい。
【0040】
また、絶縁被覆7を構成する材料と、熱融着部9を構成する材料は、同系の高分子材料であることが好ましい。ここで、同系の高分子材料とは、それぞれが、共通の主鎖構造を有している高分子材料、共通の官能基を有している高分子材料、分子量のみ異なる高分子材料、共通のモノマー単位を有している共重合体、共通の高分子材料を配合している混合物、などが該当する。このようなものであれば、絶縁被覆と熱融着部9の相互が充分に接着するため、ヒータ線が基材から脱離することを防ぐことができる。
【0041】
導体素線5aの外周には、絶縁被覆と熱融着部9の2層だけでなく、他の層を適宜形成してもよい。又、絶縁被覆や熱融着部9は、長さ方向に連続して形成することに限定されず、例えば、ヒータ線1の長さ方向に沿って直線状やスパイラル線状に形成する、ドット模様に形成する、断続的に形成するなどの態様が考えられる。但し、接着強度の観点から、絶縁被覆及び熱融着部9は、長さ方向に連続して形成することが好ましい。
【0042】
また、上記のようにして得られたヒータ線1は、自己径の6倍の曲率半径で90度ずつの屈曲を行う屈曲性試験において、導体素線が少なくとも1本切れるまでの屈曲回数が2万回以上であることが好ましい。
【0043】
また、接着層としては、例えば、高分子アクリル系粘着剤からなりテープ基材を使用しない接着層や、ポリプロピレンフィルムの両面に接着剤を形成してなる接着層など種々のもの使用できる。それ単独でFMVSS No.302自動車内装材料の燃焼試験に合格するような難燃性を有するものであれば、面状ユニットの難燃性が向上し好ましい。また、面状ユニットの伸縮性を損なわないために、粘着剤のみからなる接着層であることが好ましい。
【0044】
基材11についても、発泡ポリウレタン樹脂に限定されるものではなく、例えば、他の材質からなる発泡樹脂シート、発泡ゴムシートなど種々の高分子発泡体が考えられる。特に空隙を有するもので、伸縮性に優れるものが好ましく、表面にヒータ線の凹凸が現れないように硬度を調節したものが好ましい。また、硬度を調節するには、発泡率を調整する、気泡の状態を独立気泡または連続気泡にする、目的に応じた硬度の材料を使用するなどの方法がある。材料としては、ポリウレタン樹脂、クロロプレンゴム、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ネオプレンゴム、ジエン系ゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体など、種々の樹脂、ゴム、熱可塑性エラストマーなどから選択すれば良い。基材11としては、その他にも、例えば、不織布、織布、紙、アルミ箔、マイカ板、樹脂シート、延伸多孔質体等、種々のものが使用できる。基材11としては、難燃性のものが好ましく、難燃性繊維や難燃剤を適宜混合したものが好ましく使用される。また、複数の基材11を積層する等して使用することもでき、この場合は、それぞれの基材11で異なる材料や異なる気孔率等のものを使用しても良い。
【0045】
また、ヒータ線1やセンサ線41を基材11に配設する際、加熱加圧による融着によって接着・固定する態様でなく、他の態様によりヒータ線1を基材11に固定しても良い。例えば、通常の使用よりも高い温度になるよう、ヒータ線1に通電して加熱させ、その熱で熱融着部9を溶融させて基材11と接着・固定する態様、誘導加熱によって導体素線5を加熱させ、その熱で熱融着部9を溶融させて基材11と接着・固定する態様、温風により熱融着材からなる熱融着部9を溶融させて接着・固定する態様、加熱しながら一対の基材11で挟持固定する態様などが考えられる。また、基材11を加熱加圧する際には、プレス熱板17のみでなくホットプレス治具15についても加熱しても良い。この際、プレス熱板17とホットプレス治具15の温度を異なるものとして、基材11の圧縮率を変え、即ち気孔率を変化させることも考えられる。また、ヒータ線1やセンサ線41を縫製によって基材11に固定する態様も考えられる。
【0046】
面状ユニット31がステアリングホイール71に巻き付けられて設置された状態において、基材11が重なり合う部分の位置や範囲については、任意に設計することができる。但し、ヒータ線1同士、或いは、センサ線41同士が重なり合うと、その部分の発熱量が大きくなったり、センサ感度に悪影響が出たりする可能性があるので、基材11が重なり合う部分には、ヒータ線1及びセンサ線41が配設されていないことが好ましい。また、基材11が重なり合う部分は、対向する2つの辺の外縁部とすることが考えられるが、この外縁部の範囲も任意で設計される。基材11の形状が複雑な形状である場合は、その形状を長方形におおよそ当てはめて対向する2つの辺を設定することが考えられる。要は、面状ユニット31をステアリングホイールに巻き付けた状態を想定し、基材11が重なり合う部分の近傍におけるヒータ線1やセンサ線41の間隔が、他の部分の配線パターン間隔と同程度になるよう、適切に重なり合う範囲と位置を設計すればよい。また、基材11が重なり合う部分について、基材11の他の部分よりも厚さが薄くなっているが、基材11が重なり合う部分が均一な厚さである必要はなく、例えば
図10に示すように、端部に近づくほど厚さが薄くなるように傾斜した厚さとなっていても良い。要は、基材11が重なり合う部分の厚さが、基材11における他の箇所の厚さと略同厚さとなっていればよい。なお、おおむね均一、及び、略同厚さとは、誤差10%の範囲に入っているものと考えることができる。
【0047】
昨今では、地球温暖化問題の対策の一つとして電気自動車の推進が図られているが、電気自動車には内燃機関という熱源がないため、抵抗加熱による車内暖房がなされることになる。それにより、従来の暖気による暖房だけでなく、シートヒータ、ステアリングヒータといった直接接触の伝導伝熱による暖房が広く一般的になってきており、更には、アームレストや車内壁にヒータユニットを設置することも実用化されてきている。また、ヒータユニットの稼働を制御するため、温度や接触を検知するセンサユニットについても併せて設置することが検討されている。特に、アームレストにヒータユニット等を設置する場合、熱効率や検知精度をなるべく高めるためには表皮の直下にヒータユニット等を設置することが好ましい。その一方、アームレストの特性上、適度な柔軟性が必要になり、且つ、アームレストのベースフレームとの断熱を図るため、ヒータユニット等の基材にはある程度の厚みが要求されることになる。その場合、ヒータユニット等を設置した箇所と設置していない箇所で段差が生じてしまうため、使用者が違和感を覚えてしまうことになる。
【0048】
特に上記
図10に示すような例を応用することで、このような課題を解決し、使用者が違和感を覚えることのない面状ユニットを提供することができる。
【0049】
より具体的には、高分子発泡体からなる基材と、該基材上に配設される線状体とからなる面状ユニットであって、上記基材の少なくとも一部の外縁部が、縁端にいくに従ってなだらかに厚さが小さくなっている傾斜部となっていることを特徴とすることが考えられる。また、上記傾斜部が、厚さが小さくなるに従って密度が大きくなっていることを特徴とすることが考えられる。また、上記傾斜部には、上記線状体が配設されていないことが考えられる。
【0050】
このような面状ユニットにより、面状ユニットを設置した箇所と設置していない箇所で段差を解消し、使用者が違和感を覚えることがなくなる。
【0051】
このような面状ユニットの形態として、例えば、
図11,12に示すような、ヒータ線1等の線状体、基材11、傾斜部11K(外縁部11G)からなる面状ユニット31が考えられる。
図11において、斜線で示す部分が傾斜部11K(外縁部11G)に該当する。ヒータ線1やセンサ線41などの線状体や基材11の構成、ヒータ線1やセンサ線41を基材11に配設する方法については、上記実施の形態1や実施の形態2を参照することができる。
【0052】
傾斜部11Kは、種々の方法により形成することができる。例えば、加熱加圧により基材11を圧縮しながらヒータ線1等の線状体を基材11に配設する際に、傾斜部11Kに該当する箇所をより強く加圧することが考えられる。より具体的には例えば、
図2を参照し、ホットプレス治具15またはプレス熱板27における傾斜部11Kに該当する箇所に、なだらかに高さが高くなる凸部29を形成しておくことが考えられる。これにより、縁端にいくに従ってなだらかに厚さが小さくなるとともに、厚さが小さくなるに従って密度が大きくなる傾斜部11Kが形成される。また、基材11の外縁部11Gを切削加工して傾斜部11Kを形成することが考えられる。また、外縁部11Gの厚さが小さくなるような金型によってあらかじめ傾斜部11が形成された基材11を作成することが考えられる。
【0053】
また、他の具体的な態様として、高分子発泡体からなる基材と、該基材上に配設される線状体とからなる面状ユニットであって、上記基材が低密度部と高密度部を有し、少なくとも一部の外縁部が、低密度部となっていることを特徴とすることが考えられる。また、上記低密度部と上記高密度部が略同厚さとなっていることが考えられる。また、上記低密度部には、上記線状体が配設されていないことが考えられる。
【0054】
このような面状ユニットであれば、低密度部は押圧により容易に変形されるため、面状ユニットを設置した箇所と設置していない箇所で段差を感じにくくなり、使用者が違和感を覚えることがなくなる。
【0055】
このような面状ユニットの形態として、例えば、
図13,14に示すような、ヒータ線1等の線状体、基材11、高密度部11H、低密度部11L(外縁部11G)からなる面状ユニット31が考えられる。
図13において、斜線で示す部分が低密度部11L(外縁部11G)に該当する。ヒータ線1やセンサ線41などの線状体や基材11の構成、ヒータ線1やセンサ線41を基材11に配設する方法については、上記実施の形態1や実施の形態2を参照することができる。
【0056】
高密度部11H、低密度部11Lは、種々の方法により形成することができる。例えば、加熱加圧により基材11を圧縮しながらヒータ線1等の線状体を基材11に配設する際に、高密度部11Hに該当する箇所の厚さを低密度部11Lに該当する箇所の厚さより大きくしておき、全体を均一に加圧することが考えられる。より具体的には例えば、高密度部11Hに該当する箇所に2枚の高分子発泡体を重ねておいた基材11とし、全体を均一に加熱加圧することが考えられる。また、2枚以上の複数枚の高分子発泡体を重ねて基材11とすることも考えられる。これにより、加圧前に厚さが大きかった部分は強く加圧されて高密度になり、加熱前に厚さが小さかった部分は弱く加圧されて低密度となる。また、密度が異なる複数の高分子発泡体を突き合わせて接合することでも、高密度部11H及び低密度部11Lを有する基材11を形成することができる。より具体的には例えば、高密度の高分子発泡体と低密度の高分子発泡体とを突き合わせて並べて配置し、これらを加熱加圧することで、高密度の高分子発泡体と低密度の高分子発泡体は、主面と平行の方向へ押し広げられることになる。これにより、高密度の高分子発泡体と低密度の高分子発泡体を突き合せた面においては、相互を接合させる方向に力が働く。これにより、一方の高分子発泡体の気孔中にもう一方の高分子発泡体の非気孔部が直接入り込んで、相互の高分子発泡体が直接固定されることとなる。勿論、接着剤等により高密度の高分子発泡体と低密度の高分子発泡体を接着しても良い。
【0057】
なお、上記した密度とは見かけ密度のことであり、例えば、発泡体においては、気孔率が小さくなるほど密度は大きくなる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上詳述したように本発明によれば、使用者がステアリング操作の際に違和感を覚えることのないようにすることができる。このような面状ユニットは、例えば、自動車、船舶、各種輸送用車両、各種農耕用車両、各種土木建設用重機などに使用されるステアリングホイールに使用され、ステアリングホイール部を暖めるためのヒータユニットとして、ステアリングホイールの温度検知をするための温度センサユニットとして、或いは、ステアリングホイールの把持状態を検知するための静電容量センサユニットとして好適に使用することができる。また、本発明による面状ユニットは、ステアリングホイールのみでなく、他の用途に活用することができる。例えば、自動車、船舶、各種輸送用車両、各種農耕用車両、各種土木建設用重機などのシートヒータ、アームレストヒータ、温度センサユニット、接触検知ユニットなどへの応用や、電気毛布、電気カーペット、暖房便座、防曇鏡用ヒータ、加熱調理器具、床暖房用ヒータ、被服用ヒータ、各種の平面状温度検知器、静電容量検知器等に応用することも考えられる。
【符号の説明】
【0059】
1 ヒータ線(線状体)
3 芯材
5a 導体素線
5b 絶縁被膜
9 熱融着部
11 基材
31 面状ユニット
41 センサ線(線状体)
43 芯材
45a 導体素線
45b 絶縁被膜
49 熱融着部
71 ステアリングホイール
77 ホイール芯材
78 被覆材