(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068188
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】レドーム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20240510BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G01S7/03 246
H01Q1/42
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188859
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2022177108の分割
【原出願日】2022-11-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】杵鞭 孝広
(72)【発明者】
【氏名】古林 宏之
(72)【発明者】
【氏名】澤田 裕基
【テーマコード(参考)】
5J046
5J070
【Fターム(参考)】
5J046AA06
5J046RA14
5J070AB24
5J070AF03
(57)【要約】
【課題】レドーム本体から全体が局所的に突出する融雪部を無くし、融雪部が破損して故障することを防止できる。
【解決手段】電磁波透過性の第1の樹脂基材で形成されるレドーム本体2と、第1の樹脂基材と屈折率が相互に整合する電磁波透過性の第2の樹脂基材で形成される融雪基体3と、融雪基体3の電磁波透過領域Rに配線されて融雪基体3に固着されているヒーター線4を備え、レドーム本体2の電磁波透過領域Rを含む局所領域に電磁波透過方向にへこむ凹部21が形成され、ヒーター線4が内部に埋設されるようにして融雪基体3が凹部21に嵌着されているレドーム1。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波透過性の第1の樹脂基材で形成されるレドーム本体と、
前記第1の樹脂基材と屈折率が相互に整合する電磁波透過性の第2の樹脂基材で形成される融雪基体と、
前記融雪基体の電磁波透過領域に固着されているヒーター部を備え、
前記レドーム本体の電磁波透過領域を含む局所領域に電磁波透過方向にへこむ凹部が形成され、
前記ヒーター部が内部に埋設されるようにして前記融雪基体が前記凹部に嵌着され、
前記凹部が前記レドーム本体の周縁を切り欠くようにして設けられ、
前記ヒーター線に電気的に接続された電源供給ケーブルが前記レドーム本体の側方に引き出されていることを特徴とするレドーム。
【請求項2】
前記レドーム本体の前記凹部の形成側の表面と前記融雪基体の外表面の主要部とが略面一で形成されていることを特徴とする請求項1記載のレドーム。
【請求項3】
前記レドーム本体の前記凹部の非形成側の表面が外からの視認側に配置されると共に、前記レドーム本体の前記凹部の形成側の表面がレーダー装置側に配置されていることを特徴とする請求項1記載のレドーム。
【請求項4】
前記ヒーター部が前記融雪基体の電磁波透過領域に配線されているヒーター線で構成され、
前記ヒーター線が前記レドーム本体に直接固着されていることを特徴とする請求項3記載のレドーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車載レーダー装置の前側に設けられるレーダー装置用レドームに係り、特に融雪機能を有するレドームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、融雪機能を有するレドームとして、ミリ波の透過領域にヒーター線が配線されるレドームが知られており、このようなレドームとして特許文献1に開示されている車両用フロントグリルがある。
【0003】
この車両用フロントグリルでは、ミリ波レーダー装置の前側にフロントグリルの骨格部分であるグリル本体が配置され、外観上の一体性を損なわないように、グリル本体のミリ波透過部とミリ波透過部以外の部分とが境界部分に分割線のような凹凸がない状態で一体に形成され、蛇行配線されたヒーター線が一対のシートで被覆された発熱体の前側のシートがミリ波透過部の後面に真空状態で接着されて、ミリ波透過部にヒーター線が配線されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の車両用フロントグリルは、発熱体の前側のシートがグリル本体のミリ波透過部の後面に接着され、グリル本体のミリ波透過部の後側に別部材の発熱体の全体が局所的に突出するように接着される構成であるため、別部材の発熱体が破損して、故障し易い形状になっている。そのため、例えば車両部品であるレドーム本体から融雪部の全体が局所的に突出しない構造のレドームが求められている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、レドーム本体から全体が局所的に突出する融雪部を無くし、融雪部が破損して故障することを防止できるレドームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のレドームは、電磁波透過性の第1の樹脂基材で形成されるレドーム本体と、前記第1の樹脂基材と屈折率が相互に整合する電磁波透過性の第2の樹脂基材で形成される融雪基体と、前記融雪基体の電磁波透過領域に固着されているヒーター部を備え、前記レドーム本体の電磁波透過領域を含む局所領域に電磁波透過方向にへこむ凹部が形成され、前記ヒーター部が内部に埋設されるようにして前記融雪基体が前記凹部に嵌着されていることを特徴とする。
これによれば、レドーム本体とは別体の融雪基体をヒーター部が内部に埋設されるようにして凹部に嵌着することにより、レドーム本体から全体が局所的に突出する融雪部を無くすことができ、融雪基体とヒーター部で構成される融雪部が破損して故障することを防止することができる。また、局所領域の凹部に対応する大きさの小さい融雪基体にヒーター部を固着することができるので、ヒーター線の配線等のヒーター部の設置を行う製造設備の自由度の向上、融雪部の取扱性の向上、製造工程の効率化を図ることができる。また、ヒーター部やヒーター部の電気的な接続部分が内部に埋設されることになるから、ヒーター部やヒーター部の接続部分の防水性、耐候性、耐食性、耐傷性を確保することができる。また、融雪基体を共通部品化することにより、レドーム本体のデザインを変えるだけで、融雪機能を有する多様なレドームを低コストで得ることができる。
【0008】
本発明のレドームは、前記レドーム本体の前記凹部の形成側の表面と前記融雪基体の外表面の主要部とが略面一で形成されていることを特徴とする。
これによれば、レドーム本体の表面と別体の融雪基体の外表面の主要部を略面一とすることにより、融雪基体への別部材の引っ掛かり等を最大限防止し、融雪部が破損して故障することをより確実に防止することができる。
【0009】
本発明のレドームは、前記レドーム本体の前記凹部の非形成側の表面が外からの視認側に配置されると共に、前記レドーム本体の前記凹部の形成側の表面がレーダー装置側に配置されていることを特徴とする。
これによれば、レドーム本体とレドーム本体の凹部に嵌着された別体の融雪基体との境界部分が外から視認されることを防止でき、レドーム本体の外からの良好な視認性を確保することができる。
【0010】
本発明のレドームは、前記ヒーター部が前記融雪基体の電磁波透過領域に配線されているヒーター線で構成され、前記ヒーター線が前記レドーム本体に直接固着されていることを特徴とする。
これによれば、ヒーター線がレドーム本体に直接固着され、レドーム本体とヒーター線との間に樹脂シートのような別部材を設けずに済むことから、外側に配置されるレドーム本体の凹部の非形成側の表面への熱伝導効率を高めることができ、レドームの外表面に付着した雪や氷を確実に融雪することができる。
【0011】
本発明のレドームは、前記ヒーター部に電気的に接続された電源供給ケーブルが前記融雪基体の側面から離れた状態で前記レーダー装置側に引き出され、前記電源供給ケーブルの外周に射出成形材の前記レドーム本体が固着されていることを特徴とする。
これによれば、電源供給ケーブルの引き出す位置の自由度を高めることができると共に、電源供給ケーブルの外周への射出成形材のレドーム本体の固着により、電源供給ケーブルを所望の引き出した位置に位置決めして固定することができる。
【0012】
本発明のレドームは、前記ヒーター部に電気的に接続された電源供給ケーブルが前記融雪基体の側面に固着された状態で前記レーダー装置側に引き出され、前記電源供給ケーブルと前記電源供給ケーブルが固着された前記融雪基体の側面とに射出成形材の前記レドーム本体が固着されていることを特徴とする。
これによれば、融雪基体に対して射出成形でレドーム本体を形成する場合等に、電源供給ケーブルを所要の引き出し位置に簡単に位置決めし、固定することができる。
【0013】
本発明のレドームは、電源供給ケーブルに電気的に接続される導電接続板が、前記ヒーター部に電気的に接続された状態で前記融雪基体の背面から前記レーダー装置側に突出して設けられていることを特徴とする。
これによれば、融雪基体の背面からレーダー装置側に突出する導電接続板に適宜の方法で電源供給ケーブルを接続することが可能となり、ヒーター線と電源供給ケーブルとの電気的接続の仕方の自由度を高めることができる。
【0014】
本発明のレドームは、前記融雪基体に内外方向に貫通する係止穴が形成され、射出成形材の前記レドーム本体が前記係止穴に充填されて前記レドーム本体と前記融雪基体が固着されていることを特徴とする。
これによれば、融雪基体のレドーム本体への固着強度を非常に高めることができ、レドームの強度、耐久性を向上することができる。
【0015】
本発明のレドームは、前記融雪基体の少なくとも一部の側面が傾斜面で形成され、射出成形材の前記レドーム本体が前記傾斜面と固着されて前記レドーム本体と前記融雪基体が固着されていることを特徴とする。
これによれば、融雪基体の傾斜面で射出成形材のレドーム本体との固着面積を広げることができ、融雪基体のレドーム本体への固着強度をより一層高めることができる。また、融雪基体の傾斜面で射出成形時の樹脂流動性を向上し、融雪基体とレーダー本体をより確実に隙間を生ずることなく固着することができる。
【0016】
本発明のレドームは、前記融雪基体の少なくとも一部の側面に凹凸が形成され、射出成形材の前記レドーム本体の凹凸が前記融雪基体の側面の凹凸に嵌合するようにして前記レドーム本体と前記融雪基体が固着されていることを特徴とする。
これによれば、射出成形材のレドーム本体の凹凸と融雪基体の側面の凹凸とが嵌合された状態でレドーム本体と融雪基体が固着されることにより、アンカー効果で融雪基体のレドーム本体への固着強度をより一層高めることができる。
【0017】
本発明のレドームは、前記凹部が前記レドーム本体の周縁を切り欠くようにして設けられ、前記ヒーター線に電気的に接続された電源供給ケーブルが前記レドーム本体の側方に引き出されていることを特徴とする。
これによれば、レドーム本体の凹部の形成側の表面と融雪基体が、車両等の外側を向いている場合と車両等の内側を向いている場合の双方において、レドームの視認性を損なうことなく、ヒーター線に確実な電源供給を行うことができる。
【0018】
本発明のレドームは、前記ヒーター部が前記融雪基体の電磁波透過領域に配線されて固着されているヒーター線で構成されると共に、前記融雪基体が透明樹脂で形成されていることを特徴とする。
これによれば、レドームの出荷検査の際に、ヒーター線の配線状態の乱れの有無を透明樹脂を介して目視確認することが可能となり、レドーム製造工程における便宜性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のレドームによれば、レドーム本体から全体が局所的に突出する融雪部を無くし、融雪部が破損して故障することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)は本発明による第1実施形態のレドームの正面図、(b)はその背面図。
【
図2】(a)は
図1(b)のA-A拡大断面図、(b)は第1実施形態のレドームと車載レーダー装置を示す説明図。
【
図5】第1実施形態のレドームにおける融雪基体付近の拡大背面図。
【
図6】本発明による第2実施形態のレドームの背面図。
【
図7】第2実施形態のレドームの
図4に相当する拡大断面図。
【
図8】第2実施形態のレドームにおける融雪基体付近の拡大背面図。
【
図9】(a)は本発明による第3実施形態のレドームの正面図、(b)はその背面図。
【
図10】第3実施形態のレドームにおける融雪基体付近の拡大横断面図。
【
図11】第3実施形態のレドームにおける融雪基体付近の拡大正面図。
【
図12】第3実施形態のレドームにおける融雪基体付近の拡大背面図。
【
図13】(a)は本発明による第4実施形態のレドームの正面図、(b)はその背面図。
【
図16】第4実施形態のレドームにおける融雪基体付近の拡大背面図。
【
図17】第4実施形態の変形例のレドームの拡大縦断面図。
【
図18】(a)は本発明による第5実施形態のレドームの正面図、(b)はその背面図。
【
図21】第5実施形態のレドームにおける融雪基体付近の拡大背面図。
【
図22】(a)は本発明による第6実施形態のレドームの正面図、(b)はその背面図。
【
図24】(a)は第7実施形態のレドームの拡大縦断面図、(b)は第8実施形態のレドームの拡大縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態のレドーム〕
本発明による第1実施形態のレドーム1は、例えば車両のバンパーに取り付けられるバンパーカバー等として用いられる車載レーダー装置用レドームであり、
図1~
図5に示すように、電磁波透過性の第1の樹脂基材で形成されるレドーム本体2と、レドーム本体2の第1の樹脂基材と屈折率が相互に整合する電磁波透過性の第2の樹脂基材で形成される融雪基体3を備える。
【0022】
レドーム本体2を構成する第1の樹脂基材と、融雪基体3を構成する第2の樹脂基材は、それぞれ絶縁性で電磁波透過性の合成樹脂になっている。また、レドーム本体2を構成する第1の樹脂基材と、融雪基体3を構成する第2の樹脂基材には、異種の合成樹脂又は同種の合成樹脂を用いることができ、複素誘電率に基づき定義される屈折率nが相互に整合する、又は、屈折率nが略同一或いは近接する材料で第1の樹脂基材と第2の樹脂基材を形成すると、電磁波の透過性能向上の観点から好適である。第1の樹脂基材と第2の樹脂基材の近接する屈折率の数値範囲としては、第1の樹脂基材と第2の樹脂基材の屈折率の相違が0~10%の範囲内とすると良好である。
【0023】
ここでの屈折率nは比誘電率実数部ε’rと比誘電率虚数部ε”rから数式1として定義される量である。 透過性の観点から適用周波数における虚数部と実数部の比から数式2として定義される誘電正接(ロスタンジェント)tanδの大きさは0.1以下とすると好適である。また比誘電率実部の大きさは3以下とすると好適である。誘電正接と非誘電率実部の大きさをこれらの数値以下とすることにより、レドームに必要とされる反射率と内部損失の低減を確実にすることが可能となる。
【0024】
【0025】
【0026】
レドーム本体2を構成する第1の樹脂基材と、融雪基体3を構成する第2の樹脂基材には、本発明の趣旨の範囲内で適宜の合成樹脂を用いることが可能であり、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合(ASA)、アクリロニトリル-エチレンプロピルラバー-スチレン共重合体(AES)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)等の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて第1の樹脂基材或いは第2の樹脂基材に用いると良好であり、又、添加剤を含有させてもよい。また、融雪基体3を構成する第2の樹脂基材には発泡樹脂を用いてもよい。また、融雪基体3を構成する第2の樹脂基材に透明樹脂を用いると、レドーム1の出荷検査の際に、ヒーター線4の配線状態の乱れの有無を透明樹脂を介して目視確認することが可能となり、レドーム製造工程における便宜性を高めることができて好適である。
【0027】
レドーム本体2の電磁波透過領域Rを含む局所領域には、本実施形態におけるレーダー装置に相当する車載レーダー装置10から
図2(b)の太線二点鎖線矢印のように照射されるミリ波等の電磁波がレドーム本体2を透過する電磁波透過方向にへこむようにして凹部21が形成されており、
図2及び
図3の例ではレドーム本体2の表面23の略中央位置において、開口側から凹部21の底面211に向かって傾斜する側面が狭まる形状で凹部21が形成されている。凹部21の形状に略倣うように形成された融雪基体3は有底の凹部21に嵌め込まれるようにして凹部21に嵌着されている。
【0028】
融雪基体3には、電磁波透過方向の一方の面に沿うようにしてヒーター線4が配線されており、ヒーター線4は、融雪基体3の電磁波透過領域Rに配線されて融雪基体3に固着されている。図示例のヒーター線4は蛇行状に配線されているが、ヒーター線4の配線形状は本発明の趣旨の範囲内で適宜である。
【0029】
ヒーター線4は、融雪基体3がレドーム本体2の凹部21に嵌着されることにより、融雪基体3のヒーター線敷設面31と凹部21の底面211との間に挟み込まれるようにして埋設されており、レドーム1の内部に埋設されて周囲が封止されている。
【0030】
本実施形態では、融雪基体3のヒーター線敷設面31に溝32が形成され、凹部21の底面211に溝31と対向するようにして別の溝22が形成されており、ヒーター線4が、溝32と別の溝22とに嵌着されるようにして溝32及び溝22に沿って配線され、ヒーター線4が凹部21の底面211、換言すればレドーム本体2に直接固着されている。
【0031】
尚、ヒーター線4を融雪基体3に固着してレドーム1の内部に埋設する構成は本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば融雪基体3の溝32がないヒーター線敷設面31に接着フィルムでヒーター線4を接着し、融雪基体3のヒーター線敷設面31から突出するヒーター線4を凹部21の底面211に別の溝22のように形成された溝に嵌め込むようにして融雪基体3を凹部21に嵌着して、ヒーター線4を埋設する構成としてもよい。また、融雪基体3の外形の大きさ、換言すればヒーター線敷設面31の面積は、ヒーター線4の配線や融雪基体3の取り扱いの便宜性向上の観点から、電磁波透過領域Rの面積以上で電磁波透過領域Rの面積の5倍以下とすると好適であり、3倍以下とするとより好適である。
【0032】
ヒーター線4を構成する導電性材料には、本発明の趣旨の範囲内で適宜の導電性材料を用いることが可能であり、例えば銅、銀、銀メッキ銅、銅銀合金、銅ニッケル合金、ニッケルクロム合金、鉄クロム合金、ITO膜のような透明導電膜、又はカーボン繊維等とすると良好である。また、本発明におけるヒーター線4はその形態を問わず、線材、導電インク、導電フィラー等を用いることができる。
【0033】
融雪基体3のヒーター線敷設面31には、金属製の導電接続板5が接着等で固着されて設けられている。ヒーター線4の一の接続端部と他の接続端部はそれぞれ導電接続板5に載置されるように導入されると共に、ワイヤーハーネス等の電源供給ケーブル6の一の接続端部と他の接続端部とがそれぞれ導電接続板5に載置されるように導入され、半田、ろう材、導電性接着剤(ECA)、又は異方性導電ペースト(ACP)等で構成される導電性接合部7により、ヒーター線4の一の接続端部と電源供給ケーブル6の一の接続端部、ヒーター線4の他の接続端部と電源供給ケーブル6の他の接続端部とが、それぞれ電気的且つ機械的に接続されている。
【0034】
ヒーター線4に電気的に接続された電源供給ケーブル6は、車載レーダー装置10に向かって広がるように傾斜している融雪基体3の側面34から離れた状態で車載レーダー装置10側に引き出されている。そして、本実施形態では、ヒーター線4、導電接続板5、湾曲して延びる電源供給ケーブル6、導電性接合部7が既に設置された融雪基体3に対し、融雪基体3のヒーター線敷設面31及び周側面を構成する対向する傾斜面の側面34・34とヒーター線敷設面31から垂直に起立する対向する垂直面の側面341・341を覆うように射出成形してレドーム本体2が形成されており、電源供給ケーブル6の外周に射出成形材のレドーム本体2が固着されている。尚、電源供給ケーブル6の射出成形材であるレドーム本体2からの引出し箇所では、封止性向上の観点から、シリコンゴム等で形成された短筒状のゴム栓8を電源供給ケーブル6の外周に嵌め込み、ゴム栓8の少なくとも一部をレドーム本体2に食い込むように埋設する構成としても良好である。
【0035】
更に、本実施形態におけるレドーム本体2の凹部21の形成側の表面23と融雪基体3の外表面33の主要部とは略面一で形成されており、図示例では、レドーム本体2の凹部21の形成側の表面23と融雪基体3の外表面33の全体とが略面一で形成されている。また、レドーム本体2の凹部21の非形成側の表面24は外からの視認側、換言すれば自動車の車両の外側に配置されると共に、レドーム本体2の凹部21の形成側の表面23は車載レーダー装置10側に配置されている(
図2(b)参照)。
【0036】
第1実施形態のレドーム1によれば、レドーム本体2とは別体の融雪基体3をヒーター線4が内部に埋設されるようにして凹部21に嵌着することにより、レドーム本体2から全体が局所的に突出する融雪部を無くすことができ、融雪基体3とヒーター線4で構成される融雪部が破損して故障することを防止することができる。また、局所領域の凹部21に対応する大きさの小さい融雪基体3にヒーター線4を配線することができるので、ヒーター線4の配線を行う製造設備の自由度の向上、融雪部の取扱性の向上、製造工程の効率化を図ることができる。また、配線されたヒーター線4やヒーター線4の電気的な接続部分が内部に埋設されることになるから、配線されたヒーター線4やヒーター線4の接続部分の防水性、耐候性、耐食性、耐傷性を確保することができる。また、融雪基体3を共通部品化することにより、レドーム本体2のデザインを変えるだけで、融雪機能を有する多様なレドーム1を低コストで得ることができる。
【0037】
また、レドーム本体2の表面23と別体の融雪基体4の外表面33の主要部を略面一とすることにより、融雪基体3への別部材の引っ掛かり等を最大限防止し、融雪部が破損して故障することをより確実に防止することができる。
【0038】
また、レドーム本体2の凹部21の非形成側の表面24を外からの視認側に配置し、凹部21の形成側の表面23を車載レーダー装置10側に配置することにより、レドーム本体2と凹部21に嵌着された別体の融雪基体3との境界部分が外から視認されることを防止でき、レドーム本体2の外からの良好な視認性を確保することができる。
【0039】
また、ヒーター線4をレドーム本体2に直接固着する場合、レドーム本体2とヒーター線4との間に樹脂シートや接着フィルムのような別部材を設けずに済むことから、外側に配置されるレドーム本体2の凹部21の非形成側の表面24への熱伝導効率を高めることができ、レドーム1の外表面に相当する表面24に付着した雪や氷を確実に融雪することができる。
【0040】
また、ヒーター線4に電気的に接続された電源供給ケーブル6を融雪基体3の側面34から離れた状態で車載レーダー装置10側に引き出す構成により、電源供給ケーブル6の引き出す位置の自由度を高めることができると共に、電源供給ケーブル6の外周への射出成形材のレドーム本体2の固着により、電源供給ケーブル6を所望の引き出した位置に位置決めして固定することができる。
【0041】
また、融雪基体3の側面34を傾斜面とし、レドーム本体2を射出成形材とする場合には、射出成形材のレドーム本体2との固着面積を広げることができ、融雪基体3のレドーム本体2への固着強度をより高めることができる。また、融雪基体3の側面34の傾斜面で射出成形時の樹脂流動性を向上し、融雪基体3とレーダー本体2をより確実に隙間を生ずることなく固着することができる。
【0042】
〔第2実施形態のレドーム〕
本発明による第2実施形態のレドーム1aは、
図6~
図8に示すように、電磁波透過性の第1の樹脂基材で形成されるレドーム本体2aと、レドーム本体2aの第1の樹脂基材と屈折率が相互に整合する電磁波透過性の第2の樹脂基材で形成される融雪基体3aを備える。尚、第2実施形態で特に言及しない構成や変形例は第1実施形態のレドーム1の構成や変形例と同様である。
【0043】
第2実施形態のレドーム1aでヒーター線4に電気的に接続された電源供給ケーブル6aは、車載レーダー装置10に向かって広がるように傾斜している融雪基体3aの側面34に固着された状態で車載レーダー装置10側に引き出されている。
【0044】
そして、ヒーター線4、導電接続板5、電源供給ケーブル6a、導電性接合部7が既に設置された融雪基体3aに対し、融雪基体3aのヒーター線敷設面31及び周側面を構成する各側面34、341を覆うように射出成形してレドーム本体2aが形成されており、電源供給ケーブル6aと電源供給ケーブル6aが固着された融雪基体3aの側面34とに射出成形材のレドーム本体2aが固着されている。尚、電源供給ケーブル6aの射出成形材であるレドーム本体2aからの引出し箇所も、封止性向上の観点から、シリコンゴム等で形成された短筒状のゴム栓8を電源供給ケーブル6aの外周に嵌め込み、ゴム栓8の少なくとも一部をレドーム本体2aに食い込むように埋設する構成としても良好である。
【0045】
第2実施形態におけるレドーム本体2aの凹部21の形成側の表面23と融雪基体3aの外表面33の主要部とは略面一で形成されており、図示例では、レドーム本体2の凹部21の形成側の表面23と融雪基体3の外表面33とが、電源供給ケーブル6aの引出し箇所以外の領域で略面一で形成されている。
【0046】
第2実施形態のレドーム1aによれば、電源供給ケーブル6aを融雪基体3aの側面34に固着することにより、融雪基体3aに対して射出成形でレドーム本体2aを形成する場合等に、電源供給ケーブル6aを所要の引き出し位置に簡単に位置決めし、固定することができる。その他、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0047】
〔第3実施形態のレドーム〕
本発明による第3実施形態のレドーム1bは、
図9~
図12に示すように、電磁波透過性の第1の樹脂基材で形成されるレドーム本体2bと、レドーム本体2bの第1の樹脂基材と屈折率が相互に整合する電磁波透過性の第2の樹脂基材で形成される融雪基体3bを備える。尚、第3実施形態で特に言及しない構成や変形例は第1実施形態のレドーム1の構成や変形例と同様である。
【0048】
第3実施形態におけるレドーム本体2bの凹部21bには、開口側から凹部21bの底面211に向かって窄まるように傾斜する側面251bと、広がるように傾斜する側面252bが設けられ、融雪基体3bには凹部21bの底面211に向かって窄まるように傾斜する側面342bと、広がるように傾斜する側面343bが設けられている。融雪基体3bは有底の凹部21bに嵌め込まれて凹部21bに嵌着され、側面251bと側面342b、側面252bと側面343bはそれぞれ密着して固着されている。尚、融雪基体3bの一部の側面だけを傾斜面の側面342b又は傾斜面の側面343bとする構成としてもよく、又、融雪基体3bの周側面の全体を傾斜面の側面342b、又は傾斜面の側面343b、又は傾斜面の側面342bと傾斜面の側面343bの組み合わせで構成しても良い。
【0049】
ヒーター線4に電気的に接続された電源供給ケーブル6bは、融雪基体3の側面342b又は側面343bから離れた状態で車載レーダー装置10側に引き出されている。そして、ヒーター線4、導電接続板5、湾曲して延びる電源供給ケーブル6b、導電性接合部7が既に設置された融雪基体3bに対し、融雪基体3bのヒーター線敷設面31及び周側面を構成する側面342b、343b等(図示例では側面342b、側面343bと対向する2つの側面341・341)を覆うように射出成形してレドーム本体2が形成されており、電源供給ケーブル6bの外周に射出成形材のレドーム本体2bが固着されている。
【0050】
また、融雪基体3bには、レドーム1bの内外方向に貫通する係止穴35bが形成されており、図示例の係止穴35bは、外表面33寄りに大径部351bが形成された略茸形状になっている。係止穴35bには、射出成形材のレドーム本体2bの係止部26bが充填され、射出成形材の係止部26bが係止穴35bの周壁に固着されている。そして、略茸形状の係止部26bの大径部261bが係止穴35bの大径部351bに引っ掛かるように係止されて、レドーム本体2bと融雪基体3bが固着されている
【0051】
第3実施形態のレドーム1bによれば、融雪基体3bの係止穴35bに射出成形材のレドーム本体2bの係止部26bを充填し、レドーム本体2bと融雪基体3bを固着することにより、融雪基体3bのレドーム本体2bへの固着強度を非常に高めることができ、レドーム1bの強度、耐久性を向上することができる。
【0052】
また、融雪基体3bの側面342b、343bを傾斜面とし、レドーム本体2bを射出成形材とすることにより、射出成形材のレドーム本体2bとの固着面積を広げることができ、融雪基体3bのレドーム本体2bへの固着強度をより一層高めることができる。また、融雪基体3bの側面342b、343bの傾斜面で射出成形時の樹脂流動性を向上し、融雪基体3bとレーダー本体2bをより確実に隙間を生ずることなく固着することができる。その他、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0053】
〔第4実施形態のレドーム〕
本発明による第4実施形態のレドーム1cは、
図13~
図16に示すように、電磁波透過性の第1の樹脂基材で形成されるレドーム本体2cと、レドーム本体2cの第1の樹脂基材と屈折率が相互に整合する電磁波透過性の第2の樹脂基材で形成される融雪基体3cを備える。尚、第4実施形態で特に言及しない構成や変形例は第1実施形態のレドーム1の構成や変形例と同様である。
【0054】
レドーム本体2cの電磁波透過領域Rを含む局所領域に形成された凹部21cは、レドーム本体2cの表面23の略中央位置において断面視略コ字形で形成されており、凹部21cの形状に略倣うように形成された融雪基体3cが嵌着されている。また、融雪基体3cには、離間する2箇所で車両内外方向等の内外方向に貫通して形成された係合孔361c・361cと、離間する2箇所で車両内外方向等の内外方向に貫通して形成された係合孔362c・362cとが設けられている。ヒーター線4は、レドーム本体2cの溝22だけに嵌着されて配線されている。
【0055】
ヒーター線4の電気的接続には断面視略コ字形の金属製の導電接続板5cが一対で用いられる。導電接続板5cには基板51cの左右方向の一方の端縁から略垂直で起立する短側壁52cと、他方の端縁から略垂直で起立する短側壁52cより長い長側壁53cが形成され、基板51cは融雪基体3cよりも内側でレドーム1cに埋設される。一方の導電接続板5cの短側壁51cと長側壁52cは係合孔361c・361cにそれぞれ挿通されて外部に突出するように設けられる。他方の導電接続板5cの短側壁52cと長側壁53cは係合孔362c・362cにそれぞれ挿通されて外部に突出するように設けられる。図示例の一方の導電接続板5cの長側壁53cと他方の導電接続板5cの長側壁53cの左右方向における位置は同じになっているが、左右方向における位置を互い違いにしてもよい。
【0056】
一方の導電接続板5cの基板51cとレドーム本体2cとの間には、ヒーター線4の一の接続端部が導入され、半田、ろう材、導電性接着剤(ECA)、又は異方性導電ペースト(ACP)等で構成される導電性接合部7cにより、一方の導電接続板5cとヒーター線4の一の接続端部とが電気的且つ機械的に接続されている。他方の導電接続板5cの基板51cとレドーム本体2cとの間には、ヒーター線4の他の接続端部が導入され、導電性接合部7cにより、他方の導電接続板5cとヒーター線4の他の接続端部とが電気的且つ機械的に接続されている。
【0057】
ヒーター線4に電気的に接続された状態の一方の導電接続板5cと他方の導電接続板5cは、融雪基体3cの背面に相当する外表面33から車載レーダー装置10側に突出して設けられており、本例では一方の導電接続板5cの長側壁53c及び短側壁52cと他方の導電接続板5cの長側壁53c及び短側壁52cとが、融雪基体3cの背面から車載レーダー装置10側に突出して設けられている。レドーム本体2cの凹部21cの形成側の表面23と融雪基体3cの外表面33の主要部とは略面一で形成されており、導電接続板5cの短側壁52cと長側壁53cの突出箇所以外で、レドーム本体2cの表面23と融雪基体3cの外表面33とが略面一で形成されている。
【0058】
そして、本実施形態では、ヒーター線4、導電接続板5c、導電性接合部7cが既に設置された融雪基体3cに対し、融雪基体3cのヒーター線敷設面31及び周側面を構成する各側面341を覆うように射出成形してレドーム本体2cが形成されている。また、先端部にコネクタ61cと一対の接点ばね62c・62cを有する電源供給ケーブル6cが用いられ、一対の接点ばね62c・62cで導電接続板5cの長側壁53cを挟み込み、電源供給ケーブル6cが導電接続板5cに電気的に接続される。
【0059】
また、第4実施形態の変形例として、電源供給ケーブル6cの先端部に設けられたコネクタ63cにメス型端子を設け、長側壁53cの先端部にメス型端子に対応する形状のオス型端子を形成し、オス型端子をメス型端子に挿入して電源供給ケーブル6cと導電接続板5cとを電気的に接続する構成としてもよい(
図17参照)。
【0060】
第4実施形態のレドーム1cによれば、融雪基体3cの背面に相当する外表面33から車載レーダー装置10側に突出する導電接続板5cに適宜の方法で電源供給ケーブル6cを接続することが可能となり、ヒーター線4と電源供給ケーブル6cとの電気的接続の仕方の自由度を高めることができる。その他、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0061】
〔第5実施形態のレドーム〕
本発明による第5実施形態のレドーム1dは、
図18~
図21に示すように、電磁波透過性の第1の樹脂基材で形成されるレドーム本体2dと、レドーム本体2dの第1の樹脂基材と屈折率が相互に整合する電磁波透過性の第2の樹脂基材で形成される融雪基体3dを備える。尚、第5実施形態で特に言及しない構成や変形例は第1、第4実施形態のレドーム1、1cの構成や変形例と同様である。
【0062】
レドーム本体2dの断面視略コ字形の凹部21dには、凹部21dの形状に略倣うように形成された融雪基体3dが嵌着されている。融雪基体3dには、離間する2箇所で車両内外方向等の内外方向に貫通して形成された係合孔361d・361dと係合孔362d・362dとが設けられている。
【0063】
ヒーター線4の電気的接続には導電接続板5cと同一構成の導電接続板5dが一対で用いられる。導電接続板5dの基板51dは融雪基体3dよりも内側でレドーム1dに埋設される。一方の導電接続板5dの短側壁52dと長側壁53dは係合孔361d・361dにそれぞれ挿通されてレドーム本体2の凹部形成側の表面23よりも外側に突出するように設けられ、他方の導電接続板5dの短側壁52dと長側壁53dは係合孔362d・362dにそれぞれ挿通されてレドーム本体2の凹部形成側の表面23よりも外側に突出するように設けられている。図示例の一方の導電接続板5dの長側壁53dと他方の導電接続板5dの長側壁53dの左右方向における位置は同じになっているが、左右方向における位置を互い違いにしてもよい。
【0064】
一方の導電接続板5dの基板51dとレドーム本体2dとの間には、ヒーター線4の一の接続端部が導入され、導電性接合部7dにより、一方の導電接続板5dとヒーター線4の一の接続端部とが電気的且つ機械的に接続されている。他方の導電接続板5dの基板51dとレドーム本体2dとの間には、ヒーター線4の他の接続端部が導入され、導電性接合部7dにより、他方の導電接続板5dとヒーター線4の他の接続端部とが電気的且つ機械的に接続されている。
【0065】
ヒーター線4に電気的に接続された状態の一方の導電接続板5dと他方の導電接続板5dは、融雪基体3dの背面に相当する外表面33から車載レーダー装置10側に突出して設けられており、本例では一方の導電接続板5dの長側壁53d及び短側壁52dと他方の導電接続板5dの長側壁53d及び短側壁52dとが、融雪基体3dの背面に相当する外表面33から車載レーダー装置10側に突出して設けられている。
【0066】
更に、融雪基体3dには、車載レーダー装置10側に突出する矩形枠37dが一体的に設けられており、矩形枠37dの中に一方の導電接続板5dの長側壁53d及び短側壁52dの突出部分と、他方の導電接続板5dの長側壁53d及び短側壁52dの突出部分とが収容されている。
【0067】
そして、本実施形態では、ヒーター線4、導電接続板5d、導電性接合部7dが既に設置された融雪基体3dに対し、融雪基体3dのヒーター線敷設面31及び周側面を構成する各側面341を覆うように射出成形してレドーム本体2dが形成されている。また、電源供給ケーブル6dの接続端部が矩形枠37d内の導電接続板5dの長側壁53dに隣接配置され、半田、ろう材、導電性接着剤(ECA)、又は異方性導電ペースト(ACP)等で構成される導電性接合部70dにより、電源供給ケーブル6dと導電接続板5dとが電気的且つ機械的に接続されている。
【0068】
更に、矩形枠37dには、電源供給ケーブル6dと導電接続板5dとの接続部分である導電性接合部70dを埋設するようにして封止樹脂9dが充填されている。尚、矩形枠37dに封止樹脂9dを充填せずに、電源供給ケーブル6dと導電接続板5dとの接続部分である導電性接合部70dを露出させた状態とすることも可能である。また、導電接続板5dの短側壁52dに電源供給ケーブル6dを接続することも可能である。
【0069】
第5実施形態のレドーム1dによれば、融雪基体3dの背面に相当する外表面33から車載レーダー装置10側に突出する導電接続板5dに適宜の方法で電源供給ケーブル6dを接続することが可能となり、ヒーター線4と電源供給ケーブル6dとの電気的接続の仕方の自由度を高めることができる。また、電源供給ケーブル6dと導電接続板5dとの接続部分である導電性接合部70dを封止樹脂9dで埋設することにより、接続部分の防水性、耐候性、耐食性、耐傷性をより高めることができる。その他、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0070】
〔第6実施形態のレドーム〕
本発明による第6実施形態のレドーム1eは、
図22及び
図23に示すように、電磁波透過性の第1の樹脂基材で形成されるレドーム本体2eと、レドーム本体2eの第1の樹脂基材と屈折率が相互に整合する電磁波透過性の第2の樹脂基材で形成される融雪基体3eを備える。尚、第6実施形態で特に言及しない構成や変形例は第1実施形態のレドーム1の構成や変形例と同様である。
【0071】
レドーム本体2eの電磁波透過領域Rを含む局所領域には、車載レーダー装置10から照射されるミリ波等の電磁波がレドーム本体2eを透過する電磁波透過方向にへこむようにして凹部21eが形成されており、凹部21eはレドーム本体2eの周縁を切り欠くようにして設けられている。凹部21eには、凹部21eの形状に略倣うように形成された融雪基体3eが嵌着されている。
【0072】
融雪基体3eには、側方に局所的に突出するタブ38eが設けられ、タブ38eにおけるヒーター線敷設面31eには、金属製の導電接続板5eが接着等で固着されて設けられている。ヒーター線4の一の接続端部と他の接続端部はそれぞれ導電接続板5eに載置されるように導入されると共に、ワイヤーハーネス等の電源供給ケーブル6eの一の接続端部と他の接続端部とがそれぞれ導電接続板5eに載置されるように導入され、導電性接合部7eにより、ヒーター線4の一の接続端部と電源供給ケーブル6eの一の接続端部、ヒーター線4の他の接続端部と電源供給ケーブル6eの他の接続端部とが、それぞれ電気的且つ機械的に接続されている。
【0073】
タブ38eにおいて導電性接合部7eでヒーター線4に電気的に接続された電源供給ケーブル6eは、レドーム本体2eの側方に引き出され、図示例では車載レーダー装置10の電磁波照射方向に対して垂直方向に引き出されている。
【0074】
そして、本実施形態では、ヒーター線4、導電接続板5e、側方に引き出された電源供給ケーブル6e、導電性接合部7eが既に設置された融雪基体3eに対し、融雪基体3eのヒーター線敷設面31e及び電源供給ケーブル6eの引出方向以外の3方向の各側面341eを覆うように射出成形してレドーム本体2eが形成されている。各側面341eはヒーター線敷設面31eから垂直に起立している。
【0075】
更に、本実施形態におけるレドーム本体2eの凹部21eの形成側の表面23と融雪基体3eの外表面33の主要部とは略面一で形成されており、図示例では、レドーム本体2eの凹部21eの形成側の表面23と融雪基体3eの外表面33の全体とが略面一で形成されている。
【0076】
また、第6実施形態では、レドーム本体2eの凹部21eの非形成側の表面24は外からの視認側、換言すれば自動車の車両の外側のような外側に配置されると共に、レドーム本体2eの凹部21eの形成側の表面23は車載レーダー装置10のようなレーダー装置側に配置される例について説明したが、レドーム本体2eの凹部21eの形成側の表面23を外からの視認側、レドーム本体2eの凹部21eの非形成側の表面24を車載レーダー装置10のようなレーダー装置側に配置してもよい。
【0077】
第6実施形態のレドーム1eによれば、レドーム本体2eの凹部21eの形成側の表面23eと融雪基体3eが、車両の外側を向いている場合と車両の内側を向いている場合の双方において、レドーム1eの視認性を損なうことなく、ヒーター線4に確実な電源供給を行うことができる。その他、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0078】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0079】
例えば上記第1~第6実施形態におけるレドーム本体2、2a、2b、2c、2d、2eは射出成形材としたが、本発明のレドームでは射出成形材以外のレドーム本体を用いてもよく、又、射出成形材ではないレドーム本体を用いる場合には、レドーム本体と融雪基体とは両面テープ、接着剤等の適用可能な範囲の適宜の仕方で固着することが可能である。また、本発明におけるレドーム本体の凹部形成側の表面の形状や凹部非形成側の表面の形状は平面状、或いは曲面状など適宜である。また、本発明のレドームにおけるヒーター線と電源供給ケーブルとの電気的接続の構成は第1~第6実施形態の例以外にも本発明の趣旨の範囲内で適宜である。
【0080】
また、上記実施形態のレドーム1、1a、1b、1c、1d、1eは車載レーダー装置用レドームであるが、本発明のレドームは、車載レーダー装置用レドームに限定されず、レーダー装置の電磁波照射側に配置される適宜のレドームとすることが可能である。
【0081】
また、本発明のレドームでは、融雪基体の少なくとも一部の側面に凹凸を形成し、射出成形材のレドーム本体の凹凸を融雪基体の側面の凹凸に嵌合するようにしてレドーム本体と融雪基体を固着しても好適である。この構成により、射出成形材のレドーム本体の凹凸と融雪基体の側面の凹凸との嵌合状態でレドーム本体と融雪基体が固着されることになり、アンカー効果で融雪基体のレドーム本体への固着強度をより一層高めることができる。
【0082】
例えば第1実施形態を変形した第7実施形態のレドーム1fでは、レドーム本体2fの凹部21fに融雪基体3fが嵌着され、融雪基体3fの側面344fに側方に突出する凸部345fが形成され、融雪基体3fの凸部345fと、融雪基体3fの側面344fの凸部345f以外の凹部とが、レドーム本体2fの凹部21fの側面の凹凸に嵌合されており、射出成形材のレドーム本体2fの凹凸と融雪基体3fの側面344fの凹凸とが嵌合されてレドーム本体2fと融雪基体3fとが固着されている。
【0083】
別例として、第1実施形態を変形した第8実施形態のレドーム1gでは、レドーム本体2gの凹部21gに融雪基体3gが嵌着され、融雪基体3gの側面346gに内方にへこんだ凹部347gが形成され、融雪基体3gの凹部347gと、融雪基体3gの側面346gの凹部347g以外の凸部とが、レドーム本体2gの凹部21gの側面の凹凸に嵌合されており、射出成形材のレドーム本体2gの凹凸と融雪基体3gの側面346gの凹凸とが嵌合されてレドーム本体2gと融雪基体3gとが固着されている。
【0084】
また、本発明のレドームにおける融雪基体の電磁波透過領域に固着されるヒーター部は、上記第1~第6実施形態のような融雪基体3、3a、3b、3c、3d、3eの電磁波透過領域Rに配線されたヒーター線4で構成されるヒーター部に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば第7、第8実施形態のように、樹脂シートと、樹脂シートの面に広がるように導電ペースト等の発熱材が設けられた面状発熱体40でヒーター部を構成しても良い。面状発熱体40は電気供給ケーブル6f、6gに電気的に接続される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、例えば車載レーダー装置用レドームに利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g…レドーム 2、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g…レドーム本体 21、21b、21c、21d、21e、21f、21g…凹部 211…底面 22…溝 23…凹部形成側の表面 24…凹部非形成側の表面 251b、252b…側面 26b…係止部 261b…大径部 3、3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g…融雪基体 31、31e…ヒーター線敷設面 32…溝 33…外表面 34、341、342b、343b、341e、344f、346g…側面 345f…凸部 347g…凹部 35b…係止穴 351b…大径部 361c、362c、361d、362d…係合孔 37d…矩形枠 38e…タブ 4…ヒーター線 40…面状発熱体 5、5c、5d、5e…導電接続板 51c、51d…基板 52c、52d…短側壁 53c、53d…長側壁 6、6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g…電源供給ケーブル 61c…コネクタ 62c…接点ばね 63c…コネクタ 7、7c、7d、70d、7e…導電性接合部 8…ゴム栓 9d…封止樹脂 10…車載レーダー装置 R…電磁波透過領域
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波透過性の第1の樹脂基材で形成されるレドーム本体と、
前記第1の樹脂基材と屈折率が相互に整合する電磁波透過性の第2の樹脂基材で形成される融雪基体と、
前記融雪基体の電磁波透過領域に固着されているヒーター部を備え、
前記レドーム本体の電磁波透過領域を含む局所領域に電磁波透過方向にへこむ凹部が形成され、
前記ヒーター部が内部に埋設されるようにして前記融雪基体が前記凹部に嵌着され、
前記凹部が前記レドーム本体の周縁を切り欠くようにして設けられ、
前記ヒーター部に電気的に接続された電源供給ケーブルが前記レドーム本体の側方に引き出されていることを特徴とするレドーム。
【請求項2】
前記レドーム本体の前記凹部の形成側の表面と前記融雪基体の外表面の主要部とが略面一で形成されていることを特徴とする請求項1記載のレドーム。
【請求項3】
前記レドーム本体の前記凹部の非形成側の表面が外からの視認側に配置されると共に、前記レドーム本体の前記凹部の形成側の表面がレーダー装置側に配置されていることを特徴とする請求項1記載のレドーム。
【請求項4】
前記ヒーター部が前記融雪基体の電磁波透過領域に配線されているヒーター線で構成され、
前記ヒーター線が前記レドーム本体に直接固着されていることを特徴とする請求項3記載のレドーム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明のレドームは、前記凹部が前記レドーム本体の周縁を切り欠くようにして設けられ、前記ヒーター部に電気的に接続された電源供給ケーブルが前記レドーム本体の側方に引き出されていることを特徴とする。
これによれば、レドーム本体の凹部の形成側の表面と融雪基体が、車両等の外側を向いている場合と車両等の内側を向いている場合の双方において、レドームの視認性を損なうことなく、ヒーター線に確実な電源供給を行うことができる。