(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068110
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201D
H01G4/30 201K
H01G4/30 201C
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 512
H01G4/30 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144428
(22)【出願日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】10-2022-0146267
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0187736
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲ジュン▼▲オ▼
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲ビョン▼建
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 由弘
(72)【発明者】
【氏名】梁 賢智
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082PP03
(57)【要約】
【課題】本発明の解決しようとする課題の一つは、信頼性に優れた積層型電子部品を提供することである。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、上記内部電極との界面から2nm離隔した領域におけるTiに対するInの平均含量が0.3at%以上3.8at%以下であることができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、前記内部電極との界面から2nm離隔した領域におけるTiに対するInの平均含量が0.3at%以上3.8at%以下である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記誘電体層は、前記内部電極との界面から2nm離隔した領域におけるTiに対するInの平均含量が1.3at%以上3.3at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記誘電体層は、前記内部電極との界面から2nm離隔した領域におけるTiに対するSnの平均含量が0.02at%以上0.42at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層は、前記内部電極との界面から2nm離隔した領域におけるTiに対するDyの平均含量が3at%以上7at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記誘電体層は、Ba(Ti1-zInz)O3(0<z<1)を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記誘電体層のうち、内部電極との界面から2nm以内の領域をR1とするとき、前記R1に含まれたInの平均含量は、前記誘電体層のうち前記R1を除く領域に含まれたInの平均含量よりも高い、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記内部電極は、前記誘電体層との界面から2nm離隔した領域におけるNiに対するInの平均含量が0.45at%以上1.39at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記内部電極の前記誘電体層との界面から2nm離隔した領域におけるNiに対するInの平均含量が0.67at%以上1.14at%以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記内部電極はNi及びInを含み、前記内部電極に含まれたInのうち少なくとも一部はNiと合金の形態で存在する、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記内部電極と誘電体層間の界面から2nm以内の領域をRとするとき、前記Rに含まれたInの平均含量は、前記内部電極及び誘電体層のうち前記Rを除く領域に含まれたInの平均含量よりも高い、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記界面に隣接した領域を前記誘電体層と内部電極との界面に垂直な方向にSTEM-EDSを用いてラインプロファイル分析する際、
Ni含量が50at%超過90at%以下の領域でIn含量のピーク値が検出される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記界面に隣接した領域を前記誘電体層と前記内部電極との界面に垂直な方向にSTEM-EDSを用いてラインプロファイル分析する際、
Ni含量が10at%以上50at%未満の領域でDy含量のピーク値が検出される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記内部電極はセラミック粒子を含み、前記セラミック粒子はInを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記セラミック粒子は、表面におけるIn含量が内部におけるIn含量より高く、
前記セラミック粒子は、表面におけるTiに対するInの平均含量が0.3at%以上である、請求項13に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記誘電体層の平均厚さは300nm以上10μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記内部電極の平均厚さは300nm以上3μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項17】
前記内部電極の平均厚さをte、前記内部電極の厚さの標準偏差をσteとするとき、σte/teは0.2以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項18】
前記内部電極は、複数の導電部及び隣接した導電部の間に配置された不連続部を含み、前記内部電極の全長さに対する複数の導電部の長さの和の比率である内部電極の連結性が85%以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項19】
誘電体層及び前記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記内部電極は、前記誘電体層との界面から2nm離隔した領域におけるNiに対するInの平均含量が0.45at%以上1.39at%以下である、積層型電子部品。
【請求項20】
前記内部電極は、前記誘電体層との界面から2nm離隔した領域におけるNiに対するInの平均含量が0.67at%以上1.14at%以下である、請求項19に記載の積層型電子部品。
【請求項21】
前記内部電極の中心部におけるNiに対するInの平均含量は0.05at%以上0.8at%以下である、請求項19に記載の積層型電子部品。
【請求項22】
前記内部電極の中央部におけるNiに対するSnの平均含量は0.02at%以上0.42at%以下である、請求項19に記載の積層型電子部品。
【請求項23】
前記内部電極はセラミック粒子を含み、前記セラミック粒子はInを含む、請求項19に記載の積層型電子部品。
【請求項24】
前記セラミック粒子は、表面におけるIn含量が内部におけるIn含量より高く、
前記セラミック粒子は、表面におけるTiに対するInの平均含量が0.3at%以上である、請求項23に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)等の映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話等の様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができ、コンピュータ、モバイル機器等、各種の電子機器が小型化、高出力化するにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求が増大している。
【0004】
このような積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化の傾向に伴い、積層セラミックキャパシタの単位体積当たりの容量を増加させることに対する重要性が高まっている。積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならない。また、積層セラミックキャパシタの信頼性を向上させるためには、内部電極の連結性が高く、内部電極の厚さが均一でなければならない。
【0005】
しかし、内部電極の厚さを薄くするために、従来よりも微粒の金属粉末を使用する場合、焼結収縮開始温度が低くなり、誘電体層との収縮挙動の不一致が大きくなり、内部電極の凝集現象及び内部電極の切れ現象が発生することがある。
【0006】
また、自動車用電装部品などに対する適用が増加するにつれて、様々な環境での高信頼性が求められている。高信頼性を確保するためには、内部電極の連結性及び厚さの均一性を向上させ、電界の集中を分散させることが重要である。また、様々な環境での高信頼性を確保するために高温負荷寿命に優れることが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決しようとする課題の一つは、信頼性に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0008】
本発明の解決しようとする課題の一つは、静電容量が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0009】
本発明の解決しようとする課題の一つは、高温負荷寿命に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0010】
本発明の解決しようとする課題の一つは、内部電極の凝集現象及び内部電極の切れ現象を抑制することである。
【0011】
但し、本発明の解決しようとする課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、内部電極との界面から2nm離隔した領域におけるTiに対するInの平均含量が0.3at%以上3.8at%以下であることができる。
【0013】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層と第1方向に交互に配置される内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記内部電極は、上記誘電体層との界面から2nm離隔した領域におけるNiに対するInの平均含量が0.45at%以上1.39at%以下であることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の様々な効果のうち一効果として、誘電体層と内部電極との界面に隣接した領域のIn含量を制御することにより、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0015】
本発明の様々な効果のうち一効果として、積層型電子部品の静電容量及び高温負荷寿命を向上させることができる。
【0016】
本発明の様々な効果のうち一効果として、内部電極の連結性を向上させることができ、内部電極の厚さ偏差を低減することができる。
【0017】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示す。
【
図2】
図1のI-I’線に沿った断面図を概略的に示す。
【
図3】
図1のII-II’線に沿った断面図を概略的に示す。
【
図4】
図1のII-II’線に沿った断面図であって、本発明の測定領域を説明するための図である。
【
図5】
図1の本体を分解して示す分解斜視図である。
【
図7】一実施形態による内部電極と誘電体層との界面をSTEM-EDSで分析したイメージであって、(a)はSTEM-EDSでNi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、(b)はSTEM-EDSでTi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、(c)はSTEM-EDSでIn元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【
図8】
図7(c)に表されたL1に沿ってSTEM-EDSでラインプロファイル(line profile)した結果である。(b)は(a)の一部を拡大したグラフである。
【
図9】本発明の一実施形態による内部電極と誘電体層との界面をSTEM-EDSで分析したイメージであって、(a)はSTEM-EDSでNi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、(b)はSTEM-EDSでTi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、(c)はSTEM-EDSでIn元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【
図10】内部電極の連結性を測定する方法を説明するための図であって、
図2のP領域を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0020】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されるものではない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0021】
図において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0022】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、
図2は、
図1のI-I’線に沿った断面図を概略的に示すものであり、
図3は、
図1のII-II’線に沿った断面図を概略的に示すものであり、
図4は、
図1のII-II’線に沿った断面図であって、本発明の測定領域を説明するための図であり、
図5は、
図1の本体を分解して示す分解斜視図であり、
図6は、
図3のK領域を拡大した図である。
【0023】
以下、
図1~
図6を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100について詳細に説明する。また、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、以下「MLCC」という)について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、セラミック材料を使用する多様な積層型電子部品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0024】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層と交互に配置される内部電極121、122を含む本体110と、上記本体上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層は、上記内部電極との界面から2nm離隔した領域におけるTiに対するInの平均含量が0.3at%以上3.8at%以下であることができる。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、誘電体層が内部電極との界面から2nm離隔した領域におけるTiに対するInの平均含量が0.3at%以上3.8at%以下を満たすことにより、内部電極の切れ及び凝集現象を抑制して積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0026】
以下、積層型電子部品100の各構成について詳細に説明する。
【0027】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていてもよい。
【0028】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程において本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0029】
本体110は、第1方向に対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0030】
誘電体層111上に内部電極121、122が配置されていないマージン領域が重なることにより、内部電極121、122の厚さによる段差が発生して第1面と第3~第5面とを連結するコーナー及び/又は第2面と第3~第5面とを連結するコーナーは、第1面又は第2面を基準として見たとき、本体110の第1方向の中央側に収縮した形状を有することができる。あるいは、本体の焼結過程における収縮挙動により、第1面1と第3~第6面3、4、5、6とを連結するコーナー及び/又は第2面2と第3~第6面3、4、5、6とを連結するコーナーは、第1面又は第2面を基準として見たとき、本体110の第1方向の中央側に収縮した形態を有することができる。あるいは、チッピング不良などを防止するために本体110の各面を連結する角を別途の工程を行ってラウンド処理することにより、第1面と第3~第6面とを連結するコーナー及び/又は第2面と第3~第6面とを連結するコーナーは丸みを帯びた形態を有することができる。
【0031】
一方、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成する場合には、第1面と第5及び第6面とを連結する部分、並びに第2面と第5及び第6面とを連結する部分が収縮した形態を有さなくてもよい。
【0032】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。誘電体層の積層数は特に制限する必要はなく、積層型電子部品のサイズを考慮して決定することができる。例えば、誘電体層を400層以上積層して本体を形成することができる。
【0033】
誘電体層111は、セラミック粉末、有機溶剤及びバインダーを含むセラミックスラリーを製造し、上記スラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥してセラミックグリーンシートを設けた後、上記セラミックグリーンシートを焼成することにより形成することができる。セラミック粉末は、十分な静電容量が得られる限り、特に制限されないが、例えば、セラミック粉末としてチタン酸バリウム系(BaTiO3)系粉末を用いることができる。より具体的な例を挙げると、セラミック粉末は、BaTiO3、(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)及びBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)のうち一つ以上であってもよい。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、誘電体層111は、内部電極121、122との界面IFから2nm離隔した領域Y1、Y2、Y3、Y4、Y5においてTiに対するInの平均含量が0.3at%以上3.8at%以下を満たすことができる。このように界面に隣接した領域にIn含量が高い領域を配置することで、誘電体層と内部電極との界面接合力を向上させることができ、内部電極から誘電体層への、又は誘電体層から内部電極への電子移動を妨げる一種の半導体障壁として作用し、静電容量及び高温負荷寿命の両方を向上させることができる。
【0035】
ここで、Tiに対するInの含量は原子比率を意味し、[(Inの原子個数)/(Tiの原子個数)]×100で計算することができ、単位はat%である。また、Tiに対するInの平均含量とは、誘電体層111のうち内部電極121、122との界面から2nm離隔した領域のうち最小5つの領域で測定したTiに対するInの含量を平均した値であることができる。以下、誘電体層111のうち、内部電極121、122との界面から2nm離隔した領域におけるTiに対するInの平均含量を「Y」とする。
【0036】
Yが0.3at%未満の場合には、Yが0at%の場合に比べて静電容量は向上できるものの、高温負荷寿命が低下するおそれがある。したがって、Yは0.3at%以上であることが好ましく、静電容量及び高温負荷寿命をより向上させるために、Yは1.3at%以上であることがより好ましい。
【0037】
一方、Yが3.8at%超過の場合には、Yが0at%の場合に比べて静電容量が低下するおそれがある。したがって、Yは3.8at%以下であることが好ましく、静電容量をより向上させるために、Yは3.3at%以下であることがより好ましい。
【0038】
したがって、Yは0.3at%以上3.8at%以下であってもよく、より好ましくは1.3at%以上3.3at%以下であってもよい。
【0039】
Yを測定する方法に対する一例として、
図6を参照すると、積層型電子部品を第2方向の中央までポリシングして第1及び第3方向の断面を露出させた後、誘電体層111のうち内部電極121、122との界面IFから2nm離隔した5つの領域Y1、Y2、Y3、Y4、Y5を選定し、5つの領域Y1、Y2、Y3、Y4、Y5のそれぞれにおいてSTEM-EDSによるIn及びTiに対する定量分析を行ってTiに対するInの含量を求めた後、その値の平均値を求めることで測定することができる。また、互いに異なる4つの誘電体層を選定して各誘電体層ごとに5つの領域を測定し、合計20個の測定値の平均値を求めることによって、より一般化することができる。
【0040】
また、誘電体層111と内部電極121、122間の界面IFはSTEM(走査透過型電子顕微鏡)により界面の両側に現れる線、すなわち、フレネルフリンジ(Fresnel fringes)を観察し、フォーカスを変化させたときにフレネルフリンジのコントラストが両側においてほぼ対称に変化する地点を界面とした。
【0041】
一方、誘電体層111のうち、内部電極121、122との界面から2nm離隔した領域においてTiに対するInの平均含量を制御する方法は特に限定する必要はない。
【0042】
具体的な例を挙げると、導電性ペーストに添加されるNiに対するInの量の調節及び焼成時の酸素分圧条件の調節を通じて、誘電体層111のうち内部電極121、122との界面から2nm離隔した領域においてTiに対するInの平均含量を制御することができる。インジウム(In)はニッケル(Ni)よりも酸化傾向が強い元素である。このようなInを内部電極の材料として添加した後に焼成すると、一部は酸化して誘電体層側に拡散してBaTiO3等のTiサイト(site)に置換され、他の一部は酸化されず、内部電極に残るNiと合金を形成することができる。また、内部電極から誘電体層側に拡散するInの一部は、誘電体層と内部電極との界面にトラップされて界面及び界面に隣接した領域においてIn含量が高い領域が形成されることができる。
【0043】
一実施形態において、誘電体層111はSnを含むことができる。また、誘電体層111は、内部電極121、122との界面IFから2nm離隔した領域におけるTiに対するSnの平均含量が0.02at%以上0.42at%以下であってもよい。Snは融点が低く、Inが界面IFに容易に拡散するようにする役割を果たすことができ、Inが界面IFに容易にトラップされることができるようにする役割を果たすことができるため、静電容量及び高温負荷寿命をより容易に向上させる役割を果たすことができる。但し、誘電体層111は、内部電極121、122との界面IFから2nm離隔した領域においてTiに対するSnの平均含量が0.02at%未満である場合には、上述した効果が不十分である可能性があり、0.42at%を超える場合には、むしろInの拡散が過度となり、界面にトラップされるIn含量が減少するおそれがある。
【0044】
一実施形態において、誘電体層111はDyを含むことができる。Dyは、高温負荷寿命及び誘電率を向上させる役割を果たすことができる。また、誘電体層111は、内部電極121、122との界面IFから2nm離隔した領域におけるTiに対するDyの平均含量が3at%以上7at%以下であってもよい。これにより、高温負荷寿命をより容易に向上させることができ、誘電率を向上させることができる。
【0045】
一実施形態において、誘電体層111は、Ba(Ti1-zInz)O3(0<z<1)を含むことができる。+3価のInは、誘電体層の主成分であるBaTiO3のTiサイトに置換されることができ、Tiサイトに置換される場合、アクセプタ(acceptor)として作用して積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。但し、誘電体層111の主成分は、BaTiO3、(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)及びBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)のうち一つ以上であり、Inが誘電体層111に拡散し、上記主成分のうち一部のTiサイトに置換されるものであって、Ba(Ti1-zInz)O3(0<z<1)を主成分として含まなくてもよい。
【0046】
一方、誘電体層111は、上述した元素の他に様々な元素をさらに含むことができ、例えば、誘電体層111は、Ca、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Mg、Si、希土類元素(RE、Rare earth Element)のうち一つ以上をさらに含むことができる。
【0047】
本発明によれば、複数の誘電体層111の厚さが薄い場合でも、信頼性が低下することを防止することができ、誘電体層の厚さが厚い場合には信頼性をより向上させることができるため、誘電体層111の平均厚さtdは特に限定する必要がなく、誘電体層111の平均厚さtdは、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。具体的な例を挙げると、誘電体層111の平均厚さtdは、300nm以上10μm以下であってもよい。また、複数の誘電体層111のうち少なくとも一つ以上の平均厚さtdは300nm以上10μm以下であってもよい。
【0048】
ここで、誘電体層111の平均厚さtdは、内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の第1方向の平均サイズを意味することができる。誘電体層111の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの誘電体層111の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は、後述する容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0049】
本体110は本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの第1方向の上部及び下部に形成されたカバー部112、113とを含むことができる。
【0050】
また、上記容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成することができる。
【0051】
カバー部112、113は、上記容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112、及び上記容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0052】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0053】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。
【0054】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0055】
一方、カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。例えば、カバー部112、113の厚さtcは10μm~300μmであってもよい。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは15μm以下であってもよい。
【0056】
カバー部112、113の平均厚さtcは第1方向のサイズを意味することができ、容量形成部Acの上部又は下部において等間隔の5個の地点で測定したカバー部112、113の第1方向のサイズを平均した値であることができる。
【0057】
また、上記容量形成部Acの側面にはマージン部114、115が配置されてもよい。
【0058】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1マージン部114と、第6面6に配置された第2マージン部115とを含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両端面(end surfaces)に配置されることができる。
【0059】
マージン部114、115は、
図3に示すように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面(cross-section)において第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0060】
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0061】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであってもよい。
【0062】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0063】
一方、マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。例えば、マージン部114、115の幅は5μm~300μmであってもよい。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、マージン部114、115の平均幅は15μm以下であってもよい。
【0064】
マージン部114、115の平均幅は、内部電極が第5面と離隔した領域の第3方向の平均サイズ、及び内部電極が第6面と離隔した領域の第3方向の平均サイズを意味することができ、容量形成部Acの側面において等間隔の5個の地点で測定したマージン部114、115の第3方向のサイズを平均した値であることができる。
【0065】
したがって、一実施形態において、内部電極121、122が第5及び第6面と離隔した領域の第3方向の平均サイズはそれぞれ15μm以下であってもよい。
【0066】
内部電極121、122は、第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0067】
第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体の第4面4には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0068】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結される。したがって、第1内部電極121は第4面4において一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3において一定距離離隔して形成されることができる。また、第1及び第2内部電極121、122は、本体110の第5及び第6面と離隔して配置されてもよい。
【0069】
一実施形態において、内部電極121、122はNi及びInを含むことができる。このとき、内部電極121、122は、誘電体層111との界面IFから2nm離隔した領域X1、X2、X3、X4、X5におけるNiに対するInの平均含量が0.45at%以上1.39atであってもよい。このように界面に隣接した領域にIn含量が高い領域を配置することで、誘電体層と内部電極との界面接合力を向上させることができ、内部電極から誘電体層への、又は誘電体層から内部電極への電子移動を妨げる一種の半導体障壁として作用し、静電容量及び高温負荷寿命の両方を向上させることができる。
【0070】
ここで、Niに対するInの含量は原子比率を意味し、[(Inの原子個数)/(Niの原子個数)]×100で計算することができ、単位はat%である。なお、Niに対するInの平均含量とは、内部電極121、122において、誘電体層111との界面から2nm離隔した領域のうち、最小5つの領域で測定したNiに対するInの含量を平均した値であることができる。以下、内部電極121、122のうち、誘電体層111との界面から2nm離隔した領域におけるNiに対するInの平均含量を「X」とする。
【0071】
Xが0.45at%未満の場合には、Xが0at%の場合に比べて静電容量は向上できるものの、高温負荷寿命が低下するおそれがある。したがって、Xは0.45at%以上であることが好ましく、静電容量及び高温負荷寿命をより向上させるために、Xは0.67at%以上であることがより好ましい。
【0072】
一方、Xが1.39at%超過の場合には、静電容量が低下するおそれがある。したがって、Xは1.39at%以下であることが好ましく、静電容量をより向上させるために、Yは1.14at%以下であることがより好ましい。
【0073】
したがって、Xは0.45at%以上1.39at%以下であってもよく、より好ましくは0.67at%以上1.14at%以下であってもよい。
【0074】
Xを測定する方法に対する一例として、
図6を参照すると、積層型電子部品を第2方向の中央までポリシングして第1及び第3方向の断面を露出させた後、内部電極121、122のうち誘電体層111との界面IFから2nm離隔した5つの領域X1、X2、X3、X4、X5を選定し、5つの領域X1、X2、X3、X4、X5のそれぞれにおいてSTEM-EDSによるIn及びNiに対する定量分析を行ってNiに対するInの含量を求めた後、それらの値の平均値を求めることで測定することができる。また、互いに異なる4つの内部電極を選定して各内部電極ごとに5つの領域を測定し、合計20個の測定値の平均値を求めることによって、より一般化することができる。
【0075】
また、誘電体層111と内部電極121、122間の界面IFはSTEM(走査透過型電子顕微鏡)により界面の両側に現れる線、すなわち、フレネルフリンジ(Fresnel fringes)を観察し、フォーカスを変化させたときにフレネルフリンジのコントラストが両側においてほぼ対称に変化する地点を界面とした。
【0076】
一実施形態において、内部電極121、122はNi及びInを含み、内部電極121、122に含まれたInのうち少なくとも一部はNiと合金の形態で存在することができる。これにより、Niの結晶粒界(grain boundary)エネルギー及び表面張力を減少させて内部電極の連結性を向上させ、内部電極の厚さ偏差を低減することができる。NiとInが合金の形態で存在するか否かは、XRD(X線回折法)による分析時にNiのピーク位置がシフトされたか否かによって確認することができる。具体的な例を挙げると、積層型電子部品の内部電極を粉砕して粉末状を得た後、上記粉末をXRD(X線回折法)により分析してNiのピーク位置がシフトされたか否かにより確認することができる。
【0077】
一方、内部電極121、122は、Ni、In及びNi-Inの以外に、他の金属を含むことができる。例えば、内部電極121、122は、Cu、Pd、Ag、Au、Pt、Sn、Al、Ti及びこれらの合金のうち一つ以上をさらに含むことができる。
【0078】
一実施形態において、内部電極と誘電体層間の界面IFから2nm以内の領域をRとするとき、上記Rに含まれたInの平均含量は、上記内部電極及び誘電体層のうち、上記Rを除く領域に含まれたInの平均含量より高くてもよい。また、Rに含まれたInの平均含量は、上記内部電極及び誘電体層のうち、上記Rを除く領域に含まれたInの平均含量より2倍以上であってもよい。
【0079】
図6を参照すると、Rは、誘電体層111のうち、内部電極との界面IFから2nm以内の領域であるR1、及び内部電極121、122のうち誘電体層との界面IFから2nm以内の領域であるR2を含む領域であり、Rに含まれたInの平均含量は、上記内部電極及び誘電体層のうち上記Rを除く領域に含まれたInの平均含量よりも高いことによって、誘電体層と内部電極との界面接合力をより向上させることができ、内部電極から誘電体層への、又は誘電体層から内部電極への電子移動を妨げる一種の半導体障壁として作用する効果をより向上させ、静電容量及び高温負荷寿命をより向上させることができる。このとき、R1に含まれたInの平均含量は、誘電体層のうちR1を除く領域に含まれたInの平均含量より高くてもよく、より好ましくは2倍以上であってもよい。また、R2に含まれたInの平均含量は、内部電極のうちR2を除く領域に含まれたInの平均含量より高くてもよく、より好ましくは2倍以上であってもよい。
【0080】
図7は、一実施形態による内部電極と誘電体層との界面をSTEM-EDSで分析したイメージであって、
図7(a)はSTEM-EDSでNi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、
図7(b)はSTEM-EDSでTi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、
図7(c)はSTEM-EDSでIn元素をマッピング(mapping)したイメージである。
図7(a)及び
図7(b)を参照すると、Ni含量とTi含量で誘電体層と内部電極を明確に区別できることが確認でき、
図7(c)を参照すると、誘電体層と内部電極間の界面にIn含量が高いことが確認できる。
【0081】
図6及び
図7(c)の誘電体層と内部電極間の界面に垂直な方向のラインであるL1に沿ってSTEM-EDSでラインプロファイル(line profile)を行うと、位置による元素含量の変化をより定量的に分析することができる。
図7(c)に表されたL1に沿ってSTEM-EDSでラインプロファイル(line profile)を行った結果である
図8を参照すると、誘電体層と内部電極間の界面に隣接した領域内において、In、Dy及びSnの含量のピーク値が検出されることが確認できる。
【0082】
また、Ni含量が50at%超過90at%以下の領域でIn含量のピーク値が検出されるが、これは、内部電極用導電性ペーストに含まれたInが誘電体層に拡散することによるものであり得る。したがって、一実施形態において、界面IFに隣接した領域を上記誘電体層と内部電極との界面に垂直な方向にSTEM-EDSを用いてラインプロファイル分析する際、Ni含量が50at%超過90at%以下の領域でIn含量のピーク値が検出されることができる。また、Sn含量のピーク値も50at%超過90at%以下の領域で検出されることができる。このとき、ラインプロファイル分析はSTEM-EDSを用いて行うことができる。
【0083】
これに対し、Ni含量が10at%以上50at%未満の領域でDy含量のピーク値が検出されるが、これは、セラミックグリーンシートに添加されたDyが内部電極に拡散することによるものであり得る。したがって、一実施形態において、界面IFに隣接した領域を上記誘電体層と内部電極との界面に垂直な方向にSTEM-EDSを用いてラインプロファイル分析する際、Ni含量が10at%以上50at%未満の領域でDy含量のピーク値が検出されることができる。このとき、ラインプロファイル分析はSTEM-EDSを用いて行うことができる。
【0084】
一方、内部電極121、122の中心部における元素含量は特に限定されないが、具体的な例を挙げると、内部電極121、122の中心部におけるNiに対するInの平均含量は0.05at%以上0.8at%以下であってもよい。また、内部電極121、122の中心部におけるNiに対するSnの平均含量は0.02at%以上0.42at%以下であってもよい。ここで、内部電極121、122の中心部とは、内部電極と誘電体層間の界面IFから20nm以上離隔した領域を意味することができる。
【0085】
また、誘電体層111の中心部における元素含量は特に限定されないが、具体的な例を挙げると、誘電体層111の中心部におけるTiに対するInの平均含量は0.15at%以上1.8at%以下であってもよい。なお、誘電体層111の中心部におけるTiに対するSnの平均含量は0.01at%以上0.2at%以下であってもよい。ここで、誘電体層111の中心部とは、内部電極と誘電体層間の界面IFから20nm以上離隔した領域を意味することができる。
【0086】
一実施形態において、内部電極121、122はセラミック粒子を含み、上記セラミック粒子はInを含むことができる。
【0087】
内部電極121、122に含まれたセラミック粒子は、誘電体層と内部電極間の焼結開始温度差を低減する役割を果たすことができ、内部電極用導電性ペーストに添加されたセラミック粒子が焼成後に内部電極内にトラップされたものであることができる。また、内部電極用導電性ペーストにInを添加することにより、内部電極121、122に含まれたセラミック粒子はInを含むことができる。
【0088】
このとき、Inは、内部電極と誘電体層間の界面IFと同様に、セラミック粒子と内部電極間の界面であるセラミック粒子の表面に主に分布することができる。したがって、セラミック粒子は、表面におけるIn含量が内部におけるIn含量より高く、セラミック粒子の表面におけるTiに対するInの平均含量は0.3at%以上であることができる。また、セラミック粒子の表面におけるTiに対するInの平均含量は0.3at%以上3.8at%以下であってもよい。
【0089】
図9は、本発明の一実施形態による内部電極と誘電体層との界面をSTEM-EDSで分析したイメージであって、
図9(a)はSTEM-EDSでNi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、
図9(b)はSTEM-EDSでTi元素をマッピング(mapping)したイメージであり、
図9(c)はSTEM-EDSでIn元素をマッピング(mapping)したイメージである。
図9(a)及び
図9(b)を参照すると、内部電極の内部にセラミック粒子がトラップされていることが確認できる。また、
図9(c)を参照すると、セラミック粒子の表面においてIn含量が高いことが確認でき、セラミック粒子の表面におけるIn含量が、内部電極と誘電体層間の界面IFにおけるIn含量と類似していることが確認できる。
【0090】
セラミック粒子の表面におけるTiに対するInの平均含量を測定する方法の一例として、積層型電子部品を第2方向の中央までポリシングして第1及び第3方向の断面を露出させた後、内部電極121、122内にトラップされたセラミック粒子のうち一つが内部電極となす境界のうち5個の点を選定した後、上記5個の点でSTEM-EDSによるTi及びInに対する定量分析を行ってTiに対するInの含量を求めた後、それらの値の平均値を求めることで測定することができる。また、トラップされたセラミック粒子のうち、互いに異なる4つのセラミック粒子を選定し、各セラミック粒子と内部電極とがなす境界ごとに5つの領域を測定し、合計20個の測定値の平均値を求めることで、より一般化することができる。
【0091】
一方、内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はなく、所望の特性や用途に応じて任意に設定することができる。具体的な例を挙げると、内部電極121、122の平均厚さteは300nm以上3μm以下であってもよい。また、複数の内部電極121、122のうち少なくとも一つの平均厚さteが300nm以上3μm以下であってもよい。
【0092】
内部電極121、122の厚さは、内部電極121、122の第1方向のサイズを意味することができる。内部電極の平均厚さteは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの内部電極121、122の多数の地点、例えば、第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0093】
一実施形態において、内部電極121、122の平均厚さをte、内部電極121、122の厚さの標準偏差をσteとするとき、σte/teは0.2以下であることができる。すなわち、内部電極の厚さの変動係数(CV、Coefficient of Variation)は0.2以下であることができ、これは、内部電極の厚さの均一性が20%以内であることを意味することができる。また、より好ましくはσte/teは0.18以下であってもよい。さらに、より好ましくは、内部電極121、122の厚さの標準偏差σteは±70nm以内であってもよい。
【0094】
σte/teが0.2以下の場合、内部電極121、122の厚さの均一性を確保することにより、内部電極121、122に応力が不均一に加わる現象及び電界集中を防止することができ、これにより信頼性を向上させることができる。
【0095】
上記内部電極の厚さの標準偏差σteは、内部電極121、122の平均厚さteを測定するための上記第2方向に等間隔である30個の地点で測定された各厚さにおいて、上記内部電極の平均厚さteを引いた後に二乗し、これらの値の平均値を計算することにより分散を求めた後、上記分散値の平方根を求めることで測定することができる。
【0096】
一実施形態において、内部電極121、122の連結性は85%以上であり得る。また、より好ましくは、内部電極121、122の連結性は90%以上であってもよい。
【0097】
図10は、内部電極の連結性の定義を説明するための図である。
図10を参照すると、内部電極IEは複数の導電部EPを含み、隣接した導電部EPの間に不連続部DPを含むことができる。内部電極IEの全長さをb、複数の導電部EPの長さをそれぞれe1、e2、e3、e4とするとき、内部電極IEの全長さbに対する複数の導電部EPの長さの合計(e=e1+e2+e3+e4)の比率を内部電極の連結性と定義することができる。
【0098】
内部電極の連結性は、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージで測定することができる。より具体的に、上記イメージにおいて10個の内部電極121、122についてそれぞれ内部電極の連結性を測定した後、その平均値を内部電極の連結性とすることができる。
【0099】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されてもよい。
【0100】
外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0101】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0102】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。
【0103】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。
【0104】
電極層131a、132aに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0105】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であってもよい。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。また、電極層131a、132aは、めっき層で形成されてもよく、スパッタリング工法、ALD(Atomic layer deposition)などの蒸着方式を用いて形成された層であってもよい。
【0106】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち一つ以上であってもよい。
【0107】
めっき層131b、132bは実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち一つ以上を含むめっき層であってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0108】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bはNiめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。また、めっき層131b、132bは、電極層131a、132a上にNiめっき層及びPdめっき層が順次に形成された形態であってもよい。
【0109】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。本発明によれば、小型化及び高容量化に有利であるため、サイズの小さいIT用製品のサイズにも適用することができ、多様な環境において高信頼性を確保することができるため、高信頼性が要求される自動車電装用製品のサイズにも適用することができる。
【0110】
以下、実験例を通じて本発明についてさらに詳細に説明するが、これは、発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実験例によって限定されるものではない。
【0111】
(実験例)
内部電極ペーストが塗布されたセラミックグリーンシートを積層して切断及び焼成を経て本体を形成した後、本体上に外部電極用ペーストを塗布し焼成してサンプルチップを作製した。
【0112】
このとき、試験番号ごとに内部電極用ペーストに含まれたNi粉末に対するIn含量を変化させながらサンプルチップを作製し、試験番号1は内部電極用ペーストにInを添加していない。
【0113】
また、セラミックグリーンシートは、チタン酸バリウム(BaTiO3)パウダーに有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加して作製し、セラミックグリーンシートにはInを添加していない。
【0114】
サンプルチップを第2方向の中央までポリシング(polishing)して第1及び第3方向の断面を露出させた後、
図4に示すように、幅及び厚さ方向の中央に位置した中央領域、上部カバー部に隣接した上部領域、下部カバー部に隣接した下部領域のそれぞれについて、FIBによるマイクロサンプリング加工法を用いて薄片化した試料を用意した。
【0115】
薄片化した試料は、その厚さが60nm以下となるように加工した。一方、FIB加工時に形成された試料表面のダメージ層は、Arイオンミリングにより除去した。
【0116】
上述のようにして作製した薄片化した試料から内部電極と誘電体層との界面付近の4つの領域を選定し、STEM(走査透過型電子顕微鏡)で観察した。このとき、上記4つの領域は、互いに異なる内部電極が含まれるように選定した。
【0117】
4つの領域それぞれについて、薄片化した試料の断面に対して略垂直になっている5箇所の界面を探した。一方、上記薄片化試料の断面に対して略垂直になっている界面は次のようにして探した。STEM(走査透過型電子顕微鏡)により界面の両側に現れる線、すなわち、フレネルフリンジ(Fresnel fringes)を観察して、フォーカスを変化させたときにフレネルフリンジのコントラストが両側においてほぼ対称に変化する界面を探し、これを薄片化試料の断面に対して略垂直になっている界面とした。
【0118】
また、STEM分析において、走査透過型電子顕微鏡としてARM-200F(JEOL製品)を用い、加速電圧は200kVとした。また、EDS装備としてはoxford EDSを用いた。
【0119】
上記4つの領域それぞれについて、誘電体層のうち上記5箇所の界面から2nm離隔した地点である5箇所Y1、Y2、Y3、Y4、Y5に対して、EDS(エネルギー分散型X線分析装置)を用いてTiとInの定量分析を行い、合計20個のTiに対するInの含量に関するデータを求めた後、その平均値を求め、誘電体層のうち内部電極との界面から2nm離隔した領域におけるTiに対するInの平均含量Yとした。電子線の測定プローブの直径は約1nmとし、測定時間は30秒とした。一方、得られたEDSスペクトルからの定量補正はCliff-Lorimer補正を用いた。
【0120】
また、上記4つの領域それぞれについて、内部電極のうち上記5箇所の界面から2nm離隔した地点である5箇所X1、X2、X3、X4、X5に対して、NiとInの定量分析を行い、合計20個のNiに対するInの含量に関するデータを求めた後、その平均値を求めて内部電極のうち誘電体層との界面から2nm離隔した領域におけるNiに対するInの平均含量Xとした。
【0121】
静電容量は、各試験番号当たり10個のサンプルチップについて測定し、自動ブリッジ式測定器を用いて、AC電圧1Vrms、1kHzの条件で静電容量を測定して各試験番号に対する平均値を求めた。試験番号1の静電容量を基準値「1」とし、試験番号2~9には試験番号1の静電容量に対する相対値を記載した。
【0122】
MTTF(平均故障時間)は各試験番号当たり10個のサンプルチップについて測定し、165℃、7.5Vの条件で高温負荷試験を行い、絶縁抵抗が10KΩ以下となった時間を故障時間と判定し、その平均値を求めた。試験番号1のMTTFを基準値「1」とし、試験番号2~9には試験番号1のMTTFに対する相対値を記載した。
【0123】
内部電極の連結性は、サンプルチップを第2方向の中央までポリシング(polishing)して第1及び第3方向の断面を露出させた後、
図4に示すように、幅及び厚さ方向の中央に位置した中央領域において10個の内部電極を選定して測定した平均値を記載した。また、内部電極の平均厚さte及び内部電極厚さの標準偏差σteは、上記中央領域において一つの内部電極を選定した後、上記内部電極の第2方向に等間隔である30個の地点でその厚さを 測定し、平均厚さte及び標準偏差σteを求めた。
【0124】
【0125】
上記表1を参照すると、誘電体層のうち、内部電極との界面から2nm離隔した領域におけるTiに対するInの平均含量Yが0.2at%以下又は3.9at%以上である試験番号2、3、9、10及び11は、静電容量及びMTTFのうち一つ以上が試験番号1に比べて劣ることが確認できる。
【0126】
一方、Yが0.3at%以上3.8at%以下を満たす試験番号4~8の場合、試験番号1に比べて静電容量及びMTTFが共に向上する顕著な効果があることが確認できる。また、試験番号4~8の場合、内部電極の連結性が85%であり、内部電極の厚さ偏差も小さく、内部電極の平滑性及び厚さの均一性に優れることが確認できる。したがって、Yが0.3at%以上3.8at%以下を満たすことが好ましいことが確認できる。
【0127】
また、Yが1.3at%以上3.3at%以下を満たす試験番号5~7の場合、試験番号1に比べて静電容量及びMTTFが共に向上するだけでなく、静電容量及びMTTFがそれぞれ15%以上著しく向上したことが確認できる。したがって、Yが1.3at%以上3.3at%以下を満たすことがより好ましいことが確認できる。
【0128】
上記表1を参照すると、内部電極のうち、誘電体層との界面から2nm離隔した領域におけるNiに対するInの平均含量Xが0.41at%以下又は1.4at%以上である試験番号2、3、9、10及び11は、静電容量及びMTTFのうち一つ以上が試験番号1に比べて劣ることが確認できる。
【0129】
一方、Xが0.45at%以上1.39at%以下を満たす試験番号4~8の場合、試験番号1に比べて静電容量及びMTTFが共に向上する顕著な効果があることが確認できる。また、試験番号4~8の場合、内部電極の連結性が85%であり、内部電極の厚さ偏差も小さく、内部電極の平滑性及び厚さの均一性に優れることが確認できる。したがって、Xが0.45at%以上1.39at%以下を満たすことが好ましいことが確認できる。
【0130】
また、Xが0.67at%以上1.14at%以下を満たす試験番号5~7の場合、試験番号1に比べて静電容量及びMTTFが共に向上するだけでなく、静電容量及びMTTFがそれぞれ15%以上著しく向上したことが確認できる。したがって、Xが0.67at%以上1.14at%以下を満たすことがより好ましいことが確認できる。
【0131】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定するものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者により様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0132】
また、本発明において使用された「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態に説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明と理解することができる。
【0133】
本発明において使用された用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0134】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:マージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
131a、132a:電極層
131b、132b:めっき層