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特開2024-68197イオン化可能なパーフルオロホスホリルクラウンエーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068197
(43)【公開日】2024-05-17
(54)【発明の名称】イオン化可能なパーフルオロホスホリルクラウンエーテル
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/6574 20060101AFI20240510BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240510BHJP
   A61K 49/10 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C07F9/6574 Z CSP
C09K3/00 108E
A61K47/54
A61K49/10
A61K49/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189314
(22)【出願日】2023-11-06
(31)【優先権主張番号】P 2022177773
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相田 卓三
(72)【発明者】
【氏名】ゴスワミ アビール
(72)【発明者】
【氏名】ファン フービャオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H050
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE59
4C085HH07
4C085HH11
4C085JJ01
4C085KA27
4C085KA30
4C085KB59
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB82
4H050BE54
4H050WA01
4H050WA15
4H050WA23
(57)【要約】
【課題】水溶性であり、凝集などなく水中で安定に存在し、かつ多様な機能性基を導入可能なFリッチな有機フッ素化合物を提供する。
【解決手段】次式(I):
【化1】
(式中、Rは水酸基、塩素原子又は式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)もしくは-S-(有機基)で示される基を表し、nは1~7の整数を表す。)
で示される化合物、当該化合物の製造方法、及び当該化合物と水系溶媒とを含む組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】
(式中、Rは水酸基、塩素原子又は式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)もしくは-S-(有機基)で示される基を表し、nは1~7の整数を表す。)
で示される化合物。
【請求項2】
前記式(I)において、Rが塩素原子である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記式(I)において、Rが水酸基である請求項1記載の化合物。
【請求項4】
前記式(I)において、Rが式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)又は-S-(有機基)で示される基であり、前記有機基がアルキン基又はマレイミド基を少なくとも1つ含む請求項1記載の化合物。
【請求項5】
前記式(I)において、Rが式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)又は-S-(有機基)で示される基であり、前記有機基が、医薬もしくは診断薬の有効成分に由来する基を含む請求項1記載の化合物。
【請求項6】
前記式(I)において、Rが式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)又は-S-(有機基)で示される基であり、前記有機基が、発光性及び/又は光吸収性の機能性基を含む請求項1記載の化合物。
【請求項7】
次式(II):
HOCHCFO-(CFCFO)-CFCHOH (II)
(式中、nは請求項1記載の前記式(I)と同義である。)
で示されるフッ素化ポリエチレングリコールを塩化ホスホリルと反応させることを含む、請求項2記載の化合物の製造方法。
【請求項8】
請求項2記載の化合物を水と反応させることを含む、請求項3記載の化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項2記載の化合物を式:HO-(有機基)、HN-(有機基)又はHS-(有機基)で示される化合物と反応させることを含む、前記式(I)において、Rが式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)又は-S-(有機基)で示される基である化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項4に記載の化合物と、反応試薬とをクリック反応させることを含む請求項5又は6に記載の化合物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物と、水系溶媒とを含む組成物。
【請求項12】
更に無機イオンを含む請求項11記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物を含む無機イオン包接剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン化可能なパーフルオロホスホリルクラウンエーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
パーフルオロ有機化合物は生体内には存在しないが、そのユニークな性質から医薬品や農薬に広く利用されている。フッ素化は、高い血清安定性や生体分子の細胞透過性、非侵襲的なイメージング能力をもたらす。現在の医薬品の4分の1は、少なくとも1つのフッ素原子を含んでいる。
【0003】
プロトンMRIは、非侵襲的な生体イメージング技術として一般的に利用されている。しかし、従来のプロトンMRIで使われるガドリニウム造影剤は、脳内に滞留する性質に起因して副作用を引き起こし、毒性が強い。近年では、ターゲットからの信号を直接検出でき、かつS/N比を向上させることができる19F MRIがプロトンMRIの代替技術として大きな関心を集めている。例えば、特許文献1には、パーフルオロ-t-ブチルシクロヘキサンを分子イメージング用造影剤として使用できることが記載されている。しかし、パーフルオロ化合物は、水への溶解性が低く、化学的に不活性であり、水や土壌資源を汚染するだけでなく、生体内の様々な部位に蓄積するため、その長期間の使用や大量の使用には問題があることが最近の研究により明らかになってきた。
【0004】
そこで、例えば非特許文献1では、パーフルオロオクチルブロマイドなどのパーフルオロ化合物のナノエマルジョンを安定化させるため手段として、標的リガンド(例えば、抗体、ペプチドなど)と共に界面活性分子(乳化剤)を混合することが提案された。特許文献2には、パーフルオロヘキシルオクタン、パーフルオロブチルペンタン等のセミフッ化化合物、当該セミフッ化化合物と混和可能であるトリグリセリド、及び乳化剤を含む水性エマルジョンが造影剤として使用できることが記載されている。しかしながら、安定な水性エマルジョンを形成するために、より水に溶けやすく、より容易に官能基を付加しやすいFリッチな化合物を設計する新しい戦略を見つけることは依然として挑戦的な課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/013038号
【特許文献2】国際公開第2014/154531号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】I. Tirotta, et al., Chem. Rev. 2015, 115, 1106
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、水溶性であり、凝集などなく水中で安定に存在し、かつ多様な機能性基を導入可能なFリッチな有機フッ素化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、フッ素化ポリエチレングリコールを塩化ホスホリルと反応させて、塩素化されたパーフルオロホスホリルクラウンエーテルを得た後、水と反応させたところ、高収率で、イオン化可能なパーフルオロホスホリルクラウンエーテル(Proton-Ionizable Perfluorinated Phosphoryl Crown Ether)(以下「PIPPER」という。)が得られることを見出した。また得られた中間体の塩素化されたパーフルオロホスホリルクラウンエーテル(以下「PIPPER-Cl」という。)は、反応性に富み、求核付加-脱離反応により、マレイミド基、アルキン基、1級アミノ基、グアニジニウム基、蛍光体、薬剤などの任意の官能基を一段階で高収率で導入できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)次式(I):
【化1】
(式中、Rは水酸基、塩素原子又は式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)もしくは-S-(有機基)で示される基を表し、nは1~7の整数を表す。)
で示される化合物。
(2)前記式(I)において、Rが塩素原子である前記(1)に記載の化合物。
(3)前記式(I)において、Rが水酸基である前記(1)に記載の化合物。
(4)前記式(I)において、Rが式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)又は-S-(有機基)で示される基であり、前記有機基がアルキン基又はマレイミド基を少なくとも1つ含む前記(1)に記載の化合物。
(5)前記式(I)において、Rが式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)又は-S-(有機基)で示される基であり、前記有機基が、医薬もしくは診断薬の有効成分に由来する基を含む前記(1)に記載の化合物。
(6)前記式(I)において、Rが式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)又は-S-(有機基)で示される基であり、前記有機基が、発光性及び/又は光吸収性の機能性基を含む前記(1)に記載の化合物。
【0010】
(7)次式(II):
HOCHCFO-(CFCFO)-CFCHOH (II)
(式中、nは請求項1記載の前記式(I)と同義である。)
で示されるフッ素化ポリエチレングリコールを塩化ホスホリルと反応させることを含む、前記(2)に記載の化合物の製造方法。
(8)前記(2)に記載の化合物を水と反応させることを含む、前記(3)に記載の化合物の製造方法。
(9)前記(2)に記載の化合物を式:HO-(有機基)、HN-(有機基)又はHS-(有機基)で示される化合物と反応させることを含む、前記式(I)において、Rが式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)又は-S-(有機基)で示される基である化合物の製造方法。
(10)前記(4)に記載の化合物と、反応試薬とをクリック反応させることを含む前記(5)又は(6)に記載の化合物の製造方法。
(11)前記(1)~(6)のいずれかに記載の化合物と、水系溶媒とを含む組成物。
(12)更に無機イオンを含む前記(11)に記載の組成物。
(13)前記(1)~(6)のいずれかに記載の化合物を含む無機イオン包接剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水溶性であり、凝集などなく水中で安定に存在し、かつ多様な機能性基を導入可能なFリッチな有機フッ素化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
前記式(I)において、Rで表される式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)又は-S-(有機基)で示される基における有機基としては、医薬の有効成分に由来する基、発光性基及び/又は光吸収性基(これらの基は診断薬の有効成分に由来する基であってもよい)、又は官能基(例えば反応試薬として有用なマレイミド基、アルキン基)を含むものが挙げられる。
【0014】
前記式(I)において、Rが塩素原子である化合物は、次式(II):
HOCHCFO-(CFCFO)-CFCHOH (II)
(式中、nは1~7の整数を表す。)
で示されるフッ素化ポリエチレングリコールを塩化ホスホリルと反応させることにより製造することができる。
【0015】
前記の反応は、通常、ピリジン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPA)、1,8-ジアザシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)等の塩基の存在下に行う。塩化ホスホリルの使用量は、化合物(II)に対して、通常0.9~2当量、好ましくは0.9~1.2当量である。
【0016】
溶媒としては、本反応を阻害しないものであれば特に限定さないが、例えば、無水ジクロロメタン、無水テトラヒドロフラン、無水アセトニトリル、無水1,4-ジオキサン、無水ジメチルホルムアミドが好適に使用される。
【0017】
反応は、-70℃で開始し、特にその温度を維持せずに、時間経過で反応溶液の温度を室温に戻しながら行う。
【0018】
なお、前記式(II)において、nが1又は2である化合物、すなわちフッ素化トリエチレングリコール及びフッ素化テトラエチレングリコール(1H,1H,11H,11H-dodecafluoro-3,6,9-trioxaundecane-1,11-diol)は、市販されているので、これらを用いることができる。
【0019】
前記式(I)において、Rが水酸基である化合物は、前記式(I)において、Rが塩素原子である化合物を水と反応させることにより製造することができる。
【0020】
反応温度は、通常15~40℃、好ましくは室温であり、反応時間は通常40分~2時間、好ましくは50分~1.5時間である。
【0021】
前記式(I)において、Rが塩素原子である化合物は、反応性に富み、例えば、水酸基、アミノ基及び/又はチオール基(メルカプト基)を有する化合物と反応するので、種々の官能基(例えばマレイミド基、アルキン基)、機能性基(例えば発光性基)、医薬の有効成分に由来する基、診断薬の有効成分に由来する基を導入することができる。
【0022】
前記式(I)において、Rは式:-O-(有機基)、-NH-(有機基)又は-S-(有機基)で示される基を表す。前記有機基の例としては、C1~C15のアルキレン基と、その末端に反応性官能基とを有する基が挙げられる。前記末端の反応性官能基の例には、マレイミド基、アルキン基及び-NH・HClが含まれる。この例の有機基を含む式(I)の化合物は、種々の試薬と反応(例えば、クリック反応)させることで、機能性基(例えば発光性基)、医薬の有効成分に由来する基、診断薬の有効成分に由来する基を導入することができる。本態様において、前記式(I)で示される化合物と反応させる試薬の例には、アルキン基及びマレイミド基を有する試薬とクリック反応可能な試薬として市販されている反応試薬及び従来公知の方法で製造した反応試薬いずれも含まれる。
【0023】
例えば、前記式(I)において、Rが塩素原子で、nが2である化合物は、以下のようにして、具体的には、OH基とマレイミド基又はアルキン基とを有する化合物とを反応させることで、-C2m-マレイミド基、-C2m-アルキン基をそれぞれ導入することができる。以下では、m=2の例を示したが、mについては特に制限されず、例えば、mは1~16である。また、mが3以上の場合、2つのCHの間に位置する1以上のCHはO及び/又はNHで置換されていてもよく、すなわち、オキシアルキレン基(例えばC1~C16のオキシアルキレン基であって、-(C2pO)-;pは1~4、qは1~4)やアミノアルキレン基(例えばC1~C16のアミノアルキレン基であって、-(C2pNH)-;pは1~4、qは1~4)であってもよい。
【0024】
【化2】
【0025】
前記のようにして、マレイミド基が導入された化合物は、チオール基を有する様々な試薬とクリック反応可能であり、アルキン基が導入された化合物は、アジド基(N-)を有する試薬とクリック反応可能であり、バリエーションに富んだ機能性の有機フッ素化合物を得ることができる。
【0026】
前記のマレイミド基が導入された化合物とチオール基を有する試薬との反応の一例を以下に示す。
【0027】
【化3】
(式中、DBUはジアザビシクロウンデセンを表し、DMFはジメチルホルムアミドを表す。)
【0028】
また、RがC1~C15のアルキレン基と、その末端に-NH・HClを有する化合物は、例えば、後述する実施例4及び実施例7の方法に準じて種々合成することができる。末端に-NH・HClを有する化合物は、ハロゲン(例えば-Cl)を有する試薬と反応させることで、種々の官能基をPIPPERに結合させることができる。
【0029】
前記式(I)で示される化合物は、水溶性であり、凝集などなく水中で安定に存在(存在の状態には、溶解状態及び分散状態のいずれも含まれる)するので、当該化合物と、水系溶媒とを含む組成物は、薬剤キャリア、19F NMR造影剤などの診断薬、生体マーカー、接着剤、光電子デバイス用材料、2D材料として有用である。前記水系溶媒としては、例えば水、水と混和可能な有機溶媒(エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、メタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランなど)と水の混合液が挙げられる。
【0030】
また、前記式(I)で示される化合物と水系溶媒とを含む組成物は、更に無機イオンを含んでいてもよい。前記式(I)で示される化合物は、非共有電子対を有する酸素原子を環構成原子とするクラウンエーテル類似の環状構造を有する。この特徴から、環の内側にカチオンを包接可能である。包接されるカチオンは特に制限されない。例えば、前記式(I)においてn=2の化合物では、アルカリ金属のカチオンを包接可能である。
【0031】
更に、前記式(I)で示される化合物は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン等の無機イオンを取り込む(包接する)能力を有し、無機イオン包接剤として有用である。例えば、無機化合物のKMnOはイオン性化合物のため有機溶媒に不溶であるが、前記式(I)で示される化合物が存在すると、カリウムイオン(K)が当該化合物に捕捉され、ベンゼンをはじめとする有機溶媒に溶けるようになる。したがって、KF、KCN、NaNなどに代表される難溶性アルカリ金属塩を有機溶媒中で効果的に用いることができ、有機合成上有用である。
【実施例0032】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0033】
(実施例1)PIPPER-Clの合成
【化4】
【0034】
オーブンで乾燥させた1Lの三口丸底フラスコに、フッ素化テトラエチレングリコール(1H,1H,11H,11H-dodecafluoro-3,6,9-trioxaundecane-1,11-diol)(4.52g,11.0mmol)を無水ジクロロメタン300mLに溶解し、温度を-70℃に低下させ、白色懸濁液を得た。無水ジクロロメタン200mL中の塩化ホスホリル(1.65g,1.0mL,10.8mmol)の溶液を、滴下漏斗を用いて滴下し、-70℃を維持しつつ、1時間攪拌した後、ゆっくりと温度を室温に戻した。更に、6時間攪拌後、無水ピリジン(1.87g,23.7mmol)を注射器で滴下した。反応混合物を室温で更に24時間攪拌した。溶液を窒素気流下溶媒留去し、目的とするPIPPER-Clを得た。MALDI-TOF MSは、マトリックスとしてtrans-2-[3-(4-tert-butylphenyl)-2-methyl-2-propenylidene]malononitrileを用いたネガティブイオンモードで、471.146Daに、PIPPER(PIPPER-OH)の単一ピークを示し、反応性のPIPPER-Cl中間体の形成を示した。生成物を CH2Cl2/Hexane (1:1) で精製するため、-20℃でNの下で再結晶した。
1H NMR (CDCl3, 298 K, 600 MHz): δ = 4.39 (m, -CH2 CF2), 4.64 (m, -CH2 CF2) ppm.13C NMR (CDCl3, 298 K, 150 MHz): δ = 66.07 (m, -CH2), 114.22 (m, -CF2), 114.50 (m, -CF2), 120.21 (td, JC,F = 274.4 Hz, 10.6 Hz -CF2) ppm.
19F NMR (CDCl3, 298 K, 565 MHz): δ = -77.93 (m), -78.31 (m), -89.24 (m), -89.60 (s), -90.09 (m) ppm.
31P NMR (CDCl3, 298 K, 243 MHz): δ = 5.24.
MALDI-TOF MS: for C8H4F12O7P [M-H]-, calculated: 471.07 Da, found: 471.15 Da
【0035】
(実施例2)PIPPER(PIPPER-OH)の合成
【化5】
【0036】
実施例1で得られた粗PIPPER-Clを100mLの丸底フラスコに取り、Milli-QTM 水30mLを加えた。混合物を1時間攪拌した後、蒸発乾固させた。白色粘着性の粗生成物を、10%酢酸含有酢酸エチルを用いた、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製し、目的とするPIPPER(PIPPER-OH)を無色粘性の液状物として得た(収量2.10g,4.44mmol,収率41%)。
1H NMR (D2O, 298 K, 600 MHz): δ = 4.34 (q, 3JH,F = 7.2 Hz, 4H, -CH2) ppm.
13C NMR (D2O, 298 K, 150 MHz): δ = 64.24 (t, JC,F = 36.8 Hz, -CH2), 113.93 (m, -CF2), 114.24 (m, -CF2), 121.51 (td, JC,F = 274.5 Hz, 10.4 Hz, -CF2) ppm.
19F NMR (D2O, 298 K, 565 MHz): δ = -78.6, -89.5, -89.6 ppm.
31P NMR (D2O, 298 K, 243 MHz): δ = -2.28.
MALDI-TOF MS: for C8H4F12O7P [M-H]-, calculated: 471.07 Da, found: 471.15 Da
【0037】
(実施例3)PIPPER-MALの合成
【化6】
【0038】
実施例1と同様にして得られた粗PIPPER-Clを無水トルエン200mLで希釈した。次いで、ピリジン1.0mL及びN-(2-ヒドロキシエチル)マレイミド(1.50g,10.6mmol)を窒素気流下加えた。混合物を100℃で1時間加熱した後、薄層クロマトグラフィーに付した。溶媒を留去した後、残渣をジクロロメタン100mLで抽出し、Milli-QTM 水150mLで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、溶媒を除去した。粗生成物を、0~20%酢酸エチル含有ジクロロメタンを用いた、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製し、目的とするPIPPER-MALを白色固体として得た(収量2.4g,4.03mmol,収率37%)。
1H NMR (CD2Cl2, 298 K, 600 MHz): δ = 3.83 (t, 3J = 5.4 Hz, 2H, -NHCH2), 4.26 (m, 2H, -OCH2), 4.31 (m, 2H, -OCF2CH2O), 4.48 (m, 2H, -OCF2CH2O), 6.75 (s, 2H, -CH) ppm.
13C NMR (CD2Cl2, 298 K, 150 MHz): δ = 37.86 (q, 3JC,F = 6.0 Hz, -CH2), 65.61 (m, -CH2), 66.01 (q, 3JC,F = 6.0 Hz, -CH2), 114.17 (m, -CF2), 114.50 (m, -CF2), 120.81 (td, 3JC,F = 276, 9.0 Hz, -CF2), 134.41 (s, -CH), 170.59 (s, -C=O) ppm.
19F NMR (CD2Cl2, 298 K, 565 MHz): δ = -78.18 (ddt, JC,F/F,F = 497.2, 146.9, 17.0, 11.3 Hz), -79.06 (ddt, 3JC,F/F,F = 146.9, 17.0, 5.7 Hz), -88.83 (ddt, JC,F/F,F = 146.9, 17.0, 5.7 Hz), -89.74 (t, JC,F/F,F = 5.7 Hz), -90.60 (ddt, JC,F/F,F = 146.9, 17.0, 5.7 Hz) ppm.
31P NMR (CD2Cl2, 298 K, 243 MHz): δ = -2.52 ppm.
MALDI-TOF MS: for C14H10F12NO9P・Na [M+Na]+, calculated: 617.98 Da, found: 618.40 Da
【0039】
(実施例4)PIPPER-NH・HClの合成
【化7】
【0040】
実施例1と同様にして得られた粗PIPPER-Clを無水トルエン200mLで希釈した。次いで、ピリジン1.0mL及びN-(tert-ブトキシカルボニル)エタノールアミン(1.74g,10.8mmol)を窒素気流下加えた。混合物を100℃で1時間加熱した後、薄層クロマトグラフィーに付した。溶媒を留去した後、粗生成物を、0~10%酢酸エチル含有ジクロロメタンを用いた、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製し、Boc-NH体を白色固体として得た(収量2.52g,4.10mmol,収率38%)。Boc-NH体を100mLの丸底フラスコに取り、酢酸エチル30mLに溶解した。次いで、エタノール30mL及び塩化アセチル3.0mL(3.30g,42.0mmol)を加え、混合物を24時間室温で撹拌した。溶媒を留去し、更に精製することなく、核磁気共鳴分光法及びMALDI-TOF MSで特徴づけられる目的化合物PIPPER-NH・HClを得た。
1H NMR (CD3OD, 298 K, 600 MHz): δ = 3.36 (t, 3J = 5.4 Hz, 2H, -NHCH2), 4.48 (dd, 3J = 9.4, 5.4 Hz, 2H, -OCH2), 4.70 (m, 2H, -OCF2CH2O), 4.75 (m, 2H, -OCF2CH2O) ppm.
13C NMR (CD3OD, 298 K, 150 MHz): δ = 41.10 (m, -CH2), 66.76 (m, -CH2), 67.21 (m, -CH2), 115.82 (m, -CF2), 116.12 (m, -CF2), 122.71 (td, 3JC,F = 276, 9.2 Hz, -CF2) ppm.
19F NMR (CD3OD, 298 K, 565 MHz): δ = -79.34 (m), -80.02 (m), -90.14 (m), -90.91 (s), -91.44 (m) ppm.
31P NMR (CD3OD, 298 K, 243 MHz): δ = -3.14 ppm.
MALDI-TOF MS: for C10H10F12NO7P・Na [M+Na]+, calculated: 538.13 Da, found: 538.965 Da (PIPPER-NH2・HCl), 471.254 Da (PIPPER-OH).
【0041】
(実施例5)PIPPER-Guanidinium Chlorideの合成
【化8】
【0042】
実施例1と同様にして得られた粗PIPPER-Clを無水トルエン200mLで希釈した。次いで、ピリジン1.0mL及びCarbamic acid, N,N'-[[2-(2-hydroxyethoxy)ethyl]carbonimidoyl]bis-,C,C'-bis(2,2-dimethylethyl)ester(3.75g,10.8mmol)を窒素気流下加えた。混合物を100℃で1時間加熱した後、薄層クロマトグラフィーに付した。溶媒を留去した後、粗生成物を、30%酢酸エチル含有ヘキサンを用いた、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーで精製し、Boc-Guanidinium体を白色固体として得た(収量2.30g,2.87mmol,収率27%)。Boc-Guanidinium体を100mLの丸底フラスコに取り、酢酸エチル15mLに溶解した。次いで、エタノール15mL及び塩化アセチル6.0mL(6.60g,84.0mmol)を加え、混合物を24時間室温で撹拌した。溶媒を留去し、更に精製することなく、核磁気共鳴分光法及びMALDI-TOF MSで特徴づけられる目的化合物PIPPER-Guanidinium Chlorideを得た。
1H NMR (CD3OD, 298 K, 600 MHz): δ = 3.40 (d, 3J = 5.4 Hz, 2H, -NHCH2), 3.68 (br, 2H, -OCH2), 3.77 (br, 2H, -OCH2), 4.34 (t, 3J = 5.4 Hz, 2H, -OCH2), 4.59 (m, 2H, -OCF2CH2O), 4.66 (m, 2H, -OCF2CH2O) ppm.
13C NMR (CD3OD, 298 K, 150 MHz): δ = 42.71 (m, -CH2), 66.73(m, -CH2), 70.02 (m, -CH2), 70.35 (m, -CH2), 70.86 (m, -CF2), 115.48 (m, -CF2), 115.80 (m, -CF2), 122.48 (td, 3JC,F = 276, 9.0 Hz, -CF2), 159.08 (s, -N2C=NH) ppm.
19F NMR (CD3OD, 298 K, 565 MHz): δ = -79.28 (m), -79.90 (m), -90.09 (m), -90.84 (s), -91.32 (m) ppm.
31P NMR (CD3OD, 298 K, 243 MHz): δ = -2.87 ppm.
MALDI-TOF MS: for C13H17F12N3O8P [M-Cl]+, calculated: 602.06 Da, found: 602.24 Da (PIPPER-Guanidinium+).
【0043】
(実施例6)PIPPER-Alkyneの合成
【化9】
【0044】
実施例3において、N-(2-ヒドロキシエチル)マレイミドの代わりに3-ブチン-1-オールを用いることで、PIPPER-Alkyneを得た。
1H NMR (CDCl3, 298 K, 600 MHz): δ = 2.06 (t, 4J = 2.6 Hz, 1H, alkyne-H), 2.62 (td, 3J = 6.6, 4J 2.6 Hz, 2H, alkyne-CH2), 4.21 (m, 2H, -OCH2), 4.31 (m, 2H, -OCF2CH2O), 4.50 (m, 2H, -OCF2CH2O) ppm.
13C NMR (CDCl3, 298 K, 600 MHz): δ = 20.75 (m, -CH2), 65.60 (m, -CH2), 66.80 (m, -CH2), 71.02 (d, JC,F/P = 40.5 Hz, -CH), 78.80 (d, JC,F/P = 13.5 Hz, -CH), 114.02 (m, -CF2), 114.54 (m, -CF2), 120.64 (td, 3JC,F = 276, 9.0 Hz, -CF2)ppm.
19F NMR (CDCl3, 298 K, 565 MHz): δ = -77.71 (m), -78.79 (m), -88.37 (m), -89.47 (s), -90.52 (m) ppm.
31P NMR (CDCl3, 298 K, 243 MHz): δ = -3.22 ppm.
MALDI-TOF MS: for C12H9F12O7P・K [M+K]+, calculated: 562.95 Da, found: 563.011 Da (PIPPER-Alkyne + K+).
【0045】
精製したPIPPER-Alkyneを特別な操作を行わずにMALDI-TOF MSにかけたところ、Kを補足したPIPPER-Alkyneのピークを観測し、以下に示すカリウムイオン包接体(Cal. m/z=562.95)が形成されたことを確認した。KはMALDI-TOF MSを行う際に用いるマトリックスに由来するものと考えられる。
【0046】
【化10】
【0047】
(実施例7)PIPPER-NH-NHBOCの合成
【化11】
【0048】
実施例4において、N-(tert-ブトキシカルボニル)エタノールアミンの代わりにN-(tert-ブトキシカルボニル)トリメチレンジアミンを用いることで、PIPPER-NH-NHBOCを得た。
1H NMR (CD2Cl2, 298 K, 600 MHz): δ = 1.42 (s, 9H, -Boc), 1.60 (m, 2H, - CH2), 2.96 (m, 2H, -NHCH2), 3.20 (m, 2H, -NHCH2), 4.05 (br, 1H, -NH), 4.25 (m, 2H, -OCF2CH2O), 4.44 (m, 2H, -OCF2CH2O), 4.76 (br, 1H, -NH) ppm.
13C NMR (CD2Cl2, 298 K, 150 MHz): δ = 28.08 (s, -CH2), 31.75 (d, 3JC,F = 4.5 Hz, -CH2), 36.71 (s, -CH2), 38.04 (s, -CH2), 64.28 (m, -CH2), 79.44 (s, -OCMe3), 114.18 (m, -CF2), 115.58 (m, -CF2), 121.30 (td, 3JC,F = 276, 9.0 Hz, -CF2), 156.88 (s, O=C-NH) ppm.
19F NMR (CD2Cl2, 298 K, 565 MHz): δ = -77.54 (m), -79.22 (m), -88.20 (m), -89.70 (s), -91.17 (m)ppm.
31P NMR (CD2Cl2, 298 K, 243 MHz): δ = -8.70ppm.
MALDI-TOF MS: for C11H14F12N2O6P+[M+H]+, calculated: 529.04 Da, found: 529.515 Da (PIPER-NH-NH3 +).
【0049】
(実施例8)PIPPER-NH-NBDの合成
【化12】
【0050】
(1)PIPPER-NH-NHClの合成
実施例4と同様に脱保護させて、PIPPER-NH-NHClを得た。
(2)PIPPER-NH-NBDの合成
PIPPER-NH-NHCl及び4-クロロ-7-ニトロベンゾフラザンをトリエチルアミン1当量の存在下、アセトニトリル中、室温で12時間反応させて、PIPPER-NH-NBDを得た(収率78%)。
1H NMR (CDCl3, 298 K, 600 MHz): δ = 1.97 (m, 2H,-CH2), 3.17 (m, 2H, - CH2), 3.21 (m, 1H, -NH), 3.62 (dd, 3J = 8.4, 5.4 Hz, 2H, ,-CH2), 4.32 (m, 2H, -OCF2CH2O), 4.50 (m, 2H, -OCF2CH2O), 6.20 (d, 3J = 8.4 Hz, 1H, ,NBD-CH), 7.00 (t, 3J = 5.4 Hz 1H, -NH), 8.49 (d, 3J = 8.4 Hz, 1H, ,NBD-CH)ppm.
13C NMR (CD2Cl2, 298 K, 150 MHz): δ = 30.35 (s, -CH2), 39.35 (d, 3JC,F = 4.5 Hz, -CH2), 41.68 (s, -CH2), 65.08 (m, -CH2), 99.82 (s, -Ar-C), 115.49 (m, -CF2), 115.06 (m, -CF2), 122.62 (td, 3JC,F = 276, 9.0 Hz, -CF2), 123.70 (s, Ar-C), 138.25 (s, Ar-C), 145.40 (s, -Ar-C), 145.78 (s, -Ar-C), 145.92 (s, -Ar-C) ppm.
19F NMR (CDCl3, 298 K, 565 MHz): δ = -77.47 (m), -79.21 (m), -87.96 (m), -89.66 (s), -91.28 (m)ppm.
31P NMR (CD2Cl2, 298 K, 243 MHz): δ = 9.04 ppm.
MALDI-TOF MS: for C17H12F12N5O9P[M-H]-, calculated: 690.03 Da, found: 690.384 Da (PIPER-NH-NBD).
【0051】
(実施例9)PIPPER-S-Phenylethaneの合成
【化13】
【0052】
実施例4において、N-(tert-ブトキシカルボニル)エタノールアミンの代わりに2-フェニルエタンチオールを用いる以外は同様にして、PIPPER-S-Phenylethaneを得た。
1H NMR (CDCl3, 298 K, 600 MHz): δ = 1.42 (s, 9H, -Boc), 1.60 (m, 2H, - CH2), 2.96 (m, 2H, -NHCH2), 3.20 (m, 2H, -NHCH2), 4.05 (br, 1H, -NH), 4.25 (m, 2H, -OCF2CH2O), 4.44 (m, 2H, -OCF2CH2O), 4.76 (br, 1H, -NH) ppm.
13C NMR (CDCl3, 298 K, 150 MHz): δ = 29.85 (m, -CH2), 40.41 (m, -CH2), 66.22 (m, -CH2), 114.18 (m, -CF2), 114.48 (m, -CF2), 120.17 (td, 3JC,F = 276, 9.0 Hz, -CF2), 126.55 (s, Ar-C), 126.75 (s, Ar-C), 128.73(s, Ar-C), 139.97 (s, Ar-C) ppm. 19F NMR (CDCl3, 298 K, 565 MHz): δ = -77.71 (m), -78.09 (m), -89.04 (m), -89.41 (s), -89.92 (m) ppm.
31P NMR (CDCl3, 298 K, 243 MHz): δ = -5.30 ppm.
MALDI-TOF MS: for C8H4F12O7P [M-H]-, calculated: 471.07 Da, found: 471.15 Da.
【0053】
(実施例10)PIPPER-EG-NBDの合成例
【化14】
【0054】
実施例4と同様にして合成したPIPPER-NH・HCl(120.0mg,0.218mmol)及び4-クロロ-7-ニトロベンゾフラザン(4-chloro-7-nitrobenzofurazan;44.0mg,0.220mmol)を無水アセトニトリル(50mL)に溶解した。この溶液に、10mLの無水アセトニトリルにトリエチルアミン(TEA,20.0mg,0.198mmol)を溶解した溶液を、窒素雰囲気下で、滴下することにより加えた。混合液を25℃で12時間攪拌し、この反応液を薄層クロマトグラフィー(TLC)処理した。溶媒を蒸発させた後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(φ=1.5cm,l=20cm)で精製した。溶離液として、酢酸エチル/DCM(1:1)を利用した。これにより、化合物PIPPER-EG-NBDを橙色の固体として得た(96mg,0.144mmol,収率65%)。
1H NMR (CD3CN, 298 K, 600 MHz): δ = 3.86 (br, 2H, -CH2), 4.39 (m, 2H, -CH2), 4.42 (m, 2H, -OCF2CH2O), 4.56 (m, 2H, -OCF2CH2O), 6.39 (d, 3J = 8.8 Hz, 1H, NBD-CH), 7.46 (br, 1H, -NH), 8.51 (d, 3J = 8.8 Hz, 1H, NBD-CH) ppm.
13C NMR (CD3CN, 298 K, 150 MHz): δ = 44.02 (s, -CH2), 65.91 (m, -CH2), 67.26 (s, -CH2), 100.25 (s, -Ar-C), 114.71 (m, -CF2), 115.11 (m, -CF2), 121.83 (td, 3JC,F = 276, 9.0 Hz, -CF2), 124.23 (s, Ar-C), 137.71 (s, Ar-C), 145.07 (s, -Ar-C), 145.48 (s), 145.57 (s) ppm.
19F NMR (CD3CN, 298 K, 565 MHz): δ = -77.49 (m), -79.02 (m), -87.94 (m), -89.44 (s), -90.89 (m) ppm.
31P NMR (CD3CN, 298 K, 243 MHz): δ = -2.27 ppm.
MALDI-TOF MS: for C16H11F12N4O10P [M-H+], calculated: 676.99 Da, found: 677.66 Da (PIPPER-EG-NBD).
【0055】
(実施例11)PIPPER-DEG-NBD の合成
NBD-DEG-OHの合成
【化15】
【0056】
4-クロロ-7-ニトロベンゾフラザン(4-chloro-7-nitrobenzofurazan;2.00g,10.02mmol)を窒素雰囲気下で100mLの乾燥アセトニトリルに溶解し、その溶液を0℃まで冷却した。この溶液に、20mLの無水アセトニトリルに2-(2-アミノエトキシ)エタノール(2-(2-aminoethoxy)ethanol;2.40g,22.8mmol)を溶解した溶液を、滴下して加え、混合液を室温で12時間攪拌した。溶媒を乾燥するまで蒸発させ、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(φ=3.0cm,l=20cm)で精製した。溶離液として、メタノールとジクロロメタンの混合液(MeOH:CHCl=1:20)を用いた。これにより化合物NBD-DEG-OH(1.80g,6.71mmol,収率67%)を得た。
1H NMR (CD2Cl2, 298 K, 600 MHz): δ = 1.97 (s, 1H, -OH), 3.67 (m, 2H, -CH2), 3.68 (br, 2H, -CH2), 3.78 (m, 2H, -CH2), 3.87 (m, 2H, -CH2), 6.22 (d, 3J = 8.8 Hz, 1H, NBD-CH), 6.95 (br, 1H, -NH), 8.48 (d, 3J = 8.8 Hz, 1H, NBD-CH) ppm.
13C NMR (CD2Cl2, 298 K, 150 MHz): δ = 43.91, 61.93, 68.37, 72.62, 98.90, 123.97, 136.65, 144.15, 144.24, 144.58.
MALDI-TOF MS: for C10H12N4O5[M-H+], calculated: 267.07 Da, found: 266.35 Da (NBD-DEG-OH).
【0057】
PIPPER-DEG-NBDの合成
【化16】
【0058】
実施例1と同様にして合成したPIPPER-Clの粗生成物を200mLの無水トルエンに溶解した。その後、1.0mLのピリジンと前記で合成したNBD-DEG-OH(1.50g,5.59mmol)を窒素雰囲気下で加えた。この混合物を80℃で1時間加熱した後、反応物を薄層クロマトグラフィーTLC処理した。溶媒を蒸発させた後、残留物をジクロロメタン(DCM;100mL)で抽出し、Milli-QTM 水(150mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(φ=3.5cm,l=20cm)で精製した(Rf=0.20,SiO)。溶離液としてメタノールとジクロロメタンの混合液(MeOH:DCM=1:20)を使用した。これにより化合物PIPPER-DEG-NBDを黄色の固体として得た(1.55g,2.15mmol,収率38%)。
1H NMR (CD2Cl2, 298 K, 600 MHz): δ = 3.73 (br, 2H, -CH2), 3.80 (m, 2H, -CH2), 3.87 (m, 2H, -CH2), 4.32 (dd, 3J = 8.4, 5.4 Hz, 2H, ,-CH2), 4.36 (m, 2H, -OCF2CH2O), 4.55 (m, 2H, -OCF2CH2O), 6.52 (d, 3J = 8.8 Hz, 1H, NBD-CH), 7.37 (t, 3J = 5.4 Hz, 1H, -NH), 8.48 (d, 3J = 8.8 Hz, 1H, NBD-CH) ppm.
13C NMR (CD2Cl2, 298 K, 150 MHz): δ = 44.30 (s, -CH2), 65.97 (d, 3JC,F = 4.5 Hz, -CH2), 68.57 (s, -CH2), 68.60 (s, -CH2), 70.12 (m, -CH2), 99.49 (s, -Ar-C), 114.49 (m, -CF2), 114.81 (m, -CF2), 121.15 (td, 3JC,F = 276, 9.0 Hz, -CF2), 124.18 (s, Ar-C), 136.84 (s, Ar-C), 144.60 (s, -Ar-C), 144.87 (s, 2C) ppm.
19F NMR (CD2Cl2, 298 K, 565 MHz): δ = -78.09 (m), -79.07 (m), -88.72 (m), -89.73 (s), -90.67 (m) ppm.
31P NMR (CD2Cl2, 298 K, 243 MHz): δ = -2.56 ppm.
MALDI-TOF MS: for C18H15F12N4O11P [M+H+], calculated: 723.30 Da, found: 723.89 Da (PIPPER-DEG-NBD).
【0059】
(実施例12)PIPPER-TEG-NBDの合成
NBD-TEG-OHの合成
【化17】
【0060】
4-クロロ-7-ニトロベンゾフラザン(4-chloro-7-nitrobenzofurazan;1.20g,6.01mmol)を窒素雰囲気下で、100mLの乾燥アセトニトリルに溶解し、この溶液を0℃まで冷却した。この反応溶液に、30mLの無水アセトニトリルに2-[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタノール(1.00g,6.70mmol)を溶解した溶液を滴下により加え、混合物を室温で12時間攪拌した。溶媒を蒸発させて乾燥し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(φ=3.0cm,l=20cm)で精製した。溶離液としてメタノールとジクロロメタンの混合液(MeOH:CHCl=1:20)を用いた。これにより目的の化合物NBD-TEG-OH(1.65g,5.29mmol,収率79%)を得た。
【0061】
PIPPER-TEG-NBDの合成
【化18】
【0062】
実施例11で用いたNBD-DEG-OHを前記で合成したNBD-TEG-OHに置き換えた以外は、同様にして、褐色の液状のPIPPER-TEG-NBDを得た(1.27g,1.66mmol,収率32%)。
1H NMR (CD2Cl2, 298 K, 600 MHz): δ = 3.69 (m, 6H, -CH2), 3.73 (m, 2H, -CH2), 3.84 (m, 2H, -CH2), 4.30 (m, 2H, -CH2), 4.38(m, 2H, -OCF2CH2O), 4.56 (m, 2H, -OCF2CH2O), 6.22 (d, 3J = 8.8 Hz, 1H, NBD-CH), 7.20 (br, 1H, -NH), 8.47 (d, 3J = 8.8 Hz, 1H, NBD-CH) ppm.
13C NMR (CD2Cl2, 298 K, 150 MHz): δ = 44.17 (s, -CH2), 65.79 (m, -CH2), 68.58 (s, -CH2), 69.02 (m, -CH2), 70.19 (m, -CH2), 70.92 (m, -2C), 99.31 (s, -Ar-C), 114.52 (m, -CF2), 114.82 (m, -CF2), 121.28 (td, 3JC,F = 276, 9.0 Hz, -CF2), 124.04 (s, Ar-C), 137.00 (s, Ar-C), 144.54 (s, -Ar-C), 144.75 (s, -Ar-C) 144.91 (s, -Ar-C)ppm.
19F NMR (CD2Cl2, 298 K, 565 MHz): δ = -78.20 (m), -79.02 (m), -88.90 (m), -89.76 (s), -90.56 (m) ppm.
31P NMR (CD2Cl2, 298 K, 243 MHz): δ = -2.78 ppm.
MALDI-TOF MS: for C20H18F12N4O12P [M-H+], calculated: 765.05 Da, found: 764.97 Da (PIPPER-TEG-NBD).
【0063】
(実施例13)PIPPER-Fmocの合成
【化19】
【0064】
実施例1と同様にして合成したPIPPER-Clの粗生成物を100mLの無水トルエンに溶解した。その後、この溶液に、1.0mLのピリジンと2-(Fmoc-アミノ)エタノール(2-(Fmoc-amino)ethanol;2.00g,7.06mmol)を窒素雰囲気下で加えた。混合物を1時間還流した後、反応物を薄層クロマトグラフィーTLC処理した。溶媒を蒸発させた後、残留物をジクロロメタン(DCM;100mL)で抽出し、Milli-QTM 水(150mL)で洗浄した.有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(φ=3.5cm,l=20cm)で精製した。溶離液として、酢酸エチルとジクロロメタンとの混合液(酢酸エチル:DCM=2:8)を用いた。これにより、無色の液体として化合物PIPPER-Fmoc(2.50g,3.39mmol,収率48%)を得た。
1H NMR (CDCl3, 298 K, 600 MHz): δ = 3.49 (dd, 3J = 10.8, 5.4 Hz, 2H, CH2), 4.18 (dd, 3J = 10.8, 5.4 Hz, 2H, CH2), 4.20 (t, 3J = 7.2 Hz, 1H), 4.28 (m, 2H, -OCF2CH2O), 4.43 (d, 3J = 7.2 Hz, 2H), 4.48 (m, 2H, -OCF2CH2O), 5.33 (t, 3J = 6.0 Hz, 1H, N-H), 7.31 (td, 3J = 7.8 Hz, 5J = 0.8 Hz, 2H, Ar-CH), 7.40 (t, 3J = 7.8 Hz, 2H, Ar-CH), 7.58 (d, 3J = 7.8 Hz, 2H, Ar-CH), 7.77 (d, 3J = 7.8 Hz, 2H, Ar-CH) ppm.
13C NMR (CDCl3, 298 K, 150 MHz): δ = 41.28 (s, -CH2), 47.34 (d, 3JC,F = 4.5 Hz, -CH2), 65.68 (m, -CH2), 67.11 (s, -CH2), 68.37 (m, -CH2), 114.29 (m, -CF2), 114.61 (m, -CF2), 120.26 (d, 3JC,F = 50.16 Hz, Ar), 120.72 (td, 3JC,F = 276, 9.0 Hz, -CF2), 125.12 (d, 3JC,F = 69.66 Hz, Ar), 127.27 (d, 3JC,F = 98.4 Hz, Ar), 127.98 (d, 3JC,F = 97.8 Hz, Ar), 141.55 (s, Ar), 138.25 (s, Ar-C), 143.97 (s, -Ar-C), 156.6 (s, C=O) ppm.
19F NMR (CDCl3, 298 K, 565 MHz): δ = -77.50 (m), -78.85 (m), -88.01 (m), -89.39 (s), -90.69 (m) ppm.
31P NMR (CDCl3, 298 K, 243 MHz): δ = -2.42 ppm.
MALDI-TOF MS: for C25H20F12NO9P.Na [M+Na]+, calculated: 760.38 Da, found: 760.148 Da (PIPPER-Fmoc+Na+); C25H20F12NO9P.K [M+K]+, calculated: 776.49 Da, found: 776.165 Da (PIPPER-Fmoc+K+).