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特開2024-68162二酸化炭素回収のための方法及び大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068162
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収のための方法及び大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20240510BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F01N3/08 A
F01N3/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023187423
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】PA202270534
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン ヘンリック
(72)【発明者】
【氏名】キエントルプ ニールス
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー ステファン
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AA10
3G091AA15
3G091AA18
3G091AB08
3G091AB15
3G091BA13
3G091CA07
3G091CA26
3G091EA01
3G091EA03
3G091EA12
3G091HB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二酸化炭素の排出を削減できる大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関及び運転方法を提供する。
【解決手段】好適な実施形態は、燃焼室に炭素系燃料を供給することと、燃焼室内で炭素系燃料を燃焼させ、二酸化炭素を含む排気流を生成することと、排気流の第1の部分を再循環させ、第2の部分を排気することと、熱交換媒体流を用いて再循環排気ガス流の第1の部分を冷やし、前記熱交換媒体流を加熱することと、二酸化炭素リーンな溶媒流を吸収器に供給し、二酸化炭素リッチな溶媒流を吸収器(42)から脱離器(64)及び再沸器(62)のアセンブリに排出することにより、前記排気流の第2の部分から二酸化炭素を溶媒に化学的に吸収することと、加熱された熱交換媒体流の少なくとも一部を前記アセンブリに供給することにより、前記アセンブリ内の炭素リッチな溶媒を加熱により再生することを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスヘッド式大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関であって、
シリンダライナと、シリンダライナ内で往復するように構成されるピストンと、シリンダカバーとによって画定される少なくとも1つの燃焼室と;
前記少なくとも1つの燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配置される掃気ポートと;
前記少なくとも1つの燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
を備え、前記少なくとも1つの燃焼室は、炭素系燃料を燃焼して二酸化炭素を含む排気ガスを生成するように構成され、前記機関は更に、
前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口;
を備え、前記少なくとも1つの燃焼室は、前記掃気ポートを通じて掃気受けに接続されると共に、前記排気出口を通じて排気受けに接続され、
前記機関は更に、
排気流によって駆動されるタービンであってターボ過給システムのタービンを有する排気システムと;
前記ターボ過給システムのコンプレッサであって加圧された掃気空気を前記掃気受けに供給するように構成されるコンプレッサを有する空気取り入れシステムと;
前記掃気受けへの排気ガスの流れを補助するためのブロワを有し、前記少なくとも1つの燃焼室から排出される排気ガスの一部を前記掃気受けに再循環させるように構成される排気再循環系と;
を備えると共に、
二酸化炭素を溶媒に吸収するための、好ましくは吸収塔である吸収器と;
前記溶媒から二酸化炭素を脱離するための脱離器及び再沸器のアセンブリと;
を備え、
前記吸収器は、前記脱離器から二酸化炭素リーン溶媒を受け取る溶媒入口と、前記脱離器に二酸化炭素リッチ溶媒を供給する溶媒出口を有し、
前記吸収器は、該吸収器を通過する排気流について、前記溶媒への化学的吸収によって前記排気流から二酸化炭素を分離するように構成され、
前記アセンブリは、前記吸収器から二酸化炭素リッチ溶媒を受け入れる入口と、前記吸収器に二酸化炭素リーン溶媒を供給する出口を有し、
前記アセンブリは、溶媒から二酸化炭素を放出するために溶媒を加熱するように構成され、
前記機関は更に、前記排気再循環系の再循環排気ガスと溶媒との間で熱を交換させるように構成される熱交換系を備える、
機関。
【請求項2】
前記排気再循環系内の排気ガスと熱交換媒体との間で熱交換し、それによって前記排気再循環系内の排気ガスを冷却し、前記熱交換媒体を加熱するように構成される排気再循環熱交換器を、前記排気再循環系に有すると共に、
前記溶媒と前記熱交換媒体との間で熱を交換して、前記溶媒を加熱し前記熱交換媒体を冷却するように構成される熱交換器を有する、
請求項1に記載の機関。
【請求項3】
前記排気再循環系は、スクラバー、好ましくは湿式スクラバーを有し、前記スクラバーは、前記排気再循環系において、前記排気再循環熱交換器の下流に配置される、請求項1又は2に記載の機関。
【請求項4】
掃気ガス中の再循環排気ガスの質量比率を少なくとも40%、好ましくは40%から55%に調整するように構成された制御部を備える、請求項1に記載の機関。
【請求項5】
前記制御部は、前記掃気ガス中の再循環排気ガスの割合を調整するために前記ブロワの回転数を制御するように構成される、請求項4に記載の機関。
【請求項6】
複数の燃焼室を有する大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関を運転する方法であって、
前記燃焼室に炭素系燃料を供給することと;
燃焼室内で炭素系燃料を燃焼させ、二酸化炭素を含む排気流を生成することと;
前記排気流の第1の部分を再循環させ、前記排気流の第2の部分を排気することと;
再循環排気ガスを含む加圧された掃気の流れを前記燃焼室に供給することと;
熱交換媒体流を用いて排気系中の再循環排気ガス流を冷やし、前記熱交換媒体流を加熱することと;
二酸化炭素リーンな溶媒の流れを吸収器に供給し、二酸化炭素リッチな溶媒の流れを吸収器から脱離器及び再沸器のアセンブリに排出することにより、前記排気流の前記第2の部分から二酸化炭素を溶媒に化学的に吸収することと;
溶媒を加熱するために、加熱された前記熱交換媒体流の少なくとも一部を前記アセンブリに供給することにより、前記アセンブリ内の炭素リッチな溶媒を加熱により再生することと;
を含む、方法。
【請求項7】
排気ガスの流れの少なくとも40質量%を再循環させることを含み、好ましくは排気ガスの流れの少なくとも40から55質量%を再循環させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
加圧掃気ガス中の再循環排気ガスの割合を調整するために排気再循環系のブロワの速度を制御することを含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記脱離器内で発生した二酸化炭素と水蒸気又は湯気を含むガスの流れを、二酸化炭素と水蒸気又は湯気を分離する分離器に供給することを含み、
前記分離器は、主に二酸化炭素を含むガスの流れと、主に水を含む液体の流れを得るためのノックアウトドラムである、
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
主に二酸化炭素を含むガスの流れを液化ユニットに供給することと、前記主に二酸化炭素を含むガスの流れを液化して液化二酸化炭素の流れを得ることを含み、
好ましくは液化二酸化炭素流を液化二酸化炭素貯蔵装置に導くことを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記排気再循環系の排気再循環熱交換器を使用して、前記排気再循環系内の再循環排気ガスから熱を取り出し、それによって前記排気再循環系内の排気ガスと熱交換媒体との間で熱交換させ、前記排気再循環系内の排気ガスを冷却し、前記熱交換媒体を加熱することと;
前記溶媒と加熱された前記熱交換媒体との間で熱交換させ、前記溶媒を加熱し、前記熱交換媒体を冷却することと;
を含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示事項は、大型2ストローク内燃機関、特に、炭素系燃料(気体又は液体燃料)で運転され、二酸化炭素排出量を削減するように構成されたクロスヘッド式大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関に関し、また、このようなタイプのエンジンを運転する方法に関する。
【背景】
【0002】
クロスヘッド式大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関は、例えば大型船舶の推進システムや、発電プラントの原動機として用いられる。この大型2ストロークディーゼル機関のサイズは巨大である。サイズが巨大であることだけが理由ではないが、この大型2ストロークディーゼル機関は、他の内燃機関とは異なる構造を有する。例えば、排気弁の重量は400kgに達することもあり、ピストンの直径も100cmに達することがある。運転中における燃焼室の最大圧力は、典型的には数百barにもなる。このような高い圧力レベルとピストンサイズから生まれる力は莫大なものである。
【0003】
DK202170181B1は、排気系から吸気系へ排ガスのフローを運ぶEGRシステムを備える、大型ターボ過給式多気筒2ストロークユニフロー内燃機関を開示している。このEGRシステムはEGRブロワと電子制御EGRスロットルバルブを有する。EGRブロワを駆動するためにAC駆動モータが使用される。AC駆動モータは所定の一定速度で動作するように構成される。センサは排気受け内の酸素濃度を表す信号を提供し、当該信号は、電子制御EGRスロットルバルブに接続されるコントローラに受け取られる。コントローラは、主要な基準としての当該信号の関数として電子制御EGRスロットルバルブの位置を調整することにより、EGRシステムを通る排気のフローを制御するように構成される。機関は、炭素燃料の燃焼プロセスにより生成されたCO2を環境に放出する。大型2ストロークターボ内燃機関は、液体燃料(例:燃料油、船舶用ディーゼル、重油、エタノール、ジメチルエーテル(DME))又はガス燃料(例えばメタンや天然ガス(LNG)、石油ガス(LPG)、メタノール又はエタン)で運転される。
【0004】
ガス燃料で動作するエンジンは、オットーサイクルに従って動作してもよい。オットーサイクルでは、ガス燃料は、シリンダライナの長手方向中央付近又はシリンダカバーに配される燃料弁から導入される。このタイプのエンジンにおいて、ガス燃料は、ピストンの(下死点から上死点への)上昇ストロークの途中であって、排気弁が閉じるかなり前に、シリンダ内に導入される。エンジンは、燃焼室内においてガス燃料と掃気空気との混合物を圧縮し、圧縮された混合気を上死点(TDC)又はその付近で、(例えば液体燃料噴射のような)点火手段によってタイミングを計って点火する。
【0005】
液体燃料で運転されるエンジンや、高圧噴射のガス燃料で運転されるエンジンは、ピストンがTDCに近い位置、つまり燃焼室内の圧縮圧力が最大又はそれに近いときに、気体又は液体の燃料を噴射する。つまりこれらのエンジンは、ディーゼルサイクル、すなわち圧縮着火で運転される。
【0006】
既知の大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関で使用される液体燃料及びガス燃料は、一般に炭素を含んでいる。すなわちこれらは炭素系燃料であり、その燃焼により二酸化炭素が発生する。発生した二酸化炭素は大気中に排出される。二酸化炭素の排出は、一般に気候変動の原因であると考えられており、最小化又は回避されるべきである。
【0007】
既知の炭素回収技術は、通常、燃焼後CO2回収、燃焼前CO2回収、オキシフューエル燃焼(Oxy-Fuel combustion,酸素燃焼とも呼ばれる)の3つに分類される。燃焼前CO2回収とは、燃料の燃焼前に炭素質成分を分離・回収することである。
【0008】
燃焼前二酸化炭素回収では、まず燃料を酸素や水蒸気と反応させ、さらに水-ガスシフト反応器で処理してH2とCO2の混合ガスを生成する。CO2は、15%から40%のCO2を含む高圧混合ガスから回収される。燃焼前CO2回収技術の利点は、処理に必要なガス量が大幅に減少し、ガス中のCO2濃度が高まることである。これにより、分離プロセスのエネルギー消費と設備投資を削減することができる。
【0009】
オキシフューエル燃焼では、炭素系燃料は、空気ではなく、再循環された排ガスと純粋なO2中で燃焼される。しかし、O2分離のコストが高いため、商業化の可能性は制限される。オキシフューエル燃焼技術は、空気から窒素を分離する空気分離装置から構成される。その後、再循環された排ガスと純酸素の中で、炭素系燃料が燃焼される。排ガスは主に、燃焼による粒子状物質、CO2、燃料からの硫黄酸化物、水からなり、粒子状物質除去装置、硫黄除去装置に送られた後、水が凝縮除去され、圧縮可能なCO2流が残される。主な利点は、CO2をほぼ100%回収できることである。
【0010】
燃焼後CO2回収技術では、従来のエネルギー発電と同様に炭素系燃料を燃焼させ、排ガスからCO2を回収する。この炭素分離技術は、吸収、吸着、膜、低温の4つに大別される。排ガスからCO2を吸収して回収するには、アミン溶媒を使用することができる。ここでCO2は溶媒中に捕捉され、その後アミンの再生プロセスが行われる。欠点は、発電所の規模が極めて大きくなることと、二酸化炭素の回収プロセスに多大なエネルギーが必要であることである。特に、アミン溶媒の再生には膨大なエネルギーが必要である。
【摘要】
【0011】
上述の課題を解決するか又は少なくとも緩和する、エンジン及び方法を提供することが目的の一つである。
【0012】
上述の課題やその他の課題が、独立請求項に記載の特徴により解決される。より具体的な実装形態は、従属請求項や明細書、図面から明らかになるだろう。
【0013】
第1の捉え方によれば、次のような、クロスヘッド式大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関が提供される。この機関は、
シリンダライナと、シリンダライナ内で往復するように構成されるピストンと、シリンダカバーとによって画定される少なくとも1つの燃焼室と;
前記少なくとも1つの燃焼室に掃気ガスを導入するための掃気ポートであって、前記シリンダライナに配置される掃気ポートと;
前記少なくとも1つの燃焼室に炭素系燃料を供給するように構成される燃料システムと;
を備え、前記少なくとも1つの燃焼室は、炭素系燃料を燃焼して二酸化炭素を含む排気ガスを生成するように構成され、前記機関は更に、
前記シリンダカバーに配され、排気弁により制御される排気出口;
を備え、前記少なくとも1つの燃焼室は、前記掃気ポートを通じて掃気受けに接続されると共に、前記排気出口を通じて排気受けに接続され、前記機関は更に、
排気流によって駆動されるタービンであってターボ過給システムのタービンを有する排気システムと;
前記ターボ過給システムのコンプレッサであって加圧された掃気空気を前記掃気受けに供給するように構成されるコンプレッサを有する空気取り入れシステムと;
前記掃気受けへの排気ガスの流れを補助するためのブロワを有し、前記少なくとも1つの燃焼室から排出される排気ガスの一部を前記掃気受けに再循環させるように構成される排気再循環系と;
二酸化炭素を溶媒に吸収するための、好ましくは吸収塔である吸収器と;
前記溶媒から二酸化炭素を脱離するための脱離器及び再沸器のアセンブリと;
を備え、
前記吸収器は、前記脱離器から二酸化炭素リーン溶媒を受け取る溶媒入口と、前記脱離器に二酸化炭素リッチ溶媒を供給する溶媒出口を有し、
前記吸収器は、該吸収器を通過する排気流について、前記溶媒への化学的吸収によって前記排気流から二酸化炭素を分離するように構成され、
前記アセンブリは、前記吸収器から二酸化炭素リッチ溶媒を受け入れる入口と、前記吸収器に二酸化炭素リーン溶媒を供給する出口を有し、
前記アセンブリは、溶媒から二酸化炭素を放出するために溶媒を加熱するように構成され、
前記機関は、前記排気再循環系の再循環排気ガスと溶媒との間で熱を交換させるように構成される熱交換系を更に備える。
【0014】
溶媒の再生に必要なエネルギー量は大きく、大型2ストローク内燃機関が供給する機関軸出力の60%以上に達することもある。機関のエネルギー効率に対するこのようなペナルティは、二酸化炭素捕捉システムを使用する運転を、二酸化炭素捕捉システムを使用しない機関と比較して著しく高コストにする。しかし本願発明者は、排気再循環を利用する大型2ストロークディーゼル機関は、再循環される排気ガスがシリンダ内に再導入される前に熱交換媒体を用いて冷却されるため、余剰エネルギー流を生成することに気付いた。本願発明者はまた、この熱交換媒体(例えば水又は蒸気)が、脱離器及び再沸器アセンブリ内の二酸化炭素なリッチ溶媒を加熱して再生するために直接使用するのに十分な温度まで、加熱されうることに気付いた。
【0015】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記熱交換系は、前記排気再循環系内の排気ガスと熱交換媒体との間で熱交換し、それによって前記排気再循環系内の排気ガスを冷却し、前記熱交換媒体を加熱するように構成される排気再循環熱交換器を、前記排気再循環系に有すると共に、前記溶媒と前記熱交換媒体との間で熱を交換して、前記溶媒を加熱し前記熱交換媒体を冷却するように構成される熱交換器を有する。
【0016】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記排気再循環系は、スクラバー、好ましくは湿式スクラバーを有し、前記スクラバーは、前記排気再循環系において、前記排気再循環熱交換器の下流に配置される。
【0017】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記排気再循環系は、再循環排気ガスと、前記アセンブリ内の溶媒との間で熱を交換させるように構成される。
【0018】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関は、掃気ガス中の再循環排気ガスの質量比率を少なくとも40%、好ましくは40%から55%に調整するように構成された制御部を備える。
【0019】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記制御部は、前記掃気ガス中の再循環排気ガスの割合を調整するために前記ブロワの回転数を制御するように構成される。
【0020】
第2の捉え方によれば、次のような、複数の燃焼室を有する大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関を運転する方法が提供される。この方法は、
前記燃焼室に炭素系燃料を供給することと;
燃焼室内で炭素系燃料を燃焼させ、二酸化炭素を含む排気流を生成することと;
前記排気流の第1の部分を再循環させ、前記排気流の第2の部分を排気することと;
再循環排気ガスを含む加圧された掃気の流れを前記燃焼室に供給することと;
熱交換媒体流を用いて排気系中の再循環排気ガス流を冷やし、前記熱交換媒体流を加熱することと;
二酸化炭素リーンな溶媒の流れを吸収器に供給し、二酸化炭素リッチな溶媒の流れを吸収器から脱離器及び再沸器のアセンブリに排出することにより、前記排気流の前記第2の部分から二酸化炭素を溶媒に化学的に吸収することと;
溶媒を加熱するために、加熱された前記熱交換媒体流の少なくとも一部を前記アセンブリに供給することにより、前記アセンブリ内の炭素リッチな溶媒を加熱により再生することと;
を含む。
【0021】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、排気ガスの流れの少なくとも40質量%を再循環させることを含む。好ましくは、排気ガスの流れの少なくとも40から55質量%を再循環させる。
【0022】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、排気再循環系のブロワの速度を制御し、加圧された掃気ガス中の再循環排気ガスの割合を調整することを含む。
【0023】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、前記脱離器内で発生した二酸化炭素と水蒸気又は湯気を含むガスの流れを、二酸化炭素と水蒸気又は湯気を分離する分離器に供給することを含み、
【0024】
前記分離器は、主に二酸化炭素を含むガスの流れと、主に水を含む液体の流れを得るためのノックアウトドラムである。
【0025】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、前記主に二酸化炭素を含むガスの流れを液化ユニットに供給することと、前記主に二酸化炭素を含むガスの流れを液化して液化二酸化炭素の流れを得ることを含む。
【0026】
前記方法は、液化二酸化炭素流を液化二酸化炭素貯蔵装置に導くことを含むことが好ましい。
【0027】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、前記排気再循環系の排気再循環熱交換器を使用して、前記排気再循環系内の再循環排気ガスから熱を取り出し、それによって前記排気再循環系内の排気ガスと熱交換媒体との間で熱交換させ、前記排気再循環系内の排気ガスを冷却し、前記熱交換媒体を加熱することと;
【0028】
前記溶媒と加熱された前記熱交換媒体との間で熱交換せ、前記溶媒を加熱し、前記熱交換媒体を冷却することと;
を含む。これらの側面及び他の側面は、以下に説明される実施例により更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下、図面に示される例示的な実施形態を参照しつつ、様々な捉え方や実施形態、実装例を詳細に説明する。
図1】ある例示的実施形態に従う大型2ストロークディーゼル機関の概観図である。
図2図1の大型2ストローク機関を別の角度から見た概観図である。
図3】ある実施形態に従う、図1及び図2の大型2ストローク機関の略図表現である。
図4図4aは、図1から図3の実施形態で使用されるヒートポンプの第1の実施形態の略図表現であり、図4bは、図1から図3の実施形態で使用されるヒートポンプの第2の実施形態の略図表現である。
図5図1から図4aの実施形態で使用されるヒートポンプをより詳細に示す図である。
図6】別の実施形態に従う、図1及び図2の大型2ストローク機関の略図表現である。
【詳細説明】
【0030】
以下の詳細説明では、実施例のクロスヘッド式大型低速2ストロークターボ過給式内燃機関を参照して、内燃機関が説明される。図1図3は、ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関の実施例を描いている。このエンジンは、クランクシャフト8及びクロスヘッド9を有する。図1図2は、それぞれ異なる角度から見た概観図である。図3は、ある実施形態に従う図1,2のターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関を、その吸気系及び排気系と共に略図により表現したものである。この実施例において、機関は直列に6本のシリンダを有する。ターボ過給式大型低速2ストローク内燃機関は、直列に配された4本から14本のシリンダを有することがある。これらのシリンダはエンジンフレーム11に担持されるシリンダライナを有する。またこのような機関は、例えば、船舶の主機関や、発電所において発電機を動かすための据え付け型の機関として用いられることができる。機関の全出力は、例えば1、000~110、000kWの範囲でありうる。
【0031】
この実施例における機関は、2ストロークユニフロー掃気機関であり、シリンダライナ1の下部領域に掃気ポート18が設けられる。シリンダライナ1の上部のシリンダカバー22には中央排気弁4が配される。掃気ガスは、ピストンが掃気ポート18より下にある時に、掃気受け2から各シリンダライナ1の掃気ポート18へと導かれる。
【0032】
機関が予混合機関(オットー原理に基づく機関)として運転される場合、炭素を含むガス燃料(例えばメタノール、石油ガス又はLPG、メタン、天然ガス(LNG)、エタン)は、電子制御部100の制御下でガス導入弁50'から導入される。これは、ピストン10の(BDCからTDCへの)上昇ストロークの間であって、ピストンが燃料弁(ガス導入弁)50'を通過する前に行われる。ガス又は液体の炭素含有燃料(例えば燃料油)は、ピストン10がTDC又はその近傍にあるときに、高圧(好ましくは300bar以上)で燃料弁50から燃焼室に噴射される。ガス燃料は、ガス燃料供給システム30'により供給され、比較的低い圧力で燃焼室に導入される。この圧力は30bar未満、好ましくは25bar、より好ましくは20bar未満である。燃料弁50を通して噴射するための燃料を含む流れは、燃料システム30によって供給される。燃料弁50を通して噴射を行うための高圧は、燃料システム30(コモンレール)又は燃料弁50で発生させることができる。燃料導入弁50'は、好ましくはシリンダライナの円周上に等間隔に分布するように配される。また好ましくは、シリンダライナの長手方向の中央付近に配される。ガス燃料の導入は、圧縮圧力が比較的低い時に行われる。つまり、ピストンがTDCに達するときの圧縮圧力に比べればずっと低いときに行われるので、比較的低い圧力で導入することが可能となる。
【0033】
機関が圧縮着火機関(ディーゼル原理)として運転される場合、ガス導入弁50'はなく、(気体又は液体の)炭素含有燃料は、ピストン10がTDC又はその近傍にあるときに、燃料弁50を通して高圧で噴射される。
【0034】
シリンダライナ1内のピストン10は、ガス燃料と掃気ガスの混合気を圧縮し(TDCでの燃料噴射のみによる動作の場合は掃気ガスを圧縮し)する。そしてTDC又はその付近で、好ましくシリンダカバー22に配置される燃料弁50からの高圧の燃料の噴射により、着火が引き起こされる。TDC又はその付近で液体燃料噴射のみの場合は、圧縮により着火が引き起こされる。そして燃焼が生じ、二酸化炭素を含む排気ガスが発生する。
【0035】
排気弁4が開かれると、燃焼ガス(排気ガス)は、シリンダ1に付随する燃焼ガスダクトを通って燃焼ガス受け3に流入し、第1の排気管19へと流出する。第1の排気管19には、排気ガス中の亜酸化窒素(NOx)を還元するための選択触媒反応器33が設けられている。
【0036】
タービン6は、シャフトを介してコンプレッサ7を駆動する。コンプレッサ9には、空気取り入れ口12を通じて外気が供給される。コンプレッサ7は、圧縮された掃気空気を、掃気受け2に繋がる掃気管13へと送り込む。掃気管13の掃気空気は、掃気空気を冷却するためのインタークーラー14を通過する。
【0037】
インタークーラー14の上流(図示されている)又は下流(図示せず)のいずれかで、排気再循環管35は掃気管13に接続される。再循環された排気ガスはこの位置で掃気空気と混合され、掃気ガスが形成される。掃気ガスは掃気受け2へと流れていく。以下で更に詳しく説明するように、制御部100(電子制御ユニット)は、掃気ガス中の掃気空気と排気ガスとの比率を調整するように構成される。
【0038】
冷却された掃気空気又は掃気ガスは、電気モータ17により駆動される補助ブロワ16を通る。補助ブロワ16は、ターボ過給器5のコンプレッサ7が掃気受け2のために十分な圧力を提供できない場合、すなわち機関が低負荷又は部分負荷である場合に、掃気流を圧縮する。機関の負荷が高い場合は、ターボ過給器のコンプレッサ7が、十分に圧縮された掃気空気を供給することができるので、補助ブロワ16は、逆止弁15によってバイパスされる。機関は、ターボ過給システムを形成する複数のターボ過給機5を備えることができる。
【0039】
制御部100(電子制御ユニット)は、制御部の機能を果たすためのプロセッサ及び他のハードウェアからなる複数の相互接続された電子ユニットで構成されてもよい。制御部40は、概して機関の動作を制御し、例えばガス燃料導入(量とタイミング)、液体燃料噴射(量とタイミング)、排気弁4の開閉(タイミングとリフト量)、再循環排気ガス比を制御し、また、各種の冷却器やポンプ等の機器の動作制御も行う。ここで制御部100には、機関の運転状態を知らせるセンサからの各種信号が入力されるようになっている。これらの信号には、それぞれ機関負荷、機関回転数、ブロワ回転数、掃気温度、様々な場所の排気ガス温度、様々な場所の排気ガス温度を表す信号が含まれてもよい。また、掃気系の圧力、燃焼室内の圧力、排気系の圧力、排気再循環系における圧力を示す信号が含まれてもよい。機関は好ましくは、燃焼室毎に、排気弁タイミングの個別制御を可能とする可変タイミング排気弁作動システムを備える。制御部100は、燃料弁50、液体燃料導入弁50'、排気弁アクチュエータ、角度位置センサ、圧力センサに、信号線又は無線接続を介して接続されている。角度位置センサは、クランクシャフトの角度を検出しクランクシャフトの位置を表す信号を生成する。圧力センサは、好ましくはシリンダカバー22内に、代替的にはシリンダライナ1内に配され、燃焼室内の圧力を表す信号を生成する。
【0040】
エンジンのサイズに応じて、シリンダライナ1は様々な大きさに作られる。典型的な大きさとしては、シリンダボアの直径が250mmから1000mmであり、それに対応する全長が1000mmから4500mmである。
【0041】
シリンダライナ1はシリンダフレーム23に載置され、シリンダライナ1の上にはシリンダカバー22が設置される。シリンダライナ1とシリンダカバー22とは、その間からガスの漏出が生じないようにされている。ピストン10は、下死点(BDC)と上死点(TDC)の間を往復するように構成されている。ピストン10のこれら2つの死点位置は、クランクシャフト8の回転角度で180度離れている。シリンダライナ1には、周方向に分散配置された複数のシリンダ潤滑孔が設けられる。これらのシリンダ潤滑孔はシリンダ潤滑ラインに接続されている。シリンダ潤滑ラインは、ピストン10がシリンダ潤滑孔25を通過するときにシリンダ潤滑油を供給する。続いてピストン10の(図示されていない)ピストンリングが、シリンダライナの走行面(内面)全体にシリンダ潤滑油を行き渡らせる。図示されていないが、シリンダライナにはジャケットが設けられており、ジャケットとシリンダライナとの間の空間にはジャケット冷却水が循環している。
【0042】
シリンダカバー22には、典型的には1気筒あたり複数の、好ましくは3つ又は4つの液体燃料弁50が取り付けられ、加圧された炭素含有燃料の供給源(図示せず)に接続されている。液体燃料弁50は、好ましくは、排気弁4の周囲、特に、シリンダカバー22の中央出口(開口部)の周囲に、円周方向において等間隔に配置される。中央部の外形は排気弁4によって制御される。燃料の噴射タイミング及び噴射量は、制御部100によって制御される。燃料弁50は、機関が予混合モードで運転されている場合、少量の点火液(パイロット)を噴射するためにのみ使用される。機関が圧縮着火モードで運転されている場合には、実際に使用されている機関負荷で機関を運転するために必要な量の液体燃料が液体燃料弁50から噴射される。シリンダカバー22には、前室(プリチャンバ)が設けられていてもよい(図示されていない)。また、液体燃料弁50の先端部、典型的には1つ又は複数のノズル穴を有するノズルが設けられた先端部が、パイロットオイル(点火液)が前室に注入され霧化するように配置されている。前室は確実な点火を支援する。
【0043】
燃料導入弁50'は、そのノズルがシリンダライナ1の内面と実質的に面一となり、燃料弁50'の後端がシリンダライナ1の外壁から突出した状態で、シリンダライナ1(またはシリンダカバー22)に設置されている。典型的には1つ又は2つ、多くても3つか4つの燃料弁50'が、各シリンダライナ1に設けられる。これらはシリンダライナ1の円周域に(好ましくは等間隔に)配置される。本実施例において、燃料導入弁50'は、シリンダライナ1の長手方向のちょうど中央部に配されている。燃料導入弁50'は、ガス燃料(例えばメタノール、LPG、LNG、エタン又はアンモニア)の加圧供給源30'に接続されている。すなわち燃料導入弁50'に供給されるときに、燃料は気体相である。ガス燃料は、ピストン10のBDCからTDCへのストロークの間に導入されるので、ガス燃料の供給源の圧力は、シリンダライナ1内に存在する圧力より高ければよい。燃料導入弁50'に送られるガス燃料にとって、典型的には20bar未満の圧力で十分である。燃料導入弁50'は制御部100に接続される。制御部40は、燃料導入弁50'の開閉タイミング及び開弁時間を決定する。
【0044】
実施形態によっては、点火用の液体燃料は、重油、船舶用ディーゼル油、重油、エタノール、又はジメチルエーテル(DME)である。
【0045】
ガス運転モードは、機関の幾つかの運転モードのうちの1つでありうる。他のモードには、機関の動作に必要な燃料のすべてが液体燃料弁50を通じて液体形態で供給される、液体燃料運転モードが含まれることができる。ガス燃料運転モードにおいて、機関は、BDCからTDCまでのピストンストローク中に比較的低い圧力で導入されるガス燃料を主燃料として運転される。すなわち、機関に供給されるエネルギーの主要部分はそのようなガス燃料により供給される。一方、ガス燃料に比較すると、液体燃料は少量しか用いられず、機関に供給されるエネルギー量に比較的小さな寄与しかしない。液体燃料の目的は所定のタイミングで点火することにある。すなわち液体燃料は点火液として機能する。
【0046】
このように、本実施形態の機関は、液体燃料のみで運転されるモードと、ほぼガス燃料のみで運転されるモードとを有する、二元燃料機関とすることができる。
【0047】
本実施形態では、機関は、オットー原理に従って動作する予混合機関として示されている。しかし機関が(ディーゼル原理に従って動作する)圧縮着火機関である実施形態も存在する。その場合、(気体又は液体の)炭素系燃料は、ピストン10がTDC又はその付近にあるときに高圧で噴射される。
【0048】
この機関は、燃焼室に炭素系燃料(液体燃料及び/又はガス燃料)を供給することと、燃焼室内で炭素系燃料を燃焼させ、二酸化炭素を含む排気流を生成することと、二酸化炭素吸収プロセスで排気ガスから二酸化炭素を分離することと、分離した二酸化炭素を貯蔵することと、によって動作させられる。また好ましくは、この機関は、排気流の第1の部分(再循環ガスが燃焼室から直接取り出される実施形態では燃焼ガスの第1の部分)を再循環し、排気流の別の(第2の)部分を排気ガスとして排気することと、 排気ガスを含む加圧された掃気ガスを燃焼室に供給することも含んで動作させられる。ここで加圧された掃気ガスは、少なくとも40質量%、好ましくは40から55質量%の再循環燃焼ガスを含む。
【0049】
ターボ過給機のタービン6の下流で、排気ガスは第2の排気管28に入る。排気管28は排気ガスをボイラー20(エコノマイザとも呼ばれる)に導く。ボイラー20は蒸気を発生するように構成されている。この蒸気は、例えば、機関が設置された船舶内で様々な目的のために使用される。またはこの蒸気は、以下で更に詳細に説明される脱離器66及び再沸器62アセンブリに直接供給されるのに十分な温度を有し、脱離器66及び再沸器62アセンブリを加熱するために、直接使用することができる。
【0050】
ボイラー20の下流側で、第2の排気管28は第1の熱交換器40に繋がっている。この熱交換器40で、排気ガスは、更に詳しく後述する第1の媒体と熱交換する。
【0051】
第2の排気管28は第1の熱交換器40の下流にも続いており、吸収器42の底部の入口に接続する。吸収器42は、好ましくは吸収塔、例えば充填吸収塔である。排気ガスは、吸収塔42内を通過して、吸収塔42の上部にある出口へと流れていく。
【0052】
吸収器42は、溶媒を用いて二酸化炭素を化学的に吸収するシステムの一部である。適切な溶媒の例は、アミン溶液である。アミン溶液は、第一級、第二級、及び/又は第三級アミンを含んでいてもよい。好適な溶液の別の例は、NaOH/KOH溶液、好ましくはアミンNaOH/KOH水溶液である。
【0053】
二酸化炭素は、充填吸収塔(吸収器)42によって排気ガスから除去される。この反応は発熱性であり、吸収塔42に沿って溶媒温度を上昇させる。一例として、機関からの排気ガス中の二酸化炭素濃度は、排気再循環なしの場合は体積比で4~5%、排気再循環ありの場合は体積比で9~10%である。排気ガスは、吸収塔42の最上部に入る溶媒とは反対向きの流れとして吸収塔42に導入される。この溶媒は、二酸化炭素リーンな溶媒又は二酸化炭素リーン溶媒と呼ばれる。この二酸化炭素リーン溶媒は、約35℃~55℃、常圧で、脱離器66から供給される。吸収塔42の上部には、充填床からなる水洗浄部があり、排気ガスに流出した揮発性アミン吸着剤の大部分を凝縮して可溶化することにより除去する。吸収塔42の全高は最大50メートルにもなりうる。吸収塔42で二酸化炭素が吸収されると、吸収塔42の底部からの二酸化炭素リッチな溶媒(二酸化炭素リッチ溶媒)の流れは、ポンプ44によってクロス熱交換器60に供給され、二酸化炭素リーン溶媒の流れと熱交換された後、脱離器66と再沸器62のアセンブリに導入され、再沸器62で加熱され、溶媒から二酸化炭素が放出される。除去(脱離)温度は120℃から150℃の間で変化し、動作圧力は5barまで達する。
【0054】
脱離塔66の頂部からは水飽和した二酸化炭素の流れが放出される。これを熱交換器68で冷却して水分の大部分を凝縮させる。水分はノックアウトドラム69で分離され、脱離塔66に戻される。ノックアウトドラム69からの二酸化炭素の流れは、液化装置70で圧縮/液化され、貯蔵タンク85に一時貯蔵される。実施形態によっては、貯蔵タンク85は極低温貯蔵タンクである一時貯蔵タンク85から、液化二酸化炭素を最終貯蔵場所又は公共施設(図示せず)に輸送することができる。機関が船舶に搭載されている場合、一時貯蔵タンク85は船舶内に配置され、船舶が液化二酸化炭素を受け入れるための施設が設けられている港にいるときに空にされる。
【0055】
アミン溶液の再生工程では、溶液中の二酸化炭素の全てを除去しない。再生された二酸化炭素リーン溶媒は、ポンプ64の作用により、二酸化炭素リーン負荷で吸収塔42にリサイクルされる。吸収器42に到達する前に、二酸化炭素リッチ溶媒は、クロス熱交換器60及び熱交換器67で二酸化炭素リーン溶媒と熱交換する。
【0056】
吸収塔を通して二酸化炭素を吸収した後の溶媒の二酸化炭素負荷は、二酸化炭素リッチ溶媒と呼ばれる。リーン溶媒とリッチ溶媒の差は、排気ガスから回収される二酸化炭素の量である。
【0057】
吸収器42から排出される排気ガス中の二酸化炭素濃度は、吸収器42に流入する排気ガスの二酸化炭素濃度より最大10倍低い。
【0058】
溶媒のアミンの一部は、吸収器42を出る排気ガス中にまだ存在する可能性がある。このアミンは、吸収器42の下流の排気管49に配置されたアミンスクラバー44によって除去される。
【0059】
機関は、機関の様々な部分から、廃熱流とも呼ばれるいくつかの余剰エネルギー流Q1,Q2,...Qnを発生させる。図3の実施形態では以下のものが含まれる。
Q1: 掃気冷却器14の一次冷却媒体(例えば水)。掃気冷却器14からの冷却水は、通常、約20~240℃の間の温度を有する、
Q2: 一次媒体機関潤滑油。通常45~55℃の温度である。
Q3: シリンダジャケットクーラーの一次冷却媒体(水など)。シリンダジャケットからの冷却水は、通常、約70~90℃の温度を有する。
Q4: 排気再循環管熱交換器(冷却器)32の一次冷却媒体(例えば水)。通常約50~350℃の温度を有する。
Q5: ボイラー20。通常約160~170℃の蒸気を供給する。
Q6: 第1の熱交換器40で使用される一次媒体(例えば水)。通常160~170℃の温度を有する。
Q7: 第二の熱交換器67で使用される一次媒体(例えば水)。通常100~170℃の温度を有する。
Q8: 第3の熱交換器68で使用される一次媒体(例えば水)。通常95~105℃の温度を有する。
Q9: 液化装置70を冷却するために使用される一次媒体(例えば水)。液化に使用される技術の種類と液化装置70に使用される冷却システムの種類に依存する温度を有する。
【0060】
機関によって生成される余剰エネルギー流の上のリストは網羅的なものではなく、余剰エネルギー源の単なる例を提示するものであることに留意されたい。
【0061】
上記の余剰エネルギー流Q1,Q2,...Qnのうち少なくとも1つ、特に、脱離器66及び再生器62アセンブリを加熱するために必要な温度より低い温度を有するものは、ヒートポンプ80に供給される。(脱離器66及び再生器62アセンブリは、少なくとも110℃好ましくは少なくとも120℃の温度を有する二次媒体を必要とする。)ヒートポンプ80は、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも130℃の温度の二次媒体(例えば水又は蒸気)の流れの形でエネルギーQrの流れを生成するように構成される。好ましくは、脱離器66及び再沸器62アセンブリに供給される二次媒体の温度は、130~140℃の間であり、最も好ましくは約136℃である。
【0062】
図4aに、ヒートポンプ80の実装の第一の実施形態を示す。この実施形態では、複数の余剰エネルギー流Q1,Q2,...Qnが単一のヒートポンプ80に送られ、脱離器66及び再生器62アセンブリに供給されるエネルギー流Qrがポンプ80によって生成される。
【0063】
ポンプ80の実装の第2の実施形態が図4bに示されている。この実施形態では、複数の余剰エネルギー流Q1,Q2,...Qnのうちの1つが、複数のヒートポンプ80のうちの1つに適用され、脱離器66に供給されるエネルギー流Qrは、複数のヒートポンプ80によって造られる。または好ましくは、脱離器66及び再生器62アセンブリへのエネルギーQrの1つの流れに組み合わされる。
【0064】
1つ又は複数のヒートポンプ80は、再沸器62内のアミン溶液の温度を高めるために使用される。ヒートポンプ80は、少なくとも蒸発器、凝縮器、圧縮器、及び絞り弁を備える。ヒートポンプ80内では、図5に示すように、蒸発器、凝縮器、圧縮器、絞り弁からなるサイクルでヒートポンプ(冷却)流体が循環する。ヒートポンプ80は、蒸発器がエネルギーQ2の流れから熱を受け取ることで機能する。ヒートポンプ液は蒸発器で蒸発し、圧縮器に入る。コンプレッサは、例えば電気モータによって駆動される。電気モータを駆動する電力は、例えば、機関のクランクシャフトから分岐された動力によって駆動されるオルタネーター又は発電機によって供給される。コンプレッサは、ヒートポンプ流体の圧力と温度を上昇させる。コンプレッサの下流でヒートポンプ液は凝縮器に入り、ヒートシンクに熱が伝達され、ヒートポンプ液が凝縮する。その後、ヒートポンプ液は、蒸発器に再び入る前に絞り弁で膨張し、サイクルが繰り返される。二次媒体、例えば水又は蒸気は、好ましくはポンプによって駆動されるサイクルで、凝縮器から再沸器62に熱を輸送し、二次媒体は少なくとも120℃、好ましくは少なくとも130℃の温度を有する。このように、再沸器62はヒートポンプ80のヒートシンクを形成する。
【0065】
ヒートポンプ80の効率を高めるため、実施形態では、凝縮器部分は3つの熱交換器(HEX)領域(スーパーヒーター、凝縮器、サブクーラー)に分割されている。スーパーヒーターと凝縮器領域で取り出された熱はヒートシンクに送られる。サブクーラーで取り出された熱は、蒸発器から出るヒートポンプ液の予熱に使われる。凝縮器のこのような構成により、コンプレッサの仕事が減り、システム効率が向上する。更に、凝縮器、スーパーヒーター、再沸器62の間には、蒸気HEXと電気コイルを備えた水ループが適用される。蒸気HEXに入る流体は、実施形態によってはボイラー20で発生した蒸気である。蒸気HEXと電気コイルは、再沸器62が全機関負荷範囲で十分なエネルギーを受け取ることを保証する。
【0066】
図5では、複数のエネルギー流Q1,Q2,...Qnが利用される。適用されるエネルギー流Q1,Q2,...Qnが1つだけであれば、蒸発器の下流の脱気装置は取り除くことができる。
【0067】
実施形態によっては、機関は、第1の排気管19を掃気管13に接続する排気再循環管35を有する排気再循環システムを具備する。好ましくは、排気再循環管35は、選択触媒反応器33の上流で第1の排気管19に接続する。好ましくは、排気再循環管35は、掃気冷却器14の上流で掃気管13に接続する。しかし、排気再循環管35が、掃気冷却器14の下流で掃気管13に接続する実施形態も存在しうる。
【0068】
排気再循環管35は、排気ガスを排気管から掃気管に強制的に送るためのブロワ34を備える。これは、機関運転中の掃気管13内の圧力が、典型的には第1の排気管19内の圧力よりも高いからである。図示の実施形態では、ブロワ34は電気モータによって駆動される。実施形態によっては、ブロワは他の回転動力源によって駆動され得る。図示される実施形態では、ブロワ34は、排気ガスを冷やす排気再循環熱交換器32と排気再循環スクラバー36との間に配置されている。しかし、ブロワ34の位置は、排気再循環路35の他の要素の上流又は下流である場合もありうる。
【0069】
排気再循環熱交換器32は、排気再循環スクラバー36の上流に配置されている。排気再循環スクラバー36の主な目的は、不純物(煤)を除去することである。
【0070】
制御部100は、加圧された掃気ガス中の再循環排気ガスの割合を、好ましくは少なくとも35質量%の割合に調節すべく、排気再循環システムのブロワ34の速度を制御するように構成されている。これは、排気ガス中の二酸化炭素濃度を高め、それによって二酸化炭素吸収システムの有効性を高めるためである。排気再循環率は、制御部100によって制御される弁(図示せず)によっても制御することができる。従って、制御部100は、運転条件に応じて、加圧された掃気ガス中の再循環排気ガスの割合を、40%以上や45%以上、50%以上などとして機関を運転するように構成される。一般に、制御部100は,可能な限り高い割合の再循環排気/燃焼ガスで動作するように構成されている。可能な限り高い」とは、燃焼プロセスの品質の低下、燃焼プロセスの信頼性の低下、機関の熱負荷の許容できない増加など、許容できない有害な影響を引き起こさない最も高い比率を意味する。
【0071】
排気再循環熱交換器32において排気ガスと熱交換するために使用される媒体(例えば水や蒸気)は、約130~170℃の温度で排気再循環熱交換器32を出るので、この媒体は、ヒートポンプ80を介することなく脱離器66及び再生器62アセンブリに直接使用することができる。再循環排気ガスは、約260~400℃の温度で排気再循環熱交換器32に入る。排気再循環熱交換器32を通る媒体の流量を調整することにより、媒体を所望の温度とすることができる。
【0072】
排気再循環は、吸収器42に供給される排気ガスの二酸化炭素濃度を増加させ、その結果、脱離器66及び再生器62アセンブリのエネルギー消費を低減する。また、排気再循環比を高くすると、吸収器42への排気流の規模が減少するため、排気再循環が使用される場合又は排気再循環比が高くされる場合には、より直径の小さい吸収塔を使用することができる。更に、排気再循環熱交換器32で取り出されたエネルギーは、脱離器66及び再生器62アセンブリに供給される余剰エネルギー(廃熱)であり、それにより、脱離器66及び再生器62アセンブリを作動させるために供給される必要があるエネルギー量が大幅に低減される。
【0073】
排気再循環熱交換器32から供給される媒体は、機関の他の余剰熱流と比較して高温である。これは、この媒体が、ターボチャージャ5のタービン6を通過していない排気ガスによって加熱されるためである。従ってこの媒体は、脱離器66及び再生器62アセンブリで直接使用することができる。
【0074】
図6は、機関の別の実施形態を示している。この実施形態において、既に説明又は図示した構成や特徴と同様の構成及び特徴については、以前に使用したものと同じ符号を付している。この実施形態の機関及びその動作は先の実施形態とほぼ同じであり、従って、先の実施形態との相違点のみを詳細に説明する。
【0075】
この実施形態は、掃気冷却器14の下流にオプションの第2の掃気冷却器14aを備える。掃気冷却器14は、脱離器66及び再生器62アセンブリにおいて直接使用するのに十分な温度を有する熱交換媒体の流れを生成するように構成されることができる。第2の掃気冷却器14aは、第1の媒体(例えば水)の流れの形態で、余剰エネルギー流Q10を生成する。しかし余剰エネルギー流Q10の温度は、第2の媒体の流れを生成するために、ヒートポンプ80の使用を必要とする。つまり、当該エネルギー流が脱離器66及び再生器62アセンブリにおいて使用され得る前に、ヒートポンプ80の使用を必要とする。そこで第2の掃気冷却器14aで生成されたエネルギー流Q10は、ヒートポンプ80に送られる。
【0076】
この実施形態では、第1の熱交換器40の下流に追加の第4の熱交換器41を任意に設けることができる。この追加の第4の熱交換器41により、ヒートポンプ80に供給される別の余剰エネルギー流Q11を生成することができる。
【0077】
この実施形態では、ヒートポンプ80に供給される排気再循環スクラバー36からの余剰熱から、追加の余剰エネルギー流Q12を作り出すこともできる。
【0078】
発明の様々な捉え方や実装形態が、いくつかの実施例と共に説明されてきた。上記の実施形態は、様々な方法で組み合わせることができる。また、本願の明細書や図面、特許請求の範囲を検討すれば、当業者は、特許請求の範囲に記載される発明を実施するにおいて、説明された実施例に加えて多くのバリエーションが存在することを理解し、また具現化することができるであろう。特許請求の範囲に記載される「備える」「有する」「含む」との語句は、記載されていない要素やステップが存在することを排除しない。特許請求の範囲において記載される要素の数が複数であると明示されていなくとも、当該要素が複数存在することを除外しない。特許請求の範囲に記載されるいくつかの要素の機能は、単一のプロセッサやコントローラ、その他のユニットによって遂行されてもよい。いくつかの事項が別々の従属請求項に記載されていても、これらを組み合わせて実施することを排除するものではなく、組み合わせて実施して利益を得ることができる。特許請求の範囲で使用されている符号は発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】