(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068116
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】速度変更およびそれによる効率区間の変更が可能な電動機
(51)【国際特許分類】
H02P 25/18 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
H02P25/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023152641
(22)【出願日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】10-2022-0147124
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523359560
【氏名又は名称】ルーセント コリア カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ソン,サン ジュン
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505BB02
5H505CC04
5H505EE35
5H505HA06
5H505HB01
5H505LL22
5H505MM02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】最大効率が変更できる電動機を提供する。
【解決手段】固定子巻線の直列並列とスター-デルタ結線によってインピーダンス変更による回転速度を変更する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相制御電動機の巻線の直列、並列、スターおよびデルタ結線において、
スター結線時に巻線の1つの相は中性点にスイッチなしで常時短絡されており、2つのスター結線スイッチ(8a、8c)によって2つの相が短絡してスター結線されることを特徴とする電動機。
【請求項2】
6相制御電動機の巻線の直列、並列、スターおよびデルタ結線において、
直列結線時にはインバータ(1)の3相A、BおよびCにのみ電源が供給され、並列結線時には6相A、B、C、A’、B’およびC’に電源が供給され、スター結線時には1つの相は中性点にスイッチなしで短絡されており、2つのスター結線スイッチ(68a’、68c)によって2つの相が短絡してスター結線されることを特徴とする電動機。
【請求項3】
二重固定子電動機の巻線の直列、並列、スター、デルタ結線において,
スター結線時に巻線の1つの相は中性点にスイッチなしで常時短絡されており、2つのスター結線スイッチ(8a、8c)によって2つの相が短絡してスター結線されることを特徴とする電動機。
【請求項4】
3相制御電動機の巻線の直列、並列、スターおよびデルタ結線において、
スター結線時に第1の固定子巻線(13a)と第2の固定子巻線(13a’)の各終端1つの相はスイッチなしで各中性点に常時短絡されており、4つのスター結線スイッチ(18a、18a’、18c、18c’)によって各中性点に短絡してスター結線され、前記第1の固定子巻線(13a)と前記第2の固定子巻線(13a’)との中性点は分離され、順次時間差を持ってスイッチングされることを特徴とする電動機。
【請求項5】
6相制御電動機の巻線の直列、並列、スターおよびデルタ結線において、
直列スイッチ(25a、25b、25c)とインバータ(1)の3相A、BおよびC電源供給のみで直列に結線され、前記インバータ(1)の6相A、B、C、A’、B’およびC’電源供給によって電源と並列に結線され、スター結線時に第1の固定子巻線(23a)と第2の固定子巻線(23a’)の1つの相はスイッチなしで各中性点に常時短絡されており、4つのスター結線スイッチ(28a、28c、28a’、28c’)によって各中性点に順次短絡し、中性点分離およびスター結線されることを特徴とする電動機。
【請求項6】
6相制御電動機の巻線の直列、並列、スターおよびデルタ結線において、
電源スイッチ(30)と接地スイッチ(30’)によって並列に結線され、結合スイッチ(31)によって直列に結線されることを特徴とする電動機。
【請求項7】
請求項4または5に記載の電動機において、過渡電流によるコントローラの損傷防止およびシャットダウンを防止するためのスイッチの操作方法であって、上記方法は:
並列-スター結線時にスター結線スイッチ(18a、18c)とスター結線スイッチ(18a’、18c’)が段階的にON/OFFスイッチングされる段階;を含むスイッチの操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動機は、特定の速度で最大効率を有することになる。製作された電動機は速度に応じて最大効率区間の変更が要求される。これは、電動機の固有の特性として設計時に決定される。しかし、たとえば、電気自動車の場合は、停止から最大速度区間まで運転することになり、これは効率の低い部分で運転するしかなく、効率を低下させている。また、電動機の高速回転のためには、逆起電力より高めに印加電圧を高くしなければならない状況である。印加電圧を高くすると感電などの危険があり、別途の電圧昇圧装置が必要である。したがって、コストが増加し、電圧昇圧装置の効率が100%ではないため、全体的な効率を低下させることになる。また、逆起電力を減らすために弱界磁制御方式も使用するが、これは効率をさらに低減させている実情である。
【0003】
したがって、現在の製作された電動機の速度に応じて最大効率区間の変更が要求されている実情である。たとえば、電気自動車の場合は、1つの電動機と減速機で構成されている。電気自動車の低速から高速までの運行は1つの電動機特性に基づくものであり、最大効率は電気自動車の特定速度でのみ出てくるものである。最大効率以外の速度で運行すると効率は低下し、限られたバッテリーを搭載する電気自動車は走行距離が減少せざるを得ない問題がある。
【0004】
また、多方面で電動機が応用される分野でも、電動機の運転時の回転速度の変化が大きい場合、電力効率を低下させることになる。自動車や風力発電に発電機を利用すると速度が変わることになり、発電機の最大効率区間で運転できなくなる理由となる。また、発電された電圧を一定に定電圧にしてバッテリーに蓄え、このとき、スイッチングによる電圧調整回路を使用するのに発電機の特性上、PWMのスイッチOFF時に電力を遮断するが、発電機の回転は継続し、このときの電力は使用できなくなり、効率を低下させることになる。
【0005】
したがって、低速、中速および高速などの回転速度に応じて最大効率に到達するために電気的な別途のシステムが必要とされる。電動機に機械的な変速機を搭載し、速度に応じて変速することで最大効率区間で運転することもできるが、これはコスト増加と故障問題、体積および重量問題が発生する。
【0006】
特許文献として、韓国登録特許第10-0598445号公報は、スロット固定子に巻かれる既存の主巻線とは別にスロット固定子の各歯部の余裕空間に主巻線と並列に連結される補助巻線を追加的に設置し、起動区間では主巻線と補助巻線の両方を利用し、速度の定常状態の区間では主巻線のみを利用して高速駆動が行われるように構成した並列巻線方式のブラシレス直流電動機を開示している。
【0007】
また、韓国登録特許第10-0132904号公報には、広範囲の回転領域で一定の出力が生じ得る誘導電動機の駆動制御方法であり、Y結線された誘導電動機の巻線を所定比率の巻線数に2分割し、2つの分断巻線を利用して低速時には切替スイッチのみを稼動し、分断巻線に電流を流し、高速時には他の切替スイッチのみ稼動し、他の分断巻線にのみ電流を流す内容を開示している。
【0008】
また、特開2016-086587号公報には、電動機において、直列、並列、スターおよびデルタ結線変更して速度を変更する際に予備負荷を備え、変速衝撃による過電流を防止している。
【0009】
しかし、予備負荷による変速衝撃の防止が不備で瞬間的な過渡電流が流れ、不要な電流を無駄にすることになる。予備負荷Z1、Z2およびZ3は、R、LおよびCの組み合わせでスター-デルタ結線切替時にスイッチングされ、このような瞬間的な大きな過渡電流を防止する目的で使用される。したがって、予備負荷は、スイッチ切替時に電流が流れ続け、これは電動機の回転にまったく使用できない無駄な電流であり、単に過渡電流を緩和させる目的のみに使用されるため、電動機の全体的な効率を低下させ、コストが増加する問題がある。また、巻線の負荷と並列に結線され、実際に巻線の電流よりも大きな過渡電流が発生し、過渡電流の抑制効果が不十分であると見られる。
【0010】
本発明では、このような問題を解決するために、予備負荷Z1、Z2およびZ3を除去し、ダブルのスター結線スイッチとデルタ結線スイッチ、スイッチ操作方法で解決している。このような発明により、スターおよびデルタ1対のスイッチが相互順次に1つずつ時間差を持ってON/OFFされ、過渡電流を抑制するようになり、すべての電流は電動機の回転に使用されることにより電源の無駄がなく効率が増大し、コストが削減される効果をもたらす。たとえば、瞬間的な過渡電流を抑制するためにスイッチ切替時間が増える場合は、特開2016-086587号では、予備負荷Z1、Z2およびZ3で電源が無駄になるが、本発明では、スター結線スイッチとデルタ結線スイッチの1対のうち1つが作動して巻線に電流が流れ、電動機を回転させる電源として利用することにより電源の無駄がないのである。また、現実的にスイッチ素子のコスト面においても、高電流スイッチ1つのコストよりも低電流スイッチ2つのコストがより安価な実情で、別途の予備負荷が不要のため、それだけコスト削減と効率増大の効果がある。
【0011】
また、本発明では、スター結線時に巻線の中性点が分離される。ダブル固定子電動機の運転や電動機の並列運転時の効率改善および不調和を防止するために、中性点分離は必ず必要な基本常識で、本発明では、中性点の電位差による不要な電流を防止し、各巻線の回転磁界の不均衡を防止して効率が向上する効果がある。
【0012】
したがって、結論として、本発明は、予備負荷Z1、Z2およびZ3の電流がなく、各巻線の中性点電位差電流がないため、不要な電源の無駄を減らし、効率が増大し、コストが削減され、過渡電流のないより進歩した技術である。また、本発明では、1対のスター-デルタスイッチのうち1つが破損しても運転が可能であるという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国登録特許第10-0598445号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10-0132904号公報
【特許文献3】特開2016-086587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は、電動機において、機械的な作動構造なしに電気的なスイッチ操作のみで速度変更および最大効率区間での運転を通じて効率を高めることのできる方法および構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、3相制御電動機の巻線が直列、並列、スターおよびデルタ結線され、速度変更および効率区間を変更するにあたり、スター結線時にはデルタ結線スイッチ7a、7bおよび7cは開放され、巻線の1つの相は中性点にスイッチなしで常時短絡されており、2つのスター結線スイッチ8aおよび8cによって2つの相が短絡してスター結線され、デルタ結線時には2つのスター結線スイッチ8aおよび8cは解放され、デルタ結線スイッチ7a、7bおよび7cを短絡してデルタ結線できることを特徴とする電動機を提供する。
【0016】
また、6相制御電動機において、3つの並列スイッチ66a’、66b’および66c’と3つの直列スイッチ65a、65aおよび65aにより巻線が直並列に結線され、直列結線時にはインバータ1の3相にのみ電源が供給され、並列結線時には6相に電源が供給され、スター結線時には1つの相は中性点にスイッチなしで短絡されており、2つのスター結線スイッチ68a’および68cによって2つの相が短絡してスター結線され、デルタ結線時にはスター結線スイッチ68a’および68cは開放され、3つのデルタ結線スイッチ67a’、67b’および67c’を短絡してデルタ結線できることを特徴とする速度変更および効率区間が変更できる電動機とその制御方法を提供する。
【0017】
さらに、ダブル固定子電動機の直列、並列、スターおよびデルタ結線して速度変更および効率区間を変更するにあたり、スター結線時にはデルタ結線スイッチ7a、7bおよび7cは開放され、巻線の1つの相は中性点にスイッチなしで常時短絡されており、2つのスター結線スイッチ8aおよび8cによって2つの相が短絡してスター結線され、デルタ結線時には2つのスター結線スイッチ8aおよび8cは開放され、デルタ結線スイッチ7a、7bおよび7cを短絡してデルタ結線できることを特徴とする電動機を提供する。
【0018】
さらに、3相制御電動機において、3つの並列スイッチ16a、16bおよび16cと3つの直列スイッチ15a、15bおよび15cにより直並列に結線され、4つのスター結線スイッチ18a、18a’、18cおよび18c’と6つのデルタ結線スイッチ17a、17a’、17b、17b’、17cおよび17c’によりスター-デルタ結線され、第1の固定子巻線13aと第2の固定子巻線13a’の1つの相はスイッチなしで各中性点に常時短絡されており、4つのスター結線スイッチ18a、18a’、18cおよび18c’により各中性点に短絡してスター結線され、このとき、第1の固定子巻線13aと第2の固定子巻線13a’との中性点は分離され、6つのデルタ結線スイッチ17a、17a’、17b、17b’、17cおよび17c’によりデルタ結線され、順次時間差を持ってスイッチングされることにより予備負荷なしに過渡電流を防止することを特徴とする速度変更およびそれによる効率を高める電動機とその制御方法を提供する。
【0019】
さらに、6相制御電動機において、別途の並列スイッチがなく、3つの直列スイッチ25a、25bおよび25cとインバータ1の3相A、BおよびC電源供給のみで直列に結線され、並列結線時には直列スイッチ25a、25bおよび25cは開放され、インバータ1の6相A、B、C、A’、B’およびC’電源供給により電源と並列に結線され、4つのスター結線スイッチ28a、28a’、28cおよび28c’と6つのデルタ結線スイッチ27a、27a’、27b、27b’、27cおよび27c’によりスター-デルタ結線時に第1の固定子巻線23aと第2の固定子巻線23a’の1つの相はスイッチなしで各中性点に常時短絡されており、4つのスター結線スイチ28a、28c、28a’および28c’により各中性点に短絡してスター結線され、このとき、第1の固定子巻線23aと第2の固定子巻線23a’との中性点は分離され、6つのデルタ結線スイッチ27a、27b、27c、27a’、27b’および27c’の短絡によりデルタ結線され、スイッチング時に順次時間差を持ってスイッチングされることにより予備負荷なしに過渡電流を防止することを特徴とする速度変更およびそれによる効率を高める電動機とその制御方法を提供する。
【0020】
さらに、6相制御電動機において、巻線に別途の並列スイッチと直列スイッチがなく、6相インバータ1内に電源スイッチ30と接地スイッチ30’、結合スイッチ31により1対の3相が電源に並列連結されるか、相互直列結合され、スター結線スイッチ38a、38c、38a’および38c’とデルタ結線スイッチ37a、37b、37c、37a’、37b’および37c’の変換により巻線が相互スター-直列-スター結線、スター-並列-スター結線、デルタ-直列-デルタ結線およびデルタ-並列-デルタ結線できることを特徴とする速度変更およびそれによる効率を高める電動機とその制御方法を提供する。
【0021】
さらに、電動機において、過渡電流によるコントローラ損傷防止およびシャットダウンを防止するためのスイッチの操作方法であって、上記方法は:
スター-並列-スター結線時には結合スイッチ31は開放された状態でデルタ結線スイッチ37a、37b、37c、37a’、37b’および37c’を開放し、スター結線スイッチ38a、38c、38a’および38c’を短絡した後、一定の時間遅延後に電源スイッチ30および30’を短絡させる段階;およびデルタ-並列-デルタ結線時には結合スイッチ31は開放された状態でスター結線スイッチ38a、38c、38a’および38c’を開放し、デルタ結線スイッチ37a、37b、37c、37a’、37b’および37c’を短絡した後、一定の時間遅延後に電源スイッチ30および30’を短絡させる段階;からなるスイッチの操作方法を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、3相制御電動機の巻線の直列、並列、スターおよびデルタ結線において、スター結線時に巻線の1つの相は中性点にスイッチなしで常時短絡されており、2つのスター結線スイッチ8aおよび8cによって2つの相が短絡してスター結線されることを特徴とする電動機を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、6相制御電動機の巻線の直列、並列、スターおよびデルタ結線において、直列結線時にはインバータ1の3相A、BおよびCにのみ電源が供給され、並列結線時には6相A、B、C、A’、B’およびC’に電源が供給され、スター結線時には1つの相は中性点にスイッチなしで短絡されており、2つのスター結線スイッチ68a’および68cによって2つの相が短絡してスター結線されることを特徴とする電動機を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、3相制御電動機の巻線の直列、並列、スターおよびデルタ結線において、スター結線時に第1の固定子巻線13aと第2の固定子巻線13a’の各終端1つの相はスイッチなしで各中性点に常時短絡されており、4つのスター結線スイッチ18a、18a’、18cおよび18c’により各中性点に短絡してスター結線され、第1の固定子巻線13aと第2の固定子巻線13a’との中性点は分離され、順次時間差を持ってスイッチングされることを特徴とする電動機を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、6相制御電動機の巻線の直列、並列、スターおよびデルタ結線において、直列スイッチ25a、25bおよび25cとインバータ1の3相A、BおよびC電源供給のみで直列に結線され、インバータ1の6相A、B、C、A’、B’およびC’電源供給により電源と並列に結線され、スター結線時に第1の固定子巻線23aと第2の固定子巻線23a’の1つの相はスイッチなしで各中性点に常時短絡されており、4つのスター結線スイッチ28a、28c、28a’および28c’により各中性点に順次短絡し、中性点分離およびスター結線されることを特徴とする電動機を提供する。
【0026】
さらに、本発明は、6相制御電動機の巻線の直列、並列、スターおよびデルタ結線において、電源スイッチ30と接地スイッチ30’により並列に結線され、結合スイッチ31によって直列に結線されることを特徴とする電動機を提供する。
【0027】
さらに、本発明は、以上の電動機において、過渡電流によるコントローラ損傷防止およびシャットダウンを防止するためのスイッチの操作方法であって、上記方法は:並列-スター結線時にスター結線スイッチ18aおよび18cとスター結線スイッチ18a’および18c’が段階的にON/OFFスイッチングされる段階;を含むスイッチの操作方法を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、電動機の速度帯域幅を増やすことができ、低速から高速まで速度に応じて最大効率区間で運転することによって全体の運転効率を高めることができ、高速回転のために高電圧を必要としなくなり、安全性および効率が高くなるという効果を発揮する。また、制御スイッチの数を最小限に設計し、コスト削減、耐久性の増強および効率向上などの効果がある。
【0029】
発電機においても、最大効率区間で運転することにより、速度に応じて電気的に変速することで全体的な発電機の運転効率を高めることができるようになる。
【0030】
一般に、電気自動車の場合、回生制動時の発電機は駆動電動機とは別個に設けられるが、これは運転効率が低いためである。しかし、本発明により速度に応じて巻線を変更することで永久磁石回転子電動機を最適な発電機で駆動できるようになることにより、別途の発電機なしのスイッチ切替で駆動電動機を効率的な発電機として使用することができ、コスト削減、重量およびスペース節約の効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一実施形態による3相制御直並列およびスター-デルタ変換電子回路図である。
【
図2】本発明の一実施形態による6相制御直並列およびスター-デルタ変換電子回路図である。
【
図3】本発明の一実施形態による3相制御直並列および中性点が分離されたスター-デルタ変換電子回路図である。
【
図4】本発明の一実施形態による6相制御直並列および中性点が分離されたスター-デルタ変換電子回路図である。
【
図5】本発明の一実施形態による6相制御スター-デルタ変換電子回路図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるプログラムフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
電動機の速度変更およびそれによる最大効率区間の変更のために、巻線の直並列結線とスター-デルタ結線の組み合わせによる巻線のインピーダンス変換法がある。このような方法は、誘導電動機のみでなく、永久磁石式BLDC電動機などに幅広く利用することができる。
【0033】
先願の韓国特願第10-2021-0128038号公報の「速度変更およびそれによる効率区間の変更が可能な電動機または発電機」では、直列、並列、スターおよびデルタの組み合わせによる速度変更および効率変更について説明している。
【0034】
また、先願の韓国特願第10-2016-0031422号公報および韓国特願第10-2017-0147256号公報のダブル固定子電動機では、第1の固定子巻線1と第2の固定子巻線2により回転子3を駆動させる電動機構造でダブル固定子電動機を駆動する方法として第1の固定子巻線1と第2の固定子巻線2の各相の2つの巻線を直列、並列、スターおよびデルタ相互に組み合わせてインピーダンスを変更し、速度を変更する方法が開示されている。ダブル固定子電動機の種類は示していないが、ラジアルフラックスモータ(Radial flux motor)や軸方向フラックスモータ(Axial flux motor)とすべて同様である。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態による3相制御直並列およびスター-デルタ変換電子回路図である。
図1は、そのための基本的な電子回路図であり、第1の固定子巻線3aと第2の固定子巻線3a’とが、並列スイッチ6a、6a’、6b、6b’、6cおよび6c’と直列スイッチ5a、5bおよび5cによって直並列に結線することができ、スター結線スイッチ8aおよび8cとデルタ結線スイッチ7a、7bおよび7cによってスター-デルタ結線され、直列-スター結線、並列-スター結線、直列-デルタ結線および並列-デルタ結線の4種類の速度変更が可能であり、それによる最大効率区間を変更することができる。
【0036】
詳細な作動方法について図を参照して説明すると、まず直列-スター結線の場合、並列スイッチ6a、6a’、6b、6b’、6cおよび6c’は開放され、第2の固定子巻線3a’が電源と断線し、直列スイッチ5a、5bおよび5cは短絡し、第1の固定子巻線3aと第2の固定子巻線3a’とが直列に連結される。このとき、スター結線スイッチ8aおよび8cとデルタ結線スイッチ7a、7bおよび7cは開放されなければならず、その後、スター結線スイッチ8aおよび8cは中性点短絡してスター結線状態となる。上記では、A相について説明したが、B相やC相も同様に作動する。このようなスイッチ操作により、第1の固定子巻線と第2の固定子巻線は、直列-スター結線で作動することができる。
【0037】
ここで、従来に先願の直列、並列、スターおよびデルタ結線と異なる点は、従来のスター結線時に3つの双方向スイッチまたは6つの単方向スイッチの組み合わせによる3相を中性点に短絡結線した。しかしながら、本発明では、3相のうち1つの相は中性点に常時短絡されており、2つの双方向スイッチまたは4つの単方向スイッチによる操作のみでスター結線させることができるという特徴がある。これにより、スイッチの数が減り、構造が簡素化され、価格やメンテナンスの面で有利な点がある。
【0038】
次いで、直列-デルタ結線について説明すると、並列スイッチ6a、6a’、6b、6b’、6cおよび6c’は開放され、直列スイッチ5a、5bおよび5cは短絡して直列に結線され、スター結線スイッチ8aおよび8cとデルタ結線スイッチ7a、7bおよび7cは解放されるが、デルタ結線スイッチ7a、7bおよび7cは短絡し、A相はB相の電源に連結され、B相はC相の電源と連結され、C相はA相の電源に連結されてデルタ結線される。
【0039】
次いで、並列-スター結線について説明すると、並列スイッチ6a、6a’、6b、6b’、6cおよび6c’は短絡し、直列スイッチ5a、5bおよび5cは開放して巻線が並列に連結され、スター結線スイッチ8aおよび8cも短絡し、第1の固定子巻線3aと第2の固定子巻線3a’の各相が中性点で短絡結線して並列-スター結線となる。
【0040】
最後に、並列-デルタ結線は、直列スイッチ5a、5bおよび5cは開放され、並列スイッチ6a、6a’、6b、6b’、6cおよび6c’は短絡し、スター結線スイッチ8aおよび8cは解放され、デルタ結線スイッチ7a、7bおよび7cは短絡して並列-デルタ結線される。
【0041】
結果的に、従来のスイッチよりも少ない数の2つの双方向スイッチのみでスター結線させることができて、速度変更およびそれによる効率変更が可能な電動機が提供できることである。
【0042】
図2は、本発明の一実施形態による6相制御直並列およびスター-デルタ変換電子回路図である。
図2は、本発明の他の実施形態であり、6相のインバータによる巻線の直列、並列、スターおよびデルタ結線を提供し、
図1の3相インバータ制御と異なる点は、3つの並列スイッチと2つのスター結線スイッチのみで可能であるということである。したがって、このような制御回路により、従来の発明と比較し、並列スイッチとスター結線スイッチの数が少ないながらも同等の性能が発揮できるようになり、構造が簡素化され、コスト削減やメンテナンスの面で有利な効果がある。
【0043】
これによる実施形態を説明すると、一例として直列-スター結線時に並列スイッチ66a’、66b’および66c’は開放され、直列スイッチ65a、65bおよび65cは短絡して直列に結線され、デルタ結線スイッチ67a’、67b’および67c’は開放され、スター結線スイッチ68a’および68cは短絡してスター結線される。このとき、インバータ1内の電源A’、B’およびC’は遮断される。したがって、インバータ1の6相のうち3相のみを使用して直列-スター結線される。このとき、電源が印加されないインバータ1内の3相A’、B’およびC’のスイッチはすべて開放状態である。
【0044】
別の例として並列-デルタ結線について説明すると、並列スイッチ66a’、66b’および66c’は短絡し、直列スイッチ65a、65bおよび65cは開放して並列に結線され、デルタ結線スイッチ67a’、67b’および67c’は短絡し、スター結線スイッチ68a’および68c’は開放してデルタ結線される。したがって、各巻線の終端がA相はB相の電源に連結され、B相はC相の電源に連結され、C相はA相の電源に連結される。
【0045】
このとき、インバータ1内の6相電源はすべて稼動し、電源を並列に供給することになる。インバータ1内の電源制御は、別途のスイッチなしにプログラムによって容易にON/OFFできるため、これを利用することで並列スイッチを減らすことができ、電源を並列に供給することで電線の抵抗による損失が低減できる効果がある。
【0046】
その他の直列-デルタおよび並列-スター結線については、上記組み合わせと同様であるため、説明を省略する。
【0047】
図3は、本発明の一実施形態による3相制御直並列および中性点が分離されたスター-デルタ変換電子回路図である。
図3は、
図1を改善した制御回路であり、並列-スター-デルタ結線時に中性点を分離し、1対のスイッチング時間差による過渡電流の抑制効果がある。
図1では6つの並列スイッチで並列回路を構成したとすれば、
図3では3つの並列スイッチで並列回路を構成することができ、スター結線時に第1の固定子巻線と第2の固定子巻線の中性点が分離されて効率が高くなり、第1の固定子巻線と第2の固定子巻線に電源を順次印加することができるため、過渡電流の抑制効果に優れる。したがって、別途に予備負荷を設けず、過渡電流を抑制することができるのである。また、本発明では、スター結線時に従来の双方向6つのスイッチを4つに減らした。
【0048】
先願の韓国特願第10-2021-0128038号公報の「速度変更およびそれによる効率区間の変更が可能な電動機または発電機」の
図5では、スター結線時に合計6つの双方向スイッチを使用する。しかしながら、本発明では、3相のうち1つの相はスイッチなしで常時中性点に短絡されており、2つの相のみをスイッチングすることでスター結線できるように改善された。したがって、スイッチの数を減らしても同様の効果を得ることができ、コスト削減などの効果をもたらす。
【0049】
これによる実施形態としては、並列-スター結線時に直列スイッチ15a、15bおよび15cが開放され、並列スイッチ16a、16bおよび16cが短絡し、第1の固定子巻線13aと第2の固定子巻線13a’とが並列に結線され、スター結線スイッチ18a、18c、18a’および18c’は短絡し、デルタ結線スイッチ17a、17b、17c、17a’、17b’および17c’は解放され、各相の巻線の終端が中性点に短絡してスター結線される。このとき、第1の固定子巻線13aと第2の固定子巻線13a’の3相のうち1つの相はスイッチなしで中性点に常時短絡されており、中性点は相互分離されている。したがって、従来の発明は6つのスター結線スイッチが必要であったが、本発明では4つのスイッチのみが必要であり、性能は同様である。また、第1の固定子巻線13aと第2の固定子巻線13a’の中性点を相互分離することで中性点電位差による電流の流れを防止するために独立して動作させたのである。これは、各相の3相バランスが取れるように巻線することは現実的に不可能であり、それにより微小な電位差が生じて電流が流れることになるが、これは効率を低下させ、不調和の問題であるため、これを補完する必要がある。スイッチング時においても、第1の固定子巻線13aと第2の固定子巻線13a’の電源印加時間に遅延を持って順次電源を供給することで過渡電流を抑制することができる。
【0050】
並列-デルタ結線においても、第1の固定子巻線13aと第2の固定子巻線13a’のデルタ結線スイッチ17a、17b、17c、17a’、17b’および17c’が時間差を持ってスイッチングされ、過渡電流を抑制する。
【0051】
直列-スターまたは直列-デルタ結線は、直列スイッチ15a、15bおよび15cが短絡し、並列スイッチ16a、16bおよび16cが開放され、第2の固定子巻線13a’終端のスター結線スイッチ18a’および18c’が短絡するか、デルタ結線スイッチ17a’、17b’および17c’が短絡して結線される。
【0052】
図4は、本発明の一実施形態による6相制御直並列および中性点が分離されたスター-デルタ変換電子回路図である。
図4は、
図2を改善した電子制御回路図であり、6相制御によって並列スイッチがまったくないが、並列に運転できるようになり、並列-スター-デルタ結線時に中性点を分離させ、1対のスイッチング時間差による過渡電流の抑制効果がある。
【0053】
たとえば、各巻線の直列結線時に直列スイッチ25a、25bおよび25cは短絡し、インバータ1内の電源6相のうち3相A、BおよびCにのみ電源が印加され、A’、B’およびC’には電源が印加されない。したがって、各巻線は3相による直列結線となる。逆に並列結線時には6相の電源A、B、C、A’、B’およびC’に電源がすべて印加され、直列スイッチ25a、25bおよび25cは開放され、並列に電源を供給する。これにより、並列スイッチがまったくないが、全体的な電源の供給は並列結線と同じである。
【0054】
また、スター-デルタ変換結線時にはスター結線スイッチ28a、28c、28a’および28c’とデルタ結線スイッチ27a、27b、27c、27a’、27b’および27c’の操作によって行われるが、
図3と同様に4つのスター結線スイッチに変換させることができる。ただし、デルタ結線時は6相であるため、第1の固定子巻線23aと第2の固定子巻線23a’が各々3相ずつデルタ結線される部分が異なると言える。
【0055】
たとえば、直列-スター結線時はインバータ1内の電源A、BおよびCにのみ電源が供給され、A’、B’およびC’には電源が供給されず、スイッチがすべて開放状態である。また、直列スイッチ25a、25bおよび25cは短絡状態であり、スター結線スイッチ28a’および28c’も短絡状態であり、デルタ結線スイッチ27a、27b、27c、27a’、27b’および27c’は開放状態である。したがって、第1の固定子巻線23aと第2の固定子巻線23a’は直列-スター結線状態で作動することになる。
【0056】
スター結線は、終端が各々1相ずつ短絡されており、合計4つのスイッチのみが必要であり、中性点が分離され、コストと効率の面で従来技術よりも改善されている。
【0057】
並列-デルタ結線時にはインバータ1の電源6相A、B、C、A’、B’およびC’にすべて電源が供給され、直列スイッチ25a、25bおよび25cとスター結線スイッチ28a、28c、28a’および28c’は開放され、デルタ結線スイッチ27a、27b、27c、27a’、27b’および27c’は短絡し、各巻線の終端がA相はB相に、B相はC相に、C相はA相に、A’相はB’相に、B’相はC’相に、C’相はA’相に短絡して並列-デルタ結線される。
【0058】
これにより、別途の並列スイッチなしでインバータ1の6相制御と直列スイッチ25a、25bおよび25cのみで直並列に変換ができ、4つのスイッチのみで中性点が分離されたスター結線ができ、スイッチングを段階的に行うことができるため、過渡電流の抑制、コスト削減、耐久性の向上および効率増大などの効果をもたらす進歩した技術である。
【0059】
その他の結線も上記組み合わせで可能であるため、説明を省略する。
【0060】
図5は、本発明の一実施形態による6相制御スター-デルタ変換電子回路図である。
図5は、巻線に直列スイッチと並列スイッチがなく、インバータ1内の電源スイッチ30と接地スイッチ30’、結合スイッチ31によりスター-直列-スター結線、スター-並列-スター結線、デルタ-直列-デルタ結線およびデルタ-並列-デルタ結線することができる。言い換えれば、本発明は、直列スイッチと並列スイッチがなくとも、このような効果を得ることができる。
【0061】
作動原理を説明すると、第1の固定子巻線33a、33bおよび33cと第2の固定子巻線33a’、33b’および33c’はインバータ1の6相のうち3相に各々独立して構成されており、各々独立してスター-デルタ結線され、これを再びインバータ内の電源スイッチ30と接地スイッチ30’、結合スイッチ31により電源と並列接続または3相ずつ直列に結合される。したがって、従来技術と比較し、直列および並列スイッチがなくなり、回路が簡素化され、これはコスト削減、耐久性の向上、および効率増大効果をもたらす進歩した技術であると言える。
【0062】
それに伴う具体的な例を挙げて説明すると、まずスター-直列-スター結線の場合、スター結線スイッチ38a、38c、38a’および38c’は各中性点に短絡し、デルタ結線スイッチ37a、37b、37c、37a’、37b’および37c’は開放される。インバータ1内の電源スイッチ30と接地スイッチ30’は開放され、結合スイッチ31は短絡し、各3相が電源と直列に連結される。全体的に、回路はスター-直列-スター方式で結線され、電源を供給するようになり、これは直列-スター結線と同様のインピーダンスを有し、回転速度もまた同様に出る。
【0063】
別の例として、デルタ-並列-デルタ結線を説明すると、各巻線のスター結線スイッチ38a、38c、38a’および38c’は開放され、デルタ結線スイッチ37a、37b、37c、37a’、37b’および37c’は短絡してデルタ結線を形成し、電源スイッチ30と接地スイッチ30’は短絡して電源が並列に供給され、結合スイッチ31は開放される。したがって、全体的に、回路はデルタ-並列-デルタ回路が構成され、これは並列-デルタ回路と同様のインピーダンスおよび回転速度を有することになる。本発明は、別途の直列スイッチや並列スイッチなしで回路を直並列に構成する効果を有することになり、コスト削減や効率増大などの効果が自明な進歩した技術であると言える。従来は、直列並列に変換する双方向スイッチが9つ程度必要であったが、本発明では、そのようなスイッチがまったく必要なく、ただしインバータ1内に必要な片方向スイッチは3つのみである。
【0064】
その他の結線方式は、上記組み合わせでスイッチングのみが変わるため省略し、インバータ1の各3相A、BとC、およびA’、B’とC’の電源側に並列にコンデンサを設けることもできる。
【0065】
図5に示す構造の結線方式は、回転子が永久磁石式電動機の並列運転において、回転速度が互いに異なる場合、従来は、直列に結線できないという問題があったが、本発明では、互いに異なるセンサ信号による独立的な位相制御により直列に結線できるようになる効果がある。たとえば、電気自動車で左右の車輪をデュアルモータで駆動する場合、自動車がコーナーを回転すると、左右の車輪モータは異なる速度で回転せざるを得ない。2つの電動機を直列に結線すると、従来は、速度差により破損して運転が不可能であった。しかしながら、
図5に示す電子回路では、2つの電動機には独立したセンサ信号によって独立的な3相電源が供給されるため、直列結線効果で運転できるようになる。
【0066】
図6は、本発明の実施形態によるプログラムフローチャートである。これにより、マイクロプロセッサにより直列-並列、スター-デルタ結線を速度に応じて適切に結線させることができるため、速度変更およびそれによる最大効率範囲での運転が可能になる。
【0067】
上記のような結線方式を単一固定子では、各相の巻線数が偶数倍であるか、固定子が2つであるダブル固定子方式の電動機として説明したが、これを発電機に応用して発電機の回転速度に応じて結線を変えることで発電機の最大効率付近での運転が可能となる。発電機として作動させる場合、速度に応じて直並列およびスター-デルタ結線が電動機と同様であり、充電スイッチ10の操作により蓄電池が充電される。
【0068】
また、単一固定子電動機の巻線において、各相のスロットまたはティースが偶数倍の場合、これを半分に分け、第1の固定子巻線と第2の固定子巻線で直列、並列、スターおよびデルタ結線させることができ、ティースが奇数倍であっても各相の巻線を偶数倍で複数の撚り線に巻線し、これを半分に分けて使用することも可能である。