(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068134
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】逆感熱性ポリマ発泡体配合物の医療用途に関するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/10 20170101AFI20240510BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240510BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240510BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240510BHJP
A61K 38/14 20060101ALI20240510BHJP
A61K 31/7036 20060101ALI20240510BHJP
C07H 15/234 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61K47/10
A61K9/12
A61K47/06
A61P17/02
A61K38/14
A61K31/7036
C07H15/234
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023181801
(22)【出願日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】63/423,308
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523401180
【氏名又は名称】クリティカル イノベーションズ リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100126848
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】ロス アイ.ドナルドソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン アームストロング
(72)【発明者】
【氏名】オリバー ブキャナン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ケンブリッジ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ネリー クリスターナ
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057CC04
4C057DD01
4C057JJ40
4C076AA24
4C076BB31
4C076CC32
4C076DD09P
4C076DD09V
4C076DD38X
4C076EE23P
4C076EE23V
4C076FF35
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA03
4C084DA44
4C084MA05
4C084MA13
4C084NA03
4C084NA10
4C084ZA89
4C084ZA90
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA09
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA63
4C086NA03
4C086NA10
4C086ZA89
4C086ZA90
(57)【要約】
【課題】逆感熱性ポリマ発泡体配合物に関係する改良型システムおよび方法を提供する。
【解決手段】本明細書中で開示されているのは、逆感熱性ポリマ発泡体組成物を圧力下に維持しそのバルブの開放時点で組成物を分注するように設計されたバルブ付き容器内に保管されるように構成された加圧治療組成物である。組成物が容器から分注された後、膨張性構成成分(例えば圧縮気体または揮発性液体)の蒸発は、逆感熱性ポリマ溶液を発泡させることができる。逆感熱性ポリマ溶液の分注により生成される減圧は、その温度を下げて、さらに液胞状態の形での分配を容易にすることができる。逆感熱性ポリマ溶液は、温められた時点で(例えば身体部分上または中にひとたび分注された時点で)液体からゲルへの逆相変化を起こすことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合物を圧力下に維持し、バルブ容器のバルブの開放時点で配合物を分注するように設計されたバルブ付き容器内に保管されるように構成された加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物であって、前記配合物は、
前記配合物の約15w/w%~約25w/w%のエチレンオキシドと酸化プロピレンとのコポリマの水溶液であって、前記水溶液が、約10℃~約20℃で液体からゲルへの逆相変化を起こすように構成されている水溶液と;
防腐剤と;
結果として前記配合物のpHを約6.25~6.75にするpH調整剤と;
前記配合物の総質量の約9%~約13%を構成する液化ハイドロフルオロカーボンガスである膨張性構成成分と;
を含み、
前記配合物は、安定した巨視的に均質な溶液を構成し、
前記配合物が前記容器から分注された後、前記液化ハイドロフルオロカーボンガスが前記配合物を発泡させるように、前記配合物は、前記容器から展開されるように構成されており、かつ
前記配合物は、局所的に適用されるように構成されている、
加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項2】
さらに、前記バルブ付き容器内で前記配合物からピストンにより分離されている駆動ガスによって前記バルブ容器から展開されるように構成された、請求項1に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項3】
前記エチレンオキシドと前記酸化プロピレンとの前記コポリマが、P188、P237、P338およびP407からなる群の中から選択されたポロキサマである、請求項1または2に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項4】
前記エチレンオキシドと前記酸化プロピレンとの前記コポリマの水溶液が、前記配合物の約17.5w/w%である、請求項1または2に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項5】
さらに保湿剤を含む、請求項1または2に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項6】
前記保湿剤が前記配合物の約8.5w/w%~約17.5w/w%である、請求項5に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項7】
前記防腐剤がフェノキシエタノールである、請求項1または2に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項8】
前記防腐剤が前記配合物の約1w/w%である、請求項7に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項9】
前記pH調整剤がリン酸緩衝剤である、請求項1または2に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項10】
取外し可能なキャップを有するアプリケータ先端部を通して前記容器から展開されるように構成されている、請求項1または2に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項11】
配合物を圧力下に維持し、バルブ容器のバルブの開放時点で前記配合物を分注するように設計されたバルブ付き容器内に保管されるように構成された加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物であって、前記配合物は、
エチレンオキシドと酸化プロピレンとのコポリマの水溶液であって、前記水溶液が、液体からゲルへの逆相変化を起こすように構成されている水溶液と;
防腐剤と;
pH調整剤と;
液化ハイドロフルオロカーボンガスである膨張性構成成分と;
を含み、
前記配合物は、安定した巨視的に均質な溶液を構成し、
前記配合物が前記容器から分注された後、前記液化ハイドロフルオロカーボンガスが前記配合物を発泡させるように、前記配合物は、前記容器から展開されるように構成されており、
前記配合物は、局所的に適用されるように構成されており、かつ
前記配合物は、最初に、より容易に展延するようにより低い粘度で前記容器から展開されるように構成され、身体と接触した時点で粘度がより高くなる、
加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項12】
前記エチレンオキシドと前記酸化プロピレンとの前記コポリマが前記配合物の約15w/w%~約25w/w%である、請求項11に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項13】
前記配合物の約8.5w/w%~約17.5w/w%の保湿剤をさらに含む、請求項11または12に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項14】
前記pH調整剤が、結果として前記配合物のpHを約6.25~約6.75にする、請求項11または12に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項15】
前記液化ハイドロフルオロカーボンガスが前記配合物の総質量の約9%~13%を構成する、請求項11または12に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物。
【請求項16】
加圧バルブ容器であって、前記加圧バルブ付き容器は:
バルブを含む容器と;
前記容器内に保管された請求項1または11に記載の加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物であって、前記容器が、前記配合物を圧力下に維持し、バルブの開放時点で前記配合物を分注するように構成されており、前記容器は、前記配合物が前記容器から分注された後に前記液化ハイドロフルオロカーボンガスが前記配合物を発泡させるように、前記配合物を展開するように構成されており、前記配合物が、前記容器からの展開後に局所的に適用されるように構成されている、加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物と;
を含む加圧バルブ容器。
【請求項17】
前記加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物を駆動ガスから分離するピストンをさらに含む、請求項16に記載の加圧バルブ付き容器。
【請求項18】
前記駆動ガスが、前記膨張性構成成分と同じ液化ハイドロフルオロカーボンガスである、請求項17に記載の加圧バルブ付き容器。
【請求項19】
表面部域全体にわたり前記発泡体を分散させるように構成されたスプレッダを含むアプリケータ先端部をさらに含む、請求項16ないし18のいずれか1項に記載の加圧バルブ付き容器。
【請求項20】
前記配合物がさらに、前記配合物の約8.5w/w%~約17.5w/w%で保湿剤を含む、請求項16ないし18のいずれか1項に記載の加圧バルブ付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
共同所有出願
同じ発明者らのうちの少なくとも1名を有する「合成ポリマ配合物の医療用途に関するシステムおよび方法」なる名称の米国特許第11,207,060号の全体が、参照により本明細書に組込まれている。
本発明は、USA MED RESEARCH ACQ ACTIVITYが発行した契約W81XWH-22-C-0013「外傷組織の高度創傷ケア用のSuccor Combat Foam」の下で政府の支援を受けてなされたものである。政府は本発明に一定の権利を有する。
本開示は概して、合成ポリマ発泡体の製造および/または送達に関連するシステム、方法および/または組成物に関する。いくつかの実施形態の下で、本開示は、具体的に医療分野および身体に対する合成ポリマ発泡体の送達に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ポリマ組成物は、止血、鎮痛、抗真菌剤、抗菌剤、抗微生物剤、環境の安定化(例えばpH調節)、創傷治癒、創傷組織の再生、免疫変調および生物膜の阻害を含めた広範囲の治療目標を達成するために開発されてきた。治療上のメリットは、合成ポリマ自体の固有の特性および/または生物活性剤および/または医薬品の含有物に由来する。
【0003】
以上に記載された用途の多数のために、いずれかの治療組成物が、適用後一定の持続期間中、例えば数時間および数日間、創傷表面と接触した状態にとどまることが望ましい。これは一般に、組成物を粘性クリーム、軟こうまたはジェルとして調合することによって達成される。しかしながら、このような粘性配合物は、身体表面上の創傷に対し局所的に適用するのが困難で時間がかかる可能性があり、概して深い創傷または体腔内で使用するのには不適である。
【0004】
いくつかの治療組成物は、逆感熱特性を示す合成ポリマ水溶液を基材としており、ここで溶液は、温度上昇に伴う粘度の上昇およびより低温での粘度の低下を結果としてもたらす温度依存性の相転移を起こす。
【0005】
例えば、先行技術は、異なる医薬品の送達のための逆感熱性ポリマの多数の使用を開示している。これらには、Haslamらに対する特許文献1、Ronらに対する特許文献2およびBahulekarらに対する特許文献3が含まれる。これらにはさらに、Schwarzらに対する特許文献4、Schwarzに対する特許文献5、Vogelらに対する特許文献6、およびVogelらに対する特許文献7が含まれる。さらに、Kolbに対する特許文献8(および関連する特許文献9)、Wilkieに対する特許文献10、およびCohnらに対する特許文献11(および関連する特許文献12)が含まれる。しかしながら、これらは全て、ジェル、スプレーまたはパッドとしての逆感熱性ポリマの使用について記述しており、これらは所与の表面部域および/または体積全体にわたり展延するのが困難な場合がある。
【0006】
さらに、Rodeheaverらに対する特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16およびRodeheaverらに対する特許文献17、ならびにEdlichらに対する特許文献18およびKollerらに対する特許文献19は、時として、表面活性剤ポリマ(すなわち材料の表面張力を低下させる能力を有する物質)の使用について記載しており、そのうちのいくつかは、他の生物活性剤および/または薬剤と組合わせた逆感熱性ポリマである。しかしながら、これらは全て、ジェル、スプレーまたはパッドとしてのこのようなポリマの使用について記述しており、これらは所与の表面部域および/または体積全体にわたり展延するのが困難な場合がある。
【0007】
最後に、Laubに対する特許文献20は、患者の体腔に活性作用物質を送達するための医療発泡体について記述している。いくつかの実施形態において、これは、水に10w/w%~30w/w%のポロキサマ(poloxamer)の生体適合性組成物を含む、ポロキサマを含んでいる。しかしながら、この開示は、患者の体内での腔内使用に適合されたものであり、無傷のまたは損傷を受けた皮膚(例えば熱傷、剥離、切り傷、擦り傷、剥離組織負傷、外科的切開、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、動脈性潰瘍、褥瘡、放射線潰瘍、外傷性創傷、難治性創傷、合併症の難治性創傷などおよび/またはそれらの組合せ)に対する局所的使用のための発泡体について記述していない。
【0008】
以上で言及した特許および公開特許出願の各々は、参照により本明細書に組込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,474,752号明細書
【特許文献2】米国特許第6,316,011号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0294760号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0008610号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0147585号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2011/0087207号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2008/0181952号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0191768号明細書
【特許文献9】米国特許第8,062,282号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2008/0208163号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2008/0031847号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2013/0158589号明細書
【特許文献13】米国特許第8,871,248号明細書
【特許文献14】米国特許第9,283,278号明細書
【特許文献15】米国特許第9,603,966号明細書
【特許文献16】米国特許第9,884,136号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2017/0216480号明細書
【特許文献18】米国特許第5,635,540号明細書
【特許文献19】米国特許第10,456,416号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2018/0169012号明細書
【特許文献21】米国特許出願公開第2023/0030893号明細書
【特許文献22】米国特許第9,616,203号明細書
【特許文献23】米国特許第10,046,147号明細書
【特許文献24】米国特許第10,814,119号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2021/0106344号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、逆感熱性ポリマ発泡体配合物に関係する改良型システムおよび方法を提供することにより、先行技術における欠陥を克服し、実質的に軽減する。さまざまな実施形態において、本開示は、逆感熱性ポリマ発泡体組成物を圧力下に維持しそのバルブの開放時点で組成物を分注するように設計されたバルブ付き容器内に保管されるように構成された加圧治療組成物である。多くの実施形態の下で、組成物が容器から分注された後、膨張性構成成分(例えば圧縮気体または揮発性液体)の蒸発は、逆感熱性ポリマ溶液を発泡させる。多くの実施形態の下で、逆感熱性ポリマ溶液の分注により生成される減圧は、その温度を下げて、さらに液胞状態の形での分配を容易にする。多くの実施形態の下で、逆感熱性ポリマ溶液は、温められた時点で(例えば身体部分上または中にひとたび分注された時点で)液体からゲルへの逆相変化を起こす。
【0011】
本出願は、例えば熱傷、剥離、切り傷、擦り傷、剥離組織負傷、外科的切開、化学的および/または生物兵器剤(例えば硫黄マスタード、発疱剤、神経ガス)による創傷、他の外傷性創傷またはそれらの組合せなどの急性負傷と同様、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、動脈性潰瘍、褥瘡(例えば褥瘡性潰瘍)、放射線潰瘍、外傷性創傷、難治性創傷、合併症難治性創傷などおよび/またはそれらの組合せなどの慢性創傷を含むがこれらに限定されない、外傷性負傷および急性および慢性創傷の治療のために特に有利である合成ポリマ配合物について記述する。これらの医学的問題のいくつかの処置については、一般に体表に適用されている一方で、他の問題の処置については、合成ポリマは身体内(例えば創傷内、体腔内または潜在的空間内または器官内)に展開されている。
【0012】
本出願中で開示される治療組成物は、逆感熱特性を示す合成ポリマ水溶液を基材としており、ここで溶液は、温度上昇に伴う粘度の上昇およびより低温での粘度の低下を結果としてもたらす温度依存性の相転移を起こす。本明細書で開示されている合成ポリマ組成物の場合、多くの実施形態において、この相変化は、完全に熱可逆性(すなわち、温度変化に対して可逆的)であり、化学反応に起因せず、むしろポリマ溶液の固有特性に起因する。開示された組成物は、以下の利点を有する;1)初期粘度が低いため適用が容易である;2)発泡体への膨張に起因して被覆率が増強される;および3)身体との接触時の熱により誘発される粘度上昇に起因して創傷表面上で保定時間が延長される。このような組成物およびそれらの利点は、以前には知られていなかったものである。
【0013】
さまざまな実施形態の下で、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は、1つ以上のタイプの逆感熱性ポリマを含む。多くの実施形態の下で、逆感熱性ポリマ溶液は、温めた時点で液体からゲルへの逆相変化を起こす。
【0014】
いくつかの実施形態の下で、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は、エチレンオキシド(EO)と酸化プロピレン(PO)の1つ以上のコポリマの溶液(例えば水溶液の形で)を含む。このようなコポリマは、約1kg/mol~約100kg/molの平均分子質量および5:95~95:5のEO対POの質量比を有するEOとPOのランダムまたはブロックコポリマであってよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、ブロックコポリマはポロキサマである。ポロキサマは、一般式(EO)x(PO)y(EO)xを有するEOとPOの線状A-B-Aトリブロックコポリマであり、ここでxおよびyはブロック内のEOおよびPOモノマ単位の数を表わす。約1kg/mol~約15kg/molの範囲内の分子質量および8:2~1:9のEO:PO質量比を有する異なるポロキサマが市販されている(例えば、BASF製のPLURONIC(登録商標)コポリマ)。一定の実施形態においては、ブロックコポリマは、医療用のNFグレードで製造されるポロキサマであり、これは医薬用途に承認されているものである。例としては、ポロキサマP188、P237、P338およびP407があり、Pluronic(登録商標)F68、F87、F108およびF127としても知られている。
【0015】
いくつかの実施形態においては、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は、1つ以上のポリオールコポリマ(例えばポロキサマ、メロキサポール、ポロキサミン)の溶液を含む。このようなポリオールコポリマの例は、参照により本明細書に組込まれているRodeheaverらに対する特許文献14中に列挙されている。
【0016】
実施形態の逆感熱性ポリマは、逆感熱性ポリマの好適な乾燥配合物と、例えば(例えば水溶液を形成するための)水などの溶媒とを混合することによって水和されてよい。逆感熱性ポリマは、当該技術分野において公知の任意の方法によって水和されてよい。いくつかの実施形態において、逆感熱性ポリマは、約5w/w%~約85w/w%、約10w/w%~約20w/w%、約15w/w%~約25w/w%、20w/w%~約30w/w%、約25w/w%~約35w/w%、約40w/w%~約50w/w%、45w/w%~約55w/w%、50w/w%~約60w/w%、約55w/w%~約65w/w%、および/または約60w/w%~約70w/w%の範囲内の濃度で組成物内に存在する。追加の具体的例には、約10w/w%、約15w/w%、約17.5w/w%、約18w/w%、約20w/w%、約25w/w%、約30w/w%、約40w/w%、約42w/w%、約44w/w%、約46w/w%、約48w/w%、約50w/w%、約52w/w%、約54w/w%、約56w/w%、約58w/w%、および/または約60w/w%が含まれる。
【0017】
いくつかの実施形態の下で、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は、溶液が粘度を著しく増大させ(例えば好ましいゲル点まで温められた時点で強いゲルを形成する)冷却された時点で粘度を低下させるような形で逆相変化特性を示すような適切な濃度の1つ以上の逆感熱性ポリマの水溶液である。ブロックコポリマのタイプおよび溶液中の適切な濃度を選択することにより、身体内または身体上で発生すると予測される温度よりも低い温度で溶液が低粘度の液体となるように、この逆相変化を所望の温度範囲にわたり発生するように調整することができる(例えば、約5~10℃未満で液体であるが、約20~30℃より高い温度では極めて高い粘度のゲルになる)。いくつかの実施形態において、逆感熱性ポリマ発泡体配合物のゲル点は、約5℃~約40℃、約5℃~約10℃、約10℃~約15℃、約15℃~約20℃、約20℃~約25℃、または約25℃~約30℃である。具体的例には、約12℃、約13.5℃、約17.4℃、約20℃、約25℃、約28℃、30℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃および約40℃が含まれる。
【0018】
多くの実施形態の下で、逆感熱性ポリマ発泡体配合物の逆相特性は、この開示の主要な利点を提供し、こうしてこの逆感熱性ポリマ発泡体配合物は、身体への送達(例えば外部への噴霧、内部空洞への外部噴霧)の後、極めて高粘度のゲルに至り(例えば物理的障壁を提供する;組織を安定化する;身体上に包帯剤を維持する;治療薬を放出する;および/または物理的タンポナーデを使用する)、より展延が容易で(例えばより大きな表面部域全体にわたり;より小さなアパーチャを通して)、かつより液状の発泡体として展開することになる。膨張性構成成分の好適な選択(例えば圧縮気体または揮発性液体)と併せて適切に適合された逆相特性を有する逆感熱性ポリマ発泡体配合物を使用することによって、これらの相反する要件に対する単純な解決法が提供される。多くの実施形態において、逆感熱性ポリマ溶液の逆相特性および膨張性構成成分の特性は、溶液の吐出に伴う膨張性構成成分の膨張に起因する冷却効果によって、ポリマ溶液が保管容器から出るときに低粘度液体形状にあり、こうして患者への急速な送達が容易になることが保証されるように配慮されている。送達後、患者の体温は逆感熱性ポリマ溶液の粘度を上昇させ高粘度ゲル発泡体を形成させる。ポリマ溶液の逆相特性のさらなる利点は、粘性ゲルを必要に応じて(例えば冷水または室温の水または通常の生理食塩水の灌注により)冷却し、その時点で液体形態に戻すことによって、後で容易に除去できるということにある。
【0019】
さまざまな実施形態の下で、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は1つ以上の膨張性構成成分(例えば圧縮気体および/または揮発性液体)を含む。多くの実施形態において、膨張性構成成分は、逆感熱性ポリマ溶液中に溶解しているかまたはこの溶液全体に均等に分散している1つ以上の揮発性またはガス状の膨張性気体および/または揮発性液体である。多くの実施形態において、共に混合された時点で、膨張性構成成分と逆感熱性ポリマ溶液は、安定した巨視的に均質な溶液を形成する。多くの実施形態において、逆感熱性ポリマ発泡体配合物が容器から分注された時点で、膨張性構成成分は蒸発して溶液を発泡させる。
【0020】
いくつかの実施形態の下で、膨張性構成成分は、高圧下に保たれたポリマ溶液内に溶解しているかまたはこの溶液全体にわたり均等に分散している圧縮気体および/または揮発性液体である。圧縮された膨張性構成成分は、その保管容器からの放出に伴う圧力の低下に起因して、膨張しかつ/またはガス状の形態に蒸発し、これにより逆感熱性ポリマ溶液をひとたび分注された時点で発泡させることになる。この膨張性構成成分は、身体に分注されるのに好適な多くの医療グレードの気体のいずれか1つであってよい。
【0021】
いくつかの実施形態の下で、この膨張性構成成分は、フッ素化炭化水素(すなわちハイドロフルオロカーボンまたはHFC)あるいはペルフルオロカーボンなどの1つ以上の有機ハロゲン化物化合物である。例えば、いくつかの実施形態において、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は、689KPa(1平方インチあたり100ポンド(psi))の圧力下で液体形態の1,1,1,2-テトラフルオロエタン(すなわちノルフルラン、R-134a)と混合される。ポリマとハイドロフルオロカーボンのこの混合物は、ひとたび保管キャニスタから吐出された時点で、発泡ポリマ溶液を提供する。したがって、多数の実施形態の下で、逆感熱性ポリマ発泡体配合物を発泡させるために、身体内部のいかなる構成成分(例えば水)との化学反応も必要とされない。
【0022】
いくつかの実施形態の下で、この膨張性構成成分は、以下のもののうちの1つ以上である:空気、ハイドロフルオロカーボン、ペルフルオロカーボン、二酸化炭素、水素、ヘリウム、アルゴン、亜酸化窒素、窒素、酸素およびそれらの混合物。
【0023】
いくつかの実施形態において、逆感熱性ポリマ発泡体配合物中に存在する膨張性構成成分は、体積%で、約1w/w%~約60w/w%、約1w/w%~約3w/w%、約2w/w%~約4w/w%、約3w/w%~約5w/w%、約4w/w%~約6w/w%、約5w/w%~約7w/w%、約6w/w%~約8w/w%、約7w/w%~約9w/w%、約8w/w%~約10w/w%、約9w/w%~約11w/w%、約10w/w%~約12w/w%、約11w/w%~約13w/w%、約12w/w%~約14w/w%、約13w/w%~約15w/w%、および/または約15w/w%~約20w/w%である。具体的例には、約1w/w%、約2.5w/w%、約5w/w%、約10w/w%および約14w/w%が含まれる。
【0024】
多くの実施形態の下で、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は、当初キャニスタ内に格納され、そこからバルブまたは他のメカニズムを介して分注される。圧力下で物質を送達するためのキャニスタは、異なる実施形態において異なるタイプの膨張タンクを利用することができ、これらのタンクは、いくつかの実施形態において、噴霧器、ねじ式、イージークリックオン(easy click on)、貫通式といった特徴のうちの1つ以上を含む。さまざまな実施形態の下で、キャニスタは、逆感熱性ポリマ発泡体配合物を格納するための充分な強度を有する異なる種類の圧力容器である(例えば、最高827、965、1103、1241、1378KPa(平方インチあたり最高120、140、160、180または200ポンド))。
【0025】
これらは、前発泡および/または後発泡のゲル構成で逆感熱性ポリマ発泡体配合物を送達する。いくつかの実施形態の下で、これらのキャニスタは1つ以上の駆動ガス(すなわち推進ガスを格納する。いくつかの実施形態の下で、駆動ガスはピストン、膜および/または袋により、送達すべきポリマから分離した状態に保たれ、こうして、圧力を伝達できるものの、身体に送達すべき作用物質と直接混合しない。いくつかの実施形態の下では、ガスの代りに、ピストンは、ばね、他の弾力性付勢手段によってか、またはシリンジ様のアプリケータから直接推進される。多くの実施形態の下で、駆動ガスは1つ以上のエアロゾルスプレー高圧ガスである。いくつかの実施形態において、駆動ガスは、液体または固体物質の蒸発または昇華によって生成され得る蒸気を含む。いくつかの実施形態において、駆動ガスは、化学反応(例えば酸塩基反応)から生成される。いくつかの実施形態においては、反応してガスを生成する化学反応物質が存在する。
【0026】
多くの実施形態の下で、キャニスタは、逆感熱性ポリマ発泡体配合物を(例えば患者の身体上または身体内に)適用するために、送達アプリケータに連結されている。圧力下で物質を送達するためのアプリケータは、当該技術分野において周知であり、異なる実施形態で、異なるタイプが利用される。例としては、フラットスプレイ、クイックチェンジ、超広偏向、ノードリップ(no-drip)、クイックディスコネクト、偏向、フルコーン、詰まり耐性、直角、大容積、スクエアパターン、ソリッドストリーム、高圧流量調整可能、角度調整可能、回転式、霧化、中空コーン、ミスト、ウルトラファイン、回転式および/または旋回式などのさまざまなノズルアタッチメントが含まれる。
【0027】
いくつかの実施形態の下で、アプリケータは、表面部域上に(例えば皮膚上で局所的に)逆感熱性ポリマ発泡体を分散させるように設計されている。いくつかの実施形態の下で、アプリケータは、身体部域内(例えば貫通創内、体腔内)に逆感熱性ポリマ発泡体を分散させるように設計されている。いくつかの実施形態の下で、アプリケータは、保護眼鏡に連結する管類を含む(参照により本明細書に組込まれている特許文献21(米国特許出願第17/876,187号)中に見られる通り)。いくつかの実施形態の下で、アプリケータは、針、トロカール、または、身体への逆感熱性ポリマ発泡体の送達を支援する他の機器である。例としては、各々が参照により本明細書に組込まれている特許文献22;特許文献23および特許文献24および特許文献25に開示されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態において、逆感熱性ポリマ発泡組成物はさらに、保湿剤、防腐剤、pH調整剤、治療薬、および/または他の添加剤といった添加物のうちの1つ以上を含む。保湿剤は例えば、グリセリンであってよい。さまざまな実施形態の下で、このような保湿剤は、約1w/w%~約40w/w%、約1w/w%~約5w/w%、約5w/w%~約10w/w%、約10w/w%~約15w/w%、および/または約15w/w%~約25w/w%の範囲の濃度で存在し得る。具体的例としては、約1w/w%、約2.5w/w%、約5w/w%、約10w/w%、約12.5w/w%および約14w/w%が含まれる。
【0029】
いくつかの実施形態において、防腐剤は、逆感熱性ポリマ発泡組成物内の細菌、真菌および/または他の微生物の増殖の阻害を提供する。いくつかの実施形態において、防腐剤は例えば、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、PHMB、および/またはグルコン酸クロルヘキシジンである。さまざまな実施形態において、このような防腐剤は、約0.1w/w%~約2w/w%、約0.1w/w%~約1w/w%、約0.5w/w%~約1.5w/w%、約1w/w%~約2w/w%または約0.8w/w%~約1.2w/w%の範囲内の濃度で存在してよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、防腐剤は全く存在しない。いくつかの実施形態において、製品は滅菌される。いくつかの実施形態の下で、逆感熱性ポリマ発泡組成物は、最終的に滅菌される(すなわち、その最終容器および/または包装材料内で滅菌される)。いくつかの実施形態の下で、逆感熱性ポリマ発泡組成物は、段階アプローチを用いて最終的にではないが滅菌される(例えば、加熱方法を介してポリマ溶液を滅菌し、その後滅菌濾過によってガスを入れる)。さまざまないくつかの実施形態において、逆感熱性ポリマ発泡組成物は、放射線(例えば電子ビーム、X線、ガンマ線)、湿式加熱(すなわち蒸気)、乾式加熱、化学的、および/またはガス(例えばエチレンオキシドガス、気化した過酸化水素、二酸化塩素ガス、気化した過酢酸、二酸化窒素)によって部分的または完全に滅菌される。いくつかの実施形態の下で、逆感熱性ポリマ発泡組成物は、滅菌プロセス中の品質劣化を防ぐためまず冷却される(例えば、X線放射の適用前の冷却)。いくつかの実施形態の下で、キャニスタは、無菌手術室環境内での使用を可能にする目的で、密封容器に入っている(例えば密封容器から取り出した後、キャニスタの外側は無菌状態を維持し、製品は無菌手術の領域の上に滴下されてよい)。いくつかの実施形態の下で、キャニスタの外側は、二酸化塩素、二酸化窒素、気化した過酸化水素、エチレンオキシド、過酢酸、電子ビーム、X線、ガンマ線照射、および/または別の方法により滅菌される。いくつかの実施形態において、組成物は1つ以上のpH調整剤または緩衝剤、例えば二塩基性リン酸ナトリウム、クエン酸またはそれらの任意の組合せを含んでいてよい。さまざまな実施形態の下で、このようなpH調整剤または緩衝剤は、4.0~4.0、4.5~4.5、5.0~6.0、5.5~6.5、6.0~7.0、6.5~7.5、7.0~8.0、7.5~8.5、8.0~9.0または8.5~9.5の最終pHを有する逆感熱性ポリマ発泡組成物を結果としてもたらす。具体的例には、約6.0%、約6.5%、約7.0%、約7.5および約8.0のpHが含まれる。
【0031】
一定の実施形態において、逆感熱性ポリマ発泡組成物はさらに、1つ以上の治療薬を含む。これには、当該技術分野において公知の任意の治療薬が含まれる。例えば、有用な治療薬には、麻酔剤(例えば、リドカイン、ブピバカイン)、抗真菌剤(例えばグリセオフルビン、ケトコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン)、抗微生物剤または抗生剤、止血剤、再生および免疫変調成分(例えば神経再生用のイベルメクチン、TGF-1または血小板由来などの成長因子)、ステロイド(例えばヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、ベンゾカイン)、他の鎮痛剤(例えばアスピリン、NSAID)、抗炎症剤、生体細胞およびさまざまなタイプの生物学的作用物質ならびにそれらの組合せが含まれてよいが、これらに限定されない。
【0032】
いくつかの実施形態の下で、本開示は、細菌感染および/または他の感染の予防、減速、停止および/または治療を支援するための1つ以上の追加の物質(例えば抗微生物剤および抗生剤)を含む。これらには、抗菌剤(例えば抗生物質)、殺菌剤(例えばアルコール、アルデヒド、酸化剤、フェノール、第4級アンモニウム化合物、銀系生成物、銅系生成物、および/または他の殺菌剤)、および/または他の作用物質(例えば抗真菌剤)が含まれるが、これらに限定されない。抗生物質は当該技術分野において周知であり、本開示の組成物を調製するのに好適な抗生物質は限定されず、個別にまたは組合せた形で使用されてよい。例としては、セファロスポリン(例えば、セファゾリン、セフトリアキソン)、アミノグリコシド(例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン)、グリコペプチド(例えば、バンコマイシン)、フルオロキノロン(例えば、シプロフロキサシン)、およびその他(例えば、バシトラシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、ネオマイシン、チモール)が含まれる。いくつかの実施形態において、組成物は、粘膜付着剤(アルギン酸ナトリウム)を含む。
【0033】
実施形態の下で、本開示のメリットは、(例えば圧力下の缶内などで)安定した巨視的に均質な溶液中の分散および/または懸濁液として1つ以上の追加の物質を維持する逆感熱性ポリマ発泡組成物の能力である。これは特に、逆感熱性ポリマの発泡において部分的または完全に可溶でない可能性のある追加の物質にとって有益である。部分的または完全に可溶でないものの、感熱性ポリマ発泡組成物の粘度および/またはゲル化は、安定した巨視的に均質な溶液中で1つ以上の追加の物質の均質な分散を維持する。例えば、これは、1つ以上の追加の物質が重力および/または他の相互作用力に起因して凝集するあるいは他の形で底に沈殿する可能性がある標準溶液(例えば水溶液)との比較である。
【0034】
いくつかの実施形態において、抗生物質は例えばゲンタマイシンまたはトブラマイシンを含んでいてよく、約0.1w/w%~約2w/w%、約0.1w/w%~約0.5w/w%、約0.5w/w%~約1.0w/w%、約1.0w/w%~約1.5w/w%、または約1.5w/w%~約2.0w/w%の範囲内の濃度で存在してよい。具体的例には、約0.1w/w%、約0.2w/w%、約0.3w/w%、約0.4w/w%、約0.5w/w%、約1.4w/w%、および約2.0w/w%が含まれる。いくつかの実施形態において、抗生物質は例えばバンコマイシンを含んでいてよく、約0.1w/w%~約6w/w%、約0.1w/w%~約0.5w/w%、約0.5w/w%~約1.0w/w%、約1.0w/w%~約1.5w/w%、約1.5w/w%~約2.0w/w%、約2.0w/w%~約2.5w/w%、約2.5w/w%~約3.0%、約3.0w/w%~約3.5%、約3.5w/w%~約4.0%、約4.0w/w%~約4.5%、または約4.5w/w%~約5.0%の範囲内の濃度で存在していてよい。具体的例には、約0.4w/w%、約1.8w/w%、約2.0w/w%、約3.7w/w%そして約5.0w/w%が含まれる。
【0035】
いくつかの実施形態において、抗生物質は、逆感熱性ポリマ発泡体配合物の残りの部分の1つ以上の構成成分によって安定化される。例えば、一実施形態においてバンコマイシンが配合物によって安定化される。バンコマイシンは、溶解している場合、熱に敏感であり、経時的に分解することが知られている。この実施形態において、溶解したバンコマイシンは、逆感熱性ポリマ発泡体配合物中での保管の利点により、その効力をなおも維持しながら、より長い期間冷蔵せずに保管可能である。
【0036】
いくつかの実施形態の下で、本開示は、出血の防止、減速および/または停止を支援するための1つ以上の治療薬を含んでいる。これらには、内固性凝固経路の構成成分(例えば第XI、IX、VIII因子);外固性凝固経路の構成成分(例えば膜貫通受容体組織因子、血漿因子、第VII/VIIa因子;トラネキサム酸および他のアミノ酸およびその類似体;エピネフリンおよび他の血管収縮剤;トロンビン;フィブリノゲン;鉄酸カリウム;酸化および/または再生セルロースを含むセルロース;カリオン;スメクタイト顆粒;ゼオライト;キトサン;カルボキシメチルセルロースナトリウム;アミロペクチン;ミクロフィブリル状コラーゲン;没食子酸プロピル;硫酸アルミニウム;完全にアセチル化されたポリ-N-アセチルグルコサミン;関連物質;および他の凝血剤、血小板凝集剤、および出血を減少または停止させる物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
いくつかの実施形態の下で、本開示は、身体内での投与のための通常の濃度で、前述の治療薬の1つ以上を含む。いくつかの実施形態の下で、本開示は、局所的にまたは体腔に対して送達する目的で、経口および/または非経口投与を介して使用され得る濃度よりも高い濃度で前述の追加物質の1つ以上を含む。したがって、身体部域は、追加物質を高い濃度で有するが、全身的にはまたはその部域から離れたところではより低い濃度で存在する。こうして、必要とされる部位では高い濃度が、それよりも離れたところではより低い濃度が可能となり、全身的なおよび/またはより遠位の副作用は最低限に抑えられる。例えば、このように高濃度の作用物質の投与が毒性または他の副作用に起因して経口および/または非経口では不可能である場合に、対象部域において非常に高い局所的濃度を提供するために局所的に抗生物質を投与する場合がある。
【0038】
本開示が包含する組成物の他の実施形態は、安定剤、酸化防止剤、浸透圧調整剤、キレート剤、カルシウムキレート錯体、塩またはそれらの組合せなどの他の添加剤を含んでいてよい。例えば、いくつかの実施形態において、安定剤、例えば適切な医薬グレードの界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)またはサッカリド、例えばデキストロースなどを、本開示の組成物に添加してよく、いくつかの実施形態において、このような組成物は、従来の医薬品賦形剤および/または添加剤も含んでいてよい。例えば、好適な医薬品賦形剤には、安定剤、酸化防止剤、浸透圧調整剤、緩衝剤、およびpH調整剤が含まれてよく、好適な添加剤には、生理学的に生体適合性の緩衝剤(例えばトロメタミン塩酸塩)、キレート剤(例えばDTPAまたはDTPA-ビスアミド)またはカルシウムキレート錯体(例えばカルシウムDTPA、CaNaDTPA-ビスアミドなど)の添加、または任意には、カルシウムまたはナトリウム塩(例えば塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウムまたは乳酸カルシウム)の添加が含まれていてよい。従来の非毒性担体も、このような組成物中に取込まれてよく、これには例えば医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどが含まれていてよい。着色剤、増粘剤、潤滑剤などの追加の添加剤も、本開示の組成物に添加されてよい。いくつかの実施形態において、添加剤には、ドキシサイクリン、ブレオマイシン、テトラサイクリン、ポビドンヨード、タルク、シリカ(例えば、ヒュームドシリカ)、キナクリン、および/または化学療法剤が含まれる。
【0039】
いくつかの実施形態において、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は本質的に、1つ以上の逆感熱性ポリマ、水および膨張性構成成分からなる。逆感熱性ポリマは、約30w/w%~約40w/w%、約35w/w%~約45w/w%、約40w/w%~約50w/w%、約45w/w%~約55w/w%、および/または約50w/w%~約60w/w%の範囲内の濃度で組成物中に存在する。具体的例には、約40w/w%、約42w/w%、約44w/w%、約46w/w%、約48w/w%、約50w/w%、約52w/w%、約54w/w%、約56w/w%、約58w/w%および/または約60w/w%が含まれる。膨張性構成成分は、約1~5%、約3~7%、約5~9%、約7~11%、約9~13%、約11~15%、約13~17%、および/または約15~20%の範囲内の濃度で組成物中に存在する。具体的例には、約2%、約4%、約6%、約8%、約10%、約12%、約14%、約16%、約18%、および約20%が含まれる。いくつかの実施形態において、このような逆感熱性ポリマ発泡体配合物は無菌で製造される。
【0040】
いくつかの実施形態において、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は本質的に、1つ以上の逆感熱性ポリマ、水、膨張性構成成分、防腐剤、pH調整剤および1つ以上の治療薬からなる。逆感熱性ポリマは、約10w/w%~約20w/w%、約15w/w%~約25w/w%、約20w/w%~約30w/w%、約35w/w%~約45w/w%、および/または約40w/w%~約50w/w%の範囲内の濃度で組成物中に存在する。具体的例には、約14w/w%、約16w/w%、約18w/w%、約20w/w%、約22w/w%、約24w/w%、約26w/w%、約28w/w%、約30w/w%、約32w/w%、約34w/w%、約36w/w%、約38w/w%および約40w/w%が含まれる。膨張性構成成分は、約1~5%、約3~7%、約5~9%、約7~11%、約9~13%、約11~15%、約13~17%、および/または約15~20%の範囲内の濃度で組成物中に存在する。具体的例には、約2%、約4%、約6%、約8%、約10%、約12%、約14%、約16%、約18%、および約20%が含まれる。いくつかの実施形態において、このような逆感熱性ポリマ発泡体配合物は滅菌状態で製造される。防腐剤は、約0.25~0.75w/w%、約0.5~1w/w%、約0.75~1.25w/w%、約1~1.5w/w%、約1.25~1.75w/w%、約1.5~2w/w%、約1.75~2.25w/w%、約2.5~3w/w%、および/または約3~5w/w%の範囲内の濃度で組成物中に存在する。具体的例には、約0.5w/w%、約1w/w%、約1.5w/w%、約2w/w%、約3w/w%、約4w/w%、および約5w/w%が含まれる。pH調整剤は、約5~5.5、約5.25~5.75、約5.5~6、約5.75~6.25、約6~6.5、約6.25~6.75、約6.5~7、約6.75~7.25、約7~7.5、約7.25~7.75、約7.5~8、約7.75~8.25、約8~8.5、約8.25~8.75、および/または約8.5~9の範囲内のpHで組成物中に存在する。具体的例には、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5および約9が含まれる。1つ以上の治療薬は、個々の濃度が約0.01~1w/w%、約1~2w/w%、約2~3w/w%、約3~4w/w%、約4~5w/w%、約5~6w/w%、約6~7w/w%、約7~8w/w%、約8~9w/w%、約9~10w/w%、および/または約10~12w/w%の範囲内で組成物中に存在する。具体的例には、約0.1w/w%、約0.4w/w%、約0.5w/w%、約0.9w/w%、約1w/w%、約1.5w/w%、約2w/w%、約3w/w%、約3.7%、約4w/w%、約5w/w%、約6w/w%、約7w/w%、約8w/w%、約9w/w%および約10w/w%が含まれる。
【0041】
いくつかの実施形態において、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は本質的に、1つ以上の逆感熱性ポリマ、水、膨張性構成成分、防腐剤、pH調整剤および保湿剤からなる。逆感熱性ポリマは、約10w/w%~約20w/w%、約15w/w%~約25w/w%、約20w/w%~約30w/w%、約35w/w%~約45w/w%、および/または約40w/w%~約50w/w%の範囲内の濃度で組成物中に存在する。具体的例には、約14w/w%、約16w/w%、約17.5w/w%、約18w/w%、約20w/w%、約22w/w%、約24w/w%、約26w/w%、約28w/w%、約30w/w%、約32w/w%、約34w/w%、約36w/w%、約38w/w%および約40w/w%が含まれる。膨張性構成成分は、約1~5%、約3~7%、約5~9%、約7~11%、約9~13%、約11~15%、約13~17%、および/または約15~20%の範囲内の濃度で組成物中に存在する。具体的例には、約2%、約4%、約6%、約8%、約10%、約12%、約14%、約16%、約18%、および約20%が含まれる。いくつかの実施形態において、このような逆感熱性ポリマ発泡体配合物は滅菌状態で製造される。防腐剤は、約0.25~0.75w/w%、約0.5~1w/w%、約0.75~1.25w/w%、約1~1.5w/w%、約1.25~1.75w/w%、約1.5~2w/w%、約1.75~2.25w/w%、約2.5~3w/w%、および/または約3~5w/w%の範囲内の濃度で組成物中に存在する。具体的例には、約0.5w/w%、約1w/w%、約1.5w/w%、約2w/w%、約3w/w%、約4w/w%、および約5w/w%が含まれる。pH調整剤は、約5~5.5、約5.25~5.75、約5.5~6、約5.75~6.25、約6~6.5、約6.25~6.75、約6.5~7、約6.75~7.25、約7~7.5、約7.25~7.75、約7.5~8、約7.75~8.25、約8~8.5、約8.25~8.75、および/または約8.5~9の範囲内のpHで組成物中に存在する。具体的例には、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5および約9が含まれる。保湿剤は、約0.1w/w%~約10w/w%、5w/w%~約15w/w%、10w/w%~約20w/w%、約15w/w%~約25w/w%、約20w/w%~約30w/w%、約35w/w%~約45w/w%、および/または約40w/w%~約50w/w%の範囲内の濃度で組成物中に存在する。具体的例には、約4w/w%、約6w/w%、8w/w%、10w/w%、12w/w%、12.5w/w%、14w/w%、約16w/w%、約17.5w/w%、約18w/w%、約20w/w%、約22w/w%、約24w/w%、約26w/w%、約28w/w%、約30w/w%、約32w/w%、約34w/w%、約36w/w%、約38w/w%および約40w/w%が含まれる。
【0042】
いくつかの実施形態において、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は本質的に、1つ以上の逆感熱性ポリマ、水、膨張性構成成分、pH調整剤および1つ以上の治療薬からなる。逆感熱性ポリマは、約10w/w%~約20w/w%、約15w/w%~約25w/w%、約20w/w%~約30w/w%、約35w/w%~約45w/w%、および/または約40w/w%~約50w/w%の範囲内の濃度で組成物中に存在する。具体的例には、約14w/w%、約16w/w%、約18w/w%、約20w/w%、約22w/w%、約24w/w%、約26w/w%、約28w/w%、約30w/w%、約32w/w%、約34w/w%、約36w/w%、約38w/w%および約40w/w%が含まれる。膨張性構成成分は、約0.1~3%、約1~5%、約3~7%、約5~9%、約7~11%、約9~13%、約11~15%、約13~17%、および/または約15~20%の範囲内の個別濃度で組成物中に存在する。具体的例には、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約4%、約6%、約8%、約10%、約12%、約14%、約16%、約18%、および約20%が含まれる。いくつかの実施形態において、このような逆感熱性ポリマ発泡体配合物は滅菌状態で製造される。pH調整剤は、約5~5.5、約5.25~5.75、約5.5~6、約5.75~6.25、約6~6.5、約6.25~6.75、約6.5~7、約6.75~7.25、約7~7.5、約7.25~7.75、約7.5~8、約7.75~8.25、約8~8.5、約8.25~8.75、および/または約8.5~9の範囲内のpHで組成物中に存在する。具体的例には、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5および約9が含まれる。1つ以上の治療薬は、濃度が約0.01~1w/w%、約1~2w/w%、約2~3w/w%、約3~4w/w%、約4~5w/w%、約5~6w/w%、約6~7w/w%、約7~8w/w%、約8~9w/w%、約9~10w/w%、および/または約10~12w/w%の範囲内で組成物中に存在する。具体的例には、約0.1w/w%、約0.4w/w%、約0.5w/w%、約0.9w/w%、約1w/w%、約1.5w/w%、約2w/w%、約3w/w%約3.7%、約4w/w%、約5w/w%、約6w/w%、約7w/w%、約8w/w%、約9w/w%および約10w/w%が含まれる。いくつかの実施形態において、このような逆感熱性ポリマ発泡体配合物は、無菌で製造される。
【0043】
本明細書中に記載の方法は、多くの兆候を示すかまたはあらゆる数の身体条件に苦しむ患者を治療するために有用であり得る。いくつかの実施形態の下で、例としては、止血、麻酔、鎮痛、抗真菌、抗菌、抗微生物、環境安定化(例えばpH調節)、創傷治癒、創傷組織再生、免疫調節および/または抗生物膜の提供が含まれる。
【0044】
このような身体条件の例としては、熱傷、剥離、切り傷、擦り傷、外科的切開、および/または他の剥離組織負傷が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、このような身体条件は、化学的および生物学的脅威によってひき起こされる(例えば硫黄マスタード皮膚負傷など)。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、慢性創傷を治療するために使用されてよい。このような身体条件の例としては、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、動脈性潰瘍、褥瘡(例えば褥瘡性潰瘍)、放射線潰瘍、外傷性創傷および/または合併症の難治性創傷が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
いくつかの実施形態において、該方法は、身体に対して逆感熱性ポリマ発泡体配合物を局所的に適用するステップを含んでいてよい。いくつかの実施形態において、該方法は、身体内(例えば潜在性空間内、体腔内、器官内)に逆感熱性ポリマ発泡体配合物を適用するステップを含んでいてよい。いくつかの実施形態において、該方法は、非ヒト表面に対して直接逆感熱性ポリマ発泡体配合物を適用するステップを含んでいてよい(例えば非医薬品応用)。いくつかの実施形態の下で、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は、無生物、手術器具、手術室表面、患者の身体上に使用されかつ/または患者の体内に挿入されるように意図されている医療機器に対して直接適用される。
【0046】
実施形態において、該機器は、逆感熱性ポリマ発泡体配合物の実質的に均一な治療用コーティングを送達する。適用された時点での組成物の治療用コーティングの厚みは、創傷のサイズ、組成物を適用するのに利用可能な時間、利用可能な組成物の量および他の変数に応じて変動してよい。例えば、さまざまな実施形態において、適用された組成物の厚みは、約2.54mm(0.1インチ)、約6.35mm(0.25インチ)、約12.7mm(0.5インチ)、約19.05mm(0.75インチ)、約25.4mm(1インチ)、約31.75mm(1.25)インチ、約38.1mm(1.5インチ)、約44.45mm(1.75インチ)または約50.8mm(2インチ)であってよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、本開示は、身体上および/または身体内に逆感熱性ポリマ発泡体配合物を維持するための包帯剤を含む。広範囲の医療用包帯剤の選択肢を使用してよい。多くのこのような包帯剤は、負傷したおよび/または病気の組織の治癒を支援する。いくつかの実施形態において、本開示は、体腔(例えば貫通銃創)内に直接逆感熱性ポリマ発泡体配合物を挿入するためのアダプタを含む。いくつかの実施形態の下で、それは、細菌のコロニー形成を防止するために抗微生物剤を内含する、細菌の侵入に対する一時的障壁(例えば24時間未満)を提供する。いくつかの実施形態の下では、感染リスクが高い軟組織負傷に浸透するためにその使用が必要とされる。このような創傷の例としては、以下のリスク因子を伴うものが含まれるが、それらに限定されない:すなわち、戦場での負傷;予想される治療遅延;併発骨折;ひどい創傷部汚染;高エネルギー発射体;大きいおよび/または複雑な創傷;および/または著しい組織失活。いくつかの実施形態の下で、内含された抗微生物剤は、塩水および/または淡水環境からの細菌汚染物質をカバーするように適合されていてよい(例えばビブリオ属を網羅するためのシプロフロキサシン)。
【0048】
実施形態のいくつかの下で、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は、身体により一掃され、こうして後続する物理的除去の必要性を全く無くすことが可能である(例えば再吸収性)。他の実施形態においては、室温および/または冷却液体を用いた除去により配合物の除去を容易にするためにその熱可逆性が使用される。本開示のさまざまな実施形態が、以下の特徴のうちの1つ以上を有する:冷蔵の必要なく安定している;軍事活動において経験する極限の環境下で活性を維持する;細菌付着および/または生物膜の形成を防止する;細菌の多剤耐性株における薬剤耐性メカニズムを阻害する;発熱性でなくかつ/または器官に対する医原性の熱傷のリスクが最小限である;透明である;かつ/または組織を変色させない。
【0049】
以上のことから、本開示は、動物、特にヒトの体内での逆感熱性ポリマ発泡体配合物に関するシステムおよび方法を提供していることが分かる。本明細書では、本開示の実施形態を代表する一定の逆感熱性ポリマ発泡体配合物の特徴および利点を実証する実施例が提示されてきた。これらの実施例は、合成ポリマ、気体または揮発性液体のいずれかの特定の配合物および/またはその濃度または組合せに本開示の範囲を限定するように意図されていない。当業者にとっては、他のポロキサマ、他の合成ポリマ、他の膨張性気体そして任意には、発泡体を構築しかつ安定化するように意図された化合物を含めた他の構成成分を含有する配合物を使用してもよいということは明白である。
【0050】
更には、機器は、変動する長さ、サイズ、圧力および容量で作製でき、逆感熱性ポリマ発泡体配合物の精確な組成を、成人、小児および幼児を治療するために適切に変動させてよいということも明白であるはずである。本開示の実施形態について、ある程度詳細に説明してきたが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく構成要素の構造の詳細および配置に多くの変更を加えることができるということは明白である。本開示は例証を目的として本明細書中に記載されている実施形態に限定されないこと、そして一定の実施形態の要素を他の実施形態の要素と組合わせることができること、が理解される。以下の記述においては、本開示の追加の目的、利点、および新規の特徴が記載されており、以下の詳細な説明および図を検討した時点で当業者には明らかになるものである。説明された特徴の全てが所与のシステムまたは方法の中に組込まれる必要はない、ということを理解すべきである。
【0051】
本開示は、その精神または本質的属性から逸脱することなく、他の具体的形態で具体化されてよい。本開示は、本明細書中に記されている開示の異なる態様の全ての組合せを包含する。追加のより好ましい実施形態を説明するために、他の任意の単数または複数の実施形態と併せて本開示のいずれかおよび全ての実施形態を取り上げてもよい、ということが理解される。同様に、好ましい実施形態の各々の個別の要素は、その独自の独立した好ましい実施形態として個別に取り上げられるように意図されている、ということも理解すべきである。さらに、一実施形態のいずれの要素も、追加の実施形態を説明する目的でいずれかの実施形態からのあらゆる全ての他の要素と組合されるように意図されている。特定の実施形態について記述してきたが、本開示は、当該技術分野で許容されるだけの広い範囲を有するように意図されていることから、本開示がこの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。
【0052】
本明細書の主題は、添付図面と関連してさまざまな実施形態の以下の詳細な説明を考慮することにより、さらに完全に理解できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る、身体に逆感熱性ポリマ発泡体配合物を送達するためのシステムの一部分の等角図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る、身体に逆感熱性ポリマ発泡体配合物を送達するためのシステムの一部分の等角拡大組立て図である。
【
図3】
図3は、使用に先立ち組立てられた状態の、一実施形態に係る、身体に逆感熱性ポリマ発泡体配合物を送達するためのシステムの一部分の断面図である。
【
図4】
図4は、いくつかの実施形態にしたがって作製された異なる逆感熱性ポリマ発泡体配合物の試料表である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
さまざまな実施形態はさまざまな修正および変形形態に適しているものの、その細目は図面中に一例として示されており、以下で詳述されるものである。しかしながら、記述されている特定の実施形態に請求対象の発明を限定することは意図されていない。反対に、クレームにより定義されている通りの主題の精神および範囲内に入る全ての修正、等価物および代替案を網羅することが意図されている。
【0055】
以下の詳細な説明は、図面を参照しながら読むべきものであり、これらの図面では、異なる図面内の類似の要素には同じ付番がなされている。必ずしも原寸に比例していない図面は、例示的実施形態を描いており、本発明の範囲を限定するように意図されていない。
【0056】
図面を参照すると、
図1は、一実施形態の下で逆感熱性ポリマ発泡体配合物を保持し送達するために好適な送達容器を例示している。送達容器の本体は、キャニスタ100を含む。頂部にあるのは、取外しタブ22を含むキャップ20である。多くの実施形態において、取外しタブ22は、開封明示シールおよび/または不正開封防止シールである。取外しタブ22がひとたび除去されると、キャップ20をキャニスタ100から取外すことができる。
【0057】
図2は、拡大組立て図を示す。キャニスタ100は、放出装置64を格納するバルブ60に連結されている。キャニスタ、バルブおよび放出装置は、組合せた場合、共に内部圧力(例えば内部の逆感熱性ポリマ発泡体配合物に由来する)に耐えることができる。この実施形態において、放出装置64は、放出アクチュエータ62上への側圧により開放される。他の実施形態は、レバー、ボタン、プルタブ、捩り、押し、引張り、他の手動式解除メカニズムおよび/または電子手段を介した放出装置64の開放を含む。この実施形態では、放出アクチュエータ62に可逆的にねじ留めすることによって、アプリケータ40がバルブ60に連結する。他の実施形態では、バルブ60の別の部分に対する不可逆的連結および/または直接的連結が含まれる。アプリケータ40は、本実施形態においては一表面部域全体にわたり最適な形で逆感熱性ポリマ発泡体を分散させるように設計されているスプレッダ42と、発泡体を分注するためにこの実施形態ではユーザが(例えば指で)押圧するアプリケータ制御機構43と、複数のファランジであって、両方のファランジ44と交差する平面に対して垂直に直立する平面内でアプリケータ40が力で押圧されないかぎり発泡体の適用を防止するファランジ44と、を含む。最後に、キャップ20が頂部上に設置されて、アプリケータ40を格納しキャニスタ100および/またはバルブ60と連結する。
【0058】
図3は、一実施形態の断面図を示す。この図は、容器が、自由に移動するピストン80によって容器内部で上部空間102と下部空間104に内部で分割されていることを示している。ピストン80は、一方の空間からもう一方の空間内への液体または気体の移動を防止する1つ以上の耐圧シール82を有する。異なる実施形態の下で、シール82は、ピストンと一体であるかまたは、Oリングなどの別個の封止構成要素を用いて作られる。放出装置64が、アプリケータ40内へ開放している。キャニスタ100は、高圧ガス(例えば気体または揮発性液体)を下部空間104内に導入できるようにするため、気密バルブ106または他の類似の手段(例えば交換可能な栓)も格納している。送達容器が完全に組立てられ、いつでも使用できる状態になった時点で、上部空間102は、逆感熱性ポリマ発泡体配合物を格納している。多くの実施形態において、この配合物は、1つ以上の圧縮気体または揮発性液体(「膨張性ガス」)を含有し、これが、送達容器から放出された時点で逆感熱性ポリマ発泡体配合物を発泡させる。下部空間104は同様に、1つ以上の圧縮気体または揮発性液体(「駆動ガス」)を格納する。駆動ガスは、使用に先立ち(例えば容器が最初に逆感熱性ポリマ発泡体配合物で充填される際に)、送達容器の下部空間内に導入されるか、または、使用の時点で(例えば圧縮空気供給または加圧ガスシリンダなどの外部供給源への接続によって)送達容器の下部空間内に導入されてよい。
【0059】
この実施形態の主要な特徴は、下部空間104内の駆動ガスが、上部空間102内の逆感熱性ポリマ発泡体配合物から物理的に分離されていることにある。この実施形態の利点は、上部空間102の内容物が容器から充分に吐出されてしまうまで、下部空間104内の駆動ガスの圧力が、上部空間102内の膨張性ガスの圧力をつねに超えるように配慮され、こうして、バルブメカニズム64を介してアプリケータ40内に逆感熱性ポリマ発泡体配合物が放出されてしまうまで、膨張性ガスを圧縮形態に維持することができる、という点にある。いくつかの実施形態の下では、これは、膨張性ガスと駆動ガスを同じ圧縮気体および/または揮発性液体にすることによって達成されてよい。
【0060】
図3に関連して説明された実施形態とは異なり、いくつかの実施形態の下では、空間102と空間104(ひいては膨張性および駆動ガス)とを物理的に分離するためのピストン80(または関連する膜および/または袋)は全く存在しない。これらの実施形態の下では、駆動ガスは存在せず、その代り、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は膨張性ガスのみによって容器から外に推進される。
【0061】
いくつかの実施形態の下で、逆感熱性ポリマ発泡体配合物は、先に参照により本明細書に組込まれた特許文献21(米国特許出願第17/876,187号)、特許文献22;特許文献23および特許文献24および特許文献25中に記載されているものといった、追加の機能を有する送達デバイス内に統合される。いくつかの実施形態の下では、送達容器は、部品および/またはサイズを最小限に抑えるため、送達デバイス内に部分的にまたは完全に一体化されている。
【実施例0062】
以下の実施例は、開示の一定の実施形態をより詳細に説明しているが、当業者にとっては修正および変形形態が明白になるものであることから、単に例示的目的のみを意図されている。
【0063】
発泡性の逆感熱性ポリマ発泡体配合物の物理的特性を研究するための一連の実験用に試料混合物を作製し、展開特性をテストするために展開した。
【0064】
実施例1:結果として得られた例示的発泡体配合物
図4は、いくつかの実施形態にしたがって作製された異なる逆感熱性ポリマ発泡体配合物の試料の表を示す。
【0065】
実施形態においては、配合物を圧力下に維持しバルブ容器のバルブの開放時点で配合物を分注するように設計されたバルブ付き容器内に保管されるように、加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物を構成することができる。配合物は、約10℃~約15℃で液体からゲルへの逆相変化を起こすように構成されている配合物の約15w/w%~約25w/w%のエチレンオキシドと酸化プロピレンとのコポリマの水溶液を含むことができる。配合物はさらに、防腐剤、結果として配合物のpHを約6.25~6.75にするpH調整剤、および配合物の総質量の約9%~約13%を構成する液化ハイドロフルオロカーボンガスである膨張性構成成分を含むことができる。配合物は、安定した巨視的に均質な溶液であり得る。配合物は、配合物が局所的に適用されるように容器から分注された後、液化ハイドロフルオロカーボンガスが配合物を発泡させるように、容器から展開されるように構成され得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、配合物はさらに、ピストンによってバルブ付き容器内で配合物から分離されている駆動ガスによってバルブ容器から展開されるように構成されている。
【0067】
いくつかの実施形態において、エチレンオキシドと酸化プロピレンとのコポリマは、P188、P237、P338およびP407からなる群の中から選択されたポロキサマである。
【0068】
いくつかの実施形態において、エチレンオキシドと酸化プロピレンとのコポリマの水溶液は、配合物の約17.5w/w%である。
【0069】
いくつかの実施形態において、配合物はさらに保湿剤を含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、保湿剤はグリセリンである。
【0071】
いくつかの実施形態において、保湿剤は配合物の約8.5%~約17.5w/w%である。
【0072】
いくつかの実施形態において、保湿剤は配合物の約12.5w/w%である。
【0073】
いくつかの実施形態において、防腐剤はフェノキシエタノールである。
【0074】
いくつかの実施形態において、防腐剤は配合物の約1w/w%である。
【0075】
いくつかの実施形態において、pH調整剤はリン酸緩衝剤である。
【0076】
いくつかの実施形態において、配合物は、取外し可能なキャップを有するアプリケータ先端部を通して容器から展開されるように構成されている。
【0077】
実施形態において、加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物は、配合物を圧力下に維持し、バルブ容器のバルブの開放時点で配合物を分注するように設計されたバルブ付き容器内に保管されるように構成されている。配合物は、液体からゲルへの逆相変化を起こすように構成されているエチレンオキシドと酸化プロピレンとのコポリマの水溶液を含むことができる。配合物はさらに、防腐剤、pH調整剤、および液化ハイドロフルオロカーボンガスである膨張性構成成分を含むことができる。配合物は、安定した巨視的に均質な溶液であり得る。配合物は、配合物が容器から分注され、容器から展開されかつ配合物が局所的に適用された後に、液化ハイドロフルオロカーボンガスが配合物を発泡させるように構成され得る。配合物は、最初に、より容易に展延するようにより低い粘度で容器から展開されるように構成され、身体と接触した時点で粘度がより高くなる。
【0078】
いくつかの実施形態において、エチレンオキシドと酸化プロピレンとのコポリマは配合物の約15%~約25w/w%である。
【0079】
いくつかの実施形態において、配合物はさらに保湿剤を含む。
【0080】
いくつかの実施形態において、保湿剤はグリセリンである。
【0081】
いくつかの実施形態において、保湿剤は配合物の約8.5%~約17.5w/w%である。
【0082】
いくつかの実施形態において、保湿剤は配合物の約12.5w/w%である。
【0083】
いくつかの実施形態において、pH調整剤は約6.25~約6.75の配合物のpHを結果としてもたらす。
【0084】
いくつかの実施形態において、液化ハイドロフルオロカーボンガスは、配合物の総質量の約9%~13%を構成する。
【0085】
実施形態において、加圧バルブ容器は、バルブを含む容器と、容器内に保管された加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物を含むことができる。容器は、配合物を圧力下に維持し、バルブの開放時点で配合物を分注するように構成され得る。配合物は、約10℃~約20℃で液体からゲルへの逆相変化を起こすように構成された、配合物の約15%~約25w/w%のエチレンオキシドと酸化プロピレンとのコポリマの水溶液を含む。配合物はさらに、防腐剤、結果として配合物のpHを約6.25~6.75にするpH調整剤、および配合物の総質量の約9%~約13%を構成する液化ハイドロフルオロカーボンガスである膨張性構成成分を含む。配合物は、安定した巨視的に均質な溶液であり得る。容器は、配合物が局所的に適用されるように、配合物が容器から分注された後、液化ハイドロフルオロカーボンガスが配合物を発泡させるように、配合物を容器から展開させるように構成され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、容器は、加圧逆感熱性ポリマ発泡体配合物を駆動ガスから分離するピストンをさらに含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、駆動ガスは、膨張性構成成分と同じ液化ハイドロフルオロカーボンガスである。
【0088】
いくつかの実施形態において、容器は、取外し可能なキャップを有するアプリケータ先端部をさらに含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、アプリケータ先端部は、表面部域全体にわたり発泡体を分散させるように構成されたスプレッダを含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、配合物はさらに保湿剤を含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、保湿剤はグリセリンである。
【0092】
いくつかの実施形態において、保湿剤は配合物の約8.5%~約17.5w/w%である。
【0093】
いくつかの実施形態において、保湿剤は配合物の約12.5w/w%である。
【0094】
本明細書中では、システム、機器および方法のさまざまな実施形態が記述されてきた。これらの実施形態は、単に一例として示されているにすぎず、請求対象の発明の範囲を限定するように意図されていない。その上、記述されてきた実施形態のさまざまな特徴は、多くの追加の実施形態を派生させるため、さまざまな形で組合されてよいことを理解されたい。その上、さまざまな材料、寸法、形状、構成および場所などが、開示されている実施形態で使用するために記述されてきたが、開示されたもの以外のものも、請求対象の発明の範囲を超えることなく利用可能である。
【0095】
当業者であれば、本明細書の主題には、以上で記述したいずれかの個別の実施形態において例示されているものよりも少ない特徴が含まれていてよいということを認識するものである。本明細書に記載の実施形態は、本明細書の主題のさまざまな特徴を組合せることのできる方法の網羅的提示となるように意図されていない。したがって、実施形態は、互いに排他的な特徴の組合せではなく、むしろさまざまな実施形態は、当業者が理解するように、異なる個別の実施形態から選択された異なる個別の特徴の組合せを含むことができる。その上、別段の指摘のないかぎり、1つの実施形態に関して記述された要素を、このような実施形態内に記載されていなくても、他の実施形態において実装することが可能である。
【0096】
従属クレームが、該クレーム中において、1つ以上の他のクレームとの具体的組合せに言及する場合があるものの、他の実施形態は同様に、従属クレームと他の各々の従属クレームの主題との組合せ、または1つ以上の特徴と他の従属または独立クレームとの組合せを含む可能性がある。このような組合せは、具体的組合せが意図されないことが記載されているのでないかぎり、本明細書において提案されている。
【0097】
上述の文書の参照による組込みは、本明細書中の明示的開示に反するいかなる主題も組込まれないように限定される。上述の文書の参照による組込みはいずれも、文書中に含まれるいかなるクレームも本明細書中で参照により組込まれないように、さらに限定される。上述の文書の参照による組込みはなお、本明細書中に明示的に内含されているのでないかぎり、文書中に提供されているいずれの定義も本明細書中に参照により組込まれることがないような形で、さらに限定される。