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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068118
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】肉豚の背脂肪厚を改善する配合飼料
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/30 20160101AFI20240510BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20240510BHJP
   A23K 20/142 20160101ALI20240510BHJP
【FI】
A23K50/30
A23K10/30
A23K20/142
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023167528
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2022176854
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515320499
【氏名又は名称】フィード・ワン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 和弘
(72)【発明者】
【氏名】森合 修也
(72)【発明者】
【氏名】河原 佑伍
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 祐治
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005EA11
2B150AA03
2B150AB02
2B150AB05
2B150CA26
2B150CE02
2B150CE05
2B150CE09
2B150CE12
2B150CJ07
2B150CJ08
2B150DA48
(57)【要約】      (修正有)
【課題】肥育豚の高い増体成績を維持したまま、商品価値の高い背脂肪厚まで向上させることができる配合飼料を提供する。
【解決手段】全飼料中に、粗たん白質含量を11.5重量%以下、粗脂肪含量を3.0重量%以下、可消化養分総量を79.0重量%以上、正味エネルギーを飼料1kgあたり2,650kcal以上及びリジンを0.60~0.90重量%の範囲で含有する肉豚肥育用配合飼料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全飼料中に、粗たん白質含量を11.5重量%以下、粗脂肪含量を3.0重量%以下、可消化養分総量を79.0重量%以上、正味エネルギーを飼料1kgあたり2,650kcal以上及びリジンを0.60~0.90重量%の範囲で含有する背脂肪厚が1.2cm以下の薄脂の豚を対象とした肉豚肥育用配合飼料。
【請求項2】
全飼料中の穀類の合計割合が80重量%以上となる請求項1記載の肉豚肥育用配合飼料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉豚の背脂肪厚を改善する肉豚肥育用配合飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
日本国内の養豚場には、海外より遺伝改良の進んだ種豚(以下、多産系母豚)の導入が進んできている。多産系母豚では従来国内で飼育されていた種豚に比べ、1回の分娩により出産される子豚の数が著しく増加しているだけでなく、それら子豚自身の増体速度も顕著に向上している。一方で、多産系母豚の子豚は従来の国産豚に比べて出荷時における背脂肪厚が明らかに薄く、日本食肉格付協会による枝肉の格付け段階において「薄脂」の判定を受け等級が下がってしまい、枝肉価格が下落してしまう豚の割合が多いことが大きな問題となっている。配合飼料によって多産系母豚の子豚が高い増体成績を維持したまま背脂肪厚を改善することができれば、養豚業者の生産性の向上に大きく貢献することとなる。
【0003】
特許文献1には飽和脂肪酸組成がC14~16:0を有するグリセライドを50重量%以上含有する豚用飼料添加剤が記載されている。添加剤を0.5重量%配合飼料へ添加することで、増体量と飼料要求率を改善し、背脂肪厚を高めるとされている。しかしこの発明は、対象豚の背脂肪厚が平均2.5cm以上の厚脂の子豚であり、背脂肪厚が1.2cm以下の薄脂の子豚ではない。
【0004】
非特許文献1では、市販飼料へ米と規格外大豆の配合することで背脂肪厚が高まったとする結果を得ているが、市販飼料のみを給与した対照区と比較して背脂肪厚が高まった試験区3では増体成績の悪化が認められており、筆者も背脂肪厚には差が無かった試験区2の割合までなら増体や肉質に影響無く米や規格外大豆を使用できる、という記述に留めている。非特許文献2では飼料へパーム油を最大7重量%添加して飼料中のエネルギー含量(可消化養分総量)を対照区から約10重量%高めているが、結果として増体成績は改善したものの、背脂肪厚の増加は認められていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-6584号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】肥育豚への飼料用米と規格外大豆の給与が発育および肉質に及ぼす影響、星川ら、山形県農業研究報告 12号 P.45-52、2020。
【非特許文献2】飼料用米,大麦および製茶加工残さの混合給与におけるパーム油の添加が夏季の肥育後期豚の飼養成績と肉質成績に及ぼす影響、脇屋ら、日本養豚学会誌 51号P.207-212、2014。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題を解決し、肥育豚の高い増体成績を維持したまま、商品価値の高い背脂肪厚まで向上させることができる配合飼料を提供することを課題とする。
【0008】
上述したように、多産系母豚の子豚は、従来の国産豚に比べて出荷時における背脂肪厚が明らかに薄く、日本食肉格付協会による枝肉の格付け段階において「薄脂」の判定を受け等級が下がってしまい、枝肉価格が下落してしまう豚の割合が多いことが大きな問題となっている。加えて、非特許文献1のように、飼料によって背脂肪厚を高めようとすると増体成績の低下を伴うため、生産性の低下も課題である。さらに、多産系母豚の子豚は飼料による背脂肪厚への反応が鈍く、単純に飼料のエネルギーを高めるといった方法では薄脂の問題は解決しなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、肉豚肥育用配合飼料の粗脂肪含量を低く抑えたうえで穀類によってエネルギー含量を高めること、そのエネルギー含量の指標として正味エネルギーを用いること、加えて飼料の粗たん白質含量を低く抑えたうえで結晶アミノ酸によりアミノ酸含量は一定水準を維持することによって、多産系母豚の子豚でも増体成績は維持したまま背脂肪厚を厚くし薄脂による格付け等級の低下を軽減できることを見出し、本願発明を完成した。
【0010】
すなわち、飼料のエネルギー含量を高めるだけでなく、飼料の粗たん白質含量を低下させることで豚の飼料摂取量を向上し、豚の1日あたりのエネルギー摂取量を飛躍的に高めることが可能となった。その際に、飼料のエネルギー含量を従来の可消化養分総量ではなく正味エネルギーを使用することによって、より正確に飼料中のエネルギー含量や豚の1日あたりのエネルギー摂取量を評価しコントロールすることを可能にした。加えて、飼料の粗たん白質を低下させることは飼料中の正味エネルギー増加に貢献するだけでなく、飼料摂取量の増加にも効果があることを発見した。
粗たん白質の低下は豚の増体成績も低下させることに繋がるが、結晶アミノ酸によって飼料中のアミノ酸含量は一定水準を維持することで増体成績の低下を防ぐことができ、背脂肪厚を高めることが困難であった多産系母豚の子豚でも増体成績は維持しながら背脂肪厚を高め、出荷時の品質を向上させることができた。
【0011】
すなわち、本発明の実施の形態は以下の通りである。
〔1〕全飼料中に、粗たん白質含量を11.5重量%以下、粗脂肪含量を3.0重量%以下、可消化養分総量を79.0重量%以上、正味エネルギーを飼料1kgあたり2,650kcal以上及びリジンを0.60~0.90重量%の範囲で含有する背脂肪厚が1.2cm以下の薄脂の豚を対象とした肉豚肥育用配合飼料。
〔2〕全飼料中の穀類の合計割合が80重量%以上となる〔1〕の肉豚肥育用配合飼料。
【発明の効果】
【0012】
本発明の肉豚肥育用配合飼料によれば、出荷時に背脂肪厚で薄脂の判定が多発するような豚であっても、背脂肪厚が増加し薄脂判定を受ける割合を低減することができる。本発明によれば、飼料の粗たん白質は低いがアミノ酸は十分に保持されているため、増体成績は以前の数値を維持することが可能である。その結果、豚の生産性を低下させずに、枝肉の等級や価格を向上させることができ、養豚場の利益改善に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の肉豚肥育用配合飼料は、とうもろこし、精白米、玄米、小麦、小麦粉、大麦、ライ麦、マイロ、パン粉、甘しょなどの穀類が合計で80重量%以上配合された飼料である。これ以外の穀類原料は、配合してもよいし、配合しなくともよい。
【0014】
飼料中の粗たん白質は11.5重量%以下であり、好ましくは11.0重量%以下、より好ましくは10.5重量%以下、さらに好ましくは10.0重量%以下、最も好ましくは9.5重量%以下である。植物性油粕類や動物質性飼料、そうこう類などのタンパク源の種類は特に限定されず、肉豚肥育用配合飼料にて一般的に用いられる原料を用いて良い。具体的には、大豆油かす、なたね油かす、コーングルテンミール、コーンジャムミール、魚粉、ポークチキンミール、チキンミール、豚血粉、とうもろこしジスチラーズグレインソリュブルなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0015】
飼料中のリジン含量は、0.60~0.90重量%であり、好ましくは0.65~0.80重量%である。リジン含量が、0.90重量%を超えると、脂肪の付着が抑制され、本発明の効果が得られなくなる。ここで使用するリジンは特に限定されず、肉豚肥育用配合飼料にて一般的に用いられる原料を用いて良い。結晶リジンを使う場合は塩酸L-リジンでも硫酸L-リジンでも、飼料添加物として認可されたものなら何でも良い。本発明におけるリジンは、飼料中の結晶リジンだけでなく他の原料に含まれるリジンを全て含んだ数値である。
【0016】
飼料中の粗脂肪含量は3.0重量%以下であり、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1.5重量%以下、最も好ましくは1.0重量%以下である。油脂は配合しても良いが、穀類80重量%以上かつ粗脂肪含量3.0重量%以下とするためには油脂無添加とすることが望ましい。なお、本発明における粗脂肪含量は、飼料中の油脂だけでなく他の原料に含まれる脂肪分も全て含んだ数値である。
【0017】
飼料中のエネルギー含量は可消化養分総量で79.0重量%以上であり、好ましくは80.0重量%以上、より好ましくは81.0重量%以上、最も好ましくは又は82.0重
量%以上である。可消化養分総量とは飼料に使用した各原料に対して、可消化たん白質、可消化炭水化物、可消化粗脂肪×2.25の合計にて求められた数値であり、飼料中の可消化養分総量はその合計値である。
【0018】
飼料中のエネルギー含量は正味エネルギーで飼料1kgあたり2,650kcal以上であり、例えば2,700kcal以上、2,750kcal以上、または2,800kcal以上としても良い。正味エネルギーとは、飼料原料に含まれる総エネルギー(燃やした時に発生するエネルギー)から、糞によって排出されるエネルギー、尿によって排出されるエネルギー、熱産生によって排出されるエネルギーを除いた、体の維持と成長に使用されるエネルギーのことである。本発明における各飼料原料の正味エネルギーは、フランス国のINRAが提供するINRAE-CIRAD-AFZ Feed tablesにおけるNE growing pig(kcal)の数値を参照したものであり、飼料中の正味エネルギーはその合計値である。
【0019】
豚の品種は特に限定されず、ランドレース種、大ヨークシャー種、デュロック種、中ヨークシャー種、バークシャー種、それらを掛け合わせた交雑種等が包含される。特に好ましい例として、近年に海外から導入された高能力の母豚(多産系母豚)から生産された肉豚を挙げることができる。
【0020】
本発明の飼料を給餌する時期は肉豚肥育期(体重がおおむね70kgから出荷まで)である。
【実施例0021】
以下本発明の効果を実施例で示すが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0022】
実証実験1
(1)試験内容
海外由来の多産系母豚から生まれた子豚の発育成績と出荷成績を確認した。飼料は一般に市販されている肉豚肥育用配合飼料を用い、自由摂取とした。試験には計63頭を用い12反復の試験を実施した(1反復あたり4頭~6頭)。体重約70kgから115kgまでの発育成績と出荷時に発行される枝肉格付明細書の数値を確認した。
なお、枝肉格付けは、背脂肪厚が1.2cm以上であっても「腹薄」の判定をされる格落ちとなることがあり、背脂肪厚が1.2cm以下であっても、「重量大」の格落ち要因があると枝肉格付明細書に「背薄」が記載されないことがあるため、格落ち頭数と背脂肪厚が1.2cm以下の頭数は、必ずしも一致しない。
【0023】
(2)試験結果
試験飼料の原料組成と栄養価を表1および表2に示す。試験の結果を表3および4に示す。試験期間中の発育成績は1日当たりの増体が1,064g、1日あたりの飼料摂取量が3,087g、飼料要求率が2.89となった。また、出荷時に発行される枝肉格付明細書からは、背脂肪厚は全体平均が1.32cm、うち去勢雄が1.41cm、雌が1.27cmとなり、薄脂(背薄、腹薄)を理由とした格落ちが63頭中29頭と約半数で認められ、また背脂肪厚が格付け「上」の範囲を下回る1.2cm以下の個体も63頭中30頭認められた。本試験により、多産系母豚から生まれた子豚では増体成績は高いが背脂肪厚が薄く薄脂を理由にした枝肉等級の下落が大きな問題であることが確認された。
また、去勢雄と雌とで、背脂肪厚の平均値に若干の差異が見られたので、以下に実証実験では、試験区と対照区の去勢雄と雌の比率をできるだけ揃えた。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
【表3】
【0027】
【表4】
【0028】
実証実験2
(1)試験内容
一般的に市販されている肉豚肥育用配合飼料に準じた飼料を給与する対照区に対し、試験区には飼料中の正味エネルギー含量と粗たん白やリジン含量は概ね同一、飼料中の粗脂肪含量を3重量%以下とし、穀類原料の割合を80重量%以上とした飼料を給与した。飼料は自由摂取とした。試験には多産系母豚の子豚を計24頭用い、各区12頭を6頭ずつ2反復に振り分けた。体重おおむね65kgから110kgまでの発育成績と、出荷時に発行される枝肉格付明細書の背脂肪厚や薄脂判定頭数を比較した。
【0029】
(2)試験結果
試験飼料の原料組成と栄養価を表5および6に示す。試験の結果を表7および8に示す。試験期間中の発育成績は、試験区は対照区と比較して増体、飼料摂取量、1日あたりの正味エネルギー摂取量は殆ど差が無かった。また、各区12頭中9頭について枝肉格付明細書における背脂肪厚および薄脂判定の頭数を比較したが、試験区の方が背脂肪厚は若干低く、また薄脂の判定を受けた個体数が多かった。以上の結果からは、飼料中の穀類の含量を80重量%以上とし、粗脂肪含量を3重量%以下にするだけでは、背脂肪厚や薄脂割合の改善は難しいと考えられた。
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】
【0032】
【表7】
【0033】
【表8】
【0034】
実証実験3
(1)試験内容
とうもろこしと大豆油かすを中心とした肉豚肥育用配合飼料を給与する対照区に対し、試験区には対照区飼料と比較して粗たん白質を3重量%低減して11.5重量%以下とし、リジンは結晶アミノ酸で補填し同一とした飼料を給与した。飼料中の正味エネルギー含量は試験区の方がやや高い値となった。飼料は自由摂取とした。試験には多産系母豚の子豚を計32頭用い、各区16頭を5~6頭ずつ3反復に振り分けた。体重おおむね70kgから115kg(出荷まで)の発育成績と出荷時に発行される枝肉格付明細書の数値を比較した。体重おおむね70kgから115kgまでの発育成績と、出荷時に発行される枝肉格付明細書の背脂肪厚や薄脂判定頭数を比較した。
【0035】
(2)試験結果
試験飼料の原料組成と栄養価を表9および10に示す。試験の結果を表11および12に示す。試験期間中の発育成績は、試験区は対照区と比較して増体、飼料摂取量、1日あたりの正味エネルギー摂取量が高くなった。また、出荷時の枝肉格付明細書における背脂肪厚および薄脂の割合においては、試験区の背脂肪厚が若干高い値を示した。一方で、薄脂判定を受けた個体の割合は試験区の方が多かった。以上の結果からは、飼料中の粗たん白質含量を低減することで飼料摂取量が高まり、増体や1日あたりの正味エネルギー摂取量が高まること、それによって薄脂判定に影響するほどではないが、背脂肪厚が改善する可能性が示唆された。
【0036】
【表9】
【0037】
【表10】
【0038】
【表11】
【0039】
【表12】
【0040】
実証実験4
(1)試験内容
穀類を90重量%以上使用し、かつ市販の肉豚肥育用配合飼料と比較して粗たん白質やリジンを大きく低減した飼料を多産系母豚の子豚計18頭に給与し、背脂肪厚や薄脂判定頭数が改善するかを確認した。試験は7頭と11頭で2回実施し、体重おおむね70kgからの発育成績と、平均115kg程度で出荷した際に出荷先より発行される枝肉格付明細書を確認した。
【0041】
(2)試験結果
試験飼料の原料組成と栄養価を表13および14に示す。試験の結果を表15および16に示す。試験期間中の増体成績は、実証試験3と比較しても低い値を示し、本試験レベルまでリジンが低減してしまうと増体成績が落ちてしまうことが確認された。また、平均体重約115kgで出荷し、発行された枝肉格付明細書における背脂肪厚と格付けでは、背脂肪厚の平均値は1.32cmとなり、薄脂判定を受けた個体は半数の9頭であった。以上の結果より、飼料の粗たん白質を低減する際にリジンも同時に下げてしまうと、増体成績が悪化するだけで、背脂肪厚や枝肉等級の改善には繋がらないことを確認した。
【0042】
【表13】
【0043】
【表14】
【0044】
【表15】
【0045】
【表16】
【0046】
実証実験5
(1)試験内容
とうもろこしと大豆油かすを中心とした肉豚肥育用配合飼料を給与する対照区に対し、試験区には飼料中の穀類を80重量%以上とし、粗脂肪含量を3重量%以下、可消化養分総量を79.0重量%以上、正味エネルギー含量2,650kcal/kg以上、粗たん白含量11.5重量%以下、飼料中のリジンは結晶アミノ酸で補填し同一、とした飼料を給与した。飼料は自由摂取とした。試験には多産系母豚の子豚を計26頭用い、各区13頭を6~7頭ずつ2反復に振り分けた。体重おおむね70kgからの発育成績と出荷時に発行される枝肉格付明細書の背脂肪厚や薄脂判定頭数を比較した。
【0047】
(2)試験結果
試験飼料の原料組成と栄養価を表17および18に示す。試験の結果を表19および20に示す。試験期間中の発育成績は、試験区は対照区と比較して増体は若干高い値を示し、飼料摂取量は高い値を示した。その結果、1日あたりの正味エネルギー摂取量は試験区が大幅に高い値を示した。また、出荷時に発行される枝肉格付明細書における背脂肪厚は試験区が対照区に比べて平均値で約0.5cm高い値を示し、統計学的有意差も確認された。また、試験区は薄脂判定を受けた個体は無かった。以上の結果より、試験区飼料の条件であれば、増体成績が高く背脂肪の薄い多産系母豚が生産した肉豚でも、増体成績を維持したまま背脂肪厚を改善し薄脂を理由とした枝肉等級の低下を軽減できることが確認された。
【0048】
【表17】
【0049】
【表18】
【0050】
【表19】
【0051】
【表20】
【0052】
実証実験6
(1)試験内容
実証実験5では、多産系母豚の子豚において飼料中の穀類を80重量%以上、粗脂肪含量を3重量%以下、可消化養分総量を79.0重量%以上、正味エネルギー含量2,650kcal/kg以上、粗たん白含量11.5重量%以下とした肉豚肥育用配合飼料を給与することで、増体成績を維持したまま背脂肪厚を改善し薄脂を理由とした枝肉等級の低下を軽減できることが確認されている。追加試験では、再現性の確認を目的として特許請求の範囲内の配合設計であれば、実証実験5と同じ結果が得られるか確認した。陰性対照区はとうもろこしと大豆かすを中心とした一般的な肉豚肥育用配合飼料を給与し、陽性対照区および試験区は飼料中の穀類を80重量%以上、粗脂肪含量を3重量%以下、可消化養分総量を79.0重量%以上、正味エネルギー含量2,650kcal/kg以上、粗たん白含量11.5重量%以下を満たした肉豚肥育用配合飼料を給与した。試験には多産系母豚の子豚を計69頭用い、各区19~20頭を6~7頭ずつ3反復に振り分けた。体重おおむね70kgからの発育成績と出荷時に発行される枝肉格付明細書の背脂肪厚や薄脂判定頭数を比較した。
(2)試験結果
試験飼料の原料組成と栄養価を表1および2に示す。試験の結果を表3および4に示す。試験期間中の発育成績は、陽性対照区および試験区は陰性対照区と比較して増体、飼料摂取量は高い値を示した。その結果、陽性対照区および試験区の1日あたりの正味エネルギー摂取量は大幅に高い値を示した。また、出荷時に発行される枝肉格付明細書における背脂肪厚は陽性対照区および試験区が陰性対照区に比べて平均値で約0.24~0.28cm高い値を示し、陰性対照区-陽性対照区間および陰性対照区-試験区間で統計学的有意差も確認された。また、陽性対照区および試験区で薄脂判定を受けた個体は陰性対照区に比べて少なかった。以上の結果より、陽性対照区および試験区飼料の条件であれば、増体成績が高く背脂肪の薄い多産系母豚が生産した肉豚でも、増体成績を維持したまま背脂肪厚を改善し薄脂を理由とした枝肉等級の低下を軽減できることが確認され、実証実験5の再現性が得られた。
【0053】
【表21】
【0054】
【表22】
【0055】
【表23】
【0056】
【表24】
【0057】
<まとめ>
肉豚期において、次の特長を付加した飼料を給与することによって、増体成績は維持したまま背脂肪厚を高め、薄脂を理由とした枝肉等級の低下を軽減することが可能である。
・配合飼料中の穀類原料の割合が80重量%以上であること
・配合飼料中の粗脂肪含量を3重量%以下、可消化養分総量を79.0重量%以上、正味エネルギー含量を2,650kcal/kg以上であること
・配合飼料中の粗たん白含量は11.5重量%以下、リジン含量は0.60~0.90重量%であること