(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068141
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】被加工物の測定を行うための装置および方法ならびに被加工物を機械加工するための機械加工システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B23K 31/00 20060101AFI20240510BHJP
B23K 9/127 20060101ALN20240510BHJP
【FI】
B23K31/00 N
B23K9/127 508A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023184308
(22)【出願日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】10 2022 129 218.5
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】523406990
【氏名又は名称】レスミュラー レーザーテクニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】エックハルト レスミュラー
(72)【発明者】
【氏名】クリスツィアン トルッケンブロット
(57)【要約】 (修正有)
【課題】溶接シーム(16)を評価するために使用される、被加工物(12)の測定を行うための測定装置(10)を提供する。
【解決手段】測定装置(10)は、サンプルビーム(28)を生成するためのサンプルビーム源(26)を含む光干渉断層撮影機(24)ならびにそれによりサンプルビーム(28)を出力結合することができるサンプルヘッド(30)を備えた測定ユニット(22)を備え、ここでは機械加工方向(38)に関して現在の測定位置(32、34)のリーディングビームおよび/またはトレーリングビームは現在の機械加工位置(36)に対して調整可能であるように、サンプルビーム(28)を溶接シーム(16)に沿って現在の機械加工位置(36)に対して異なる測定位置(32、34)上に選択的に集束させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット支援型可動機械加工ヘッド(114)によって行われる溶接を準備、監視および/または評価するために使用される、被加工物(112)の測定を行うための装置(110)であって、
前記機械加工ヘッド(114)のロボット支援型移動のために制御信号を生成するように構成されたロボット制御システム(116)と、
前記被加工物(112)の測定を行い、かつ測定データを取得するように構成された測定センサシステム(120)、
それに基づいて前記機械加工ヘッド(114)のためのリアルタイム位置制御を行うことができる取得された測定データから被加工物特有の位置情報を決定するように構成された評価ユニット(122)、および
前記評価ユニット(122)によって決定された前記被加工物特有の位置情報を前記ロボット制御システム(116)に送信するように構成されたインタフェース(124)
を備えた測定ユニット(118)と
を備え、
前記ロボット制御システム(116)は、前記位置情報に基づいて前記機械加工ヘッド(114)の位置制御を行うように構成されていることを特徴とする装置(110)。
【請求項2】
前記位置情報は縁部(126)の現在の位置を含む、請求項1に記載の装置(110)。
【請求項3】
前記測定ユニット(118)は予め決定可能な測定位置(128)において少なくとも1回の測定を行うように構成されており、かつ
前記ロボット制御システム(116)は前記測定位置(128)を定めるように構成されている、
請求項1に記載の装置(110)。
【請求項4】
前記ロボット制御システム(116)は、現在の機械加工位置(130)に対して前記測定位置(128)のリーディングビームおよび/またはトレーリングビームを調整するように構成されている、請求項3に記載の装置(110)。
【請求項5】
前記ロボット制御システム(116)は、前記リーディングビームが最初の部分(18)に沿って増加し、かつ/または前記トレーリングビームが最後の部分(20)に沿って減少するように、前記最初の部分(18)および前記最後の部分(20)を有する溶接シーム(132)に沿った機械加工中に前記リーディングビームおよび/または前記トレーリングビームを動的に調整するように構成されている、請求項4に記載の装置(110)。
【請求項6】
前記測定ユニット(118)は、幾何学的測定用図形(134、136)、特に少なくとも1つ測定線上にあるいくつかの測定位置(128)において測定を行うように構成されており、かつ
前記ロボット制御システム(116)は、前記幾何学的測定用図形(134、136)の位置および/または向きおよび/またはスキャン密度を指定するように構成されている、
請求項3に記載の装置(110)。
【請求項7】
前記測定ユニット(118)は、サンプルビーム(142)を生成するためのサンプルビーム源(140)を含む光干渉断層撮影機(138)ならびにそれを用いて前記サンプルビーム(142)を出力結合することができるサンプルヘッド(144)を備えていてもよく、ここでは前記サンプルビーム(142)は現在の機械加工位置(130)に対して異なる測定位置(128)上に選択的に集束させることができる、請求項1に記載の装置(110)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(110)と、
前記ロボット制御システム(116)によって制御可能なロボット(148)と、
前記ロボット(148)に取り付けられており、かつ前記ロボット(148)により移動可能である機械加工ヘッド(114)と、
を備える機械加工システム(146)。
【請求項9】
ロボット支援型可動機械加工ヘッド(114)によって行われ、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置(110)によって行われる溶接を準備、監視および/または評価するために使用される、被加工物(112)の測定を行うための方法であって、
前記機械加工ヘッド(114)のロボット支援型移動のためにロボット制御システム(116)により制御信号を生成する工程と、
前記被加工物(112)の測定を行い、かつ測定データを取得する工程と、
それに基づいて前記機械加工ヘッドのためのリアルタイム位置制御(114)を行うことができる前記取得された測定データから被加工物特有の位置情報を決定する工程と、
前記決定された被加工物特有の位置情報を前記ロボット制御システム(116)に送信する工程と、
前記ロボット制御システム(116)により前記位置情報に基づいて前記機械加工ヘッド(114)の位置制御を行う工程と
を含む方法。
【請求項10】
請求項8に記載の機械加工システム(146)により被加工物(112)を機械加工するための方法であって、
機械加工ヘッド(114)のロボット支援型移動のためにロボット制御システム(116)により制御信号を生成する工程と、
前記生成された制御信号に従って前記機械加工ヘッド(114)を用いて前記被加工物(112)に対して溶接作業を行う工程と、
前記被加工物(112)の測定を行い、かつ測定データを取得する工程と、
それに基づいて前記機械加工ヘッド(114)のためのリアルタイム位置制御を行うことができる前記取得された測定データから被加工物特有の位置情報を決定する工程と、
前記決定された被加工物特有の位置情報を前記ロボット制御システム(116)に送信する工程と、
前記ロボット制御システム(116)を用いて前記位置情報に基づいて前記機械加工ヘッド(114)の位置制御を行う工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット支援型型可動機械加工ヘッドによって行われる溶接を準備、監視および/または評価するために使用される、被加工物の測定を行うための装置および方法に関する。本発明はさらに、被加工物を機械加工するための機械加工システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接プロセスは様々な方法を用いて監視することができる。これらとしては、ライン三角測量、カメラまたは光干渉断層撮影法を用いた監視などの光学的方法が挙げられる。後者は異なる位置で機械加工される被加工物の正確な高さ情報を得るために使用することができるため、広範囲の可能な用途を提供する。他の方法としては、例えば誘導もしくは光センサを用いる距離監視が挙げられる。
【0003】
監視測定を使用して、特にシームトラッキングを実行することができる。多くの場合に工業目的のために使用される機械加工装置は、ロボットにより機械加工される被加工物に対して移動可能な機械加工ヘッドが取り付けられているロボットを備える。1つの課題は、機械加工ヘッドを可能な限り正確にガイドすることである。これは、ロボットが可能な限り正確に現在の溶接位置に焦点を合わせなければならないことを意味している。
【0004】
例えば、ドイツ特許第102015007142A1号に記載されているように、光干渉断層撮影法のための測定装置は、例えば機械加工方向に対して直角のいくつかのサンプルラインに沿って現在の機械加工位置の前後の両方において測定データを取得することができる。一方では、これは機械加工を行う予定の機械加工される被加工物を測定および特性評価するのを可能にし、他方では、機械加工が成功したか、例えば所望の品質を達成したか否かを確認するのを可能にする。
【0005】
ドイツ特許第102016014564A1号は、複数のOCTサンプルラインの使用についても記載している。ここでは、サンプルビームは機械加工ビームに結合され、被加工物に集束される。サンプルビームは機械加工ビームに対して2つの空間方向においてサンプルスキャナによって変位可能であり、これは異なる位置、特に現在の機械加工位置の前でサンプルラインを追跡して被加工物を測定し、現在の機械加工位置でメルトプールを測定し、かつ現在の機械加工位置の後ろで形成された溶接シームを特性評価するのを可能にする。
【0006】
溶接において重要になり得る別の側面は、接合される被加工物間で生じ得る間隙の存在である。この目的のために、ドイツ特許第102018009524A1号は、現在の機械加工位置に対するサンプルビームの目標とする変位および好適な監視測定を使用して、溶接される被加工物が意図されるように互いの上に位置しているか、またはそれらに間に望ましくない間隙が存在するか否かを決定することができるOCTベースの測定方法について記載している。
【0007】
特にガスシールド溶接、具体的には金属不活性ガス溶接(ミグ溶接)および金属活性ガス溶接(マグ溶接)では、光干渉断層撮影法(OCT)に基づく測定システムの使用は、カメラベースのシステムよりも優れている可能性があることが明らかになった。高輝度溶接プロセスは、カメラベースの三角測量システムよりもOCT測定に対して生じる妨害レベルが著しく低い。OCTは一方向のシームトラッキングおよび/またはシーム監視も可能にする。
【0008】
シームトラッキングのために現在の機械加工位置の前で測定を行い、これにより機械加工される被加工物を測定するのを可能にする。例えば、これは接合縁部を決定するか機械加工経路の正しい位置決めを監視するのを助ける。さらにシーム監視のために現在の機械加工位置の後ろで測定を行う。これは、形成された溶接シームを測定および確認するのを可能にする。従って、サンプルビームの特定のリーディングビームは通常シームトラッキングのために使用し、サンプルビームの特定のトレーリングビームはシーム監視のために使用する。
【0009】
被加工物の幾何学的形状によっては、溶接シームが施される領域は、使用される溶接装置および/または使用されるOCTサンプルヘッドによってアクセスするのが難しい場合がある。そのような状況では、例えば、限られたアクセス可能性により溶接装置および/またはサンプルヘッドを溶接シームの始点または終点を超えて移動させることができない場合には、溶接シームの最初の部分において所望のリーディングビームにより測定を行うことさえも可能になり得ず、あるいは所望のトレーリングビームにより溶接シームの最後の部分において測定を行うことさえも可能になり得ない。従って、シームが完全に追跡および/または監視されずに溶接シームの一部が形成される。
【発明の概要】
【0010】
先行技術を基に、本発明は向上したシームトラッキングおよび/またはシーム監視を達成するという目的に基づいている。
【0011】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する被加工物の測定を行うための装置、請求項8に記載の特徴を有する機械加工システム、請求項9に記載の特徴を有する被加工物を機械加工するための方法、および請求項10に記載の特徴を有する被加工物を機械加工するための方法により達成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本発明は、溶接装置によって形成され、かつ最初の部分および/または最後の部分を有する溶接シームを準備および/または評価するために使用される、被加工物の測定を行うための測定装置に関する。本測定装置は、サンプルビームを生成するためのサンプルビーム源を備えた光干渉断層撮影機ならびにそれを用いてサンプルビームを出力結合することができるサンプルヘッドを備えた測定ユニットを備え、ここではサンプルビームを溶接シームに沿って現在の機械加工位置に対して異なる測定位置に選択的に集束させることができ、従って機械加工方向に関して現在の測定位置のリーディングビームおよび/またはトレーリングビームは現在の機械加工位置に対して調整可能である。本測定装置は、溶接装置が被加工物に対して移動している場合にサンプルヘッドを溶接装置と共に移動させるような方法で、少なくともサンプルヘッドを溶接装置に取り付けるように構成されている締付ユニットをさらに備える。また本測定装置は、リーディングビームが最初の部分に沿って増加し、かつ/またはトレーリングビームが最後の部分に沿って減少するように、溶接シームに沿った機械加工中にリーディングビームおよび/またはトレーリングビームを動的に調整するように構成されている制御ユニットを備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明はさらに、被加工物上に形成され、かつ最初の部分および/または最後の部分を有する溶接シームを準備および/または評価するために使用される、特に本発明に係る測定装置を使用することにより被加工物の測定を行うための方法に関する。本方法は、光干渉断層撮影機を用いてサンプルビームを生成する工程を含む。本方法は、被加工物の機械加工中にサンプルビームを異なる測定位置に集束させる工程をさらに含み、ここでは機械加工方向に関して現在の測定位置のリーディングビームおよび/またはトレーリングビームを溶接シームに沿って現在の機械加工位置に対して調整する。また本方法は、リーディングビームが最初の部分に沿って増加し、かつ/またはトレーリングビームが最後の部分に沿って減少するように、溶接シームに沿った機械加工中にリーディングビームおよび/またはトレーリングビームを動的に調整する工程を含む。
【0014】
これは動的リーディングビームおよび/または動的トレーリングビームを使用するのを可能にする。これはシームトラッキングおよび/またはシーム監視を向上させることができる。具体的には、最初の部分および/または最後の部分においてリーディングビームおよび/またはトレーリングビームを変化させることにより、アクセス可能性が限られている場合であっても被加工物および形成された溶接シームを溶接シームの始点からその終点まで測定することが可能になる。特にシームトラッキングは、最初のミリメートルから行うことができ、シーム監視は最後のミリメートルまで行うことができる。
【0015】
被加工物は金属部品、例えばシート状金属部品であってもよい。また被加工物は一緒に溶接されるいくつかの個々の被加工物からなっていてもよい。
【0016】
溶接シームを準備するために使用される測定値をシームトラッキングのために使用してもよい。例えばそれは接合縁部、被加工物スタック、または一般に溶接シームが施される被加工物領域の測定値であってもよい。
【0017】
溶接シームを評価するために使用される測定値をシーム監視のために使用してもよい。特に溶接シームの高さプロファイルを関連する現在の測定位置に生成する。そのような高さプロファイルは、溶接シームが欠陥なく形成されたか否かの決定を可能にする。
【0018】
測定ユニットは、それを用いてサンプルビームが特に現在の機械加工位置に対して具体的には2つの空間方向に変位可能であるサンプルスキャナを備えていてもよい。サンプルスキャナは、それぞれが1つの空間方向に変位可能である少なくとも2つの可動ミラーを備えていてもよい。サンプルスキャナはサンプルヘッド内に取り付けられていてもよい。リーディングビームおよび/またはトレーリングビームはサンプルスキャナによって調整可能であってもよい。
【0019】
サンプルビーム源は、広帯域すなわち低コヒーレンス光源を含んでもよい。光干渉断層撮影機はサンプルヘッドから離間されていてもよい。例えば光干渉断層撮影機は溶接装置から独立しており、かつ固定されていてもよい。この場合、光干渉断層撮影機は光ファイバーを介してサンプルヘッドに接続されていてもよい。光干渉断層撮影機はサンプルアームおよび参照アームを有していてもよく、ここではサンプルビームはサンプルアームにおいて光学的にガイドされ、参照ビームは参照アームにおいて光学的にガイドされ、光干渉測定を行うためにこれらを互いに干渉させてもよい。
【0020】
溶接装置はガスシールド溶接装置、特にミグ/マグ溶接装置であってもよい。溶接装置は溶接トーチを備えていてもよい。溶接トーチは、現在の機械加工位置に溶接ワイヤを送り出すように構成されたワイヤ送給装置を備えていてもよい。
【0021】
機械加工方向は、少なくとも部分的に溶接シームに平行に走っていてもよい。例えば溶接シームが曲がりくねった経路、湾曲した経路、角度付き経路、あるいはそれ以外の非線形経路を辿る場合に、機械加工方向は可変的であってもよい。
【0022】
リーディングビームおよび/またはトレーリングビームの動的調整としては、限定されるものではないが、溶接装置が溶接シームの最初の部分および/または最後の部分において溶接シームに沿って被加工物に対して移動する際のリーディングビームおよび/またはトレーリングビームの増加および/または減少が挙げられる。具体的には、溶接装置が機械加工方向に最初の部分に沿って移動する際にリーディングビームを増加させてもよい。代わりまたは追加として、溶接装置が機械加工方向に最後の部分に沿って移動する際にトレーリングビームを減少させてもよい。開始領域における動的リーディングビームによる測定は、少なくとも部分的に溶接装置を起動させる前に行ってもよい。終了領域における動的トレーリングビームによる測定は、少なくとも部分的に溶接装置を停止させた後に行ってもよい。
【0023】
一実施形態によれば、制御ユニットは、リーディングビームを溶接シームの始点において実質的にゼロに設定し、かつ/またはトレーリングビームを溶接シームの終点において実質的にゼロに設定するように構成されている。これにより、溶接シームのちょうど開始時および/または溶接シームの終了まで測定を行うことが可能になる。シームトラッキングは、アクセス可能性が低い場合であってもシーム全体に沿って行うことができる。
【0024】
特に、アクセス可能性が限られている場合であっても制御ユニットが溶接シームの始点から開始するリーディングビームを最初の部分に沿って徐々に、特に線形に増加させ、かつ/または溶接シーム(16)に沿った機械加工中に溶接シームの終点に向かうトレーリングビームを最後の部分に沿って徐々に、特に線形に減少させるように構成されている場合には有用な測定データを取得することができる。特に、測定が開始領域および/または終了領域全体において行われるように、リーディングビームおよび/またはトレーリングビームを徐々に変化させてもよい。
【0025】
溶接シームの始点における測定は溶接装置を起動させる前に行ってもよい。溶接シームの終了点における測定は溶接装置を停止した後に行ってもよい。いくつかの実施形態では、最初の部分をスキャンした後に溶接装置を起動させる。代わりまたは追加として、最後の部分のスキャンは溶接装置の停止時に行ってもよい。言い換えると、最初の部分をスキャンし、かつリーディングビームを動的に増加させる間に溶接装置は溶接シームの始点にあり、かつ/または最後の部分をスキャンし、かつトレーリングビームを動的に減少させる間に溶接装置は溶接シームの終了点にある。
【0026】
制御ユニットは、溶接シームの主要な機械加工部分における溶接シームに沿った機械加工中に、リーディングビームおよび/またはトレーリングビームを溶接シームの最初の部分および/または最後の部分とは異なる実質的に一定の値に設定するように構成されていてもよい。これは、機械加工動作の大部分の間に測定を単純かつ信頼できる方法で行うのを可能にする。リーディングビームの動的調整は、特にゼロのリーディングビームから開始し、かつ/または始点から開始する実質的に一定の値への徐々の増加を含んでもよい。トレーリングビームの動的調整は、実質的に一定の値から開始する特にゼロのトレーリングビームおよび/または終点への徐々の減少を含んでもよい。
【0027】
正確なシームトラッキングおよび/またはシーム監視のために使用することができる包括的情報は、特に制御ユニットが溶接シームに沿った機械加工中に、サンプルビームを現在の測定位置においてサンプルラインに沿って機械加工方向に直角および/または斜めに偏向させ、かつ高さプロファイルをサンプルラインに沿って生成することができるような方法で光干渉断層撮影機を制御するように構成されている場合に得てもよい。溶接シームに沿った測定は、サンプルラインに沿って特に異なる測定位置において行う。リーディングビームおよびトレーリングビームのそれぞれにおいて、現在の測定位置でサンプルラインを使用してもよい。
【0028】
現在の溶接位置の前後の両方においてアクセスするのが難しい溶接シームにおける測定は、特に締付ユニットがサンプルヘッドを溶接装置の第1の側に取り付けるように構成されている場合に可能となる。本測定装置は締付ユニットの取り付け状態で、第1の側に実質的に対向している溶接装置の第2の側に配置されている少なくとも1つの光偏向要素をさらに備えていてもよく、ここではサンプルビームは偏向要素により、第1の側にあるサンプルヘッドから第2の側に位置している測定位置までガイドされる。偏向要素はミラー、プリズムまたは他の好適な光学要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、偏向要素はサンプルビームを自由ビームとして偏向させる。偏向要素は、サンプルヘッドおよび/または溶接装置に対して固定されており、かつ/または移動不可能であってもよい。あるいは偏向要素は移動可能であってもよく、例えばサンプルスキャナと連携させていてもよい。
【0029】
偏向要素は曲面ミラーおよび/または環状ミラーを含んでもよい。これは、サンプルビームを単純な方法で溶接装置の異なる側にガイドするのを可能にする。いくつかの実施形態では、溶接装置に対して移動可能なサンプルヘッドを使用することは必要ではない。
【0030】
アクセスするのが難しい溶接シームの場合を含む異なる機械加工状況において行われる高精度の測定は、特に締付ユニットが溶接装置への固定取り付けのために構成されたホルダーとサンプルヘッドを支持する支持アセンブリとを備え、かつホルダーに対するサンプルヘッドの位置が可変であるように支持アセンブリがホルダーに対して移動可能である場合に達成してもよい。
【0031】
締付ユニットは、制御ユニットによって制御可能であり、かつホルダーに対して支持アセンブリの位置を変えるように構成された少なくとも1つの駆動ユニットを備えていてもよく、これは締付ユニットの取り付け状態で、サンプルヘッドを溶接装置の異なる側、特に機械加工方向に対して前側および/または後側に移動可能にさせる。これは、サンプルヘッドを自動的に好適な位置に移動させてその全長に沿ってシームを特性評価し、かつ/またはシームの全長のためにシームトラッキングを達成するのを可能にする。例えば溶接装置を溶接シームに沿って移動させる際に、サンプルヘッドを第1の側から第2の側まで徐々に、および/または連続的に、および/または漸次に移動させてもよい。このようにして、アクセス可能性が限られている場合であってもサンプルビームを現在の測定位置に集束させることができるように、各場合にサンプルヘッドを位置決めしてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明はさらに、機械加工システムおよび被加工物を溶接するための方法に関する。本機械加工システムは本発明に係る溶接装置および測定装置を備え、ここでは本測定装置の少なくともサンプルヘッドは、本測定装置の締付ユニットにより溶接装置に取り付けられている。本機械加工システムは、溶接装置および少なくともサンプルヘッドを運ぶ工業用ロボットをさらに備えていてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明はさらに、特に本発明に係る機械加工システムを用いて被加工物を機械加工するための方法に関する。本方法は、被加工物上に最初の部分および/または最後の部分を有する溶接シームを形成することを含む。本方法は、サンプルビームを生成する工程と、サンプルビームを異なる測定位置に集束させる工程と、本明細書に記載されている被加工物の測定を行うための方法に従ってリーディングビームおよび/またはトレーリングビームを動的に調整する工程とをさらに含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、本発明は、ロボット支援型可動機械加工ヘッドによって行われる溶接を準備、監視および/または評価するために使用される、被加工物の測定を行うための装置に関する。本装置は、機械加工ヘッドのロボット支援型移動のために制御信号を生成するように構成されたロボット制御システムを備えていてもよい。本装置は、測定ユニットをさらに備えていてもよい。測定ユニットは被加工物の測定を行い、かつ測定データを取得するように構成された測定センサシステムを備える。
【0035】
本装置は、それに基づいて機械加工ヘッドのためのリアルタイム位置制御を行うことができる取得された測定データから被加工物特有の位置情報を決定するように構成された評価ユニットをさらに備えていてもよい。また本装置は、評価ユニットによって決定された被加工物特有の位置情報をロボット制御システムに送信するように構成されたインタフェースを備えていてもよい。ロボット制御システムは、位置情報に基づいて機械加工ヘッドの位置制御を行うように構成されていてもよい。
【0036】
本発明者らは、機械加工ヘッドを運ぶロボットはリアルタイム位置操作を可能にさせる通信インタフェースを有するが、そのようなインタフェースは測定システムから生じる振動のない制御を実行するには遅すぎる場合が多いことに気づいた。以下の通信インタフェース、例えば「ガイドモーション」または「ロボットセンサインタフェース」(「RSI」)を使用してもよい。位置制御がロボット制御システムそれ自体によって行われる場合、より速くかつより正確な制御が可能である。これによりシームトラッキングを向上させることができる。測定ユニットは現在の位置情報をロボット制御システムに送信し、ロボット制御システムはこの情報に基づいて位置を迅速かつ正確に調整するのを可能にする。これは、どの程度ロボットを移動させて機械加工ヘッドの位置を変えるかの計算を位置情報に従ってロボット制御システムにおいて直接行うのを可能にする。これは少なくとも実質的に振動のない制御を達成するのを助ける。
【0037】
測定ユニットは、上に記載されている測定装置の測定ユニットであってもよい。これは、上の記載が本明細書に記載されている装置または測定ユニットの任意の実施形態に関するものであることを意味している。いくつかの実施形態では、測定センサシステムは代わりまたは追加として、光干渉断層撮影法とは異なる測定原理を使用してもよい。例えば測定センサシステムはライン三角測量に基づいてもよく、かつ/またはカメラを備えていてもよく、かつ/または距離センサ、例えば誘導型および/または光学式距離センサを備えていてもよい。測定センサシステムの構成要素は、アクチュエータによって移動可能であってもよい。いくつかの実施形態では、測定ユニットはサンプルビームを生成するためのサンプルビーム源を備えた光干渉断層撮影機と、それを用いてサンプルビームを出力結合することができるサンプルヘッドとを備えていてもよく、ここではサンプルビームを現在の機械加工位置に対して異なる測定位置に選択的に集束させることができる。
【0038】
位置制御はPID制御を含んでもよい。ロボット制御システムは工業用ロボットなどのロボットの一部であってもよい。ロボット制御システムは測定ユニットとは独立して動作可能であってもよい。測定ユニットと、それを介して位置情報を送信可能であるロボット制御システムとの接続は、ロボットの通信インタフェースを介して確立されてもよい。言い換えると、測定ユニットのインタフェースはロボットの通信インタフェースに接続されていてもよい。
【0039】
位置制御は特に、ロボットの通信インタフェースの応答時間を超える応答時間により行われる。特に位置制御は、位置制御が測定ユニットによって行われる場合よりも速くなり得る。この場合、通信インタフェースを介した送信時間および測定ユニットにおける計算時間は増加する。特に本発明に係るリアルタイム制御は、最長10ms、最長5msまたはさらには最長1msの応答時間を含んでもよい。
【0040】
評価ユニットはロボット制御システムとは別々であってもよい。評価ユニットは特にロボット制御システムおよび/またはロボットの構成要素ではない。評価ユニットは適用可能であれば、好適な揮発性および/または不揮発性記憶媒体と組み合わせられた測定ユニットの処理装置、例えばプロセッサ、制御装置、フィールドプログラマブルゲートアレイまたは制御系などの中に構成されていてもよい。
【0041】
機械加工ヘッドは溶接装置を備えていてもよく、かつ/または溶接装置として構成されていてもよい。機械加工ヘッドおよび/または溶接装置は、ガスシールド溶接装置、特にミグ/マグ溶接装置であってもよい。機械加工ヘッドおよび/または溶接装置は溶接トーチを備えていてもよい。溶接トーチは、溶接ワイヤを現在の機械加工位置に送り出すように構成されたワイヤ送給装置を備えていてもよい。
【0042】
シームトラッキングは、特に位置情報が縁部の現在の位置を含む場合には、非常に正確に行うことができる。縁部の位置は好適な測定方法を用いて決定してもよい。次いでこの位置をロボット制御システムに伝えてもよい。本発明によれば、次いで縁部上のロボット位置をロボット制御システムによって制御し、それにより非常に迅速かつ低振動の制御を実行するのを可能にする。
【0043】
いくつかの実施形態では、測定ユニットは、測定位置を定めるように構成されているロボット制御システムにより予め決定可能な測定位置において少なくとも1回の測定を行うように構成されている。ロボット制御システムは影響を与える通信インタフェースのどんな待ち時間もなく、設定された機械加工位置に基づいて測定位置を決定することができるため、これにより測定位置を迅速かつ確実に設定することが可能になる。例えば、ロボット制御システムは位置情報を考慮に入れて測定位置を定めてもよい。これは、実際の現在の機械加工位置の測定を行うことができることを意味している。
【0044】
特にロボット制御システムが、現在の機械加工位置の測定位置のリーディングビームおよび/またはトレーリングビームを調整するように構成されている場合に、測定を現在の機械加工状況に迅速かつ正確に適合させることができる。リーディングビームおよび/またはトレーリングビームを調整するという選択肢に関しては、上の説明を参照する。但し、リーディングビームおよび/またはトレーリングビームは言及されている測定方法のいずれかのためにそれに応じて調整可能であってもよく、OCTサンプルビームの使用は単に1つの可能な選択肢である。当然のことながら、本実施形態によればリーディングビームおよび/またはトレーリングビームはロボット制御システムによって直接調整することができ、これは、ロボット制御システムが位置情報に基づいてリーディングビームおよび/またはトレーリングビームを調整するために必要な情報を有し、かつこの情報に基づく位置制御を有利に使用することができるという事実を意味している。
【0045】
ロボット制御システムはさらに、リーディングビームが最初の部分に沿って増加し、かつ/またはトレーリングビームが最後の部分に沿って減少するように、最初の部分および最後の部分を有する溶接シームに沿った機械加工中にリーディングビームおよび/またはトレーリングビームを動的に調整するように構成されていてもよい。これにより、その最初の部分および/または最後の部分がスキャンされるので、溶接シームを非常に正確に測定することが可能になる。リーディングビームおよび/またはトレーリングビームを動的に調整するという選択肢に関しては、上の説明を参照する。但し、リーディングビームおよび/またはトレーリングビームは言及されている測定方法のいずれかのためにそれに応じて動的に調整可能であってもよく、OCTサンプルビームの使用は単に1つの可能な選択肢である。
【0046】
入手可能な測定データに関する高度な可変性は、特に測定ユニットが幾何学的測定用図形、特に少なくとも1つの測定線上に位置しているいくつかの測定位置において測定を行うように構成されている場合に達成してもよい。そのような場合にロボット制御システムは、幾何学的測定用図形の位置および/または向きおよび/またはスキャン密度を予め決定するように構成されていてもよい。溶接シームの過去および/または未来の経路に関する情報がロボット制御システムにおいて入手可能であり得るため、測定パラメータは関連する用途を考慮に入れて調整することができる。ロボット制御システムは特に測定用図形、例えば回転、位置、伸長、圧縮、変形のパラメータ表示などを行ってもよい。
【0047】
ロボット制御システムにおいて行われる位置制御を機械加工システムにおいても使用してもよい。故に一態様によれば、機械加工システムは上に記載されている装置、ロボット制御システムによって制御可能なロボット、およびロボットに取り付けられており、かつロボットにより移動可能な機械加工ヘッドを備える。特にロボット制御システムはロボットの一部である。そのロボット制御システムを備えたロボットは測定ユニット、特に工業用ロボットとは独立して動作可能なロボットであってもよい。
【0048】
一態様では、ロボット支援型可動機械加工ヘッドによって行われる溶接を準備、監視および/または評価するために使用される、被加工物の測定を行うための方法がさらに提供されてもよい。これは特に上に記載されている装置によって行ってもよい。本方法は、機械加工ヘッドのロボット支援型移動のためにロボット制御システムにより制御信号を生成する工程と、被加工物の測定を行い、かつ測定データを取得する工程と、それに基づいて機械加工ヘッドのためのリアルタイム位置制御を行うことができる取得された測定データから加工物特有の位置情報を決定する工程と、決定された被加工物特有の位置情報をロボット制御システムに送信する工程と、ロボット制御ユニットを用いて位置情報に基づいて機械加工ヘッドの位置制御を行う工程とを含む。
【0049】
一態様では、特に上述の機械加工システムを用いて被加工物を機械加工するための方法がさらに提供されてもよい。本方法は、機械加工ヘッドのロボット支援型移動のためにロボット制御システムにより制御信号を生成する工程と、生成された制御信号に従って機械加工ヘッドを用いて被加工物に対して溶接作業を行う工程と、被加工物の測定を行い、かつ測定データを取得する工程と、それに基づいて機械加工ヘッドのためのリアルタイム位置制御を行うことができる取得された測定データから加工物特有の位置情報を決定する工程と、決定された被加工物特有の位置情報をロボット制御システムに送信する工程と、ロボット制御ユニットを用いて位置情報に基づいて機械加工ヘッドの位置制御を行う工程とを含む。
【0050】
上述のとおり、これらの態様は、機械加工ヘッドを運ぶロボットがリアルタイム位置操作を可能にさせる通信インタフェースを有するが、そのようなインタフェースは測定システムから生じる振動のない制御を実行するには遅すぎる場合が多いという認識に基づいている。上述の方法は、少なくとも実質的に振動のない制御を達成するのを助けてもよい。
【0051】
なお、特に装置ならびに手順に関して記載されている全ての特徴および特性は、本発明に係る方法に必要な変更を加えて適用することができ、かつ本発明の意味で適用可能であり、かつこれらも開示されているものとみなす。同じことが逆の場合にも当てはまる。これは、特許請求されており、かつ本装置の特許請求の範囲内で開示されているとみなされる方法に関して言及されている構造的特徴、すなわち本装置に係る特徴を考慮に入れることもできることを意味している。
【0052】
以下では本発明を添付の図を参照しながら例として説明する。図面、本明細書および特許請求の範囲は数多くの特徴の組み合わせを含む。当業者であれば、特徴を個々でも適宜検討し、かつそれらを特許請求の範囲内での有用な組み合わせで使用するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】測定装置を備えた機械加工システムの概略図である。
【
図2】溶接シームに沿った機械加工中に本測定装置を用いて考察される測定位置のリーディングビームの概略図である。
【
図3】溶接シームに沿った機械加工中に本測定装置を用いて考察される測定位置のトレーリングビームの概略図である。
【
図5】被加工物を機械加工するための方法の概略フローチャートである。
【
図7】被加工物の測定を行うための方法の概略フローチャートである。
【
図8】被加工物を機械加工するための方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、測定装置10を備えた機械加工システム66の概略図である。機械加工システム66は溶接トーチ68を備えた溶接装置14を備える。溶接トーチ68は例えばミグ/マグ溶接トーチとして構成されている。溶接装置14は被加工物12を溶接するように構成されており、ここでは溶接シーム16は、被加工物12を機械加工方向38に機械加工する溶接装置14によって形成される。被加工物12はどんな方法で構成されていてもよく、かつ溶接シーム16に沿って互いに接続される例えば2つの別個の構成要素を備えていてもよい。溶接装置14は例えば工業用ロボット(図示せず)に取り付けられており、それにより溶接装置は機械加工経路に沿って被加工物12に対して移動可能である。代わりまたは追加として溶接装置14は固定されていてもよく、かつ被加工物12は相対的移動を生じさせるために移動可能であってもよい。
【0055】
図示されている事例では、被加工物12の幾何学的形状により溶接シーム16へのアクセス可能性は限られている。
図1には、これは概略的にのみ示されている。限られたアクセス可能性は、例えば溶接シーム16が始点44から終点46まで延在しているという事実にあってもよく、溶接装置14を衝突のリスクにより始点44および/または終点46を勝手に超えて移動させることができないように、そのそれぞれが溶接シームから突出している被加工物部分に非常に近いか直接隣接している。
【0056】
溶接装置14に加えて、機械加工システム66は測定装置10をさらに備える。測定装置10はOCT測定装置である。測定装置10は測定装置10の締付ユニット40により溶接装置14、特に溶接トーチ68に取り付けられているサンプルヘッド30を備えた測定ユニット22を備える。測定ユニット22は、純粋に概略的に示されており、かつ一般に公知の構造を有するサンプルビーム源26を含む光干渉断層撮影機24をさらに備える。この点に関しては、例えばドイツ特許第102016014564A1号を参照する。
【0057】
測定装置10は、サンプルビーム源26によって生成されたサンプルビーム28を具体的には異なる測定位置32、34上に集束させるように構成されている。測定位置32、34においてサンプルビーム28は各場合に、機械加工方向38に対して直角または斜めおよび/またはそれぞれの測定線50、52に沿って溶接シーム16に対して直角または斜めに変位可能である。例として示されている事例では、現在の機械加工位置36に対して少なくとも2つの異なる測定位置32、34が使用されている。
【0058】
第1の測定位置32は、機械加工方向38において現在の機械加工位置36の後ろに位置しており、これは第1の測定位置32がトレーリングビームを有することを意味している。これは溶接シーム16を形成後に測定するのを可能にし、これにより、溶接シーム16の性質に依存した例えば品質保証および/またはプロセス制御および/またはプロセス調整が可能になる。トレーリングビームによる測定はシーム監視を可能にする。
【0059】
第2の測定位置34は、機械加工方向38において現在の機械加工位置の前に位置しており、これは第2の測定位置34がリーディングビームを有することを意味している。これは、被加工物12を機械加工前に測定するのを可能にし、これは、例えば接合される被加工物の接合縁部が正確に位置決めされているか否か、構成要素が間隙なしに互いにの上に位置しているか否か、および/またはそれに沿って溶接装置14が移動する意図されている機械加工経路が正確に位置決めされているか否かを決定するのを可能にする。
【0060】
溶接中にサンプルビーム28を、好適な測定線50、52に沿って異なる測定位置32、34に連続的に変位させる。例えばサンプルビーム28を現在の機械加工位置36の前後に交互に移動させる。従って、リーディングビームによる測定およびトレーリングビームによる測定は機械加工中に繰り返し行われる。但し当然のことながら、他の実施形態では測定はリーディングビームのみまたはトレーリングビームのみにより行ってもよい。原則として、いくつかのサンプルヘッド、例えばリーディングビームのために1つのサンプルヘッドおよびトレーリングビームのために1つのサンプルヘッド、および/またはいくつかのサンプルビームが存在してもよい。
【0061】
可能な限り完全であるシームトラッキングおよび/またはシーム監視を可能にするために、機械加工中に測定装置10を以下に記載されているように動作させる。始点44から開始して最初に最初の部分18において、次いで主要な機械加工領域48において、その後に最後の部分20において終点46まで機械加工を行う。現在の測定位置32、34のリーディングおよびトレーリングビームは動的に調整される。これはリーディングビームについて
図2に、トレーリングビームについては
図3に示されている。
【0062】
リーディングビームを始点44において最初にゼロに設定する。これは、被加工物12を始点においても直接測定することができることを意味している。次いでリーディングビームを徐々に、例えば線形に増加させる。図示されている例では溶接装置14をその前に起動させず、すなわち機械加工が開始する前に最初の部分18を最初にスキャンする。このプロセスの間に溶接装置14は固定されていても、リーディングビームにおける増加に対応する速度よりも低い速度で移動してもよい。被加工物12を現在の機械加工位置36の前の溶接シーム16全体について完全に測定することができるため、これは溶接シーム16の最初のミリメートルまたはセンチメートルのためにもシームトラッキングを可能にする。
【0063】
同様に、終点46を最後の部分20の中で近づける際にトレーリングビームを徐々に、例えば線形に減少させる。これは溶接装置14の停止時に、すなわち溶接シーム16の形成の完了時に生じてもよい。このプロセス中に溶接装置14は固定されていても、トレーリングビームにおける減少に対応する速度よりも低い速度で移動してもよい。溶接シーム16を現在の機械加工位置36の後ろで完全にスキャンすることができるので、これは溶接シーム16の最後のミリメートルまたはセンチメートルのためにもシーム監視を可能にする。
【0064】
主要な機械加工部分48では、例えば図示のように一定のリーディングビームおよび/または一定のトレーリングビームにより測定を行う。リーディングビームおよびトレーリングビームは同じであっても異なってもよい。リーディングビームを最初の部分18に沿って主要な機械加工部分48のためのその目標値まで増加させ、トレーリングビームを最後の部分20に沿って主要な機械加工部分48のためのその目標値に基づいて減少させる。
【0065】
測定装置10は、リーディングビームおよび/またはトレーリングビームの記載されている調整を行うように構成された制御ユニット42を備える。制御ユニット42は、例えばプロセッサ、ランダムアクセスメモリ、不揮発性メモリおよび対応するプログラミングを含む。制御ユニット42は例えば、特にサンプルヘッド30内の測定装置10のサンプルスキャナ(図示せず)を制御して、記載されているようにサンプルビーム28を変位させるように構成されていてもよい。
【0066】
任意の特徴として、測定装置10は偏向要素56を備え、それによりサンプルビーム28を溶接装置14の第1の側54から溶接装置の第2の側58にガイドすることができる。偏向要素56は、例えば曲面ミラーおよび/または環状ミラーを備えるかそれらとして構成されている。環状ミラーおよび特に好適には曲面ミラーは、サンプルビーム28を被加工物12上に直接集束させるかまたは偏向要素56を通過するか否かとは少なくとも実質的に独立して、測定装置10のサンプルスキャナを用いたサンプルビーム28の変位を被加工物12上での変位に変換させるように成形されていてもよい。
【0067】
図4は測定装置10‘の他の実施形態である。区別のために、
図4の参照符号にはアポストロフィが与えられている。測定装置10‘は上に記載されているように構成されているが、その締付ユニット40‘に関しては異なる。締付ユニット40‘は、溶接装置14‘に固定的に取り付けられているホルダー60‘を備える。締付ユニット40‘は、測定装置10‘のサンプルヘッド30‘を支持し、かつホルダー60‘に対して移動可能である支持アセンブリ62‘をさらに備える。駆動ユニット64‘はこの目的のために提供されており、測定装置10‘の制御ユニットによって制御可能である。駆動ユニット64‘は、ホルダー60‘に対して支持アセンブリ62‘を移動させることによりサンプルヘッド30‘を異なる位置に移動させるのを可能にする。従ってサンプルヘッド30‘は溶接装置14‘の異なる側、特に対向側に移動可能である。これは、アクセス可能性が限られている場合であっても、具体的にはサンプルビーム28を被加工物溶接装置14‘のいずれかの側に集束させることも可能にする。
【0068】
図5は、被加工物12を機械加工するための方法の概略フローチャートである。本方法の動作は上記例示的な表現からも明らかである。一般的に言えば本方法は、被加工物12上に最初の部分18および/または最後の部分20を有する溶接シーム16を形成する工程S1を含む。
【0069】
本方法は、光干渉断層撮影機24を用いてサンプルビーム28を生成する工程S2をさらに含む。
【0070】
また本方法は、被加工物12の機械加工中にサンプルビーム28を異なる測定位置32、34上に集束させる工程S3を含み、ここでは機械加工方向38に関して現在の測定位置32のリーディングビームおよび/またはトレーリングビームを溶接シーム16に沿って現在の機械加工位置36に対して調整する。
【0071】
本方法は、リーディングビームが最初の部分18に沿って増加し、かつ/またはトレーリングビームが最後の部分20に沿って減少するように、溶接シーム16に沿った機械加工中にリーディングビームおよび/またはトレーリングビームを動的に調整する工程S4をさらに含む。
【0072】
工程S2~S4は別々に、被加工物12の測定を行うための方法の一部であってもよく、これは被加工物12上に形成され、かつ最初の部分18および/または最後の部分20を有する溶接シーム16を準備および/または評価するために使用される。
【0073】
図6は別の機械加工システム146を示す。さらなる機械加工システム146は上に記載されている機械加工システム66と基本的に同じであってもよく、逆も同様である。以下では、機械加工システム146について位置制御に関する特徴を参照しながら説明する。この態様も上に記載されている機械加工システム66に設けられていてもよく、上に記載されている機械加工システム66の態様とまさに同じように機械加工システム146中に存在してもよい。2つの機械加工システム66、146を参照しながらの説明は、当該態様を互いに独立して使用し得ることを示し、かつ当該態様の理解を与えるという2つの目的を果たすが、いくつかの実施形態ではそれらは組み合わせられることが理解される。
【0074】
機械加工システム146は、ロボット148により移動可能な機械加工ヘッド114を支持するロボット148を備える。機械加工システム146は、ロボット148のロボット制御システム116ならびに測定ユニット118を備えた装置110をさらに備える。ロボット制御システム116は、機械加工ヘッド114を移動させるためにロボット148のための制御信号を生成するように構成されている。図示されている事例では、機械加工ヘッド114は、上に記載されている事例との類似により溶接トーチである。機械加工ヘッド114により被加工物112は機械加工可能である。本事例は縁部126に沿った溶接に関し、これは例えば2つの構成要素を互いに接続するという目的を果たす。この場合、被加工物112はいくつかの個々の部品/構成要素を含んでいてもよい。
【0075】
測定ユニット118は、被加工物112の測定を行い、かつ測定データを取得するように構成された測定センサシステム120を備える。測定センサシステム120は、2Dデータおよび/または3Dデータを取得するための任意の好適なセンサおよび/またはサンプル光源を備えていてもよい。例としてはライン三角測量センサ、特に平らな照明を備えた1つ以上のカメラまたは1つ以上の距離センサなどが挙げられる。好適な距離センサは光学式および/または誘導型センサであってもよい。本事例では、測定センサシステム120は、現在の機械加工位置130および/またはツール中心点(TCP)とは異なる異なる測定位置128で測定を行うように構成されている。測定位置128は、測定センサシステム120それ自体により、および/またはアクチュエータ、モーター、スキャナなどのさらなる構成要素により調整可能であってもよい。例えばパラメータ化された選択肢が少ないか全くないセンサを使用する場合、それは異なる測定位置128を設定するのを可能にするために動的に移動可能であるように取り付けられていてもよい。
【0076】
本明細書に記載されている例示的な実施形態では、測定センサシステム120はOCT測定センサシステムである。測定ユニット118は、サンプルビームを生成するためのサンプルビーム源140を有する光干渉断層撮影機138を備える。測定ユニット118は、サンプルヘッド144をさらに備え、それによりサンプルビーム142を出力結合させ、かつ現在の機械加工位置に対して異なる測定位置に選択的に集束させることができる。この点に関しては、測定装置10の動作に関する上記説明も参照する。特に、測定位置128のリーディングビームおよび/またはトレーリングビームは測定ユニット118のためにも調整可能である。
【0077】
測定ユニット118は具体的には、幾何学的測定用図形134、136上にあるいくつかの測定位置128において測定を行うように構成されている。一例として、第1の幾何学的測定用図形134は、一般に現在の機械加工位置130の前で縁部126または被加工物112をスキャンする第1の測定線である。さらに第2の幾何学的測定用図形136は、被加工物112を機械加工する場合に形成される溶接シーム132をスキャンする第2の測定線である。例えば、スキャンは機械加工方向に対して直角に、かつ/または溶接シーム132に対して直角に行ってもよい。
【0078】
測定線は、可能な測定用図形134、136の単に一例を表している。代わりまたは追加として測定用図形134、136はまた、円形、楕円形、多角形などの任意の幾何学図形上にある測定位置128によって画定されていてもよい。
【0079】
測定ユニット118は評価ユニット122をさらに備える。評価ユニット122は、それに基づいて機械加工ヘッド114のリアルタイム位置制御を行うことができる取得された測定データから被加工物特有の位置情報を決定するように構成されている。位置情報は、例えば縁部検出に基づいて測定ユニット118から得てもよい。位置情報は例えば縁部126の現在の位置である。従って位置情報を使用して、機械加工を行う場所を決定することができる。特に位置情報を使用してシームトラッキングを行うことができる。
【0080】
測定ユニット118は、評価ユニット122によって決定された被加工物特有の位置情報をロボット制御システム116に送信するように構成されたインタフェース124をさらに備える。ロボット148はインタフェース124に接続されている通信インタフェースを備えていてもよい。
【0081】
位置情報に従って位置制御を行うために、本事例ではロボット制御システム116において制御を行う。これにより、機械加工ヘッド114の位置をロボット制御システム116それ自体によって直接適合させることが可能になる。ロボット148の通信インタフェースを介した制御は、通信インタフェースがリアルタイムで動作する場合であっても位置制御において振動を引き起こす可能性がある。公知のロボット通信インタフェースはリアルタイムで動作している場合であっても、振動を引き起こすことなく測定ユニット118に基づいて機械加工ヘッド114の位置を制御するためには通常は遅すぎる。
【0082】
ロボット制御システム115は他の機能も行ってもよい。本事例ではロボット制御システム116は、現在の機械加工位置130の測定位置のリーディングビームおよび/またはトレーリングビームを調整するように構成されている。さらにロボット制御システム116は、幾何学的測定用図形134、136の位置および/または向きおよび/またはスキャン密度を指定する。位置情報の転送により、ロボット制御システム116が機械加工ヘッド114の位置決めならびに一般にサンプルビーム142または測定位置128の位置決めを行うのを可能にしてもよい。従って、シームトラッキングはロボット制御システム116において計算され、プロセス監視はロボット制御システム116によって著しく制御される。特にこれは、実際に設定される機械加工ヘッド114の位置によって決まるそれらのパラメータ値の非常に正確かつ迅速な調整を可能にする。
【0083】
図7は、ロボット支援型可動機械加工ヘッド114によって行われる溶接を準備、監視および/または評価するために使用される被加工物112の測定を行うための方法を示す。本方法は例えば装置110により行う。本方法の動作は、上記例示的な表現からも明らかである。
【0084】
工程S11は、機械加工ヘッド114のロボット支援型移動のためにロボット制御システム116により制御信号を生成することを含む。工程S12は被加工物112の測定を行うこと、および測定データを取得することを含む。工程S13は、それに基づいて機械加工ヘッド114のリアルタイム位置制御を行うことができる取得された測定データから被加工物特有の位置情報を決定することを含む。工程S14は、決定された被加工物特有の位置情報をロボット制御システム116に送信することを含む。工程S15は、ロボット制御システム116により位置情報に基づいて機械加工ヘッド114の位置制御を行うことを含む。
【0085】
図8は、被加工物112を機械加工するための方法を示す。被加工物112を特に機械加工システム146により機械加工する。本方法の動作も上記例示的な表現から明らかである。工程21は、機械加工ヘッド114のロボット支援型移動のためにロボット制御システム(116)により制御信号を生成することを含む。工程22は、生成された制御信号に従って機械加工ヘッド114により被加工物112に対して溶接作業を行うことを含む。工程23は、被加工物112の測定を行うこと、および測定データを取得することを含む。工程24は、それに基づいて機械加工ヘッド114のリアルタイム位置制御を行うことができる取得された測定データから被加工物特有の位置情報を決定することを含む。工程25は、決定された被加工物特有の位置情報をロボット制御システム116に送信することを含む。工程26は、ロボット制御システム116により位置情報に基づいて機械加工ヘッド114の位置制御を行うことを含む。
【外国語明細書】