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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068127
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】光照射装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023180904
(22)【出願日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2022177223
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000114891
【氏名又は名称】ヤマト科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】菊地 長保
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA10
4C082PE10
4C082PG12
4C082PG15
4C082RA02
(57)【要約】
【課題】非常に簡易な手段によって、常に、対象物に対して、同一の条件により光が照射されるように容易に調整することが可能であり、再現性に優れたものとする。
【解決手段】生体ORの所定の部位に特定の波長のLED光ILを照射する生体用照射装置1であって、生体ORに照射される、特定の波長のLED光ILを発生させる光源部15と、着脱自在に設けられ、位置決めのための治具21,22,23を用いて、予め光源部15からの特定の波長のLED光ILを検出する光検出器33と、光検出器33の検出結果に基づいて、照射時に光源部15から発生される特定の波長のLED光ILが常に同一の条件となるように制御する制御装置31と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に特定の波長の光を照射する光照射装置であって、
前記対象物に照射される、前記特定の波長の光を発生させる光源部と、
着脱自在に設けられ、位置決めのための治具を用いて、予め前記光源部からの前記特定の波長の光を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、照射時に前記光源部から発生される前記特定の波長の光が常に同一の条件となるように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記光源部を保持する保持部をさらに備え、
前記検出部は、前記保持部に対して、アダプタ部を介して着脱される受光センサを有し、
前記治具は、
前記アダプタ部と、
前記保持部に対して、前記アダプタ部を介して着脱される位置決め部材と、
を含み、
前記位置決め部材を用いて、前記光源部から前記対象物に照射される前記特定の波長の光と同じ距離および同じ位置となるように位置決めされた前記受光センサにより、前記光源部から照射される前記特定の波長の光の強度を検出するものであることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記光源部を保持する保持部をさらに備え、
前記保持部に対して、着脱自在に設けられた着脱部材と、
前記着脱部材に伸縮および回転可能に設けられた、少なくとも一対のアーム部と、
を含み、
前記光源部から前記対象物に照射される前記特定の波長の光が、前記受光センサによる前記特定の波長の光の強度の検出時と同じ距離および同じ位置・面積となるように、前記受光センサに対して、前記光源部から照射される前記特定の波長の光の照射の範囲の最外部の位置と距離とを、前記アーム部を用いて検出することを特徴とする請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記光源部から前記対象物に照射される前記特定の波長の光の、その照射の範囲の最外部が前記検出部よりも広い面積となる場合、
前記検出部は、前記特定の波長の光の照射の範囲の最外部よりも広い面積を有し、かつ、前記受光センサの受光面と同一の高さを有して、前記受光センサを支持するステージ部材を備えることを特徴とする請求項3に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記対象物が生体であって、
前記生体の所定の部位への照射に用いられることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記光源部は、LED素子であって、前記対象物に付着される色素の吸収極大に近似した波長の光を発生することを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記対象物が収容される複数のウェルがマトリクス状に配置されたマイクロプレートと、
前記マイクロプレートの前記複数のウェルにそれぞれ対応して複数の貫通孔が設けられた遮光部材と、
をさらに備え、
前記光源部は、前記遮光部材を介して、前記マイクロプレートの前記複数のウェルにそれぞれ対応して配置された複数の光源により構成され、
前記検出部は、
前記マイクロプレートの前記複数のウェルに対して、個別にアダプタ部を介して着脱される受光センサを有し、
前記治具は、
前記アダプタ部と、
前記アダプタ部に設けられ、前記受光センサが対応するウェルに隣接するウェルに対応するように配置された複数の係合部からなる位置決め機構と、
を含み、
前記位置決め機構によって位置決めされ、前記遮光部材によって隣接するウェルからの漏れ光が遮光された状態において、前記受光センサが位置するウェルに対応する前記光源からの光の強度を検出することを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記遮光部材と前記複数の光源との間に反射部材を、さらに備えることを特徴とする請求項7に記載の光照射装置。
【請求項9】
前記対象物が細胞、細胞片、または、組織片のいずれかであって、
前記細胞、細胞片、または、組織片への照射に用いられることを特徴とする請求項7に記載の光照射装置。
【請求項10】
前記複数の光源は、複数のLED素子であって、それぞれ、前記対象物に付着される色素の吸収極大に近似した波長の光を発生することを特徴とする請求項7に記載の光照射装置。
【請求項11】
前記複数の光源は、前記受光センサの出力に基づいて、発生される光の強度が均一となるように制御されることを特徴とする請求項7に記載の光照射装置。
【請求項12】
対象物に特定の波長の光を照射する光照射装置の制御方法であって、
前記対象物に照射される、前記特定の波長の光を光源部より発生させる工程と、
着脱自在に設けられ、位置決めのための治具を用いて、予め前記光源部からの前記特定の波長の光を検出部により検出する工程と、
前記検出部の検出結果に基づいて、照射時に前記光源部から発生される前記特定の波長の光が常に同一の条件となるように制御部により制御する工程と、
を備えたことを特徴とする光照射装置の制御方法。
【請求項13】
マトリクス状に配置された複数のウェルのうち、照射対象のウェルの直下にのみ光源を配置し、前記照射対象のウェルへの隣接するウェルからの漏れ光の混入を抑制するようにしたことを特徴とする光照射装置。
【請求項14】
マトリクス状に配置された複数のウェルのうち、照射対象のウェルの直下の光源のみを点灯状態とするとともに、前記照射対象のウェルに隣接するウェルの光源を非点灯状態とし、前記照射対象のウェルへの隣接するウェルからの漏れ光の混入を抑制するようにしたことを特徴とする光照射装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光免疫療法によるがん(癌)の治療などに用いられる光照射装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光免疫療法と称する新しいがんの治療法が開発されている。光免疫療法とは、治療の対象となるがん細胞の免疫細胞に色素を付け、この色素付きの免疫細胞を抗がん剤としてがん細胞に結合させる。そして、その吸収極大に近い波長(望ましくは、生体に対して透過率の高い波長域)の光を照射することにより、がん細胞を免疫細胞ごと破壊するものである。
【0003】
このような光免疫療法で用いられる装置(例えば、特許文献1参照)としては、動物などの生体の病変部に対して、施術ごとに、一定の照射量のレーザ光が照射されるように、同じ距離から、同じ位置に、同じ強度のレーザ光を照射するのが望ましいとされている。
【0004】
また、光線力学療法のがん細胞への効果確認に用いる光刺激を促進させるためのツールとして、ウェルプレート(vial rack)を用いた装置(APPARATUS FOR FACILITATING PHOTOCHEMICAL REACTIONS)が知られている(例えば、特許文献2参照)。これは、複数のウェルを有するウェルプレートの、各ウェルに収納された細胞ごとに、高輝度なLED(Light Emitting Diode)から一定の強度のLED光をそれぞれ照射するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-106152号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0023525号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の装置では、がん細胞に対して、常に同一の条件で光の照射が行われるようにするために、例えば、光源からの光が正確にがん細胞に照射されているかを目視やガイド光を用いて確認したり、照射する光の強度が常に一定となるように、光源からの出力を電気的な制御などによって自動的に調整したりするようになっている。
【0007】
そのため、同じ距離から、同じ位置に、同じ強度の光が常に照射されるようにするための装備(例えば、ガイド光としてレーザ光を用いた場合や測距計など)が高価であり、また、常に同じ強度の光が照射されるようにするための電気的な制御は複雑である、という課題があった。
【0008】
即ち、外光などの影響を受けやすく、特に、生体の場合には、たとえガイド光などを用いたとしても、病変部のがん細胞に対して、常に光源から同じ強度の光が、同じ距離から、同じ位置に照射されるように再現する、いわゆる再現性の確保が容易でなかった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、非常に簡易な手段によって、常に、対象物に対して、同一の条件により光が照射されるように容易に調整することが可能であり、再現性に優れた光照射装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、本発明の一態様は、対象物に特定の波長の光を照射する光照射装置であって、前記対象物に照射される、前記特定の波長の光を発生させる光源部と、着脱自在に設けられ、位置決めのための治具を用いて、予め前記光源部からの前記特定の波長の光を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて、照射時に前記光源部から発生される前記特定の波長の光が常に同一の条件となるように制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様は、対象物に特定の波長の光を照射する光照射装置の制御方法であって、前記対象物に照射される、前記特定の波長の光を光源部より発生させる工程と、着脱自在に設けられ、位置決めのための治具を用いて、予め前記光源部からの前記特定の波長の光を検出部により検出する工程と、前記検出部の検出結果に基づいて、照射時に前記光源部から発生される前記特定の波長の光が常に同一の条件となるように制御部により制御する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の態様は、マトリクス状に配置された複数のウェルのうち、照射対象のウェルの直下にのみ光源を配置し、前記照射対象のウェルへの隣接するウェルからの漏れ光の混入を抑制するようにしたことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の態様は、マトリクス状に配置された複数のウェルのうち、照射対象のウェルの直下の光源のみを点灯状態とするとともに、前記照射対象のウェルに隣接するウェルの光源を非点灯状態とし、前記照射対象のウェルへの隣接するウェルからの漏れ光の混入を抑制するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非常に簡易な手段によって、常に、対象物に対して、同一の条件により光が照射されるように容易に調整することが可能であり、再現性に優れた光照射装置および制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る光照射装置が適用される生体用照射装置の構成例を示す概略図である。
図2】生体用照射装置の照射装置本体の概略構成を示す斜視図である。
図3】生体用照射装置の光検出器の構成例を示す斜視図である。
図4】生体用照射装置のLED光の調整方法(調整時)を説明する側面図である。
図5】生体用照射装置のLED光の調整方法を説明する斜視図である。
図6】生体用照射装置のLED光の調整に用いられる調整治具を例示するもので、(a)は、アダプタ部の斜視図であり、(b)は、第1位置決め部材による光検出器の距離の調整過程を示す斜視図であり、(c)は、光検出器の距離と位置の調整過程を示す斜視図である。
図7】生体用照射装置のLED光の調整方法(照射時)を説明する側面図である。
図8】生体用照射装置のLED光の調整方法を例示するもので、(a)は、第2位置決め部材による生体との位置合わせを示す斜視図であり、(b)は、光源部の生体との位置合わせを示す斜視図であり、(c)は、生体に対する光源部からのLED光の照射例を示す斜視図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る光照射装置が適用される細胞用照射装置の構成例を示す概略図である。
図10】細胞用照射装置の照射装置本体の概略構成を示す平面図である。
図11】照射装置本体の構成例を示すもので、図10のXc-Xc線に沿う断面図である。
図12】照射装置本体を分解して示す斜視図である。
図13】照射装置本体の断面構造を示す拡大図である。
図14】照射装置本体を分解して示す断面図である。
図15】細胞用照射装置のLED光の調整方法を説明するもので、ウェルの配置パターンを例示する配置図である。
図16】細胞用照射装置のLED光の調整に用いられる光検出器の構成例を示すもので、(a)は、斜視図であり、(b)は、一部を透過して示す平面図である。
図17】細胞用照射装置のLED光の強度分布のばらつきを従来装置と対比して示すもので、(a)は、本実施形態の場合を例示するグラフであり、(b)は、従来装置の場合を例示するグラフである。
図18】細胞用照射装置の上部に材質の異なる遮光部材を設けたことによる、温度変化の対比を示すグラフである。
図19】遮光部材の性能を比較するために、ウェルプレート上の全ウェルの光の強度について、隣接するウェルごとの平均強度を求めた結果を示す図である。
図20】本発明の第3実施形態に係る生体用照射装置のLED光の調製に用いられる治具の構成例を示す概略図である。
図21】治具の具体例を示すものであって、(a)は、正面図であり、(b)は、斜視図である。
図22】治具の具体例を示すものであって、(a)は、斜視図であり、(b)は、正面図である。
図23】治具の具体例を示す斜視図である。
図24図23の一部を拡大して示す拡大図である。
図25】治具のさらに別の構成例を示す正面図である。
図26】本発明の第4実施形態に係る細胞用照射装置において、LED光を検出する光検出器の構成例を示す斜視図である。
図27】光検出器の受光センサの構成例を示すもので、(a)は、平面図であり、(b)は、側面図であり、(c)は、背面図である。
図28】光検出器のケースの構成例を示すもので、(a)は、平面図であり、(b)は、側面図であり、(c)は、背面図である。
図29】光検出器の位置決め時の操作を例示するために、ウェルプレートの一部を透過して示す平面図である。
図30】本発明のその他の実施形態として、遮光部材を用いることなく、検出対象となる特定のウェルに隣接するウェル数の違いによる、LED光の強度のばらつきを改善できるようにした場合を例に示す図である。
図31】本発明のその他の実施形態として、遮光部材を用いることなく、検出対象となる特定のウェルに隣接するウェル数の違いによる、LED光の強度のばらつきを改善できるようにした場合の測定結果を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る光照射装置および制御方法について説明する。なお、実施の形態において、図面は、発明の概要を模式的に示すものであって、実際のものとは異なるものであることに留意すべきである。
【0017】
第1実施形態
図1,2は、本発明の第1実施形態に係る光照射装置が適用される生体用照射装置1の概略構成を示すもので、図1は、生体用照射装置1の側面図であり、図2は、生体用照射装置1の照射装置本体10の斜視図である。
【0018】
ここで、本実施形態に係る生体用照射装置1は、例えば、薬効実証試験のための罹患したラットなどの動物個体に対して用いられる動物用の光照射装置である。具体的には、治療の対象物となる生体OR(organism)の病変部のがん細胞に結合させる免疫細胞に色素を付け、その色素の吸収極大に近い波長のLED光IL(irradiation light)を照射することにより、移植されたがん細胞を免疫細胞ごと破壊する光免疫療法の治療効果を確認する研究用途として用いられるものである。
【0019】
光免疫療法において、色素の吸収極大に近い波長のLED光(治療用のLED光)ILとは、望ましくは、生体ORに対して透過率の高い波長域の光である。病変部のがん細胞に対しては、施術ごとに、一定の照射量(J)のLED光が照射されるように、常に同一の条件、つまり、同じ距離から、同じ位置に、同じ強度のLED光ILを照射することが望まれる。
【0020】
即ち、治療用のLED光ILの強度は、照射の時期や対象物によらず、常に照射量が一定となるように制御(調整)する必要があり、特に、対象物が生体ORの場合には、位置や距離の再現性が重要となる。
【0021】
そこで、本実施形態に係る生体用照射装置1では、事前に、光源から発せられて光レンズ(凸型コリメートレンズ)などの集光手段で広がりが抑制されたLED光ILの強度が、別の観察系である、光パワーメーターなどの受光センサである光検出器(検出部)33を用いて検出される。そして、その検出の結果に応じて、照射(試験)時には、同じ距離から同じ位置に照射されたLED光ILの強度が同じになるように、照射量の調整が行われる。
【0022】
本実施形態に係る生体用照射装置1は、例えば図1に示すように、生体ORの病変部などの所定の部位に照射するための、特定の波長のLED光ILを発生させる光源部15を有する照射装置本体10と、照射装置本体10に対して着脱自在に設けられ、後述する位置決めのための治具を用いて、予め光源部15からの特定の波長のLED光ILを検出する光検出器33と、光検出器33の検出結果に基づいて、光源部15から生体ORに照射される特定の波長のLED光ILが常に同一の条件となるように制御する制御装置(制御部)31と、を備えている。
【0023】
光源部15は、光源としてのLED素子と、LED素子を駆動する駆動回路と、LED素子からの光を平行な光に変換する光レンズなどの集光手段と、を有している(いずれも図示していない)。
【0024】
照射装置本体10は、基台11と、円柱状の軸部12と、角柱状のアーム部13と、保持部14と、を備えている。保持部14には、光源部15が配置されるとともに、後述する、LED光ILの調整時に光検出器33が取り付けられるアダプタ部21や、試験の際の照射位置を決定するための、調整治具としての第2位置決め部材(第3治具)22を装着するための装着部16が設けられている。
【0025】
基台11は、例えば図2に示すように、矩形状の板部材であって、その表面には、長手方向(図示矢印Y方向)に沿って、複数本の溝部11aがほぼ等間隔に設けられている。基台11上には、取付部材12aを介して、軸部12が起立した状態で取り付けられている。
【0026】
軸部12は、基台11の溝部11aに係合されるとともに、例えば、取付部材12aに開孔された長孔12cに挿通されたネジなどの固定部材12bを調節することによって、溝部11aに沿って、基台11の長手方向に移動自在とされている。また、軸部12は、基台11の短手方向(図示矢印X方向)に対して、長孔12cの分だけ移動可能とされている。
【0027】
軸部12には、支持部材13aを介して、保持部14が設けられるアーム部13が支持されている。
【0028】
支持部材13aは、例えば、円柱を前後の水平方向(図示矢印X方向)に配した状態とされ、その一端(奥)側には、上下の垂直方向(図示矢印Z方向)に開孔された丸孔13cを介して、軸部12が挿通されている。支持部材13aの他端(手前)側には、左右の水平方向(図示矢印Y方向)に開孔された角孔13dを介して、アーム部13が挿通されている。
【0029】
また、支持部材13aには、アーム部13の軸方向(図示矢印Y方向)に沿って光源部15の水平方向の位置を変えるためのツマミ部13bと、軸部12の軸方向(図示矢印Z方向)に沿って光源部15の垂直方向の位置を変えるためのツマミ部13eと、が設けられている。
【0030】
なお、光源部15は、ツマミ部13eによって、軸部12を中心軸とする水平方向(図示矢印W方向)の円周上の位置を変えることが可能とされている。また、軸部12には、光源部15の垂直方向の位置を変える際の、支持部材13aなどの落下を防止するための落下防止用リング(図示省略)が設けられている。
【0031】
アーム部13には、支持部材13a側を基端側とする、その先端側に、保持部14が設けられている。保持部14は、アーム部13に取り付けるための保持部材14cと、保持部材14cに対して、垂直方向に移動可能に設けられた移動部材14aと、移動部材14aの移動に伴って光源部15の垂直方向の位置を微調整するためのツマミ部14bと、を有している。また、保持部14は、移動部材14aの前面側に突出するように配置された装着部16を有して構成されている。
【0032】
装着部16には、光源部15を取り付けるための取付孔16bが開孔されているとともに、後述する、アダプタ部21や第2位置決め部材22の前後方向(図示矢印X方向)への着脱が自在とされた着脱機構(凹部)16aが設けられている。取付孔16bは、詳細については後述するが、例えば、光検出器33の受光面33aの径に応じて、装着部16の中央付近に設けられる。着脱機構16aは、装着部16の下面側に設けられている。
【0033】
ここで、実際の治療装置において、光源から発せられ、集光手段によって平行な光に変換されたLED光は、光源部より一定の範囲内(生体の病変部とその周辺付近)に照射される。しかし、集光手段によって完全に平行な光に変換されることはなく、特に、LED光の場合は制御が難しい。
【0034】
また、光免疫療法の場合においては、完全に平行でない光(または、点光源)の、光源部と生体の病変部(照射位置)までの距離が一定でないと、照射の範囲(面積)が一定でなくなり、施術ごとに、病変部での照射光の密度(照射量)が変化する。また、距離のみによらず、対象物との相対位置を一致させる(方向のズレをなくす)ことが重要であり、距離および位置の再現性が求められる。
【0035】
一方、光源部からのLED光は、LED素子の経年変化などを考慮し、常に、一定の強度にて照射されるように調整されるようになっている。
【0036】
そこで、本実施形態に係る生体用照射装置1においては、例えば図3に示すように、光パワーメーターなどの受光センサを受光部33bとして備えた光検出器33を用いて、強度の調整が行われる。
【0037】
光検出器33は、内蔵する受光センサの受光部33bを受光面33aより露出させた構造であって、受光部33bによって受光したLED光ILの強度を検出する。受光部33bは、その径が、例えば、受光するLED光ILの径にほぼ対応されている。
【0038】
調整の際には、LED光ILの拡散などを考慮して、光源部15から光検出器33の受光部33bまでの距離を、試験時の光源部15から照射位置(病変部)までの距離と一致させることが望ましい。また、光検出器33の受光部33bとLED光ILとの同芯度も高いことが望まれる。つまり、光検出器33の受光部33bに対するLED光ILの距離や位置のズレは、誤差となり、定量性を損なう要因となる。
【0039】
そこで、本実施形態に係る生体用照射装置1においては、調整時の光源部15から受光部33bまでの距離とLED光ILの照射位置(照射の範囲)と、試験時の光源部15から照射位置までの距離とLED光ILの照射位置(照射の範囲)と、を一致させることが容易に可能な調整治具が用意されている。
【0040】
図4,5は、本実施形態に係る生体用照射装置1のLED光ILの調整方法(制御方法)を説明するために示すものである。なお、図4は、生体用照射装置1のLED光ILの調整方法を説明する側面図であり、図5は、生体用照射装置1のLED光ILの調整方法を説明する斜視図である。
【0041】
調整時には、例えば図4,5に示すように、照射装置本体10の装着部16の着脱機構16aに対して、調整治具としてのアダプタ部(第1治具)21と光検出器33とが装着される。
【0042】
アダプタ部21は、例えば図6(a)に示すように、矩形状の上側部材21aと、上側部材21aとほぼ同一サイズの下側部材21cと、両部材21a,21c間の各角部分を一定の距離を保って保持する4本の柱部材21bと、を有して構成されている。
【0043】
上側部材21aは、装着部16の着脱機構16aに着脱可能に係止される部分で、着脱機構16aとほぼ同一サイズとされている。
【0044】
上側部材21aには、光源部15の取付孔16bに対応する位置に、調整治具としての第1位置決め部材(第2治具)23の装着孔21eが、下側部材21cには、装着孔21eに対応する位置に光検出器33の取付孔21dが、それぞれ開孔されている。
【0045】
つまり、装着部16の取付孔16b、上側部材21aの装着孔21e、および、下側部材21cの取付孔21dは、例えば、光検出器33の受光面33aに対応するようにほぼ同心円状に設けられている。これにより、例えば図5に示すように、光検出器33の受光部33bによって、光源部15からのLED光ILがより確実に受光されるように、高い同芯度が確保されている。
【0046】
下側部材21cは、例えば、柱部材21bに沿って上下方向にスライド自在に設けられ、上側部材21aとの距離が、第1位置決め部材23の測距部23bの長さに応じて可変される。
【0047】
第1位置決め部材23は、例えば図6(b)に示すように、上側部材21aとほぼ同じ厚さで、上側部材21aの装着孔21eに着脱可能な着脱部23aと、この着脱部23aに下向きに取り付けられ、光源部15より照射されるLED光ILとほぼ同じ径の測距部(軸棒)23bと、を備えて構成されている。
【0048】
測距部23bは、光検出器33の受光部33bまでの距離を決めるためのもので、例えば図6(c)に示すように、先端が半球状とされるとともに、試験時の光源部15から生体ORの照射位置までの距離に応じた長さとされている。
【0049】
即ち、上側部材21aの装着孔21eに第1位置決め部材23の着脱部23aを装着した状態において、測距部23bの長さに応じて、アダプタ部21の下側部材21cの位置を可変させる。これにより、調整時の光源部15と光検出器33との距離を、実際の試験時の、光源部15からのLED光ILの照射配置までの距離に一致させることが容易に可能となる。
【0050】
また、アダプタ部21と第1位置決め部材23とを用いることにより、光検出器33の受光部33bとLED光ILとの同芯度をも高めることが容易とされる。
【0051】
上記したように、調整時には、実際の試験時の、光源部15からのLED光ILの照射位置と距離とに一致させるように、生体用照射装置1の照射装置本体10の装着部16に、アダプタ部21および第1位置決め部材23を介して光検出器33を装着した後、第1位置決め部材23を取り外した状態において、光検出器33による光源部15からの調整用のLED光ILの検出が行われる。
【0052】
光検出器33による調整用のLED光ILの検出結果は、制御装置31に送られて、試験時に光源部15より照射される薬効実証用のLED光ILの強度の調整に供される。
【0053】
図7は、第1実施形態に係る生体用照射装置1による試験方法(制御方法)を説明するために示すものである。
【0054】
試験の際には、例えば図7に示すように、生体用照射装置1の照射装置本体10における装着部16の着脱機構16aに対して、薬効実証用のLED光ILの照射位置を決めるための第2位置決め部材22が装着される。
【0055】
第2位置決め部材22は、例えば図8(a)に示すように、第1位置決め部材23の着脱部23aとほぼ同じ厚さで、装着部16の着脱機構16aに着脱可能な着脱部22aと、この着脱部22aに下向きに取り付けられ、光源部15より照射されるLED光ILとほぼ同じ径の測距部22bと、を備えて構成されている。
【0056】
つまり、第2位置決め部材22は、測距部22bが第1位置決め部材23の測距部23bとほぼ同一の構成とされている。
【0057】
したがって、装着部16の着脱機構16aに第2位置決め部材22を装着した状態において、第2位置決め部材22の測距部22bを用いて、試験を行う生体ORとの位置合わせを行うことにより、生体ORに対する、薬効実証用のLED光ILの照射位置や距離を容易に一致させることが可能となる。
【0058】
即ち、装着部16の着脱機構16aに第2位置決め部材22を装着した状態において、まずは、例えば図8(a)に示すように、第2位置決め部材22の測距部22bを用いて、目視による基台11上の生体ORの照射位置との位置合わせが容易に行われる。
【0059】
そして、その状態において、例えば図8(b)に示すように、装着部16の着脱機構16aから第2位置決め部材22が取り外される。
【0060】
この後、調整時に行われた調整用のLED光ILの検出の結果に基づいて制御された、薬効実証用のLED光ILが光源部15から照射されることにより、例えば図8(c)に示すように、基台11上に載置された生体ORに対する試験が適正に行われる。
【0061】
このように、本実施形態によれば、ガイド光(レーザなど)や測距計といった高価な機器やフィードバック制御のような複雑で電気的な制御などを要することなく、常に同じ距離から、所定の部位である同じ照射位置に対して、生体ORの薬効実証のための試験に最適な強度のLED光ILを的確に照射させることが可能となる。
【0062】
しかも、試験ごとに、第2位置決め部材22を用いた生体ORの照射位置との位置合わせを行うことにより、毎回、同一の条件により繰り返し試験を行うことが容易に可能となる。
【0063】
即ち、生体ORや試験の時期によらず、常に、同じ距離から、同じ位置に、同じ強度のLED光ILが照射されるように容易に調整することが可能な、再現性に優れた生体用照射装置1を実現できる。
【0064】
なお、測距部22b,23bとしては、単一の同じ部材を兼用させて形成することも可能である。例えば、測距部22b,23bを単一の同じ部材により兼用させるようにした場合、第1位置決め部材23の着脱部23aと第2位置決め部材22の着脱部22aとを同じ板厚の部材により形成することによって、第1位置決め部材23および第2位置決め部材22の高さを容易に同一とすることができる。
【0065】
第2実施形態
図9は、本発明の第2実施形態に係る光照射装置が適用される細胞用照射装置101の概略構成を示すものである。
【0066】
ここで、本実施形態に係る細胞用照射装置101は、例えば、薬効のスクリーニングなどを行うためのものであって、生体ORでの薬効実証のための試験を行う前に薬効などを細胞レベルで確認するために用いられる細胞(細胞、細胞片、または、組織片)用の光照射装置である。具体的には、光免疫療法の治療薬の試験の対象物となる動物などの生体ORの病変部などから取り出すなどした複数あるいは単数の細胞の、試験用のLED光ILに対する薬効の検証などを行う研究用途に用いられるものである。
【0067】
即ち、本実施形態に係る細胞用照射装置101は、例えば図9に示すように、薬の量などが調節された細胞のそれぞれに、スクリーニング用のLED光ILとして、生体用照射装置1と同じ特定の波長のLED光を個別に照射するものであって、複数の細胞に対して個々に所定の強度のLED光ILを照射する光源部(後述する)を有する照射装置本体110と、照射装置本体110に対して着脱自在に設けられ、位置決めのための治具を用いて、別の観察系である、予め光源部から照射されるLED光ILを検出する光検出器(検出部)133と、光検出器133の検出結果に基づいて、光源部から細胞に照射されるLED光ILが常に同一の条件となるように制御する制御装置(制御部)131と、を備えている。
【0068】
照射装置本体110は、例えば図10~12に示すように、凹部111aを有する矩形状のベース部111と、光源部としての、ベース部111の凹部111a内に配置された複数のLED素子(光源)112と、各LED素子112に対応して設けられたレンズ113と、ガラスまたは相当品となる透明部材からなる窓材114を介して積層された遮光部材(マスク)115と、該遮光部材115の上部に配置されたウェルプレート(マイクロプレート)117と、を備えて構成されている。
【0069】
レンズ113および窓材114は、それぞれのLED素子112からのLED光を集光させるための、例えば凸型コリメートレンズとして機能する。
【0070】
ウェルプレート117は、詳細については後述するが、例えば、X-Y平面に対して、全部で96(A~Hの8段×1~12の12列)個のウェル118がマトリクス状に配置された構成とされている。各ウェル118は、生体ORから採取した細胞がそれぞれ収容される収容部であって、例えば、同一径を有し、互いに同一のピッチで等間隔に配置されている。
【0071】
各ウェル118内の細胞に対しては、それぞれに対応する、遮光部材115の各貫通孔116を通過した、各LED素子112からのLED光ILが照射される。複数(この例では、96個)のLED素子112のそれぞれは、各ウェル118に対応するように、図示省略の駆動回路の基板上にマトリクス状に配置されている。複数のLED素子112は、個々に独立して駆動可能な構成とすることもできる。
【0072】
遮光部材115は、例えば図13に示すように、各ウェル118に対して、隣接するLED素子112からのLED光ILが混入しないように、隣接するLED素子112との間を遮光するものであって、樹脂によって形成されている。遮光部材115には、対応するLED素子112とウェル118との間をそれぞれ貫通させるように、該ウェル118とほぼ同径の複数(この例では、96個)の貫通孔116がマトリクス状に配置されている。
【0073】
なお、本実施形態においては、例えば図14に示すように、遮光部材115は、ベース部111の凹部111aに設けられた段差部111bによって、各貫通孔116の各LED素子112との位置合わせが行われる。また、上面側の突部(凸部)115aがウェルプレート117の下面側の凹部117aに係合されることにより、各貫通孔116と各ウェル118との位置合わせが行われる。
【0074】
即ち、各LED素子112と遮光部材115の各貫通孔116とウェルプレート117の各ウェル118とが、ほぼ同一の径およびピッチを有してそれぞれ形成されることにより、各ウェル118内の細胞には、各ウェル118の直下に独立して配置された各LED素子112からのLED光ILが個々に照射される。
【0075】
ここで、ウェルプレート117についてさらに説明すると、例えば、96個のウェル118を有する96ウェルプレートは、国際基準であって、樹脂を用いて形成されている。
【0076】
96ウェルプレートは、例えば図15に示すように、各ウェル118または各LED素子112の位置が段(A~H)と列(1~12)とによって規定される。
【0077】
96ウェルプレートにおいて、96個のウェル118のうち、角部分に位置する4個のウェルA1,A12,H1,H12については、最大で、隣接する3個のウェル118に対応する各LED素子112からのLED光(漏れ光)の混入が懸念される。例えば、角部分のウェルA1については、図示矢印で示すように、隣接するウェルA2,B1,B2に対応する各LED素子112からの漏れ光の混入が懸念される。
【0078】
また、角部分以外の、辺部分に位置する32個のウェルA2-A11,B1,B12,C1,C12,D1,D12,E1,E12,F1,F12,G1,G12,H2-H11については、最大で、隣接する5個のウェル118に対応する各LED素子112からのLED光(漏れ光)の混入が懸念される。例えば、辺部分のウェルG1については、図示矢印で示すように、隣接するウェルF1,F2,G2,H1,H2に対応する各LED素子112からの漏れ光の混入が懸念される。
【0079】
さらに、角部分および辺部分以外に位置する60個のウェルB2-B11,C2-C11,D2-D11,E2-E11,F2-F11,G2-G11については、最大で、隣接する8個のウェル118に対応する各LED素子112からのLED光(漏れ光)の混入が懸念される。例えば、角部分および辺部分以外のウェルF8については、図示矢印で示すように、隣接するウェルE7,E8,E9,F7,F9,G7,G8,G9に対応する各LED素子112からの漏れ光の混入が懸念される。
【0080】
このように、96ウェルプレートにおいては、隣接するウェル118の個数の違いにより、たとえ各LED素子112から照射されるLED光ILの強度が同じであったとしても、ウェル118の位置によっては、細胞に照射されるLED光ILの量に、混入する漏れ光の量の違いに応じたばらつきが生じる。
【0081】
したがって、各ウェル118において、LED素子112からのLED光ILを検出する際には、隣接するウェル118からの漏れ光の混入を考慮する必要があるが、本実施形態に係るウェルプレート117においては、遮光部材115を備えたことにより、隣接するウェル118のLED素子112からの漏れ光の混入を抑制することが可能である。
【0082】
即ち、角部分に位置する4個のウェルA1,A12,H1,H12については、遮光部材115を設けたことによって、最大で、隣接する3個のウェル118に対応する各LED素子112からの漏れ光の混入を抑制できる。
【0083】
また、角部分以外の、辺部分に位置する32個のウェルA2-A11,B1,B12,C1,C12,D1,D12,E1,E12,F1,F12,G1,G12,H2-H11については、遮光部材115を設けたことによって、最大で、隣接する5個のウェル118に対応する各LED素子112からの漏れ光の混入を抑制できる。
【0084】
さらに、角部分および辺部分以外に位置する60個のウェルB2-B11,C2-C11,D2-D11,E2-E11,F2-F11,G2-G11については、遮光部材115を設けたことによって、最大で、隣接する8個のウェル118に対応する各LED素子112からの漏れ光の混入を抑制できる。
【0085】
図16は、別の観察系である、光検出器133の構成を例示するものである。ここでは、光検出器133の位置決め用の治具として、受光センサが収納されるケース(アダプタ部)141の受光面側に、複数の突起部(係合部からなる位置決め機構)143,144が一体的に設けられてなる構成とした場合を例示している。
【0086】
なお、位置決め用の治具としては、光検出器133とは別体とし、先に位置決めされた治具に光検出器133を位置合わせするように装着することによって、光検出器133の位置決めを行う構成としても良い。
【0087】
光検出器133は、ウェルプレート117の96個のウェル118のLED光ILを個別に検出するもので、例えば同図(a)に示すように、光パワーメーターなどの受光センサとほぼ同径とされたケース141の検出面(受光面)に、位置決め用の治具として、受光センサの受光部135やウェル118の径に応じて開口された開口部142と、該開口部142が位置するウェル118に隣接する複数(少なくとも2個)のウェル118に対応して設けられ、検出時に係合される突起部143,144と、を有している。
【0088】
即ち、光検出器133のケース141には、その検出面に、受光センサの受光部135に対応するようにして開口された開口部142が設けられている。また、例えば同図(b)に示すように、検出面をウェルプレート117に対向させた状態において、開口部142がターゲットとなるいずれかのウェル118Tに対応させられた場合に、少なくとも、そのウェル118Tに隣接する、上下方向のいずれか一方のウェル118Yと左右方向のいずれか一方のウェル118Xとに係合する突起部143,144が設けられている。
【0089】
このように、突起部143,144がそれぞれウェル118X,118Yに係合されることにより、ウェル118X,118Yに隣接する特定のウェル118Tに対し、光検出器133の受光部(受光センサの受光部135)を正確に対応させることが可能となる。
【0090】
しかも、1つの光検出器133によって、ウェルプレート117上の全ウェル118におけるLED光ILを、他からの漏れ光に影響されることなしに、より正確に検出することが可能となる。
【0091】
したがって、本実施形態に係る細胞用照射装置101によれば、全ウェル118に照射される各LED光ILを同一の条件とすることが容易に可能とされる。
【0092】
なお、光検出器133の受光部135は、全てのウェル118に対して1対1で対応させることが可能であり、突起部の位置や形状、個数に限定されるものではない。また、光検出器133や位置決め用の治具としては、円形に限らず、方形や多角形などとすることも可能である。
【0093】
図17は、遮光部材115をマスクとして設けたことによる効果について、従来装置と対比して示すものである。
【0094】
同図(a)は、本実施形態に係る細胞用照射装置101でのLED光ILのウェル118内への照射光(入射光)の装置内相対強度分布を例示するグラフであり、同図(b)は、従来装置での装置内相対強度分布を例示するグラフである。
【0095】
ここでは、ウェル内に挿入可能なプローブを備えた測定装置(図示していない)を用いるとともに、遮光部材115を有しない細胞用照射装置(図示していない)を従来装置として用いた。
【0096】
なお、各グラフにおいて、いずれも、横軸は、ウェルプレート上の任意の列のウェル118とし、縦軸は、マスクなしの場合のLED光の強度の最大値を「1」として規格化した相対強度とした。
【0097】
図17(a)からも明らかなように、遮光部材115を用いて隣接するウェル118からの漏れ光が混入するのを抑えることにより、強度の小さい方に合わせて平均強度は低下するものの、全体としてウェル118間の強度差を抑制させることが可能となる。
【0098】
よって、全LED素子112を一括制御するようにした場合に、隣接するLED素子112からの漏れ光の混入を抑制でき、ウェル118間での強度のばらつきを抑えることが可能となる。
【0099】
このように、隣接するLED素子112からの漏れ光の影響を抑制することが可能となる結果、各ウェル118でのLED光ILの強度を、より正確に検出できるようになる。
【0100】
しかも、各LED素子112を独立して制御するようにした場合においては、より効果的に、ウェル118間での強度のばらつきを抑えることが可能となる。
【0101】
即ち、本実施形態に係る細胞用照射装置101によれば、光検出器133のケース141に設けられ、受光センサの受光部135が位置するウェル118に隣接するウェル118,118に対応するように配置された突起部143,144によって位置決めされるとともに、遮光部材115によって隣接するLED素子112からの漏れ光が遮光された状態において、受光センサの受光部135が対応するウェル118でのLED光ILの強度を、より正確に検出することが容易に可能となる。
【0102】
したがって、制御装置131により各LED素子112を光検出器133の検出結果に応じて個別に点灯制御させるようにした場合においては、LED素子112ごとの特性のばらつきなどによらず、常に、均一な強度(照射量)の薬効のスクリーニング用のLED光ILを、全ウェル118に照射することが容易に可能とされる。
【0103】
また、制御装置131により全LED素子112を光検出器133の検出結果をもとに一定の電流により点灯制御させるようにした場合においては、LED素子112ごとの特性のばらつきなどはあるものの、常に、ほぼ均一な強度の薬効のスクリーニング用のLED光ILを、全ウェル118に照射することが容易に可能とされる。
【0104】
ここで、遮光部材115を設けたことによるウェルプレート117での発熱について説明する。
【0105】
図18は、横軸を時間(分)、縦軸を温度(℃)とし、LED素子112の発光(照射)時間を30分とした場合の、後述する材料の異なる遮光部材115の上面(光源を下とした場合にLED光ILが出射する面を上とする)の温度変化を示すものである。ここでは、遮光部材115として、2mm(t2)厚の黒色ポリアセタール製の樹脂板115Aを用いた場合と、2mm(t2)厚の白色アクリル製の樹脂板115Bを用いた場合と、2mm(t2)厚の未処理のアルミ(アルミニウム)製の反射材115Cを用いた場合と、2mm(t2)厚の黒色ポリアセタール製の樹脂板と光源であるLED素子112上の窓材114との間に0.5mm(t0.5)厚の未処理のアルミ製の反射材を設置した複合材115Dを用いた場合と、を対比して示している。
【0106】
なお、未処理のアルミとは、無塗装で、メッキなどの処理をしていないアルミニウムのことを指す。
【0107】
この図からも明らかなように、遮光部材115としては、2mm(t2)厚の黒色ポリアセタール製の樹脂板115Aを用いた場合に最もウェル118の温度が上昇し、次いで、複合材115D、反射材115C、樹脂板115Bの順で発熱した。
【0108】
即ち、2mm(t2)厚の黒色ポリアセタール製の樹脂板115Aは、遮光部材115として十分な効果が期待できる反面、発熱が大きい。
【0109】
一方、2mm(t2)厚の白色アクリル製の樹脂板115Bの場合は、発熱は抑えられるものの、遮光部材115として期待する、隣接するウェル118からの漏れ光の混入を減らすことができない。
【0110】
これに対し、2mm(t2)厚のアルミ製の反射材115Cを用いた場合には、未処理のため、鏡面仕上げなどされていないものの、発熱を抑える効果が確認できた。
【0111】
そのため、隣接するウェル118からの漏れ光の混入を十分に減らしつつ、ウェル118での発熱を抑えるためには、複合材115Dのように、4ないし5mm厚程度の黒色ポリアセタール製の樹脂板115Aによって遮光部材115を形成するとともに、遮光部材115とLED素子112との間に、0.8mm厚以下(例えば、家庭用アルミ箔の厚さ1/100mm程度あれば十分に機能する)のアルミ製の薄板からなる反射材115Cを備えることが望ましい。
【0112】
図19は、遮光部材115の性能を比較するために、ウェルプレート117上の全ウェル118での光の強度について、隣接するウェル118の個数に応じた場所(位置)ごとの平均強度を求めた結果を示すものである。
【0113】
上述したように、96ウェルプレートの場合、各ウェル118は、位置によって隣接するウェル118の個数が異なる。
【0114】
そこで、5mm(t5)厚の黒色ポリアセタール製の樹脂板と、4.5mm(t4.5)厚の黒色ポリアセタール製の樹脂板と0.5mm(t0.5)厚の未処理のアルミ製の反射材との複合材と、5mm(t5)厚の白色ポリアセタール製の樹脂板と、について、場所ごとのLED光ILの平均強度を規格化するために、角部分に位置する4個のウェルA1,A12,H1,H12の平均強度を「1」として、角部分以外の、辺部分に位置する32個のウェルA2-A11,B1,B12,C1,C12,D1,D12,E1,E12,F1,F12,G1,G12,H2-H11、および、角部分および辺部分以外に位置する60個のウェルB2-B11,C2-C11,D2-D11,E2-E11,F2-F11,G2-G11での相対強度を求めた。
【0115】
この図からも明らかなように、遮光部材115としては、例えば、黒色ポリアセタール製の樹脂板の厚さ(t)を5mm厚程度以上とすることによって、LED光ILの照射強度を正確に測定できることが確認できた。
【0116】
また、反射材115Cを設置した場合には、遮光部材115としての性能は、厚さが5mm程度の黒色ポリアセタール製の樹脂板115Aの単体には劣るものの、十分な遮光機能を備えつつ、合わせて発熱を抑える機能を備えることができる。
【0117】
第3実施形態
本実施形態は、光源部15からのLED光ILの照射像(照射の範囲)が、光検出器33の受光面33aの、受光センサの受光部33bの直径(受光領域)よりも大きい場合を例に示すものである。
【0118】
即ち、光源部15からのLED光ILの照射の範囲が受光センサの受光部33b内に収まる場合には、上述したように、LED光ILの照射の範囲内において、所定の強度分布を有する光源の場合であっても、受光部33bに照射されるLED光ILをもれなく受光できるため、照射強度を正確に測定することが可能である。
【0119】
光源部15としては、LED光ILの内部での強度がほぼ一定(例えば、±10%以内)であれば、LED光ILの照射の範囲が受光センサの受光部33bの直径よりも大きい光源を用いる場合が想定される。
【0120】
LED光ILの強度は、単位面積当たりの照射密度として検討される場合もあり、光源部15側での工夫により、LED光ILの強度がほぼ一定と見なせる場合の、LED光ILの一部の既知の面積(例えば、受光センサの受光領域がLED光ILの照射の範囲よりも小さい場合を想定)での照射密度を測定できれば十分となる。
【0121】
ただし、照射距離の再現性については、これまでの強度が不均一な光源の場合と同様に、照射距離の差異に応じて、大きさが異なるなどの現象として現われる。即ち、LED光ILの照射距離が、実際に照射対象へ照射する照射時と事前の強度調整時とで異なれば、密度に差異が生じて誤差となる。また、照射する位置の再現性も必要となる。
【0122】
実際に、LED光ILが照射対象に対してどの程度の大きさの像として照射されるかが事前に分かれば、状況が予測できるため、照射位置の調整と再現のための目安にすることができる。
【0123】
つまり、照射されるLED光ILの照射像の大きさから照射面積は計算することが可能であり、LED光ILの強度は、計算した照射面積と測定した照射密度との積を求めることによって簡単に算出できる。
【0124】
したがって、照射像内に強度分布を有する光源の場合に限らず、照射対象に照射されるLED光ILの一部が受光センサの受光部33bからはみ出るような場合においても、照射されるLED光ILの強度を正確に測定することが可能となる。
【0125】
図20~25は、本発明の第3実施形態に係る光照射装置が適用される生体用照射装置1において、照射装置本体10への装着が可能とされる、LED光ILの照射距離と照射面積とを事前に把握する際に用いられる、位置決めのための治具121の構成例を示すものである。
【0126】
例えば、図20は、治具121の概略構成を示す正面図であり、図21は、治具121の具体例を示すものであって、図(a)は、伸縮前の正面図であり、図(b)は、伸縮前の斜視図である。同様に、図22は、治具121の具体例を示すものであって、図(a)は、伸縮後の斜視図であり、図(b)は、伸縮後の正面図である。また、図23は、治具121の具体例を示す伸縮後の斜視図であり、図24は、図23の一部を拡大して示す拡大図である。さらに、図25は、治具121のさらに別の構成例を示す正面図である。なお、図21~23および図25においては、装着部16の図示を省略している。
【0127】
即ち、LED光ILが照射対象に対してどの程度の大きさの像として照射されるかを事前に知るための治具121としては、例えば図20に示すように、照射装置本体10の装着部16の着脱機構16aに対して着脱自在に設けられた着脱部材121aと、この着脱部材121aに設けられた、少なくとも一対(2本)の取付部121b、伸縮部(スライダ)121c、および、回転部(先端器)121dと、を有している。
【0128】
取付部121b、伸縮部121c、および、回転部121dは、例えば、四角状の着脱部材121aの一対角線上に配置されている。
【0129】
この治具121において、取付部121bおよび回転部121dは、図示矢印X方向の角度を自在に可変でき、伸縮部121cは、図示矢印Y方向の長さを自在に可変できるように構成されている。
【0130】
このような構造により、治具121は、取付部121b、伸縮部121c、および、回転部121dによって、回転部121dの先端部分の図示矢印X,Y方向の位置を自由に変えることが可能とされている。したがって、回転部121dの先端部分を、光検出器33の受光センサの受光部33bに対するLED光ILの照射の範囲に容易に一致させることができる。
【0131】
より具体的には、治具121は、例えば図21(a),(b)に示すように、2本のアーム部122を備え、各アーム部122は、回転器122a,122b,122cと伸縮器(スライダ)122d,122eと先端器122fとから構成されている。伸縮器122d,122eは、それぞれ、互いに突起部と突起部が係合される細長の孔部とを有する一対のスライダ細板によって構成されている。
【0132】
各アーム部122は、例えば図22(a),(b)に示すように、光源部15より照射されるLED光ILの照射位置に応じて、先端器122fの先端部分の位置を変位させることが可能とされている。
【0133】
ここで、光検出器33と受光センサの受光部33bとの高さが一致しない場合について説明する。
【0134】
光検出器33と受光センサの受光部33bとの高さが異なる場合において、LED光ILの照射の範囲(最外部)が受光センサの受光部33bよりも大きく、光検出器33よりも小さい場合には、受光センサの受光部33bの高さと先端器122fの先端部分が接触する光検出器33の高さとが不一致となる。
【0135】
その際、光源部15からのLED光ILの出射端と照射位置との実際の照射距離と、光源部15からのLED光ILの出射端と照射位置との治具121により測定した照射距離と、が異なる。実際の照射距離と測定した照射距離とが異なる場合、それぞれの距離において、照射像の大きさと光強度とに差が生じる懸念があり、いずれも誤差の要因となり得る。
【0136】
しかし、照射距離の誤差による照射像の大きさの差異を抑えるために、光源部15は、レンズなどの光学系により、照射光が構造的に取り得る照射距離の範囲内では平行光が構成される位置関係となるように設計されており、距離の誤差に起因する照射像の大きさの違いは小さい。
【0137】
強度については、以下のように扱うことができる。
【0138】
電気的な点灯条件が同一であるとき、照射距離の誤差に起因する強度の誤差は、次のように補正することができる。
【0139】
この装置および方法では、同じ照射距離であれば同じ光強度となる。
【0140】
光検出器33と受光センサの受光部33bとの高さが一致しない場合というのは、照射距離が異なるために光強度が異なり、測定値に誤差がでることである。
【0141】
光検出器33と受光センサの受光部33bとの高さが一致せず、受光部33bが光検出器33よりも低い場合を考える。
【0142】
治具121を用いて測定される距離は、治具121の先端121dまたは122fが光検出器33に触れるため、光源部15の出射端から受光センサの受光部33bまでの距離よりも小さい。この、治具121で測定した距離を、照射距離aと仮定する。
【0143】
治具121を用いて距離を定めたときに、受光センサで測定される光強度は、光源部15の出射端から受光センサの受光部33bまでの距離の光強度で、この照射距離を照射距離cと仮定し、この照射距離での光強度を光強度dと仮定する。
【0144】
ここで、治具121を用いず、光検出器33と受光センサの受光部33bとの距離を、照射距離aと同じに位置決めしたときに測定される光強度を光強度bと仮定する。
【0145】
つまり、光検出器33と受光センサの受光部33bとの高さが一致しない場合の、照射距離の誤差の影響を排除した正しい照射距離aで測定される光強度は光強度bであるが、治具121の構造などによって照射距離に誤差があり、照射距離cで測定される誤差のある測定値が光強度dとなる。
【0146】
一方、光検出器33と受光センサの受光部33bとの高さの差異が測定可能な一定値で、いずれも変化しない値であるため、照射距離aと照射距離cとの差は一定値である。
【0147】
実験間の再現性の確保などにより、運用上の照射距離aは常に同じ値を用いるので、照射距離cも常に同じ値となる。
【0148】
予め電気的な点灯条件を同一にして、照射距離aと照射距離cでの、それぞれの光強度bと光強度dとを測定することは可能であるため、測定により、その差異を取得することは可能である。
【0149】
光強度bと光強度dとは一定の比率の関係として示すことができるので、この比率を用いることで、ある測定値(光強度d)から正しい値(光強度b)を計算で補正することができる。
【0150】
また、光検出器33と受光センサの受光部33bとの高さが一致せず、受光部33bが光検出器33よりも高い場合も、同様の手法で補正することができる。
【0151】
また、光検出器33と受光センサの受光部33bとの高さが異なる場合において、LED光ILの照射の範囲(最外部)が光検出器33よりも大きい場合、例えば図23,24に示すように、各アーム部122の先端器122fの先端部分を、基台11上での高さが受光部33bとほぼ同じ高さのアダプタ(ステージ部材)33Aに接触させるようにする。すると、受光センサの受光部33bの高さと先端器122fの先端部分の接触する部位の高さとが一致するため、各アーム部122を光源部15からの特定の波長のLED光ILの光検出器33までの距離に一致させることが容易に可能となる。
【0152】
これにより、LED光ILの照射像の照射距離と同時に大きさ(面積)をも測定でき、照射位置の調整と再現のための、目安となる照射像の大きさが常に一様となるように、照射の範囲を容易に一致させることが可能となる。
【0153】
なお、LED光ILの照射像を四角形状としたが、これに限定されるものではなく、アーム部122としては、例えば、着脱部材121aの二対角線上に配置することも可能である。また、アーム部122は、例えば図25に示すように、回転器122a,122bと伸縮器122dと先端器122fとからなる構成としても良い。
【0154】
第4実施形態
図26~29は、本発明の第4実施形態に係る光照射装置が適用される細胞用照射装置101(例えば、図9参照)において、別の観察系である、予め光源部から照射されるLED光ILを検出する光検出器(検出部)133として、四角形状(矩形)の受光センサ133Sを用いるようにした場合を例示するものである。
【0155】
なお、図26は、光検出器133の斜視図であり、図27は、受光センサ133Sの構成例を示すもので、図(a)は、受光センサ133Sの平面(上面)図、図(b)は、受光センサ133Sの側面図、図(c)は、受光センサ133Sの背面(裏面)図である。また、図28は、受光センサ133Sを保持した状態で、照射装置本体110のウェルプレート117に対して着脱自在に設けられた、光検出器133の位置決めのための治具としてのケース(アダプタ部)141の構成例を示すもので、図(a)は、ケース141の平面(上面)図であり、図(b)は、ケース141の側面図であり、図(c)は、ケース141の背面(裏面)図である。そして、図29は、光検出器133の位置決め時の操作を例示するもので、ウェルプレート117の一部を透過して示す平面図である。
【0156】
即ち、本実施形態に係る光検出器133は、例えば図26に示すように、ほぼ四角形状の受光センサ133Sと、この受光センサ133Sを保持した状態で、照射装置本体110のウェルプレート117に対して着脱自在に設けられた、位置決めのためのケース141と、によって構成されている。
【0157】
受光センサ133Sは、ウェルプレート117の96個のウェル118のLED光ILを個別に検出する光パワーメーターであって、例えば図27に示すように、その検出面(受光面)側には、開口部142より露出する受光部135が設けられている。
【0158】
ケース141は、例えば図28に示すように、受光センサ133Sが装着されるU字型の装着部145と、受光センサ133Sの受光部135に対応する受光面側に設けられた、複数の突起部(係合部からなる位置決め機構)143,144と、を備えている。
【0159】
突起部143,144は、例えば図29に示すように、受光センサ133Sの受光部135をウェルプレート117に対向させた状態において、受光センサ133Sの開口部142がターゲットとなるいずれかのウェル118Tに対応させられた場合に、少なくとも、そのターゲットのウェル118Tに隣接する、上下方向のいずれか一方のウェル118Yと左右方向のいずれか一方のウェル118Xとに係合されるようになっている。
【0160】
このように、ほぼ四角形状の受光センサ133Sを採用した場合にも、突起部143,144がそれぞれウェル118X,118Yに係合されることにより、ウェル118X,118Yに隣接する特定のウェル118Tに対し、光検出器133の受光部135を正確に対応させることが可能となる。
【0161】
したがって、本実施形態の場合においても、1つの光検出器133によって、ウェルプレート117上の全ウェル118におけるLED光ILを、他からの漏れ光に影響されることなしに、より正確に検出することが可能となる。
【0162】
その他の実施形態
図30は、その他の実施形態として、例えば図9に示した細胞用照射装置101において、遮光部材115を用いることなく、照射対象となる特定のウェル118に隣接するウェル数の違いによる、LED光ILの強度のばらつきを改善できるようにした場合を例示するものである。
【0163】
照射対象となるウェル118を、例えば、ウェルB5(図中の「ア」),E5(図中の「イ」),H5(図中の「ウ」),A8(図中の「エ」),D8(図中の「オ」),G8(図中の「カ」)に限定し、照射対象となるウェル118間の距離を、隣接するウェル118からの漏れ光の混入を十分に抑制できるようにする。
【0164】
即ち、照射対象となるウェルB5,E5,H5,A8,D8,G8にのみLED素子112を配置し、それ以外は光源を存在させないようにする。
【0165】
より具体的には、光源を存在させるとは光源が点灯するということであって、例えば、光源となるLED素子112を照射対象のウェルB5,E5,H5,A8,D8,G8の直下に配置するとともに、ウェルB5に隣接する、少なくともウェルA4,A5,A6,B4,B6,C4,C5,C6にはLED素子112を配置しない。
【0166】
同様に、ウェルE5に隣接する、少なくともウェルD4,D5,D6,E4,E6,F4,F5,F6にはLED素子112を配置せず、ウェルH5に隣接する、少なくともウェルG4,G5,G6,H4,H6にはLED素子112を配置しない。
【0167】
同様に、ウェルA8に隣接する、少なくともウェルA7,A9,B7,B8,B9にはLED素子112を配置せず、ウェルD8に隣接する、少なくともウェルC7,C8,C9,D7,D9,E7,E8,E9にはLED素子112を配置せず、ウェルG8に隣接する、少なくともウェルF7,F8,F9,G7,G9,H7,H8,H9にはLED素子112を配置しない。
【0168】
このような構成とした場合にも、照射対象のウェルB5,E5,H5,A8,D8,G8の周辺からの漏れ光が存在しないことにより、照射対象のウェルB5,E5,H5,A8,D8,G8への漏れ光の混入を当然に抑制できる。
【0169】
図31は、照射対象となるウェル118として、例えば、ウェルB5(図30中の「ア」),E5(図30中の「イ」),H5(図30中の「ウ」),A8(図30中の「エ」),D8(図30中の「オ」),G8(図30中の「カ」)にのみ光源となるLED素子112を配置し、実際に同一の電気的条件で全LED素子112を同時に点灯させた場合の測定結果を示すものである。
【0170】
本図からも明らかなように、照射対象のウェルB5,E5,H5,A8,D8,G8の各相対強度より、全LED素子112は、その隣接するウェル数によらず、LED光ILの強度のばらつきがほとんどなく、遮光部材の設置時と同様の効果が得られることがわかる。
【0171】
なお、光源が存在するとは照射対象のウェル118に配置されたLED素子112のみが点灯するということでもあるので、例えば図9に示した細胞用照射装置101のように、6個以上の、例えば96個の全てのウェル118の直下にLED素子112が配置されている構成において、照射対象のウェルB5,E5,H5,A8,D8,G8のみを点灯させるような電気的制御を行うことによっても、遮光部材115を用いることなく、LED光ILの強度のばらつきを改善できることは明らかである。
【0172】
また、LED素子112を点灯または配置するウェル118の位置および個数については、照射対象のウェル118に混入する漏れ光が存在しない距離を保つことが可能な座標のウェル118を選択すれば十分であり、例示した座標のウェル118に限定されるものではない。
【0173】
このように、照射対象となるウェル118の、隣接するウェル118にはLED素子112が存在しないような状況を作り出すことにより、ウェルプレート117内の位置に違いによる光強度のばらつきを、遮光部材115を用いることなしに実現できる。
【0174】
本実施形態の場合、照射対象となるウェル118が限定される(減少する)ものの、例えば図30,31に示ように、遮光部材115の設置にかかるコストや、遮光部材115の設置により顕在化する発熱を抑えるための部品やコストの増加などといった問題を招くこともなく、遮光部材115を設けずとも、遮光部材115を設けるようにした場合とほぼ同等の光強度のばらつき抑制の効果が期待できる。
【0175】
以上、いくつかの実施形態を例示して本発明の態様について説明したが、一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
【0176】
例えば、ウェルプレート117としては96ウェルプレートに限らず、ウェル数が、6,12,24,48などの各種のマルチウェルプレートに適用可能である。
【0177】
また、色素を付けた免疫細胞を結合させる対象を、例えば、がん細胞以外のその他の疾患の原因などの除去が必要となる細胞(細胞片や組織片を含む)および生体に置き換えて、同様の光照射により破壊する施術などにも適用可能である。
【符号の説明】
【0178】
1 生体用照射装置(光照射装置)
10 照射装置本体
11 基台
12 軸部
13 アーム部
13a 支持部材
14 保持部
15 光源部
16 装着部
16a 着脱機構(凹部)
21 アダプタ部(第1治具)
22 位置決め部材(第2位置決め部材)
23 位置決め部材(第1位置決め部材/第2治具)
31 制御装置(制御部)
33 光検出器(検出部)
33a 受光面
33A アダプタ(ステージ部材)
101 細胞用照射装置(光照射装置)
110 照射装置本体
112 LED素子(光源)
115 遮光部材(マスク)
115A 樹脂板
115C 反射材(反射部材)
116 貫通孔
117 ウェルプレート(マイクロプレート)
118 ウェル(収容部)
121 治具(位置決め部材)
121a 着脱部材
121b 取付部
121c 伸縮部(スライダ)
121d 回転部
122 アーム部
122a,122b,122c 回転器
122d,122e 伸縮器(スライダ)
122f 先端器
131 制御装置(制御部)
133 光検出器(検出部)
133S 受光センサ
135 受光部
141 ケース
143,144 突起部
IL LED光
OR 生体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
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図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31