(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068153
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】農産加工品を管理する情報システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240510BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186477
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2022176821
(32)【優先日】2022-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214248
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 純
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智久
(72)【発明者】
【氏名】桜井 昌広
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英海
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌志
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 真也
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】作物が育成又は栽培され、収穫され、加工され、流通され、農産加工品として消費者の手に渡るまでの過程で取得される各情報を、一元的に管理しつつ次年度の計画又は機器の設定に活用する。
【解決手段】情報システム100は、農産加工品の生産情報及び流通販売情報を受信する受信部、生産情報又は流通販売情報に基づき、農産加工品の生産、流通及び販売に係る全過程のうち、何れかの過程における作業の計画又は機器の設定値を生成する計画設定値生成部、生成した計画又は設定値を作業の実施者端末又は機器に送信する送信部、農産加工品が全過程を経て消費者の手に渡るまでのサイクル過程において、市場ニーズ情報に適合する計画又は設定値を推定する推定部及び推定部が推定した推定計画又は推定設定値を、当該サイクル過程で取得又は生成した情報、計画又は設定値とともに、当該サイクル過程に関連付けたサイクル情報として記録する記憶部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作物を育成及び加工して農産加工品を生産するまでの生産情報、及び前記農産加工品を流通して販売するまでの流通販売情報を取得し、
前記生産情報及び前記流通販売情報に基づいて、前記作物の育成から前記農産加工品の販売における作業の計画、又は前記作業において使用される機器の設定値を生成し、
前記流通販売情報に含まれる、前記農産加工品の市場ニーズ情報に適合する推定計画または推定設定値を生成し、
前記市場ニーズ情報は、前記農産加工品に対する市場の評価に基づいた情報である情報システム。
【請求項2】
前記計画又は前記設定値は、前記推定計画または前記推定設定値に基づいて出力される
請求項1に記載の情報システム。
【請求項3】
前記作物が茶であり、前記農産加工品が製茶品である、
請求項1に記載の情報システム。
【請求項4】
前記市場ニーズ情報を入力し、前記推定計画または前記推定設定値を出力する、学習済みニューラルネットワークを利用する
請求項1に記載の情報システム。
【請求項5】
請求項1に記載の情報システムを用いて、
作物を育成及び加工して農産加工品を生産するまでの生産情報、及び前記農産加工品を流通して販売するまでの流通販売情報を取得する工程と、
前記生産情報及び前記流通販売情報に基づいて、前記作物の育成から前記農産加工品の販売における作業の計画、又は前記作業において使用される機器の設定値を生成する工程と、
前記流通販売情報に含まれる、前記農産加工品の市場ニーズ情報に適合する推定計画または推定設定値を生成する工程と、
前記計画または前記設定値を出力する工程と、を実施し、
前記市場ニーズ情報は、前記農産加工品に対する市場の評価に基づいた情報である、
情報処理方法。
【請求項6】
前記計画又は前記設定値は、前記推定計画または前記推定設定値に基づいて出力される
請求項5に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記作物が茶であり、前記農産加工品が製茶品である、
請求項6に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記市場ニーズ情報を入力し、前記推定計画または前記推定設定値を出力する、学習済みニューラルネットワークを利用する
請求項5に記載の情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産加工品を管理する情報システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1および特許文献2は、茶園管理システムの発明を開示する。特許文献1の発明は、茶園管理情報を入力、データベース化して茶園管理情報データベースとし、必要に応じて、茶園管理情報を検索することを特徴とする。特許文献2の発明は、茶園の圃場情報を取得する圃場情報収集システムと、茶園情報を管理する茶園情報管理システムと、荷受け時の茶葉の品質情報を取得する荷受け管理システムとより構成することを特徴とする。なお、茶園情報管理システムは、施肥、防除、被覆、摘採の一以上の茶園情報を管理し、圃場情報収集システムは、茶園における土壌中の窒素濃度、土壌水分、地温、雨量、気温などの一以上の圃場情報を取得する圃場情報システムを備え、荷受け管理システムは、茶葉の重量、品種、摘採圃場、等級、成分分析値、達観評価などの一以上の茶葉の品質情報を取得する、とされている。
【0003】
特許文献1の発明によれば、茶園管理情報をデータベース化し、作業の標準化と効率化、品質の向上を図ることができ、また、荒茶の製造、茶の流通と連携し、茶業界全体の品質改善及び品質の底上げと情報開示による信頼性向上を図ることができるとされ、特許文献2の発明によれば、これまで熟練者などに頼ってきた茶園管理、特に被覆に関する管理が簡単に行えるようになり、さらには、摘採計画を効率よく行うことができるようになるとともに、摘採した茶葉の等級付けへの要素にもなるなど、茶園の管理を簡単に計画的に遂行できるようになる、とされている。
【0004】
たとえば、特許文献3は、製茶FAシステムの発明を開示する。当該発明は、製茶プラントの各製茶機をそれぞれ制御する制御手段と、各制御手段を管理する管理手段と、任意のデータを制御手段と管理手段の間を電子信号により通信する通信手段と、管理状況を表示する表示手段とにより構成する製茶FAシステムの管理手段において、計算条件より各製茶機の設定値を算出することを特徴とする。当該発明によれば、計算条件を入れるだけで製茶プラントに適した設定値を算出することが出来るので、誰でも設定値を設定することが出来る、とされている。
【0005】
たとえば、特許文献4は、茶情報追跡システムの発明を開示する。当該発明は、製茶工場において、該製茶工場が受け入れる茶葉の茶圃場を任意の区画に分け、区分けされた茶圃場毎の茶栽培管理情報をデータベース化して茶栽培管理情報データベースとし、必要に応じて、茶葉に対応する区画の茶圃場の茶栽培管理情報を検索することを特徴とする。
【0006】
特許文献4の発明によれば、製茶工場において加工する茶葉の茶栽培管理情報を簡単に検索することが出来、また、それらの情報を利用して、茶栽培上不備のある茶圃場を抽出すると同時に、その茶圃場で摘採された茶葉を製茶原料に加えない等の処置を速やかに行い、出荷される荒茶の品質の向上及び、出荷先に対して安全面においても強くアピールできる、とされている。また、当該発明によれば、茶栽培上の指導などもしやすくなり、茶圃場全体の質の向上にも繋がり、更に、茶圃場管理者及び製茶工場の生産・加工が一体となり、荒茶に対する品質向上において、共通の見解と各々の作業意識の向上にも繋がり、茶圃場の栽培管理情報を有効に、且つ効率的に行うことを実現する、ともされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-313066号公報
【特許文献2】特開2003-330999号公報
【特許文献3】特開2004-242634号公報
【特許文献4】特開2004-141071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した茶園管理システムの発明によれば、収集した土壌中窒素濃度等の圃場情報、施肥、防除等の茶園管理情報、荷受け時に収集する生葉の収量、成分分析結果等の品質情報を活用し、施肥、防除、摘採等における適切な実施計画の立案が期待できる。
【0009】
また、上記した製茶FAシステムの発明によれば、製茶工程で使用する各製茶機の稼働条件を簡単に算出し、製茶プラントの稼働制御を容易にすることができる。
【0010】
さらに、上記した茶情報追跡システムによれば、茶栽培に不備のある茶圃場からの茶葉を原料から除外し、荒茶製品の品質の高さ、安全性について、出荷先に強くアピールできることが期待できる。
【0011】
しかし、前記した各発明は、各々、生葉の生産過程、生葉から茶製品への加工過程、茶製品の不良に対する対処過程に対応し、当該過程に限定された発明であり、茶木の栽培から生葉が摘採され加工され、茶製品として流通販売され、最終的に消費者の手に渡るまでの全過程を総合的に俯瞰し、全体最適化に適応できるような発明ではない。
【0012】
また、上記した各発明は、各々、生葉の生産過程等、各過程で取得された情報を、当該各過程が属する製品生産サイクルにおいて活用するに留まり、たとえば、当該製品生産サイクルにおいて取得された知見を、次年度の製品生産サイクルにおいて活用する旨の観点に欠けている。
【0013】
本発明の目的は、作物が育成または栽培され、収穫され、加工され、流通され、農産加工品として消費者の手に渡るまでの過程で取得される各情報を、一元的に管理しつつ次年度の計画又は機器の設定に活用する情報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示にかかる情報システムは、
作物を育成及び加工して農産加工品を生産するまでの生産情報、及び前記農産加工品を流通して販売するまでの流通販売情報を取得し、
前記生産情報及び前記流通販売情報に基づいて、前記作物の育成から前記農産加工品の販売における作業の計画、又は前記作業において使用される機器の設定値を生成し、
前記流通販売情報に含まれる、前記農産加工品の市場ニーズ情報に適合する推定計画または推定設定値を生成し、
前記市場ニーズ情報は、前記農産加工品に対する市場の評価に基づいた情報である。
【0015】
本開示にかかる情報処理方法は、
本開示の情報システムを用いて、
作物を育成及び加工して農産加工品を生産するまでの生産情報、及び前記農産加工品を流通して販売するまでの流通販売情報を取得する工程と、
前記生産情報及び前記流通販売情報に基づいて、前記作物の育成から前記農産加工品の販売における作業の計画、又は前記作業において使用される機器の設定値を生成する工程と、
前記流通販売情報に含まれる、前記農産加工品の市場ニーズ情報に適合する推定計画または推定設定値を生成する工程と、
前記計画または前記設定値を出力する工程と、を実施し、
前記市場ニーズ情報は、前記農産加工品に対する市場の評価に基づいた情報である。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】情報システム100が管理する農産加工品の作物育成から販売に至る過程の全体を示す概念図である。
【
図2】情報システム100の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】情報システム120が管理する茶製品の茶木育成から販売に至る過程の全体を示す概念図である。
【
図4】フィールドサーバ230の構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】摘採機240の構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】施肥機260の構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】防除機280の構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】製茶ライン520の構成を示す機能ブロック図である。
【
図9】製茶ライン520の各機能ブロックを模式的に示した模式図である。
【
図10】情報システム100に付加されている出荷管理部130の状態を示すブロック図である。
【
図11】情報システム1100が管理する茶製品の茶木育成から販売に至る過程の全体を示す概念図である。
【
図12】情報システム1100の構成を示す機能ブロック図である。
【
図13】製茶ライン1200の構成を示す機能ブロック図である。
【
図20】ニューラルネットワークの一例を示す概念図である。
【
図21】茶の品種別の茶葉硬化度の推移を表した図である。
【
図22】ブルーベリージャムについての市場ニーズ情報の一例を示すグラフである。
【
図23】煎茶及び抹茶の市場ニーズ情報の一例を示すグラフである。
【
図24】蒸し茶の市場ニーズ情報の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、情報システム100が管理する農産加工品の作物育成から販売に至る過程の全体を示す概念図である。
図1において、実線矢印は物の流れを示し、破線矢印は情報の流れを示す。実施の形態1における全体システム10は、情報システム100によって管理されている。
【0020】
情報システム100は、作物を育成し収穫し加工して得られる農産加工品600を管理する。圃場200においては、作物が育成される。圃場作業者202は、作業者端末204を携帯し、圃場200を管理する圃場管理過程、作物を育成する作物育成過程、作物を収穫する作物収穫過程における各種作業に従事する。
【0021】
作業者端末204は、情報システム100から作業の計画、たとえば、施肥計画、防除計画、収穫計画等を受信する機能を有する。このため、圃場作業者202は、当該受信した計画を参照して、作業を行うことができる。
【0022】
圃場作業者202は、また、作業者端末204に作業日報等の作業情報を入力することも可能であり、作業者端末204は、入力された作業情報を情報システム100に送信する。
【0023】
圃場200には、圃場機器であるフィールドサーバ206、採取機208、施肥機または防除機等の管理機210が配置され、圃場作業者202は、これら圃場機器を利用して、施肥作業、防除作業、収穫作業等の圃場作業を行う。圃場機器は、圃場管理過程で圃場情報を取得し、作物育成過程で育成情報を取得し、作物収穫過程で収穫情報を取得し、取得した圃場情報、育成情報および収穫情報を情報システム100に送信する。
【0024】
圃場情報として、たとえば圃場200の土壌情報、圃場管理過程で実施した作業名、作業日時、各作業で使用した機器の設定値、各作業で使用した肥料、農薬といった物品の名称と使用量等が例示できる。育成情報として、たとえば作物の育成状況を示す画像情報や作物育成過程における気象情報、作物育成過程で実施した作業名、作業日時、各作業で使用した機器の設定値、各作業で使用した肥料、農薬といった物品の名称と使用量等が例示できる。収穫情報として、たとえば農産物の収穫予定日時情報、重量情報、品質情報、作物収穫過程で使用した機器の設定値等が例示できる。
【0025】
また、圃場機器のそれぞれは、圃場情報、育成情報、及び収穫情報のうちの取得した情報を情報システム100に送信するとともに、情報システム100から各圃場機器における設定値を受信し、情報システム100から受信した設定値が自動入力される。これにより、圃場作業者202による入力作業が省略または簡略化でき、圃場機器の自動運転にも対応することが可能になる。
【0026】
輸送車両300は、圃場200で収穫された農産物を輸送する。輸送作業者302は、輸送車両300を操作して農産物輸送過程における輸送作業に従事する。輸送作業者302は、作業者端末304を携帯し、作業者端末304は、情報システム100から輸送計画等を受信する。輸送作業者302は、受信した輸送計画を参照して、輸送作業を行うことができる。輸送作業者302は、また、作業者端末304に作業日報等の作業情報を入力することも可能であり、作業者端末304は、入力された作業情報を情報システム100に送信する。輸送車両300は、圃場200で収穫された農産物に限らず、圃場等で作業に従事する作業者を輸送するものであってもよい。
【0027】
輸送車両300は、当該輸送過程において輸送情報を取得し、取得した輸送情報を情報システム100に送信する。輸送情報として、たとえば、輸送に係る農産物の重量情報、品質情報、到着予定日時情報等が例示できる。また、輸送車両300は、輸送情報を情報システム100に送信するとともに、情報システム100から輸送車両300における設定値、たとえばナビゲーションシステムへの入力値を受信する。この際、情報システム100から受信した設定値が自動入力されることで、輸送作業者302による入力作業が省略または簡略化できる。
【0028】
農産物受入設備400は、輸送された農産物を受け入れる。受入作業者402は、受入設備400を操作して農産物受入過程における受入作業に従事する。受入作業者402は、作業者端末404を携帯し、作業者端末404は、情報システム100から受入計画等を受信する。受入作業者402は、受信した受入計画を参照して、受入作業を行うことが可能であり、受入作業者402は、作業者端末404に作業日報等の作業情報を入力し、作業者端末404は、入力された作業情報を情報システム100に送信する。
【0029】
農産物受入設備400は、当該受入過程において受入情報を取得し、取得した受入情報を情報システム100に送信する。受入情報として、たとえば、輸送に係る農産物の重量情報、品質情報、到着予定日時情報等が例示できる。
【0030】
また、農産物受入設備400は、受入情報を情報システム100に送信するとともに、情報システム100から農産物受入設備400における設定値を受信する。この際、情報システム100から受信した設定値が自動入力されることで、受入作業者402による入力作業が省略または簡略化できる上、農産物受入設備400を無人で自動制御することもできる。
【0031】
農産物加工設備500は、受け入れた農産物を加工する。加工作業者504は、野菜や果物などの農産物を、ジュースなどの新しい製品に加工することに従事する。加工作業者504は、作業者端末502を携帯し、作業者端末502は、情報システム100から加工計画等を受信する。加工作業者504は、受信した加工計画を参照して、加工作業を行うことが可能であり、加工作業者504は、作業者端末502に加工作業の日報等の作業情報を入力し、作業者端末502は、入力された作業情報を情報システム100に送信する。
【0032】
農産物加工設備500は、当該農産物加工過程において加工情報を取得し、取得した受入情報を情報システム100に送信する。加工情報として、たとえば、農産物加工過程で実施した作業名、作業の実施日時、作業で使用した加工機の設定値、加工する農産物の重量情報、加工後の品質情報等が例示できる。
【0033】
農産物加工設備500により加工された農産物は、農産加工品600として取扱業者700を介して小売店800に出荷され、消費者900によって購入される。農産加工品600としては、ジュースの他にジャム、ドレッシング、漬物などが挙げられる。
【0034】
取扱業者700は、流通販売情報を情報システム100に送信する。流通販売情報は、流通販売過程で取得される情報である。たとえば、流通販売情報は、農産加工品600の売上、在庫、在庫回転率、小売店800から取得する消費者900のニーズに関連する市場ニーズ情報等である。即ち、農産加工品を流通して販売するまでに得られる情報を流通販売情報とする。
【0035】
市場ニーズ情報は、流通販売過程において農産加工品600を取り扱う取扱業者700、小売店800、および農産加工品600を購入した消費者900の当該農産加工品600に対する意見や感想などに基づくものである。市場ニーズ情報は、取扱業者700、及び小売店800に寄せられた情報、当該農産加工品600を対象にして実施されたアンケートの回答に基づく情報、及び当該農産加工品600に対するSNS上でのコメントなどに基づく情報等である。市場ニーズ情報となる情報が電子化されていない場合には、例えば作業者がコンピュータ等の情報端末からそれらの情報を入力することで市場ニーズ情報の一部として情報システム100に送信される。
【0036】
市場ニーズ情報となる情報が特定のホームページに入力されたアンケートの回答等である場合には、当該アンケートの回答は電子的にまとめられ市場ニーズ情報の一部として情報システム100に送信される。市場ニーズ情報となる情報がSNS上での意見等である場合には、それらの意見を自動的に抽出し電子的にまとめられ市場ニーズ情報の一部として情報システム100に送信される。市場ニーズ情報を情報システム100に送信する情報端末は、情報システム100から独立している情報端末、又は各作業者端末204、304、404、502等であってもよい。即ち、市場ニーズ情報は、農産加工品600に対する市場からの評価に基づいた情報である。また、情報システム100は、任意の情報端末から市場ニーズ情報を受信することができる。
【0037】
図2は、情報システム100の構成を示す機能ブロック図である。情報システム100は、作物を育成し収穫し加工して得られる農産加工品を管理する情報システムであり、たとえば、サーバ等のコンピュータハードウェアおよびソフトウェアによって構成される。情報システム100は、制御部114,受信部102、送信部104、計画設定値生成部106、記憶部108、推定部110、障害検知部112、計画設定値修正部113を有する。
【0038】
受信部102は、作物の圃場を管理する圃場管理過程、作物を育成する作物育成過程、作物を収穫する作物収穫過程、収穫で得られる農産物を輸送する農産物輸送過程、輸送された農産物を受け入れる農産物受入過程、および、農産物を加工する農産物加工過程を含む、農産加工品の生産に係る生産過程のうち1以上の過程で取得される生産情報と、農産加工品を流通し販売する流通販売過程で取得される流通販売情報と、を受信する。即ち生産情報は、作物を育成及び加工して農産加工品を生産するまでに得られる情報であり、圃場情報、育成情報、収穫情報、輸送情報、受入情報、及び加工情報のいずれかを含むものである。
【0039】
本明細書において、「任意の農産加工品が生産され販売されて消費者の手に渡るまでの過程」を1サイクルとし、当該1サイクルを「サイクル過程」と定義するものとする。たとえば
図1を例にすれば、「任意の農産加工品が生産され販売されて消費者の手に渡るまでの過程」とは、管理状態にある圃場200で作物が育成され、当該作物が収穫されて農産物となり、農産物が輸送車両300を介して輸送され、農産物受入設備400で受け入れられ、当該農産物を農産物加工設備500にて加工して農産加工品600と為し、これを取扱業者700、小売店800、消費者900へ流通販売するまでの過程をいい、当該一連の過程を「サイクル過程」と定義することができる。
【0040】
ただし、圃場管理過程は、作物育成に先立って管理されることは勿論、作物の育成途中および収穫後にあっても管理されることが一般的であることから、圃場管理過程は、サイクル過程の全般に渡る過程であるといえる。また、作物育成過程は、育成される作物が樹木等複数年に渡って収穫される作物である場合、サイクル過程の全般に渡って育成管理されるべきであり、この場合、圃場管理過程同様、サイクル過程の全般に渡る過程であるといえる。
【0041】
計画設定値生成部106は、受信部102が受信した受信情報(生産情報または流通販売情報、以下単に「受信情報」という場合がある。)に基づき、前記した圃場管理過程、作物育成過程、作物収穫過程、農産物輸送過程、農産物受入過程、農産物加工過程、流通販売過程を含む全過程(農産加工品の生産、流通および販売に係る全過程)の何れかの過程における作業の計画、または、前記した全過程の何れかの過程で使用される機器の設定値、を生成する。
【0042】
送信部104は、計画設定値生成部106が生成した計画または設定値を、対応する作業の実施者端末または機器に送信する。
【0043】
推定部110は、任意の「サイクル過程」における流通販売過程で取得された流通販売情報に含まれる市場ニーズ情報に適合する計画として推定した推定計画、または市場ニーズ情報に適合する設定値として推定した推定設定値を生成する。たとえば、推定部110は、市場ニーズ情報をデータ化したニーズデータが入力されたとき、推定計画または推定設定値を出力する、学習済みニューラルネットワークを利用する。
【0044】
記憶部108は、推定部110が生成した推定計画および推定設定値を、当該「サイクル過程」で取得または生成した情報(受信部102が受信した生産情報または流通販売情報(受信情報)を含む)、計画または設定値とともに、当該「サイクル過程」に関連付けたサイクル情報として記録する。
【0045】
推定部110が推定計画または推定設定値を生成し、記憶部108にこれを記録する場合、計画設定値生成部106は、現「サイクル過程」より前の「サイクル過程」における推定計画または推定設定値に基づいて現「サイクル過程」の計画または設定値を生成することができる。あるいは、計画設定値生成部106は、現サイクル過程において取得した受信情報に基づく調整を推定計画または推定設定値に加えて現「サイクル過程」の計画または設定値を生成することができる。
【0046】
障害検知部112は、受信情報を受けて、当該受信情報が取得された過程における作業または当該過程で使用される機器の障害を検知する。
【0047】
計画設定値修正部113は、障害検知部112が障害を検知したとき、当該障害に係る過程の計画または設定値を、障害が回避されるように修正し、修正計画または修正設定値を生成する。この場合、送信部104は、修正計画または修正設定値を、修正に係る作業の実施者端末または修正に係る機器に送信し、当該構成を有することで、障害が発生した場合、臨機応変に対応し、当該障害を回避することができる。
【0048】
以下、受信部102が受信する受信情報、および、当該受信情報を受信した場合に計画設定値生成部106が生成する計画または設定値を例示する。
【0049】
たとえば、受信部102が、圃場管理過程で取得される圃場情報を受信し、受信した圃場情報が、圃場の土壌情報を含む場合、計画設定値生成部106は、当該土壌情報に基づいて、圃場の施肥の計画または施肥で使用する機器の設定値を生成することができる。
【0050】
たとえば、受信部102が、作物育成過程で取得される育成情報を受信し、受信した育成情報が、作物の画像情報または作物の育成過程における気象情報を含む場合、計画設定値生成部106は、画像情報または気象情報に基づいて、作物の防除もしくは収穫の計画、または、防除もしくは収穫で使用する機器の設定値を生成することができる。
【0051】
たとえば、受信部102が、作物収穫過程で取得される収穫情報を受信し、受信した収穫情報が、農産物の収穫予定日時情報、重量情報または品質情報を含む場合、計画設定値生成部106は、収穫予定日時情報、重量情報または品質情報に基づいて、農産物の輸送の計画、または、輸送で使用する機器の設定値を生成することができる。
【0052】
たとえば、受信部102が、農産物輸送過程で取得される輸送情報を受信し、受信した輸送情報が、輸送に係る農産物の重量情報、品質情報または到着予定日時情報を含む場合、計画設定値生成部106は、重量情報、品質情報または到着予定日時情報に基づいて、農産物の受入もしくは加工の計画、または、受入もしくは加工で使用する機器の設定値を生成することができる。
【0053】
たとえば、受信部102が、農産物加工過程で取得される加工情報を受信し、受信した加工情報が、農産物の加工の過程でモニタしているモニタリング情報を含む場合、計画設定値生成部106は、モニタリング情報に基づいて、加工の変更計画、または、加工で使用する機器の再設定値を生成することができる。
【0054】
以上説明した情報システム100によれば、「作物が育成または栽培され、収穫され、加工され、流通され、農産加工品として消費者の手に渡るまでの過程」で取得される一次情報を、一元的に管理することができる。
【0055】
また、当該一次情報を活用し、作物が育成または栽培される圃場の整備維持管理、作物の育成または栽培、収穫、収穫物の搬送、保管、加工、加工品の流通等、各過程における実施計画、実施における各種条件の設定を最適化し、所定の品質を保持するとともに、各過程で使用される設備の稼働率向上、または各過程で使用される資材の削減、を可能とする。
【0056】
さらに、一次情報に含まれる市場ニーズに関連する市場ニーズ情報を参照して生成した二次情報を活用し、市場のニーズに対応した、各過程における実施計画、実施における各種条件の設定を可能とする。
【0057】
作物が育成または栽培され、収穫され、加工され、流通され、農産加工品として消費者の手に渡るまでの全過程を1サイクルとするサイクル過程で取得された知見を、次のサイクルにおいて活用することが可能になる。
【0058】
(実施の形態2)
図3は、情報システム120が管理する茶製品の茶木育成から販売に至る過程の全体を示す概念図である。
図3において、実線矢印は物の流れを示し、破線矢印は情報の流れを示す。実施の形態2における全体システム20は、情報システム120によって管理されている。実施の形態2では、情報システム120は、製茶に特化されている。すなわち、実施の形態1における圃場200、作物、農産物および農産物加工設備500、農産加工品600は、本実施の形態2において、それぞれ、茶圃場220、茶木、茶の生葉および製茶ライン520、製茶品620であり、実施の形態1における圃場管理過程、作物育成過程、作物収穫過程、農産物輸送過程、農産物加工過程および流通販売過程は、本実施の形態2において、それぞれ、茶圃場管理過程、茶木育成過程、生葉摘採過程、生葉輸送過程、生葉受入過程、製茶過程および茶製品の流通販売過程である。
【0059】
この場合、情報システム120は、茶圃場管理過程、茶木育成過程、または、生葉摘採過程において、施肥機260、防除機280、摘採機240、または、フィールドサーバ230からの情報を受信し、生葉輸送過程において、輸送車両320からの情報を受信し、製茶過程において、製茶ライン520からの情報を受信する。製茶ライン520からの情報として、生葉管理工程、蒸熱工程、蒸葉処理工程、葉打ち工程、粗揉工程、中揉工程、精揉工程、乾燥工程の各工程で使用する機器からの情報を例示することができる。
【0060】
また、本実施の形態2においては、「任意の農産加工品が生産され販売されて消費者の手に渡るまでの過程」とは、管理状態にある茶圃場220で作物が育成され、当該作物が茶木、茶の生葉として収穫され、輸送車両320を介して輸送され、当該農産物である茶木、茶の生葉を製茶ライン520にて加工して製茶品620と為し、これを取扱業者700、小売店800、消費者900へ流通販売するまでの過程のことであり、これを以って「サイクル過程」と定義することができる。
【0061】
情報システム120は、茶木を育成し収穫し加工して得られる茶製品を管理する。情報システム120は、
図2を用いて説明した情報システム100と同様の構成を有する。同様の構成については説明を省略する。
【0062】
茶圃場220においては、茶木が育成される。茶圃場作業者222は、作業者端末224を携帯し、茶圃場220を管理する茶圃場管理過程、茶木を育成する茶木育成過程、茶葉を収穫する生葉摘採過程における各種作業に従事する。作業者端末224は、情報システム120から作業の計画、たとえば、施肥計画、防除計画、摘採計画を受信し、茶圃場作業者222は、当該受信した計画を参照して、作業を行うことができる。
【0063】
茶圃場作業者222は、また、作業者端末224に作業日報等の作業情報を入力し、作業者端末224は、入力された作業情報を情報システム120に送信する。
【0064】
茶圃場220には、フィールドサーバ230、摘採機240、施肥機260、防除機280等の圃場機器としての茶圃場機器が配置される。茶圃場作業者222は、これらフィールドサーバ230、摘採機240、施肥機260、防除機280等の茶圃場機器を利用して、施肥作業、防除作業、摘採作業等の茶圃場作業を行う。
【0065】
茶圃場機器は、茶圃場管理過程で圃場情報を取得し、茶木育成過程で育成情報を取得し、生葉摘採過程で収穫情報を取得し、取得した圃場情報、育成情報および収穫情報を情報システム120に送信する。圃場情報として、茶圃場220の土壌情報が例示でき、育成情報として、茶木の育成状況を示す画像情報や茶木育成過程における気象情報が例示できる。
【0066】
また、収穫情報として、生葉の収穫予定日時情報、重量情報、品質情報等が例示できる。茶圃場機器は、取得した情報を情報システム120に送信するとともに、情報システム120から夫々の機器における設定値を受信する。この際、情報システム120から受信した設定値が自動入力されることで、茶圃場作業者222による入力作業が省略または簡略化でき、茶圃場機器の自動運転にも対応することが可能になる。
【0067】
図4は、フィールドサーバ230の構成を示す機能ブロック図であり、
図5は、摘採機240の構成を示す機能ブロック図である。
図6は、施肥機260の構成を示す機能ブロック図であり、
図7は、防除機280の構成を示す機能ブロック図である。
【0068】
フィールドサーバ230は、気象情報取得部232、航空撮像部233、記憶部234、通信部235、制御部236を有する。フィールドサーバ230は、複数のセンサーとネットワーク技術を利用した屋外設置型のシステムとして構成され、気温センサー、湿度センサー、日照センサー、 土壌温度センサーなどを含んでいる。具体的には、各種データ処理を行う制御部236と、ドローンなどの遠隔操作により無人の飛行物体を操り、上空より茶圃場を撮像する航空撮像部233、各種センサーにて測定された値やデータ等を記憶する記憶部234,気象情報を取得する気象情報取得部232、情報システム120との送受信を行う通信部235により構成されている。また、フィールドサーバ230は、土壌情報取得部247(
図5参照)を備えてもよい。
【0069】
摘採機240は、摘採装置242、走行部243、GPSユニット244、センシング部245、生葉分析計246、土壌情報取得部247、荷重変換部248、判定部249、記憶部250、通信部251、制御部252等から構成される。
【0070】
制御部252は、各種データ処理を行い、GPSユニット244は、茶圃場の地理的位置を特定する。
【0071】
センシング部245は、複数の撮像装置を摘採機240の前方に指向させて配置し、茶畝を含む障害物の輪郭を検知すると共に、可視画像用撮像装置により、可視画像によって障害物を検知する。また、センシング部245には、近赤外線画像撮像装置を備えてもよい。近赤外線画像撮像装置で撮像した画像は、生葉の成分分析等に用いることができる。
【0072】
生葉分析計246は、生葉を破壊することなく、成分を分析するものであり、生葉中の全窒素、総繊維、含水率等を計測することができる。また、生葉の葉緑素値を計測することができるものであってもよい。
【0073】
土壌情報取得部247は、施肥量の最適化を図るために、茶圃場の土壌サンプリングを行うことができるよう構成されている。
【0074】
荷重変換部248は、ロードセルの値より茶の収量を自動予測するために設けられる。
【0075】
判定部249は、茶園日誌データベースの作業履歴及びGPSユニット244からのデータより、茶圃場の状態(いつ、どの圃場で、作業状態はどのようになっているか)を判定する。また、判定部249は、生葉分析計246による計測値から茶葉(生葉)の階級を判定したり、土壌情報取得部247から取得した土中の施肥量の適否を判定したり、荷重変換部248により測定された収量を判定する。
【0076】
記憶部250は、摘採機240の走行情報や刈取り情報等を記憶し、通信部251は、情報システム120とのデータの送受信を行う。
【0077】
摘採装置242は、例えば刈り取った茶葉(生葉)を、刈刃後方からの背面風によって、その吹出口付近に負圧を生じさせ、この負圧吸引作用によって刈り取り直後の茶枝葉を刈刃後方側に引き寄せ、背面風に乗せて、収容部など適宜の部位に移送する。
【0078】
走行部243は、本体フレームに支持された走行体からなり、走行体は、前後の車輪と車輪間に巻回された無限軌道から構成され、原動機等の駆動力によって、畝に沿って前後方向に走行可能となっている。
【0079】
施肥機260は、肥料散布装置262、走行部263、GPSユニット264、センシング部265、土壌情報取得部267、判定部269、記憶部270、通信部271、制御部272等から構成される。
【0080】
制御部272は、各種データ処理を行い、GPSユニット264は、茶圃場の地理的位置を特定する。
【0081】
センシング部265は、複数の撮像装置を施肥機260の前方に指向させて配置し、茶畝を含む障害物の輪郭を検知すると共に、可視画像用撮像装置により、可視画像によって障害物を検知する。センシング部265には、センシング部245と同様に、近赤外線画像撮像装置を備えてもよく、マルチスペクトルカメラを備えてもよい。
【0082】
土壌情報取得部267は、施肥量の最適化を図るために、茶圃場の土壌サンプリングを行うことができるよう構成されている。
【0083】
判定部269は、茶園日誌データベースの作業履歴及びGPSユニット264からのデータより、茶圃場の状態(いつ、どの圃場で、作業状態はどのようになっているか)や、土壌情報取得部267から取得した土中の施肥量の適否を判定する。
【0084】
また、判定部269は、センシング部265にて撮像した近赤外線画像と可視画像を合成して得られるNDVI(正規化植生指数)画像又はマルチスペクトルカメラにより撮像した画像から、生育状況を数字や色で視認し、その数字や色を基に生葉の収穫予定日時を判定することもできる。
【0085】
また、施肥機260には、摘採機240の生葉分析計246と同様な分析計を備えてもよく、この場合、判定部269は、当該分析計で計測された生葉中の総繊維量、全窒素量、葉緑素値等に基づき、生葉の収穫予定日時を判定することもできる。
【0086】
記憶部270は、施肥機260の走行情報や施肥情報等を記憶し、通信部271は、情報システム120とのデータの送受信を行う。
【0087】
肥料散布装置262は、例えば、車両後部に設けられたコンテナ内に設けられている肥料散布部によって内部の肥料が散布位置から土壌に向けて適量が散布され、散布された肥料の散布量の情報は、通信部271を介して情報システム120へ送られる。
【0088】
走行部263は、本体フレームに支持された走行体からなり、走行体は、前後の車輪と車輪間に巻回された無限軌道から構成され、原動機等の駆動力によって、畝に沿って前後方向に走行可能となっている。
【0089】
防除機280は、薬液散布装置282、走行部283、GPSユニット284、センシング部285、土壌情報取得部287、判定部289、記憶部290、通信部291、制御部292等から構成される。
【0090】
制御部292は、各種データ処理を行い、GPSユニット284は、茶圃場の地理的位置を特定する。
【0091】
センシング部285は、複数の撮像装置を防除機の前方に指向させて配置し、茶畝を含む障害物の輪郭を検知すると共に、可視画像用撮像装置により、可視画像によって障害物を検知する。
【0092】
土壌情報取得部287は、散布する薬液量の最適化を図るために、茶圃場の土壌サンプリングを行うことができるよう構成されている。
【0093】
判定部289は、茶園日誌データベースの作業履歴及びGPSユニット284からのデータより、茶圃場の状態(いつ、どの圃場で、作業状態はどのようになっているか)や、土壌情報取得部287から取得した農薬量の適否を判定する。
【0094】
記憶部290は、防除機280の走行情報や農薬の散布情報等を記憶し、通信部291は、情報システム120とのデータの送受信を行う。
【0095】
薬液散布装置282は、例えば、車両に設けられた薬剤タンク内の薬剤を、薬剤導管を介して茶葉に向けて適量を散布する。散布された薬剤の散布量の情報は、通信部291を介して情報システム120へ送られる。
【0096】
走行部283は、本体フレームに支持された走行体からなり、走行体は、前後の車輪と車輪間に巻回された無限軌道から構成され、原動機等の駆動力によって、畝に沿って前後方向に走行可能となっている。
【0097】
表1は、上記したフィールドサーバ230、摘採機240、施肥機260、防除機280が備える情報取得手段を例示した表である。表1において、各機器は、「●」が記入された情報を取得する。
【表1】
【0098】
図3にもどり、説明を続ける。輸送車両320は、茶圃場220で収穫された生茶葉を輸送する。輸送作業者322は、輸送車両320を操作して生茶葉輸送過程における輸送作業に従事する。輸送作業者322は、作業者端末324を携帯し、作業者端末324は、情報システム120から輸送計画等を受信することで、輸送作業者322は、受信した輸送計画を参照して、輸送作業を行うことができる。輸送作業者322は、また、作業者端末324に作業日報等の作業情報を入力し、作業者端末324は、入力された作業情報を情報システム120に送信する。輸送車両320は、圃場200で収穫された農産物に限らず、圃場等で作業に従事する作業者を輸送するものであってもよい。
【0099】
輸送車両320は、当該輸送過程において輸送情報を取得し、取得した輸送情報を情報システム120に送信する。輸送情報としては、輸送に係る生茶葉の重量情報、品質情報、到着予定日時情報等が例示できる。
【0100】
輸送車両320は、輸送情報を情報システム120に送信するとともに、情報システム120から輸送車両320における設定値、たとえばナビゲーションシステムへの入力値を受信し、情報システム120から設定値を受信して自動入力することで、輸送作業者322による入力作業が省略または簡略化できる。
【0101】
生葉受入420は、輸送された生茶葉を受け入れる。受入作業者422は、生葉の受入設備を操作して生茶葉受入過程における受入作業に従事する。受入作業者422は、作業者端末424を携帯し、作業者端末424は、情報システム120から受入計画等を受信することで、受入作業者422は、受信した受入計画を参照して、受入作業を行うことができる。更に受入作業者422は、作業者端末424に作業日報等の作業情報を入力し、作業者端末424は、入力された作業情報を情報システム120に送信することもできる。尚、作業者端末424は、設置式、携帯式のいずれであってもよい。
【0102】
生葉受入420は、当該受入過程において受入情報を取得し、取得した受入情報を情報システム120に送信する。受入情報として、輸送に係る農産物の重量情報、品質情報、到着予定日時情報等が例示できる。また、生葉受入420は、受入情報を情報システム120に送信するとともに、情報システム120から受信した設定値が自動入力されることで、受入作業者422による入力作業が省略または簡略化できる。
【0103】
製茶ライン520は、受け入れた生茶葉を荒茶に加工する。ライン作業者524は、生葉受入420にて受け入れた生茶葉を荒茶に加工することに従事する。ライン作業者524は、作業者端末522を携帯し、作業者端末522は、情報システム120から加工計画等を受信する。ライン作業者524は、受信した加工計画を参照して、加工作業を行える。ライン作業者524は、作業者端末522に加工作業の日報等の作業情報を入力し、作業者端末522は、入力された作業情報を情報システム120に送信する。製茶ライン520は、情報システム120から加工計画等を受信して無人で自動制御してもよい。製茶ライン520は加工作業の日報等の作業情報を自動的に情報システム120に送信するものでもよい。
【0104】
図8は、製茶ライン520の構成を示す機能ブロック図であり、
図9は、製茶ライン520の各機能ブロックを模式的に示した模式図である。製茶ライン520は、
図8に示したように製造装置が細分化されている。
【0105】
生葉受入420で受け入れた生茶葉は、生葉管理工程にて、受入コンテナ(生葉自動コンテナ)530に投入され、茶葉温度の常温保持が促される。生葉自動コンテナは、生茶葉を刈取群毎に区別して一時貯留する。収容された生茶葉を次工程へ供給する際には、通気性コンベアを駆動させて生茶葉を収容箱の搬出口まで搬送し、当該搬出口に配設された掻き落とし装置にて必要量の生茶葉を次工程へと送出するように構成する。
【0106】
生葉管理工程より送出された生茶葉は、茶葉内の酸化酵素の活性を失わせ、茶葉の風味を長く保存させることを目的として蒸熱工程に移行される。蒸熱工程は蒸熱機532により行われ、蒸気量、蒸し時間、蒸し胴の回転数、蒸し胴の傾斜角度、攪拌回転数等により、茶葉の色、茶葉の外観、水色等茶葉品質に大きな差が生じるため、各調整が非常に大事な工程であることが知られている。
【0107】
蒸熱工程を終えた蒸し茶葉は、蒸葉処理工程に送られる。蒸葉処理工程は蒸葉処理機534により行われ、回転胴内における程良い打圧と攪拌羽根による攪拌を作用させる工程であり、次工程以降の揉込みを良くして、茶葉の仕上がりを良くする目的で行われる。
【0108】
葉打ち工程および粗揉工程は、蒸葉処理を終えた蒸し茶葉を揉みながら乾燥する工程であり、葉打機536及び粗揉機538により行われ、蒸し茶葉の含水率をDB350~400%からおよそ100%まで低減する。葉打ち工程および粗揉工程は、茶葉の品質を決定する大事な工程でもある。
【0109】
揉捻工程は、粗揉工程での揉み不足及び乾燥ムラを補完し、茶葉の水分量を均一にし、ヨレ形状を付与するため揉捻機540にて行われる。
【0110】
中揉工程は、回転胴と揉み手により揉乾を行う工程であり、次工程以降に適するよう茶葉を調整するため、中揉機542により行われる。さらに、精揉工程により、精揉機544を使用して、茶葉内部の水分を適量まで減量し、茶葉形状が整えられ、乾燥工程にて、乾燥機546を使用して、茶葉の水分を5%程度まで熱風乾燥し、茶葉を貯蔵可能な状態とし、荒茶製造は完了する。
【0111】
但し、
図8、
図9に示した製茶ライン520は一般的な例示であり、生葉受入420から荒茶が完成するまでの装置であれば、これらの全ての工程をすべて含むものでなくてもよく、また、その他の装置が追加されていてもよい。
【0112】
また、本実施の形態2の情報システムは、上記した煎茶の製造ラインに限られるものではなく、半発酵茶、発酵茶の製造ラインであっても、適用が可能であり、その場合には、製造ライン内に上記以外の萎凋工程、発酵工程も含まれる。
【0113】
なお、製茶ライン520に仕上ブレンド工程を含めてもよい。これにより、荒茶を出荷状態に仕上げるとともに、産地や品種、蒸し具合などが異なる荒茶の特長を見極め、ブレンドすることができる。当該仕上ブレンド工程は仕上ブレンド機548を用いて行われる。
【0114】
表2は、上記した製茶ライン520の各工程において取得される情報を例示した表である。表2において、各工程では、「●」が記入された情報を取得する。
【表2】
【0115】
図3にもどり、説明を続ける。製茶ライン520により荒茶に加工された製茶品620は、取扱業者700を介して小売店800に出荷され、消費者900によって購入される。
【0116】
このようなシステム構成とすることで、茶圃場220内で収穫された生茶葉は、情報システム120から受信した作業計画、施肥量等の生茶葉に関する情報を保持したまま、輸送され、加工され、販売されるため、製茶品として、最終的に消費者の手に渡るまでの全過程を総合的に俯瞰することができ、収穫・製茶ライン加工・流通などの過程を明確にすることができる。特に、多岐にわたる製茶ライン加工を経たとしても、販売段階にて、茶葉育成時の施肥量、農薬量等の履歴が明確となるため、消費者への安全性向上に大幅に寄与することが可能である。
【0117】
また、茶圃場管理過程から流通販売過程までの一連の過程を1サイクルとするサイクル過程において、当該サイクル過程の流通販売過程で取得された流通販売情報に市場ニーズ情報を含ませることで、市場のニーズを反映した流通過程サイクルを実現することもできる。
【0118】
たとえば、市場ニーズ情報として品評会における評価結果を採用することができる。具体的には、作業者が情報端末を用いて品評会における評価結果を情報システム120に送信する。茶市場や品評会で高い評価を得た茶製品の成分分析結果と、加工前生茶葉の成分分析結果および製茶ラインのパラメータ(各機器の設定値)との関係を推定するような人工知能(AI)を構築すれば、市場のニーズを反映した流通過程サイクルを実現できる。
【0119】
すなわち、加工前の生葉の成分分析データおよび製茶ラインにおける加工パラメータを入力データとし、加工後の茶製品の成分分析データを出力データとする学習済み深層学習ニューラルネットワークを構築すれば、当該学習済み深層学習ニューラルネットワークを利用して、加工前に、仕上り製品の品質を予測することができる。当該予測は、次年度の生産計画策定に生かすことができる。また、生葉受け入れの際の成分分析結果から、計画で予定された加工パラメータを適用した場合の仕上り製品の品質を容易に予測でき、当該品質に問題がある場合には、速やかに計画済みの加工パラメータを適切な品質が予測される加工パラメータに計画変更することができる。予測は仕上がり製品の品質のみならず、製造装置の低燃費等の効率化を要望する生産者からの市場ニーズ情報にも適用が可能である。
【0120】
また、加工前の生葉の成分分析データ(仮定または実測値)および加工後の茶製品の成分分析データ(目標値)を入力データとし、製茶ラインにおける加工パラメータを出力データとする学習済み深層学習ニューラルネットワークを構築すれば、当該学習済み深層学習ニューラルネットワークを利用して、品評会で高い評価を得た茶製品の成分分析結果に適合するよう、製茶ラインのパラメータ(各機器の設定値)を推定することができる。
【0121】
判定部により、センシング部にて撮像した近赤外線画像と可視画像を合成して得られるNDVI(正規化植生指数)画像から生育状況を数字や色で視認を可能とする場合には、収穫日時を判定する数字や色の判定閾値を市場ニーズ情報としてもよい。そのようにすれば、前年以前の過去の収穫に対する市場評価を考慮しながら、収穫日時を判定する数字や色の判定閾値を変更し、より精度の高い判定閾値を得ることができる。また、生葉分析計246で計測された生葉中の総繊維量や、葉緑素値に基づき、生葉の収穫日時を判定する場合であっても、前年以前の過去の収穫に対する市場評価を考慮することで、より精度の高い判定閾値を得ることができる。
【0122】
(実施の形態3)
図10は、情報システム100に付加されている出荷管理部130の状態を示すブロック図である。
【0123】
本実施の形態3では、
図10に示したように情報システム100に製品の包装時にはその情報を梱包袋等に表示をする出荷管理部130が設けられている点において、実施の形態1とは異なっている。実施の形態3のその他の構成については、実施の形態1、2と同様であるため説明を省略する。
【0124】
出荷管理部130は、情報システム100の送信部104から情報を送信されることで、圃場情報、育成情報、収穫情報、輸送情報、農産物受入設備400からの受入情報、及び農産物加工設備500からの加工情報を取得する。
【0125】
次に出荷管理部130は、農産物加工設備500に設けられている袋詰機140から取得した情報に基づき袋詰めされた農産加工品600について、袋毎に対応する出荷番号を生成する。袋詰機140は、加工された農産物を袋詰めして農産加工品600として生産するものである。
【0126】
出荷管理部130は、生成した出荷番号に紐付けて出荷履歴を記録し出荷履歴情報として管理する。出荷管理部130は、対応する圃場情報、育成情報、収穫情報、輸送情報、受入情報、及び加工情報も出荷番号に紐付けて記録し管理する。そして、対応する出荷履歴情報に紐付けられているQRコード(登録商標)やバーコード等のコードが印字されたシールが作成される。シールの作成には、農産物受入設備400に設けられたプリンタ150等が用いられる。
【0127】
作成されたシールが対応する梱包袋や製品容器等に貼付けられることで、農産加工品600である製品にその製品の出荷履歴情報を完全に紐付けることができる。また、一対一対応で製品と出荷履歴情報とを管理することができる。なお、シールに印字された情報は、シールに印字されなくとも、梱包袋や製品容器等に直接印字される等でもよい。
【0128】
また、出荷履歴情報は、梱包袋等に貼付けられたコードが印字されたシールから把握することができるため、必要な時に必要な情報が容易に入手可能になる。これにより、市場に流通した後でも消費者900が製品の出荷履歴情報を簡単に入手することが可能である。一方で、製品に貼付けられたシールから出荷履歴情報を閲覧しようとした消費者900に対して、出荷履歴情報を開示するとともに簡単なアンケート等をWEBサイト上で実施することもできる。
【0129】
これにより、特定の製品に対する消費者900のニーズを把握することができる。即ち、特定の製品に対する市場ニーズ情報を消費者900から情報システム100が容易に直接取得することができる。なお、出荷履歴情報は、前述した実施の形態1における流通販売情報を含んでもよい。
【0130】
図10に示されているように、出荷管理部130は、情報システム100に対して独立して設けられている。しかし、これに限らずに情報システム100の一部として出荷管理部130を設けることも可能である。また、情報システム100又は農産物受入設備400に出荷管理部130を設けずに、他の装置として出荷管理部130を別途設けてもよい。このように出荷管理部130を設けることで、圃場200での農産物収穫、農産物加工設備、及び出荷までを完全に一元管理することが可能となる。
【0131】
次に、具体的に作物をブルーベリー、農産加工品600をブルーベリージャムとして説明する。なお、農産加工品600としてのブルーベリージャムとして、単なるブルーベリージャムと、他社との差別化を図ったレモン果汁入りブルーベリージャムと、の2種類を加工、販売しているものとする。
【0132】
まず、作物として、ブルーベリーが圃場200にて育成され、収穫されて農産物のブルーベリーとなり、輸送車両300を介して輸送され、農産物受入設備400で受け入れられ、当該農産物であるブルーベリーを農産物加工設備500にて加工して農産加工品600であるブルーベリージャムと為す。
【0133】
その際、農産加工品600がレモン果汁入りブルーベリージャムの場合には、農作物加工過程の最終段階で製品重量に対してX%のレモン果汁が添加される。レモン果汁の添加は、製品容器内に添加する機器によって自動で実施される。更に、加工が完了したブルーベリージャム及びレモン果汁入りブルーベリージャムは取扱業者700、小売店800、消費者900へと流通販売される。
【0134】
表3には、圃場管理過程で取得された圃場情報の一例が示されている。当該圃場情報は、作業を実施した日時、場所、作業項目、作業で使用した肥料や農薬の名前である種類、作業で使用した肥料や農薬の量、圃場識別番号で構成されている。表4には、農作物加工過程で取得された加工情報の一例が示されている。当該加工情報は、作業を実施した日時、加工工程、実施された作業で使用した加工機器の設定値、圃場識別番号、加工識別番号で構成されている。表5には、出荷履歴情報が示されている。圃場情報、及び加工情報は、加工を終了して出荷過程から販売過程で取得される出荷履歴情報と共に、受信部102から取得することができる。
【0135】
【0136】
販売後は、受信部102から取扱業者700又は小売店800又は消費者900からの市場ニーズ情報を得ることができる。
【0137】
ここで、市場ニーズ情報について説明する。作物、又は農産加工品600に関する市場ニーズ情報は、大きく3つに分類される。一つ目は、製品に対して種類の異なる別の製品との対比を要求される市場ニーズ情報(以下、第一ニーズ情報と言う。)である。二つ目は製品に対する消費者自らの嗜好や流行を要求される市場ニーズ情報(以下、第二ニーズ情報と言う。)である。三つ目は製品の品質に対して要求される市場ニーズ情報(以下、第三ニーズ情報と言う。)である。
【0138】
図22は、ブルーベリージャムについての市場ニーズ情報の一例を示すグラフである。
図22(a)には、ブルーベリージャムについてレモン果汁無しと有りとの購入比率が示されている。即ち、
図22(a)には、種類の異なる別の製品との対比についてのニーズが示されている。従って、
図22(a)に示されるような情報は、第一ニーズ情報に分類される。
【0139】
このような市場ニーズ情報が得られると、制御部114によって、当該市場ニーズ情報に適合する生産比率になるようにブルーベリージャムとレモン果汁入りブルーベリージャムとの推定計画が生成される。この推定計画を基に計画設定値生成部106により次回の生産計画が出力される。このように市場ニーズ情報(第一ニーズ情報)で得られた実比率を基に生産計画を変更して出力することができる。これにより、生産された製品を着実に販売することができ、在庫数の低減ができ、また在庫数の管理が容易になる。
【0140】
図22(b)には、レモン果汁有無に関する消費者の嗜好に関するニーズが示されている。従って、
図22(b)に示されるような情報は、第二ニーズ情報に分類される。
図22(b)に示されるような第二ニーズ情報が市場ニーズ情報として得られると、制御部114は、当該市場ニーズ情報に製品の特長を適合させるべく、製品へのレモン果汁の添加量を増加させる方向で当該添加量を推測する。
【0141】
次に、制御部114で推測されたレモン果汁の添加量に基づいて、計画設定値生成部106によりレモン果汁の添加量が推測された添加量となるようにレモン果汁の添加を実施するための機器の設定値が出力される。
【0142】
図22(b)のような消費者の嗜好に関する情報(第二ニーズ情報)が得られた場合には、市場ニーズ情報から得られたデータに偏りが無いと判断される場合のみ、計画設定値生成部106により設定値が出力される。嗜好に関する情報の場合「適量」と考える多数派の人数割合が6~7割以上である場合が最も市場のニーズに適合しているものと考えられる。
【0143】
このため、得られたデータにおいて、「適量」と考えている割合が全体の6割を超えない場合には、偏りが無いと考える。このような場合に計画設定値生成部106により推定設定値が出力される。
図22(b)には、ニーズが「もっと多く」に偏っているが、「適量」には偏っていない。逆に、得られたデータで6~7割以上の人が「適量」と考えていると判断された場合には、計画設定値生成部106は、推定設定値を出力しないか、現状とは変わらない推定設定値を出力する。
【0144】
すなわち、第二ニーズ情報の場合には、製品が多数派の嗜好に合致しているかを判断し、その上で推定計画又は推定設定値は、計画設定値生成部106により出力される構成としている。それは、市場ニーズ情報が消費者の嗜好によるもの、即ち第二ニーズ情報の場合には多数派の人数割合を考慮しないと販売への影響が大きいためである。
【0145】
「ブルーベリーの味の改善」といった第三ニーズ情報が得られた場合には、制御部114によって、圃場管理過程、作物育成過程、農産物加工過程内で改善できる要因を推定し、当該市場ニーズ情報にある改善内容に適合するような推定計画又は推定設定値が生成され、出力される。
【0146】
製品の品質に対して要求される第三ニーズ情報に対応する場合には、改善できる要因の中で当該第三ニーズ情報の改善内容に最も適合できる可能性の高い要因から順番に計画設定値生成部106により推定計画又は推定設定値の出力が行われる。
【0147】
上記の「ブルーベリーの味の改善」の場合については、例えば、施肥における肥料の量を多くする改善が「ブルーベリーの味の改善」に結びつく可能性が最も高いと考えられるため、計画設定値生成部106により施肥に関する推定計画又は推定設定値を最も優先して出力する。
【0148】
すなわち、第三ニーズ情報の場合には、改善の可能性が高い項目順に推定計画又は推定設定値を計画設定値生成部106により計画又は設定値を出力することで、効率よく改善が施される上、他の要因を変更することがなく、作業や、農作物の味に与える弊害が少ないという長所がある。
【0149】
上記の通り、市場ニーズ情報が第二ニーズ情報又は第三ニーズ情報のような場合の推定計画又は推定設定値は、条件を満たす場合に限り計画設定値生成部106が出力する構成となっている。この場合「条件を満たすか否か」の判断は推定部110で行ってもよいし、計画設定値生成部106で行ってもよい。また、記憶部108で記憶されるデータとしてビッグデータを利用しているが、個人的なスモールデータに基づいて市場ニーズ情報の傾向を分析してもよい。ビッグデータとは、市販されているデータベースや管理ツールや従来のデータ処理アプリケーションで処理することが困難なほど巨大で複雑なデータ集合の集積物をいう。
【0150】
(実施の形態4)
本実施の形態4では、製茶品620に出荷履歴情報を付し、当該出荷履歴情報を利用して市場のニーズを収集・活用する例を説明する。
図11は、実施の形態4における情報システム1100が管理する茶製品の茶木育成から販売に至る過程の全体を示す概念図である。
図12は、情報システム1100の構成を示す機能ブロック図である。
図13は、製茶ライン1200の構成を示す機能ブロック図である。なお、実施の形態4において、以下で説明していない構成については、実施の形態1~3と同様であるため、説明を省略する。
【0151】
全体システム1000は、情報システム1100によって管理され、製茶品620は、製茶ライン1200を経た後、出荷管理1300で出荷履歴情報が付され、出荷される。製茶品620に付された出荷履歴情報は、取扱業者700、小売店800、消費者900からの要求に応じた製茶品620の情報提供および情報収集に利用される。すなわち、茶圃場220で育成、収穫された生葉は、実施の形態2で説明した通り、製茶ライン1200の受入コンテナ530に受け入れ、蒸熱機532~仕上ブレンド機548を経て荒茶に加工する。
【0152】
製茶ライン1200は、加工された荒茶を袋詰する袋詰機1202を有しており、袋詰された荒茶は、出荷管理1300の後、製茶品620として出荷する。出荷管理1300は、情報システム1100の出荷履歴情報生成部1102による出荷履歴情報の生成と、生成した出荷履歴情報の印刷部1104による印刷物1106への印刷と、を管理する。
【0153】
情報システム1100は、システム全体を制御するものであり、
図2に示す情報システム100の構成に加えて、出荷履歴情報生成部1102、印刷部1104、応答部1108およびニーズ解析部1110を有する。
【0154】
出荷履歴情報生成部1102は、出荷履歴情報を生成する。出荷履歴情報は、製茶品620の出荷に際し製茶品620に表示する情報である。出荷履歴情報は、たとえば、出荷日、出荷番号、合組番号、茶の品種、数量、バッチ番号、製造日、製品番号、製品名、製造者などが含まれる。なお、出荷番号は、出荷に係る単一または複数の製茶品620を識別するための識別情報であり、合組番号は、複数の荒茶を合組(ブレンド)して製茶品620とする場合の荒茶の割合、種類など合組の条件を識別するための識別情報である。
【0155】
バッチ番号は、製茶品620が生葉の育成から荒茶に加工されるまでの処理条件が同一となる範囲を単位バッチと認識し、当該バッチを識別するための識別情報である。出荷番号、合組番号、バッチ番号などの番号は、数字に限らず文字や記号が含まれるコードであってもよい。なお、本実施の形態の出荷履歴情報は、実施の形態1における流通販売情報を含んでもよい。
【0156】
表6は、出荷履歴情報生成部1102が生成した出荷履歴情報の一例を示すリストである。表6に示されている出荷履歴情報は、出荷の日時、出荷番号、合組番号、品種、数量、バッチ番号、出荷先の情報を含んでいる。
【表6】
【0157】
出荷履歴情報は、また、対応する製茶品620の情報にアクセスするためのアクセス情報を含む。アクセス情報として、たとえば対応する製茶品620を特定することが可能な固有の番号である出荷番号、又は対応する製茶品620の情報にアクセスするためのURL(Uniform Resource Locator)の情報を含んでいる。アクセス情報は、一次元コード(いわゆるバーコード)、または二次元コード(いわゆるQRコード(登録商標))といったコード化された状態で表示されることができる。
【0158】
印刷部1104は、出荷履歴情報のうちの少なくともアクセス情報が印刷された印刷物1106を印刷する。印刷物1106は、ラベルシール等の貼付媒体であり、製茶品620に貼付される。なお、印刷物1106は、貼付を前提とした貼付媒体に限られず、製茶品620の袋、箱など、出荷履歴情報のうちの少なくともアクセス情報が直接印刷される梱包材であってもよい。
【0159】
図14は、印刷物1106の一例を示す図である。
図15は、印刷物1106の他の例を示す図である。
図14に示す印刷物1106には、出荷履歴情報のうちの製品名、製造年月日、出荷番号、および、出荷番号をコード化した1次元コード(バーコード)が印刷されている。
図15に示す印刷物1106には、出荷履歴情報のうちの製品名、製造年月日、出荷番号、情報アクセスのためのURL、および、2次元コード(QRコード(登録商標))が印刷されている。2次元コードは、製品名、製造年月日、出荷番号およびURLをコード化したものである。なお、印刷物1106には、少なくともアクセス情報が印字されていれば、他にはどのような情報を印字してもよい。
【0160】
以上のようにして出荷履歴情報が表示された製茶品620は、出荷の後、取扱業者700、小売店800を経由して消費者900に渡り消費される。その間、出荷履歴情報に接した取扱業者700、小売店800または消費者900(単に「ユーザ」と呼称する場合がある。)は、インターネットに接続可能な情報端末を用いて対応する製茶品620に関連する情報を閲覧することが可能である。
【0161】
ユーザは、情報端末を用いて、アクセス情報である1次元コードまたは2次元コードを、バーコードリーダーまたはコード読取機能を有するカメラアプリ(画像取得ソフトウェア)等で読取り、読み取ったコードを参照して、インターネット上に公開されたホームページを閲覧することができる。当該ホームページには、対応する製茶品620に関連する情報が表示されている。
【0162】
具体的には、ユーザがアクセス情報を使って対応する製茶品620に関連する情報を閲覧しようとする際には、ユーザからのアクセス情報に基づいた関連する情報への閲覧の要求は、受信部102が受信する。受信した当該要求に対して応答部1108は、アクセス情報に基づいた製茶品620に関する応答情報を生成し、インターネット上に公開する。応答部1108によって生成された応答情報は、送信部104を介してインターネット上に公開される。
【0163】
応答情報が公開されるURLは、アクセス情報に含まれたURLである。応答情報には、全過程、すなわち茶圃場管理過程、茶木育成過程、生葉摘採過程、生葉輸送過程、製茶過程および茶製品の流通販売過程、で受信した情報から選択した1以上の情報を含み、製茶過程において受信した情報には、仕上・ブレンドの情報および袋詰機からの情報から選択された1以上の情報を含む。すなわち、応答部1108は、仕上ブレンド機548、袋詰機1202から取得した情報を応答情報に含ませる。
【0164】
また、応答部1108は、全ての過程で取得された情報を任意に選択して応答情報を生成することができる。なお、アクセス情報に、応答情報が公開されるURLが含まれておらず、出荷番号など対応する製茶品620を識別できる番号のみが含まれている場合には、対応する製茶品620の応答情報を表示するホームページが自動的、又は画面に表示されたボタンを押すことなどによる閲覧者の了解を得て表示されるようにしてもよい。
【0165】
図16は、応答情報の表示例を示す図である。
図16には、生成された応答情報を表示したユーザ端末の表示部分が示されている。
図16に示される通り、応答情報には、製品名、製造者、出荷履歴情報、合組情報、加工情報などの製品情報が含まれており、これら情報をユーザ端末の表示部に表示することができる。なお、応答情報には、製品情報のうち一部情報(出荷履歴情報、合組情報、加工情報)については出荷番号などの主要情報を表示し、詳細な情報は、各情報の詳細表示ボタン(出荷詳細1402、合組詳細1404、加工詳細1406)を選択操作(クリックまたはタッチ等)することで、表示することができる。
【0166】
図17は、製品情報の表示例を示す図である。
図17には、
図16の合組詳細1404が選択操作され表示が合組詳細の情報を示している状態が示されており、製品情報の一部である合組情報の詳細表示として、合組された荒茶の情報が表示されている。各荒茶の詳細は、詳細ボタン(詳細1412、詳細1414)を選択することで、より詳細な情報にアクセスできる。
【0167】
図18は、製品詳細情報の表示例を示す図であり、
図17の荒茶の詳細表示を要求する詳細1412が選択操作された場合を示す。
図18に示される通り、荒茶の詳細情報として、品名の他、生葉情報、施肥情報、防除情報などが表示される。生葉情報として、生産者、摘採日などが表示される。施肥情報として、施肥回数、施肥時期、肥料名などが表示される。防除情報として、防除回数、防除時期、薬液名などが表示される。
【0168】
なお、肥料について、肥料情報1422を選択操作することで、肥料についてのより詳細な情報を表示することができ、薬液について、薬液情報1424を選択操作することで、薬液についてのより詳細な情報を表示することができる。生産者について、生産者プロフィール1426を選択操作することで、生産者についてのより詳細な情報を表示することもできる。
【0169】
次に、市場ニーズ情報の収集方法について説明をする。
図19は、アンケートの表示例を示す図である。
図16に示されている通り、アクセス情報に基づいてユーザに対して表示された応答情報を表示する画面には、アンケートボタン1408が表示されている。この状態でアンケートボタン1408が押されると、
図19に示されるアンケート画面がスマートフォンなどの情報端末に表示される。
【0170】
このアンケート画面は、対応する製茶品620についてのアンケートを表示している。製茶品620について、香り、水色、味などに関するユーザの嗜好を情報として直接得る機会はあまりない。しかし、
図19に示すように、スマートフォン上などにおいてアンケートを実施することで、ユーザの嗜好を情報として直接得る機会が増える。
【0171】
アンケート画面では、ユーザが各アンケート項目についての回答として、回答に合致する内容に対応する選択ボタン1432を選択し、送信1434のボタンを押すことで、アンケート項目に対する回答を情報システム1100に送信することができる。
【0172】
ユーザにこのような操作を行ってもらうことで市場ニーズ情報の取得する機会を増やすことができる。アンケートの回答情報は、情報システム1100において履歴管理することが可能であり、これらのアンケートから読み取れる情報をユーザのニーズとして把握することが可能である。
【0173】
本実施の形態4では、前述したとおり、農産物を茶、農産加工品600を製茶品620としており、以下にさらに具体例をあげて説明する。なお、農産加工品600である製茶品620としては、煎茶と抹茶を加工、販売しているものとする。
【0174】
まず、農作物としての茶は茶圃場220にて育成され、収穫され、輸送車両320を介して輸送され、生葉受入420で受け入れられ、当該農産物である茶を製茶ライン520にて加工して製茶品620と為す。加工が完了した製茶品620は出荷管理部130を介して取扱業者700、小売店800、消費者900へと流通販売される。
【0175】
作物収穫過程で取得される茶については、肥料や農薬を施した量等で構成される生産情報、及び製茶ライン520で取得される加工機器の設定値等で構成される加工情報が紐付けされる。これらの情報は、加工を終了して出荷過程から販売過程で取得される出荷履歴情報(表7参照)と共に、受信部102より取得される。
【表7】
【0176】
販売後は、応答部1108又は受信部102から取扱業者700又は小売店800又は消費者900からの市場ニーズ情報を得ることができる。
【0177】
図23は、煎茶及び抹茶の市場ニーズ情報の一例を示すグラフである。
図23(b)には、「今後購入したい製品」などの将来の情報が示されている。このような
図23(b)に示された情報は、製品に対して種類の異なる別の製品との対比を要求される情報である第一ニーズ情報に分類される。
【0178】
このような市場ニーズ情報が得られると、制御部114によって、当該第一ニーズ情報に適合するような煎茶と抹茶との比率に基づいて推定計画が生成され、その推定計画を基に計画設定値生成部106により次回の生産計画が出力される。このように市場ニーズ情報(第一ニーズ情報)で得られた実比率を基に生産計画を変更して出力することで、市場のニーズに精度よく対応ができ、生産される製品について、在庫の偏りがなく販売することができる。
【0179】
また、
図23(b)には、煎茶、及び抹茶それぞれの生産が必要であることがわかり、このような情報を得ることで、「煎茶と抹茶の両方を製造可能な製造ライン」などの設備についての事前準備も可能となる。
【0180】
市場ニーズ情報が製品に対して種類の異なる別の製品との対比を要求される第一ニーズ情報としては、茶品種の評価情報であってもよい。例えば、品種として有名な「やぶきた」と「少数ブランドの品種」との市場評価を基に、「やぶきた」と「少数ブランドの品種」との次回の生産計画を出力することができる。
【0181】
このような生産計画は、現在自らが栽培していない製品について今後新植、改植する際の情報として有効である。従って市場のニーズに基づいた次回の生産計画は、新たな製品の作成に有効に利用することが可能となる。
【0182】
市場ニーズ情報が製品に対して種類の異なる別の製品との対比を要求される第一ニーズ情報としては、ブレンドする茶葉の品種、産地、及び蒸しの程度等の割合に関する情報であってもよい。
図8に示す仕上ブレンド機548を経て仕上げが行われる場合には、市場ニーズ情報に適合するようにブレンドする茶葉の品種、産地、及び蒸しの程度等の割合について推定計画を出力することができる。それにより、仕上がり製品の幅を拡大することが可能となる。従って、推定計画が次年度の作業計画を立案するための有用な情報となる。
【0183】
以上のように本発明においては、製茶品が消費者の手に渡るまでの過程に市場ニーズ情報(第一ニーズ情報)を取入れ、市場ニーズ情報に適合した計画、設定値を推定し、次回の生産計画又は設定値として出力されるため、次回の計画又は設定値を事前に把握することが可能となる。すなわち、茶などの農産加工物に対して1サイクルを経過するごとに市場のニーズを反映することができる。
【0184】
図24は、蒸し茶の市場ニーズ情報の一例を示すグラフである。
図24(a)には、深蒸し茶、中蒸し茶、浅蒸し茶に関する消費者の嗜好に関する市場ニーズ情報の例が示されている。
図24(b)には、中蒸し茶の評価についての市場ニーズ情報が示されている。
図24(b)に示されている市場ニーズ情報は、製品に対する消費者自らの嗜好や流行を要求される第二ニーズ情報に分類される。
【0185】
一般に茶製品は、蒸し時間によって深蒸し茶、中蒸し茶、浅蒸し茶と分類される。蒸し時間が30~60秒程の茶製品を「中蒸し茶」と称し、香りや色、味も深蒸し茶、浅蒸し茶の中間に位置するとされる。この中間に位置する品質について消費者の嗜好が販売している現状で良いのか、蒸し時間の調整が必要であるのか(深蒸し茶側、浅蒸し茶側に寄せるべきか)を考える際にはこのような市場ニーズ情報(第二ニーズ情報)が有用である。
【0186】
図24のような市場ニーズ情報が得られると、制御部114は、市場ニーズ情報に製茶品620の特徴や生産数を適合させるべく、各工程の設定値を推測する。
図24に示される市場ニーズ情報では、蒸し時間を増加させる方向(深蒸し茶側)で蒸し時間を推測する。次に、制御部114により推測された蒸し時間に基づいて、計画設定値生成部106により蒸し時間の設定値が出力される。
【0187】
図24(b)のような消費者の嗜好に関する第二ニーズ情報の場合には、市場ニーズ情報から得られたデータに偏りが無いと判断される場合のみ、計画設定値生成部106により設定値が出力される。すなわち、嗜好に関する情報の場合「良い」と考える多数派の人数割合が6~7割以上、いわゆる「良い」と回答する者に偏っている場合が最も市場のニーズに適合しているものと考えられる。
【0188】
このため、得られたデータにおいて、「良い」と考える人数の割合が6~7割以上いない場合には、偏りがないと考える。
図24(b)では、「良い」という回答結果には、6~7割以上の回答結果が偏っていないと判断できる。この場合には、計画設定値生成部106により推定設定値が出力される構成としている。逆に、得られたデータで6~7割以上の人が「良い」と考えていると判断された場合には、計画設定値生成部106は、推定設定値を出力しないか、現状と変更のない同様な推定設定値を出力する。
【0189】
すなわち、第二ニーズ情報の場合には、製品が多数派の嗜好に合致しているか否かを判断し、その上で推定計画又は推定設定値は、計画設定値生成部106により出力される構成としている。それは、市場ニーズ情報が消費者の嗜好によるものの場合には多数派の人数割合を考慮せずに設定値を変更すると、販売への影響が非常に大きくなるためである。
【0190】
また、市場ニーズ情報(第二ニーズ情報)には、各年の気候に応じた茶の流行りに係る情報が含まれてもよい。例えば、平均気温が例年よりも高い年において、消費者から求められる茶の香り又は色に係る情報が取得され、これらの情報及び次年度の気温予測又は実際の気温情報に基づいて、推定部110は次年度の計画又は設定値の推定を行ってもよい。このような場合に、気温予測又は実際の気温情報は、インターネット上で取得される各種の気象情報、または圃場220で取得される気温情報であってもよい。
【0191】
以上のように本発明においては、製品に対する消費者自らの嗜好や流行を要求される市場ニーズ情報(第二ニーズ情報)を取入れ、市場ニーズ情報に適合した計画、設定値を推定し、推定値が、所定の条件を満たした場合に次回の生産計画又は設定値として出力されるため、販売への影響を考慮しながら次回の計画又は設定値を事前に把握することが可能となる。
【0192】
次に、製品の品質に対して要求される情報である第三ニーズ情報について説明をする。第三ニーズ情報では、第二ニーズ情報とは異なり、消費者の嗜好に関係するものではなく、生産者が予定していた品質を製品が満たしているか否かを判断することができる。
【0193】
例えば、第三ニーズ情報として「蒸しの匂い改善」との要望が入力されれば、次回の生産に向けて推定部110は、蒸熱機532の設定を蒸しの匂いを改善するような方向で設定値を推定する。具体的には「蒸しの匂い改善」する要因としては複数の要因が考えられるが、「蒸しの匂い改善」する可能性が高い要因から順に第三ニーズ情報を基づいて目標値が選定される。
【0194】
例えば、「蒸しの匂い改善」をするためには、蒸熱機532の傾斜角度を上げる、胴回転数を何%上げる、蒸気量を何%上げるといった順に詳細な値の推定が実施される。更に推定部110は、製茶ライン520だけでは改善しないと判断した場合には、別の理由として考えられる施肥機260の施す肥料の量を何%増やせばよいかを第三ニーズ情報を基に推定する。
【0195】
次に、制御部114により推定された設定値に基づいて、計画設定値生成部106により蒸熱機532の設定値が変更され、出力される。品質に対する第三ニーズ情報に対応する場合には、蒸熱機532の設定値の変更も、推定したすべての設定値について変更しなくてもよい。
【0196】
即ち、複数ある要因の中から第三ニーズ情報に対応するために効果的に改善できる可能性が高い要因から変更すれば十分である。すなわち、市場のニーズが製品の品質改善の場合には、改善の可能性が高い順に項目を推定し、計画設定値生成部106によりその項目における機器の設定値を変更することで、効率よく改善が施される。さらにこれにより、他の作業や、他の茶葉の性質に与える影響が少ないという長所がある。
【0197】
同様に、市場ニーズ情報にて「水色の改善」との要望が入力されれば、次回の生産に向けて推定部110は、蒸熱機532の設定値に対し蒸し時間の適正値(不足又は過多でなかったか)を推定する。次に推定部110は、製茶ライン520だけでは改善しないと判断した場合には、施肥機260の施す肥料の量を何%増やせばよいかを過去の施肥作業の情報を基に推定する。
【0198】
更には、推定部は、病害虫の被害葉の可能性を検討するため、防除機280の農薬散布が適切であったか否かを過去の農薬散布の情報を基に推測する。さらにこれらの情報に基づいて次年度の散布量、散布時期等を推定する。この場合についても市場ニーズ情報が製品の品質の改善に関するものであるため、改善の可能性が高い順に設定値の変更が実施される。
【0199】
上記の通り、市場ニーズ情報が第二ニーズ情報又は第三ニーズ情報のような場合の推定計画又は推定設定値は、条件を満たす場合に限り計画設定値生成部106が出力する構成となっている。この場合「条件を満たすか否か」の判断は推定部110で行ってもよいし、計画設定値生成部106で行ってもよい。更には、
図12に示されるように情報の判断機能を有するニーズ解析部1110を設けてもよい。
【0200】
尚、「蒸しの匂い改善」のようなその改善に複数の要因が考えられる品質に対する第三ニーズ情報の場合には、製茶ラインにおける加工パラメータ及び施肥量を入力データとし、蒸しの匂いの市場評価を出力データとする学習済み深層学習ニューラルネットワークを構築すれば、当該学習済み深層学習ニューラルネットワークを利用して、加工前に、仕上り製品の品質を予測することができる。
【0201】
図20は、ニューラルネットワークの一例を示す概念図である。一般に、適切に学習させたニューラルネットワークを用いれば、入力に対する出力の正解データがない場合であっても、入力に対する出力を適切に推論することができる。一般的なニューラルネットワークでは、入力層1502に入力データが入力され、中間層1504を介して出力層1506に推論結果が出力される。
【0202】
中間層1504は、たとえば、入力を線形変換する線形関数とReLu(Rectified Linear Unit)などの活性化関数を複数組み合わせて構成され、出力層1506には、出力を確率分布に変換するSoftmax関数を用いることができる。
【0203】
上記した品質評価と関心事項の解析の場合、ユーザの端末操作から得られた情報をベクトルまたはテンソル形式にデータ化して入力データとし、出力として、アンケート結果に準じた品質評価の各項目が確率分布として出力されるようモデルを構成する。
【0204】
ニューラルネットワーク学習段階では、アンケートに応えたユーザの端末操作から得られた関心事項とアンケートの回答情報から得られた品質評価のセットを教師データとして、モデルを学習させ、推論段階では、学習済みニューラルネットワークに端末操作データを入力し、品質評価を推論する。このような学習済みニューラルネットワークを利用すれば、アンケートに応えないユーザであっても当該ユーザの端末操作から品質評価を推論することが可能になる。
【0205】
以上のように本発明においては、製品の品質に対して要求される市場ニーズ情報(第三ニーズ情報)を取入れ、市場ニーズ情報に適合させるために改善の可能性が高い順に項目を抽出し、抽出された項目に対して計画、設定値を推定し、改善の可能性が高い項目順に生産計画又は設定値として出力されるため、改善項目が複数考えられる製茶品620の場合などの場合には、他の項目に与える影響を少なくしながら市場ニーズ情報に適合した精度の高い改善を行うことが出来、市場ニーズ情報に対し適切な対応をすることができる。
【0206】
製品の品質に対して要求される第三ニーズ情報としては、その情報を用いて摘採適期が判定されてもよい。通常、摘採時期を判定する指標としては、「硬化度」「出開度」「新芽開葉数」などが使用される。「硬化度」とは、茶葉の硬化の程度を表すものであり、硬化度=基部からの折れ長/全芽長×100にて表される。一番茶であれば40~60%が適切な値とされる。
【0207】
「出開度」とは、出開いた新芽の占める割合であり、一定面積内における出開き芽の出現率を%で表したものである。(出開度=出開芽数/全芽数×100で表される。)「新芽開葉数」とは、一定面積又は抽出個数についての新芽の数にて摘採時期を判断する方法である。
【0208】
図21は、茶の品種別の茶葉硬化度の推移を表した図である。
図21に示される通り、一番茶の時期の茶葉は日数の経過と共に硬化度が急速に高まり「硬葉化」(茶葉内の繊維量が増大する)することがわかる。「硬葉化」した茶葉は品質が低下し、価格も低くなることが知られているが、「摘採日」に対して摘採判定指標である「硬化度」と生葉の成分分析データを紐付けたデータを収集及び活用することで、摘採摘期の判定指標と市場ニーズ情報とを関連付けることが可能となる。
【0209】
そのような構成とすれば、前年の市場ニーズ情報に基づいて次年度の茶葉成分を微調整することができる。即ち、成分分析データに紐付けられた過去の茶葉の繊維量とその情報に対応する摘採日の情報とから、次年度における摘採日を調整することで次年度の茶葉の繊維量を微調整することが可能となる。即ち、成分分析データを活用して市場ニーズ情報に応じた茶葉成分とするための摘採時期を高い精度で判定することが可能となる。
【0210】
摘採時期を判定する指標として茶葉の「硬化度」を例に挙げたが、「出開度」や「新芽開葉数」を指標に用いてもよい。このようにしても、摘採時期と成分分析データを紐付けることで、同様の効果が得られる。また、「硬化度」は葉ではなく、茎についても
図17と同様の相関が得られることから「茎の硬化度」を用いてもよい。
【0211】
実施の形態4においては、茶に特化した構成を説明したが、茶は他の農産物と比較して、消費者の嗜好に影響されやすく、そのニーズが多様化しやすいことが知られている。このため、茶に対しては、他の農作物と比較して、市場のニーズに合わせた生産が特に重要となる。すなわち、茶に対しては、他の農作物と比較して、トレーサビリティに係る情報の使用が重要となりやすく、本発明の利用をする意義が高く、その効果の発揮が非常に期待されることになる。
【0212】
また、上述した各実施の形態に係る情報システム100、120、1100は、作物が育成または栽培され、収穫され、加工され、流通され、農産加工品として消費者の手に渡るまでの過程で取得される一次情報を活用し、作物が育成または栽培される圃場の整備維持管理、作物の育成または栽培、収穫、収穫物の搬送、保管、加工、加工品の流通等、各過程における実施計画、実施における各種条件の設定を最適化し、所定の品質を保持するとともに、各過程で使用される設備の稼働率向上、または各過程で使用される資材の削減、を可能とする。
【0213】
また、上述した各実施の形態に係る情報システム100、120、1100は、一次情報に含まれる消費者のニーズに関連する市場ニーズ情報を参照して生成した二次情報を活用し、市場ニーズ情報に対応した、各過程における実施計画、実施における各種条件の設定を可能とする。
【0214】
また、上述した各実施の形態に係る情報システム100、120、1100は、作物が育成または栽培され、収穫され、加工され、流通され、農産加工品として消費者の手に渡るまでの全過程を1サイクルとするサイクル過程で取得された知見を、次のサイクルにおいて活用することが可能となる。
【0215】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0216】
たとえば、上記した実施の形態では、情報システム100、120について説明したが、本発明はプログラムとして把握することも可能である。すなわち、上記した実施の形態の発明は、作物を育成し収穫し加工して得られる農産加工品を管理するコンピュータで稼働するプログラムであって、作物の圃場を管理する圃場管理過程、作物を育成する作物育成過程、作物を収穫する作物収穫過程、収穫で得られる農産物を輸送する農産物輸送過程、農産物を加工する農産物加工過程、および、加工により得られる農産加工品を流通販売する流通販売過程、を含む農産加工品の生産販売に係る全過程のうち、何れかの過程で取得される情報を受信する受信機能と、受信部が受信した受信情報に基づき、全過程の何れかの過程における作業の計画、または、全過程の何れかの過程で使用される機器の設定値、を生成する計画設定値生成機能と、計画設定値生成部が生成した計画または設定値を、作業の実施者端末または機器に送信する送信機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラム、として把握することも可能である。
【0217】
また、上記した各実施の形態では、情報システム100、120、1100について単一のサーバ装置を想定して説明していたが、複数のサーバ装置から構成されてもよい。すなわち、計画設定値生成部106、記憶部108、推定部110、障害検知部112、及び計画設定値修正部113を同一のサーバ装置に設けてもよいが、各部を必要に応じて異なるサーバ装置に設けるような構成としてもよい。
【0218】
また、上述した各実施の形態においては、茶葉、ブルーベリーに限らずに、様々な作物、及び農作物加工品に適用することができる。
【0219】
以下本開示の諸態様を付記として記載する。
(付記1)
作物を育成及び加工して農産加工品を生産するまでの生産情報、及び前記農産加工品を流通して販売するまでの流通販売情報を取得し、
前記生産情報及び前記流通販売情報に基づいて、前記作物の育成から前記農産加工品の販売における作業の計画、又は前記作業において使用される機器の設定値を生成し、
前記流通販売情報に含まれる、前記農産加工品の市場ニーズ情報に適合する推定計画または推定設定値を生成し、
前記市場ニーズ情報は、前記農産加工品に対する市場の評価に基づいた情報である情報システム。
(付記2)
前記計画又は前記設定値は、推定計画または推定設定値に基づいて出力される
付記1に記載の情報システム。
(付記3)
前記作物が茶であり、前記農産加工品が製茶品である、
付記1又は2に記載の情報システム。
(付記4)
前記市場ニーズ情報を入力し、前記推定計画または前記推定設定値を出力する、学習済みニューラルネットワークを利用する
付記1~3のいずれか一項に記載の情報システム。
(付記5)
付記1~4のいずれか一項に記載の情報システムを用いて、
作物を育成及び加工して農産加工品を生産するまでの生産情報、及び前記農産加工品を流通して販売するまでの流通販売情報を取得する工程と、
前記生産情報及び前記流通販売情報に基づいて、前記作物の育成から前記農産加工品の販売における作業の計画、又は前記作業において使用される機器の設定値を生成する工程と、
前記流通販売情報に含まれる、前記農産加工品の市場ニーズ情報に適合する推定計画または推定設定値を生成する工程と、
前記計画または前記設定値を出力する工程と、を実施し、
前記市場ニーズ情報は、前記農産加工品に対する市場の評価に基づいた情報である、
情報処理方法。
(付記6)
前記計画又は前記設定値は、前記推定計画または前記推定設定値に基づいて出力される
付記5に記載の情報処理方法。
(付記7)
前記作物が茶であり、前記農産加工品が製茶品である、
付記6又は7に記載の情報処理方法。
(付記8)
前記市場ニーズ情報を入力し、前記推定計画または前記推定設定値を出力する、学習済みニューラルネットワークを利用する
付記5~7のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【符号の説明】
【0220】
10…全体システム、20…全体システム、100…情報システム、102…受信部、104…送信部、106…計画設定値生成部、108…記憶部、110…推定部、112…障害検知部、113…計画設定値修正部、114…制御部、120…情報システム、130…出荷管理部、140…袋詰機、200…圃場、202…圃場作業者、204…作業者端末、206…フィールドサーバ、208…採取機、210…管理機、220…圃場(茶圃場)、222…茶圃場作業者、224…作業者端末、230…フィールドサーバ、232…気象情報取得部、233…航空撮像部、234…記憶部、235…通信部、236…制御部、240…摘採機、242…摘採装置、243…走行部、244…GPSユニット、245…センシング部、246…生葉分析計、247…土壌情報取得部、248…荷重変換部、249…判定部、250…記憶部、251…通信部、252…制御部、260…施肥機、262…肥料散布装置、263…走行部、264…GPSユニット、265…センシング部、267…土壌情報取得部、269…判定部、270…記憶部、271…通信部、272…制御部、280…防除機、282…薬液散布装置、283…走行部、284…GPSユニット、285…センシング部、287…土壌情報取得部、289…判定部、290…記憶部、291…通信部、292…制御部、300…輸送車両、302…輸送作業者、304…作業者端末、320…輸送車両、322…輸送作業者、324…作業者端末、400…農産物受入設備、402…受入作業者、404…作業者端末、420…生葉受入、422…受入作業者、424…作業者端末、500…農産物加工設備、502…作業者端末、504…加工作業者、520…製茶ライン、522…作業者端末、524…ライン作業者、530…受入コンテナ(生葉自動コンテナ)、532…蒸熱機、534…蒸葉処理機、536…葉打機、538…粗揉機、540…揉捻機、542…中揉機、544…精揉機、546…乾燥機、548…仕上ブレンド機、600…農産加工品、620…製茶品、700…取扱業者、800…小売店、900…消費者、1000…全体システム、1100…情報システム、1102…出荷履歴情報生成部、1104…印刷部、1106…印刷物、1108…応答部、1110…ニーズ解析部、1200…製茶ライン、1202…袋詰機、1300…出荷管理、1402…出荷詳細、1404…合組詳細、1406…加工詳細、1408…アンケートボタン、1412…詳細、1414…詳細、1422…肥料情報、1424…薬液情報、1426…生産者プロフィール、1432…選択ボタン、1434…送信、1502…入力層、1504…中間層、1506…出力層。