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  • 特開-電子制御式ドアラッチ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068166
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】電子制御式ドアラッチ
(51)【国際特許分類】
   E05B 81/80 20140101AFI20240510BHJP
   E05B 81/86 20140101ALI20240510BHJP
【FI】
E05B81/80
E05B81/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023187717
(22)【出願日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】22205295
(32)【優先日】2022-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510222604
【氏名又は名称】キーケルト アクツィーエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ムッティ, カルロ
(72)【発明者】
【氏名】メルレッティ, マルコ
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250HH01
2E250JJ44
2E250KK02
2E250LL01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】数日間のような数時間の衝突動作状態で動作することができる電子制御式ドアラッチを提供する
【解決手段】自動車2の為の電子制御式ドアラッチ1は通常動作状態の間には自動車2の主要電源6から主要供給電圧Vbattを受け、衝突動作状態の間にはバックアップ供給電圧Vscを受けるように構成されたシステムベースチップ3と、通常動作状態の間には主要供給電圧Vbattと、衝突動作状態の間にはバックアップ供給電圧Vscとに基づいて電子制御式ドアラッチ1を作動させるように構成された電気モータ4と、システムベースチップ3によってトリガされたときにスリープ動作状態の間にスリープ状態になり、通常動作状態の間および衝突動作状態の間にはスリープ解除状態になり、通常動作状態の間および衝突動作状態の間に電気モータ4を制御するように構成された電子制御ユニット5と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(2)の為の電子制御式ドアラッチ(1)において、
前記電子制御式ドアラッチ(1)は、通常動作状態、スリープ動作状態および衝突動作状態を含む少なくとも3つの異なる動作状態で動作するように電子的に構成され、前記通常動作状態の間には前記自動車(2)の主要電源(6)から主要供給電圧(Vbatt)を受け、前記衝突動作状態の間にはバックアップ供給電圧(Vsc)を受けるように構成されたシステムベースチップ(3)と、
前記通常動作状態の間には前記主要供給電圧(Vbatt)と、前記衝突動作状態の間には前記バックアップ供給電圧(Vsc)とに基づいて前記電子制御式ドアラッチ(1)を作動させるように構成された電気モータ(4)と、
前記システムベースチップ(3)によってトリガされたときに前記スリープ動作状態の間にスリープ状態になり、前記通常動作状態の間および前記衝突動作状態の間にはスリープ解除状態になり、前記通常動作状態の間および前記衝突動作状態の間に前記電気モータ(4)を制御するように構成された電子制御ユニット(5)と、
を備える、電子制御式ドアラッチ(1)。
【請求項2】
前記システムベースチップ(3)は、前記主要供給電圧(Vbatt)とバックアップ供給電圧(Vsc)とを受けるように構成された低ドロップアウトLDOレギュレータ(8)と、スリープ解除信号(10)を受けるように構成されたスリープ解除マネージャ(9)と、前記自動車(2)と通信するように構成されたバス送受信機(11)と、を備える、請求項1に記載の電子制御式ドアラッチ(1)。
【請求項3】
前記システムベースチップ(3)は、前記スリープ動作状態の間、前記LDOレギュレータ(8)および/または前記バス送受信機(11)の電源をオフにするように構成される、請求項2に記載の電子制御式ドアラッチ(1)。
【請求項4】
前記システムベースチップ(3)は、低ドロップアウト、LDO、レギュレータ(8)および/またはスリープ解除信号に応答して前記電子制御ユニット(5)をスリープ解除するように構成されたスリープ解除マネージャ(9)を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子制御式ドアラッチ(1)。
【請求項5】
前記電子制御ユニット(5)は、前記スリープ解除信号(10)に関連付けられたスリープ解除要求を処理するように構成される、請求項4に記載の電子制御式ドアラッチ(1)。
【請求項6】
前記システムベースチップ(3)は、入出力状態信号の変化、バス遷移および/または通常動作状態から衝突動作状態への変化に応答して、前記電子制御ユニット(5)をスリープ解除させるように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の電子制御式ドアラッチ(1)。
【請求項7】
前記通常動作状態の間にエネルギを蓄積し、前記衝突動作状態の間にバックアップ供給電圧(Vsc)を提供するように構成されたスーパーキャパシタ群(3)を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の電子制御式ドアラッチ(1)。
【請求項8】
前記スーパーキャパシタ群(3)は、前記バックアップ供給電圧(Vsc)を供給するために互いに接続された少なくとも第1のスーパーキャパシタセル(13)、好ましくは。少なくとも第1のスーパーキャパシタセル(13)および第2のスーパーキャパシタセル(13)を備える、請求項7に記載の電子制御式ドアラッチ(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の電子制御式ドアラッチ(1)と前記主要電源(6)とを備えた自動車(2)であって、前記主要電源(6)が前記システムベースチップ(3)に接続される、自動車(2)。
【請求項10】
自動車(2)の為の電子制御式ドアラッチ(1)を動作させる方法において、
前記電子制御式ドアラッチ(1)は、通常動作状態、スリープ動作状態および衝突動作状態を含む少なくとも3つの異なる動作状態で動作するように電子的に構成され、前記電子制御式ドアラッチ(1)は、
通常動作状態の間には自動車(2)の主要電源(6)から主要供給電圧(Vbatt)を受け、衝突動作状態の間にはバックアップ供給電圧(Vsc)を受けるように構成されたシステムベースチップ(3)と、
通常動作状態の間には主要供給電圧(Vbatt)と、衝突動作状態の間にはバックアップ供給電圧(Vsc)とに基づいて電子制御式ドアラッチ(1)を作動させるように構成された電気モータ(4)と、
とを備え、前記方法は、
前記システムベースチップ(3)に電子制御ユニット(5)をトリガさせるステップであって、前記スリープ動作状態の間にスリープ状態になり、前記通常動作状態の間および前記衝突動作状態の間にはスリープ解除状態になるステップを含み、
前記電子制御ユニット(5)は、前記通常動作状態の間および前記衝突動作状態の間に前記電気モータ(4)を制御するように構成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用電子制御式ドアラッチに関するが、この電子制御式ドアラッチは、通常動作状態および衝突動作状態を含む少なくとも2つの異なる動作状態で動作するように構成され、通常動作状態の間の主要供給電圧および衝突動作状態の間のバックアップ供給電圧に基づいて電子制御式ドアラッチを作動させるように構成された電気モータを備える。本発明はさらに、電子的に制御されたドアラッチと主要電源とを備える自動車に関する。本発明はさらに、自動車の電子制御式ドアラッチを動作させるための方法に関し、この電子制御式ドアラッチは、通常動作状態および衝突動作状態を含む少なくとも2つの異なる動作状態で動作するように構成され、この電子制御式ドアラッチは、通常動作状態の間の主要供給電圧および衝突動作状態の間のバックアップ供給電圧に基づいて電子制御式ドアラッチを作動させるように構成された電気モータを備える。
【背景技術】
【0002】
幾つかの自動車システムは、同じ主要電源の故障または中断の場合に、代替として、または車両の主要電源への補助として、電気エネルギを提供するために、バックアップエネルギ源を車両内に存在させることを必要とする。このようなバックアップ電源は通常、通常の動作中に車両の主要電源によって充電状態に維持され、たとえば、車両の事故または衝突の場合など、必要が生じたときにすぐに利用できるようにする。
【0003】
電子的に制御されるドアラッチは、通常、通常動作状態および衝突動作状態のような異なる動作状態のモードを含む。車両の主要電源が最早利用可能でないと仮定しているので、衝突動作状況は非常に重要である。従って、電子制御式ドアラッチは、衝突動作状態で数回、通常は数日間動作することが要求される。前記衝突動作状態では、電流消費及びエネルギ管理が非常に重要となる。
【0004】
電子制御式ドアラッチは、通常、スーパーキャップのような内部エネルギ蓄積セルを有する。前記内部エネルギ蓄積セルのエネルギは、常に完全に動作している場合には通常数時間持続し、これはしばしば数日の必要な動作時間には不十分である。
【0005】
【概要】
【0006】
従って、本発明の目的は、数日間のような数時間の衝突動作状態で動作することができる電子制御式ドアラッチを提供することである。
【0007】
この発明の目的は、独立クレームの特徴によって解決される。好ましい実施態様は、従属クレームに詳述されている。
【0008】
従って、本発明の課題は、自動車用電子制御式ドアラッチによって解決されるが、この自動車用電子制御式ドアラッチは、通常動作状態、スリープ動作状態および衝突動作状態を含む少なくとも3つの異なる動作状態で動作するように構成され、通常動作状態の間に自動車の主要電源からの主要電源電圧および衝突動作状態の間のバックアップ供給電圧を受けるように構成されたシステムベースチップと、通常動作状態の間に主要供給電圧および衝突動作状態の間のバックアップ供給電圧に基づいて電子制御式ドアラッチを動作させるように構成された電気モータと、システムベースチップによってトリガされたときに、スリープ動作状態の間に居眠りし、通常動作状態および衝突動作状態の間に呼び起こされるように構成され、通常動作状態および衝突動作状態の間に電気モータを制御するように構成された電子制御ユニットとを備える。
【0009】
提案された解決策の重要な点は、スリープ戦略を採用することにあり、このスリープ戦略において、少なくとも電子制御式ユニットが低電力消費状態に入る一方で、必要な動作を実施するために起動するためのシステムベースチップのような少数のスリープ解除ソースのみを監視する。従って、システムベースチップを使用することによって、電子制御式ドアラッチの全体的な電力消費は、そのようなシステムベースチップを持たない電子制御式ドアラッチと比較して、著しく低減される。スリープ状態の間、電子制御ユニットは、好ましくはほぼ完全にオフに切り換えられ、これは電子制御ユニットをスリープ解除する機能のみが依然として動作していることを意味し、それによって電子制御ユニットの全体的な電力消費を大幅に低減する。
【0010】
システムベースチップは、自動車用電子制御ユニット(ECU)の様々な機能を単一のダイ上に含む集積回路として提供されることが好ましい。システムベースチップは、電圧レギュレータ、監視機能、リセット発生器、ウォッチドッグ機能、たとえば、ローカル相互接続ネットワーク(LIN)などのバスインターフェース、CANバスまたはその他、スリープ解除論理および/または電力スイッチなどの組み込み機能を含むことができる。電子制御ユニットは、スリープ動作状態、通常動作状態または衝突動作状態などのそれぞれの動作状態に基づいて、システムベースチップから受信されたトリガ信号に応答して、スリープまたはスリープ解除などの異なる動作状態に入るように構成されることが好ましい。
【0011】
衝突または故障動作状態は、車両の主要電源が故障した場合、または電子制御式ドアラッチによって動作される主要電源と車両ドアの間の電気接続が遮断または切断された場合(たとえば、車両が関与する事故または衝突の場合)に発生する。これに対して、通常または規則的動作状態は、主要電源が電気モータを動作させるための電気エネルギを提供するモードとして理解されるべきである。
【0012】
主要電源は、たとえば、12または24VのDCを送出する自動車のバッテリとして提供されることが好ましい。通常動作状態の間、主要電源は、バックアップ供給電圧を提供する。以下に説明するスーパーキャパシタ群を充電することができる。この点に関して、自動車および/または電子制御式ドアラッチは、主要供給電圧からの電力が利用可能であるときはいつでも、主要供給電圧から開始してスーパーキャパシタ群を再充電するために、特に制御装置によって制御可能な充電モジュールを備えることができる。電気モータは、自動車ドアのロック及びアンロックに関して電子制御式ドアラッチを作動させるように構成されることが好ましい。
【0013】
より一般的には、「電子制御式ドアラッチ」という表現は、可動要素を開位置と閉位置との間にロックする手段として理解されるべきであり、それによって、たとえば、自動車の側部扉に加えて、ブーツ、リアハッチ、ボンネットリッドまたは他の閉じたコンパートメント、ウインドウレギュレータ、サンルーフを含む自動車の内部コンパートメントへのアクセスを開閉する。提案された電子制御式ドアラッチは、車両の主要電源が故障した場合、または主要電源と車両ドアとの間の電気接続が中断または切断された場合であっても、たとえば、車両ドアの開放を要求するセキュリティおよび安全規則に適合することを可能にする。そのような状況は、たとえば、車両が関与する事故または衝突の場合に発生し得る。
【0014】
車両は、電気自動車として提供することができる。電子制御式ドアラッチは、金属、プラスチックまたはそれらの組合せで作られたハウジングを備えることができる。以下に説明するスーパーキャパシタ群、電気モータ、システムベースチップ及び電子制御ユニットは、好ましくはハウジング内部に設けられる。
【0015】
電子制御式ドアラッチは、パルス幅変調信号で構成された制御ユニットによって適用される4象限コントローラを備えることができる。4象限コントローラを変調するパルス幅は、好ましくは、4象限コントローラがパルス幅変調信号に基づいて切り換えられることを意味する。パルス幅変調(PWM)またはパルス同期変調(PDM)は、一般に、信号を個別の部分に効果的にチョッピングすることによって、電気信号によって送出される平均電力を低減する方法として理解されている。特に、このようなPWM信号に基づいて、バックアップ供給電圧および/または主要供給電圧をオン/オフすることにより電気モータを動作させることができる。PWM信号のパルス幅を変化させることにより、電気モータの速度を制御することができる。
【0016】
4象限コントローラは、Hブリッジとして提供することができ、および/または、MOSFETとして提供されるスイッチを備えることができる。一般に、Hブリッジは、主要供給電圧および/またはバックアップ供給電圧を電圧として、電気モータを負荷として、負荷に印加される電圧の極性を切り換える電子回路である。このようなHブリッジによって、たとえば、自動車ドアをロックまたはロック解除するために、電気モータを前方または後方に動かすことができる。この名称は、文字「H」の分岐として構成された4つのスイッチと、クロスバーとして接続された負荷、すなわち電気モータとの共通の概略図表現に由来する。固体Hブリッジは、典型的には、主要電源に接続されたPNPバイポーラ接合トランジスタまたはpチャネルMOSFET、および接地されたnチャネルMOSFETなどの逆極性スイッチを使用して構成される。あるいは、pチャネルまたはnチャネルMOSFETを両側で使用することができる。
【0017】
制御ユニットは、特に主要電圧および/またはバックアップ供給電圧の値に基づいて、特に四象限コントローラを介して電気モータの動作を制御するように構成されたマイクロプロセッサ、マイクロコントローラまたは類似の計算モジュールとして提供することができる。それに加えて、制御ユニットは、たとえば、自動車の制御装置のような自動車の他のコントローラに接続するように構成することができる。
【0018】
制御ユニットおよび/またはシステムベースチップは、さらに、主要電圧の値が所定の閾値未満に減少するかどうかを判断して、衝突動作状態が発生していると判断するように構成することができる。この点に関して、電子制御ユニットは、適切なプログラムおよびコンピュータ命令を、たとえば、ファームウェアの形態で記憶する、計算モジュールに結合された、たとえば、不揮発性ランダムアクセスメモリなどの埋め込みメモリを備えることができる。代わりに、制御ユニットは、計算モジュールおよびメモリの機能を実行するために、別個の構成要素の論理回路を備えてもよい。
【0019】
好ましい実施態様によれば、システムベースチップは、主要供給電圧およびバックアップ供給電圧を受信するように構成された低ドロップアウトLDOレギュレータと、スリープ解除信号を受信するように構成されたスリープ解除マネージャと、自動車と通信するように構成されたバス送受信機とを備える。低ドロップアウトレギュレータは、供給電圧すなわち主要供給電圧または補助供給電圧が出力電圧に非常に近い場合であっても出力電圧を調整することができるDCリニア電圧レギュレータとして提供されることが好ましい。LDOは、パワーFETおよび差動増幅器を備えることができる。スリープ解除マネージャは、好ましくは、電子制御ユニットをスリープ解除すること、および/または、電子制御ユニットをスリープ状態にすることに関して、スリープ解除信号を処理するように構成される。バス送受信機は、ローカル相互接続ネットワーク(LIN)、CANバスまたは他のネットワークと情報を交換するように構成されることが好ましい。
【0020】
別の好ましい実施態様において、システムベースチップは、スリープ動作状態の間、LDOレギュレータおよび/またはバス送受信機の電源をオフにするように構成される。LDOレギュレータおよび/またはバス送受信機の電源をオフにすることによって、電子制御式ドアラッチの最大電力節約を、スリープ動作状態の間に達成することができる。このような場合、システムベースチップおよび好ましくはその後の電子制御ユニットを、このように賢明にスリープ解除することによってスリープ解除状況が発生した場合には、スリープ解除マネージャだけが待機のために遮断されない。
【0021】
さらに好ましい実施態様によれば、システムベースチップは、スリープ解除信号に応答して電子制御ユニットをスリープ解除するように構成された低ドロップアウト、LDO、レギュレータ、および/または、スリープ解除マネージャを備える。別の好ましい実施態様では、電子制御ユニットは、スリープ解除信号に関連するスリープ解除要求を処理するように構成される。したがって、システムベースチップ、LDOレギュレータおよび/またはスリープ解除マネージャは、スリープ解除信号が受信されたときに「バッファ」として作用して、その後、スリープ解除信号に関連付けられたスリープ解除要求を処理するためにスリープ解除されると、電子制御ユニットに指示することができる。
【0022】
さらに好ましい実施形態によれば、システムベースチップは、入出力状態信号の変化、バス遷移、および/または通常動作状態から衝突動作状態への変化に応答して電子制御ユニットをスリープ解除するように構成される。バス遷移は、バス送受信機によって受信される信号によってトリガされてもよい。
【0023】
別の好ましい実施態様において、電子制御式ドアラッチは、通常動作状態の間はエネルギを蓄積し、衝突動作状態の間はバックアップ供給電圧を提供するように構成されたスーパーキャパシタ群を備える。さらに好ましい実施態様において、スーパーキャパシタ群は、バックアップ供給電圧を共同で提供するために互いに接続された少なくとも第1のスーパーキャパシタセル、好ましくは、少なくとも第1および第2のスーパーキャパシタセルを備える。
【0024】
スーパーキャパシタセルは、スーパーキャパシタ、スーパーキャップ、SCまたはウルトラキャパシタとも呼ばれ、典型的には、他のキャパシタよりもはるかに高い容量値を有するが、より低い電圧限界を有する高容量キャパシタであり、これは、電解キャパシタと再充電可能バッテリとの間のギャップを埋める。スーパーキャパシタは、典型的には電解キャパシタよりも単位体積または単位質量当たり10~100倍多くのエネルギを蓄積し、バッテリよりもはるかに速く電荷を受け入れて送出することができ、再充電可能バッテリよりもはるかに多くの充放電サイクルに耐えることができる。
【0025】
スーパーキャパシタセルは、完全に充電されたとき、たとえば、245Vの電圧を含む。したがって、第1および第2のスーパーキャパシタセルが互いに接続されている場合には、共同で提供されるバックアップ供給電圧は、4.9Vに等しい。好ましくは、少なくとも2個、2個、3個または4個のスーパーキャパシタセルが直列に接続されてスーパーキャパシタ群を形成する。
【0026】
さらに、この目的は、前述のように電子制御式ドアラッチと主要電源とを組み合わせた自動車によって解決され、主要電源がシステムベースチップに接続される。したがって、通常動作状態の間、主要電源は、システムベースチップおよび/または電気モータのために動作して、たとえば、自動車ドアをロックおよびロック解除するために電気モータを作動させる。
【0027】
本発明の目的は、自動車の電子制御式ドアラッチを作動させる方法によって更に解決され、電子制御式ドアラッチは、通常作動状態、スリープ動作状態および衝突動作状態を含む少なくとも3つの異なる動作状態で動作するように構成され、電子制御式ドアラッチは、
通常動作状態の間に自動車の主要電源からの主要供給電圧および衝突動作状態の間にバックアップ供給電圧を受けるように構成されたシステムベースチップと、
通常動作状態の間に主要供給電圧および衝突動作状態の間にバックアップ供給電圧に基づいて電子制御式ドアラッチを作動させるように構成された電気モータと、を備え、この方法は、
システムベースチップに電子制御ユニットをトリガさせるステップであって、スリープ動作状態の間にスリープ状態になり、通常動作状態の間および衝突動作状態の間にはスリープ解除状態になるステップを含み、電子制御ユニットは、通常動作状態の間および衝突動作状態の間に電気モータを制御するように構成される。
【0028】
電子制御ドアラッチを作動させるための方法の更なる実施態様および利点は、上述のような電子制御式ドアラッチから当業者によって導き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下に記載される実施態様から明らかであり、これを参照して明らかにされる。
図1図1は、本発明の好ましい実施態様に従って、概略的にしか描かれていない自動車の為の電子制御式ドアラッチの概略回路図を示す。
【0030】
【実施態様の説明】
【0031】
図1は、概略的に描かれた自動車2の為の電子的に制御されたドアラッチ1の概略回路図である。自動車2は、側部扉の為に、図示されていないが、電子制御式ドアラッチ1を1つ装備している。それに加えて、電子的に制御されるドアラッチ1は、そのような自動車2の側部扉に加えて、リアハッチ、ボンネットリッドまたはその他の閉鎖区画、ウインドウレギュレータ、サンルーフに関連付けることができる。
【0032】
電子制御式ドアラッチ1は、プラスチック、金属またはこれらの組合せからなるハウジングを備えている。ハウジングには、システムベースチップ3、電気モータ4および電子制御ユニット5が配置されている。通常動作状態の間、システムベースチップ3には、自動車2の主要電源6から直流12Vの主要供給電圧Vbattが供給される。
【0033】
主要供給電圧Vbattが利用できなくなった場合、たとえば、自動車2が主要電源6の分離につながる事故を起こした場合、このような衝突動作状態の間に、電子制御式ドアラッチ1内部に配置されたスーパーキャパシタ群7によって提供されるバックアップ供給電圧Vscがシステムベースチップ3に給電される。従って、スーパーキャパシタ群7は、衝突動作の間にバックアップ供給電圧Vscを提供するために、通常動作の間にエネルギを蓄積する。このようにして、電気モータ4は、上記通常動作状態の間は主要供給電圧Vbattに基づいて、また、衝突動作状態の間はバックアップ供給電圧Vscに基づいて、電子制御式ドアラッチ1を作動させる。
【0034】
システムベースチップ3は、電子制御ユニット5に接続されており、スリープ動作状態の間に電子制御ユニット5をそれぞれトリガしてスリープ状態にする。居眠りとは、特に、電子制御ユニット5が省エネルギのために電力が切断されることを意味する。具体的には、電子制御ユニット5は、システムベースチップ3によってトリガされると、スリープ動作状態の間にスリープ状態になり、システムベースチップ3によって再びトリガされると、通常動作状態の間および衝突動作状態の間にスリープ解除する。電子制御ユニット5は、通常動作状態および衝突動作状態の間に、電気モータ4を制御して、それぞれドアを作動させる。
【0035】
システムベースチップ3は、主要供給電圧Vbattおよびバックアップ供給電圧Vscを受ける低ドロップアウト、LDO、レギュレータ8、スリープ解除信号10を受けるように構成されたスリープ解除マネージャ9、およびフィールドバス12を介して自動車2と通信して自動車2の他の制御ユニットと情報を交換するバス送受信機11を備える。システムベースチップ3が起動トリガを受けると、システムベースチップ3は電子制御ユニット5に電力を供給する。特に、制御装置はLDOレギュレータ8の電源をオン/オフすることによって行われる。
【0036】
このように、電子制御式ドアラッチ1は、通常動作状態、スリープ動作状態および衝突動作状態の少なくとも3つの異なる動作状態で動作するように構成されている。スリープ動作状態の間、電子制御ユニット5は、電力消費を著しく低減し、システムベースチップ3から受信されたスリープ解除信号のみを監視する。さらに、前記スリープ動作状態の間、システムベースチップ3はまた、LDOレギュレータ8およびバス送受信機11の電源をオフにして、電子制御式ドアラッチ1のエネルギ消費を更に低減する。
【0037】
電子制御ユニット5がシステムベースチップ3によってスリープ解除されると、電子制御ユニット5がスリープ状態になっている間にシステムベースチップ3によって受信されたスリープ解除信号10が、電子制御ユニット5によってスリープ解除要求として処理される。システムベースチップ3は、入出力状態信号の変化、フィールドバス12でのバス遷移、および/または通常動作状態から衝突動作状態への変化に応答して、電子制御ユニット5をスリープ解除する。さらに、ホール効果センサのような内部センサをスリープ解除源として存在させることができる。
【0038】
先に概説したように、スーパーキャパシタ群7は、通常動作状態の間はエネルギを蓄積し、衝突動作状態の間はバックアップ供給電圧Vscを提供するように構成される。従って、スーパーキャパシタ群7は、直列に接続された第1および第2のスーパーキャパシタセル9を備え、第1のスーパーキャパシタセル9は、その負の極が接地される。各スーパーキャパシタセル9は、完全に充電されると、2.45V DCの電圧、すなわちスーパーキャパシタ群7は、4.9V DCのバックアップ供給電圧Vscを分配する。それに加えて、2つ以上のスーパーキャパシタセル9を直列に接続することができ、このようにして、より高いバックアップ電圧Vscを分配する。
【0039】
本発明は、図面および前述の説明において詳細に図示および説明されているが、かかる図示および説明は、解説用または例示的であり、限定的ではないと考えられ、本発明は、開示された実施態様に限定されるものではない。開示される実施態様の他の変形は、図面、開示及び添付されたクレームの検討から、クレームされた発明を実施する当業者が理解し、実行することができる。クレームにおいて、「備える」という語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、また、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を排除するものではない。特定の措置が複数の異なる従属クレームに記載されているという単なる事実は、これらの措置の組合せを有利に使用することができないことを示すものではない。クレーム中のいかなる参照符号も範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0040】
1…電子制御式ドアラッチ、
2…自動車、
3…システムベースチップ、
4…電気モータ、
5…電子制御ユニット、
6…主要電源、
7…スーパーキャパシタ群、
8…低ドロップアウト、LDO,レギュレータ、
9…スリープ解除マネージャ、
10…スリープ解除信号、
11…バス送受信機、
12…フィールドバス、
13…スーパーキャパシタセル、
batt…主要供給電圧、
sc…バックアップ供給電圧。
図1
【外国語明細書】