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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068180
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/12 20230101AFI20240510BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240510BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240510BHJP
   C07D 307/77 20060101ALI20240510BHJP
   C07D 487/16 20060101ALI20240510BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20240510BHJP
   H10K 101/10 20230101ALN20240510BHJP
   H10K 101/25 20230101ALN20240510BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K85/60
C09K11/06 690
C07D307/77
C07D487/16
C07D519/00 311
H10K101:10
H10K101:25
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188400
(22)【出願日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2022177385
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 晴恵
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信晴
(72)【発明者】
【氏名】梶山 一輝
(72)【発明者】
【氏名】木戸 裕允
【テーマコード(参考)】
3K107
4C050
4C072
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB06
3K107CC02
3K107CC04
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD66
3K107DD68
3K107DD69
3K107FF06
3K107FF11
3K107FF19
3K107FF20
4C050AA02
4C050BB07
4C050CC07
4C050DD02
4C050EE07
4C050FF05
4C050GG03
4C050HH01
4C072MM02
4C072UU05
(57)【要約】
【課題】キャリアバランスの良好な発光デバイスを提供する。
【解決手段】第1の電極と第2の電極との間に発光層を有し、発光層は、少なくとも、第1の物質と、発光物質と、を有し、第1の物質は、カルバゾール環、芳香族アミン骨格、およびπ電子不足型複素芳香環のいずれか一、または複数を有する有機化合物を有し、発光物質の光励起によって生じる遅延蛍光の、第1の温度における発光寿命は、第2の温度における発光寿命より短く、第1の温度は、第2の温度より低く、第1の温度および第2の温度は、それぞれ10K以上300K以下である、発光デバイスを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と第2の電極との間に発光層を有し、
前記発光層は、少なくとも、第1の物質と、発光物質と、を有し、
前記第1の物質は、カルバゾール環、芳香族アミン骨格、およびπ電子不足型複素芳香環のいずれか一、または複数を有する有機化合物を有し、
前記発光物質の光励起によって生じる遅延蛍光の、第1の温度における発光寿命は、第2の温度における発光寿命より短く、
前記第1の温度は、前記第2の温度より低く、
前記第1の温度および前記第2の温度は、それぞれ10K以上300K以下である、発光デバイス。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の物質のT準位は、前記発光物質のT準位よりも高い、発光デバイス。
【請求項3】
請求項1において、
前記発光層は、第2の物質を有する、発光デバイス。
【請求項4】
第1の電極と第2の電極との間に発光層を有し、
前記発光層は、少なくとも、第1の物質と、第2の物質と、発光物質と、を有し、
前記第1の物質は、カルバゾール環または芳香族アミン骨格のいずれか一を有する有機化合物を有し、
第2の物質は、π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物を有し、
前記発光物質の光励起によって生じる遅延蛍光の発光寿命は、10K以上300K以下の範囲において温度を下げるほど短くなる、発光デバイス。
【請求項5】
請求項4において、
前記π電子不足型複素芳香環は、トリアジン環、ピリミジン環、ピラジン環およびピリジン環のいずれか一を有する、発光デバイス。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれか一において、
前記第1の物質および前記第2の物質のT準位は、それぞれ前記発光物質のT準位よりも高い、発光デバイス。
【請求項7】
請求項3乃至請求項5のいずれか一において、
前記第1の物質と、前記第2の物質とは、エキサイプレックスを形成する、発光デバイス。
【請求項8】
請求項7において、
前記エキサイプレックスの発光スペクトルの最大ピーク波長のエネルギーと、前記発光物質の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーと、の差が0.20eV以下である、発光デバイス。
【請求項9】
請求項7において、
前記エキサイプレックスの発光スペクトルの最大ピーク波長のエネルギーと、前記発光物質の吸収スペクトルの最も長波長に位置する吸収帯の最大ピーク波長のエネルギーとの、差が0.20eV以下である、発光デバイス。
【請求項10】
請求項7において、
前記エキサイプレックスのS準位は、前記発光物質のS準位よりも高い、発光デバイス。
【請求項11】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記発光物質の最も長波長に位置する吸収帯の最大ピーク波長におけるモル吸光係数が1000M-1・cm-1以上である、発光デバイス。
【請求項12】
第1の電極と第2の電極との間に、発光層と、前記発光層に接する第1の層と、を有し、
前記発光層は、少なくとも、発光物質、を有し、
前記第1の層は、第1の物質を有し、
前記第1の物質は、カルバゾール環、芳香族アミン骨格、およびπ電子不足型複素芳香環のいずれか一を有し、
前記発光物質の光励起によって生じる遅延蛍光の、第1の温度における発光寿命は、第2の温度における発光寿命より短く、
前記第1の温度は、前記第2の温度より低く、
前記第1の温度および前記第2の温度は、それぞれ10K以上300K以下である、発光デバイス。
【請求項13】
第1の電極と第2の電極との間に、発光層と、前記第1の電極と前記発光層との間の第2の層と、を有し、
前記発光層は、少なくとも、発光物質、を有し、
前記第2の層は、有機無機複合材料を有し、
前記有機無機複合材料は、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物および電子吸引基を有する有機化合物を有し、
前記発光物質の光励起によって生じる遅延蛍光の、第1の温度における発光寿命は、第2の温度における発光寿命より短く、
前記第1の温度は、前記第2の温度より低く、
前記第1の温度および前記第2の温度は、それぞれ10K以上300K以下である、発光デバイス。
【請求項14】
請求項1乃至請求項5、請求項12、および請求項13のいずれか一において、
前記発光物質は、アザフェナレン環を有する有機化合物である、発光デバイス。
【請求項15】
請求項14において、
前記アザフェナレン環は、ピリドキノリジン環、ピリミドキノリジン環、トリアザフェナレン環、テトラアザフェナレン環、ペンタアザフェナレン環、ヘキサアザフフェナレン環、およびヘプタアザフェナレン環のいずれか一である、発光デバイス。
【請求項16】
請求項15において、
前記ヘプタアザフェナレン環は、1,3,4,6,7,9,9b-ヘプタアザフェナレン環である、発光デバイス。
【請求項17】
請求項1乃至請求項5、請求項12、および請求項13のいずれか一において、
前記発光物質は、一般式(G1)で表される有機化合物である、発光デバイス。
【化1】

(一般式(G1)中、A乃至Aは各々独立に、炭素または窒素を表し、炭素の場合、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数6乃至10のシクロアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、炭素数1乃至10のハロアルコキシ基、および置換または無置換の炭素数6乃至13のアリール基のいずれか一と結合する。
また、R乃至Rは各々独立に、水素(重水素を含む)、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、炭素数1乃至10のハロアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリールオキシ基、炭素数2乃至14のアシルオキシ基、炭素数2乃至11のアルコキシカルボニル基、炭素数2乃至11のハロアルコキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数7乃至14のアリールオキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリール基、および置換または無置換のアザフェナレニル基のいずれか一を表す。)
【請求項18】
請求項1乃至請求項5、請求項12、および請求項13のいずれか一において、
前記発光物質は、一般式(G2)で表される有機化合物である、発光デバイス。
【化2】

(一般式(G2)中、R乃至Rは各々独立に、水素(重水素を含む)、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、炭素数1乃至10のハロアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリールオキシ基、炭素数2乃至11のアシルオキシ基、炭素数2乃至11のアルコキシカルボニル基、炭素数2乃至11のハロアルコキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数7乃至14のアリールオキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリール基、および置換または無置換のアザフェナレニル基のいずれか一を表す。)
【請求項19】
請求項1乃至請求項5、請求項12、および請求項13のいずれか一において、
前記発光物質は、一般式(G3)で表される有機化合物である、発光デバイス。
【化3】

(一般式(G3)中、R10は、炭素数1乃至10のアルキル基または炭素数1乃至10のハロアルキル基を表し、R11乃至R20は各々独立に、水素(重水素を含む)、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基および炭素数1乃至10のハロアルコキシ基のいずれか一を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光デバイス、発光装置、電子機器、および照明装置に関する。なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装置、蓄電装置、記憶装置、撮像装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
一対の電極間に発光物質である有機化合物を有する発光デバイス(有機EL素子ともいう)は、薄型軽量・高速応答・低電圧駆動などの特性を有することから、これを適用したディスプレイに関する開発が進められている。この発光デバイスは、電圧が印加されると電極から注入された電子およびホールが再結合し、それによって発光物質が励起状態となり、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。なお、励起状態の種類としては、一重項励起状態(S)と三重項励起状態(T)とがあり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐光と呼ばれている。また、発光デバイスにおけるそれらのスピン統計則的な生成比率は、S:T=1:3であると考えられている。
【0003】
また、上記発光物質のうち、一重項励起状態におけるエネルギーを発光に変換することが可能な化合物は蛍光性化合物(蛍光材料)と呼ばれ、三重項励起状態におけるエネルギーを発光に変換することが可能な化合物は燐光性化合物(燐光材料)と呼ばれる。またこの燐光材料は、項間交差(一重項励起状態から三重項励起状態へ移ること)が起こりやすい。
【0004】
従って、上記の生成比率を根拠にした時、上記各発光物質を用いた発光デバイスにおける内部量子効率(注入したキャリアに対して発生するフォトンの割合)の理論的限界は、蛍光材料を用いた場合は25%、燐光材料を用いた場合は100%となる。
【0005】
つまり、燐光材料を発光物質として用いれば、高効率な発光デバイスを得ることができる。しかしながら一般的に、燐光材料は、イリジウム、白金などの貴金属の重原子を用いた有機金属錯体であるため、高価となることが課題の一つである。そのため近年、熱活性化遅延蛍光材料(TADF材料)と呼ばれる、重原子を用いない材料を発光物質として用いる方法が検討されている。TADF材料は、三重項励起状態から一重項励起状態への項間交差によって、効率よく発光を呈することのできる材料であり、TADF材料を用いることにより、高効率な発光デバイスを得ることができる。
【0006】
また、一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギー準位が逆転したと考えられる材料(a negative singlet-triplet energy gap material、以下、NEST材料と称する)も報告されている(非特許文献1)。一般的な蛍光材料は、フントの規則により、S準位がT準位より高い一方で、NEST材料は、S準位がT準位より低いことを特徴とする。NEST材料を発光物質として用いた発光デバイスにおいては、三重項励起状態から一重項励起状態への項間交差を利用することで、一般的な蛍光デバイスよりも高効率な発光デバイスが得られている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2021/256446号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Werner Leupin and Jakob Wirz,”Low-Lying Electronically Excited States of Cycl[3.3.3]azine, a Bridged 12π-Perimeter”,J.Am.Chem.Soc.,Vol.102,No.19,6068-6075(1980)
【非特許文献2】Naoya Aizawa他,”Delayed fluorescence from inverted singlet and triplet excited states”,Nature,vol.609,502-506(2022)
【非特許文献3】Nicholas J. Turro,V.Ramamurthy,J.C. Scaiano著,「MODERN MOLECULAR PHOTOCHEMISTRY OF ORGANIC MOLECULES」,UNIVERSITY SCIENCE BOOKS,2010年2月10日発行,pp.204-208
【非特許文献4】Daisaku TANAKA他,「Ultra High Efficiency Green Organic Light-Emitting Devices」,Japanese Journal of Applied Physics,Vol.46,No.1,2007,pp.L10-L12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、非特許文献2で開示される発光デバイスでは、発光効率のロールオフが大きく、高輝度側では効率が大きく低下しており、まだ特性が十分とは言えない。
【0010】
そこで、本発明の一態様では、キャリアバランスが良好な発光デバイスを提供することを課題とする。また本発明の一態様では、高輝度側の効率が良好な発光デバイスを提供することを課題とする。また本発明の一態様では、駆動寿命が良好な発光デバイスを提供することを課題とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、新規な発光デバイスを提供することを課題とする。また、本発明の一態様は、新規な発光装置を提供することを課題とする。また、本発明の一態様は、新規な電子機器を提供することを課題とする。また、本発明の一態様は、新規な照明装置を提供することを課題とする。
【0012】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細書等の記載から自ずと明らかになるものであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、第1の電極と第2の電極との間に発光層を有し、発光層は、少なくとも、第1の物質と、発光物質と、を有し、第1の物質は、カルバゾール環、芳香族アミン骨格、およびπ電子不足型複素芳香環のいずれか一、または複数を有する有機化合物を有し、発光物質の光励起によって生じる遅延蛍光の、第1の温度における発光寿命は、第2の温度における発光寿命より短く、第1の温度は、第2の温度より低く、第1の温度および第2の温度は、それぞれ10K以上300K以下である、発光デバイスである。
【0014】
上記構成の発光デバイスにおいて、第1の物質のT準位は、発光物質のT準位よりも高いとより好ましい。
【0015】
また、上記構成の発光デバイスにおいて、発光層は、第2の物質を有するとより好ましい。
【0016】
また、本発明の一態様は、第1の電極と第2の電極との間に発光層を有し、発光層は、少なくとも、第1の物質と、第2の物質と、発光物質と、を有し、第1の物質は、カルバゾール環または芳香族アミン骨格のいずれか一を有する有機化合物を有し、第2の物質は、π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物を有し、発光物質の光励起によって生じる遅延蛍光の発光寿命は、10K以上300K以下の範囲において温度を下げるほど短くなる、発光デバイスである。
【0017】
上記各構成の発光デバイスにおいて、π電子不足型複素芳香環は、トリアジン環、ピリミジン環、ピラジン環およびピリジン環のいずれか一を有するとより好ましい。
【0018】
また、上記各構成の発光デバイスにおいて、第1の物質と、第2の物質とは、エキサイプレックスを形成するとより好ましい。
【0019】
上記構成の発光デバイスにおいて、エキサイプレックスの発光スペクトルの最大ピーク波長のエネルギーと、発光物質の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーと、の差が0.20eV以下であるとより好ましい。
【0020】
また、上記構成の発光デバイスにおいて、エキサイプレックスの発光スペクトルの最大ピーク波長のエネルギーと、発光物質の吸収スペクトルの最も長波長に位置する吸収帯の最大ピーク波長のエネルギーとの、差が0.20eV以下であるとより好ましい。
【0021】
上記構成の発光デバイスにおいて、エキサイプレックスのS準位は、発光物質のS準位よりも高いとより好ましい。
【0022】
また、上記各構成の発光デバイスにおいて、発光物質の最も長波長に位置する吸収帯の最大ピーク波長におけるモル吸光係数が500M-1・cm-1以上であると好ましく、1000M-1・cm-1以上であるとより好ましい。
【0023】
また、本発明の一態様は、第1の電極と第2の電極との間に、発光層と、発光層に接する第1の層と、を有し、発光層は、少なくとも、発光物質、を有し、第1の層は、第1の物質を有し、第1の物質は、カルバゾール環、芳香族アミン骨格、およびπ電子不足型複素芳香環のいずれか一を有し、発光物質の光励起によって生じる遅延蛍光の、第1の温度における発光寿命は、第2の温度における発光寿命より短く、第1の温度は、第2の温度より低く、第1の温度および第2の温度は、それぞれ10K以上300K以下である、発光デバイスである。
【0024】
また、本発明の一態様は、第1の電極と第2の電極との間に、発光層と、第1の電極と発光層との間の第2の層と、を有し、発光層は、少なくとも、発光物質、を有し、第2の層は、有機無機複合材料を有し、有機無機複合材料は、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物および電子吸引基を有する有機化合物を有し、発光物質の光励起によって生じる遅延蛍光の、第1の温度における発光寿命は、第2の温度における発光寿命より短く、第1の温度は、第2の温度より低く、第1の温度および第2の温度は、それぞれ10K以上300K以下である、発光デバイスである。
【0025】
また、上記各構成の発光デバイスにおいて、発光物質は、アザフェナレン環を有する有機化合物であるとより好ましい。
【0026】
また、上記構成の発光デバイスにおいて、アザフェナレン環は、ピリドキノリジン環、ピリミドキノリジン環、トリアザフェナレン環、テトラアザフェナレン環、ペンタアザフェナレン環、ヘキサアザフェナレン環、およびヘプタアザフェナレン環のいずれか一であるとより好ましい。
【0027】
上記構成の発光デバイスにおいて、ヘプタアザフェナレン環は、1,3,4,6,7,9,9b-ヘプタアザフェナレン環であるとより好ましい。
【0028】
上記各構成の発光デバイスにおいて、発光物質は、一般式(G1)で表される有機化合物であるとより好ましい。
【0029】
【化1】
【0030】
一般式(G1)中、A乃至Aは各々独立に、炭素または窒素を表し、炭素の場合、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数6乃至10のシクロアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、炭素数1乃至10のハロアルコキシ基、および置換または無置換の炭素数6乃至13のアリール基のいずれか一と結合する。また、R乃至Rは各々独立に、水素(重水素を含む)、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、炭素数1乃至10のハロアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリールオキシ基、炭素数2乃至14のアシルオキシ基、炭素数2乃至11のアルコキシカルボニル基、炭素数2乃至11のハロアルコキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数7乃至14のアリールオキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリール基、および置換または無置換のアザフェナレニル基のいずれか一を表す。
【0031】
上記各構成の発光デバイスにおいて、発光物質は、一般式(G2)で表される有機化合物であるとより好ましい。
【0032】
【化2】
【0033】
一般式(G2)中、R乃至Rは各々独立に、水素(重水素を含む)、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、炭素数1乃至10のハロアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリールオキシ基、炭素数2乃至11のアシルオキシ基、炭素数2乃至11のアルコキシカルボニル基、炭素数2乃至11のハロアルコキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数7乃至14のアリールオキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリール基、および置換または無置換のアザフェナレニル基のいずれか一を表す。
【0034】
上記各構成の発光デバイスにおいて、発光物質は、一般式(G3)で表される有機化合物であるとより好ましい。
【0035】
【化3】
【0036】
一般式(G3)中、R10は、炭素数1乃至10のアルキル基または炭素数1乃至10のハロアルキル基を表し、R11乃至R20は各々独立に、水素(重水素を含む)、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基および炭素数1乃至10のハロアルコキシ基のいずれか一を表す。
【0037】
また、本発明の一態様は、上記各構成の発光デバイスと、トランジスタ、または、基板と、を有する発光装置である。
【0038】
また、本発明の一態様は、上記構成の発光装置と、検知部、入力部、または、通信部と、を有する電子機器である。
【0039】
また、本発明の一態様は、上記構成の発光装置と、筐体と、を有する照明装置である。
【発明の効果】
【0040】
本発明の一態様により、キャリアバランスが良好な発光デバイスを提供することができる。また、本発明の一態様により、高輝度側の効率が良好な発光デバイスを提供することができる。また本発明の一態様により、駆動寿命が良好な発光デバイスを提供することができる。
【0041】
または、本発明の一態様により、新規な発光デバイスを提供することができる。または、本発明の一態様により、新規な発光装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、新規な電子機器を提供することができる。または、本発明の一態様により、新規な照明装置を提供することができる。
【0042】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は実施の形態に係る発光デバイスの構成を説明する図である。
図2図2(A)乃至図2(E)は実施の形態に係る発光デバイスの構成を説明する図である。
図3図3(A)乃至図3(D)は実施の形態に係る発光装置を説明する図である。
図4図4(A)乃至図4(C)は実施の形態に係る発光装置の製造方法を説明する図である。
図5図5(A)乃至図5(C)は実施の形態に係る発光装置の製造方法を説明する図である。
図6図6(A)乃至図6(D)は実施の形態に係る発光装置の製造方法を説明する図である。
図7図7(A)乃至図7(C)は実施の形態に係る発光装置を説明する図である。
図8図8(A)乃至図8(F)は実施の形態に係る発光装置を説明する図である。
図9図9(A)および図9(B)は実施の形態に係る発光装置を説明する図である。
図10図10(A)乃至図10(E)は実施の形態に係る電子機器を説明する図である。
図11図11(A)乃至図11(E)は実施の形態に係る電子機器を説明する図である。
図12図12(A)および図12(B)は実施の形態に係る電子機器を説明する図である。
図13図13(A)および図13(B)は実施の形態に係る照明装置を説明する図である。
図14図14は、実施の形態に係る照明装置を説明する図である。
図15図15は発光デバイス1、発光デバイス2、及び比較発光デバイス3の輝度-電流密度特性を示す図である。
図16図16は発光デバイス1、発光デバイス2、及び比較発光デバイス3の輝度-電圧特性を示す図である。
図17図17は発光デバイス1、発光デバイス2、及び比較発光デバイス3の電流効率-電流密度特性を示す図である。
図18図18は発光デバイス1、発光デバイス2、及び比較発光デバイス3の電流密度-電圧特性を示す図である。
図19図19は発光デバイス1、発光デバイス2、及び比較発光デバイス3の電力効率-電流密度を示す図である。
図20図20は発光デバイス1、発光デバイス2、及び比較発光デバイス3の外部量子効率-輝度特性を示す図である。
図21図21は発光デバイス1、発光デバイス2、及び比較発光デバイス3の電界発光スペクトルを示す図である。
図22図22はPPO27の薄膜の燐光スペクトルである。
図23図23はSiTrzCz2の燐光スペクトルである。
図24図24はHzTFEXの吸収スペクトル及び発光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0045】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0046】
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示さない場合がある。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載されている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合がある。
【0047】
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
【0048】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0049】
なお、本明細書等において、一重項励起状態(S)は、励起エネルギーを有する一重項状態のことである。また、S準位は、一重項励起エネルギー準位の最も低い準位であり、最も低い一重項励起状態の励起エネルギー準位のことである。また、三重項励起状態(T)は、励起エネルギーを有する三重項状態のことである。また、T準位は、三重項励起エネルギー準位の最も低い準位であり、最も低い三重項励起状態の励起エネルギー準位のことである。
【0050】
また、本明細書等において、蛍光材料および蛍光性化合物とは、一重項励起状態から基底状態へ緩和する際に発光を与える材料および化合物である。一方、燐光材料および燐光性化合物とは、三重項励起状態から基底状態へ緩和する際に、室温において可視光領域に発光を与える材料および化合物である。換言すると燐光材料および燐光性化合物とは、三重項励起エネルギーを可視光へ変換可能な材料および化合物の一つである。
【0051】
なお、有機化合物のS準位またはT準位に関しては、蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルにおいて基底状態と励起状態の振動準位間におけるν=0→ν=0遷移(0→0帯)が明確に観測される場合、当該0→0帯を用いて算出することが好ましい(例えば非特許文献3参照)。また0→0帯が明確でない場合は、蛍光スペクトルにおけるピークの短波長側の傾きが最大となる値において接線を引き、その接線と横軸(波長)あるいはベースラインとの交点のエネルギーをS準位とし、りん光スペクトルにおけるピークの短波長側の傾きが最大となる値において接線を引き、その接線と横軸(波長)あるいはベースラインとの交点のエネルギーをT準位とすればよい(例えば非特許文献4参照)。また、準位同士の比較を行う場合は、同じ方法で算出した準位での比較を行うものとする。
【0052】
なお、本明細書等において、室温とは、0℃乃至40℃のいずれかの温度をいう。
【0053】
また、本明細書等において、青色の波長領域とは、400nm以上490nm未満の波長領域であり、青色の発光とは該領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する発光である。また、緑色の波長領域とは、490nm以上580nm未満の波長領域であり、緑色の発光とは該領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する発光である。また、赤色の波長領域とは、580nm以上680nm以下の波長領域であり、赤色の発光とは該領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する発光である。また、近赤外の波長領域とは、700nm以上2500nm以下の波長領域であり、近赤外の発光とは該領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する発光である。
【0054】
また、本明細書等において、ある芳香環Aについて説明した場合、特に但し書きがなければ、当該説明の内容を芳香環Aと別の芳香環または複素芳香環とが縮環することにより形成した縮合芳香環についても適用することが可能である。例えば、カルバゾール環を有する有機化合物と記載して説明した場合には、特に但し書きがなければ、カルバゾール環とベンゼン環とが縮環することにより形成されるベンゾカルバゾール環、ジベンゾカルバゾール環などの縮合芳香環を有する有機化合物にも、当該説明が適用可能である。
【0055】
また、本明細書中で用いる、HOMO準位およびLUMO準位の値は、電気化学測定によって求めることができる。電気化学測定の代表例としては、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定、微分パルスボルタンメトリー(DPV)測定等が挙げられる。
【0056】
また、本明細書等において、有機化合物の遅延蛍光の発光寿命は、蛍光(発光)寿命測定装置を用いて測定することができる。
【0057】
また、本明細書等において、項間交差とは、スピン多重度が異なる状態間の無輻射遷移を表す。
【0058】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光デバイスについて図1を用いて説明する。
【0059】
まず、本発明の一態様の発光デバイスの構成について、図1を用いて説明する。図1には、本発明の一態様の発光デバイスの一例である発光デバイス100の断面模式図を示す。
【0060】
発光デバイス100は、一対の電極(第1の電極101及び第2の電極102)を有し、当該一対の電極間に設けられたEL層103を有する。EL層103は、少なくとも発光層113を有する。
【0061】
次に、発光層113の構成について説明する。
【0062】
発光層113は、少なくとも、第1の物質と、発光物質と、を有する。
【0063】
発光物質としては、T準位がS準位より高い材料を用いると好ましい。ここで、一般的な発光物質においては、S準位がT準位より高いことで知られる。また、S準位と、T準位と、のエネルギー差(すなわち、S準位からT準位を引いた値)は、ΔESTと呼ばれている。そのため、S準位よりT準位が高い材料のことを負のΔEst材料またはNEST材料(a negative singlet-triplet energy gap material)と称する。
【0064】
通常の蛍光デバイスでは、三重項励起状態(T)のエネルギーは発光に寄与できないことから、励起子全体の75%のロスが発生する。一方、NEST材料は、S準位よりT準位が高いことから、Tから一重項励起状態(S)への項間交差が容易に発生する。従って、Tの励起エネルギーを、遅延蛍光として取り出すことができるため、最大で励起子の100%を光として取り出すことが可能と考えられている。そのため、通常の蛍光デバイスと比較して、外部量子効率を高くすることができる。
【0065】
なお、TADF材料とは、わずかな熱エネルギーによってTからSへの項間交差(アップコンバート、逆項間交差ともいう)が可能で、Sからの発光(蛍光)を効率よく呈する材料のことである。TADF材料の発光には、通常のS由来の初期蛍光と、TからSへの項間交差により生成したS由来の遅延蛍光の二成分が含まれる。TADF材料は、S準位とT準位とが近接している(すなわちΔESTが小さい)材料ではあるが、S準位がT準位よりわずかに高い。そのため、TADF材料においてTからSへの項間交差は吸熱的に起きる特徴がある。
【0066】
NEST材料は、TからSへの項間交差が可能で、Sからの発光(蛍光)を効率よく呈する点で、TADF材料と類似している。NEST材料の発光にも、TADFと同様に、通常のS由来の初期蛍光と、TからSへの項間交差により生成したS由来の遅延蛍光の二成分が含まれる。その一方で、NEST材料においてはT準位がS準位より高い。そのため、TからSへの項間交差は発熱的に起きる。
【0067】
このことから、NEST材料の遅延蛍光の、発光寿命は、温度が下がるほど短くなるといえる。より具体的には、NEST材料の光励起によって生じる遅延蛍光の発光寿命は、10K以上300K以下の範囲において、温度が下がるほど短くなるといえる。言い換えると、第1の温度は、第2の温度より低く、第1の温度および第2の温度は、それぞれ10K以上300K以下であるとき、NEST材料の遅延蛍光の、第1の温度における発光寿命は、第2の温度における発光寿命より短い。
【0068】
また、通常の発光デバイスにおいて、発光層に酸素が存在すると、発光物質のSからTへの項間交差が促進されることで消光がおき、発光効率が低下してしまう場合がある。これは酸素存在下で、発光物質の発光寿命が短くなることから見積もることができる。しかし、上述のとおり、NEST材料においてはT準位がS準位より高いことから、SからTへの項間交差よりもTからSへの項間交差の方が、速度が速い。そのため、NEST材料は、酸素存在下であっても、SからTへの項間交差による消光が起きにくく発光寿命が短くなりにくい。よって、NEST材料を用いた発光デバイス、発光層に酸素が存在したとしても発光効率が低下しにくく、好ましい。
【0069】
なお、NEST材料のS準位とT準位の差の絶対値、すなわち|ΔEST|が小さい方が、TからSへの項間交差が効率よく起こり(速度が速くなり)好ましい。そのため、発光物質の|ΔEST|は、0eV以上0.1eV以下であると好ましく、0eV以上0.05eV以下であるとより好ましい。なおこのときの|ΔEST|のS準位とT準位は、発光寿命の温度依存性から、見積もることができる(特許文献1)。
【0070】
なお、第1の物質のT準位は、発光物質のT準位よりも高いと好ましい。これによって、第1の物質の励起エネルギーを効率よく発光物質に移動させ、発光物質を発光させることができる。なお、このときのT準位は、燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりで見積もることができる。また、発光物質のT準位は、蛍光スペクトルの短波長側の立ち上がりより見積もったS準位とΔESTから見積もってもよい。なお、燐光スペクトルおよび蛍光スペクトルの短波長側の立ち上がり(発光端)は、スペクトルの最も短波長に位置するピークよりも短波長側でスペクトルの傾きが最大になる点における接線とベースラインとの交点として算出することができ、当該発光端の波長からT準位およびS準位を算出することができる。なお、スペクトルにノイズがある場合は、スムージングまたはフィッティングをしたデータを用いて算出してもよい。
【0071】
第1の物質は、キャリア輸送性の高い物質であると好ましく、正孔輸送性の高い物質、電子輸送性の高い物質、または、バイポーラ性の物質(電子輸送性および正孔輸送性が高い物質)のいずれか一であるとより好ましい。さらに具体的には、第1の物質は、カルバゾール環、芳香族アミン骨格、およびπ電子不足型複素芳香環のいずれか一、または複数を有する有機化合物であると好ましい。
【0072】
第1の物質に、カルバゾール環、芳香族アミン骨格、およびπ電子不足型複素芳香環のいずれか一、または複数を有する有機化合物などのキャリア輸送性の高い物質を用いることよって、発光層のキャリアバランスを制御することができることから、キャリア再結合領域の制御を簡便に行うことができる。したがって、高輝度領域の効率低下、いわゆるロールオフ現象を低減し、高輝度かつ高効率、長寿命な発光デバイスを実現することができる。
【0073】
特に、発光物質としてアザフェナレン環を有する有機化合物を用いる場合、この物質は高い電子輸送性を有するため、カルバゾール環を有する有機化合物、芳香族アミン骨格を有する有機化合物のように、正孔輸送性の高い物質を第1の物質として用いると、キャリアバランスが良好となり、好ましい。そして正孔輸送性の高い物質に、電子輸送性の高い物質である、π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物を適宜混合することで、さらにキャリアバランスの調節がしやすくなり、好ましい。
【0074】
なお、カルバゾール環、芳香族アミン骨格、およびπ電子不足型複素芳香環は、置換基を有していても良い。置換基を有する方が、ガラス転移点(Tg)が高く、結晶性も下げられ、膜質が良好となるため好ましい。
【0075】
なお、アザフェナレン環を有する有機化合物はLUMO準位が低く(絶対値が大きく)なりやすい。そのため、第1の物質として用いる有機化合物のHOMO準位が高い場合には、発光物質と、第1の物質とでエキサイプレックスを形成しやすくなることで、発光スペクトルのブロード化、長波長シフトなどが発生し、発光効率が低下してしまうことがある。
【0076】
そのため、発光物質としてアザフェナレン環を有する有機化合物を用いる場合は、第1の物質として特にカルバゾール環を有する有機化合物を用いることが好ましい。カルバゾール環を有する有機化合物は、HOMO準位が比較的低くなるように分子設計することができる。そのため、カルバゾール環を有する有機化合物とアザフェナレン環を有する有機化合物との間でエキサイプレックスを形成しにくくなり、また、エキサイプレックスが形成したとしてもその励起エネルギーを高く保つことができる。従って、発光物質としてアザフェナレン環を有する有機化合物を用いる場合、第1の物質としてカルバゾール環を有する有機化合物を用いることで、発光スペクトルのブロード化、長波長シフトなどを防ぎ、発光効率を高めることができ、好ましい。なお、カルバゾール環を有する有機化合物の置換基はカルバゾールの9位または2位に置換しているほうが、よりHOMO準位が低くなり、好ましい。
【0077】
カルバゾール環を有する有機化合物(カルバゾール誘導体)として、より好ましくは、ビカルバゾール誘導体(例えば、3,3’-ビカルバゾール誘導体)、カルバゾール環と、芳香族アミン骨格の両方を有する有機化合物(カルバゾリル基を有する芳香族アミン)等が挙げられる。なお、これらは正孔輸送性の高い物質の一例である。
【0078】
ビカルバゾール誘導体(例えば、3,3’-ビカルバゾール誘導体)の具体例としては、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、9,9’-ビス(ビフェニル-4-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BisBPCz)、9,9’-ビス(ビフェニル-3-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BismBPCz)、9-(ビフェニル-3-イル)-9’-(ビフェニル-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:mBPCCBP)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)などが挙げられる。
【0079】
カルバゾリル基を有する芳香族アミンとしては、具体的には、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(略称:PCBFF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-4-アミン、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-4-アミン、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-アミン、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-4-アミン、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ(9H-フルオレン)-2-アミン、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ(9H-フルオレン)-4-アミン、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-(1,1’:3’,1’’-ターフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-(1,1’:4’,1’’-ターフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-(1,1’:3’,1’’-ターフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-4-アミン、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-(1,1’:4’,1’’-ターフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-4-アミン、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)アミン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、N-(9,9-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,9-ジフェニルカルバゾール-3-アミン(略称:PCASF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)などが挙げられる。
【0080】
なお、カルバゾール環を有する有機化合物の具体例として、上記に加えて、9-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-フェニル]フェナントレン(略称:PCPPn)、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、9’-フェニル-9’H-9,3’:6’,9’’-ターカルバゾール(略称:PhCzGI)、9-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-3,9′-ビ-9H-カルバゾール(略称:PSiCzCz)、9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,4-ビス(トリフェニルシリル)-9H-カルバゾール(略称:CzSi)、2,7-ビス(ジフェニルフォスフォリル)-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PPO27)等を挙げることもできる。
【0081】
芳香族アミン骨格を有する有機化合物の具体例としては、上記のカルバゾリル基を有する芳香族アミンの具体例に加えて、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、N-(9,9-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:DPASF)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-ジフェニルアミノフェニル)スピロビ[9H-フルオレン]-2,7-ジアミン(略称:DPA2SF)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、TDATA、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:m-MTDATA)、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス[4-ビス(3-メチルフェニル)アミノフェニル]-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、N-(4-ビフェニル)-6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BnfABP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)、4,4’-ビス(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-アミン(略称:BBABnf(6))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf(8))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン-4-アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-4-アミノ-p-ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N-[4-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-N-フェニル-4-ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4-(2-ナフチル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7-フェニル)ナフチル-2-イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(4;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(5;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB-02)、4-(4-ビフェニリル)-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4-(3-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4-(4-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4-フェニル-4’-(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’-ビス(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’-[4-(3-フェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリス(ビフェニル-4-イル)アミン(略称:YGTBi1BP-02)、4-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBNBSF)、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:BBASF)、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:BBASF(4))、N-(ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:oFBiSF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ジベンゾフラン-4-アミン(略称:FrBiF)、N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-N-[3-(6-フェニルジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-1-ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4-フェニル-4’-[4-(9-フェニルフルオレン-9-イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-4-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-3-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-2-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-1-アミン、等が挙げられる。
【0082】
π電子不足型複素芳香環としては、例えば、オキサジアゾール環、トリアゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノキサリン環、ジベンゾキノキサリン環、キナゾリン環、フェナントロリン環、ピリジン環、ジアジン環(ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環を含む)、トリアジン環、フロジアジン環等が挙げられる。
【0083】
π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物の具体例としては、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)などのオキサジアゾール環を有する有機化合物、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)などのトリアゾール環を有する有機化合物、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、2-{4-[9,10-ジ(2-ナフチル)-2-アントリル]フェニル}-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:ZADN)などのベンゾイミダゾール環を有する有機化合物、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)、などのベンゾオキサゾール環を有する有機化合物、バソフェナントロリン(略称:Bphen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)などのフェナントロリン環を有する有機化合物、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)、2-[4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-3,1’-ビフェニル-1-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mpPCBPDBq)などのキノキサリン環またはジベンゾキノキサリン環を有する有機化合物、等が挙げられる。
【0084】
また、π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物である、ピリジン環を有する有機化合物、ジアジン環を有する有機化合物(ピリミジン環を有する有機化合物、ピラジン環を有する有機化合物、ピリダジン環を有する有機化合物を含む)、トリアジン環を有する有機化合物、フロジアジン環を有する有機化合物の具体例として、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)、9-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9′-フェニル-3,3′-ビ-9H-カルバゾール(略称:PCCzPTzn)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)、9,9’-[ピリミジン-4,6-ジイルビス(ビフェニル-3,3’-ジイル)]ビス(9H-カルバゾール)(略称:4,6mCzBP2Pm)、2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mFBPTzn)、8-(ビフェニル-4-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8BP-4mDBtPBfpm)、9-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mDBtBPNfpr)、9-[(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-4-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9pmDBtBPNfpr)、11-[(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:11mDBtBPPnfpr)、11-[(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-4-イル]フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン、11-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン、12-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:12PCCzPnfpr)、9-[(3’-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ビフェニル-4-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9pmPCBPNfpr)、9-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9PCCzNfpr)、10-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:10PCCzNfpr)、9-[3’-(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mBnfBPNfpr)、9-{3-[6-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)ジベンゾチオフェン-4-イル]フェニル}ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mFDBtPNfpr)、9-[3’-(6-フェニルジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mDBtBPNfpr-02)、9-[3-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mPCCzPNfpr)、9-{(3’-[2,8-ジフェニルジベンゾチオフェン-4-イル]ビフェニル-3-イル}ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン、11-{(3’-[2,8-ジフェニルジベンゾチオフェン-4-イル]ビフェニル-3-イル}フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン、5-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-7,7-ジメチル-5H,7H-インデノ[2,1-b]カルバゾール(略称:mINc(II)PTzn)、2-[3’-(トリフェニレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mTpBPTzn)、2-(ビフェニル-4-イル)-4-フェニル-6-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:BP-SFTzn)、2,6-ビス(4-ナフタレン-1-イルフェニル)-4-[4-(3-ピリジル)フェニル]ピリミジン(略称:2,4NP-6PyPPm)、3-[9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾフラニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCDBfTzn)、2-(ビフェニル-3-イル)-4-フェニル-6-{8-[(1,1’:4’,1’’-ターフェニル)-4-イル]-1-ジベンゾフラニル}-1,3,5-トリアジン(略称:mBP-TPDBfTzn)、6-(ビフェニル-3-イル)-4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニルピリミジン(略称:6mBP-4Cz2PPm)、4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニル-6-(ビフェニル-4-イル)ピリミジン(略称:6BP-4Cz2PPm)などが挙げられる。
【0085】
また、カルバゾール環と、π電子不足型複素芳香環と、を有する有機化合物の具体例として、9-フェニル-9’-(4-フェニル-2-キナゾリニル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PCCzQz)、2mpPCBPDBq、mINc(II)PTzn、11-[4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル]-11,12-ジヒドロ-12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール(略称:BP-Icz(II)Tzn)、7-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)キナゾリン-2-イル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:PC-cgDBCzQz)、9,9’-{6-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}ビス(9H-カルバゾール)(略称:SiTrzCz2)などが挙げられる。
【0086】
上述した中でも、カルバゾール環、トリアジン環、ピリミジン環、ピラジン環およびピリジン環のいずれか一を有する有機化合物は、化学的に安定であるため、第1の物質として適用するのにより好ましい。また、トリアジン環、ピリミジン環、ピラジン環およびピリジン環のいずれか一を有する有機化合物は、LUMO準位が低く、相対的にHOMO準位も低い特徴がある。よって、発光物質のLUMO準位と第1の物質のHOMO準位との間のエネルギーギャップを広く維持することができ、第1の物質と発光物質との間での望ましくないエキサイプレックスの形成を抑制することができるため好ましい。
【0087】
なお、発光層113は、第1の物質および発光物質に加え、第2の物質を有していてもよい。すなわち、発光層113は、第1の物質と、第2の物質と、発光物質と、を有していてもよい。
【0088】
なお、第1の物質のT準位および第2の物質のT準位が、発光物質のT準位よりも低いと、第1の物質および第2の物質の三重項励起エネルギーを発光物質に移動させにくく、消光してしまう可能性がある。従って、第1の物質のT準位および第2の物質のT準位は、それぞれ発光物質のT準位よりも高いと好ましい。これによって、第1の物質および第2の物質の励起エネルギーを効率よく発光物質に移動させ、発光物質を発光させることができる。
【0089】
なお、第1の物質および第2の物質の一方として、正孔輸送性の高い物質を用い、他方として、電子輸送性の高い物質を用いると好ましく、例えば、第1の物質として、正孔輸送性の高い物質を用い、第2の物質として、電子輸送性の高い物質を用いることが好ましい。この比率を適宜調節することによって、キャリアバランスが良好な発光デバイスを得ることができ、発光効率のロールオフを抑制し、低駆動電圧、高効率、長寿命な発光デバイスを得ることができる。また、このとき、第1の物質と第2の物質との間で、励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)を形成することができる。励起錯体は、S準位とT準位との差が極めて小さく、わずかな熱エネルギーによってTからSへの項間交差が可能なTADF材料としての機能を有する。
【0090】
励起錯体の形成は、例えば第1の物質の発光スペクトル、第2の物質の発光スペクトル、及びこれら材料を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各材料の発光スペクトルよりも長波長シフトする(又は長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。又は、第1の物質の過渡フォトルミネッセンス(PhotoLuminescence:PL)、第2の物質の過渡PL、及びこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、又は遅延成分の割合が大きくなる等の過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(ElectroLuminescence:EL)と読み替えても構わない。すなわち、第1の物質の過渡EL、第2の物質の過渡EL、及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0091】
エキサイプレックスのS準位は、発光物質のS準位よりも高いとより好ましい。このように設定することで、エキサイプレックスからNEST材料への励起エネルギーの移動を効率よく行うことができ、高効率な発光デバイスを得ることができる。
【0092】
なお、通常、エキサイプレックスのT準位は観測ができない。ただし、上記したように、第1の物質のT準位および第2の物質のT準位が、それぞれ発光物質のT準位よりも高い場合には、第1の物質のT準位および第2の物質のT準位が、エキサイプレックスのT準位と同等か、上回る可能性があり、そのような場合に限り、エキサイプレックスのT準位を燐光スペクトルとして観測できる可能性がある。エキサイプレックスのT準位は、発光物質のT準位よりも高くてもよく、低くても良い。なぜなら、エキサイプレックスのTエネルギーを、項間交差によりS準位を経由して、発光物質のS準位へ移動することが可能と考えられるためである。
【0093】
また、第1の物質と第2の物質との間で励起錯体を形成する場合、発光層113中の割合としては、発光物質は15重量%以下であることが好ましい。これによって、濃度消光が抑制できる。
【0094】
また、同じ場合、第1の物質の発光寿命、第2の物質の発光寿命、および第1の物質と第2の物質との間で形成するエキサイプレックスの発光の発光寿命は、発光物質の発光寿命よりも長い方が、励起エネルギーの移動効率が良好となり、好ましい。
【0095】
このように、励起錯体をホストとして用いた発光デバイスにおいては、励起状態をより低いエネルギーで形成可能となるため、低駆動電圧、高効率、長寿命な発光デバイスを得ることができる。
【0096】
より具体的には、第1の物質として、カルバゾール環または芳香族アミン骨格のいずれか一を有する有機化合物を用いることができる。カルバゾール環または芳香族アミン骨格のいずれか一を有する有機化合物としては、上述の具体例を用いることができる。
【0097】
また、第2の物質として、π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物を用いることができる。π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物としては、上述の具体例を用いることができる。
【0098】
励起錯体の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル)と発光物質の吸収スペクトル(一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きいことが好ましい。より具体的には、励起錯体の発光スペクトルと、発光物質の最も長波長に現れる吸収帯との重なりが大きいことが、より好ましい。さらに、発光物質のモル吸光係数も高い方が好ましい。具体的には、発光物質の最も長波長に位置する吸収帯の最大ピーク波長におけるモル吸光係数が500M-1・cm-1以上、より好ましくは1000M-1・cm-1以上であると好ましい。その結果、励起錯体から発光物質への励起エネルギーの移動が効率よく行われ、高効率な発光デバイスを得ることができる。
【0099】
なお、励起錯体の発光スペクトルの最大ピーク波長のエネルギーと、発光物質の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーと、の差が0.20eV以下であると好ましい。例えば、励起錯体の発光スペクトルの最大ピーク波長のエネルギーと、発光物質の吸収スペクトルの吸収端の波長のエネルギーと、の差は青の発光領域の場合は40nm以下、より好ましくは20nm以下であると好ましく、緑の発光領域の場合は50nm以下、より好ましくは25nm以下であると好ましく、赤の発光領域の場合は70nm以下、より好ましくは35nm以下であると好ましく、1000nm程度の近赤外の発光領域の場合は150nm以下、より好ましくは75nm以下であると好ましい。このような構成とすることによって、励起錯体のS準位およびT準位が、発光物質のS準位およびT準位と近接するため、励起錯体から発光物質へのエネルギー移動におけるエネルギーロスを抑制することができる。
【0100】
なお吸収スペクトルの吸収端は、長波長側のオンセット(曲線の最大勾配の点(変曲点)における接線と基線の延長線との交点)から求めることができる。
【0101】
また、励起錯体の発光スペクトルの最大ピーク波長のエネルギーと、発光物質の吸収スペクトルの最も長波長に位置する吸収帯の最大ピーク波長のエネルギーとの、差が0.20eV以下であると好ましい。例えば、励起錯体の発光スペクトルの最大ピーク波長のエネルギーと、発光物質の吸収スペクトルの最も長波長に位置する吸収帯の最大ピーク波長のエネルギーとの、差は青の発光領域の場合は40nm以下、より好ましくは20nm以下であると好ましく、緑の発光領域の場合は50nm以下、より好ましくは25nm以下であると好ましく、赤の発光領域の場合は70nm以下、より好ましくは35nm以下であると好ましく、1000nm程度の近赤外の発光領域の場合は150nm以下、より好ましくは75nm以下であると好ましい。このような構成とすることによっても、励起錯体のS準位およびT準位が、発光物質のS準位およびT準位と近接するため、励起錯体から発光物質へのエネルギー移動におけるエネルギーロスを抑制することができる。
【0102】
〈発光物質の具体例〉
発光物質としては上記したようにNEST材料を用いることが好ましい。具体例としては、アザフェナレン環を有する有機化合物が挙げられる。アザフェナレン環は、剛直な骨格を有し、アザフェナレン環を有する有機化合物を発光物質として用いることにより、比較的シャープな発光スペクトルを得ることができる。
【0103】
アザフェナレン環の具体例としては、pyrido[2,1,6-de]quinolizineなどのピリドキノリジン環、pyrimido[2,1,6-de]quinolizineなどのピリミドキノリジン環、1,4,9b-triazaphenalene、1,6,9b-triazaphenalene、1,9,9b-triazaphenaleneなどのトリアザフェナレン環、1,3,6,9b-tetraazaphenalene、1,4,7,9b-tetraazaphenaleneなどのテトラアザフェナレン環、1,3,4,6,9b-pentaazaphenaleneなどのペンタアザフェナレン環、1,3,4,6,7,9b-hexaazaphenalene、1,3,4,6,8,9b-hexaazaphenaleneなどのヘキサアザフフェナレン環、および1,3,4,6,7,9,9b-ヘプタアザフェナレン環などのヘプタアザフェナレン環が挙げられる。つまり、少なくともフェナレン環の9b位を窒素に置換した構造を有する環であると、S準位とT準位が近接するため、好ましい。各アザフェナレン環を表す構造式(az-1)乃至(az-11)を以下に示す。
【0104】
【化4】
【0105】
上記したアザフェナレン環の中でも、フェナレン環の9b位、並びに、1位、3位、4位、6位、7位および9位のいずれか3か所以上(計4か所以上)に窒素原子を導入した構造を有する環は、化学的に安定となりやすい。よって、発光物質としては、構造式(az-6)乃至(az-9)および(az-11)で表されるアザフェナレン環を用いるのがより好ましい。また、π結合上の窒素原子が多い方が波長の短い発光となりやすい。特に構造式(az-11)で示した1,3,4,6,7,9,9b-ヘプタアザフェナレン環は、青色発光を示すため、青色発光物質に好適である。ただし、この場合1,3,4,6,7,9,9b-ヘプタアザフェナレン環は他の芳香環と縮合しないほうが好ましい。構造式(az-7)で示した1,4,7,9b-テトラアザフェナレン環は、赤色発光物質に好適である。ただし、この場合1,4,7,9b-テトラアザフェナレン環は他の芳香環と縮合しないほうが好ましい。構造式(az-1)で示したpyrido[2,1,6-de]quinolizine環は、近赤外発光物質に好適である。ただし、この場合、pyrido[2,1,6-de]quinolizine環は他の芳香環と縮合しないほうが好ましい。なお、これらアザフェナレン環に、置換基を導入することで、分子構造全体の対称性を崩し、HOMOとLUMOとが一部で重なり合う設計とすると、発光効率が高くなり、好ましい。
【0106】
なお、上記アザフェナレン環に、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、炭素数1乃至10のハロアルコキシ基および炭素数1乃至10のエステル基のいずれか一または複数を結合させた分子設計とするとより好ましい。この様に、共役(π結合)を持たない置換基を導入することで、この置換基上でHOMOとLUMOとが大きく重なることを抑制でき、分子間相互作用を抑制しつつ、S準位とT準位の差の絶対値、すなわち|ΔEST|を小さく保つことができる。
【0107】
また、上記アザフェナレン環に置換または無置換の炭素数6乃至30のアリール基を結合させた分子設計とするとより好ましい。この様に、共役(π結合)を持つ置換基を導入することで、化合物全体を化学的に安定化させることができる。
【0108】
なお、これらの置換基は、アザフェナレン環よりもT準位の高い置換基から選ぶと、アザフェナレン環上でキャリアの再結合が起き、好ましい。
【0109】
そこで、発光物質の具体例として、一般式(G1)で表される有機化合物が挙げられる。
【0110】
【化5】
【0111】
一般式(G1)中、A乃至Aは各々独立に、炭素または窒素を表し、炭素の場合、それぞれ独立に水素(重水素を含む)、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数6乃至10のシクロアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、炭素数1乃至10のハロアルコキシ基、および置換または無置換の炭素数6乃至13のアリール基のいずれか一と結合する。
【0112】
また、一般式(G1)中、R乃至Rは各々独立に、水素(重水素を含む)、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、炭素数1乃至10のハロアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリールオキシ基、炭素数2乃至11のアシルオキシ基、炭素数2乃至11のアルコキシカルボニル基、炭素数2乃至11のハロアルコキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数7乃至14のアリールオキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリール基、および置換または無置換のアザフェナレニル基のいずれか一を表す。なお、一般式(G1)中、水素は重水素でも良い。
【0113】
なお、上述のとおり、アザフェナレン環の中でも、1,3,4,6,7,9,9b-ヘプタアザフェナレン環は、化学的な安定性に優れる。そのため、一般式(G1)において、A乃至Aが窒素であると、より好ましい。これによって、有機化合物の安定性を向上させることができる。
【0114】
そこで、発光物質の別の具体例として、一般式(G2)で表される有機化合物が挙げられる。
【0115】
【化6】
【0116】
一般式(G2)中、R乃至Rは各々独立に、水素(重水素を含む)、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、炭素数1乃至10のハロアルコキシ基、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリールオキシ基、炭素数2乃至11のアシルオキシ基、炭素数2乃至11のアルコキシカルボニル基、炭素数2乃至11のハロアルコキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数7乃至14のアリールオキシカルボニル基、置換または無置換の炭素数6乃至13のアリール基、および置換または無置換のアザフェナレニル基のいずれか一を表す。なお、一般式(G2)中、水素は重水素でも良い。
【0117】
また、一般式(G2)において、R乃至Rのいずれか一は、アルキル基またはハロアルキル基であり、他は、置換または無置換のフェニル基であるとより好ましい。これによって、より発光効率の高いNEST材料が期待できる。
【0118】
そこで、発光物質の別の具体例として、一般式(G3)で表される有機化合物が挙げられる。
【0119】
【化7】
【0120】
一般式(G3)中、R10は、炭素数1乃至10のアルキル基または炭素数1乃至10のハロアルキル基を表し、R11乃至R20は各々独立に、水素(重水素を含む)、ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基および炭素数1乃至10のハロアルコキシ基のいずれか一を表す。なお、一般式(G3)中、水素は重水素でも良い。
【0121】
一般式(G3)で表される有機化合物の様に、アザフェナレン環に対して複数の異なる置換基を導入することで、分子構造全体の構造の対称性を崩し、HOMOとLUMOとが一部で重なり合う設計とすると、発光効率が高くなり、好ましい。
【0122】
次に、上述の発光物質の具体例において適用することのできる置換基(ハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、炭素数1乃至10のハロアルコキシ基、炭素数6乃至30のアリール基、炭素数1乃至10のアシルオキシ基、炭素数1乃至10のアルコキシカルボニル基、炭素数1乃至10のハロアルコキシカルボニル基および炭素数1乃至10のアリールオキシカルボニル基、アザフェナレニル基)それぞれの具体例について説明する。なお、以下に説明する置換基の具体例において、一部またはすべての水素が重水素であってもよい。また、発光物質において適用することのできる置換基は、以下に説明する置換基の具体例に限定されない。
【0123】
ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。特にフッ素は、化学的に安定なため、より好ましい。
【0124】
炭素数1乃至10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0125】
炭素数6乃至10のシクロアルキル基の具体例としては、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。
【0126】
炭素数1乃至10のハロアルキル基の具体例としては、上述の炭素数1乃至10のアルキル基の有する水素の一または複数を上述のハロゲンに置換した基が挙げられる。さらに具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ジフルオロクロロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、ブロモメチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0127】
炭素数1乃至10のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、オクチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を挙げることができる。
【0128】
炭素数1乃至10のハロアルコキシ基の具体例としては、上述の炭素数1乃至10のアルコキシ基の有する水素の一または複数を上述のハロゲンに置換した基が挙げられる。さらに具体的には、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、ジフルオロクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、ブロモメトキシ基、1,1-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、3,3,3-トリフルオロプロポキシ基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ基、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシ基等が挙げられる。
【0129】
炭素数6乃至13のアリール基の具体例としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、メシチル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、9-フルオレニル基等が挙げられる。なお、炭素数6乃至13のアリール基が置換基を有する場合、当該置換基の具体例としては、上述のハロゲン、炭素数1乃至10のアルキル基、炭素数1乃至10のハロアルキル基、炭素数1乃至10のアルコキシ基、炭素数1乃至10のハロアルコキシ基等が挙げられる。
【0130】
炭素数6乃至13のアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、o-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、p-トリルオキシ基、メシチルオキシ基、o-ビフェニルオキシ基、m-ビフェニルオキシ基、p-ビフェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、2-フルオレニルオキシ基等が挙げられる。
【0131】
炭素数2乃至14のアシルオキシ基の具体例としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0132】
炭素数2乃至11のアルコキシカルボニル基の具体例としては、カルボニル基の一方に、上述の1乃至10のアルコキシ基が結合した基を挙げることができる。さらに具体例には、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0133】
炭素数2乃至11のハロアルコキシカルボニル基の具体例としては、カルボニル基の一方に、上述の1乃至10のハロアルコキシ基が結合した基を挙げることができる。さらに具体例には、フルオロメトキシカルボニル基、ジフルオロメトキシカルボニル基、ジフルオロクロロメトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、クロロメトキシカルボニル基、ジクロロメトキシカルボニル基、ブロモメトキシカルボニル基、1,1-ジフルオロエトキシカルボニル基、2,2,2-トリフルオロエトキシカルボニル基、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシカルボニル基、ペンタフルオロエトキシカルボニル基、3,3,3-トリフルオロプロポキシカルボニル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシカルボニル基、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロポキシカルボニル基等が挙げられる。
【0134】
炭素数7乃至14のアリールオキシカルボニル基の具体例としては、カルボニル基の一方に、上述の炭素数6乃至13のアリールオキシ基が結合した基を挙げることができる。さらに具体例には、フェノキシカルボニル基、o-トリルオキシカルボニル基、m-トリルオキシカルボニル基、p-トリルオキシカルボニル基、メシチルオキシカルボニル基、o-ビフェニルオキシカルボニル基、m-ビフェニルオキシカルボニル基、p-ビフェニルオキシカルボニル基、1-ナフチルオキシカルボニル基、2-ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0135】
アザフェナレニル基の具体例としては、上述のアザフェナレン環を有する置換基が挙げられる。より具体的には、1,3,4,6,7,9,9b-ヘプタアザフェナレン環を有する基が化学的に安定なため、より好ましい。この時、置換又は無置換のフェニレン基などの置換基を介して、アザフェナレン環が結合する基を含む。また、アザフェナレニル基として、主骨格のアザフェナレン環と同じ構造のアザフェナレン環を有する置換基を用いると、合成コストが低くなり、好ましい。
【0136】
上述の発光物質として、さらに具体的には、下記構造式(az-1)、(az-11)、(100)乃至(108)で表される有機化合物を例として挙げることができる。
【0137】
【化8】
【0138】
上記構造式(az-1)、(az-11)、(100)乃至(108)で表される有機化合物は、発光物質として用いることのできる有機化合物の一例であるが、本発明の一態様は、これに限られない。
【0139】
上述した具体例の中で、NEST材料としての性質を有する有機化合物を選択して用いると好ましい。具体的には、第1の温度は、第2の温度より低く、第1の温度および第2の温度は、それぞれ10K以上300K以下であるとき、NEST材料の遅延蛍光の、第1の温度における発光寿命は、第2の温度における発光寿命より短い有機化合物が、NEST材料であるといえ、好ましく用いることができる。なお、上述した具体例の中で、構造式(105)で表される有機化合物は、NEST材料としての性質を有するため、より好ましい。
【0140】
以上が、発光デバイス100の有する発光層についての説明である。上述のように、励起錯体を形成することのできる第1の物質と第2の物質とを用いることにより、低駆動電圧、高効率、長寿命、発光効率のロールオフが発生しにくい発光デバイスを形成することができる。
【0141】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0142】
(実施の形態2)
本実施の形態では、先の実施の形態で示した発光デバイスの発光層以外の層の構成について、図2(A)乃至図2(E)を用いて説明する。
【0143】
≪発光デバイスの基本的な構造≫
発光デバイスの基本的な構造について説明する。図2(A)には、先の実施の形態で説明したとおり、一対の電極間に発光層を含むEL層103を有する発光デバイスを示す。
【0144】
図2(B)には、一対の電極間に複数(図2(B)では、2層)のEL層(103a、103b)を設け、複数のEL層の間に電荷発生層106を設けることにより、複数のEL層が一対の電極間に積層された構造(タンデム構造ともいう)を有する発光デバイスを示す。タンデム構造の発光デバイスは、電流量を変えることなく高効率な発光装置を実現することができる。
【0145】
電荷発生層106は、第1の電極101と第2の電極102の間に電位差を生じさせたときに、一方のEL層(103aまたは103b)に電子を注入し、他方のEL層(103bまたは103a)に正孔を注入する機能を有する。従って、図2(B)において、第1の電極101に、第2の電極102よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層106からEL層103aに電子が注入され、EL層103bに正孔が注入されることとなる。
【0146】
なお、電荷発生層106は、光の取り出し効率の点から、可視光に対して透光性を有する(具体的には、電荷発生層106に対する可視光の透過率が、40%以上)ことが好ましい。また、電荷発生層106は、第1の電極101および第2の電極102よりも低い導電率であっても機能する。
【0147】
また、図2(C)には、発光デバイスにおけるEL層103の積層構造を示す。但し、この場合、第1の電極101は陽極として、第2の電極102は陰極として機能するものとする。EL層103は、第1の電極101上に、正孔(ホール)注入層111、正孔(ホール)輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115が順次積層された構造を有する。なお、第1の電極101を陰極として、第2の電極102を陽極としてもよい。その場合は、EL層103の積層順を逆とするのが好ましく、具体的には、陰極である第1の電極101上の層111が電子注入層、112が電子輸送層、113が発光層、114が正孔(ホール)輸送層、115が正孔(ホール)注入層、という構成とするのが好ましい。
【0148】
発光層113は、発光物質、および複数の物質を適宜組み合わせて有しており、所望の発光色を呈する蛍光発光、または燐光発光が得られる構成とすることができる。本発明の一態様の発光デバイスの有する発光層に、先の実施の形態で示した発光層の構成を用いることが好ましい。
【0149】
なお、図2(C)に示す発光デバイスにおいて、正孔注入層111は、発光層113と、第1の電極との間に位置する。正孔注入層111には、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物および電子吸引基を有する有機化合物を有する有機無機複合材料を用いると好ましい。これによって、発光デバイスの駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0150】
なお、図2(C)に示す発光デバイスにおいて、正孔輸送層112は、発光層113の第1の電極101側の面で、発光層113と接する。正孔輸送層112には、後述する正孔輸送性物質を用いることが好ましいが、特に、カルバゾール環および芳香族アミン骨格のいずれか一を有する物質を用いると好ましい。これによって、発光デバイスの発光効率を向上させることができる。
【0151】
また、図2(C)に示す発光デバイスにおいて、電子輸送層114は、発光層113の第2の電極102側の面で発光層113と接する。電子輸送層114には、後述する電子輸送性の物質を用いることが好ましいが、特に、π電子不足型複素芳香環を有する物質を用いることが好ましい。これによって、発光デバイスの発光効率を向上させることができる。
【0152】
なお、発光層113は、発光色の異なる発光層を複数積層した構成であっても良い。発光層を複数有する場合には、各発光層に異なる発光物質を用いることにより異なる発光色を呈する構成(例えば、補色の関係にある発光色を組み合わせて得られる白色発光)とすることができる。例えば、赤色を発光する発光物質を含む発光層と、緑色を発光する発光物質を含む発光層と、青色を発光する発光物質を含む発光層とが積層、またはキャリア輸送性材料を有する層を介して積層された構造であっても良い。または、黄色を発光する発光物質を含む発光層と、青色を発光する発光物質を含む発光層との組み合わせであっても良い。なお、この場合、積層された各発光層に用いる発光物質およびその他の物質は、それぞれ異なる組み合わせとすればよい。また、図2(B)に示す複数のEL層(103a、103b)から、それぞれ異なる発光色が得られる構成としても良い。この場合も各発光層に用いる発光物質およびその他の物質を異なる組み合わせとすればよい。
【0153】
ただし、発光層113の積層構造は上記に限定されない。例えば、発光層113は、発光色の同じ発光層を複数積層した構成であっても良い。例えば、青色を発光する発光物質を含む第1の発光層と、青色を発光する発光物質を含む第2の発光層とが積層、またはキャリア輸送性材料を有する層を介して積層された構造であっても良い。また、図2(B)に示す複数のEL層(103a、103b)から、同じ発光色が得られる構成としても良い。発光色の同じ発光層を複数積層した構成の場合、単層の構成よりも信頼性を高めることができる場合がある。
【0154】
発光層113が、複数の発光層を積層した構成である場合、少なくとも、複数の発光層のうちの一に、先の実施の形態で示した発光層の構成を用いることが好ましい。
【0155】
また、発光デバイスにおいて、例えば、図2(C)に示す第1の電極101を反射電極とし、第2の電極102を半透過・半反射電極とし、微小光共振器(マイクロキャビティ)構造とすることにより、EL層103に含まれる発光層113から得られる発光を両電極間で共振させ、第2の電極102から射出される発光を強めることができる。
【0156】
なお、発光デバイスの第1の電極101が、反射性を有する導電性材料と透光性を有する導電性材料(透明導電膜)との積層構造からなる反射電極である場合、透明導電膜の膜厚を制御することにより光学調整を行うことができる。具体的には、発光層113から得られる光の波長λに対して、第1の電極101と、第2の電極102との電極間の光学距離(膜厚と屈折率の積)がmλ/2(ただし、mは1以上の整数)またはその近傍となるように調整することが好ましい。
【0157】
また、発光層113から得られる所望の光(波長:λ)を増幅させるために、第1の電極101から発光層113の所望の光が得られる領域(発光領域)までの光学距離と、第2の電極102から発光層113の所望の光が得られる領域(発光領域)までの光学距離と、をそれぞれ(2m’+1)λ/4(ただし、m’は1以上の整数)またはその近傍となるように調節するのが好ましい。なお、ここでいう発光領域とは、発光層113における正孔(ホール)と電子との再結合領域を示す。
【0158】
このような光学調整を行うことにより、発光層113から得られる特定の単色光のスペクトルを狭線化させ、色純度の良い発光を得ることができる。
【0159】
但し、上記の場合、第1の電極101と第2の電極102との光学距離は、厳密には第1の電極101における反射領域から第2の電極102における反射領域までの総厚ということができる。しかし、第1の電極101および第2の電極102における反射領域を厳密に決定することは困難であるため、第1の電極101と第2の電極102の任意の位置を反射領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。また、第1の電極101と、所望の光が得られる発光層との光学距離は、厳密には第1の電極101における反射領域と、所望の光が得られる発光層における発光領域との光学距離であるということができる。しかし、第1の電極101における反射領域、および所望の光が得られる発光層における発光領域を厳密に決定することは困難であるため、第1の電極101の任意の位置を反射領域、所望の光が得られる発光層の任意の位置を発光領域と仮定することで充分に上述の効果を得ることができるものとする。
【0160】
図2(D)には、タンデム構造の発光デバイスにおけるEL層(103a、103b)の積層構造を示す。但し、この場合、第1の電極101は陽極として、第2の電極102は陰極として機能するものとする。EL層103aは、第1の電極101上に、正孔(ホール)注入層111a、正孔(ホール)輸送層112a、発光層113a、電子輸送層114a、電子注入層115aが順次積層された構造を有する。EL層103bは、電荷発生層106上に、正孔(ホール)注入層111b、正孔(ホール)輸送層112b、発光層113b、電子輸送層114b、電子注入層115bが順次積層された構造を有する。なお、第1の電極101を陰極として、第2の電極102を陽極としてもよく、その場合は、EL層103の積層順を逆とするのが好ましい。
【0161】
例えば、図2(D)に示す発光デバイスがマイクロキャビティ構造を有する場合は、第1の電極101を反射電極として形成し、第2の電極102を半透過・半反射電極として形成する。従って、所望の電極材料を単数または複数用い、単層または積層して形成することができる。なお、第2の電極102は、EL層103bを形成した後、適宜材料を選択して形成する。
【0162】
図2(D)に示す発光デバイスがマイクロキャビティ構造を有する構成であり、かつ、各EL層(103a、103b)にそれぞれ発光色の異なる発光層を用いた場合、マイクロキャビティ構造によって、いずれかの発光層に由来する所望の波長の光(単色光)を取り出すことができる。このような発光デバイスを発光装置に用い、画素ごとに異なる波長の光を取り出せるようにマイクロキャビティ構造を調節することによって、画素ごとに異なる発光色を得るための塗り分け(例えば、RGB)が不要となる。従って、高精細化を実現することが容易である。また、着色層(カラーフィルタ)との組み合わせも可能である。さらに、特定波長の正面方向の発光強度を強めることが可能となるため、低消費電力化を図ることができる。
【0163】
図2(E)に示す発光デバイスは、図2(B)に示したタンデム構造の発光デバイスの一例であり、図に示すように、3つのEL層(103a、103b、103c)が電荷発生層(106a、106b)を挟んで積層される構造を有する。なお、3つのEL層(103a、103b、103c)は、それぞれに発光層(113a、113b、113c)を有しており、各発光層の発光色は、自由に組み合わせることができる。例えば、発光層113aを青色、発光層113bを赤色、緑色、または黄色のいずれか、発光層113cを青色とすることができるが、発光層113aを赤色、発光層113bを青色、緑色、または黄色のいずれか、発光層113cを赤色とすることもできる。
【0164】
なお、上述した本発明の一態様である発光デバイスにおいて、第1の電極101と第2の電極102の少なくとも一方は、透光性を有する電極(透明電極、半透過・半反射電極など)とする。透光性を有する電極が透明電極の場合、透明電極の可視光の透過率は、40%以上とする。また、半透過・半反射電極の場合、半透過・半反射電極の可視光の反射率は、20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下とする。また、これらの電極は、抵抗率が1×10-2Ωcm以下とするのが好ましい。
【0165】
また、上述した本発明の一態様である発光デバイスにおいて、第1の電極101と第2の電極102の一方が、反射性を有する電極(反射電極)である場合、反射性を有する電極の可視光の反射率は、40%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下とする。また、この電極は、抵抗率が1×10-2Ωcm以下とするのが好ましい。
【0166】
≪発光デバイスの具体的な構造≫
次に、本発明の一態様である発光デバイスの具体的な構造を、各層の構成について説明する。なお、各層の説明においては、簡略化のため符号を省略する場合がある。
【0167】
<第1の電極および第2の電極>
第1の電極および第2の電極を形成する材料としては、上述した両電極の機能が満たせるのであれば、以下に示す材料を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを適宜用いることができる。具体的には、In-Sn酸化物(ITOともいう)、In-Si-Sn酸化物(ITSOともいう)、In-Zn酸化物、In-W-Zn酸化物が挙げられる。その他、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)などの金属、およびこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。その他、上記例示のない元素周期表の第1族または第2族に属する元素(例えば、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr))、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)などの希土類金属およびこれらを適宜組み合わせて含む合金、その他グラフェン等を用いることができる。
【0168】
図2(D)に示す発光デバイスにおいて、第1の電極101が陽極である場合、第1の電極101上にEL層103aの正孔注入層111aおよび正孔輸送層112aが真空蒸着法により順次積層形成される。EL層103aおよび電荷発生層106が形成された後、電荷発生層106上にEL層103bの正孔注入層111bおよび正孔輸送層112bが同様に順次積層形成される。
【0169】
<正孔注入層>
正孔注入層は、陽極である第1の電極および電荷発生層からEL層に正孔(ホール)を注入する層であり、有機アクセプタ材料および正孔注入性の高い材料を含む層である。
【0170】
有機アクセプタ材料は、そのLUMO準位の値とHOMO準位の値が近い他の有機化合物との間で電荷分離させることにより、当該有機化合物に正孔(ホール)を発生させることができる材料である。従って、有機アクセプタ材料としては、キノジメタン誘導体、クロラニル誘導体、およびヘキサアザトリフェニレン誘導体などの電子吸引基(ハロゲン基またはシアノ基)を有する化合物を用いることができる。例えば、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、3,6-ジフルオロ-2,5,7,7,8,8-ヘキサシアノキノジメタン、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を用いることができる。なお、有機アクセプタ材料の中でも特にHAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物は、アクセプタ性が高く、熱に対して膜質が安定であるため好適である。その他にも、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基またはシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などを用いることができる。
【0171】
また、正孔注入性の高い材料としては、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物(モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の遷移金属酸化物等)を用いることができる。具体的には、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムが挙げられる。上記の中でも、酸化モリブデンは大気中で安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。この他、フタロシアニン(略称:HPc)または銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、等を用いることができる。
【0172】
また、上記材料に加えて低分子化合物である、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス[4-ビス(3-メチルフェニル)アミノフェニル]-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物、等を用いることができる。
【0173】
また、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)である、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等を用いることができる。または、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(略称:PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリスチレンスルホン酸(略称:PAni/PSS)等の酸を添加した高分子系化合物、等を用いることもできる。
【0174】
また、正孔注入性の高い材料としては、正孔輸送性材料と、上述した有機アクセプタ材料(電子受容性材料)を含む混合材料を用いることもできる。この場合、有機アクセプタ材料により正孔輸送性材料から電子が引き抜かれて正孔注入層111で正孔が発生し、正孔輸送層112を介して発光層113に正孔が注入される。なお、正孔注入層111は、正孔輸送性材料と有機アクセプタ材料(電子受容性材料)を含む混合材料からなる単層で形成しても良いが、正孔輸送性材料と有機アクセプタ材料(電子受容性材料)とをそれぞれ別の層で積層して形成しても良い。
【0175】
《正孔輸送性材料》
なお、正孔輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における正孔移動度が、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質が好ましい。なお、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。
【0176】
また、正孔輸送性材料としては、π電子過剰型複素芳香環を有する化合物(例えばカルバゾール誘導体(カルバゾール環を有する有機化合物)、フラン誘導体(フラン環を有する有機化合物)、またはチオフェン誘導体(チオフェン環を有する有機化合物))、および芳香族アミン(芳香族アミン骨格を有する有機化合物)等の正孔輸送性の高い材料が好ましい。
【0177】
カルバゾール誘導体(カルバゾール環を有する有機化合物)および芳香族アミン(芳香族アミン骨格を有する有機化合物)の具体例としては、先の実施の形態にあげた有機化合物を挙げることができる。
【0178】
また、フラン誘導体(フラン環を有する有機化合物)としては、具体的には、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)等が挙げられる。
【0179】
また、チオフェン誘導体(チオフェン環を有する有機化合物)としては、具体的には、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などが挙げられる。
【0180】
その他にも、正孔輸送性材料として、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)である、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly-TPD等を用いることができる。または、PEDOT/PSS、PAni/PSS等の酸を添加した高分子系化合物、等を用いることもできる。
【0181】
但し、正孔輸送性材料は、上記に限られることなく公知の様々な材料を1種または複数種組み合わせて正孔輸送性材料として用いてもよい。
【0182】
なお、正孔注入層は、公知の様々な成膜方法を用いて形成することができるが、例えば、真空蒸着法を用いて形成することができる。
【0183】
<正孔輸送層>
正孔輸送層は、正孔注入層によって、第1の電極から注入された正孔を発光層に輸送する層である。なお、正孔輸送層は、正孔輸送性材料を含む層である。従って、正孔輸送層には、正孔注入層に用いることができる正孔輸送性材料を用いることができる。また、正孔輸送層は、単層でも機能するが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、2層の正孔輸送層のうち、発光層に接する層が電子ブロック層としての機能を兼ねていてもよい。
【0184】
なお、本発明の一態様である発光デバイスにおいて、正孔輸送層と同じ有機化合物を発光層に用いることができる。正孔輸送層と発光層に同じ有機化合物を用いると、正孔輸送層から発光層への正孔の輸送が効率よく行えるため、より好ましい。つまりこの正孔輸送層は発光層に接する層であると、駆動電圧が低減でき、好ましい。
【0185】
<電子輸送層>
電子輸送層は、後述する電子注入層によって第2の電極および電荷発生層から注入された電子を発光層に輸送する層である。電子輸送層に用いる材料は、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。また、電子輸送層は、単層でも機能するが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、2層の電子輸送層のうち、発光層に接する層が正孔ブロック層としての機能を兼ねていてもよい。また、電子輸送層が積層構造を有することで耐熱性を向上させることができる場合がある。なお、上記の混合材料は、耐熱性を有するため、これを用いた電子輸送層上でフォトリソ工程を行うことにより、熱工程によるデバイス特性への影響を抑制することができる。
【0186】
なお、本発明の一態様である発光デバイスにおいて、電子輸送層と同じ有機化合物を発光層に用いることができる。電子輸送層と発光層に同じ有機化合物を用いると、電子輸送層から発光層への電子の輸送が効率よく行えるため、より好ましい。つまりこの電子輸送層は発光層に接する層であると、駆動電圧が低減でき、好ましい。
【0187】
≪電子輸送性材料≫
電子輸送層に用いることができる電子輸送性材料としては、電子輸送性の高い有機化合物を用いることができ、例えば複素芳香族化合物を用いることができる。なお、複素芳香族化合物とは、環の中に少なくとも2種類の異なる元素を含む環式化合物である。なお、環構造としては、3員環、4員環、5員環、6員環等が含まれるが、特に5員環、または、6員環が好ましく、含まれる元素としては、炭素の他に窒素、酸素、または硫黄などのいずれか一又は複数を含む複素芳香族化合物が好ましい。特に窒素を含む複素芳香族化合物(含窒素複素芳香族化合物)が好ましく、含窒素複素芳香族化合物、またはこれを含むπ電子不足型複素芳香環を有する有機化合物等の電子輸送性の高い材料(電子輸送性材料)を用いることが好ましい。
【0188】
なお、この電子輸送性材料は、発光層に用いた材料とは異なる材料を用いることもできる。発光層でキャリアの再結合により生成した励起子は全てが発光に寄与できるとは限らず、発光層に接する、あるいは近傍に存在する層に拡散してしまうことがある。この現象を回避するためには、発光層に接する、あるいは近傍に存在する層に用いられる材料のエネルギー準位(最低一重項励起エネルギー準位または最低三重項励起エネルギー準位)が、発光層に用いられる材料よりも高いことが好ましい。従って、電子輸送性材料は、発光層に用いる材料と異なる材料を用いることで、効率の高い素子を得ることができる。
【0189】
複素芳香族化合物は、少なくとも1つの複素芳香環を有する有機化合物である。
【0190】
なお、複素芳香環は、ピリジン環、ジアジン環、トリアジン環、ポリアゾール環、オキサゾール環、またはチアゾール環等のいずれか一を有する。また、ジアジン環を有する複素芳香環には、ピリミジン環、ピラジン環、またはピリダジン環などを有する複素芳香環が含まれる。また、ポリアゾール環を有する複素芳香環には、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環を有する複素芳香環が含まれる。
【0191】
また、複素芳香環は、縮環構造を有する縮合複素芳香環を含む。なお、縮合複素芳香環としては、キノリン環、ベンゾキノリン環、キノキサリン環、ジベンゾキノキサリン環、キナゾリン環、ベンゾキナゾリン環、ジベンゾキナゾリン環、フェナントロリン環、フロジアジン環、ベンゾイミダゾール環、などが挙げられる。
【0192】
なお、例えば、炭素の他に窒素、酸素、または硫黄などのいずれか一又は複数を含む複素芳香族化合物のうち、5員環構造を有する複素芳香族化合物としては、イミダゾール環を有する複素芳香族化合物、トリアゾール環を有する複素芳香族化合物、オキサゾール環を有する複素芳香族化合物、オキサジアゾール環を有する複素芳香族化合物、チアゾール環を有する複素芳香族化合物、ベンゾイミダゾール環を有する複素芳香族化合物などが挙げられる。
【0193】
また、例えば、炭素の他に窒素、酸素、または硫黄などのいずれか一又は複数を含む複素芳香族化合物のうち、6員環構造を有する複素芳香族化合物としては、ピリジン環、ジアジン環(ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環などを含む)、トリアジン環などの複素芳香環を有する複素芳香族化合物などが挙げられる。なお、ピリジン環が連結した構造である複素芳香族化合物に含まれるが、ビピリジン構造を有する複素芳香族化合物、ターピリジン構造を有する複素芳香族化合物などが挙げられる。
【0194】
さらに、上記6員環構造を一部に含む縮環構造を有する複素芳香族化合物としては、キノリン環、ベンゾキノリン環、キノキサリン環、ジベンゾキノキサリン環、フェナントロリン環、フロジアジン環(フロジアジン環のフラン環に芳香環が縮合した構造を含む)、ベンゾイミダゾール環などの縮合複素芳香環を有する複素芳香族化合物、などが挙げられる。
【0195】
上記、5員環構造(ポリアゾール環(イミダゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環を含む)、オキサゾール環、チアゾール環、ベンゾイミダゾール環など)を有する複素芳香族化合物の具体例としては、PBD、OXD-7、CO11、TAZ、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、TPBI、mDBTBIm-II、BzOSなどが挙げられる。
【0196】
上記、6員環構造(ピリジン環、ジアジン環、トリアジン環などを有する複素芳香環を含む)を有する複素芳香族化合物の具体例としては、35DCzPPy、TmPyPBなどのピリジン環を有する複素芳香環を含む複素芳香族化合物、PCCzPTzn、mPCCzPTzn-02、mINc(II)PTzn、mTpBPTzn、BP-SFTzn、2,4NP-6PyPPm、PCDBfTzn、mBP-TPDBfTzn、2-{3-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mDBtBPTzn)、mFBPTznなどのトリアジン環を有する複素芳香環を含む複素芳香族化合物、4,6mPnP2Pm、4,6mDBTP2Pm-II、4,6mCzP2Pm、4,6mCzBP2Pm、6mBP-4Cz2PPm、6BP-4Cz2PPm、8-(ナフタレン-2-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8βN-4mDBtPBfpm)、8BP-4mDBtPBfpm、9mDBtBPNfpr、9pmDBtBPNfpr、3,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ベンゾフロ[2,3-b]ピラジン(略称:3,8mDBtP2Bfpr)、4,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8mDBtP2Bfpm)、8-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8mDBtBPNfpm)、8-[(2,2’-ビナフタレン)-6-イル]-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8(βN2)-4mDBtPBfpm)などのジアジン(ピリミジン)環を有する複素芳香環を含む複素芳香族化合物、などが挙げられる。なお、上記複素芳香環を含む芳香族化合物には、縮合複素芳香環を有する複素芳香族化合物を含む。
【0197】
その他にも、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス(4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン)(略称:2,6(P-Bqn)2Py)、2,2’-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)ビス(4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン)(略称:6,6’(P-Bqn)2BPy)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス{4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-6-フェニルピリミジン}(略称:2,6(NP-PPm)2Py)、6mBP-4Cz2PPmなどのジアジン(ピリミジン)環を有する複素芳香環を含む複素芳香族化合物、2,4,6-トリス[3’-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(略称:TmPPPyTz)、2,4,6-トリス(2-ピリジル)-1,3,5-トリアジン(略称:2Py3Tz)、2-[3-(2,6-ジメチル-3-ピリジル)-5-(9-フェナントリル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mPn-mDMePyPTzn)、などのトリアジン環を有する複素芳香環を含む複素芳香族化合物、等が挙げられる。
【0198】
上記、6員環構造を一部に含む縮環構造を有する複素芳香族化合物(縮環構造を有する複素芳香族化合物)の具体例としては、BPhen、バソキュプロイン(略称:BCP)、NBPhen、mPPhen2P、2,6(P-Bqn)2Py、2mDBTPDBq-II、2mDBTBPDBq-II、2mCzBPDBq、2CzPDBq-III、7mDBTPDBq-II、及び6mDBTPDBq-II、2mpPCBPDBq、などのキノキサリン環を有する複素芳香族化合物、等が挙げられる。
【0199】
電子輸送層には、上記に示す複素芳香族化合物の他にも下記に示す金属錯体を用いることができる。トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、Almq、8-キノリノラト-リチウム(略称:Liq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)等のキノリン環またはベンゾキノリン環を有する金属錯体、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)等のオキサゾール環またはチアゾール環を有する金属錯体等が挙げられる。
【0200】
また、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子化合物を電子輸送性材料として用いることもできる。
【0201】
<電子注入層>
電子注入層は、電子注入性の高い物質を含む層である。また、電子注入層は、第2の電極からの電子の注入効率を高めるための層であり、第2の電極に用いる材料の仕事関数の値と、電子注入層に用いる材料のLUMO準位の値とを比較した際、その差が小さい(0.5eV以下)材料を用いることが好ましい。従って、電子注入層には、リチウム、セシウム、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、Liq、2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPP)、2-(2-ピリジル)-3-ピリジノラトリチウム(略称:LiPPy)、4-フェニル-2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPPP)、リチウム酸化物(LiO)、炭酸セシウム等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物を用いることができる。また、Ybのような希土類金属またはフッ化エルビウム(ErF)のような希土類金属化合物を用いることができる。なお、電子注入層には、上記の材料を複数種混合して形成しても良いし、上記の材料のうち複数種を積層させて形成しても良い。例えば、電子注入層を電気抵抗が異なる層の積層等としても良い。また、電子注入層にエレクトライドを用いてもよい。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。なお、上述した電子輸送層を構成する物質を用いることもできる。
【0202】
また、電子注入層に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる混合材料を用いてもよい。このような混合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送層に用いる電子輸送性材料(金属錯体および複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属および希土類金属が好ましく、Li、Cs、Mg、Ca、エルビウム(Er)、Yb等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。また、これらの材料を複数、積層して用いても良い。
【0203】
その他にも、電子注入層に、有機化合物と金属とを混合してなる混合材料を用いても良い。なお、ここで用いる有機化合物としては、LUMO(最低空軌道:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位が-3.6eV以上-2.3eV以下であると好ましい。また、非共有電子対を有する材料が好ましい。
【0204】
したがって、上記の混合材料に用いる有機化合物としては、電子輸送層に用いることができるとして上述した、複素芳香族化合物を金属と混合してなる混合材料を用いてもよい。複素芳香族化合物としては、5員環構造(イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、ベンゾイミダゾール環など)を有する複素芳香族化合物、6員環構造(ピリジン環、ジアジン環(ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環などを含む)、トリアジン環、ビピリジン環、ターピリジン環など)を有する複素芳香族化合物、6員環構造を一部に含む縮環構造(キノリン環、ベンゾキノリン環、キノキサリン環、ジベンゾキノキサリン環、フェナントロリン環など)を有する複素芳香族化合物などの非共有電子対を有する材料が好ましい。具体的な材料については、上述したので、ここでの説明は省略する。
【0205】
また、上記の混合材料に用いる金属としては、周期表における第5族、第7族、第9族または第11族に属する遷移金属および第13族に属する材料を用いることが好ましく、例えば、Ag、Cu、Al、またはIn等が挙げられる。また、この時、有機化合物は、遷移金属との間で半占有軌道(SOMO)を形成する。
【0206】
なお、例えば、図2(D)に示す発光デバイスにおいて、発光層113bから得られる光を増幅させる場合には、第2の電極102と、発光層113bとの光学距離が、発光層113bが呈する光の波長λの1/4未満となるように形成するのが好ましい。この場合、電子輸送層114bまたは電子注入層115bの膜厚を変えることにより、調整することができる。
【0207】
<電荷発生層>
電荷発生層は、タンデム構造の発光デバイスにおいて第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加したときに、一方のEL層に電子を注入し、他方のEL層に正孔を注入する機能を有する。なお、電荷発生層は、正孔輸送性材料に電子受容体(アクセプタ)が添加された構成(P型層ともいう)であっても、電子輸送性材料に電子供与体(ドナー)が添加された構成(電子注入バッファ層ともいう)であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。さらに、P型層と電子注入バッファ層との間に電子リレー層が設けられていても良い。なお、上述した材料を用いて電荷発生層を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0208】
電荷発生層において、有機化合物である正孔輸送性材料に、電子受容体が添加された構成(P型層)とする場合、正孔輸送性材料としては、本実施の形態で示した材料を用いることができる。また、電子受容体としては、F-TCNQ、クロラニル等を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが挙げられる。なお、上述したアクセプタ材料を用いても良い。また、P型層を構成する材料を混合してなる混合膜として用いても、それぞれの材料を含む単膜を積層しても良い。
【0209】
また、電荷発生層において、電子輸送性材料に電子供与体が添加された構成(電子注入バッファ層)とする場合、電子輸送性材料としては、本実施の形態で示した材料を用いることができる。また、電子供与体としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期表における第2族、第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる。具体的には、Li、Cs、Mg、カルシウム(Ca)、Yb、In、酸化リチウム(LiO)、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0210】
電荷発生層において、P型層と電子注入バッファ層との間に電子リレー層を設ける場合、電子リレー層は少なくとも電子輸送性を有する物質を含み、電子注入バッファ層とP型層との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。電子リレー層に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位は、P型層におけるアクセプタ性物質のLUMO準位と、電荷発生層に接する電子輸送層に含まれる電子輸送性を有する物質のLUMO準位との間であることが好ましい。電子リレー層に用いられる電子輸送性を有する物質におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は-5.0eV以上、好ましくは-5.0eV以上-3.0eV以下とするとよい。なお、電子リレー層に用いられる電子輸送性を有する物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属-酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0211】
<キャップ層>
なお、図2(A)乃至図2(E)では図示しないが、発光デバイスの第2の電極102上にキャップ層を設けてもよい。キャップ層には、例えば、屈折率の高い材料を用いることができる。キャップ層を第2の電極102上に設けることによって、第2の電極102から射出される光の取り出し効率を向上させることができる。
【0212】
キャップ層に用いることのできる材料の具体例として、5,5’-ジフェニル-2,2’-ジ-5H-[1]ベンゾチエノ[3,2-c]カルバゾール(略称:BisBTc)、DBT3P-II等が挙げられる。
【0213】
<基板>
本実施の形態で示した発光デバイスは、様々な基板上に形成することができる。なお、基板の種類は、特定のものに限定されることはない。基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどが挙げられる。
【0214】
なお、ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどが挙げられる。また、可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチック、アクリル樹脂等の合成樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ樹脂、無機蒸着フィルム、又は紙類などが挙げられる。
【0215】
なお、本実施の形態で示す発光デバイスの作製には、蒸着法などの気相法、スピンコート法、およびインクジェット法などの液相法を用いることができる。蒸着法を用いる場合には、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、分子線蒸着法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)等を用いることができる。特に発光デバイスのEL層に含まれる様々な機能を有する層(正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115)については、蒸着法(真空蒸着法等)、塗布法(ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等)、印刷法(インクジェット法、スクリーン(孔版印刷)法、オフセット(平版印刷)法、フレキソ(凸版印刷)法、グラビア法、マイクロコンタクト法等)などの方法により形成することができる。
【0216】
なお、上記塗布法、印刷法などの成膜方法を適用する場合において、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)、中分子化合物(低分子と高分子の中間領域の化合物:分子量400以上4000以下)、無機化合物(量子ドット材料等)等を用いることができる。なお、量子ドット材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料などを用いることができる。
【0217】
本実施の形態で示す発光デバイスのEL層103を構成する各層(正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115)は、本実施の形態において示した材料に限られることはなく、それ以外の材料であっても各層の機能を満たせるものであれば組み合わせて用いることができる。
【0218】
なお、本明細書等において、「層」という用語と「膜」という用語は適宜入れ換えて用いることができる。
【0219】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0220】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置の具体的な構成例、および製造方法の一例について説明するため、受発光装置700について説明する。なお、受発光装置700は、発光デバイスと、受光デバイスとの両方を有する装置であり、受光デバイスを含む発光装置または発光デバイスを含む受光装置と呼称することもできる。また、受発光装置700は、電子機器などの表示部に適用可能であることから、表示パネルまたは表示装置ということもできる。
【0221】
<受発光装置700の構成例>
図3(A)に示す受発光装置700は、第1の基板510上に設けられた機能層520上に形成された、発光デバイス550B、発光デバイス550G、発光デバイス550R、および受光デバイス550PSを有する。機能層520には、複数のトランジスタで構成されたゲートドライバおよびソースドライバなどの駆動回路の他、これらを電気的に接続する配線等が含まれる。これらの駆動回路は、例えば、発光デバイス550B、発光デバイス550G、発光デバイス550R、および受光デバイス550PSと、それぞれ電気的に接続され、これらを駆動することができる。また、受発光装置700は、機能層520および各デバイス(発光デバイスおよび受光デバイス)上に絶縁層705を備え、絶縁層705は、第2の基板770と機能層520とを貼り合わせる機能を有する。
【0222】
発光デバイス550B、発光デバイス550G、および発光デバイス550Rの少なくともいずれか一は、先の実施の形態で示したデバイス構造を有する。また、各発光デバイス間で、EL層103(図2(A)参照)の構成がそれぞれ異なり、例えば、EL層103Bの有する発光層105Bは青色の光、EL層103Gの有する発光層105Gは緑色の光、EL層103Rの有する発光層105Rは赤色の光、をそれぞれ射出することができる。
【0223】
なお、本実施の形態では、各デバイス(複数の発光デバイスおよび受光デバイス)を、分離形成する場合について説明するが、発光デバイスのEL層の一部(ホール注入層、ホール輸送層、および電子輸送層)と受光デバイスの活性層の一部(ホール注入層、ホール輸送層、および電子輸送層)が、製造プロセスにおいて、同じ材料で同時に形成されてもよい。
【0224】
なお、本明細書等において、各色の発光デバイス(例えば青(B)、緑(G)、及び赤(R))の発光層、および受光デバイスの受光層を作り分け、または塗り分ける構造をSBS(Side By Side)構造と呼ぶ場合がある。なお、図3(A)に示す受発光装置700において、発光デバイス550B、発光デバイス550G、発光デバイス550R、および受光デバイス550PSがこの順に並ぶが、本発明の一態様はこの構成に限られない。
【0225】
図3(A)において、発光デバイス550Bは、電極551Bと、電極552と、電極551Bと電極552との間に挟まれたEL層103Bを有する。また、発光デバイス550Gは、電極551Gと、電極552と、電極551Gと電極552との間に挟まれたEL層103Gを有する。また、発光デバイス550Rは、電極551Rと、電極552と、電極551Rと電極552との間に挟まれたEL層103Rを有する。EL層(103B、103G、103R)は、発光層(105B、105G、105R)を含む複数の機能の異なる層からなる積層構造を有する。なお、発光デバイスの各層の具体的な構成は先の実施の形態に示す通りであるが、これに限定されない。
【0226】
また、図3(A)において、受光デバイス550PSは、電極551PSと、電極552と、電極551PSと電極552との間に挟まれた受光層103PSを有する。受光層103PSは、活性層105PSを含む複数の機能の異なる層からなる積層構造を有する。活性層105PSは、半導体を含む。当該半導体としては、シリコンなどの無機半導体、及び、有機化合物を含む有機半導体等が挙げられる。受光デバイスのその他の層の具体的な構成は、発光デバイスの構成と同様にすることができる。
【0227】
図3(A)では、EL層103Bが、ホール注入・輸送層104B、発光層105B、電子輸送層108B、および電子注入層109を有し、EL層103Gが、ホール注入・輸送層104G、発光層105G、電子輸送層108G、および電子注入層109を有し、EL層103Rが、ホール注入・輸送層104R、発光層105R、電子輸送層108R、および電子注入層109を有し、受光層103PSが、ホール注入・輸送層104PS、活性層105PS、電子輸送層108PS、および電子注入層109を有する場合について図示するが、本発明はこれに限らない。
【0228】
なお、図3(A)において、電子注入層109および電極552は、各デバイス(発光デバイス550B、発光デバイス550G、発光デバイス550R、および受光デバイス550PS)間に共通する層(共通層)である。
【0229】
以下、簡略化のため、発光デバイス550B、発光デバイス550G、および発光デバイス550Rをまとめて、発光デバイス550と呼び、電極551B、電極551G、および電極551Rをまとめて、電極551と呼び、EL層103B、EL層103G、およびEL層103Rをまとめて、EL層103と呼び、ホール注入・輸送層104B、ホール注入・輸送層104G、およびホール注入・輸送層104Rをまとめてホール注入・輸送層104と呼び、発光層105B、発光層105G、および発光層105Rをまとめて発光層105と呼び、電子輸送層108B、電子輸送層108G、および電子輸送層108Rをまとめて電子輸送層108と呼ぶ場合がある。
【0230】
図3(A)に示すように、EL層103が有する層のうち、ホール注入・輸送層104、発光層105および電子輸送層108の側面(または、端部)および受光層103PSが有する層のうち、ホール注入・輸送層104PS、活性層105PS、および電子輸送層108PSの側面(または、端部)に絶縁層107が形成されていても良い。絶縁層107は、EL層103および受光層103PSの側面(または端部)に接して形成される。これにより、EL層103および受光層103PSの側面から内部への酸素、水分、またはこれらの構成元素の侵入を抑制することができる。なお、絶縁層107は、隣り合う発光デバイスのEL層103の一部、または受光デバイスの受光層103PSの一部の側面を連続的に覆う構造を有する。例えば、図3(A)において、発光デバイス550BのEL層103Bの一部と、発光デバイス550GのEL層103Gの一部の側面は、連続した絶縁層107により覆われている。
【0231】
また、図3(A)に示すように、各デバイスの間には、それぞれ隔壁528が設けられる。ただし、各デバイスの共通層である電子注入層109および電極552は、隔壁528によって分断されることはなく、連続的に設けられる。そのため、隔壁528は、電子注入層109および絶縁層107に囲まれる領域に設けられるともいえる。また、隔壁528は、絶縁層107を介して、電極551、EL層103の一部(ホール注入・輸送層104、発光層105、および電子輸送層108)、および受光層103PSの一部(ホール注入・輸送層104、活性層105PS、および電子輸送層108)の側面(または端部)に位置する。
【0232】
EL層103および受光層103PSにおいて、特に陽極と発光層、および陽極と活性層、との間に位置する正孔輸送領域に含まれる正孔注入層は、導電率が高いことが多いため、隣り合うデバイス間に共通する層として形成されると、クロストークの原因となる場合がある。したがって、本構成例で示すようにEL層103の一部(ホール注入・輸送層104、発光層105、および電子輸送層108)および受光層103PSの一部(ホール注入・輸送層104、活性層105PS、および電子輸送層108)の間を分離し、その間に絶縁層107および隔壁528を設けることにより、隣り合うデバイス間で生じるクロストークの発生を抑制することが可能となる。
【0233】
また、隔壁528を設けることにより、隣接するデバイス間に形成された凹部を平坦化することも可能である。なお、凹部が平坦化されることでEL層103および受光層103PS上に形成される電子注入層109および電極552の断線を抑制することが可能である。
【0234】
絶縁層107には、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、インジウムガリウム亜鉛酸化物、窒化シリコン、または窒化酸化シリコンなどを用いることができる。また、絶縁層107は、前述の材料を用いて積層して形成されていても良い。また、絶縁層107の形成には、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法、ALD法などを用いることができるが、被覆性の良好なALD法がより好ましい。
【0235】
隔壁528の形成に用いる絶縁材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれら樹脂の前駆体等の有機材料を適用することができる。また、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、プルラン、水溶性のセルロース、またはアルコール可溶性のポリアミド樹脂などの有機材料を用いてもよい。また、フォトレジストなどの感光性の樹脂を用いることができる。なお、感光性の樹脂は、ポジ型の材料、またはネガ型の材料を用いることができる。
【0236】
感光性の樹脂を用いることにより、露光及び現像の工程のみで隔壁528を作製することができる。また、ネガ型の感光性樹脂(例えばレジスト材料など)を用いて隔壁528を形成してもよい。また、隔壁528として、有機材料を有する絶縁層を用いる場合、可視光を吸収する材料を用いると好適である。隔壁528に可視光を吸収する材料を用いると、EL層からの発光を隔壁528により吸収することが可能となり、隣接するEL層および受光層に漏れうる光(迷光)を抑制することができる。したがって、表示品位の高い受発光装置を提供することができる。
【0237】
また、隔壁528の上面の高さと、EL層103および受光層103PSのいずれかの上面の高さとの差は、例えば、隔壁528の厚さの0.5倍以下が好ましく、0.3倍以下がより好ましい。また、例えば、EL層103および受光層103PSのいずれかの上面が隔壁528の上面よりも高くなるように、隔壁528を設けてもよい。また、例えば、隔壁528の上面が、EL層103が有する発光層および受光層103PSが有する活性層の上面よりも高くなるように、隔壁528を設けてもよい。
【0238】
1000ppiを超える高精細な受発光装置において、各デバイス間にクロストーク現象が発生すると、受発光装置の表示可能な色域が狭くなってしまう。1000ppiを超える高精細な受発光装置、好ましくは2000ppiを超える高精細な受発光装置、より好ましくは5000ppiを超える超高精細な受発光装置において、EL層103の一部(ホール注入・輸送層104、発光層105B、および電子輸送層108)および受光層103PSの一部(ホール注入・輸送層104、活性層105PS、および電子輸送層108)の間に、絶縁層107および隔壁528を設けることで、鮮やかな色彩を表示可能な受発光装置を提供できる。
【0239】
また、図3(B)および図3(C)は、図3(A)の断面図中の一点鎖線Ya-Ybに対応する受発光装置700の上面概略図を示す。すなわち、各デバイスは、それぞれマトリクス状に配列している。なお、図3(B)は、X方向に同一の色の発光デバイスまたは受光デバイスが配列する、いわゆるストライプ配列を示している。また、図3(C)は、X方向に同一の色の発光デバイスまたは受光デバイスが配列されるが、画素ごとにパターンが形成された構成を示している。なお、発光デバイスの配列方法はこれに限られず、デルタ配列、ジグザグ配列などの配列方法を適用してもよいし、ペンタイル配列、ダイヤモンド配列等を用いることもできる。
【0240】
なお、EL層103の一部(ホール注入・輸送層104、発光層105、および電子輸送層108)および受光層103PSの一部(ホール注入・輸送層104、活性層105PS、および電子輸送層108)の分離加工において、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成を行っているため、高精細な受発光装置(表示パネル)を作製することができる。なお、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成により加工されたEL層103の各層の端部(側面)および受光層103PSの各層の端部(側面)は、それぞれ概略同一表面を有する(または、概略同一平面上に位置する)形状となる。また、この時、各EL層および受光層間の間隙580の幅(SE)は、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。
【0241】
また、図3(D)は、図3(B)および図3(C)中の一点鎖線C1-C2に対応する断面概略図である。図3(D)には、接続電極551Cと電極552とが電気的に接続する接続部560を示している。接続部560では、接続電極551C上に電極552が接して設けられている。また、接続電極551Cの端部を覆って隔壁528が設けられている。
【0242】
<受発光装置の製造方法の例>
図4(A)に示すように、電極551B、電極551G、電極551R、および電極551PSを形成する。例えば、第1の基板510上に形成された機能層520上に導電膜を形成し、フォトリソグラフィ法を用いて、所定の形状に加工する。
【0243】
なお、導電膜の形成には、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用いて形成することができる。CVD法としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、または熱CVD法などがある。また、熱CVD法のひとつに、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic CVD)法がある。
【0244】
また、導電膜の加工には、上述したフォトリソグラフィ法以外に、ナノインプリント法、サンドブラスト法、リフトオフ法などにより薄膜を加工してもよい。また、メタルマスクなどの遮蔽マスクを用いた成膜方法により、島状の薄膜を直接形成してもよい。
【0245】
フォトリソグラフィ法としては、代表的には以下の2つの方法がある。一つは、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、エッチング等により当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法である。もう一つは、感光性を有する薄膜を成膜した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法である。なお、前者の方法を行う場合、レジスト塗布後の加熱(PAB:Pre Applied Bake)、および露光後の加熱(PEB:Post Exposure Bake)などの熱処理工程がある。本発明の一態様では、導電膜の加工だけでなく、EL層の形成に用いる薄膜(有機化合物からなる膜、または有機化合物を一部に含む膜)の加工にもリソグラフィー法を用いる。
【0246】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、またはこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線、KrFレーザ光、またはArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外(EUV:Extreme Ultra-violet)光またはX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に代えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線または電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビームなどのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0247】
レジストマスクを用いた薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0248】
次に、図4(B)に示すように、電極551B、電極551G、電極551R、および電極551PS上にホール注入・輸送層104B、発光層105B、および電子輸送層108Bを形成する。なお、ホール注入・輸送層104B、発光層105B、および電子輸送層108Bの形成には、例えば、真空蒸着法を用いることができる。さらに、電子輸送層108B上に犠牲層110Bを形成する。ホール注入・輸送層104B、発光層105B、および電子輸送層108Bの形成において、材料としては、例えば、先の実施の形態に示した材料を用いることができる。
【0249】
なお、犠牲層110Bには、ホール注入・輸送層104B、発光層105B、および電子輸送層108Bのエッチング処理に対する耐性の高い膜、すなわちエッチングの選択比の大きい膜を用いることが好ましい。また、犠牲層110Bは、エッチングの選択比の異なる、第1の犠牲層と第2の犠牲層との積層構造であることが好ましい。また、犠牲層110Bは、EL層103Bへのダメージの少ないウェットエッチング法により除去可能な膜を用いることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング材料としては、シュウ酸などを用いることができる。なお、本明細書等において、犠牲層をマスク層と呼称してもよい。
【0250】
犠牲層110Bとしては、例えば、金属膜、合金膜、金属酸化物膜、半導体膜、無機絶縁膜などの無機膜を用いることができる。また、犠牲層110Bは、スパッタリング法、蒸着法、CVD法、ALD法などの各種成膜方法により形成することができる。
【0251】
犠牲層110Bとしては、例えば金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、チタン、アルミニウム、イットリウム、ジルコニウム、及びタンタルなどの金属材料、または該金属材料を含む合金材料を用いることができる。特に、アルミニウムまたは銀などの低融点材料を用いることが好ましい。
【0252】
また、犠牲層110Bとしては、インジウムガリウム亜鉛酸化物(In-Ga-Zn酸化物、IGZOとも表記する)などの金属酸化物を用いることができる。さらに、酸化インジウム、インジウム亜鉛酸化物(In-Zn酸化物)、インジウムスズ酸化物(In-Sn酸化物)、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物)などを用いることができる。またはシリコンを含むインジウムスズ酸化物などを用いることもできる。
【0253】
なお、上記ガリウムに代えて元素M(Mは、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムから選ばれた一種または複数種)を用いた場合にも適用できる。特に、Mは、ガリウム、アルミニウム、またはイットリウムから選ばれた一種または複数種とすることが好ましい。
【0254】
また、犠牲層110Bとしては、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化シリコンなどの無機絶縁材料を用いることができる。
【0255】
また、犠牲層110Bとしては、少なくとも最上部に位置する電子輸送層108Bに対して、化学的に安定な溶媒に溶解しうる材料を用いることが好ましい。特に、水またはアルコールに溶解する材料を、犠牲層110Bに好適に用いることができる。犠牲層110Bを成膜する際には、水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態で、湿式の成膜方法で塗布した後に、溶媒を蒸発させるための加熱処理を行うことが好ましい。このとき、減圧雰囲気下での加熱処理を行うことで、低温且つ短時間で溶媒を除去できるため、ホール注入・輸送層104B、発光層105B、および電子輸送層108Bへの熱的なダメージを低減することができ、好ましい。
【0256】
なお、犠牲層110Bを積層構造にする場合には、上述した材料で形成される層を第1の犠牲層とし、その上に第2の犠牲層を形成して積層構造とすることができる。
【0257】
この場合の第2の犠牲層は、第1の犠牲層をエッチングする際のハードマスクとして用いる膜である。また、第2の犠牲層の加工時には、第1の犠牲層が露出する。したがって、第1の犠牲層と第2の犠牲層とは、互いにエッチングの選択比の大きい膜の組み合わせを選択する。そのため、第1の犠牲層のエッチング条件、及び第2の犠牲層のエッチング条件に応じて、第2の犠牲層に用いることのできる膜を選択することができる。
【0258】
例えば、第2の犠牲層のエッチングに、フッ素を含むガス(フッ素系ガスともいう)を用いたドライエッチングを用いる場合には、シリコン、窒化シリコン、酸化シリコン、タングステン、チタン、モリブデン、タンタル、窒化タンタル、モリブデンとニオブを含む合金、またはモリブデンとタングステンを含む合金などを、第2の犠牲層に用いることができる。ここで、上記フッ素系ガスを用いたドライエッチングに対して、エッチングの選択比を大きくとれる(すなわち、エッチング速度を遅くできる)膜としては、IGZO、ITOなどの金属酸化物膜などがあり、これを第1の犠牲層に用いることができる。
【0259】
なお、これに限られず、第2の犠牲層は、様々な材料の中から、第1の犠牲層のエッチング条件、及び第2の犠牲層のエッチング条件に応じて、選択することができる。例えば、上記第1の犠牲層に用いることのできる膜の中から選択することもできる。
【0260】
また、第2の犠牲層としては、例えば窒化物膜を用いることができる。具体的には、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化ハフニウム、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化ガリウム、窒化ゲルマニウムなどの窒化物を用いることもできる。
【0261】
または、第2の犠牲層として、酸化物膜を用いることができる。代表的には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウムなどの酸化物膜または酸窒化物膜を用いることもできる。
【0262】
次に、図4(C)に示すように、犠牲層110B上にレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法を用いてレジストを所望の形状(レジストマスク:RES)に形成する。なお、このような方法を行う場合、レジスト塗布後の加熱(PAB:Pre Applied Bake)、および露光後の加熱(PEB:Post Exposure Bake)などの熱処理工程がある。例えば、PAB温度は、100℃前後、PEB温度は120℃前後になる。そのため、これらの処理温度に耐えうる発光デバイスであることが必要である。
【0263】
次に、得られたレジストマスクRESを用い、レジストマスクRESに覆われない犠牲層110Bの一部をエッチングにより除去し、レジストマスクRESを除去した後、犠牲層110Bに覆われないホール注入・輸送層104B、発光層105B、および電子輸送層108Bをエッチングにより除去し、電極551B上に側面を有する(または側面が露出する)形状、または紙面と交差する方向に延びる帯状の形状にホール注入・輸送層104B、発光層105B、および電子輸送層108Bを加工する。なお、エッチングには、ドライエッチングが好ましい。犠牲層110Bが上記の第1の犠牲層および第2の犠牲層との積層構造を有する場合には、レジストマスクRESにより第2の犠牲層の一部をエッチングした後、レジストマスクRESを除去し、第2の犠牲層をマスクとして、第1の犠牲層の一部をエッチングし、ホール注入・輸送層104B、発光層105B、および電子輸送層108Bを所定の形状に加工しても良い。これらのエッチング処理により、図5(A)の形状を得る。
【0264】
次に、図5(B)に示すように、犠牲層110B、電極551G、電極551R、および電極551PS上にホール注入・輸送層104G、発光層105G、および電子輸送層108Gを形成する。ホール注入・輸送層104G、発光層105G、および電子輸送層108Gの形成において、材料としては、例えば、先の実施の形態に示した材料を用いることができる。なお、ホール注入・輸送層104G、発光層105G、および電子輸送層108Gの形成には、例えば、真空蒸着法を用いることができる。
【0265】
以後、ホール注入・輸送層104B、発光層105B、電子輸送層108B、および犠牲層110Bの形成と同様にして、電極551G上に、ホール注入・輸送層104G、発光層105G、電子輸送層108G、および犠牲層110Gを形成し、電極551R上に、ホール注入・輸送層104R、発光層105R、電子輸送層108R、および犠牲層110Rを形成し、電極551PS上に、ホール注入・輸送層104PS、活性層105PS、電子輸送層108PS、および犠牲層110PSを形成することで、図5(C)の形状を得る。
【0266】
次に、図6(A)に示すように、犠牲層110B、犠牲層110G、犠牲層110R、および犠牲層110PS上に絶縁層107を形成する。
【0267】
なお、絶縁層107の形成には、例えば、ALD法を用いることができる。この場合、絶縁層107は、図6(A)に示すように各デバイスのホール注入・輸送層(104B、104G、104R、104PS)、発光層(105B、105G、105R)、活性層105PSおよび電子輸送層(108B、108G、108R、108PS)の各側面(各端部)に接して形成される。これにより、各側面から内部への酸素、水分、またはこれらの構成元素の侵入を抑制することができる。
【0268】
次に、図6(B)に示すように、絶縁層107上に樹脂膜528aを形成する。樹脂膜528aとして、例えば、ネガ型の感光性樹脂またはポジ型の感光性樹脂を使用することができる。
【0269】
次に、図6(C)に示すように、樹脂膜528aの一部、絶縁層107の一部、および犠牲層(110B、110G、110R、110PS)を除去することにより、電子輸送層(108B、108G、108R、108PS)の上面を露出させる。
【0270】
次に、図6(D)に示すように、加熱処理を行うことで、樹脂膜528aの上端部を曲面形状とし、隔壁528を形成する。隔壁528の上端部を曲面形状とすることによって、後に形成する電子注入層109の被覆性を良好なものとすることができる。例えば、樹脂膜528aとしてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、隔壁528の上端部に曲率半径(0.2μm~3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。
【0271】
次に、絶縁層107、電子輸送層(108B、108G、108R、108PS)、および隔壁528上に電子注入層109を形成する。電子注入層109の形成において、材料としては、先の実施の形態に示した材料を用いることができる。なお、電子注入層109は、例えば、真空蒸着法を用いて形成する。
【0272】
次に、図7(A)に示すように、電子注入層109上に電極552を形成する。電極552は、例えば、真空蒸着法を用いて形成する。
【0273】
以上の工程により、発光デバイス550B、発光デバイス550G、発光デバイス550R、および受光デバイス550PSにおける、EL層103B、EL層103G、EL層103R、および受光層103PSをそれぞれ分離加工することができる。
【0274】
以上のように、EL層103および受光層103PSの分離加工において、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成を行うことにより、高精細な受発光装置(表示パネル)を作製することができる。また、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成により加工されたEL層および受光層の各層の端部(側面)は、概略同一表面を有する(または、概略同一平面上に位置する)形状となる。また、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成により、隣り合う発光デバイスおよび受光デバイス間で生じるクロストークの発生を抑制することが可能となる。また、フォトリソグラフィ法を用いたパターン形成により加工された隣り合うデバイス間に、それぞれ間隙580を有する。なお、図7(C)において、間隙580を隣り合う発光デバイスのEL層の間の距離SEで表す場合、距離SEが小さいほど開口率を高めること、及び、精細度を高めることができる。一方、距離SEが大きいほど、隣り合う発光デバイスとの作製工程ばらつきの影響を許容できるため、製造歩留まりを高めることができる。本明細書により作製される発光デバイスは微細化プロセスに好適であるため、隣り合う発光デバイスのEL層の間の距離SEは、0.5μm以上5μm以下、好ましくは1μm以上3μm以下、より好ましくは1μm以上2.5μm以下、さらに好ましくは1μm以上2μm以下とすることができる。なお、代表的には、距離SEは1μm以上2μm以下(例えば1.5μmまたはその近傍)であることが好ましい。
【0275】
なお、本明細書等において、メタルマスク、またはFMM(ファインメタルマスク、高精細なメタルマスク)を用いて作製されるデバイスをMM(メタルマスク)構造のデバイスという場合がある。また、本明細書等において、メタルマスク、またはFMMを用いることなく作製されるデバイスをMML(メタルマスクレス)構造のデバイスという場合がある。MML構造の受発光装置は、メタルマスクを用いずに作製するため、FMM構造、またはMM構造の受発光装置よりも画素配置及び画素形状等の設計自由度が高い。
【0276】
なお、MML構造の受発光装置が有する島状のEL層は、メタルマスクのパターンによって形成されるのではなく、EL層を成膜した後に加工することで形成される。したがって、これまでに比べて高精細な受発光装置または高開口率の受発光装置を実現することができる。さらに、EL層を各色で作り分けることができるため、極めて鮮やかでコントラストが高く、表示品位の高い受発光装置を実現できる。また、EL層上に犠牲層を設けることで、作製工程中にEL層が受けるダメージを低減することができるため、発光デバイスの信頼性を高めることができる。
【0277】
なお、図3(A)および図7(A)に示す発光デバイス550においては、EL層103の幅が電極551の幅と概略等しく、受光デバイス550PSにおいては、受光層103PSの幅が電極551PSの幅と概略等しいが、本発明の一態様はこれに限られない。
【0278】
発光デバイス550において、EL層103の幅が電極551の幅より小さくてもよい。また、受光デバイス550PSにおいて、受光層103PSの幅が電極551PSの幅より小さくてもよい。図7(B)には発光デバイス550Bにおいて、EL層103Bの幅が電極551Bの幅より小さい例を示す。
【0279】
また、発光デバイス550において、EL層103の幅が電極551の幅より大きくてもよい。また、受光デバイス550PSにおいて、受光層103PSの幅が電極551PSの幅より大きくてもよい。図7(C)には発光デバイス550Rにおいて、EL層103Rの幅が電極551Rの幅より大きい例を示す。
【0280】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0281】
(実施の形態4)
本実施の形態では、装置720及び受発光装置700について、図8および図9を用いて説明する。なお、図8および図9に示す各装置は、発光デバイスを有することから発光装置であるが、電子機器などの表示部に適用可能であることから表示パネルまたは表示装置ということもできる。また、上記発光デバイスを光源とし、発光デバイスからの光を受光できる受光デバイスを備える構成とする場合には、受発光装置ということもできる。なお、これらの発光装置、表示パネル、表示装置、および受発光装置は、少なくとも発光デバイスを有する構成とする。
【0282】
また、本実施の形態の発光装置、表示パネル、表示装置、および受発光装置は、高解像度または大型の発光装置、表示パネル、表示装置、および受発光装置とすることができる。したがって、本実施の形態の発光装置、表示パネル、表示装置、および受発光装置は、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、スマートフォン、腕時計型端末、タブレット端末、携帯情報端末、および音響再生装置等の表示部に用いることもできる。
【0283】
図8(A)には、装置720の上面図を示す。
【0284】
図8(A)において、装置720は、基板710と基板711とが貼り合わされた構成を有する。また、装置720は、表示領域701、回路704、および配線706等を有する。なお、表示領域701は、複数の画素を有し、図8(A)に示す画素703(i,j)は、図8(B)に示すように、画素703(i+1,j)と隣接する。
【0285】
また、装置720には、図8(A)に示すように、COG(Chip On Glass)方式またはCOF(Chip On Film)方式等により、基板710にIC(集積回路)712が設けられている例を示す。なお、IC712としては、例えば走査線駆動回路または信号線駆動回路などを有するICを適用できる。図8(A)では、信号線駆動回路を有するICをIC712に用い、回路704として、走査線駆動回路を有する構成を示す。
【0286】
配線706は、表示領域701及び回路704に信号及び電力を供給する機能を有する。当該信号及び電力は、FPC(Flexible Printed Circuit)713を介して外部から配線706に入力されるか、またはIC712から配線706に入力される。なお、装置720にICを設けない構成としてもよい。また、ICを、COF方式等により、FPCに実装してもよい。
【0287】
図8(B)に、表示領域701の画素703(i,j)、および画素703(i+1,j)を示す。すなわち、画素703(i,j)は、互いに異なる色を発する発光デバイスを有する副画素を、複数種有する構成とすることができる。または、上記に加え、同じ色を発する発光デバイスを有する副画素を複数含む構成とすることもできる。例えば、画素は、副画素を3種類有する構成とすることができる。当該3つの副画素としては、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色の副画素、黄色(Y)、シアン(C)、及びマゼンタ(M)の3色の副画素などが挙げられる。または、画素は副画素を4種類有する構成とすることができる。当該4つの副画素としては、R、G、B、白色(W)の4色の副画素、R、G、B、Yの4色の副画素などが挙げられる。具体的には、青色を表示する副画素702B(i,j)、緑色を表示する副画素702G(i,j)および赤色を表示する副画素702R(i,j)で構成された画素703(i,j)とすることができる。
【0288】
また、副画素は、発光デバイスだけでなく受光デバイスを有する構成としてもよい。なお、副画素に受光デバイスを有する構成とする場合には、装置720を受発光装置ともいう。
【0289】
図8(C)乃至図8(F)に示す画素703(i,j)は、受光デバイスを有する副画素702PS(i,j)を含む、様々なレイアウトの一例を示す。なお、図8(C)に示す画素の配列は、ストライプ配列であり、図8(D)に示す画素の配列は、マトリクス配列である。また、図8(E)に示す画素の配列は、1つの副画素(副画素B)の隣に、3つの副画素(副画素R、副画素G、副画素PS)が縦に3つ並んだ構成を有する。
【0290】
また、図8(F)に示すように赤外線を射出する副画素702IR(i,j)を上記の一組に加えて、画素703(i,j)としてもよい。図8(F)に示す画素の配列は、縦長の副画素G、副画素B、副画素Rが横に3つ並び、その下側に副画素PSと、横長の副画素IRと、が横に並んだ構成を有する。具体的には、650nm以上1000nm以下の波長を有する光を含む光を射出する副画素702IR(i,j)を、画素703(i,j)に用いてもよい。なお、副画素702PS(i,j)が検出する光の波長は特に限定されないが、副画素702PS(i,j)が有する受光デバイスは、副画素702R(i,j)、副画素702G(i,j)、副画素702B(i,j)、または副画素702IR(i,j)が有する発光デバイスが発する光に感度を有することが好ましい。例えば、青色、紫色、青紫色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色などの波長域の光、及び、赤外の波長域の光のうち、一つまたは複数を検出することが好ましい。
【0291】
なお、副画素の配列は、図8(B)乃至図8(F)に示す構成に限られることはなく、様々な方法を適用することができる。副画素の配列としては、例えば、ストライプ配列、Sストライプ配列、マトリクス配列、デルタ配列、ベイヤー配列、ペンタイル配列などが挙げられる。
【0292】
また、副画素の上面形状としては、例えば、三角形、四角形(長方形、正方形を含む)、五角形などの多角形、これら多角形の角が丸い形状、楕円形、または円形などが挙げられる。ここでいう副画素の上面形状は、発光デバイスの発光領域の上面形状に相当する。
【0293】
画素に、発光デバイスだけでなく受光デバイスを有する構成とする場合には、画素が受光機能を有するため、画像を表示しながら、対象物の接触または近接を検出することができる。例えば、発光装置が有する副画素全てで画像を表示するだけでなく、一部の副画素は、光源としての光を呈し、残りの副画素で画像を表示することもできる。
【0294】
なお、副画素702PS(i,j)の受光面積は、他の副画素の発光面積よりも小さいことが好ましい。受光面積が小さいほど、撮像範囲が狭くなり、撮像結果のボケの抑制、及び、解像度の向上が可能となる。そのため、副画素702PS(i,j)を用いることで、高精細または高解像度の撮像を行うことができる。例えば、副画素702PS(i,j)を用いて、指紋、掌紋、虹彩、脈形状(静脈形状、動脈形状を含む)、または顔などを用いた個人認証のための撮像を行うことができる。
【0295】
また、副画素702PS(i,j)は、タッチセンサ(ダイレクトタッチセンサともいう)またはニアタッチセンサ(ホバーセンサ、ホバータッチセンサ、非接触センサ、タッチレスセンサともいう)などに用いることができる。例えば、副画素702PS(i,j)は、赤外光を検出することが好ましい。これにより、暗い場所でも、タッチ検出が可能となる。
【0296】
ここで、タッチセンサまたはニアタッチセンサは、対象物(指、手、またはペンなど)の近接もしくは接触を検出することができる。タッチセンサは、受発光装置と、対象物とが、直接接することで、対象物を検出できる。また、ニアタッチセンサは、対象物が受発光装置に接触しなくても、当該対象物を検出することができる。例えば、受発光装置と、対象物との間の距離が0.1mm以上300mm以下、好ましくは3mm以上50mm以下の範囲で受発光装置が当該対象物を検出できる構成であると好ましい。当該構成とすることで、受発光装置に対象物が直接触れずに操作することが可能となる、別言すると非接触(タッチレス)で受発光装置を操作することが可能となる。上記構成とすることで、受発光装置に汚れ、または傷がつくリスクを低減することができる、または対象物が受発光装置に付着した汚れ(例えば、ゴミ、細菌、またはウィルスなど)に直接触れずに、受発光装置を操作することが可能となる。
【0297】
なお、副画素702PS(i,j)を高精細な撮像を行うために用いる場合は、副画素702PS(i,j)が、全ての画素に設けられていることが好ましい。一方で、副画素702PS(i,j)をタッチセンサまたはニアタッチセンサなどに用いる場合は、指紋などを撮像する場合と比較して高い精度が求められないため、一部の画素に設けられていればよい。受発光装置が有する副画素702PS(i,j)の数を、副画素702R(i,j)等の数よりも少なくすることで、検出速度を高めることができる。
【0298】
次に、発光デバイスを有する副画素の画素回路に適用できるトランジスタの具体的な構造の一例を図9(A)に示す。なお、トランジスタとしては、ボトムゲート型のトランジスタまたはトップゲート型のトランジスタなどを適宜用いることができる。
【0299】
図9(A)に示すトランジスタは、半導体膜508、導電膜504、絶縁膜506、導電膜512Aおよび導電膜512Bを有する。トランジスタは、例えば、絶縁膜501C上に形成される。また、当該トランジスタは、絶縁膜516(絶縁膜516A及び絶縁膜516B)、及び絶縁膜518を有する。
【0300】
半導体膜508は、導電膜512Aと電気的に接続される領域508A、導電膜512Bと電気的に接続される領域508Bを有する。半導体膜508は、領域508Aおよび領域508Bの間に領域508Cを有する。
【0301】
導電膜504は領域508Cと重なる領域を備え、導電膜504はゲート電極の機能を有する。
【0302】
絶縁膜506は、半導体膜508および導電膜504の間に挟まれる領域を有する。絶縁膜506は第1のゲート絶縁膜の機能を有する。
【0303】
導電膜512Aはソース電極の機能またはドレイン電極の機能の一方を備え、導電膜512Bはソース電極の機能またはドレイン電極の機能の他方を有する。
【0304】
また、導電膜524をトランジスタに用いることができる。導電膜524は、導電膜504との間に半導体膜508を挟む領域を有する。導電膜524は、第2のゲート電極の機能を有する。絶縁膜501Dは半導体膜508および導電膜524の間に挟まれ、第2のゲート絶縁膜の機能を有する。
【0305】
絶縁膜516は、例えば、半導体膜508を覆う保護膜として機能する。絶縁膜516としては、例えば、具体的には、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜または酸化ネオジム膜を含む膜を用いることができる。
【0306】
絶縁膜518は、例えば、酸素、水素、水、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の拡散を抑制する機能を備える材料を適用することが好ましい。具体的には、絶縁膜518としては、例えば、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等を用いることができる。また、酸化窒化シリコン、及び酸化窒化アルミニウムのそれぞれに含まれる酸素の原子数と窒素の原子数は、窒素の原子数のほうが多いことが好ましい。
【0307】
なお、画素回路のトランジスタに用いる半導体膜を形成する工程において、駆動回路のトランジスタに用いる半導体膜を形成することができる。例えば、画素回路のトランジスタに用いる半導体膜と同じ組成の半導体膜を、駆動回路に用いることができる。
【0308】
また、半導体膜508は、例えば、インジウムと、M(Mは、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、及びマグネシウムから選ばれた一種または複数種)と、亜鉛と、を有することが好ましい。特に、Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、及びスズから選ばれた一種または複数種であることが好ましい。
【0309】
特に、半導体膜508として、In、Ga、及びZnを含む酸化物(IGZOとも記す)を用いることが好ましい。または、In、Sn、及びZnを含む酸化物を用いることが好ましい。または、In、Ga、Sn、及びZnを含む酸化物を用いることが好ましい。または、In、Al、及びZnを含む酸化物(IAZOとも記す)を用いることが好ましい。または、In、Al、Ga、及びZnを含む酸化物(IAGZOとも記す)を用いることが好ましい。
【0310】
半導体膜がIn-M-Zn酸化物の場合、当該In-M-Zn酸化物におけるInの原子数比はMの原子数比以上であることが好ましい。このようなIn-M-Zn酸化物の金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1またはその近傍の組成、In:M:Zn=1:1:1.2またはその近傍の組成、In:M:Zn=1:3:2またはその近傍の組成、In:M:Zn=1:3:4またはその近傍の組成、In:M:Zn=2:1:3またはその近傍の組成、In:M:Zn=3:1:2またはその近傍の組成、In:M:Zn=4:2:3またはその近傍の組成、In:M:Zn=4:2:4.1またはその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:3またはその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:6またはその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:7またはその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:8またはその近傍の組成、In:M:Zn=6:1:6またはその近傍の組成、In:M:Zn=5:2:5またはその近傍の組成、等が挙げられる。なお、近傍の組成とは、所望の原子数比の±30%の範囲を含む。
【0311】
例えば、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3またはその近傍の組成と記載する場合、各元素の含有比率が、Inを4としたとき、Gaが1以上3以下であり、Znが2以上4以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:6またはその近傍の組成と記載する場合、各元素の含有比率が、Inを5としたときに、Gaが0.1より大きく2以下であり、Znが5以上7以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1またはその近傍の組成と記載する場合、各元素の含有比率が、Inを1としたときに、Gaが0.1より大きく2以下であり、Znが0.1より大きく2以下である場合を含む。
【0312】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0313】
金属酸化物を半導体膜508に用いる場合、図9(A)に示すトランジスタを用いる発光装置は、金属酸化物を半導体膜に用い、且つMML(メタルマスクレス)構造の発光デバイスを有する構成となる。当該構成とすることで、トランジスタに流れうるリーク電流、及び隣接する発光デバイス間に流れうるリーク電流(横リーク電流、サイドリーク電流などともいう)を、極めて低くすることができる。また、上記構成とすることで、表示装置に画像を表示した場合に、観察者が画像のきれ、画像のするどさ、高い彩度及び高いコントラスト比のいずれか一または複数を観測できる。なお、トランジスタに流れうるリーク電流、及び発光デバイス間の横リーク電流が極めて低い構成とすることで、黒表示時に生じうる光漏れ(いわゆる黒浮き)などが限りなく少ない表示(真黒表示ともいう)とすることができる。
【0314】
また、半導体膜508には、シリコンを用いてもよい。シリコンとしては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンなどが挙げられる。特に、半導体層に低温ポリシリコン(LTPS(Low Temperature Poly Silicon))を有するトランジスタ(以下、LTPSトランジスタともいう)を用いることが好ましい。LTPSトランジスタは、電界効果移動度が高く、周波数特性が良好である。
【0315】
LTPSトランジスタなどのシリコンを用いたトランジスタを適用することで、高周波数で駆動する必要のある回路(例えばソースドライバ回路)を表示部と同一基板上に作り込むことができる。これにより、発光装置に実装される外部回路を簡略化でき、部品コスト及び実装コストを削減することができる。
【0316】
また、表示パネルの画面のサイズに応じて、表示パネルに用いるトランジスタの構成を適宜選択すればよい。例えば、表示パネルのトランジスタとして、単結晶Siトランジスタを用いる場合、対角のサイズが0.1インチ以上3インチ以下の画面サイズに適用することができる。また、表示パネルのトランジスタとして、LTPSトランジスタを用いる場合、対角のサイズが0.1インチ以上30インチ以下、好ましくは1インチ以上30インチ以下の画面サイズに適用することができる。また、表示パネルにLTPO(LTPSトランジスタと、OSトランジスタとを、組み合わせる構成)を用いる場合、対角のサイズを0.1インチ以上50インチ以下、好ましくは1インチ以上50インチ以下の画面サイズに適用することができる。また、表示パネルのトランジスタとして、OSトランジスタ(チャネルが形成される半導体に金属酸化物を有するトランジスタ)を用いる場合、対角のサイズを0.1インチ以上200インチ以下、好ましくは50インチ以上100インチ以下の画面サイズに適用することができる。
【0317】
なお、単結晶Siトランジスタは、単結晶Si基板の大きさより、大型化が非常に困難である。また、LTPSトランジスタは、製造工程にてレーザ結晶化装置を用いるため、大型化(代表的には、対角のサイズにて30インチを超える画面サイズ)への対応が難しい。一方でOSトランジスタは、製造工程にてレーザ結晶化装置などを用いる制約がない、または比較的低温のプロセス温度(代表的には450℃以下)で製造することが可能なため、比較的大面積(代表的には、対角のサイズにて50インチ以上100インチ以下)の表示パネルまで対応することが可能である。また、LTPOについては、LTPSトランジスタを用いる場合のサイズと、OSトランジスタを用いる場合のサイズと、の間のサイズ(代表的には、対角のサイズにて1インチ以上50インチ以下)に適用することが可能となる。
【0318】
次に、受発光装置の断面図を示す。図9(B)には、図8(A)に示す受発光装置の断面図を示す。
【0319】
図9(B)の断面図は、FPC713および配線706を含む領域の一部、画素703(i,j)を含む表示領域701の一部をそれぞれ切断した時の断面図を示す。
【0320】
図9(B)において、受発光装置700は、第1の基板510と、第2の基板770と、の間に機能層520を有する。機能層520には、上述のトランジスタおよび容量素子等の他、これらを電気的に接続する配線等が含まれる。なお、図9(B)では、機能層520は、画素回路530X(i,j)および画素回路530S(i,j)、並びに回路GDを含む構成を示すが、これに限らない。
【0321】
また、機能層520に形成された画素回路(例えば、図9(B)に示す画素回路530X(i,j)および画素回路530S(i,j))は、機能層520上に形成される発光デバイスおよび受光デバイス(例えば、図9(B)に示す発光デバイス550X(i,j)および受光デバイス550S(i,j))と電気的に接続される。具体的には、発光デバイス550X(i,j)は配線591Xを介して画素回路530X(i,j)に電気的に接続され、受光デバイス550S(i,j)は配線591Sを介して画素回路530S(i,j)に電気的に接続される。また、機能層520、発光デバイス、および受光デバイス上に絶縁層705を有し、絶縁層705は、第2の基板770と機能層520とを貼り合わせる機能を有する。
【0322】
なお、第2の基板770には、マトリクス状にタッチセンサを備える基板を用いることができる。例えば、静電容量式のタッチセンサまたは光学式のタッチセンサを備えた基板を第2の基板770に用いることができる。これにより、本発明の一態様の受発光装置をタッチパネルとして使用することができる。
【0323】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0324】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器の構成について、図10(A)乃至図12(B)により説明する。
【0325】
図10(A)乃至図12(B)は、本発明の一態様の電子機器の構成を説明する図である。図10(A)は電子機器のブロック図であり、図10(B)乃至図10(E)は電子機器の構成を説明する斜視図である。また、図11(A)乃至図11(E)は電子機器の構成を説明する斜視図である。また、図12(A)および図12(B)は電子機器の構成を説明する斜視図である。
【0326】
本実施の形態で説明する電子機器5200Bは、演算装置5210と、入出力装置5220と、を有する(図10(A)参照)。
【0327】
演算装置5210は、操作情報を供給される機能を備え、操作情報に基づいて画像情報を供給する機能を有する。
【0328】
入出力装置5220は、表示部5230、入力部5240、検知部5250、通信部5290、操作情報を供給する機能および画像情報を供給される機能を有する。また、入出力装置5220は、検知情報を供給する機能、通信情報を供給する機能および通信情報を供給される機能を有する。
【0329】
入力部5240は操作情報を供給する機能を有する。例えば、入力部5240は、電子機器5200Bの使用者の操作に基づいて操作情報を供給する。
【0330】
具体的には、キーボード、ハードウェアボタン、ポインティングデバイス、タッチセンサ、照度センサ、撮像装置、音声入力装置、視線入力装置、姿勢検出装置などを、入力部5240に用いることができる。
【0331】
表示部5230は表示パネルおよび画像情報を表示する機能を有する。例えば、先の実施の形態において説明した表示パネルを表示部5230に用いることができる。
【0332】
検知部5250は検知情報を供給する機能を有する。例えば、電子機器が使用されている周辺の環境を検知して、検知情報として供給する機能を有する。
【0333】
具体的には、照度センサ、撮像装置、姿勢検出装置、圧力センサ、人感センサなどを検知部5250に用いることができる。
【0334】
通信部5290は通信情報を供給される機能および供給する機能を有する。例えば、無線通信または有線通信により、他の電子機器または通信網と接続する機能を有する。具体的には、無線構内通信、電話通信、近距離無線通信などの機能を有する。
【0335】
図10(B)は、円筒状の柱などに沿った外形を有する電子機器を示す。一例として、デジタルサイネージ等が挙げられる。本発明の一態様である表示パネルは、表示部5230に適用することができる。なお、使用環境の照度に応じて、表示方法を変更する機能を備えていても良い。また、人の存在を検知して、表示内容を変更する機能を有する。これにより、例えば、建物の柱に設置することができる。または、広告または案内等を表示することができる。
【0336】
図10(C)は、使用者が使用するポインタの軌跡に基づいて画像情報を生成する機能を有する電子機器を示す。一例として、電子黒板、電子掲示板、電子看板等が挙げられる。具体的には、対角線の長さが20インチ以上、好ましくは40インチ以上、より好ましくは55インチ以上の表示パネルを用いることができる。または、複数の表示パネルを並べて1つの表示領域に用いることができる。または、複数の表示パネルを並べてマルチスクリーンに用いることができる。
【0337】
図10(D)は、他の装置から情報を受信して、表示部5230に表示することができる電子機器を示す。一例として、ウェアラブル型電子機器などが挙げられる。具体的には、いくつかの選択肢を表示できる、または、使用者が選択肢からいくつかを選択し、当該情報の送信元に返信することができる。または、例えば、使用環境の照度に応じて、表示方法を変更する機能を有する。これにより、例えば、ウェアラブル型電子機器の消費電力を低減することができる。または、例えば、晴天の屋外等の外光の強い環境においても好適に使用できるように、画像をウェアラブル型電子機器に表示することができる。
【0338】
図10(E)は、筐体の側面に沿って緩やかに曲がる曲面を備える表示部5230を有する電子機器を示す。一例として、携帯電話などが挙げられる。なお、表示部5230は表示パネルを備え、表示パネルは、例えば、前面、側面、上面および背面に表示する機能を有する。これにより、例えば、携帯電話の前面だけでなく、側面、上面および背面に情報を表示することができる。
【0339】
図11(A)は、インターネットから情報を受信して、表示部5230に表示することができる電子機器を示す。一例として、スマートフォンなどが挙げられる。例えば、作成したメッセージを表示部5230で確認することができる。または、作成したメッセージを他の装置に送信できる。または、例えば、使用環境の照度に応じて、表示方法を変更する機能を有する。これにより、スマートフォンの消費電力を低減することができる。または、例えば、晴天の屋外等の外光の強い環境においても好適に使用できるように、画像をスマートフォンに表示することができる。
【0340】
図11(B)は、リモートコントローラーを入力部5240とすることができる電子機器を示す。一例として、テレビジョンシステムなどが挙げられる。または、例えば、放送局またはインターネットから情報を受信して、表示部5230に表示することができる。または、検知部5250を用いて使用者を撮影できる。または、使用者の映像を送信できる。または、使用者の視聴履歴を取得して、クラウド・サービスに提供できる。または、クラウド・サービスから、レコメンド情報を取得して、表示部5230に表示できる。または、レコメンド情報に基づいて、番組または動画を表示できる。または、例えば、使用環境の照度に応じて、表示方法を変更する機能を有する。これにより、晴天の日に屋内に差し込む強い外光が当たっても好適に使用できるように、映像をテレビジョンシステムに表示することができる。
【0341】
図11(C)は、インターネットから教材を受信して、表示部5230に表示することができる電子機器を示す。一例として、タブレットコンピュータなどが挙げられる。または、入力部5240を用いて、レポートを入力し、インターネットに送信することができる。または、クラウド・サービスから、レポートの添削結果または評価を取得して、表示部5230に表示することができる。または、評価に基づいて、好適な教材を選択し、表示することができる。
【0342】
例えば、他の電子機器から画像信号を受信して、表示部5230に表示することができる。または、スタンドなどに立てかけて、表示部5230をサブディスプレイに用いることができる。これにより、例えば、晴天の屋外等の外光の強い環境においても好適に使用できるように、画像をタブレットコンピュータに表示することができる。
【0343】
図11(D)は、複数の表示部5230を有する電子機器を示す。一例として、デジタルカメラなどが挙げられる。例えば、検知部5250で撮影しながら表示部5230に表示することができる。または、撮影した映像を検知部に表示することができる。または、入力部5240を用いて、撮影した映像に装飾を施せる。または、撮影した映像にメッセージを添付できる。または、インターネットに送信できる。または、使用環境の照度に応じて、撮影条件を変更する機能を有する。これにより、例えば、晴天の屋外等の外光の強い環境においても好適に閲覧できるように、被写体をデジタルカメラに表示することができる。
【0344】
図11(E)は、他の電子機器をスレイブに用い、本実施の形態の電子機器をマスターに用いて、他の電子機器を制御することができる電子機器を示す。一例として、携帯可能なパーソナルコンピュータなどが挙げられる。例えば、画像情報の一部を表示部5230に表示し、画像情報の他の一部を他の電子機器の表示部に表示することができる。または、画像信号を供給することができる。または、通信部5290を用いて、他の電子機器の入力部から書き込む情報を取得できる。これにより、例えば、携帯可能なパーソナルコンピュータを用いて、広い表示領域を利用することができる。
【0345】
図12(A)は、加速度または方位を検知する検知部5250を有する電子機器を示す。一例として、ゴーグル型の電子機器などが挙げられる。または、検知部5250は、使用者の位置または使用者が向いている方向に係る情報を供給することができる。または、電子機器は、使用者の位置または使用者が向いている方向に基づいて、右目用の画像情報および左目用の画像情報を生成することができる。または、表示部5230は、右目用の表示領域および左目用の表示領域を有する。これにより、例えば、没入感を得られる仮想現実空間の映像を、ゴーグル型の電子機器に表示することができる。
【0346】
図12(B)は、撮像装置、加速度または方位を検知する検知部5250を有する電子機器を示す。一例として、めがね型の電子機器などが挙げられる。または、検知部5250は、使用者の位置または使用者が向いている方向に係る情報を供給することができる。または、電子機器は、使用者の位置または使用者が向いている方向に基づいて、画像情報を生成することができる。これにより、例えば、現実の風景に情報を添付して表示することができる。または、拡張現実空間の映像を、めがね型の電子機器に表示することができる。
【0347】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0348】
(実施の形態6)
本実施の形態では、先の実施の形態に記載の発光デバイスを照明装置として用いる構成について、図13により説明する。なお、図13(A)は、図13(B)に示す照明装置の上面図における線分e-fの断面図である。
【0349】
本実施の形態における照明装置は、支持体である透光性を有する基板400上に、第1の電極401が形成されている。第1の電極401は先の実施の形態における第1の電極101に相当する。第1の電極401側から発光を取り出す場合、第1の電極401は透光性を有する材料により形成する。
【0350】
第2の電極404に電圧を供給するためのパッド412が基板400上に形成される。
【0351】
第1の電極401上にはEL層403が形成されている。EL層403は先の実施の形態におけるEL層103の構成に相当する。なお、これらの構成については当該記載を参照されたい。
【0352】
EL層403を覆って第2の電極404を形成する。第2の電極404は先の実施の形態における第2の電極102に相当する。発光を第1の電極401側から取り出す場合、第2の電極404は反射率の高い材料によって形成される。第2の電極404はパッド412と接続することによって、電圧が供給される。
【0353】
以上、第1の電極401、EL層403、及び第2の電極404を有する発光デバイスを本実施の形態で示す照明装置は有している。当該発光デバイスは発光効率の高い発光デバイスであるため、本実施の形態における照明装置は消費電力の小さい照明装置とすることができる。
【0354】
以上の構成を有する発光デバイスが形成された基板400と、封止基板407とをシール材(405、406)を用いて固着し、封止することによって照明装置が完成する。シール材405、406はどちらか一方でもかまわない。また、内側のシール材406(図13(B)では図示せず)には乾燥剤を混ぜることもでき、これにより、水分を吸着することができ、信頼性の向上につながる。
【0355】
また、パッド412と第1の電極401の一部をシール材405、406の外に伸張して設けることによって、外部入力端子とすることができる。また、その上にコンバーターなどを搭載したICチップ420などを設けても良い。
【0356】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置、またはその一部である発光デバイスを適用して作製される照明装置の応用例について、図14を用いて説明する。
【0357】
室内の照明装置としては、シーリングライト8001として応用できる。シーリングライト8001には、天井直付型および天井埋め込み型がある。なお、このような照明装置は、発光装置を筐体およびカバーと組み合わせることにより構成される。その他にもコードペンダント型(天井からのコード吊り下げ式)への応用も可能である。
【0358】
また、足元灯8002は、床面に灯りを照射し、足元の安全性を高めることができる。例えば、寝室、階段、および通路などに使用するのが有効である。その場合、部屋の広さおよび構造に応じて適宜サイズおよび形状を変えることができる。また、発光装置と支持台とを組み合わせて構成される据え置き型の照明装置とすることも可能である。
【0359】
また、シート状照明8003は、薄型のシート状の照明装置である。壁面に張り付けて使用するため、場所を取らず幅広い用途に用いることができる。なお、大面積化も容易である。なお、曲面を有する壁面、筐体等に用いることもできる。
【0360】
また、光源からの光が所望の方向のみに制御された照明装置8004を用いることもできる。
【0361】
また、電気スタンド8005は、光源8006を有し、光源8006としては、本発明の一態様である発光装置、またはその一部である発光デバイスを適用することができる。
【0362】
なお、上記以外にも室内に備えられた家具の一部に本発明の一態様である発光装置、またはその一部である発光デバイスを適用することにより、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0363】
以上のように、発光装置を適用した様々な照明装置が得られる。なお、これらの照明装置は本発明の一態様に含まれるものとする。
【0364】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例0365】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイスである発光デバイス1および発光デバイス2と、比較発光デバイス3と、を作製し、種々の測定を行った結果を説明する。なお、各発光デバイスの発光層が有する発光物質としては、NEST材料である、2,5-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-8-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-1,3,4,6,7,9,9b-ヘプタアザフェナレン(略称:HzTFEX)(構造式(105))を用いた。HzTFEXはNEST材料のため、遅延蛍光の発光寿命が10K以上300K以下の範囲において、温度が下がるほど短くなる材料である(非特許文献2参照)。
【0366】
各発光デバイスに用いた有機化合物の構造式を以下に示す。また、各発光デバイスのデバイス構造を下記表に示す。
【0367】
【化9】
【0368】
【表1】
【0369】
≪発光デバイス1の作製≫
本実施例で示す発光デバイス1は、基板上に形成された第1の電極上に正孔注入層、正孔輸送層(第1の正孔輸送層および第2の正孔輸送層)、発光層、電子輸送層(第1の電子輸送層および第2の電子輸送層)および電子注入層が順次積層され、電子注入層上に第2の電極が積層された構造を有する。
【0370】
まず、基板上に第1の電極を形成した。電極面積は、4mm(2mm×2mm)とした。また、基板には、ガラス基板を用いた。また、第1の電極は、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)を70nmの膜厚でスパッタリング法により成膜して形成した。なお、本実施例において、第1の電極は、陽極として機能する。
【0371】
ここで、前処理として、基板の表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、1×10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0372】
次に、第1の電極上に正孔注入層を形成した。正孔注入層は、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)と、分子量672でフッ素を含む電子アクセプタ材料(OCHD-003)と、を重量比で1:0.1(=BBABnf:OCHD-003)となるように10nm共蒸着して形成した。
【0373】
次に、正孔注入層上に正孔輸送層を形成した。第1の正孔輸送層として、BBABnfを25nmの膜厚になるよう形成し、その後に第2の正孔輸送層として、9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,4-ビス(トリフェニルシリル)-9H-カルバゾール(略称:CzSi)を10nmの膜厚になるよう形成した。
【0374】
次に、正孔輸送層上に発光層を形成した。発光層は、第1の物質として2,7-ビス(ジフェニルフォスフォリル)-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PPO27)を用い、発光物質としてHzTFEXを用いて、重量比で0.90:0.10(=PPO27:HzTFEX)となるように共蒸着して、15nmの膜厚となるように形成した。
【0375】
次に、発光層上に電子輸送層を形成した。第1の電子輸送層として、2,8-ビス(ジフェニルフォスフォリル)ジベンゾ[b,d]フラン(略称:PPF)を10nmの膜厚になるよう形成し、その後に第2の電子輸送層として、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)を30nmの膜厚になるよう形成した。
【0376】
次に、電子輸送層上に電子注入層を形成した。電子注入層は、フッ化リチウム(LiF)を用い、膜厚が1nmになるように蒸着して形成した。
【0377】
次に、電子注入層上に第2の電極を形成した。第2の電極は、アルミニウム(Al)を膜厚が200nmとなるように蒸着して形成した。なお、本実施例において、第2の電極は、陰極として機能する。
【0378】
以上の工程により、発光デバイス1を作製した。次に、発光デバイス2および比較発光デバイス3の作製方法について説明する。
【0379】
≪発光デバイス2の作製≫
発光デバイス2は、発光デバイス1において発光層の第1の物質として用いたPPO27を9,9’-{6-[3-(トリフェニルシリル)フェニル]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}ビス(9H-カルバゾール)(略称:SiTrzCz2)に置き換えた発光デバイスであり、その他は発光デバイス1と同様に作製した。
【0380】
≪比較発光デバイス3の作製≫
比較発光デバイス3は、発光デバイス1において発光層の第1の物質として用いたPPO27をPPFに置き換えた発光デバイスであり、その他は発光デバイス1と同様に作製した。
【0381】
作製した各発光デバイスを、窒素雰囲気のグローブボックス内において、大気に曝されないようにガラス基板により封止する作業(シール材を素子の周囲に塗布し、封止時にUV処理、80℃にて1時間熱処理)を行った後、各発光デバイスの初期特性について測定を行った。
【0382】
発光デバイス1、発光デバイス2、比較発光デバイス3の輝度-電流密度特性を図15に、輝度-電圧特性を図16に、電流効率-電流密度特性を図17に、電流密度-電圧特性を図18に、電力効率-電流密度を図19に、外部量子効率-輝度特性を図20に、2.5mA/cmの電流密度で電流を流した際の電界発光スペクトルを図21に示す。
【0383】
また、発光デバイス1、発光デバイス2、および比較発光デバイス3の輝度350cd/m付近における主な特性を下記表に示す。なお、輝度、CIE色度、及び電界発光スペクトルの測定には分光放射計(トプコン社製、SR-UL1R)を用い、常温で測定した。また、外部量子効率は、分光放射計を用いて測定した輝度と電界発光スペクトルを用い、配光特性がランバーシアン型であると仮定し算出した。
【0384】
【表2】
【0385】
図15乃至図21および上記表より、発光デバイス1、及び発光デバイス2は、発光物質であるHzTFEXに由来する青色発光を呈し、良好な発光特性を有する発光デバイスであることが明らかとなった。またこれらデバイスは外部量子効率が5.2%以上(例えば発光物質のPL発光効率69%×一重項励起子生成割合25%×キャリアバランス因子100%×光取り出し効率30%とすると、最大外部量子効率は5.2%)と通常の蛍光素子よりも高く、三重項励起エネルギーも発光として取り出す、NEST材料として機能しているといえる。また、発光デバイス1及び発光デバイス2は、比較発光デバイス3と比較して、同一電圧での輝度が高く、低電圧で駆動することができ(図16参照)、同一電流密度でも輝度が高く(図15参照)、発光効率の指標である電流効率、電力効率及び外部量子効率が高かった(図17図19及び図20参照)。また、図20より、比較発光デバイス3においては、高輝度において発光効率が低下する、ロールオフ現象が発生しているが、発光デバイス1及び発光デバイス2においては、ロールオフ現象が抑制されており、高輝度においても発光効率が良好であることがわかった。
【0386】
また、発光デバイス1および発光デバイス2を比較すると、発光デバイス2のほうが、輝度、電流効率、電力効率および外部量子効率がより高いことがわかった(図15図16図17図19、及び図20参照)。
【0387】
発光層の第1の物質として、発光デバイス1ではPPO27を用い、発光デバイス2ではSiTrzCz2を用い、比較発光デバイス3ではPPFを用いたことから、本発明の一態様の発光デバイスにおいては、第1の物質としてPPO27またはSiTrzCz2を用いるとPPFを用いる場合よりも特性が向上することがわかった。ここで、PPO27はカルバゾール環を有する有機化合物であり、SiTrzCz2はカルバゾール環およびπ電子不足型複素芳香環であるトリアジン環を有する有機化合物である。また、PPFはカルバゾール環およびπ電子不足型複素芳香環を有さない有機化合物である。このことから、カルバゾール環を有する有機化合物を本発明の一態様の発光デバイスの発光層に用いることにより、発光デバイスの特性が向上することがわかった。これは、カルバゾール環を有する有機化合物のように、キャリア輸送性の高い物質を第1の物質として用いることで、発光層のキャリアバランスおよびエネルギー移動効率が改善し、キャリア再結合領域を適切に制御することができたためである。発光デバイス1、発光デバイス2においては、キャリア再結合領域を適切に制御することができたため、ロールオフ現象を抑制し、高輝度かつ高効率な発光デバイスを実現することができたといえる。高輝度において発光効率が良好であることから、発光デバイス1および発光デバイス2は、高輝度駆動においてもキャリアバランスが崩れにくく、駆動寿命が良好であることが期待される。
【0388】
特に、上記したように、第1の物質としてSiTrzCz2を用いた発光デバイス2は、PPO27を用いた発光デバイス1よりさらに特性が向上した。これは、SiTrzCz2がカルバゾール環およびπ電子不足型複素芳香環であるトリアジン環を有するバイポーラ性の物質(正孔輸送性および電子輸送性が高い物質)であることから、発光層におけるキャリアバランス及びエネルギー移動効率がより良好となり、その結果、輝度、電流効率、電力効率および外部量子効率がより高くなったといえる。例えば発光物質のPL発光効率69%×励起子生成割合100%×キャリアバランス因子100%×光取り出し効率30%とすると、最大外部量子効率は21%となる。この発光デバイス2の最大外部量子効率は20%であることから、非常に良好な特性が達成できているといえる。
【0389】
ここで、発光デバイス1と発光デバイス2の発光層における第1の物質について、低温(10K)におけるフォトルミネッセンス(PL)スペクトル(燐光スペクトル)を測定した結果を図22及び図23に示す。図22には、発光デバイス1に用いたPPO27の燐光スペクトルを示す。図23には、発光デバイス2に用いたSiTrzCz2の燐光スペクトルを示す。燐光スペクトルの測定は、薄膜状態(蒸着膜、50nm)で行い、顕微PL装置 LabRAM HR-PL((株)堀場製作所)を用いた。燐光スペクトルの発光端の波長(またはエネルギー)は、燐光スペクトルの最も短波長に位置するピークよりも短波長側でスペクトルの傾きが最大になる点における接線とベースラインとの交点として算出することができ、当該発光端の波長からT準位を算出することができる。
【0390】
その結果、PPO27の燐光スペクトルの短波長側の発光端は437nmであり、T準位は2.84eVと算出された。SiTrzCz2の燐光スペクトルの短波長側の発光端は420nmであり、T準位は2.95eVと算出された。PPO27およびSiTrzCz2は、高いT準位を有し、ホスト材料である第1の物質として好ましい。
【0391】
また、HzTFEXのトルエン溶液における室温の吸収スペクトルと発光スペクトルを測定した結果を図24に示す。吸収スペクトルは蛍光光度計(日本分光製FP-8600)、発光スペクトルは紫外可視分光光度計(日本分光製V-770DS)を用いて測定した。吸収スペクトルはHzTFEXのトルエン溶液のスペクトルからトルエンのみを石英セルに入れて測定したスペクトルを差し引いたスペクトルを用いた。
【0392】
図24より、HzTFEXの短波長側の発光端は437nmと読み取ることができ、S準位は2.83eVと見積もられる。また非特許文献2より、ΔESTは-11meVであるため、HzTFEXのT準位は2.84eVと見積もられる。したがって、SiTrzCz2は、HzTFEXより高いT準位を有し、第1の物質から発光物質へのエネルギー移動効率が良好となり、第1の物質として好ましい。
【0393】
また図24より、HzTFEXの最も長波長に位置する吸収帯の最大ピーク波長441nmにおけるモル吸光係数は930M-1・cm-1と、500M-1・cm-1以上であり、1000M-1・cm-1に近い値となった。そのため、第1の物質から発光物質へのエネルギー移動が良好となると言える。
【0394】
なおこのHzTFEXのトルエン溶液の発光量子収率を測定したところ、励起光波長が340nmにおいて69%であった。測定装置は絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製 Quantaurus-QY C11347-01)を用いた。なおこのトルエン溶液は、アルゴンでバブリングし、できるだけ残存酸素を除いたものを用いている。
【0395】
また、発光デバイス1の発光層に用いた有機化合物のHOMO準位およびLUMO準位を以下に示す。HOMO準位およびLUMO準位の値は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定により求めた。CV測定において、HOMO準位およびLUMO準位の値は、参照電極に対する作用電極の電位を変化させることで得られる酸化ピーク電位、および還元ピーク電位を元に、算出した。測定において、正方向の電位走査からHOMO準位を求め、負方向の電位走査からLUMO準位を求めた。また、測定におけるスキャン速度は、0.1V/sとした。具体的には、材料のサイクリックボルタモグラムより得られる酸化ピーク電位(Epa)、および還元ピーク電位(Epc)から、標準酸化還元電位(Eo)(=(Epa+Epc)/2)を求め、参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギー(Ex)から減算することにより、HOMO準位およびLUMO準位の値(E)(=Ex-Eo)をそれぞれ求めた。
【0396】
なお、測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製 ALSモデル600A)を用い、溶媒として脱水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705-6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-BuNClO)((株)東京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。
【0397】
また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。
【0398】
その結果、PPO27のHOMO準位は-6.15eVであり、PPO27のLUMO準位は-2.60eVであり、SiTrzCz2のLUMO準位は-2.98eVであり、HzTFEXのLUMO準位は-3.46eVであった。なおSiTrzCz2とHzTFEXのHOMO準位は、-6.4eV付近まで観測されなかったため、-6.4eVよりも低い(絶対値が大きい)と見積もられた。このように、HzTFEXのLUMO準位は低いため、LUMO準位が高くHOMO準位が低いSiTrzCz2及びPPO27はホスト材料である第1の物質として好ましい。例えば、第1の物質のHOMO準位と、HzTFEXのLUMO準位の間で形成されるエキサイプレックスの発光エネルギーは、SiTrzCz2とHzTFEXの組み合わせの場合に2.94eV以上、PPO27とHzTFEXの組み合わせの場合に2.69eV付近、と見積もられ、発光エネルギーが高い。よって、このような組み合わせのエキサイプレックスを形成しづらく、発光物質であるHzTFEX由来の発光が得られたと考えられる。
【0399】
以上の結果より、本発明の一態様の発光デバイスは、キャリアバランスが良好であることが示された。また、本発明の一態様の発光デバイスにおいては、ロールオフ現象が抑制され、高輝度においても発光効率が良好であることが示された。
【符号の説明】
【0400】
GD 回路
R 副画素
G 副画素
B 副画素
IR 副画素
PS 副画素
RES レジストマスク
SE 距離
100 発光デバイス
101 第1の電極
102 第2の電極
103 EL層
103a EL層
103b EL層
103B EL層
103G EL層
103R EL層
103PS 受光層
104B ホール注入・輸送層
104G ホール注入・輸送層
104R ホール注入・輸送層
104PS ホール注入・輸送層
105 発光層
105B 発光層
105G 発光層
105R 発光層
105PS 活性層
106 電荷発生層
106a 電荷発生層
106b 電荷発生層
107 絶縁層
108 電子輸送層
108B 電子輸送層
108G 電子輸送層
108R 電子輸送層
108PS 電子輸送層
109 電子注入層
110B 犠牲層
110G 犠牲層
110R 犠牲層
110PS 犠牲層
111 正孔注入層
111a 正孔注入層
111b 正孔注入層
112 正孔輸送層
112a 正孔輸送層
112b 正孔輸送層
113 発光層
113a 発光層
113b 発光層
113c 発光層
114 電子輸送層
114a 電子輸送層
114b 電子輸送層
115 電子注入層
115a 電子注入層
115b 電子注入層
400 基板
401 第1の電極
403 EL層
404 第2の電極
405 シール材
406 シール材
407 封止基板
412 パッド
420 ICチップ
501C 絶縁膜
501D 絶縁膜
504 導電膜
506 絶縁膜
508 半導体膜
508A 領域
508B 領域
508C 領域
510 第1の基板
512A 導電膜
512B 導電膜
516 絶縁膜
516A 絶縁膜
516B 絶縁膜
518 絶縁膜
520 機能層
524 導電膜
528 隔壁
528a 樹脂膜
530S 画素回路
530X 画素回路
550 発光デバイス
550X 発光デバイス
550S 受光デバイス
550B 発光デバイス
550G 発光デバイス
550R 発光デバイス
550PS 受光デバイス
551 電極
551B 電極
551C 接続電極
551G 電極
551R 電極
551PS 電極
552 電極
560 接続部
580 間隙
591S 配線
591X 配線
700 受発光装置
701 表示領域
702G 副画素
702PS 副画素
702R 副画素
702IR 副画素
702B 副画素
703 画素
704 回路
705 絶縁層
706 配線
710 基板
711 基板
712 IC
713 FPC
720 装置
770 基板
5200B 電子機器
5210 演算装置
5220 入出力装置
5230 表示部
5240 入力部
5250 検知部
5290 通信部
8001 シーリングライト
8002 足元灯
8003 シート状照明
8004 照明装置
8005 電気スタンド
8006 光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24