(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068124
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 1/00 20060101AFI20240510BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20240510BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20240510BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20240510BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240510BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240510BHJP
C08C 19/02 20060101ALI20240510BHJP
C08F 236/10 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B60C1/00 Z
B60C13/00 E
B60C11/00 F
B60C1/00 A
B60C1/00 B
C08L15/00
C08L9/00
C08K3/04
C08C19/02
C08F236/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023178946
(22)【出願日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2022178330
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】松井 智哉
(72)【発明者】
【氏名】大野 秀一朗
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA04
3D131AA06
3D131AA12
3D131BC42
3D131EA10V
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131GA19
4J002AC03X
4J002AC06X
4J002AC11W
4J002DA036
4J002FD016
4J002GN01
4J100AB02Q
4J100AS02P
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA04
4J100HB02
4J100HE14
4J100JA29
(57)【要約】
【課題】長期間経過後も良好な乗り心地性能を保持できるタイヤを提供する。
【解決手段】タイヤ部材を備えるタイヤであって、
前記タイヤ部材が、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体と、イソプレン系ゴム及び/又はブタジエンゴムとを含むゴム成分、並びに、カーボンブラックを含み、
下記式(1)と、下記式(2)及び/又は下記式(3)とを満たすタイヤに関する。
(1)AE>5.0
(式中、AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。)
(2)Tw<12.0
(式中、Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
(3)Tt<12.0
(式中、Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ部材を備えるタイヤであって、
前記タイヤ部材が、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体と、イソプレン系ゴム及び/又はブタジエンゴムとを含むゴム成分、並びに、カーボンブラックを含み、
下記式(1)と、下記式(2)及び/又は下記式(3)とを満たすタイヤ。
(1)AE>5.0
(式中、AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。)
(2)Tw<12.0
(式中、Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
(3)Tt<12.0
(式中、Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
【請求項2】
下記式を満たす請求項1記載のタイヤ。
AE>9.0
(式中、AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。)
【請求項3】
下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
Tw<9.0
(式中、Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
【請求項4】
下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
Tt<9.0
(式中、Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
【請求項5】
タイヤ部材が、サイドウォール、クリンチエイペックス及びベーストレッドからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項6】
下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
AE/Tw>1.5
(AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
【請求項7】
下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
AE/Tt>1.1
(AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
【請求項8】
下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
Pc/Tw>1.9
(Pcは、タイヤ部材のゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
【請求項9】
下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
Pc/Tt>1.3
(Pcは、タイヤ部材のゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
【請求項10】
下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
Fc/Tw>8.0
(Fcは、タイヤ部材のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
【請求項11】
下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
Fc/Tt>3.2
(Fcは、タイヤ部材のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
【請求項12】
下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
D<11.0
(式中、Dは、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さ(mm)である。)
【請求項13】
下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
AE/D>1.1
(AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。Dは、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さ(mm)である。)
【請求項14】
下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
Pc/D>1.0
(Pcは、タイヤ部材のゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Dは、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さ(mm)である。)
【請求項15】
下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
Fc/D>3.5
(Fcは、タイヤ部材のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Dは、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さ(mm)である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤには種々の性能が要求されているが、最近、長期間経過後も乗り心地性能を保持することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記課題を解決し、長期間経過後も良好な乗り心地性能を保持できるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、タイヤ部材を備えるタイヤであって、
前記タイヤ部材が、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体と、イソプレン系ゴム及び/又はブタジエンゴムとを含むゴム成分、並びに、カーボンブラックを含み、
下記式(1)と、下記式(2)及び/又は下記式(3)とを満たすタイヤに関する。
(1)AE>5.0
(式中、AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。)
(2)Tw<12.0
(式中、Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
(3)Tt<12.0
(式中、Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
【発明の効果】
【0005】
本発明は、タイヤ部材を備えるタイヤであって、前記タイヤ部材が、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体と、イソプレン系ゴム及び/又はブタジエンゴムとを含むゴム成分、並びに、カーボンブラックを含み、前記式(1)と、前記式(2)及び/又は前記式(3)とを満たすタイヤであるので、長期間経過後も良好な乗り心地性能を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【
図2】
図1のタイヤ2のトレッド部4の近辺が示された拡大断面図である。
【
図3】空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のタイヤは、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体と、イソプレン系ゴム及び/又はブタジエンゴムとを含むゴム成分、並びに、カーボンブラックを含むタイヤ部材を備え、かつ前記式(1)と、前記式(2)及び/又は前記式(3)とを満たす。
【0008】
前記作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムによるものと推察される。
オイルなどのアセトン抽出成分は経時によって系中から溶出して抜けてしまうため、経時劣化が懸念される。
一方、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体を用いているため、汎用スチレンブタジエンゴムなどのゴムに比べて通常二重結合が少ないことや、スチレン単位によって系中の拡散速度が小さくなることで、オイルなどの移行が抑制されると考えられる。
また、当該共重合体をイソプレン系ゴム及び/又はブタジエンゴムとブレンドすることで界面を発生させ、オイルなどの移行が抑制されると考えられる。
カーボンブラックと当該共重合体とを含むことでカーボンブラックの分散性が良好となり、有効表面積が増加する。そして、カーボンブラックとオイルなどは親和性が高いので、カーボンブラックの有効表面積が大きくなることでオイルなどの移行が抑制されると考えられる。
更にシリカを含む場合においても、シリカと反応可能な変性基を有しかつエチレン単位及びスチレン単位を有する共重合体を含むことで、親水性のシリカ表面を該共重合体で覆うことができ、それにより、オイルなどのアセトン抽出成分が親水部と接触しにくくなることで、オイルなどの移行が抑制されると考えられる。
タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚みを小さくすることや、トレッド部の厚みを小さくすることで、走行時にかかる遠心力が小さくなり、オイルなどの移行が抑制されると考えられる。
よって、本発明によれば、経時的なアセトン抽出成分の減少が抑制されることで、長期間経過後も良好な乗り心地性能を保持できると推察される。
【0009】
このように、本発明は、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体と、イソプレン系ゴム及び/又はブタジエンゴムとを含むゴム成分、並びに、カーボンブラックを含むタイヤ部材を備え、かつ式(1)「AE>5.0」と、式(2)「Tw<12.0」及び/又は式(3)「Tt<12.0」とを満たすタイヤの構成にすることにより、長期間経過後も良好な乗り心地性能を保持するという課題(目的)を解決するものである。すなわち、式(1)~(3)のパラメータは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、長期間経過後も良好な乗り心地性能を保持することであり、そのための解決手段として前記パラメータを満たすような構成としたものである。
【0010】
先ず、本発明におけるタイヤ部材を構成する成分について説明する。
前記タイヤ部材は、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体と、イソプレン系ゴム及び/又はブタジエンゴムとを含むゴム成分、並びに、カーボンブラックを含むタイヤ部材用ゴム組成物により構成される。
【0011】
(ゴム成分)
タイヤ部材用ゴム組成物は、ゴム成分として、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体(以下、「変性共重合体」ともいう)を含む。変性共重合体は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本発明において、ゴム成分は、架橋に寄与する成分であり、一般的に、重量平均分子量(Mw)が1万以上のポリマーで、アセトンにより抽出されないポリマー成分である。
【0013】
ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、タイヤ性能などの所望の性能を付与できる傾向がある。
【0014】
なお、本明細書において「カーボンブラック及び/又はシリカと反応可能」とは、カーボンブラック及び/又はシリカとの間で共有結合を形成するか、又は共有結合よりも弱い分子間力(例えば、イオン-双極子相互作用、双極子-双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等といった分子間に働く電磁気学的な力)による結合を形成することを意味する。また、「カーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基」とは、窒素原子、硫黄原子、リン原子、酸素原子、ケイ素原子、スズ原子などのカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な原子を少なくとも1つ有する基を意味する。
【0015】
上記変性共重合体のエチレン構造の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは33質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。上記範囲内であると、より効果が得られる傾向がある。
上記変性共重合体中のエチレン構造は、エチレン単量体を共重合体して得られるエチレン構造や、共役ジエン単量体を重合後に水素添加して得られるエチレン構造等の全てを含む。例えば、1,4-ブタジエン単位が水素添加した場合は、二つのエチレン構造が得られ、1,4-イソプレン単位が水素添加された場合は、一つのプロピレン構造と一つのエチレン構造が得られる。
なお、上記変性共重合体のエチレン構造は、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
上記変性共重合体のエチレン構造は、エチレンの添加量、共役ジエン単量体の添加量と水素添加率等を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。
【0016】
上記変性共重合体のスチレン単位の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは45質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内であると、より効果が得られる傾向がある。
なお、上記変性共重合体中のスチレン単位の含有量(結合スチレン量)は、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
上記変性共重合体中のスチレン単位の含有量は、重合工程におけるスチレンの添加量を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。
【0017】
上記変性共重合体のビニル単位及びブチレン単位の含有量は、好ましくは20mоl%以上、より好ましくは25mоl%以上、更に好ましくは30mоl%以上、特に好ましくは39mоl%以上であり、また、好ましくは60mоl%以下、より好ましくは50mоl%以下、更に好ましくは45mоl%以下である。上記範囲内であると、より効果が得られる傾向がある。
なお、上記変性共重合体中のビニル単位及びブチレン単位の含有量は、後述する実施例に記載する方法により測定できる。
上記変性共重合体のビニル単位及びブチレン単位の含有量は、上記変性共重合体の重合時における、極性化合物の添加や重合温度の調整により、上記数値範囲に制御できる。
【0018】
上記変性共重合体のヨウ素価は、好ましくは10(g/100g)以上、より好ましくは15(g/100g)以上、更に好ましくは30(g/100g)以上、特に好ましくは50(g/100g)以上であり、また、好ましくは250(g/100g)以下、より好ましくは200(g/100g)以下、更に好ましくは120(g/100g)以下、特に好ましくは108(g/100g)以下である。上記範囲内であると、より効果が得られる傾向がある。
なお、ヨウ素価は、「JIS K 0070:1992」に記載の方法に準じて測定することができる。
ヨウ素価は、対象となる物質100gと反応するハロゲンの量をヨウ素のグラム数に換算して表す値であるため、ヨウ素価の単位は「g/100g」である。
例えば、後述する上記変性共重合体の製造方法において、共役ジエン単量体とスチレン単量体とを共重合した場合は、共役ジエン単量体は二重結合を有しているため、上記変性共重合体のヨウ素価は、共役ジエン単量体の含有量が低い方が低くなり、また、共役ジエン単量体を水素添加する場合は、水素添加率が高い方が、ヨウ素価は低くなる。
上記変性共重合体のヨウ素価は、不飽和結合を有する共役ジエン単量体等の添加量、重合時間、重合温度等の重合条件、水素添加工程における水素添加量、水素添加時間等の条件を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0019】
上記変性共重合体は、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体である。
ここで、前記変性基は、カーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な基であれば特に限定されないが、より効果が得られる観点から、窒素原子、酸素原子、スズ原子及びケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1つの原子を有する基が好ましい。なお、変性基は、1価、2価、3価の基のいずれでもよい。
【0020】
前記変性共重合体は、カーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を有する共重合体であればよく、例えば、共重合体の少なくとも一方の末端を、上記変性基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性共重合体(末端に上記変性基を有する末端変性共重合体)や、主鎖に上記変性基を有する主鎖変性共重合体や、主鎖及び末端に上記変性基を有する主鎖末端変性共重合体(例えば、主鎖に上記変性基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性共重合体)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性共重合体等が挙げられる。
【0021】
前記変性基の具体例としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの変性基は、置換基を有していてもよい。
【0022】
前記変性基は、例えば、骨格を構成するポリマーに該変性基の導入が可能な化合物を反応させることで導入できる。このような化合物としては、例えば、窒素原子、酸素原子、スズ原子及びケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1つの原子を有する基の導入が可能な化合物などを好適に使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。当該化合物は、骨格を構成するポリマーに、付加反応、グラフト反応などを生じさせることで、変性基を導入する化合物以外に、骨格を構成するポリマーをカップリングすることが可能なカップリング剤も使用できる。
【0023】
窒素原子、酸素原子、スズ原子及びケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1つの原子を有する基の導入が可能な化合物として、スズ原子及び酸素原子の少なくとも1つの原子を有する基の導入が可能な化合物としては、例えば、下記式(i)で表される化合物が望ましい。
【化1】
(式中、R
11~R
14は、同一又は異なって、ヘテロ原子を含んでもよい置換若しくは非置換の1価炭化水素基である。)
【0024】
R11~R14のヘテロ原子を含んでもよい置換又は非置換の1価炭化水素基は、直鎖状、分枝状若しくは環状のいずれの基でもよいが、なかでも、直鎖状の基が望ましい。ヘテロ原子としては特に限定されず、酸素原子、窒素原子等が挙げられる。置換基としては特に限定されず、水酸基、ハロゲン基(-Cl、-Br等)等の公知の基が挙げられる。これらのヘテロ原子、置換基は、1個有するものでも、複数個有するものでもよい。
【0025】
R11~R12の前記1価炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは3~15、更に好ましくは6~10、より更に好ましくは7~8である。R13~R14の前記1価炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~30、より好ましくは8~25、更に好ましくは12~20、より更に好ましくは15~18である。
【0026】
R11~R14のヘテロ原子を含んでもよい置換又は非置換の1価炭化水素基としては、例えば、ヘテロ原子を含んでもよい置換若しくは非置換の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基、環状アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基等が列挙される。
【0027】
R11~R14のヘテロ原子を含んでもよい置換若しくは非置換の直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4-デシルシクロヘキシル基、及びこれらのヘテロ原子を含む基等が挙げられる。ヘテロ原子を含んでもよい置換若しくは非置換の環状アルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、1-エチルシクロペンチル基、1-エチルシクロヘキシル基、及びこれらのヘテロ原子を含む基等が挙げられる。ヘテロ原子を含んでもよい置換若しくは非置換のアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、及びこれらのヘテロ原子を含む基等が挙げられる。ヘテロ原子を含んでもよい置換若しくは非置換のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、及びこれらのヘテロ原子を含む基等が挙げられる。ヘテロ原子を含んでもよい置換若しくは非置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、及びこれらのヘテロ原子を含む基等が挙げられる。
【0028】
スズ原子及び酸素原子の少なくとも1つの原子を有する基の導入が可能な化合物の具体例としては、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ(IV)等のスズ含有化合物、などが挙げられる。なかでも、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズが望ましい。なお、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズなどのスズ含有化合物は、ポリマーのカップリング剤として機能することで、ポリマーに変性基が導入される。
【0029】
窒素原子、酸素原子、スズ原子及びケイ素原子からなる群より選択される少なくとも1つの原子を有する基の導入が可能な化合物として、窒素原子、酸素原子及びケイ素原子の少なくとも1つの原子を有する基の導入が可能な化合物としては、例えば、下記式(ii)で表される化合物が望ましい。
【化2】
(式中、R
21~R
24は、同一又は異なって、ヘテロ原子を含んでもよい置換若しくは非置換の1価炭化水素基である。R
25は、ヘテロ原子を含んでもよい置換又は非置換の2価炭化水素基である。mは、同一又は異なって、1又は2である。nは、同一又は異なって、1、2又は3である。)
【0030】
R21~R24のヘテロ原子を含んでもよい置換又は非置換の1価炭化水素基は、直鎖状、分枝状若しくは環状のいずれの基でもよいが、なかでも、直鎖状の基が望ましい。ヘテロ原子、置換基としては特に限定されず、前記と同様のヘテロ原子、置換基などが挙げられる。これらのヘテロ原子、置換基は、1個有するものでも、複数個有するものでもよい。
【0031】
R21~R24の前記1価炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~15、より好ましくは1~5、更に好ましくは1~3である。
【0032】
R21~R24のヘテロ原子を含んでもよい置換又は非置換の1価炭化水素基としては、例えば、前記R11~R14と同様の基等が列挙される。
【0033】
R21~R24の具体例としては、例えば、前記R11~R14と同様の基等が挙げられる。
【0034】
R25のヘテロ原子を含んでもよい置換又は非置換の2価炭化水素基は、直鎖状、分枝状若しくは環状のいずれの基でもよいが、なかでも、直鎖状の基が望ましい。ヘテロ原子、置換基としては特に限定されず、前記と同様のヘテロ原子、置換基などが挙げられる。これらのヘテロ原子、置換基は、1個有するものでも、複数個有するものでもよい。
【0035】
R25の前記2価炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~15、より好ましくは2~10、更に好ましくは3~5である。
【0036】
R25のヘテロ原子を含んでもよい置換又は非置換の2価炭化水素基としては、例えば、ヘテロ原子を含んでもよい置換若しくは非置換のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等が列挙され、なかでも、アルキレン基が好ましい。
【0037】
上記アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等の直鎖状アルキレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等の分枝状アルキレン基などが挙げられ、直鎖状アルキレン基が好ましい。
【0038】
mは、好ましくは2である。nは、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0039】
窒素原子、酸素原子及びケイ素原子の少なくとも1つの原子を有する基の導入が可能な化合物の具体例としては、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(5-トリメトキシシリルペンチル)-1-アザ-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-エチル-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-エチル-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、などが挙げられる。なかでも、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタンがより好ましい。
【0040】
上記変性共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-90℃以上、より好ましくは-80℃以上、更に好ましくは-75℃以上であり、また、好ましくは-15℃以下、より好ましくは-30℃以下、更に好ましくは-40℃以下である。上記範囲内であると、より効果が得られる傾向がある。
なお、ガラス転移温度は、ISO 22768:2006に従い、所定の温度範囲で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)を求め、当該ピークトップの温度をガラス転移温度とする。
【0041】
上記変性共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万以上、より好ましくは30万以上、更に好ましくは35万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは100万以下、更に好ましくは70万以下、特に好ましくは45万以下である。上記範囲内であると、より効果が得られる傾向がある。
なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリスチレン換算の分子量から計算できる。
上記変性共重合体の重量平均分子量、分子量分布は、重合工程における単量体添加量、重合時間、重合温度、重合圧力等の各種重合条件を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。
【0042】
上記変性共重合体の水素添加率(共重合体の1,3-ブタジエン部に対して水素添加された割合)は、好ましくは60mol%以上、より好ましくは70mol%以上、更に好ましくは75mol%以上であり、また、好ましくは95mol%以下、より好ましくは92mol%以下、更に好ましくは90mol%以下である。上記範囲内であると、より効果が得られる傾向がある。
なお、水素添加率は、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0043】
上記変性共重合体の製造方法としては、少なくとも共役ジエン単量体とスチレンを重合又は共重合し、その後、二重結合の一部又は大部分を水素添加して製造する方法や、少なくともエチレンと共役ジエン単量体とスチレンを共重合して製造する方法が挙げられる。
【0044】
少なくとも共役ジエン単量体とスチレンを重合又は共重合した後に水素添加する方法としては、例えば、国際公開第96/05250号公報、特開2000-053706号公報、国際公開第2003/085010号公報、国際公開第2019/151126号公報、国際公開第2019/151127号公報、国際公開第2002/002663号公報、国際公開第2015/006179号公報に記載されているように、種々の添加剤を加え、公知の条件下で、アニオン重合で共役ジエン単量体、スチレンを重合し、必要に応じてその他の単量体と共重合した後に水素添加する方法が挙げられる。
【0045】
少なくともエチレンと共役ジエン単量体とスチレンを共重合体する方法としては、例えば、国際公開第2019/078083号公報、国際公開第2019/171679号公報、国際公開第2019/142501号公報に記載されているように、種々の添加剤や条件のもとに、配位重合で、エチレン、共役ジエン単量体、スチレン、必要に応じて、他の単量体を添加して共重合する方法が挙げられる。
【0046】
重合体の構造の自由度を広く確保する観点から、上記変性共重合体は、共役ジエン単量体とスチレンを重合した後に水素添加して製造することが好ましい。
【0047】
共役ジエン単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、及び1,3-ヘプタジエン等が挙げられる。なかでも、1,3-ブタジエンやイソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記変性共重合体は、重合単量体として、上述した単量体の他、必要に応じてその他の単量体を用いてもよい。
その他の単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン以外のビニル芳香族単量体(p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレンなど)、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸、α,β-不飽和ニトリル化合物、α-オレフィン(プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等)、エチレン、ミルセン、エチリデンノルボルネン、イソプロピリデンノルボルネン、シクロペンタジエン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記変性共重合体を、共役ジエン単量体とスチレンを共重合、又は必要に応じてその他の単量体と共重合した後に水素添加して製造する場合は、水素添加前の共役ジエン系重合体の共役ジエン単量体単位のビニル結合量が、優れた特性を得る観点から重要である。前記ビニル結合量は、10mol%以上が好ましく、20mol%以上がより好ましい。また、75mol%以下が好ましく、60mol%以下がより好ましく、45mol%以下がさらに好ましく、30mol%以下がさらにより好ましい。
【0050】
上記の重合工程や水添工程は、各々、バッチ式、連続式のいずれで行ってもよい。
【0051】
上記変性共重合体の、水素添加率、エチレン、スチレン、共役ジエン単量体などの単量体単位の分子間や分子内の分布は、特に限定されず、均一でも、不均一でもよく、特定の分布があってもよい。
【0052】
タイヤ部材用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中の前記変性共重合体の含有量は、特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、7.5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、15質量%以上がより更に好ましく、20質量%以上がより更に好ましく、25質量%以上がより更に好ましく、30質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0053】
タイヤ部材用ゴム組成物がサイドウォール用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中の前記変性共重合体の含有量は、特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、30質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0054】
タイヤ部材用ゴム組成物がクリンチエイペックス用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中の前記変性共重合体の含有量は、特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、7.5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、15質量%以上がより更に好ましく、20質量%以上がより更に好ましく、25質量%以上がより更に好ましく、30質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0055】
タイヤ部材用ゴム組成物がベーストレッド用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中の前記変性共重合体の含有量は、特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、30質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0056】
タイヤ部材用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム及び/又はブタジエンゴム(BR)を含む。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等が挙げられる。イソプレン系ゴムは、これらの例示のとおり、非変性イソプレン系ゴムでもよいし、変性イソプレン系ゴム(ENRなど)でもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性が向上するという理由からは、シス含量が90質量%以上のハイシスBRが好ましい。BRは、非変性BRでもよいし、変性BR(カルボン酸変性BRなど)でもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
BRのシス量(シス含量)は、好ましくは90質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、BRのシス量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0058】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0059】
タイヤ部材用ゴム組成物は、前記変性共重合体、イソプレン系ゴム、BR以外の他のゴム成分を含んでもよい。他のゴム成分としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴムが挙げられる。また、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなどのポリマーも挙げられる。なかでも、SBRが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBR(カルボン酸変性SBRなど)でもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。該スチレン含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内にすることで、より効果が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、1H-NMR測定によって測定できる。
【0062】
SBRのビニル結合量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。該ビニル結合量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。上記範囲内にすることで、より効果が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0063】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0064】
なお、イソプレン系ゴム、BRは、非変性ジエン系ゴムでもよいし、変性ジエン系ゴムでもよい。
【0065】
タイヤ部材用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、45質量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましく、60質量%以下がより更に好ましく、50質量%以下がより更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0066】
タイヤ部材用ゴム組成物がサイドウォール用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、30質量%以上が好ましく、45質量%以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0067】
タイヤ部材用ゴム組成物がクリンチエイペックス用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、25質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、45質量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0068】
タイヤ部材用ゴム組成物がベーストレッド用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、特に限定されないが、35質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0069】
タイヤ部材用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、20質量%以上がより更に好ましく、30質量%以上がより更に好ましく、35質量%以上がより更に好ましい。上限は特に限定されないが、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、47.5質量%以下がより更に好ましく、45質量%以下がより更に好ましく、40質量%以下がより更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0070】
タイヤ部材用ゴム組成物がサイドウォール用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、20質量%以上がより更に好ましい。上限は特に限定されないが、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0071】
タイヤ部材用ゴム組成物がクリンチエイペックス用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、45質量%以上がより更に好ましい。上限は特に限定されないが、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましく、47.5質量%以下がより更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0072】
タイヤ部材用ゴム組成物がベーストレッド用ゴム組成物の場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、50質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる傾向がある。
【0073】
タイヤ部材用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中の前記変性共重合体、イソプレン系ゴム及びBRの合計含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%でもよい。
【0074】
(充填剤)
タイヤ部材用ゴム組成物は、カーボンブラックを含む。
使用可能なカーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。市販品としては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0075】
タイヤ部材用ゴム組成物において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは20m2/g以上、更に好ましくは30m2/g以上、より更に好ましくは41m2/g以上であり、また、好ましくは120m2/g以下、より好ましくは100m2/g以下、更に好ましくは90m2/g以下、より更に好ましくは71m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0076】
タイヤ部材用ゴム組成物がサイドウォール又はクリンチエイペックス用ゴム組成物の場合、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは10m2/g以上、より好ましくは20m2/g以上、更に好ましくは40m2/g以上であり、また、好ましくは100m2/g以下、より好ましくは80m2/g以下、更に好ましくは60m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0077】
タイヤ部材用ゴム組成物がベーストレッド用ゴム組成物の場合、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは30m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上、更に好ましくは70m2/g以上であり、また、好ましくは120m2/g以下、より好ましくは100m2/g以下、更に好ましくは90m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0078】
タイヤ部材用ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、より更に好ましくは20質量部以上、より更に好ましくは30質量部以上、より更に好ましくは45質量部以上、より更に好ましくは50質量部以上、より更に好ましくは55質量部以上、より更に好ましくは60質量部以上、より更に好ましくは65質量部以上である。上限は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、より更に好ましくは85質量部以下、より更に好ましくは80質量部以下、より更に好ましくは70質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0079】
タイヤ部材用ゴム組成物がサイドウォール用ゴム組成物の場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、より更に好ましくは40質量部以上、より更に好ましくは45質量部以上、より更に好ましくは50質量部以上である。上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下、より更に好ましくは60質量部以下、より更に好ましくは55質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0080】
タイヤ部材用ゴム組成物がクリンチエイペックス用ゴム組成物の場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは55質量部以上、より更に好ましくは60質量部以上である。上限は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは85質量部以下、より更に好ましくは80質量部以下、より更に好ましくは70質量部以下、より更に好ましくは65質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0081】
タイヤ部材用ゴム組成物がベーストレッド用ゴム組成物の場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、より更に好ましくは20質量部以上、より更に好ましくは30質量部以上である。上限は、好ましくは90質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0082】
タイヤ部材用ゴム組成物は、シリカを含むことが望ましい。
使用可能なシリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0083】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは120m2/g以上、更に好ましくは150m2/g以上、特に好ましくは170m2/g以上であり、また、好ましくは250m2/g以下、より好ましくは220m2/g以下、更に好ましくは200m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、シリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0084】
タイヤ部材用ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは10質量部以上、より更に好ましくは15質量部以上、より更に好ましくは20質量部以上、より更に好ましくは30質量部以上、より更に好ましくは35質量部以上である。上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは60質量部以下、より更に好ましくは50質量部以下である。上記範囲内であると、ウェットグリップ性能などのタイヤ性能がより良好に得られる傾向がある。
【0085】
タイヤ部材用ゴム組成物がサイドウォール又はクリンチエイペックス用ゴム組成物の場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、より更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、ウェットグリップ性能などのタイヤ性能がより良好に得られる傾向がある。
【0086】
タイヤ部材用ゴム組成物がベーストレッド用ゴム組成物の場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、より更に好ましくは30質量部以上、より更に好ましくは35質量部以上である。上限は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。上記範囲内であると、ウェットグリップ性能などのタイヤ性能がより良好に得られる傾向がある。
【0087】
タイヤ部材用ゴム組成物がシリカを含有する場合、シリカとともにシランカップリング剤を配合してもよい。
使用可能なシランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などが挙げられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフィド系、メルカプト系が好ましい。
【0088】
タイヤ部材用ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましく、8質量部以上が更に好ましい。また、上記含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。
【0089】
タイヤ部材用ゴム組成物は、シリカ、カーボンブラック以外の他の充填剤を含んでよい。
他の充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー;難分散性フィラー;等のゴム分野で公知のものを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
タイヤ部材用ゴム組成物において、充填剤の含有量(カーボンブラック、シリカ及びこれら以外の他の充填剤の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、より更に好ましくは35質量部以上、より更に好ましくは40質量部以上、より更に好ましくは45質量部以上、より更に好ましくは50質量部以上、より更に好ましくは55質量部以上、より更に好ましくは60質量部以上、より更に好ましくは65質量部以上である。上限は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは85質量部以下、より更に好ましくは80質量部以下、より更に好ましくは75質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0091】
タイヤ部材用ゴム組成物がサイドウォール用ゴム組成物の場合、充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、より更に好ましくは55質量部以上である。上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、より更に好ましくは75質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0092】
タイヤ部材用ゴム組成物がクリンチエイペックス用ゴム組成物の場合、充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは35質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは55質量部以上、より更に好ましくは60質量部以上、より更に好ましくは65質量部以上、より更に好ましくは75質量部以上、より更に好ましくは80質量部以上である。上限は、好ましくは110質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下、より更に好ましくは85質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0093】
タイヤ部材用ゴム組成物がベーストレッド用ゴム組成物の場合、充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは25質量部以上、より好ましくは45質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは75質量部以下、より更に好ましくは70質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0094】
タイヤ部材用ゴム組成物において、充填剤100質量%中のシリカ含有率は、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは5.6質量%以上、より更に好ましくは5.9質量%以上、より更に好ましくは6.7質量%以上、より更に好ましくは7.0質量%以上、より更に好ましくは7.7質量%以上、より更に好ましくは8.3質量%以上、より更に好ましくは9.1質量%以上、より更に好ましくは10.0質量%以上、より更に好ましくは14.3質量%以上、より更に好ましくは18.8質量%以上、より更に好ましくは20.0質量%以上である。上限は、好ましくは90.0質量%以下、より好ましくは80.0質量%以下、更に好ましくは75.0質量%以下、より更に好ましくは70.0質量%以下、より更に好ましくは66.7質量%以下、より更に好ましくは40.0質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0095】
タイヤ部材用ゴム組成物がサイドウォール用ゴム組成物の場合、充填剤100質量%中のシリカ含有率は、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、より更に好ましくは6.7質量%以上である。上限は、好ましくは30.0質量%以下、より好ましくは20.0質量%以下、更に好ましくは10.0質量%以下、特に好ましくは9.1質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0096】
タイヤ部材用ゴム組成物がクリンチエイペックス用ゴム組成物の場合、充填剤100質量%中のシリカ含有率は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは4.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、より更に好ましくは5.6質量%以上、より更に好ましくは5.9質量%以上、より更に好ましくは6.7質量%以上である。上限は、好ましくは25.0質量%以下、より好ましくは18.8質量%以下、更に好ましくは15.0質量%以下、より更に好ましくは14.3質量%以下、より更に好ましくは9.1質量%以下、より更に好ましくは8.3質量%以下、より更に好ましくは8.0質量%以下、特に好ましくは7.7質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0097】
タイヤ部材用ゴム組成物がベーストレッド用ゴム組成物の場合、充填剤100質量%中のシリカ含有率は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30.0質量%以上、より好ましくは40.0質量%以上、更に好ましくは50.0質量%以上、より更に好ましくは60.0質量%以上、より更に好ましくは66.7質量%以上、特に好ましくは70.0質量%以上である。上限は、好ましくは90.0質量%以下、より好ましくは80.0質量%以下、更に好ましくは75.0質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0098】
(可塑剤)
タイヤ部材用ゴム組成物は、可塑剤を含むことが望ましい。
本明細書において、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、例えば、液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)、樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)等が挙げられる。
【0099】
タイヤ部材用ゴム組成物において、可塑剤の含有量(液体可塑剤、樹脂などの合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、より更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは7質量部以上、より更に好ましくは8質量部以上、より更に好ましくは10質量部以上、より更に好ましくは12質量部以上、より更に好ましくは14質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは27.5質量部以下、より更に好ましくは23質量部以下、より更に好ましくは20質量部以下、より更に好ましくは18質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0100】
タイヤ部材用ゴム組成物がサイドウォール用ゴム組成物の場合、可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは7質量部以上、より更に好ましくは10質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0101】
タイヤ部材用ゴム組成物がクリンチエイペックス用ゴム組成物の場合、可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上、より更に好ましくは12質量部以上、より更に好ましくは14質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは27.5質量部以下、より更に好ましくは23質量部以下、より更に好ましくは20質量部以下、より更に好ましくは18質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0102】
タイヤ部材用ゴム組成物がベーストレッド用ゴム組成物の場合、可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、より更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは8質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0103】
タイヤ部材用ゴム組成物に使用可能な液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)としては特に限定されず、オイル、液状ポリマー(液状樹脂、液状ジエン系ポリマー、液状ファルネセン系ポリマーなど)などが挙げられる。これらの液体可塑剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
タイヤ部材用ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、より更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは7質量部以上、より更に好ましくは8質量部以上、より更に好ましくは10質量部以上、より更に好ましくは12質量部以上、より更に好ましくは14質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは27.5質量部以下、より更に好ましくは23質量部以下、より更に好ましくは20質量部以下、より更に好ましくは18質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。液体可塑剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイルの量も含まれる。なお、後述のオイルの含有量も同様の範囲が望ましい。
【0105】
タイヤ部材用ゴム組成物がサイドウォール用ゴム組成物の場合、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは7質量部以上、より更に好ましくは10質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。液体可塑剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイルの量も含まれる。なお、後述のオイルの含有量も同様の範囲が望ましい。
【0106】
タイヤ部材用ゴム組成物がクリンチエイペックス用ゴム組成物の場合、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上、より更に好ましくは12質量部以上、より更に好ましくは14質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは27.5質量部以下、より更に好ましくは23質量部以下、より更に好ましくは20質量部以下、より更に好ましくは18質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。液体可塑剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイルの量も含まれる。なお、後述のオイルの含有量も同様の範囲が望ましい。
【0107】
タイヤ部材用ゴム組成物がベーストレッド用ゴム組成物の場合、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、より更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは8質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。液体可塑剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイルの量も含まれる。なお、後述のオイルの含有量も同様の範囲が望ましい。
【0108】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。
【0109】
液状樹脂としては、テルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0110】
液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0111】
液状ファルネセン系ポリマーとは、ファルネセンを重合することで得られる重合体であり、ファルネセンに基づく構成単位を有する。ファルネセンには、α-ファルネセン((3E,7E)-3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン)やβ-ファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)などの異性体が存在するが、以下の構造を有する(E)-β-ファルネセンが好ましい。
【化3】
【0112】
液状ファルネセン系ポリマーは、ファルネセンの単独重合体(ファルネセン単独重合体)でも、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合体(ファルネセン-ビニルモノマー共重合体)でもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合体が好ましい。
【0113】
ビニルモノマーとしては、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、tert-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ジフェニルエチレン、3級アミノ基含有ジフェニルエチレンなどの芳香族ビニル化合物や、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、ブタジエンが好ましい。すなわち、ファルネセン-ビニルモノマー共重合体としては、ファルネセンとブタジエンとの共重合体(ファルネセン-ブタジエン共重合体)が好ましい。
【0114】
ファルネセン-ビニルモノマー共重合体において、ファルネセンとビニルモノマーとの質量基準の共重合比(ファルネセン/ビニルモノマー)は、40/60~90/10が好ましい。
【0115】
液状ファルネセン系ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が3000~30万のものを好適に使用できる。液状ファルネセン系ポリマーのMwは、好ましくは8000以上、より好ましくは10000以上であり、また、好ましくは10万以下、より好ましくは6万以下、更に好ましくは5万以下である。
【0116】
タイヤ部材用ゴム組成物に使用可能な上記樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)としては、例えば、常温(25℃)で固体状態の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水素添加されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、芳香族ビニル重合体、石油樹脂、テルペン系樹脂が好ましい。
【0117】
上記樹脂の軟化点は、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、115℃以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、より効果が得られる傾向がある。
なお、上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。前記した樹脂の軟化点は通常、樹脂のガラス転移温度より50℃±5℃高い値となる。
【0118】
上記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0119】
上記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0120】
上記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
【0121】
上記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0122】
上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
【0123】
上記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
【0124】
上記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂、水素添加DCPD樹脂が好ましい。
【0125】
上記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーである。例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。また、これらの水素添加物も使用できる。
【0126】
上記ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0127】
上記ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα-ピネン及びβ-ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β-ピネンを主成分とするβ-ピネン樹脂と、α-ピネンを主成分とするα-ピネン樹脂とに分類される。
【0128】
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0129】
上記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0130】
上記無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂とは、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0131】
上記アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(2エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0132】
上記アクリル系樹脂を構成する芳香族ビニルモノマー成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルが挙げられる。
【0133】
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニルと共に、他のモノマー成分を使用してもよい。
【0134】
タイヤ部材用ゴム組成物が上記樹脂を含有する場合、上記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0135】
可塑剤としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0136】
タイヤ部材用ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
【0137】
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0138】
タイヤ部材用ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。
【0139】
タイヤ部材用ゴム組成物は、ステアリン酸を含んでもよい。
タイヤ部材用ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部、更に好ましくは2~3.5質量部である。
【0140】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0141】
タイヤ部材用ゴム組成物は、酸化亜鉛を含んでもよい。
タイヤ部材用ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部、更に好ましくは2~2.5質量部である。
【0142】
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0143】
タイヤ部材用ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。
タイヤ部材用ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部、更に好ましくは1.5~3質量部である。
【0144】
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0145】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0146】
タイヤ部材用ゴム組成物には、硫黄を配合してもよい。
タイヤ部材用ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.7質量部以上、より更に好ましくは1.8質量部以上である。該含有量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下、より更に好ましくは2.5質量部以下である。
【0147】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0148】
タイヤ部材用ゴム組成物は、加硫促進剤を含んでもよい。
タイヤ部材用ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、通常、0.3~10質量部、好ましくは0.5~7質量部、より好ましくは1~5質量部、更に好ましくは1.5~2質量部である。
【0149】
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のベンゾチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0150】
タイヤ部材用ゴム組成物には、上記成分以外にも、離型剤や顔料等の応用分野に従って、それらの使用に使われる通常の添加物を適宜配合してもよい。
【0151】
タイヤ部材用ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、必要に応じて架橋する方法などにより製造できる。なお、混練条件としては、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。
【0152】
本発明のタイヤにおいて、タイヤ部材が下記式(1)を満たす。
(1)AE>5.0
(式中、AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。)
式(1)の右辺は、好ましくは7.0、より好ましくは8.0、更に好ましくは9.0、特に好ましくは10.0である。AEの上限は、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは18.0質量%以下、更に好ましくは17.0質量%以下、より更に好ましくは15.0質量%以下、より更に好ましくは14.0質量%以下、より更に好ましくは13.0質量%以下、より更に好ましくは12.0質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0153】
タイヤ部材がサイドウォールの場合、下記式(1a)を満たすことが望ましい。
(1a)AE>5.0
(式中、AEは、サイドウォールのアセトン抽出量(質量%)である。)
式(1a)の右辺は、好ましくは8.0、より好ましくは9.0、更に好ましくは10.0、特に好ましくは10.5である。AEの上限は、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは18.0質量%以下、更に好ましくは17.0質量%以下、より更に好ましくは12.9質量%以下、より更に好ましくは11.3質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0154】
タイヤ部材がクリンチエイペックスの場合、下記式(1b)を満たすことが望ましい。
(1b)AE>6.0
(式中、AEは、クリンチエイペックスのアセトン抽出量(質量%)である。)
式(1b)の右辺は、好ましくは8.0、より好ましくは10.0、更に好ましくは12.0、特に好ましくは14.0である。AEの上限は、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは18.0質量%以下、更に好ましくは17.0質量%以下、より更に好ましくは14.9質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0155】
タイヤ部材がベーストレッドの場合、下記式(1c)を満たすことが望ましい。
(1c)AE>5.0
(式中、AEは、ベーストレッドのアセトン抽出量(質量%)である。)
式(1c)の右辺は、好ましくは7.0、より好ましくは8.0、更に好ましくは9.0、特に好ましくは10.0である。AEの上限は、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは18.0質量%以下、更に好ましくは17.0質量%以下、より更に好ましくは12.3質量%以下、より更に好ましくは12.2質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0156】
なお、タイヤ部材のアセトン抽出量(AE)は、タイヤ部材を構成する加硫後のゴム組成物を用いて、以下の方法で測定される。
アセトン抽出量(AE)は、タイヤ部材(試料)について、JIS K 6229:2015に準拠したアセトン抽出量の測定方法により測定される(単位:試料中の質量%)。
なお、これらの測定に用いる試料は、タイヤを構成する部材から採取されるものである。
【0157】
アセトン抽出量(AE)を調整する方法としては、当業者に公知の方法を採用できる。例えば、AEは、ゴム組成物中の、オイル等の可塑剤量が増加すると、大きくなる傾向がある。
【0158】
本発明のタイヤは、下記式(2)及び下記式(3)の少なくとも1つを満たす。式(2)及び(3)の両方を満たすことが望ましい。
(2)Tw<12.0
(式中、Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
(3)Tt<12.0
(式中、Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式(2)の右辺は、好ましくは10.0、より好ましくは9.0、更に好ましくは8.0、特に好ましくは6.0である。Twの下限は、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上、更に好ましくは4.0mm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
式(3)の右辺は、好ましくは10.0、より好ましくは9.0、更に好ましくは8.0である。Ttの下限は、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは4.0mm以上、更に好ましくは5.0mm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0159】
「タイヤ最大幅位置」は、タイヤ軸方向で最大の幅となる一対の位置を意味する。
「タイヤ最大幅位置における表面ゴム層」とは、そのようなタイヤ最大幅位置を含むタイヤ表面を構成するタイヤ部材のゴム層を意味し、タイヤにより、サイドウォール、クリンチエイペックスなどが該当する。
「タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(Tw)」とは、タイヤ半径方向断面において、タイヤ最大幅位置におけるタイヤ軸方向の表面ゴム層の厚みを意味する。タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚みは、タイヤ最大幅位置の表面ゴム層の表面からタイヤ軸方向に沿って計測される値である。そして、Twは、タイヤの半径方向断面において、タイヤ最大幅位置のサイドウォール、クリンチエイペックスなどの表面ゴム層のタイヤ最表面から、カーカス層などの他の繊維材料を含む補強層のタイヤ最表面側の界面までのタイヤ軸方向の直線距離である。
【0160】
「トレッド部の厚み(Tt)」は、タイヤ半径方向断面におけるタイヤ赤道面上のトレッド部の厚みを意味する。タイヤ赤道面上のトレッド部の厚みは、タイヤ赤道面上におけるトレッド最表面からタイヤ赤道面に沿って計測される値である。そして、Ttは、タイヤの半径方向断面において、トレッド表面からベルト層、カーカス層などの他の繊維材料を含む補強層のタイヤ半径方向のタイヤ最表面側の界面までの直線距離であり、トレッドが赤道面上に溝を有する場合は、該溝のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線とタイヤ赤道面の交点からの直線距離である。
【0161】
なお、本明細書において、「タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(Tw)」、「トレッド部の厚み(Tt)」などのタイヤの各種寸法は、特に言及がない限り、タイヤのビード部を正規リム幅に合わせた状態で測定される。測定時には、タイヤをタイヤ半径方向に切り出し、該サンプルの両側のビード端部を正規リムの幅に合わせた状態で固定する。
【0162】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける“標準リム”、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association,Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0163】
サイドウォールがタイヤ最大幅位置を含む場合、下記式(2a)及び/又は下記式(3a)を満たすことが望ましい。
(2a)Tw<10.0
(式中、Twは、タイヤ最大幅位置におけるサイドウォールの厚み(mm)である。)
(3a)Tt<12.0
(式中、Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式(2a)の右辺は、好ましくは9.0、より好ましくは8.0、更に好ましくは6.0である。Twの下限は、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上、更に好ましくは4.0mm以上、より更に好ましくは5.0mm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
式(3a)の右辺は、好ましくは10.0、より好ましくは9.0、更に好ましくは8.0である。Ttの下限は、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは4.0mm以上、更に好ましくは5.0mm以上、より更に好ましくは7.0mm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0164】
クリンチエイペックスがタイヤ最大幅位置を含む場合、下記式(2b)及び/又は下記式(3b)を満たすことが望ましい。
(2b)Tw<10.0
(式中、Twは、タイヤ最大幅位置におけるクリンチエイペックスの厚み(mm)である。)
(3b)Tt<12.0
(式中、Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式(2b)の右辺は、好ましくは9.0、より好ましくは8.0、更に好ましくは6.0である。Twの下限は、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上、更に好ましくは4.0mm以上、より更に好ましくは4.5mm以上、より更に好ましくは5.0mm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
式(3b)の右辺は、好ましくは10.0、より好ましくは9.0、更に好ましくは8.0である。Ttの下限は、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは4.0mm以上、更に好ましくは5.0mm以上、より更に好ましくは5.5mm以上、より更に好ましくは7.0mm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0165】
本発明のタイヤは、下記式を満たすことが望ましい。
AE/Tw>1.0
(AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.3、より好ましくは1.4、更に好ましくは1.5である。AE/Twの上限は、好ましくは3.5以下、より好ましくは2.8以下、更に好ましくは2.6以下、より更に好ましくは2.5以下、より更に好ましくは2.4以下、より更に好ましくは2.3以下、より更に好ましくは2.1以下、より更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.9以下、より更に好ましくは1.8以下、より更に好ましくは1.7以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0166】
タイヤ部材がサイドウォールの場合、下記式を満たすことが望ましい。
AE/Tw>1.0
(AEは、サイドウォールのアセトン抽出量(質量%)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.3、より好ましくは1.4、更に好ましくは1.5である。AE/Twの上限は、好ましくは2.6以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.3以下、より更に好ましくは2.1以下、より更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.9以下、より更に好ましくは1.8以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0167】
タイヤ部材がクリンチエイペックスの場合、下記式を満たすことが望ましい。
AE/Tw>1.3
(AEは、クリンチエイペックスのアセトン抽出量(質量%)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.5、より好ましくは1.7、更に好ましくは1.8である。AE/Twの上限は、好ましくは3.5以下、より好ましくは2.8以下、更に好ましくは2.5以下、より更に好ましくは2.4以下、より更に好ましくは2.3以下、より更に好ましくは2.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0168】
タイヤ部材がベーストレッドの場合、下記式を満たすことが望ましい。
AE/Tw>1.1
(AEは、ベーストレッドのアセトン抽出量(質量%)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.5、より好ましくは1.6、更に好ましくは1.7である。AE/Twの上限は、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.4以下、更に好ましくは2.3以下、より更に好ましくは2.2以下、より更に好ましくは2.1以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0169】
本発明のタイヤは、下記式を満たすことが望ましい。
AE/Tt>0.5
(AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは0.8、より好ましくは1.0、更に好ましくは1.1である。AE/Ttの上限は、好ましくは2.4以下、より好ましくは2.1以下、更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.8以下、より更に好ましくは1.6以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.4以下、より更に好ましくは1.3以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0170】
タイヤ部材がサイドウォールの場合、下記式を満たすことが望ましい。
AE/Tt>0.5
(AEは、サイドウォールのアセトン抽出量(質量%)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは0.8、より好ましくは1.0、更に好ましくは1.1である。AE/Ttの上限は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.6以下、更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.4以下、より更に好ましくは1.3以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0171】
タイヤ部材がクリンチエイペックスの場合、下記式を満たすことが望ましい。
AE/Tt>0.8
(AEは、クリンチエイペックスのアセトン抽出量(質量%)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.1、より好ましくは1.3、更に好ましくは1.4である。AE/Ttの上限は、好ましくは2.4以下、より好ましくは2.3以下、更に好ましくは2.1以下、より更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.8以下、より更に好ましくは1.7以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0172】
タイヤ部材がベーストレッドの場合、下記式を満たすことが望ましい。
AE/Tt>0.6
(AEは、ベーストレッドのアセトン抽出量(質量%)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは0.9、より好ましくは1.1、更に好ましくは1.2である。AE/Ttの上限は、好ましくは2.1以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.6以下、より更に好ましくは1.5以下、より更に好ましくは1.4以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0173】
本発明のタイヤは、下記式を満たすことが望ましい。
Pc/Tw>1.5
(Pcは、タイヤ部材を構成するタイヤ部材用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.7、より好ましくは1.8、更に好ましくは1.9である。Pc/Twの上限は、好ましくは6.3以下、より好ましくは6.0以下、更に好ましくは5.0以下、より更に好ましくは3.0以下、より更に好ましくは2.6以下、より更に好ましくは2.5以下、より更に好ましくは2.3以下、より更に好ましくは2.2以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0174】
タイヤ部材がサイドウォールの場合、下記式を満たすことが望ましい。
Pc/Tw>1.5
(Pcは、サイドウォールを構成するサイドウォール用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.7、より好ましくは1.8、更に好ましくは1.9である。Pc/Twの上限は、好ましくは6.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下、より更に好ましくは2.3以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0175】
タイヤ部材がクリンチエイペックスの場合、下記式を満たすことが望ましい。
Pc/Tw>1.5
(Pcは、クリンチエイペックスを構成するクリンチエイペックス用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.7、より好ましくは1.8、更に好ましくは1.9である。Pc/Twの上限は、好ましくは6.3以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは3.0以下、より更に好ましくは2.6以下、より更に好ましくは2.5以下、より更に好ましくは2.3以下、より更に好ましくは2.2以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0176】
タイヤ部材がベーストレッドの場合、下記式を満たすことが望ましい。
Pc/Tw>1.5
(Pcは、ベーストレッドを構成するベーストレッド用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.7、より好ましくは1.8、更に好ましくは1.9である。Pc/Twの上限は、好ましくは6.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下、より更に好ましくは2.3以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0177】
本発明のタイヤは、下記式を満たすことが望ましい。
Pc/Tt>0.9
(Pcは、タイヤ部材を構成するタイヤ部材用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.1、より好ましくは1.2、更に好ましくは1.3である。Pc/Ttの上限は、好ましくは4.3以下、より好ましくは3.6以下、更に好ましくは2.5以下、より更に好ましくは2.3以下、より更に好ましくは2.1以下、より更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.8以下、より更に好ましくは1.6以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0178】
タイヤ部材がサイドウォールの場合、下記式を満たすことが望ましい。
Pc/Tt>0.9
(Pcは、サイドウォールを構成するサイドウォール用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.1、より好ましくは1.2、更に好ましくは1.3である。Pc/Ttの上限は、好ましくは4.3以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.8以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0179】
タイヤ部材がクリンチエイペックスの場合、下記式を満たすことが望ましい。
Pc/Tt>0.9
(Pcは、クリンチエイペックスを構成するクリンチエイペックス用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.1、より好ましくは1.2、更に好ましくは1.3である。Pc/Ttの上限は、好ましくは3.6以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.3以下、より更に好ましくは2.1以下、より更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.8以下、より更に好ましくは1.6以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0180】
タイヤ部材がベーストレッドの場合、下記式を満たすことが望ましい。
Pc/Tt>0.9
(Pcは、ベーストレッドを構成するベーストレッド用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.1、より好ましくは1.2、更に好ましくは1.3である。Pc/Ttの上限は、好ましくは4.3以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下、より更に好ましくは1.8以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0181】
本発明のタイヤは、下記式を満たすことが望ましい。
Fc/Tw>6.0
(Fcは、タイヤ部材を構成するタイヤ部材用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは7.0、より好ましくは8.0、更に好ましくは9.0である。Fc/Twの上限は、好ましくは20.0以下、より好ましくは17.0以下、更に好ましくは16.0以下、より更に好ましくは15.0以下、より更に好ましくは13.8以下、より更に好ましくは13.0以下、より更に好ましくは12.2以下、より更に好ましくは12.0以下、より更に好ましくは11.0以下、より更に好ましくは10.8以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0182】
タイヤ部材がサイドウォールの場合、下記式を満たすことが望ましい。
Fc/Tw>7.0
(Fcは、サイドウォールを構成するサイドウォール用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは8.0、より好ましくは9.0、更に好ましくは10.0である。Fc/Twの上限は、好ましくは18.0以下、より好ましくは15.0以下、更に好ましくは13.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0183】
タイヤ部材がクリンチエイペックスの場合、下記式を満たすことが望ましい。
Fc/Tw>8.0
(Fcは、クリンチエイペックスを構成するクリンチエイペックス用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは10.0、より好ましくは11.0、更に好ましくは12.0である。Fc/Twの上限は、好ましくは18.0以下、より好ましくは16.0以下、更に好ましくは15.0以下、より更に好ましくは14.0以下、より更に好ましくは13.8以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0184】
タイヤ部材がベーストレッドの場合、下記式を満たすことが望ましい。
Fc/Tw>6.0
(Fcは、ベーストレッドを構成するベーストレッド用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは7.0、より好ましくは8.0、更に好ましくは9.0である。Fc/Twの上限は、好ましくは17.0以下、より好ましくは15.0以下、更に好ましくは14.0以下、より更に好ましくは12.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0185】
本発明のタイヤは、下記式を満たすことが望ましい。
Fc/Tt>3.2
(Fcは、タイヤ部材を構成するタイヤ部材用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは5.0、より好ましくは6.0、更に好ましくは6.5である。Fc/Ttの上限は、好ましくは17.0以下、より好ましくは12.9以下、更に好ましくは12.1以下、より更に好ましくは12.0以下、より更に好ましくは11.0以下、より更に好ましくは10.7以下、より更に好ましくは10.0以下、より更に好ましくは9.3以下、より更に好ましくは8.6以下、より更に好ましくは8.1以下、より更に好ましくは7.9以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0186】
タイヤ部材がサイドウォールの場合、下記式を満たすことが望ましい。
Fc/Tt>3.2
(Fcは、サイドウォールを構成するサイドウォール用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは5.0、より好ましくは7.0、更に好ましくは7.5である。Fc/Ttの上限は、好ましくは15.0以下、より好ましくは10.7以下、更に好ましくは10.0以下、より更に好ましくは9.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0187】
タイヤ部材がクリンチエイペックスの場合、下記式を満たすことが望ましい。
Fc/Tt>3.2
(Fcは、クリンチエイペックスを構成するクリンチエイペックス用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは6.5、より好ましくは8.4、更に好ましくは8.9である。Fc/Ttの上限は、好ましくは16.4以下、より好ましくは12.9以下、更に好ましくは12.1以下、より更に好ましくは11.4以下、より更に好ましくは10.7以下、より更に好ましくは10.4以下、より更に好ましくは10.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0188】
タイヤ部材がベーストレッドの場合、下記式を満たすことが望ましい。
Fc/Tt>3.2
(Fcは、ベーストレッドを構成するベーストレッド用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは4.2、より好ましくは6.2、更に好ましくは6.5である。Fc/Ttの上限は、好ましくは14.2以下、より好ましくは10.7以下、更に好ましくは9.2以下、より更に好ましくは8.2以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0189】
本発明のタイヤは、下記式を満たすことが望ましい。
D<11.5
(式中、Dは、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さ(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは11.0、より好ましくは9.0、更に好ましくは8.0である。Dの下限は、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは4.0mm以上、更に好ましくは5.0mm以上、より更に好ましくは5.5mm以上、より更に好ましくは6.5mm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0190】
なお、本明細書において、周方向溝の溝深さDとは、トレッド最表面の接地面を形成する面を延長した面の法線に沿って計測され、該接地面を形成する面を延長した面から最深の溝底までの距離を意味し、備えられた周方向溝の溝深さのうち、最大の距離を指す。
【0191】
本発明のタイヤは、下記式を満たすことが望ましい。
AE/D>0.7
(AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。Dは、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さ(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.1、より好ましくは1.2、更に好ましくは1.7、特に好ましくは2.0である。AE/Dの上限は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.8以下、更に好ましくは2.6以下、より更に好ましくは2.5以下、より更に好ましくは2.4以下、より更に好ましくは2.3以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0192】
本発明のタイヤは、下記式を満たすことが望ましい。
Pc/D>0.5
(Pcは、タイヤ部材を構成するタイヤ部材用ゴム組成物に含まれるゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Dは、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さ(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは1.0、より好ましくは1.2、更に好ましくは1.7、特に好ましくは1.9である。Pc/Dの上限は、好ましくは6.0以下、より好ましくは3.1以下、更に好ましくは3.0以下、より更に好ましくは2.8以下、より更に好ましくは2.6以下、より更に好ましくは2.3以下、より更に好ましくは2.2以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0193】
本発明のタイヤは、下記式を満たすことが望ましい。
Fc/D>3.5
(Fcは、タイヤ部材を構成するタイヤ部材用ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Dは、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さ(mm)である。)
式の右辺は、好ましくは4.8、より好ましくは7.5、更に好ましくは9.5、特に好ましくは10.0である。Fc/Dの上限は、好ましくは15.0以下、より好ましくは14.0以下、更に好ましくは13.0以下、より更に好ましくは12.5以下、より更に好ましくは11.3以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0194】
以下、図を用いて本発明のタイヤの一例を説明するが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。
【0195】
図1は、サイドウォールがタイヤ最大幅位置Mを含む表面ゴム層を構成するタイヤの一例を示している。
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。タイヤ2は、左右対称である。トレッド部4は、キャップ層30及びベース層28(ベーストレッドともいう)を備えている。
【0196】
なお、
図1では、キャップ層30及びベース層28からなる2層構造トレッド部4の例が示されているが、単層構造トレッド、3層以上の構造を有するトレッドでもよい。
【0197】
タイヤ2において、それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側部分は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側部分は、クリンチ10(クリンチエイペックスともいう)と接合されている。このサイドウォール6は、カーカス14の損傷を防止できる。また、サイドウォール6とトレッド4の端部との接合において、サイドウォール6のタイヤ半径方向外側端部がトレッド部4のタイヤ半径方向外側に覆いかぶさる形で接合されていても良い。
【0198】
図1のタイヤ2は、ベース層28及びサイドウォール6の両方のタイヤ部材が前記タイヤ部材用ゴム組成物で構成されている。
【0199】
図1のそれぞれのウィング8は、トレッド部4とサイドウォール6との間に位置している。ウィング8は、トレッド部4及びサイドウォール6のそれぞれと接合している。
【0200】
それぞれのクリンチ10は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ10は、軸方向において、ビード12及びカーカス14よりも外側に位置している。
【0201】
それぞれのビード12は、クリンチ10の軸方向内側に位置している。ビード12は、コア32と、このコア32から半径方向外向きに延びるエイペックス34とを備えている。コア32はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含むことが望ましい。エイペックス34は、半径方向外向きに先細りである。
【0202】
カーカス14は、カーカスプライ36を備えている。このタイヤ2では、カーカス14は1枚のカーカスプライ36からなるが、2枚以上で構成されてもよい。
【0203】
このタイヤ2では、カーカスプライ36は、両側のビード12の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。カーカスプライ36は、それぞれのコア32の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ36には、主部36aと一対の折り返し部36bとが形成されている。すなわち、カーカスプライ36は、主部36aと一対の折り返し部36bとを備えている。
【0204】
図示されていないが、カーカスプライ36は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなることが望ましい。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°が好適である。換言すれば、このカーカス14はラジアル構造を有することが好ましい。
【0205】
図1のベルト層16は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト層16は、カーカス14と積層されている。ベルト層16は、カーカス14を補強する。ベルト層16は、内側層38及び外側層40からなる。
図1から明らかなように、軸方向において、内側層38の幅は外側層40の幅よりも若干大きいことが望ましい。このタイヤ2では、ベルト層16の軸方向幅はタイヤ2の断面幅の0.6倍以上が好ましく、0.9倍以下が好ましい。
なお、「タイヤの断面幅」は、タイヤを正規リムに組付け、内圧を大気圧とした状態のタイヤにおいて、タイヤ側面の模様や文字など全てを含むサイドウォール間の直線距離(タイヤの総幅)からタイヤの側面の模様、文字などを除いた幅である。
【0206】
図示されていないが、内側層38及び外側層40のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなることが望ましい。言い換えれば、ベルト層16は並列された多数のコードを含んでいる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層38のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層40のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。
【0207】
図1のタイヤ2では、ベース層28及びサイドウォール6の両方のタイヤ部材が前記タイヤ部材用ゴム組成物で構成されている。ベース層28及びサイドウォール6は、前記式(1)「AE>5.0」を満たすことが望ましい。
【0208】
図1のバンド18は、ベルト層16の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド18はベルト層16の幅と同等の幅を有している。このバンド18が、このベルト層16の幅よりも大きな幅を有していてもよい。
【0209】
図示されていないが、バンド18は、コードとトッピングゴムとからなることが望ましい。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド18は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下であることが好ましい。このコードによりベルト層16が拘束されるので、ベルト層16のリフティングが抑制される。
【0210】
図1のベルト層16及びバンド18は、補強層を構成している。ベルト層16のみから、補強層が構成されてもよい。
【0211】
図1のタイヤ2は、サイドウォール6表面上にタイヤ最大幅位置Mを有している。
図1の場合、タイヤ最大幅位置Mの表面ゴム層を形成するサイドウォール6の厚みTwは、タイヤの半径方向断面において、タイヤ最大幅位置Mのサイドウォール6のタイヤ最表面から、カーカス14のタイヤ最表面側の界面までのタイヤ軸方向の直線距離を指す。
【0212】
図2は、
図1のトレッド部4付近の拡大図である。
図2のタイヤは、トレッド表面24(
図2はタイヤ赤道面上(CL上)に溝26を有するタイヤ2である。この場合、トレッド部の厚み(Tt)は、タイヤの半径方向断面において、溝26のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線で形成される面におけるタイヤ赤道面上の厚みで、タイヤ赤道面上においてトレッド表面24の法線に沿って計測される値であり、具体的には、タイヤ赤道面上に溝26の端部間を繋いだ直線からバンド18のタイヤ最表面側の界面までのタイヤの半径方向の直線距離を指す。
【0213】
そして、
図1のタイヤ2は、ベース層28及びサイドウォール6を構成するタイヤ部材用ゴム組成物のアセトン抽出量AE、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量Pc及び充填剤の含有量Fc、タイヤ最大幅位置におけるサイドウォール6の厚みTw、トレッド部の厚みTtが、前述の式を満たすことが望ましい。
【0214】
インナーライナー20は、カーカス14の内側に位置している。インナーライナー20は、カーカス14の内面に接合されている。インナーライナー20の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0215】
それぞれのチェーファー22は、ビード12の近傍に位置している。この実施形態では、チェーファー22は布とこの布に含浸したゴムとからなることが望ましい。このチェーファー22が、クリンチ10と一体とされてもよい。
【0216】
このタイヤ2では、トレッド4は溝26として主溝42を備えている。
図1に示されているように、このトレッド4には、複数本、詳細には、3本の主溝42が刻まれている。これらの主溝42は、軸方向に間隔をあけて配置されている。このトレッド4には、3本の主溝42が刻まれることにより、周方向に延在する4本のリブ44が形成されている。つまり、リブ44とリブ44との間が主溝42である。
【0217】
それぞれの主溝42は、周方向に延在している。主溝42は、周方向に途切れることなく連続している。主溝42は、例えば雨天時において、路面とタイヤ2との間に存在する水の排水を促す。このため、路面が濡れていても、タイヤ2は路面と十分に接触することができる。
【0218】
図2のDは、トレッド4に形成された周方向の主溝42の主溝深さを示している。
そして、この主溝深さD、前記ベース層28及びサイドウォール6を構成するタイヤ部材用ゴム組成物のアセトン抽出量AE、Pc及びFcが、前述の式を満たすことが望ましい。
【0219】
図3は、クリンチエイペックスがタイヤ最大幅位置Mを含む表面ゴム層を構成するタイヤの一例を示している。
図3において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。トレッド部4は、キャップ層30及びベース層28(ベーストレッドともいう)を備えている。
【0220】
図3のタイヤ2で
図1の形態と異なる点は、クリンチ10(クリンチエイペックスともいう)がタイヤ最大幅位置Mにおける表面ゴム層を構成している点、ベース層28及びクリンチ10の両方のタイヤ部材が前記タイヤ部材用ゴム組成物で構成されている点である。
【0221】
図3のタイヤ2では、ベース層28及びクリンチ10は、前記式(1)「AE>5.0」を満たすことが望ましい。
【0222】
図3のタイヤ2は、クリンチ10表面上にタイヤ最大幅位置Mを有している。
図3の場合、タイヤ最大幅位置Mの表面ゴム層を形成するクリンチ10の厚みTwは、タイヤの半径方向断面において、タイヤ最大幅位置Mのクリンチ10のタイヤ最表面から、カーカス14のタイヤ最表面側の界面までのタイヤ軸方向の直線距離を指す。
【0223】
図2は、
図3のトレッド部4付近の拡大図の模式図にも該当するものであり、
図3のタイヤにおいても、トレッド部の厚み(Tt)、周方向の主溝42の主溝深さ(D)は、同様に測定される。
【0224】
そして、
図3のタイヤ2は、ベース層28及びクリンチ10を構成するタイヤ部材用ゴム組成物のアセトン抽出量AE、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量Pc及び充填剤の含有量Fc、タイヤ最大幅位置におけるクリンチ10の厚みTw、トレッド部の厚みTtが、前述の式を満たすことが望ましい。
【0225】
また、トレッド4に形成された周方向の主溝42の主溝深さD、前記ベース層28及びクリンチ10を構成するタイヤ部材用ゴム組成物のアセトン抽出量AE、Pc及びFcが、前述の式を満たすことが望ましい。
【実施例0226】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。
【0227】
以下の方法で、変性水素添加スチレンブタジエン共重合体を製造し、評価を行う。結果を表1に示す。
【0228】
<共重合体の評価方法>
(重量平均分子量)
重合体を試料として、下記の具体的な測定条件に従い、ポリスチレン系ゲルを充填剤とするカラムを3本連結したGPC測定装置(東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」)を使用して、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いてクロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用して得られる検量線に基づいて、重量平均分子量(Mw)を求める。
【0229】
[具体的な測定条件]
GPC測定装置:東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」
溶離液:5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF(テトラヒドロフラン)
ガードカラム:東ソー社製の「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」
カラム:東ソー社製の「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続する。
オーブン温度:40℃
流量 :0.35mL/分
サンプル:測定用の試料10mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液10μLをGPC測定装置に注入する。
【0230】
(結合スチレン量)
重合体を試料として、試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとする。
スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料である重合体100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定する(測定装置:島津製作所社製の分光光度計「UV-2450」)。
【0231】
(ブタジエン部分のミクロ構造(1,2-ビニル結合量))
重合体を試料として、試料50mgを、10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとする。
溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2-ビニル結合量(mol%)を求める(測定装置:日本分光社製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT-IR230」)。
なお、「ビニル単位およびブチレン単位の含有量」の水添する前の状態が、「1,2-ビニル結合量」に相当し、数値は同じになる。
よって、表1中の「ビニル単位およびブチレン単位の含有量」は、水添前の1,2-ビニル結合量に相当する。
【0232】
(重合体の水添率、重合体のエチレン構造の含有量)
試料として、重合体を用いて、1H-NMR測定によって、重合体の水添率、エチレン構造の含有量を測定する。1H-NMR測定の条件を以下に記す。
<測定条件>
測定機器:JNM-LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
測定サンプル:ゴム状重合体
サンプル濃度 :50mg/mL
観測周波数 :400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数:64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
【0233】
(重合体のヨウ素価)
ヨウ素価は、下記により測定する。
試料をシクロヘキサンに溶かした後、一塩化ヨウ素溶液を加え、暗所に放置後、ヨウ化カリウム及び水を加え、チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、溶液の色がうすい黄色になったとき、でんぷん溶液を加え、青が消えるまで滴定することにより、ヨウ素価を求める。
【0234】
<変性水素添加スチレンブタジエン共重合体の製造>
(水素添加触媒の調製)
以下の製造例で変性水素添加スチレンブタジエン共重合体を調製する際に用いる水素添加触媒を下記の方法により調製する。
窒素置換の反応容器に、乾燥及び精製のシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ、水素添加触媒を得る。
【0235】
(製造例1)
内容積40Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去する。1,3-ブタジエンを2,700g、スチレンを300g、シクロヘキサンを21,000g、極性物質として、テトラヒドロフラン(THF)を30mmolと2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパンを11.6mmol、反応器へ入れ、反応器内温を43℃に保持する。
重合開始剤として、n-ブチルリチウム68.0mmolを前記反応器に供給する。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の反応温度がピーク到達後から2分後に、反応器に、変性剤としてビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズを13.6mmol添加し、20分間、カップリング反応を実施する。
この重合体溶液に、反応停止剤としてメタノールを13.3mmolを添加し、水素添加前のスチレンブタジエン共重合体溶液を一部分析用に抜き出し、乾燥機で脱溶剤し、水素添加前のスチレンブタジエン共重合体を得る。
前記水素添加前のスチレンブタジエン共重合体溶液に、前記水素添加触媒を、水素添加前のスチレンブタジエン共重合体100質量部当たり、チタン基準で70ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を40分間行い、変性水素添加スチレンブタジエン共重合体1(変性水素添加SBR1)を得る。
【0236】
(製造例2)
ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズを13.6mmol添加する代わりに、2,2-ジメトキシ-1-(3-卜リメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン13.6mmol添加する以外は、製造例1と同様にして、変性水素添加スチレンブタジエン共重合体2(変性水素添加SBR2)を得る。
【0237】
(製造例3)
ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズを13.6mmol添加する代わりに、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズを6.8mmol及び2,2-ジメトキシ-1-(3-卜リメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン6.8mmol添加する以外は、製造例1と同様にして、変性水素添加スチレンブタジエン共重合体3(変性水素添加SBR3)を得る。
【0238】
【0239】
以下、実施例及び比較例で使用する各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
変性水素添加SBR1~3:上記製造例1~3
SBR:住友化学工業(株)製のSBR1502(スチレン含有量:23.5質量%)
BR:宇部興産(株)製のUBEPOL BR150B(シス含量:98質量%)
カーボンブラック1:キャボットジャパン(株)製のN550(N2SA:41m2/g)
カーボンブラック2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN351(N2SA:71m2/g)
シリカ:デグッサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
オイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスNH-70S(アロマ系プロセスオイル)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
老化防止剤1:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
老化防止剤2:大内新興化学工業(株)製のノクラックRD(ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン))
ステアリン酸:日油(株)製の椿
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0240】
<試験用タイヤの製造>
(サイドウォール配合)
表2の配合に従い、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を混練し混練物を得る。
前記混練物に、表2の配合に従い、硫黄及び加硫促進剤を投入して70℃で8分間混練し、未加硫ゴム組成物を得る。
前記未加硫ゴム組成物をサイドウォールの形状に押出し成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で20分間プレス加硫し、
図1、2に示す試験用タイヤ(サイズ195/65R15、仕様:表2)を得る。
【0241】
(クリンチエイペックス配合)
表3の配合に従い、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を混練し混練物を得る。
前記混練物に、表3の配合に従い、硫黄及び加硫促進剤を投入して70℃で8分間混練し、未加硫ゴム組成物を得る。
前記未加硫ゴム組成物をクリンチの形状に押出し成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で20分間プレス加硫し、
図3に示す試験用タイヤ(サイズ195/65R15、仕様:表3)を得る。
【0242】
(ベーストレッド配合)
表4の配合に従い、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を混練し混練物を得る。
前記混練物に、表4の配合に従い、硫黄及び加硫促進剤を投入して70℃で8分間混練し、未加硫ゴム組成物を得る。
前記未加硫ゴム組成物をベース層の形状に押出し成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で20分間プレス加硫し、
図1、2に示す試験用タイヤ(サイズ195/65R15、仕様:表4)を得る。
【0243】
各表に従って配合を変化させた組成物により得られる試験用タイヤを想定して、下記評価方法に基づいて算出した結果を各表に示す。
なお、基準比較例は、以下とする。
表2:比較例1-1
表3:比較例2-1
表4:比較例3-1
【0244】
<アセトン抽出量(AE)>
試験用タイヤから切り出すゴム試験片(表2はサイドウォール、表3はクリンチ、表4はベーストレッドからゴム試験片を採取)について、JIS K 6229:2015に準拠したアセトン抽出量の測定方法により、該試験片中に含まれるアセトンにより抽出される物質の量(質量%)を測定する。
アセトン抽出成分量(質量%)=(抽出前のサンプルの質量-抽出後のサンプルの質量)/抽出前のサンプルの質量×100
【0245】
<乗り心地保持性能>
試験用タイヤを15x6JJのアルミホイールリムにリム組みし、かつ内圧210kPa(前後同一)を充填して、排気量2000ccの国産FF車の4輪に装着し、30000km走行する。走行後、テストコース内をドライバー1名乗車で走行して官能評価する。基準比較例を100とする指数で評価する。数値が大きいほど、長期間経過後も乗り心地性能が優れている。
【0246】
【0247】
【0248】
【0249】
本発明(1)はタイヤ部材を備えるタイヤであって、
前記タイヤ部材が、エチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体と、イソプレン系ゴム及び/又はブタジエンゴムとを含むゴム成分、並びに、カーボンブラックを含み、
下記式(1)と、下記式(2)及び/又は下記式(3)とを満たすタイヤである。
(1)AE>5.0
(式中、AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。)
(2)Tw<12.0
(式中、Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
(3)Tt<12.0
(式中、Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
【0250】
本発明(2)は下記式を満たす本発明(1)記載のタイヤである。
AE>9.0
(式中、AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。)
【0251】
本発明(3)は下記式を満たす本発明(1)又は(2)記載のタイヤである。
Tw<9.0
(式中、Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
【0252】
本発明(4)は下記式を満たす本発明(1)~(3)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
Tt<9.0
(式中、Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
【0253】
本発明(5)はタイヤ部材が、サイドウォール、クリンチエイペックス及びベーストレッドからなる群より選択される少なくとも1種である本発明(1)~(4)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0254】
本発明(6)は下記式を満たす本発明(1)~(5)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
AE/Tw>1.5
(AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
【0255】
本発明(7)は下記式を満たす本発明(1)~(6)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
AE/Tt>1.1
(AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
【0256】
本発明(8)は下記式を満たす本発明(1)~(7)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
Pc/Tw>1.9
(Pcは、タイヤ部材のゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
【0257】
本発明(9)は下記式を満たす本発明(1)~(8)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
Pc/Tt>1.3
(Pcは、タイヤ部材のゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
【0258】
本発明(10)は下記式を満たす本発明(1)~(9)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
Fc/Tw>8.0
(Fcは、タイヤ部材のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Twは、タイヤ最大幅位置における表面ゴム層の厚み(mm)である。)
【0259】
本発明(11)は下記式を満たす本発明(1)~(10)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
Fc/Tt>3.2
(Fcは、タイヤ部材のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Ttは、トレッド部の厚み(mm)である。)
【0260】
本発明(12)は下記式を満たす本発明(1)~(11)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
D<11.0
(式中、Dは、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さ(mm)である。)
【0261】
本発明(13)は下記式を満たす本発明(1)~(12)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
AE/D>1.1
(AEは、タイヤ部材のアセトン抽出量(質量%)である。Dは、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さ(mm)である。)
【0262】
本発明(14)は下記式を満たす本発明(1)~(13)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
Pc/D>1.0
(Pcは、タイヤ部材のゴム成分100質量%中のエチレン単位及びスチレン単位を有し、かつカーボンブラック及び/又はシリカと反応可能な変性基を持つ共重合体の含有量(質量%)である。Dは、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さ(mm)である。)
【0263】
本発明(15)は下記式を満たす本発明(1)~(14)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
Fc/D>3.5
(Fcは、タイヤ部材のゴム成分100質量部に対する充填剤の含有量(質量部)である。Dは、トレッド部に形成された周方向溝の溝深さ(mm)である。)