(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068185
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】床用エコ-サスティナブルな被覆材
(51)【国際特許分類】
E04F 15/16 20060101AFI20240510BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20240510BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240510BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240510BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20240510BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20240510BHJP
C08L 9/02 20060101ALI20240510BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
E04F15/16 A
C08L21/00
C08K3/26
C08K3/013
C08L9/06
C08L23/16
C08L9/02
C08L7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023188665
(22)【出願日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】102022000022722
(32)【優先日】2022-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】500544923
【氏名又は名称】モンド・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】MONDO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ネーディ,イルマ
(72)【発明者】
【氏名】マレンギ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ストロッピアーナ,マウリツィオ
【テーマコード(参考)】
2E220
4J002
【Fターム(参考)】
2E220AA19
2E220AA25
2E220AA44
2E220AA45
2E220AC01
2E220AC03
2E220BA01
2E220BA04
2E220BA19
2E220BB03
2E220CA07
2E220EA01
2E220EA02
2E220FA01
2E220GA06X
2E220GA07X
2E220GA22X
2E220GA24X
2E220GA25Y
2E220GB12X
2E220GB25X
2E220GB39X
4J002AA011
4J002AC011
4J002AC071
4J002AC081
4J002BB151
4J002DA030
4J002DA040
4J002DE100
4J002DE130
4J002DE140
4J002DE236
4J002DJ010
4J002DJ03
4J002FD016
4J002GL00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機械的性能の点で最適な特性を有し、同時にエコ-サスティナブルで安価な床被覆材を提供する。
【解決手段】i)少なくとも1つのエラストマーと、ii)アラゴナイト形態の炭酸カルシウム粒子を含む生物起源補強フィラーとを含む床被覆材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-少なくとも1つのエラストマー;
-アラゴナイト形態の炭酸カルシウム粒子を含む生物起源補強フィラー
を含む床被覆材。
【請求項2】
少なくとも1つのエラストマーが、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性加硫エラストマー(TPV)、それらの混合物よりなる群から選択される、請求項1に記載の床被覆材。
【請求項3】
少なくとも1つのエラストマーが、被覆材の重量に対して10重量%~70重量%、好ましくは、10重量%~50重量%(w/w%)で構成される量で含有される、請求項1または請求項2に記載の床被覆材。
【請求項4】
アラゴナイト形態の炭酸カルシウム粒子を含む生物起源補強フィラーが、被覆材の5重量%~70重量%、好ましくは、10重量%~50重量%(%w/w)の量で含有される、請求項1~3のいずれか1項に記載の床被覆材。
【請求項5】
炭酸カルシウム粒子が、4μm~400μm、好ましくは、4μm~200μmで構成される平均直径を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の床被覆材。
【請求項6】
生物起源補強フィラーが、少なくとも1つのエラストマーの重量に対して15%~300%(%w/w)、好ましくは、20%~150%(%w/w)の量で存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の床被覆材。
【請求項7】
生物起源補強フィラーが、軟体動物の殻の粉末を含む、好ましくは、軟体動物の殻の粉末からなり、軟体動物が、より好ましくは、双殻類軟体動物、腹足類軟体動物、それらの混合物の中から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の床被覆材。
【請求項8】
双殻類軟体動物が、ムセル、クラム、コックル、オイスター、スカロップよりなる群から選択され、腹足類軟体動物が、シー・スネイル(モノドンタ)、リンペットおよびスパイニィ・ミューリス、それらの混合物よりなる群から選択される、請求項7に記載の床被覆材。
【請求項9】
-少なくとも1つのエラストマーを供する工程;
-アラゴナイト形態の生物起源炭酸カルシウム粒子を含む少なくとも1つの生物起源補強フィラーを供する工程;
-前記少なくとも1つのエラストマーと、アラゴナイト形態の生物起源炭酸カルシウム粒子を含む前記少なくとも1つの補強フィラーとを混合する工程
を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の床被覆材を製造する方法。
【請求項10】
アラゴナイト形態の炭酸カルシウム粒子を含む少なくとも1つの生物起源補強フィラーを供する工程が、
-双殻類軟体動物、好ましくは、ムセル、クラム、コックル、オイスターおよびスカロップよりなる群から選択される双殻類軟体動物、および/または腹足類軟体動物、好ましくは、シー・スネイル(モノドンタ)、リンペット、スパイニィ・ミューリス、それらの組合せよりなる群から選択される腹足類軟体動物の殻を供する工程;
-前記殻を造粒して粒状材料を得る工程;
-前記粒状材料を微粉砕して、アラゴナイト形態の炭酸塩粒子を含む粉末形態の補強フィラーを得る工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
表面を被覆する方法であって、
請求項1~8のいずれか1項に記載の被覆材を前記表面上に適用することを含む、前記方法。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項に記載の被覆材を含む弾性床。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本開示は、床(または、床材もしくはフロリーング:flooring)の製造に使用できる被覆材に関する。1つ以上の実施形態は、例えば、弾性(または、弾力性:resilient)床を製造するための被覆材に適用し得る。
【背景技術】
【0002】
(技術的背景)
「弾性床(または、弾性床材:resilient flooring)」または「弾性被覆床(または、弾性被覆床材:resilient floor covering)」なる用語は、例えば、以下に言及する欧州規格においてそのように言及されている床のタイプを示すことを意図している。特に、非スポーツ用途のゴム製弾性床は、欧州規格EN14041により規制されている。スポーツ用弾性床は、屋内適用のためにEN14904、および屋外適用のために規格EN14877により規制されている。したがって、現在受け入れられている用語において、弾性床は、それらが製造される材質によって以下の3つの主要ファミリー、すなわち、i)ポリ塩化ビニル(PVC)を含む床;ii)リノリウムを含む床;iii)天然ゴムおよび/または合成ゴム、または熱可塑性ゴム、例えば、スチレン系ブロック共重合体(TPSまたはTPE-s)、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー(TPOまたはTPE-o)、熱可塑性加硫物(TPVまたはTPE-v)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性コポリエステル(TPCまたはTPE-E)、熱可塑性ポリアミド(TPAまたはTPE-A)、非分類(non-classified)熱可塑性エラストマー(TPZ)を含む床に一般的に分類される。
【0003】
弾性床は、特に、医療施設(health structures)、学校、体育館、公共施設および住居に広く普及している。これらは、適用するのに容易である多用途の製品であり、既存の床に敷設することもできる。弾性床は一般的に、不浸透性、接触快適性、防音性、部分的リサイクル可能性、再利用可能性、衛生性および滑り止め性である。
【0004】
記載されたタイプの被覆材(特に、床材)の製造において、種々の性質の要件、例えば、経済的要件、エコ-サスティナビリティ(または、環境持続可能性:eco-sustainability)要件、機械的特性要件を考慮する必要があり、これらは事実上、頻繁には相互に対照的である。
【0005】
特に、弾性床の製造に使用できるエラストマー系被覆材は、材料の密度および寸法安定性を高め、機械的特性を最適化する目的で、フィラーの存在を必要とし得る。
【0006】
ゴム製の弾性床に使用されるフィラーは、有機性(木粉、セルロース繊維)であり得、または無機性質(主にタルカム、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック、カオリン、三酸化アルミニウム)であり得る。いくらかのフィラーは、製品の極限強度、伸展性、および引裂強度を向上させ、補強効果を得ることを可能にする。
【0007】
商業的に入手可能な主な補強(または、補強性、強化もしくは強化性:reinforcing)フィラー(または、充填材もしくは充填剤:filler)は、カーボンブラック(CB)、シリカおよび炭酸カルシウムである。
【0008】
しかしながら、補強効果を有するすべての無機物のうち少量のみが、持続可能な資源、すなわち、環境影響が低く、省エネに役立ち、毒性がない材料から由来し、化学物質の合成からでなく、天然資源および再生可能資源から由来する。
【0009】
カーボンブラックは、機械的特性を改善させるためにゴム系組成物において広く使用されてきた。しかしながら、このフィラーは一般的に重油製品の燃焼によって製造されるため、コストが高く、エコ-サスティナブル(または、環境維持可能な:eco-sustainable)にはほど遠い。
【0010】
シリカは、同じ耐摩耗性でありながら転がり摩擦により低い抵抗性、濡れた表面上のより良好な密着性のごとき、特有の動的機械的特性を付与する限りにおいて、特にタイヤ製造分野における補強フィラーとして使用され、その補強機能を発揮させるために、シリカは一般的に、ミックスに添加される相溶化剤、例えば、有機官能性シランと組み合わせて使用される。
【0011】
炭酸カルシウムは、エラストマー系弾性床の製造に最も広く使用されている無機物である。しかしながら、その補強能力は、カーボンブラックおよびシリカのものよりも低い(同じ質量であれば)。さらに、一般的に使用される炭酸カルシウムは採掘(mined)され、その結果、環境への影響、景観、エコ・サステイナビリティの点で、ならびに最終製品の製造コストの点で、有害な効果を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(目的および概要)
本明細書の目的は、機械的性能の点で最適な特性を有し、同時にエコ-サスティナブルで安価な床被覆材を提供することである。
【0013】
上記目的は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載された開示のおかげで達成され、特許請求の範囲は、本明細書の不可欠な部分を形成すると理解される。
【0014】
本明細書は、床被覆材(または、床被覆材料、床用被覆材もしくは床用被覆材料:floor covering material)、前記被覆材の製造方法、ならびに前記被覆材で表面を被覆する方法、およびそれを含む床(または、床材:flooring)を提供する。
【0015】
特許請求の範囲は、実施形態に関連して本明細書に提供される技術的教示の不可欠な部分を形成する。
【0016】
1つ以上の実施形態によれば、被覆材は:
-少なくとも1つのエラストマー;
-生物起源補強フィラー(または、生物源補強フィラー、生体補強フィラー、生物補強フィラーもしくはバイオジェニック補強フィラー:biogenic reinforcing filler)であって、生物起源補強フィラーは、アラゴナイト形態の炭酸カルシウム粒子を含む、生物起源補強フィラー
を含み得る
【0017】
上記補強フィラーは、少なくとも1つの有機化合物、好ましくは、コンキオリンをさらに含み得る。
【0018】
1つ以上の実施形態において、生物起源補強フィラーは、カルサイト(または、方解石:calcite)の形態の炭酸カルシウム粒子をさらに含み得る。
【0019】
1つ以上の実施形態において、生物起源補強フィラーの炭酸カルシウム粒子は、4μm~400μm、好ましくは、4μm~200μmで構成される平均直径(D50)を有し得る。
【0020】
少なくとも1つのエラストマーは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、およびそれらの混合物よりなる群から選択し得る。
【0021】
本開示の材料対象は、天然起源の無機物成分を含む床敷物(または、床被覆物:floor covering)、好ましくは、弾性床を提供することを可能にする。特に、アラゴナイトの形態の炭酸カルシウムの粒子を含む生物起源補強フィラーは、双殻類(または、二枚貝:bivalve)軟体動物の殻から得ることもできる。上記補強フィラーは、腹足類(gastropod)軟体動物の殻から得ることもできる。前記の軟体動物(例えば、ムセル(または、イガイ:mussels)、クラム(または、二枚貝:clams)、コックル(または、ザルガイ:cockles)、オイスター(または、カキ:oysters)、シー・スネイル(または、ウミ巻貝:sea snails)(モノドンタ(Monodonta))、リンペット(または、カサガイ:limpets)、スパイニィ・ミューリス(または、トゲガイ:spiny murices)等)の殻の石化(または鉱化:mineralized)組織は炭酸カルシウム源を示し、その特有の結晶形態により、剛性、重量、強度および靭性(toughness)の点で最適である被覆材特性を与えることができる。さらに、本明細書に記載されるアラゴナイト形態の炭酸カルシウムの粒子は、以下に記載されるように、採掘された炭酸カルシウムを補強フィラーとして含む被覆材と比較して改善された特性を有する被覆材、特に弾性床を得ることを可能にする。
【0022】
(図面の簡単な説明)
以下に列挙する付属図を参照して、純粋に非限定的例として1つ以上の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、炭酸カルシウム(CaCO
3)の結晶形態の模式図である。
【
図2】
図2は、軟体動物の殻を粉砕して得られた生物起源CaCO
3の試料(試料1)と、採掘された商業的CaCO
3の試料(試料2)のX線回折(XRD)から得られたスペクトルを示す;この分析により、異なる試料に存在する結晶構造を同定し、CaCO
3の性質を追跡することが可能になる。
【
図3】
図3は、採掘されたCaCO
3の2つの試料(試料3および試料4)のX線回折から得られたスペクトルを示す。
【
図4】
図4は、生物起源CaCO
3の2つの試料について、温度上昇に伴う重量の変化を評価するために実施した熱重量分析(TGA)の結果を示す。この分析により、試料の熱安定性および組成を評価できる。試料中に存在する有機成分は、500℃より高い分解温度を有し、その結果、コンキオリンを含む有機成分の含有量は、炭酸カルシウムの重量に対して0.5重量%~7重量%の範囲にある。
【
図5】
図5は、生物起源CaCO
3から得られた粒径の異なる3つの試料と比較した、採掘されたCaCO
3の商業的試料の寸法分布のガウス曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【発明の詳細な説明】
【0024】
(詳細な説明)
続く説明において、本明細書による1つ以上の実施形態の例の深い理解を可能にする目的で、種々の具体的な詳細を示す。実施形態は、1つ以上の特定の詳細がなくても、または他の方法、構成要素、材料等を用いて得られ得る。他の場合において、実施形態の種々の態様が不明瞭にならないように、既知の構造、材料、または動作は詳細に示されないかまたは説明されない。本明細書の枠組みにおける「ある実施形態」または「一実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の構成、構造または特性が、少なくとも1つの実施形態において含まれることを示すことを意図している。したがって、本明細書の種々の箇所に存在し得る「ある実施形態において」または「一実施形態において」のごとき語句は、必ずしも1つのおよび同一の実施形態をいうものではない。さらに、特定のコンフォメーション(または、配置:conformation)、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において適切に組み合わせ得る。
【0025】
本明細書で使用される参考文献は、便宜のためにのみ提供され、したがって、保護領域または実施形態の範囲を規定するものではない。
【0026】
アラゴナイト形態の炭酸カルシウム粒子を含む補強フィラーは、生物起源補強フィラーであり、ここで、本明細書の文脈において使用される用語「生物起源」とは、数ヶ月、数年、または数十年にわたって再生可能な炭素のごとき元素を含む材料をいう。特に、再生可能な資源は、「ヒト」時代のスケールにおいて、自然プロセスによって再生し得る無尽蔵の天然資源と定義し得る。非生物起源(または自然発生的もしくは無生物起源:abiogenic)物質は、再生不可能であり得るか、または数世紀あるいはそれ以上の時間スケールで再生可能でさえあり得る。原材料の入手から使用済みまでの製品のライフサイクル全体を通してのエネルギー収支の評価および定量化の方法は、ISO基準の14040シリーズにより規定されるライフサイクル分析(LCA)である。
【0027】
本明細書の生物起源補強フィラー対象は、生物起源炭酸カルシウムを含む補強フィラーである。上記生物起源炭酸カルシウムは、アラゴナイト形態の炭酸カルシウム粒子を含み、カルサイトの形態の炭酸カルシウム粒子をさらに含み得る。上記生物起源炭酸カルシウムは、生物起源補強フィラーの90重量%~98重量%(w/w)で構成される重量%で存在し得る。
【0028】
文献中に存在する公表文献(または、出版物)によっても指摘されるごとく、生物起源炭酸カルシウムは、採掘された炭酸カルシウムよりも高いサスティナビリティを有する(軟体動物による炭素隔離に関する勧告;水産養殖諮問委員会AAC 2022-16;A.A.アロンソ;X.A.アルバレス-サルガト゛;L.T.アンテロ(2021), 炭素循環経済に関する双殻類水産養殖の影響の評価, クリーナー製造雑誌,第279巻, 123873(Recommendation on carbon sequestraction by molluscs; Aquaculture Advisory Council AAC 2022-16; A.A. Alonso; X.A. Alvarez-Salgado; L.T. Antelo (2021), Assessing the impact of bivalve aquaculture on the carbon circular economy, Journal of Cleaner Production, Vol. 279, 123873))。
【0029】
補強フィラーとして生物起源炭酸カルシウムで作製された床(または、床材:flooring)は、採掘された炭酸カルシウムを使用した同様の床材よりもよりサスティナブルであるという点で、今日大きな関心を集めている。
【0030】
一方、炭素を含む生物起源材料を特定するための利用可能な分析方法も存在する。例として、参照は、ASTM規格D6866-20 Method B(AMS)に示されるC14炭素含有量の分析方法、または規格EN16640または規格ISO16620-2に示される方法に成し得る。
【0031】
本開示の発明者らは、少なくとも1つのエラストマーと生物起源補強フィラーとを含み、生物起源補強フィラーがアラゴナイト形態の生物起源炭酸カルシウム粒子を含む、好ましくは、弾性床用の被覆材を製造した。
【0032】
上記フィラーは、カルサイト形態の生物起源炭酸カルシウムの粒子をさらに含み得る。
【0033】
アラゴナイト形態の炭酸カルシウム粒子を含む生物起源補強フィラーは、さらに、少なくとも1つの有機化合物、好ましくは、コンキオリン、より好ましくは、炭酸カルシウム粒子の重量に対して0.5重量%~15重量%、さらにより好ましくは、0.5重量%~7重量%で構成される量を含み得る。
【0034】
1つ以上の実施形態において、炭酸カルシウム粒子は、4μm~400μm、好ましくは、4μm~200μmで構成される平均直径を有し得る。平均直径はD50(粒子の直径の中央分布で表される。
【0035】
アラゴナイト形態の生物起源炭酸カルシウムの粒子を含む生物起源補強フィラーは、被覆材の重量に対して5重量%~70重量%、好ましくは、10重量%~50重量%で構成される量で材料中に存在し得る。
【0036】
アラゴナイト形態の生物起源炭酸カルシウム粒子を含む生物起源補強フィラーは、エラストマーの重量に対して15重量%~300重量%、好ましくは、20重量%~150重量%で構成される量で存在し得る。
【0037】
本出願の対象を形成する材料において補強フィラーとして使用される炭酸カルシウムは、生物起源炭酸カルシウム、すなわち、天然起源の炭酸カルシウムであり、これは、予想されるごとく、また以下の内容から明らかになるごとく、エラストマー系材料の補強フィラーとして今日最も広く使用されている材料の一つである採掘された炭酸カルシウムを超える有利さを示す。
【0038】
特に、本明細書の1つ以上の実施形態は、生物起源補強フィラーとして、腹足類および/または双殻類の軟体動物の殻に含まれる生物起源炭酸カルシウム(「石化組織(mineralized tissue)」としても知られる)の使用を想定している。双殻類軟体動物は、ムセル、クラム、コックル、オイスター、スカロップ(または、ホタテガイ:scallops)、およびそれらの組合せよりなる群から選択し得る。腹足類軟体動物は、シー・スネイル(モノドンタ)、リンペット(または、カサガイ:limpet)、スパイニィ・ミューリス、およびそれらの組合せよりなる群から選択し得る。
【0039】
本明細書の対象を形成する材料に含まれるアラゴナイト形態の炭酸カルシウム粒子は、
-双殻類軟体動物、好ましくは、ムセル、クラム、コックル、スカロップ、オイスター、およびそれらの組合せよりなる群から選択されるものの殻、および/または腹足類軟体動物、好ましくは、シー・スネイル(モノドンタ)、リンペット、スパイニィ・ミューリス、およびそれらの組合せよりなる群から選択されるものの殻を供する工程;
-殻を造粒して粒状材料(または、顆粒状物質:granular material)を得る工程;および
-粒状材料を微粉砕して、アラゴナイト粒子の形態の炭酸カルシウムを含む粉末を得る工程
を含む工程に付された双殻類および/または腹足類の軟体動物の殻から得ることもできる。
【0040】
前記生物起源炭酸カルシウムの使用から由来するさらなる有利さは、軟体動物の殻が食品産業の廃棄物に由来し得る;軟体動物および魚介類の加工食品産業は、毎年数百万トンの軟体動物の殻が発生し、可食部の消費後、コードCER 020203「消費または加工に使用できない廃棄物」で廃棄物処理場(dumps)において廃棄されることである。廃棄物に分類されるため、典型的には廃棄物処理場に捨てられるか、または海に撒かれるが、軟体動物の殻は潜在的に再利用可能なバイオマテリアルの源、とりわけ再生可能で高度に持続可能な源を示す。しかしながら、炭酸カルシウムを抽出するために、複雑でかつ高価な手順(例えば、熱分解により)を用いて、これらの材料を再利用する種々の試みがなされてきた。さらに、殻に含まれる高含有量の炭酸カルシウムが、堆肥化プロセスに使用できなくする。
【0041】
本方法は、殻の洗浄工程を含むこともでき、好ましくは、水中で行うこともでき、材料の分解と不快臭の発生に対抗するような方法で塩類(例えば、塩化ナトリウム、NaCl)および残留有機成分の一部を除去する目的を有する。洗浄工程の後に、例えば、熱風を使って殻を乾燥させる工程が続き得る。乾燥を容易にするためには、エネルギー消費を最小化するために、材料に対して対向流の熱風の流れを使用することが好ましい。
【0042】
洗浄した殻の造粒工程は、単純な造粒機(ボールミルまたはハンマーミル)を用いて実施し得、0.1mm~10mmの粒径を含む造粒された材料を得ることができる。
【0043】
造粒された材料の微粉化工程は、低研磨性を有する無機物に適したディスクまたはハンマーの微粉化ミルを使用して実施し得る。閉鎖循環式(closed-circuit)製造プロセスにより、ふるいを用いて適切な粒径の材料の分離ができ、それは、4μm~400μm、好ましくは、4μm~200μmの炭酸カルシウム粒子を得るのを可能にする。生物起源補強フィラーは、双殻類および/または腹足類の軟体動物の殻の粉末を含み、好ましくは、それからなり得、好ましくは、粒子の平均サイズが4μm~400μm、より好ましくは、4μm~200μmで構成される。
【0044】
本出願の発明者らは、剛性、含有重量、強度および靭性のごとき特性の特定の組合せにより特徴付けされる床被覆材を得るために、生物起源補強フィラーの最適な使用条件、特にエラストマーの重量に対する比重比(エラストマーの重量の15重量%~300重量%、好ましくは、20重量%~150重量%)、同様にフィラーの粒径(または、粒子サイズ:particle size)を同定した。
【0045】
本出願の発明者らによって驚くべきことに指摘のごとく、採掘された炭酸カルシウムに代えて生物起源炭酸カルシウムの使用により、荷重および応力の最適な分配を可能にする炭酸カルシウムの特有の結晶構造により、およびタンパク質成分(コンキオリン)の存在により、ゴム製の優れた機械的特性で作製された弾性床用の被覆材を付与し得る。具体的には、軟体動物の殻は、コンキオリンのタンパク質層が生物起源炭酸カルシウムの結晶の異なる層間の橋として機能する、階層構造を示す。コンキオリンの存在および生物起源炭酸カルシウムの特有の構造により、今日相溶化作用機序は知られていないけれども、ポリマーマトリックスとのより大きな相溶性を可能にし;品質が、例えば、有機シラン化合物を加えたシランの補強材としての使用で得られたものに同様であるという事実を強調するいずれの場合においてもそれは興味深い。本開示の主題を形成する生物起源炭酸カルシウムの回収プロセスは、焼成の工程を含まないため、有機画分の維持を可能にし、したがってそこから由来する相溶化効果の使用を可能にする。
【0046】
生物起源炭酸カルシウムと採掘された炭酸カルシウムを区別する特徴は、結晶形態の違いにある。
【0047】
図1は、菱面体晶系カルサイト、六方晶三方晶系(hexagonal trigonal)カルサイト、斜方晶系(orthorhombic)アラゴナイトのごとき、炭酸カルシウム粒子の種々の結晶形態の模式図であり、これらの結晶形態の各々は、炭酸カルシウムが補強フィラーとして使用される最終製品に異なる特性を与えることができる。
【0048】
X線回折(XRD)は、岩石中の無機物のごとき元素の組合せで存在する構造および結晶を同定するための分析技術である。炭酸塩のごとき可変の式および構造を有する無機物については、XRD法が試料中の同定および割合の決定に広く用いられ;さらに、スペクトルは、特有の(specific)結晶形態を同定する。
【0049】
文献からも知られるごとく、海洋/水生界に由来する生物起源炭酸カルシウムの結晶形態は、アラゴナイトである。特に、双殻類軟体動物の殻に存在する炭酸カルシウムは、一般的にアラゴナイト形態で存在し;いくつかの場合、それはアラゴナイトおよびカルサイトの双方を含み得る。カルサイトの多形化合物としても知られるアラゴナイトは、カルサイトよりも高密度(アラゴナイトについて3g/cm3およびカルサイトについて2.7g/cm3)を持つ、不安定な結晶構造を有する。より高密度は、カルシウムのより大きな配位に由来し、したがって、よりコンパクトな結晶格子から由来し、より高圧力およびより低温での安定性範囲を有し、これらは、双殻類軟体動物を育てる場合、主に水中で見出される必要なものである。
【0050】
採掘された炭酸カルシウムは主にカルサイトおよび他の採掘結晶からなるが、結晶形態のアラゴナイトは存在しない。特に、回折計「XPERT Pro」を使用し、5≦2θ≦80の間でスキャンを行い、表1に示すごとく、前述のセクションで説明したプロセスから得られた粉砕された軟体動物の殻から得られた生物起源炭酸カルシウムの試料(試料1)、およびイタリアの異なる地域に位置する採掘場に由来する炭酸カルシウムの3つの商業的試料(試料2、3、4)から得られたスペクトルの分析を行った。
【0051】
種々の試料(粉末形態の)から得られた結果を、カルサイト、アラゴナイトおよびアンケライトのごとき純粋相のスペクトルと比較し、アンケライトは、強マンガン性ドロマイト(化学式Ca(Fe++,Mg,Mn)(CO3)2とみなされる菱面体晶系(rhombohedral)炭酸塩群の無機物である。
【0052】
【0053】
図2(試料1および2)および
図3(試料3および4)に示すディフラクトグラム(または、回折図:diffractograms)の結果は、本開示の対象を形成する生物起源炭酸カルシウムの試料(試料1)のみにアラゴナイトが存在することを示す。
【0054】
軟体動物の殻は、主成分としての炭酸カルシウム(炭酸カルシウムは殻の重量の90重量%~95重量%を構成する)に加えて、リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイト)、タンパク質化合物としてのコンキオリンも含む。殻から抽出された炭酸カルシウム中の有機物の存在は、本明細書に記載された材料に存在する生物起源補強フィラーをさらに特徴付ける。本開示の対象を形成する被覆材料に含まれる生物起源炭酸カルシウムは、予め真水(または、新鮮な水:fresh water)で洗浄し乾燥させた殻の造粒および微粉砕から得ることができ、抽出または浸出のいずれの工程にも付されず、有機生物物質の含有量を有し得る。有機物質の含有量は、炭酸カルシウムの総重量に対して0.5重量%~15重量%、より頻繁には0.5重量%~7重量%で構成し得る。
【0055】
本出願の発明者らは、前記セクションに記載のごとき双殻類軟体動物の殻から抽出した生物起源炭酸カルシウムの試料について熱重量分析(TGA)を行った。結果を
図4に示し、サーモグラムから有機生物学的物質の存在が、200℃未満の温度範囲では試料の重量損失(loss)として確認できる(炭酸カルシウムの分解による試料の重量損失は500℃を超える、より高温で生じる)。
【0056】
1つ以上の実施形態において、本開示の対象を形成する材料に含まれるエラストマーは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、熱可塑性エラストマー(TPE)、熱可塑性加硫エラストマー(TPV)、それらの混合物のごとき合成ゴムよりなる群から選択し得る。
【0057】
1つ以上の実施形態において、材料は、加硫ミックスからリサイクルされた粉末(製造プロセスから生じる切粉)をさらに含み得る。この粉末は、SBR/NRエラストマー、フィラーおよび添加剤の加硫および破砕ミックスを含むこともでき、一般的にエラストマーはミックスの30重量%を占める。
【0058】
1つ以上の好ましい実施形態において、少なくとも1つのエラストマーは、スチレン-ブタジエンゴムまたはエチレン-プロピレン-ジエンゴムを含み得る。
【0059】
1つ以上の実施形態において、少なくとも1つのエラストマーは、10重量%~70重量%、好ましくは、10重量%~50重量%(w/w)で構成される量の材料中に含有し得る。
【0060】
好ましくは、被覆材は、エラストマーの重量に対して、15重量%~300重量%、好ましくは、20重量%~150重量%で構成される量の生物起源補強フィラーを含む。
【0061】
1つ以上の実施形態において、被覆材は、合成ゴムおよび天然ゴムの双方に適合するさらなる補強フィラーを含み得る。さらなる補強フィラーは、カオリン、カーボンブラック、シリカ、および三酸化アルミニウムよりなる群から選択し得る。さらなる補強フィラーは、エラストマーの重量に対して1重量%~50重量%の間で構成される量で材料中に含有し得る。
【0062】
1つ以上の実施形態において、記載された材料は、工業プラントにおける材料の粘度および作業性を制御するのに有用な、「プロセスアジュバント(process adjuvants)」とも呼ばれる化学添加剤を含有し得る。
【0063】
1つ以上の実施形態において、被覆材は、架橋系:硫黄および場合により酸化亜鉛および促進剤、硫黄供与体、または過酸化物架橋剤(例えば、ジクミルペルオキシドまたはt-ブチルペルオキシド)、または引用した3つのプロセスの組合せを含み得る。
【0064】
1つ以上の実施形態において、被覆材は、少なくとも1つの架橋促進剤(crosslinking accelerator)を含み得る。架橋促進剤は、例えば、シクロヘキシル-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS、CAS番号95-33-0)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD、CAS番号137-26-8)、メルカプトベンゾチアゾール(MTB、CAS番号149-30-4)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZDBC、CAS番号136-23-2)、または同族の他の促進剤(スルフェンアミド類、チウラム類、チアゾール類、カーバメート類)よりなる群において選択し得る。
【0065】
被覆材はさらに、少なくとも1つの可塑剤化合物を含み得る。可塑剤化合物は、フタル酸のエステル、リン酸のエステル、アジピン酸塩(または、アジピン酸エステル)、セバシン酸塩(または、セバシン酸エステル)、脂肪族および芳香族オイル、アンチオゾン剤および分散ワックス、ポリエチレングリコール(PEG)、脂肪酸のエステル、金属石鹸(例えば、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸亜鉛)、酸化亜鉛およびステアリン、強化(reinforcing)樹脂、天然起源のオイル混合物、場合によりエポキシド(または、エポキシ化物:epoxidates)、ならびに接着の促進剤または阻害剤よりなる群から選択し得る。可塑剤化合物は、エラストマーの重量に対して0重量%~130重量%で構成される量で材料中に含有し得る。
【0066】
被覆材はさらに、好ましくは、メルカプトシラン、ビニルシラン、クマロン、炭化水素から誘導される樹脂および/またはワックス(例えば、ベンゾフラン、クマロン、脂肪族炭化水素樹脂と呼ばれる樹脂、一般的に「C5樹脂」、「C9樹脂」、または「C5/C9樹脂」と呼ばれる樹脂)、長鎖脂肪酸、好ましくは、ステアリン酸およびオレイン酸、ならびにこれらの混合物よりなる群から選択される少なくとも1つの相溶化化合物を含み得る。相溶化化合物は、エラストマーの重量に対して0重量%~10重量%で構成される重量%で材料に含有し得る。
【0067】
1つ以上の実施形態において、被覆材料はさらに、有機顔料または無機顔料、好ましくは、酸化チタン顔料、酸化鉄顔料、酸化クロム顔料、フタロシアニン顔料、およびピロール顔料よりなる群から選択される顔料を含み得る。
【0068】
この材料はさらに、好ましくは、フェノール系酸化防止剤よりなる群から選択される少なくとも1つの酸化防止剤を、エラストマーの重量に対して0.5重量%~5重量%で構成される重量パーセントで含み得る。
【0069】
本開示はさらに、被覆材を製造する方法を提供し、本方法は、以下の工程:
-好ましくは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム(NR)、およびそれらの混合物のごとき合成ゴムよりなる群において選択される少なくとも1つのエラストマーを供する工程;
-アラゴナイト形態の生物起源炭酸カルシウム粒子を含む少なくとも1つの生物起源補強フィラーを供する工程;
-前記少なくとも1つのエラストマーと前記少なくとも1つの生物起源補強フィラーとを混合して均質な組成物を得る工程;および
-任意選択で、前記組成物に、少なくとも1つのさらなる補強フィラー、架橋促進剤、膨張促進剤、可塑剤、顔料、相溶化剤、および酸化防止剤の中から選択される少なくとも1つのさらなる成分を添加する工程を含む。生物起源補強フィラーは、双殻類および/または腹足類の軟体動物の殻の粉末よりなり得る。
【0070】
本方法はさらに、例えば、シート形態の被覆材を得るために、組成物を押出成形および/またはカレンダー成形するさらなる工程を含み得る。
【0071】
1つ以上の実施形態において、アラゴナイト形態の炭酸カルシウム粒子を含む少なくとも1つの生物起源補強フィラーを供する工程は、以下の工程:
-双殻類および/または腹足類の軟体動物の殻、好ましくは、ムセル、クラム、コックル、スカロップ、オイスター、シー・スネイル(モノドンタ)、リンペット、スパイニィ・ミューリスおよびそれらの組合せよりなる群において選択されるものを供する工程;
-殻を洗浄する工程;
-洗浄を終えた殻を造粒して粒状材料を得る工程;
-粒状材料を微粉砕して、アラゴナイト形態の炭酸カルシウムの粒子を含む粉末の形態の補強フィラーを得る工程を含む。
【0072】
エラストマーと生物起源補強フィラーとを混合する工程は、少なくとも1つのエラストマーと少なくとも1つの生物起源補強フィラーとを、最初に1つの工程のみで、またはいくつかの連続した工程において、任意選択で、少なくとも1つのさらなる補強フィラー、架橋剤および/または膨張促進剤、可塑剤、顔料、および酸化防止剤の添加と共に組み込む混合機を用いて実施し得る。
【0073】
その結果、本開示の1つ以上の実施形態は、本明細書に記載の被覆材を含む床を対象として有する。
【0074】
1つ以上の実施形態において、被覆材は、好ましくは、シート形態で、被覆される表面に直接的に適用できる。1つ以上の実施形態において、その材は(既知のタイプの)基材上に適用でき、その基材は次に、覆われるべき表面(例えば、フローリングの表面)上に直接的に適用される。被覆する表面または基材(substrate)上への適用は、例えば、接着または機械的固定の技術によって生じ得る。これらの適用技術は公知であるため、本明細書で詳細な説明を必要としないものとみなされる。
【0075】
1つ以上の実施形態において、被覆材は、好ましくは、1mm~15mmで構成される厚さで、層状形態にて製造し得る。一方、本明細書に記載された解決策は、タイル形態の被覆材の製造にも適していることが理解されるであろう。記載されたその材の1つ以上の層は、公知の技術を使用して、相互の頂部で重ねるか、または結合し得る。シート形態またはタイル形態の被覆材は、さらに、例えば、以下:(i)寸法安定性および強度を付加するために、含浸させたガラス繊維で作製されたフェルトまたは不織布の層;(ii)リノリウムまたはPVCの層;(iii)コルクコア(cork core)の層;(iv)天然ゴムまたは合成ゴムのコアの層;(v)天然ゴムまたは合成ゴム(加硫化の有無を問わない)で作製された支持層またはトレーディング(treading)層、ここに、床は接着剤なくして自由に設置されるように設計し得る;および(vi)圧力感受性接着層(pressure-sensitive adhesive layer)の少なくとも1つの中から選択される他の被覆材の頂部に敷設されるか、または他の被覆材と結合し得る。層のいずれかは、樹脂、フィルム、またはエラストマー材料で含浸またはコートし得る。
【0076】
1つ以上の実施形態において、好ましくは、スポーツ用途の場合、本開示の対象を形成する被覆材は、衝撃の吸収および防音性を改善させるため、または床下表面の欠陥を転写する可能性を低減させるために、展伸材(expanded material)の形態で存在し得る。
【0077】
実施例1-アラゴナイト形態の炭酸カルシウム粒子を含む生物起源補強フィラーの調製
以下において、双殻類軟体動物の殻の粉末形態の生物起源補強フィラーの調製例を提供する。
【0078】
可食部の消費(食用に適さないため廃棄)後の軟体動物の殻から出発して生物起源炭酸カルシウムを得るための最初の工程は、乾燥し、無臭で、殻の5重量%未満の有機部分の含有量を有する製品(または、生成物)(可食部を除去した殻に代表される)を得ることである。
【0079】
殻を粉砕する工程は、2つの工程:直径1mmの粒子を得るための第1工程の造粒;および弾性床の製造に適した粒径40μm未満の粒子を有する粉末を得るための第2工程の微粉砕を想定し得る。
【0080】
実施例2-被覆材の準備
以下(表2)において、本明細書による被覆材の組成の非限定的例示を提供する。
【0081】
【0082】
以下に報告するのは、説明したその材の調製プロセスの一例である。
【0083】
表2に提供されたもののような高粘度ポリマーを処理するためには、ホッパー(hopper)よりなる不連続ミキサーを使用し、その中にまずポリマーおよび可塑剤を入れ、引き続いて補強フィラーおよび促進剤を入れ、ピストンが材料を混合室に押し込み、ここに、混合作用を行う2つの逆回転ローターが存在する。ローターは材料と多量の摩擦を生成し、その温度を急速に上昇させ:加硫温度が達成されないようにすることが重要である。得られたミックスは、混合室底部の開口部を介して排出され、引き続いての処理(または、加工:processing)工程に送られる。
【0084】
次に、ミックスは、得られたシートの厚みおよび幅についての寸法を規定するカレンダー(または、光沢機:calender)を通過する。このシートは、それ自体で使用し得る、または所望の特性を提供するように、引き続いての工程においてさらなるシートと結合させて使用し得る。かくして作製されたシートは、熱風オーブン中またはホットプレスを介する通過、オートクレーブ中の加硫、塩浴中の加硫の種々の方法で生じ得る加硫プロセスの準備ができている。
【0085】
実施例3-比較試験
【0086】
採掘された炭酸カルシウムに代えての生物起源炭酸カルシウムの使用は、炭酸カルシウム特有の結晶構造により、ゴム製の床に優れた機械的特性が付与し、荷重および応力の最適な双方向分散を可能にする。これらの改善は、コンキオリン(生物起源炭酸カルシウムの重量に対して約2重量%)、すなわち、生物起源炭酸カルシウム中の有機成分の存在によっても促進され、非常に柔軟で弾性のあるバイオポリマーマトリックスとして機能する。この成分は、アラゴナイトの結晶(炭酸カルシウムの準安定形態)が核となって成長する環境を構成し、まさに分子レベルでの環境のコンフォメーション(コンキオリンの高分子(または、巨大分子:macromolecules)の形状および配列による)は、カルサイトに代えてアラゴナイトの結晶形成を促進する(または、支持する:favour)。コンキオリンファイバーはさらに、凝集しているミネラル粒子の柔軟な支持を提供し、最終製品の強度を決定するのに貢献する。
図5に示したものと同じ組成および粒度分布を有する4つのミックスを得、実施例2に記載したものと同じ方法を実施し;炭酸カルシウム含有量を25重量%に固定し、得られた結果を比較した。
【0087】
炭酸カルシウムの寸法特性、特に、寸法分布をレーザー回折法で測定した。この技術では、粉体の粒子径(または、粒子サイズ)は、粒子の体積に相当する体積を有する球体の直径として測定される。通常、粒度分析(granulometric)分布は直径D10、D50およびD90によって特徴付けられ、これは分析試料の10%、50%および90%が存在する未満の粒子サイズ(ミクロン単位)を表す。
【0088】
1.粒径D50=4μmおよびD90=40μmの採掘された炭酸カルシウム
2.粒径D50=4μmおよびD90=40μmの生物起源炭酸カルシウム
3.粒径D50=40μmおよびD90=200μmの生物起源炭酸カルシウム;
4.粒径D50=40μmおよびD90=200μmの生物起源炭酸カルシウム。
【0089】
【0090】
実験結果は、D90=40μmの生物起源カーボネートおよびD90=200μmの生物起源カーボネートの双方の有意な補強効果を強調する(表3)。
【0091】
D90=40μmの材料は、Kaの結果を危険にさらすことなく、採掘された炭酸塩の使用と比較して、15%の極限強度の増加と30%の伸展性(または、拡張性)の増加を得ることを可能にする。この結果は非常に重要であり、同じコストであれば、製剤コストのかなりの低減、または特性のかなりの改善を提供する。
【0092】
D90=200μmの材料は、D50=4μmの採掘された炭酸カルシウムを配合したミックスに匹敵する機械的特性を達成するのを可能にする。
【外国語明細書】