IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社バイオマスレジンホールディングスの特許一覧

特開2024-6821バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法
<>
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図1
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図2
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図3
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図4
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図5
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図6
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図7
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図8
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図9
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図10
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図11
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図12
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図13
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図14
  • 特開-バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006821
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】バイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20240110BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240110BHJP
   C08L 97/02 20060101ALI20240110BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240110BHJP
   B09B 3/38 20220101ALI20240110BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CER
C08J3/20 ZBP
C08J3/20 CEZ
C08L1/00
C08L97/02
C08L23/26
B09B3/38 ZAB
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110256
(22)【出願日】2022-07-08
(62)【分割の表示】P 2022104812の分割
【原出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】522261525
【氏名又は名称】株式会社バイオマスレジンホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】神谷 雄仁
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和久
【テーマコード(参考)】
4D004
4F070
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4D004AA03
4D004AA04
4D004AA07
4D004AA12
4D004AC05
4D004BA10
4D004CA15
4D004CB05
4D004CB21
4D004DA03
4D004DA09
4D004DA10
4D004DA20
4F070AA02
4F070AA47
4F070AC36
4F070AC43
4F070AE30
4F070FA01
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC06
4J002AB01W
4J002AB03X
4J002AH00W
4J002BB203
4J002BE02X
4J002CF03X
4J002CF05X
4J002CF18X
4J002GC00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J200AA27
4J200BA14
4J200BA38
4J200DA16
4J200DA24
4J200DA28
4J200EA10
4J200EA11
4J200EA21
(57)【要約】
【課題】食品または食品残渣をバイオマス材料として使用しても、得られる樹脂組成物ま
たはその成形品中の凝集物を低減させ、外観を向上させることができる新規な製造方法を
提供すること。
【解決手段】含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を準備する工程と
、前記バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料を、水を排出する脱水部を備え
る混練装置において混練することによって混練物を得る工程と、を有し、前記バイオマス
材料が、セルロース系の食品系バイオマスを含む、樹脂組成物の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を準備する工程と、
前記バイオマス材料と、生分解性樹脂と、相溶化剤とを含む原料を、水を排出する脱水部を備える混練装置において混練することによって混練物を得る工程と、
を有し、
前記バイオマス材料が、セルロース系の食品系バイオマスを含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記バイオマス材料を準備する工程が、前記セルロース系の食品系バイオマスを予め自然乾燥しておく工程を有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記バイオマス材料を準備する工程が、前記セルロース系の食品系バイオマスを、含水率が15質量%以下の別のバイオマスと予め混合しておく工程を有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記セルロース系の食品系バイオマスが、野菜、果実、コーヒー滓および茶殻からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記セルロース系の食品系バイオマスが、野菜および果実からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記別のバイオマスが、木質系バイオマスを含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記バイオマス材料の嵩密度が、0.1g/cm以上である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記バイオマス材料の含水率が、50質量%未満である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記混練物を乾燥装置において乾燥する工程をさらに有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥装置は、前記混練物を収容可能な内部空間を設けたタンク、配管によって前記タンクと接続され、前記内部空間に流入する前記混練物を乾燥させる気体を発生可能な気体発生部、および前記タンクの前記内部空間に配置され、回転軸を中心に回転して前記内部空間を流通する前記混練物を撹拌させる撹拌翼を備える撹拌部と、
配管によって前記気体発生部からの気体が流通可能であり、前記気体発生部から流通する気体を圧縮する圧縮部と、を有する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1または10に記載の製造方法によって樹脂組成物を得、前記樹脂組成物を成形することを有する、成形品の製造方法。
【請求項12】
前記成形が、射出成形を含む、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオマス材料含有樹脂組成物の製造方法および成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに化石燃料からの脱却が望まれてお
り、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成され
た有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆる
カーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、天然由来の澱粉、米粉、木粉
、竹粉、紙粉といったバイオマス材料を配合した樹脂組成物の開発がなされている。
【0003】
樹脂に配合するバイオマス材料として、例えば、特許文献1では、米粉、あるいは、少
なくとも有意量の米粉を含有するセルロース、リグノセルロース及びデンプンなどバイオ
マスを使用する知見が、特許文献2では、木粉を使用する知見が開示されている。
【0004】
特許文献3では、食品残渣(コーヒー搾りかす)をバイオマス材料として使用する取り
組みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-89535号公報
【特許文献2】特開2020-158606号公報
【特許文献3】特開2011-57920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、食品残渣をバイオマス材料として使用した樹脂組成物の成形品は凝集物
が多く外観が悪いことを見出した。
【0007】
よって発明が解決しようとする課題は、食品または食品残渣をバイオマス材料として使
用しても、得られる樹脂組成物またはその成形品中の凝集物を低減させ、外観を向上させ
ることができる新規な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための、本発明の一態様に係る製造方法は、含水率が8質量%超
60質量%未満であるバイオマス材料を準備する工程と、前記バイオマス材料と、樹脂と
、相溶化剤とを含む原料を、水を排出する脱水部を備える混練装置において混練すること
によって混練物を得る工程と、を有し、前記バイオマス材料が、セルロース系の食品系バ
イオマスを含む、樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、食品または食品残渣をバイオマス材料として使用しても、得
られる樹脂組成物またはその成形品中の凝集物を低減させ、外観を向上させることができ
る新規な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態における混練装置(製造装置)を示す斜視図である。
図2図1の正面図である。
図3図1の平面図である。
図4図1の混練装置(製造装置)を構成する第1収容部の第1収容空間を示す図である。
図5図1の混練装置(製造装置)を構成する第1収容部の第1収容空間に配置された複数の回転部材について示す図である。
図6図1の混練装置を構成する第1乾燥部の圧縮機を示す模式図である。
図7図1の混練装置を構成する第1乾燥部の気体発生部および樹脂組成物を乾燥させるタンク等を示す概略斜視図である。
図8図7に含まれる第1乾燥部のタンクの内部等を示す概略斜視図である。
図9図8の正面図である。
図10図8の平面図である。
図11図1の混練装置を構成する第2乾燥部の圧縮機を示す模式図である。
図12図1の混練装置を構成する第2乾燥部の気体発生部および樹脂組成物を乾燥させるタンク等を示す概略斜視図である。
図13図12に含まれる第2乾燥部のタンクの内部等を示す正面図である。
図14】本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法を示すフローチャートである。
図15】実施例1、比較例2および比較例3のプレスシートの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。図面の説明におい
て同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。ここで示す実施形態は、
本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するもので
はない。よって、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な
他の形態、使用方法および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特
許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。本明細書において、範囲を
示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性
等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
【0012】
また、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の
寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで
一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0013】
本発明者らは、従前、食品残渣をバイオマス材料として使用した場合に、成形品(樹脂
組成物)中の凝集物が多く、外観が悪い原因がどこにあるのか鋭意検討を行った。
【0014】
食品残渣は、通常、高い含水率を有する。このような高い含水率を有する原料と樹脂と
の複合化を検討する場合、通常、前処理として高い含水率を有する原料を乾燥機などで乾
燥し、樹脂との複合化の直前の状態(混練設備に投入するタイミング)で含水率を極めて
低い状態にする。その理由は、水が多い状態で樹脂と混合すると十分な剪断力を付与する
ことができない(つまり十分な混練ができない)からである。現に、特許文献3 段落「
0027」には、「サンプルCについては、含水率が高くミキサーによる粉末化が困難で
あり、また、スプーンなどの比較的小さな成形物を射出成形法にて成形する場合は、合成
樹脂原料とサンプルCのコーヒー残渣物がうまく混合せず、ゲート位置に混合樹脂がつま
り成形するのが極めて困難である結果となった」との開示もある。また、バイオマス材料
の水が多い状態でそれを樹脂と混合すると、混練中に水分が突沸したりして原料の装置内
での逆流現象も生じうるからである。
【0015】
本発明者らは、含水率を極めて低い状態にして複合化を行うことが上記の問題に繋がっ
ていると考えた。
【0016】
そこで本発明の一態様の製造方法は、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオ
マス材料を、水を排出する脱水部を備えるという特殊な混練装置において混練する混練工
程を有する。このように含水率をある程度有するバイオマス材料と樹脂とを混練すること
によって、樹脂中のバイオマス材料を均一な状態にした上で脱水を行うことができ、それ
によりバイオマス材料の凝集を抑制することができる。また、乾燥しきった、あるいは、
含水率が極度に低いバイオマス材料と比較し、このような含水率を有する(つまりセミウ
ェット状態の)バイオマス材料は嵩高くないため、混練装置へ材料投入を容易にでき安定
供給に資する。
【0017】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の一態様の製造方法は、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材
料を準備する工程と、前記バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料を、水を排
出する脱水部を備える混練装置において混練することによって混練物を得る工程と、を有
し、前記バイオマス材料が、セルロース系の食品系バイオマスを含む、樹脂組成物の製造
方法である。かかる態様によれば、水分を多く含む食品残渣等をバイオマス材料として使
用しても、得られる樹脂組成物またはその成形品中の凝集物を低減させ、外観を向上させ
ることができる。
【0018】
(バイオマス材料を準備する工程)
本発明の一態様の製造方法は、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材
料を準備する工程を含み、前記バイオマス材料が、セルロース系の食品系バイオマスを含
む。なおセルロースはリグノセルロースの構成成分であってもよい。なお、食品系バイオ
マスの概念には、レストラン・食品工場等から出たフードロス;茶殻、抽出後のコーヒー
滓;等の食品残渣が含まれる。
【0019】
本発明の一実施形態において、混練装置に投入するバイオマス材料の含水率は8質量%
超60質量%未満である。含水率が8質量%以下あるいは60質量%以上であると、本発
明の所期の効果を奏することができない虞がある(比較例1~4)。本発明の一実施形態
において、バイオマス材料の含水率は、10質量%以上、12質量%以上、14質量%以
上、16質量%以上、18質量%以上、20質量%以上、22質量%以上、27質量%以
上、32質量%以上、35質量%以上、37質量%以上、42質量%以上、あるいは、4
5質量%以上である。本発明の一実施形態において、バイオマス材料の含水率は、59質
量%以下、57質量%以下、53質量%以下、51質量%以下、50質量%未満、49質
量%以下、48質量%以下、45質量%以下、42質量%以下、38質量%以下、33質
量%以下、28質量%以下、26質量%以下、あるいは、23質量%以下である。本発明
の一実施形態において、含水率の測定は、水分測定装置(日東精工アナリテック株式会社
社製 CA-310 電量滴定法 CAモード)を用いて、カールフィッシャー電量滴定
法にて行うことができる。当該測定方法は、乾燥装置外での測定に適用されうる。
【0020】
本発明の一実施形態において、混練装置に投入するバイオマス材料を準備する工程が、
バイオマスを予め自然乾燥しておく工程を有する。本発明の一実施形態において、自然乾
燥は、屋外または室内において、天日や日陰で自然に乾燥させる方法でありうる。自然乾
燥の際の気温(室温)は、5~40℃、13~35℃、15~30℃、あるいは、18~
28℃が好ましい。自然乾燥の際の相対湿度は、20~80%RH、30~70%RH、
あるいは、35~60%RHが好ましい。また、本発明の一実施形態において、自然乾燥
の時間は、例えば、1~48時間、5~36時間、あるいは、10~30時間であるがこ
れに制限されない。本発明の一実施形態において、食品系バイオマス、後述の別のバイオ
マス、バイオマス材料の少なくとも一つの含水率を、自然乾燥によって、59質量%以下
、57質量%以下、53質量%以下、51質量%以下、50質量%未満、49質量%以下
、48質量%以下、45質量%以下、42質量%以下、38質量%以下、33質量%以下
、28質量%以下、26質量%以下、あるいは、23質量%以下とする。本発明の一実施
形態において、食品系バイオマス、後述の別のバイオマス、バイオマス材料の少なくとも
一つの含水率を、自然乾燥によって、10質量%以上、15質量%以上、19質量%以上
、22質量%以上、24質量%以上、29質量%以上、32質量%、あるいは、35質量
%以上とする。
【0021】
本発明の一実施形態において、自然乾燥は、窓のない(あるいは窓を閉めた)室内にて
無風状態で行ってもよいし、扇風機などで送風しながら室内にて通風乾燥してもよい。本
発明の一実施形態において、自然乾燥は、上記で説明したような環境を再現した乾燥機を
用いて行ってもよい。本発明の一実施形態において、自然乾燥にはヒーターや熱風発生器
を使用しなくてもよい。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記セルロース系の食品系バイオマスが、野菜、果実、
コーヒー滓および茶殻からなる群から選択される少なくとも1種を含む。本発明の一実施
形態において、前記セルロース系の食品系バイオマスが、野菜および果実からなる群から
選択される少なくとも1種を含む。ここで、野菜は苗を植えて1年~2年未満で収穫する
草本植物を示してもよく、果樹は果実を食用とするものを言い、2年以上栽培する草本植
物及び木本植物であってよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、野菜として、大根、人参、馬鈴薯、里芋、かぶ、牛蒡、
蓮根、山の芋などの根菜類;白菜、キャベツ、ほうれん草、レタス、葱、玉葱、小松菜、
青梗菜、ふき、三つ葉、春菊、水菜、セロリ、アスパラガス、カリフラワー、ブロッコリ
ー、韮、大蒜などの葉茎菜類;きゅうり、茄子、トマト、ピーマン、南瓜、スイートコー
ン、さやいんげん、さやえんどう、グリーンピース、空豆、枝豆などの果菜類;生姜など
の香辛野菜;メロン、いちご、スイカなどの果実的野菜を使用してもよいし、これらに限
定されない。
【0024】
本発明の一実施形態において、果実として、かんきつ類(みかん、なつみかん、はっさ
く、いよかん、ネーブル)、りんご、なし(日本なし、西洋なし)、桃、黄桃、びわ、柿
、栗、梅、キウイフルーツ、すもも、パインアップル、カシス、バナナ、ぶどう、アボカ
ドなどでもよいし、これらに限定されない。
【0025】
本発明の一実施形態において、成形品(樹脂組成物)の外観を向上させる観点で、コー
ヒー滓、茶殻(例えば緑茶出し殻)などの繊維質が比較的硬く咀嚼して飲み込むことがで
きないようなものより、キャベツ、いちごなどの繊維質が比較的柔らかいものが好ましい
【0026】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料を準備するために用いる(乾燥前の)食
品系バイオマスの含水率は、例えば、30~99質量%、40~96質量%、あるいは、
50~93質量%である。
【0027】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料を準備するために用いる食品系バイオマ
スの粒径は、混練装置中の投入部に入る大きさであれば特に制限はされないが、目安は目
開き0.1~30mm、目開き1~27mm、あるいは、目開き5~25mmを通るサイ
ズである。例えば食品系バイオマスの粒径は、目開き30mmの篩を通るもので構成され
てもよく、目開き0.1mmの篩を通るもので構成されてもよい。
【0028】
本発明の一態様の製造方法において、バイオマス材料は、セルロース系の食品系バイオ
マスを含む。食品系バイオマスがデンプン系の食品系バイオマスから構成されると、デン
プンが老化(ベータ化)したりして、凝集が発生して外観が悪化する虞がある。
【0029】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料を準備する工程が、前記食品系バイオマ
スを、別のバイオマスと予め混合しておく工程を有する。本発明の一実施形態において、
食品系バイオマスと別のバイオマスとの混合は、例えば公知のミキサー等を用いて行えば
よい。本発明の一実施形態において、混合時間は、例えば、1~60分、あるいは、5~
30分が好適である。
【0030】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料を準備するために用いる別のバイオマス
は、木質系バイオマスを含む。本発明の一実施形態において、前記バイオマス材料を準備
するために用いる(食品系バイオマスと混合される)別のバイオマスの含水率は、1質量
%以上30質量%未満、15質量%以下、3~15質量%、5~13質量%、あるいは、
6~12質量%である。
【0031】
本発明の一実施形態において、セルロース系の食品系バイオマスと、別のバイオマスと
を予め混合することを有して、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料
を準備する。本発明の一実施形態において、セルロース系の食品系バイオマスの含水率が
、別のバイオマスの含水率より高い。本発明の一実施形態において、別のバイオマスは、
セルロース系の食品系バイオマスの含水率調整の用途で用いられうる。
【0032】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料を準備するために用いる別のバイオマス
の粒径も、混練装置中の投入部に入る大きさであれば特に制限はされないが、目安として
は目開きが0.1~10mm、目開き0.3~7mm、あるいは、目開き0.5~5mm
を通るサイズである。例えば別のバイオマス(例えば木粉系バイオマス)の粒径は、目開
き10mmの篩を通るもので構成されてもよく、目開き0.1mmの篩を通るもので構成
されてもよい。
【0033】
本発明の一実施形態において、木質系バイオマスは、木質系、草本系などの如何なるも
のであってもよく、木粉、竹粉、ワラ、紙粉、パルプなどの少なくとも1種が例示できる
。ネピアグラス、ベージグラス、ササ、タケ、綿、トウヒ、カバ、稲わらなど;バガス、
籾殻などを含む農業廃棄物;製材残材、林地残材、間伐材、廃建材、木くずなどを含む産
業廃棄物;古紙などを含む生活系廃棄物などでもよい。
【0034】
本発明の一実施形態において、木質系バイオマスの粒子径は、例えば、上限としては、
60メッシュパス、70メッシュパス、80メッシュパス、あるいは、100メッシュパ
スのものなどが好適に使用できる。下限としては、200メッシュオン、150メッシュ
オンであってもよい。木質系バイオマスの市販品としては、LIGNOCEL(登録商標
)C100、C200(以上、独国レッテンマイヤー社製)、KCフロックW-100G
K、W-100F(以上、日本製紙株式会社製)等が好適である。
【0035】
本発明の一実施形態において、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材
料の嵩密度が、0.1g/cm以上、0.2g/cm以上、0.3g/cm以上、
0.4g/cm以上、あるいは、0.5g/cm以上である。本発明の一実施形態に
おいて、前記バイオマス材料の嵩密度が、0.6g/cm以下である。
【0036】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料中のセルロース系の食品系バイオマスの
質量の割合が、50質量%超、55質量%以上、あるいは60質量%以上である。本発明
の一実施形態において、バイオマス材料中のセルロース系の食品系バイオマスの質量の割
合が、100質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、あるいは70質量%以下で
ある。
【0037】
本発明の一実施形態において、食品系バイオマス中のセルロース系の食品系バイオマス
の質量の割合が、50質量%超、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、9
0質量%以上、95質量%以上、96質量%以上、97質量%以上、98質量%以上、9
9質量%以上、あるいは100質量%である。
【0038】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料中の別のバイオマス(例えば木粉)の質
量の割合が、0質量%、10質量%以上、20質量%以上、あるいは、30%以上である
。本発明の一実施形態において、バイオマス材料中の別のバイオマスの質量の割合が、5
0質量%未満、45質量%以下、あるいは40質量%以下である。
【0039】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料中のセルロース系食品系以外の食品系バ
イオマス(例えば、米、ふすま、小麦、豆などのデンプン系食品系バイオマス)の質量の
割合が、50質量%未満、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量
%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、あ
るいは0質量%である。
【0040】
本発明の一実施形態において、バイオマス材料の粒径も、混練装置中の投入部に入る大
きさであれば特に制限はされない。バイオマス材料が食品系バイオマスから構成される場
合は、上記で説明した食品系バイオマスの粒径と同じでありうるし、バイオマス材料がさ
らに別のバイオマスを含む場合は、バイオマス材料の粒径は、上記で説明した別のバイオ
マスの粒径と同じものを含みうる。これらの一部または全部が凝集するとそれに応じた粒
径に変化しうるが混練装置中の投入部に入る大きさであれば特に制限はされない。バイオ
マス材料は、1種のみを用いてもよく、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
(混練物を得る工程)
本発明の一態様の製造方法は、前記バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料
を、水を排出する脱水部を備える混練装置において混練することによって混練物を得る工
程を有する。
【0042】
本発明の一実施形態において、前記バイオマス材料の好適な配合量(固形分量)は、混
練装置内に投入される、原料の固形分換算の全量(100質量部)において、1~70質
量部、5~68質量部、10~62質量部、20~58質量部、あるいは、30~55質
量部の範囲であることが適切である。
【0043】
本発明の一実施形態の原料は樹脂として非生分解性樹脂を含む。本発明の一実施形態に
おいて、非生分解性樹脂は、生分解性を有さない樹脂である。ここで、生分解性とは、I
SO 9408、ISO 9439、ISO 10707、JIS K 6950 20
00年、JIS K 6951 2000年、JIS K 6953 2011年、およ
び、JIS K 6955 2017年の少なくとも1つを満たすものである。つまり、
非生分解性は、それらのいずれも満たさないものでありうる。
【0044】
本発明の一実施形態において、非生分解性樹脂は、ポリオレフィンでありうる。本発明
の一実施形態において、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直
鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)もしくはポリ
プロピレン(PP)が挙げられる。または、本発明の一実施形態において、非生分解性樹
脂は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体
(EEA)等のエチレン系の共重合体でありうる。
【0045】
本発明の一実施形態において、非生分解性樹脂はペレットの形態でありうる。本発明の
一実施形態において、非生分解性樹脂(特にペレットの形態)の平均粒径は、例えば、0
.5~10mm、1~8mm、あるいは、2~6mmである。非生分解性樹脂(特にペレ
ットの形態)の平均粒径の測定は、JIS B 7507:2016(ノギス)に準拠さ
れうる。具体的には、複数のペレットから統計学的に信頼できる数(あるいは、10個、
50個、100個、またはそれ以上)を任意に選び出す。選び出された各ペレットの最も
長い径をそれぞれ測定する。それを相加平均する。
【0046】
本発明の一実施形態において、非生分解性樹脂の融点の上限は、焦げ付きを防止するた
めに、120℃以下、118℃以下、あるいは、116℃以下である。本発明の一実施形
態において、非生分解性樹脂の融点の下限は、混練を容易に行うことができる観点から、
110℃以上であることが好ましく、111℃以上であることがより好ましく、112℃
以上であることが特に好ましい。本発明の一実施形態において、融点の測定は、例えば株
式会社 島津製作所社製の定試験力押出形 細管式レオメータ フローテスタ(CFT-
500EX)を用いて行うことができる。
【0047】
非生分解性樹脂は市販品を用いてもよく、具体的には、ウインテック(日本ポリプロピ
レン社製)、ノバテック(日本ポリプロピレン社製)、プライムポリプロ(プライムポリ
マー社製)、エボリュー(プライムポリマー社製)等が挙げられる。これら非生分解性樹
脂のうちの1種のみを用いてもよく、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
本発明の一実施形態において、非生分解性樹脂の好適な配合量は、混練装置内に投入さ
れる、原料の固形分換算の全量(100質量部)において、10~69質量部、22~6
7質量部、29~61質量部、34~57質量部、あるいは、40~54質量部の範囲で
あることが適切である。
【0049】
本発明の一実施形態の原料は樹脂として生分解性樹脂を含む。本発明の一実施形態にお
いて、生分解性樹脂は、生分解性を有する樹脂である。ここで、生分解性とは、ISO
9408、ISO 9439、ISO 10707、JIS K 6950 2000年
、JIS K 6951 2000年、JIS K 6953 2011年または、JI
S K 6955 2017年の少なくとも1つを満たすものである。なお、日本バイオ
プラスチック協会(JBPA)の生分解性プラポジティブリスト(PL)(分類番号B-
3(滑剤))に列挙されている物質は、参照により全体として引用され、本明細書に組み
込まれ、補正の適法な根拠となる。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、生分解性の樹脂は、2価のカルボン酸と、2価のアルコ
ールとの重縮合反応によって得られるものであってもよい。2価のカルボン酸としては、
例えば、炭素数1~4あるいは2~3の脂肪族炭化水素における2つの水素がカルボキシ
基に置換されたもの、あるいは、芳香族炭化水素における2つの水素がカルボキシ基に置
換されたものがある。より詳しくは、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピ
ン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等が好適である。2種以上のものが
適宜組み合わされてもよい。2価のアルコールとしては、炭素数2~6あるいは3~5の
脂肪族炭化水素における2つの水素が水酸基に置換されたものがある。より詳しくは、例
えば、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール等が好適
である。換言すれば、生分解性の樹脂は、2価のカルボン酸由来の構成単位と、2価のア
ルコールの構成単位とを含む。このような生分解性の樹脂として、例えば、ポリブチレン
サクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)等が好適
である。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、生分解性の樹脂は、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリ
ビニルアルコール(PVA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリブチレンサクシネート
-co-アジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)
、ポリエチレンテレフタレートサクシネート(PETS)、PBAT・PLAコンパウン
ド、澱粉ポリエステル樹脂、酢酸セルロース、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、及
び3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート重合体(PHBH)
からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。ここで、ポリ乳酸(PLA)
を得る方法としては、例えば、ラクチド法、直接重合、あるいは溶融法などが知られてい
る。ラクチド法は、乳酸を加熱脱水重合すると低分子量のポリ乳酸(オリゴマー)が得ら
れ、このオリゴマーをさらに減圧下加熱分解することにより、乳酸の環状二量体であるラ
クチドが得られ、ラクチドは金属塩の触媒存在下で容易に重合し、ポリ乳酸を与える。触
媒としては、オクタン酸スズが好適である。この他にアルミニウムやランタノイドのイソ
プロポキシド、亜鉛の塩なども重合活性がある。直接重合においては、ジフェニルエーテ
ルなどの溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させることによって直接
ポリ乳酸が得られる。
【0052】
本発明の一実施形態において、生分解性樹脂は市販品を用いてもよく、具体的には、三
菱ケミカル社製のフォゼアス(登録商標)、トタルコービオン製のルミニー、ネイチャー
ワークス社製のインジオ、ユニチカ株式会社製のテラマック等が挙げられる。これら生分
解性樹脂のうちの1種のみを用いてもよく、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよ
い。
【0053】
本発明の一実施形態において、生分解性樹脂はペレットの形態でありうる。本発明の一
実施形態において、生分解性樹脂(特にペレットの形態)の平均粒径は、例えば、0.5
~10mm、1~8mm、あるいは、2~6mmである。生分解性樹脂(特にペレットの
形態)の平均粒径の測定は、JIS B 7507:2016(ノギス)に準拠されうる
。具体的には、複数のペレットから統計学的に信頼できる数(あるいは、10個、50個
、100個、またはそれ以上)を任意に選び出す。選び出された各ペレットの最も長い径
をそれぞれ測定する。それを相加平均する。
【0054】
本発明の一実施形態において、生分解樹脂の融点の上限は、焦げ付きや、高温下におけ
るバイオマスの熱分解を防止するために、190℃以下、180℃以下、170℃以下、
あるいは、160℃以下である。本発明の一実施形態において、生分解性樹脂の融点の下
限は、混練中の脱水を容易に行うことができる観点から、100℃以上であることが好ま
しく105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが特に好ましい。
本発明の一実施形態において、融点の測定は、例えば株式会社 島津製作所社製の定試験
力押出形 細管式レオメータ フローテスタ(CFT-500EX)を用いて行うことが
できる。
【0055】
本発明の一実施形態において、生分解性樹脂の好適な配合量は、混練装置内に投入され
る、原料の固形分換算の全量(100質量部)において、10~69質量部、22~67
質量部、29~61質量部、34~57質量部、あるいは、40~54質量部の範囲であ
ることが適切である。本発明の一実施形態において、樹脂は、生分解樹脂と非生分解性樹
脂の混合物であってもよい。
【0056】
本発明の一態様の製造方法で用いられる原料は相溶化剤を含む。相溶化剤を含まないと
原料の混練が不安定(つまりバイオマス材料と樹脂とが均一に相溶しない)なため、外観
が悪い結果となる(比較例5)。
【0057】
本発明の一実施形態において、相溶化剤は、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸または
その誘導体が用いられうる。飽和カルボン酸としては、無水コハク酸、コハク酸、無水フ
タル酸、フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水アジピン酸等が挙げられる。不飽和
カルボン酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、イタコン酸、無水
イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、ソルビン酸、アクリル酸等が挙げられる
。不飽和カルボン酸の誘導体としては、不飽和カルボン酸の金属塩、アミド、イミド、エ
ステル等を使用することができる。また、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性され
た、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂を使用することができ
る。これは、ポリオレフィンと不飽和カルボン酸またはその誘導体と、ラジカル発生剤と
を溶媒の存在下または不存在下に加熱混合することにより得られる。
【0058】
本発明の一実施形態において、ポリオレフィン樹脂に対する不飽和カルボン酸またはそ
の誘導体の付加量(変性量)は、0.1~15質量%、あるいは、1~10質量%である
。相溶化剤としては、臭気が無く、酸性度が小さい不飽和カルボン酸またはその誘導体で
変性したポリオレフィン樹脂が好適である。
【0059】
本発明の一実施形態において、相溶化剤は、生分解性を有している。本発明の一実施形
態の相溶化剤は、グリセロール、ポリグリセロール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及
び、グリセリン脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0060】
上記のグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノエステル、ジエステル、トリエステル
の3種が挙げられ、より具体的には、例えば、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド
、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、グリセリンジアセトモノ
ラウレート等のアセチル化グリセライド(ジアセチル脂肪酸モノグリセリド)、コハク酸
モノグリセリド、ポリグリセリン縮合リノシール酸エステル、グリセリンジアセトモノラ
ウレートが挙げられる。一実施形態によれば、ジアセチル脂肪酸モノグリセリドは、炭素
数が8~15、9~14、あるいは、10~13のアルキル基を有する。
【0061】
一実施形態によれば、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、以下の構造を有し、nは、例
えば、2~6、あるいは、2~5であり、Rは、炭素数が11~20、13~19、ある
いは、15~18のアルキル基である。
【0062】
【化1】
【0063】
本発明の一実施形態において、相溶化剤の好適な配合量は、混練装置内に投入される、
原料の固形分換算の全量(100質量部)において、0.2~20質量部、0.5~10
質量部、あるいは、1~5質量部の範囲であることが適切である。
【0064】
相溶化剤は市販品を用いてもよく、具体的には、リケエイドMG-440P(理研ビタ
ミン株式会社社製)、MG-441P(理研ビタミン株式会社製)、MG-250P(理
研ビタミン株式会社製)、ポエム J-4081V(理研ビタミン株式会社製)、ユーメ
ックス1001(株式会社三洋化成工業製)ユーメックス1010(株式会社三洋化成工
業製)、チラバゾールVR-01(太陽化学株式会社製)、チラバゾールVR-07(太
陽化学株式会社製)等が挙げられる。これら相溶化剤のうちの1種のみを用いてもよく、
必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0065】
(混練装置)
本発明の一実施形態の混練装置は、二軸混練装置である。以下、好ましい二軸混練装置
の実施形態を説明する。
【0066】
二軸混練装置1は、第1収容部10と、投入部20と、回転部30と、脱水部50と、
第1脱気部60と、第2脱気部70と、排出部80と、冷却部90と、切断部110と、
を有する。二軸混練装置1は、さらに選別部120と、第1乾燥部130および第2乾燥
部160(乾燥装置に相当)と、を有する。なお、二軸混練装置1の説明にあたり、図面
には直交座標系を表記している。Xは後述する回転部30の回転軸の延在する方向であり
、長手方向Xとする。Yは長手方向Xと交差する第1収容部10の幅方向に相当し、幅方
向Yとする。Zは長手方向X及び幅方向Yと交差する方向であり、高さ方向Zとする。以
下、詳述する。
【0067】
(第1収容部10)
第1収容部10は、バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤を収容する第1収容空間S1
を形成する。第1収容部10は、二軸混練装置1を設置する空間の長手方向Xに延在する
ように長尺に構成している。
【0068】
第1収容部10は、回転部30を構成する複数の回転部材31、32、33、34、3
5、36、37、38、39、41、42を収容する第1収容空間S1を形成するように
構成している。第1収容部10によって形成される第1収容空間S1は投入部20の直下
から第2脱気部70と接続される部位まで一続きになるように構成している。第1収容空
間S1は、本実施形態において回転部30の回転部材の回転軸を二軸設けるように、図4
に示すように断面の内周部分を、2つの円弧を合わせたような形状に構成している。第1
収容部10には第1収容空間S1の温度を調整するためのヒーター等の加熱装置(図示省
略)を設けることができる。上述したヒーターは第1収容部10の第1収容空間S1の長
手方向Xにおいて後述する回転部材の特定の区間毎に温度を調整できるように例えば長手
方向Xに複数配置することができる。
【0069】
(投入部20)
投入部20は、図4に示すように第1収容空間S1に上述したバイオマス材料と、樹脂
と、相溶化剤を投入可能なホッパー(フィーダー)を備える。投入部20のホッパーは、
漏斗状に形成している。
【0070】
本発明の一実施形態において、第1収容空間S1における投入部に相当する部位の温度
は、バイオマス材料に含まれる水分の突沸抑制の観点で、例えば40~90℃、50~8
5℃、あるいは、70~82℃である。
【0071】
(回転部30)
回転部30は、第1収容空間S1において回転可能に配置される。回転部30は、複数
の回転部材31~39、41、42を長手方向Xに平行な方向を回転軸として回転軸に沿
って並べて配置するように構成している。回転部材31~39、41、42は、図5に示
すように幅方向Yに沿って2軸並べて設けている。回転部材31は、本明細書において第
1スクリュー、回転部材32は第1パドル、回転部材33は第2スクリュー、回転部材3
4は第2パドル、回転部材35は第4スクリュー、回転部材41は第6スクリュー、回転
部材42は第7スクリューに相当する。以下に各々の回転部材について詳述する。
【0072】
(回転部材31)
回転部材31は、第1収容部10の第1収容空間S1において投入部20のホッパーの
直下に配置している。回転部材31は、スクリューを形成するように構成している。本明
細書において回転部材31が配置される第1収容空間S1の部位はバイオマス材料と、樹
脂と、相溶化剤とを含む原料が投入される原料投入部と称する。
【0073】
(回転部材32、33)
回転部材32は、図5に示すように第1収容空間S1の回転部材31よりも下流側にお
いて回転部材31に隣接して設けている。回転部材32は、板状部材を回転軸に沿って並
べて配置するように構成している。回転部材32は、回転部材31と回転部材33との間
に配置している。
【0074】
回転部材33は、第1収容空間S1の回転部材32よりも下流側において回転部材32
に隣接して設けている。回転部材33は、回転部材31と同様にスクリューを形成するよ
うに構成している。回転部材33は、回転部材31よりも螺旋の溝を浅く形成している。
回転部材33は、回転部材31よりも螺旋の径方向における最外周と最内周の差が大きく
なるように構成している。回転部材33は、回転部材31と最外周の大きさが同等で、最
内周が回転部材31よりも小さくなるように構成している。回転部材32、33が配置さ
れる第1収容空間S1の部位は、投入部20から投入された樹脂を溶解させる樹脂溶解部
と称することができる。
【0075】
(回転部材34)
回転部材34は、回転部材32と同様に板状部材を回転軸に沿って複数並べるように配
置しており、第1収容空間S1において回転部材33よりも回転軸の下流側に配置するよ
うに構成している。回転部材34は、図5において板状部材の板厚が一種類となるように
図示しているが、一種類でなくてもよい。回転部材34は、回転部材32よりも薄く形成
することによってせん断応力をより発揮させて原料を分散させるとともに均一な撹拌を行
うように構成している。回転部材34が配置される第1収容空間S1の部位は、投入部2
0から投入された原料を混練する混練部と称することができる。回転部材33と回転部材
34との境界近傍には、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料に由来
する水等を排出するために脱水部50を接続するように構成している。詳細は後述する。
【0076】
(回転部材35)
回転部材35は、第1収容空間S1において回転部材34よりも下流側において回転部
材34に隣接して設けている。回転部材35は、回転部材33と同様にスクリューを形成
するように構成している。回転部材35は、螺旋の溝の深さが回転部材33と同等になる
ように構成している。回転部材35は、第1収容空間S1において混練された原料を脱気
する第1脱気部60と接続される。詳しくは後述する。
【0077】
(回転部材36~39)
回転部材36、37は、第1収容空間S1の回転部材35の下流側において回転部材3
5に隣接して設けている。回転部材36、37は、回転部材32と同様に板状部材を並べ
るように構成している。回転部材36、37には起伏の小さい螺旋を形成しており、回転
部材36と回転部材37の螺旋の回転方向は異なるように構成している。
【0078】
回転部材38、39は、第1収容空間S1の回転部材37よりも下流側において回転部
材37に隣接して設けている。回転部材38、39は、回転部材33と同様にスクリュー
を形成するように構成している。回転部材38、39のスクリューは螺旋の溝の深さを回
転部材33と同様に構成している。回転部材38と回転部材39は螺旋の回転方向が逆転
するように構成している。
【0079】
このように回転部材36、38と回転部材37、39の螺旋の回転方向を逆転させるこ
とによって、回転部材35から送られる原料は回転部材37、39で回転軸の上流側に一
時的に押し返されるようにしたうえで下流側に移動する。これにより、原料が回転部材3
6~39に比較的長く滞留し、原料の密度が向上するように圧縮が行われる。回転部材3
6~39が配置される第1収容空間S1の部位は原料の圧縮を行う圧縮部と称することが
できる。
【0080】
(回転部材41、42)
回転部材41は、第1収容空間S1の回転部材35、39よりも下流側において回転部
材39に隣接して設けている。回転部材42は、第1収容空間S1の回転部材41よりも
下流側において回転部材41に隣接して設けている。回転部材41、42は、回転部材3
3と同様にスクリューを形成するように構成しており、回転部材42は回転部材41より
も螺旋のピッチが短くなるように構成している。回転部材41、42は第1収容空間S1
に収容された原料の脱気を行う第2脱気部70と接続される。
【0081】
このように、回転部材31~39、41、42は、螺旋形状を備え、投入部20の直下
に配置された回転部材31と、回転部材31よりも回転軸の下流側に配置され、回転部材
31よりも螺旋の溝が浅く形成された回転部材33を備える。このように構成することに
よって、原料の少なくとも一部が通常、二軸混練装置ではスクリューによって下流側に送
られ難くても、回転部材31によって原料の少なくとも一部を下流側に送るようにして混
練を行うことによって樹脂組成物を効率的に製造することができる。
【0082】
また、回転部材31~39、41、42は、第1収容空間S1において回転部材34よ
りも下流側に設けられる回転部材35を備える。回転部材35の近傍には、第1脱気部6
0を接続している。第1脱気部60は、スクリュー61と、第3収容部62と、を備える
。スクリュー61は、回転部材31~39、41、42の回転軸と交差する方向に平行な
方向を回転軸として回転し、対になるように構成している。第3収容部62は、スクリュ
ー61を収容する第3収容空間S3を備えるとともに第1収容部10と接続され、第1収
容空間S1で発生した気体を吸引により排出可能なポンプなどと接続される。このように
構成することによって、脱水部50と同様に原料の固形成分を第1収容空間S1に残しつ
つ、原料に含まれる不要な水分をさらに排出するようにできる。
【0083】
また、回転部材31~39、41、42は、第1収容空間S1において回転部材35よ
りも下流側に設けられる回転部材41と、回転部材41に隣接して設けられる回転部材4
2と、を備える。回転部材41の近傍には、第2脱気部70を接続している。第2脱気部
70は、スクリュー71と、第4収容部72と、を備える。スクリュー71は、回転部材
41の回転軸と交差する方向に平行な方向を回転軸として回転し、対になるように構成し
ている。第4収容部72は、スクリュー71を収容する第4収容空間S4を備えるととも
に第1収容部10と接続され、第1収容空間S1で発生した気体を吸引により排出可能な
ポンプと接続される。このように構成することによって、第1脱気部60と同様に材料の
固形成分を第1収容空間S1に残しつつ、原料の不要な水分をさらに排出することができ
る。また、第2脱気部70を回転部材42ではなく、螺旋のピッチが比較的大きい回転部
材41の近傍で接続することによって、不要な水分を第1収容空間S1から排出し易くす
ることができる。
【0084】
なお、回転部材31~39、41、42の長手方向Xの全体長さに対する回転部材32
、34の比率(すなわち、ニーディングブロック比率)は、例えば、18~32%、ある
いは、22~27%でありうる。
【0085】
(脱水部50)
脱水部50は、第1収容部10で混練される原料由来の水分等を排出(脱水)するよう
に構成している。脱水部50は、図5に示すように回転部材33と回転部材34との境界
近傍において回転部材33、34の回転軸と交差する方向から第1収容部10に接続して
いる。第1収容空間S1における回転部材33と回転部材34の境界付近では、少なくと
も混練の際の第1収容空間S1における内部圧力が飽和蒸気圧となるように構成できる。
【0086】
脱水部50は、図5に示すようにスクリュー51(第3スクリューに相当)と、第2収
容部52と、駆動部53と、を備える。スクリュー51は、回転部材31~39、41、
42と交差する方向に回転し、対になるように構成している。駆動部53は、スクリュー
51を回転させるモーターを備えるように構成している。第2収容部52は、図5に示す
ように第1収容部10と接続され、スクリュー51を収容する第2収容空間S2を設けた
筐体などを備える。第2収容部52は、第2収容空間S2から水分を排出する。第2収容
部52には水分を排出可能な開口部(図示省略)を設けている。開口部は、第2収容部5
2の上部等に設けることができる。
【0087】
上述のとおり、回転部材31~39、41、42は、回転部材31と回転部材33の間
に配置され、板状部材を回転軸に並べて配置した回転部材32と、回転部材33よりも回
転軸の下流側に配置される板状の回転部材34と、を備える。回転部材33と回転部材3
4の近傍には、脱水部50を接続している。脱水部50は、スクリュー51と、第2収容
部52と、を備える。スクリュー51は、回転軸と交差する幅方向Yに平行な方向を回転
軸として回転し、対となるように構成している。第2収容部52は、スクリュー51を収
容する第2収容空間S2を備えるとともに第1収容部10と接続され水分を排出可能な開
口部を設けている。このように構成することによって、原料に含まれる固形成分を第1収
容部10の第1収容空間S1に残しつつ、原料に含まれる不要な水分等を取り除くことが
できる。脱水部50を設けないと水分過剰となり、剪断応力が不十分で混練不足となり、
ダイヘッド80から水分が突沸して扱いが難しく、また得られる樹脂組成物中に水分由来
の気泡、鬆が入り、外観が悪い結果となりうる(比較例6)。
【0088】
(第1脱気部60)
第1脱気部60は、第1収容部10において回転部材35が配置される近傍に接続する
ように構成している。第1脱気部60は、図5に示すようにスクリュー61(第5スクリ
ューに相当)と、第3収容部62と、駆動部63と、を備える。スクリュー61は、回転
部材31~39、41、42の回転軸と交差する方向に回転し、対になるように構成して
いる。駆動部63は、脱水部50と同様にスクリュー61を回転駆動させるモーターなど
を備えるように構成している。第3収容部62は、回転部材35の近傍で第1収容部10
と接続され、スクリュー61を収容する第3収容空間S3を設けた筐体などを備える。第
3収容部62は、第3収容空間S3を介して水分を吸引可能な真空ポンプなどと接続して
いる。
【0089】
(第2脱気部70)
第2脱気部70は、第1収容部10において回転部材41が配置される近傍において接
続するように構成している。第2脱気部70は、図5に示すようにスクリュー71(第8
スクリューに相当)と、第4収容部72と、駆動部73と、を、備える。スクリュー71
は、回転部材31~39、41、42の回転軸と交差する方向に回転し、対になるように
構成している。駆動部73は、第1脱気部60と同様にスクリュー71を回転駆動させる
モーターなどを備えるように構成している。第4収容部72は、回転部材41の近傍で第
1収容部10と接続され、スクリュー71を収容する第4収容空間S4を設けた筐体など
を備える。脱水部50のスクリュー51と第1脱気部60のスクリュー61と第2脱気部
70のスクリュー71は、回転部材31~39、41、42の動作を妨げない程度に幅方
向Yに沿って回転部材31~39、41、42に接近するように延在している。
【0090】
第4収容部72は、第4収容空間S4を介して水分を吸引可能な真空ポンプなどと接続
している。なお、第2収容部52、第3収容部62、第4収容部72は、図5において便
宜上、簡略化して図示している。
【0091】
このように、二軸混練装置1が2つの脱気部として第1脱気部60と第2脱気部70を
備えるように構成することによって、含水率が高い原料を用いて混練を行った際に、第1
脱気部60と第2脱気部70によって更に効率的に脱水を行うことができ混練物(樹脂組
成物)に不要な水分等を取り除くことができる。
【0092】
(排出部80)
排出部80は、図1等に示すように第1収容部10の下流側における外側に隣接して設
けている。排出部80は、第1収容部10の第1収容空間S1において作製された混練物
を紐状に形成するために設けられる。排出部80は、本実施形態において第1収容部10
の長手方向Xにおける端部であって第1収容部10の第1収容空間S1と外部とを繋ぐ部
位に設けた複数の穴形状を設けた部材を備えるように構成している。排出部80は、第1
収容部10に配置された回転部材31~39、41、42などと同様にヒーターなどの加
熱装置を設けることによって加温することができる。
【0093】
(冷却部90)
冷却部90は、第1収容部10から排出された紐状の混練物を冷却するために設けられ
る。冷却部90は、図1に示すようにコンベヤー91と、液体供給部92と、気体供給部
93と、を備える。
【0094】
コンベヤー91は、排出部80に隣接して設けている。コンベヤー91は、図2に示す
ように排出部80から排出された混練物を切断部110まで搬送するように構成している
。コンベヤー91は、本実施形態において図2に示すように長手方向Xから高さ方向Zの
正の方向に向かって傾斜した斜め方向に沿って延在するように構成している。ただし、コ
ンベヤー91の延在方向は一例であって混練物を切断部110に搬送できれば、コンベヤ
ーの具体的な搬送方向は図2等に限定されない。
【0095】
液体供給部92は、コンベヤー91上で搬送される混練物に比較的温度の低い冷却水を
供給するように構成している。液体供給部92は、ホース等によって冷却水の供給源と接
続された噴射ノズルをコンベヤー91の搬送方向に複数配置することによって構成してい
る。
【0096】
気体供給部93は、所定の温度に調整された空気等の気体をコンベヤー91上で搬送さ
れる混練物に供給するように構成している。気体供給部93は、不図示のダクトと、ダク
トに接続され、気体をコンベヤー91上の混練物に向けて噴射可能なブロワーを備えるよ
うに構成している。
【0097】
(切断部110)
切断部110は、排出部80から排出され、冷却部90において冷却された混練物を所
定の長さに切断するように構成している。切断部110は、図1に示すように混練物を送
る送りローラー111と、送られた混練物を切断する刃物を備えた切断ローラー112と
、を備えることができる。また、冷却された混練物は、乾燥を行うチャンバー等の設備(
乾燥部と呼ぶことができる)において乾燥工程を実施することができる。詳細については
後述する。
【0098】
よって、本発明の一実施形態では、第1収容空間を形成する第1収容部と、前記第1収
容空間に含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を準備する工程と、前
記バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料を投入可能な投入部と、前記第1収
容空間において回転可能に配置され複数の回転部材を前記回転部材の回転軸に沿って並べ
て配置した回転部と、を有し、前記回転部は、複数の前記回転部材が回転する前記回転軸
を2軸設けており、複数の前記回転部材は、螺旋形状を備え、前記投入部の直下に配置さ
れた第1スクリューと、前記第1スクリューよりも前記回転軸の下流に配置され前記第1
スクリューよりも螺旋の溝が浅く形成された第2スクリューと、を備え、複数の前記回転
部材は、前記第1スクリューと前記第2スクリューの間に配置され板状部材を前記回転軸
に並べて配置した第1パドルと、前記第2スクリューよりも前記回転軸の下流側に配置さ
れる板状の第2パドルと、を備え、前記第2スクリューと前記第2パドルの近傍には、前
記回転軸と交差する方向に回転する一対の第3スクリューと、前記第3スクリューを収容
する第2収容空間を備えるとともに前記第1収容部と接続され、前記第1収容空間で発生
した水分を排出可能な開口部を設けた第2収容部と、を備える脱水部が接続される、二軸
混練装置が提供される。
【0099】
(選別部120)
選別部120は、図1等に示すようにスロープ121と、受けタンク122と、を備え
る。スロープ121は、切断部110から排出された混練物を載置できるように配置して
いる。スロープ121は、切断部110から受けタンク122に向かって下がるように長
手方向Xに対して傾斜して形成している。スロープ121には振動を付与するように構成
しており、これにより切断部110から流通する混練物を受けタンク122に向けて流通
するように構成している。スロープ121の受けタンク122における直上には無数の穴
部が設けられ、これにより、所定以下のサイズの材料が受けタンク122に落下するよう
に構成している。
【0100】
受けタンク122に落下した混練物は、配管p1を通じて吸引により第1乾燥部130
に流通する。受けタンク122は、本実施形態において上部が開口した中空の略直方体に
構成しているが、スロープ121から流通する材料を受け止めることができれば具体的な
形状は直方体に限定されない。
【0101】
(第1乾燥部130)
第1乾燥部130は、図3図7図8等に示すように気体発生部131と、除湿部1
32と、圧縮機133と、撹拌部146と、検出部155と、を備える。気体発生部13
1と撹拌部146は、合わせてホッパードライヤと呼ばれ得る。以下、詳述する。
【0102】
気体発生部131は、配管p2、p3、p4、p5によって後述する撹拌部146のタ
ンク149と接続され、タンク149の内部空間に流入する混練物を乾燥させる気体を発
生可能に構成している。気体発生部131は、ファンなどを含み、上述したペレットの状
態の混練物を乾燥させる気体を発生可能に構成している。
【0103】
除湿部132は、配管p2によって気体発生部131と接続され、気体発生部131か
ら流通する気体を除湿するために設けられる。除湿部132は、気体を除湿する空間と、
当該空間に配置され、デシカント方式等のように気体中に含まれる水分を吸着する吸着剤
等を含むように構成できる。
【0104】
圧縮機133は、図6に示すように概して加熱部134と、圧縮部139と、を備える
。加熱部134は、流入口135と、加熱チャンバ136と、ヒーター137と、流出口
138と、を備える。
【0105】
流入口135は、加熱チャンバ136に設けられ、配管p3を通じて除湿部132と連
通するように構成している。加熱チャンバ136は、除湿部132から流通する気体が加
熱される箇所として構成している。加熱チャンバ136の形状についても特に限定されな
いが、例示すれば中空の直方体などの形状を採用できる。
【0106】
ヒーター137は、タンク149に流入する混練物を加熱可能に構成している。ヒータ
ー137は、加熱チャンバ136に設置され、電流などのエネルギーの供給によって加熱
チャンバ136内に熱エネルギーを発生可能に構成している。ヒーター137は加熱チャ
ンバ136内に熱エネルギーを発生可能な公知のヒーターを採用できる。ヒーター137
は、加熱チャンバ136内部の上面や側面などに設置できる。流出口138は、加熱チャ
ンバ136に設けられ、配管p4を通じて加熱された流体を下流側に流出可能に構成して
いる。流入口135および流出口138は、気体を流通できれば具体的な形状は限定され
ないが、例示として筒状に構成できる。
【0107】
圧縮部139は、配管p2、p3、p4によって気体発生部131からの気体が流通可
能であり、気体発生部131から流通する気体を圧縮可能に構成している。圧縮部139
は、図6に示すように流入口141と、圧縮チャンバ142と、圧縮弁143と、排水部
144と、流出口145と、を備える。
【0108】
流入口141は、圧縮チャンバ142に設けられ、配管p4を介して加熱チャンバ13
6の流出口138と連通するように構成している。圧縮チャンバ142は、加熱チャンバ
136から流通する気体を圧縮弁143により圧縮する空間となるように構成している。
圧縮チャンバ142は、図6に示すように円筒と円錐を組み合わせた中空形状に構成でき
る。
【0109】
圧縮弁143は、圧縮チャンバ142に設けられ、加熱チャンバ136から流入する気
体の圧力を調整することによって室内の気体を圧縮可能に構成している。圧縮弁143は
、静圧を高める機構により、後述する撹拌部146のタンク149の内部空間を通常の乾
燥機に比べて例えば2~5倍に加圧できる。これにより、乾燥対象であるペレット状の混
練物への熱の浸透が促進され、乾燥時間の短縮を図るとともに、混練物の内部の水分やガ
スの放出を多くすることができる。
【0110】
排水部144は圧縮チャンバ142の下部において液化した成分を圧縮チャンバ142
から排出可能に構成している。加熱部134において高温となった気体は圧縮チャンバ1
42において冷却される。その結果、気体中に含まれる油分は液化し、圧縮チャンバ14
2の下部に溜まり、ドレンにより排出可能になる。ここで、規定の圧力を超えた気体は外
部に排出され、配管を通じて循環しないように構成している。
【0111】
流出口145は、配管p5を介して圧縮チャンバ142において圧縮された流体を撹拌
部146のタンク149に流出可能に構成している。流入口141および流出口145は
、流入口135等と同様に筒状に構成できる。
【0112】
撹拌部146は、図7図10に示すように流入口147、148と、タンク149と
、回転軸151と、撹拌翼152と、流出口153、154と、を含む。流入口147は
図7に示すようにタンク149の上部に設けられ、配管p5を介して圧縮部139の流
出口145と連通するように構成している。流入口148は、流入口147と別にタンク
149の上部に設けられ、配管p1を介して乾燥対象となる混練物を流通可能に構成して
いる。
【0113】
タンク149は、乾燥対象となる混練物と圧縮部139から流通する気体を流通させる
空間として構成している。タンク149は、混練物を収容可能な内部空間を設けるように
構成している。タンク149は圧縮機133と同様にタンク149の内部空間に流通する
流体を加熱するヒーター(図示省略)を設置することができる。また、タンク149には
配管p1を介して乾燥対象となる混練物をタンク149の内部空間に吸引する吸引ブロワ
などを設置することができる。また、タンク149は、本実施形態において図9などに示
すように円筒と円錐台を組み合わせたような形状として構成している。ただし、混練物を
含む気体を下流に流通できれば、タンクの具体的な形状は上記に限定されない。
【0114】
回転軸151は、タンク149の内部空間を流通する混練物を撹拌させる撹拌翼152
の軸として構成している。回転軸151は、本実施形態においてモーターMと接続されて
垂直方向(高さ方向Z)に沿うように構成しており、垂直方向を中心に回転可能に設置し
ている。
【0115】
撹拌翼152は、タンク149の内部空間において回転軸151と一体に配置しており
、これにより回転軸151を中心に回転してタンク149の内部空間を流通する混練物を
撹拌可能に構成している。撹拌翼152は、本実施形態において図8から図10に示すよ
うに平面視した際に略均等な角度間隔で高さ方向Zにおける位置を異ならせるように配置
している。ただし、タンクの内部空間を流通する混練物を撹拌できれば、撹拌翼の個数や
具体的な配置は図8から図10に限定されない。
【0116】
一般的に、樹脂とバイオマス材料とを含む組成物(混練物)を乾燥する際、乾燥温度を
高く設定すると、混練物中の樹脂同士が融着または接着し、それが互着という現象として
現れうる。そのため、乾燥温度を高く設定することが難しく、その分、製造工程において
乾燥のためのスペースを比較的広く取る必要がある。これに対して、撹拌翼を備える乾燥
装置で混錬物を乾燥させることによって、乾燥温度を高く設定しても、混練物内部に含ま
れている微量な水分も揮発させつつ、樹脂同士の互着を防止または抑制することができる
。また、樹脂同士の互着を防止または抑制することによって、乾燥を行うタンク内の温度
を互着が比較的起こりやすい状況と比べて高く設定することができる。また、樹脂組成物
の製造工程において必要な乾燥スペースが大きくなることを抑制できる。
【0117】
流出口153は、配管p6を介してタンク149と気体発生部131と連通するように
構成している。気体発生部131から発生した気体は、配管p2を介して除湿部132に
流通し、配管p3を介して圧縮機133の加熱部134に流通し、配管p4を介して圧縮
部139に流通し、配管p5を介してタンク149に流通し、配管p6を介して気体発生
部131に戻る。このように気体発生部131から発生した気体は、除湿部132、加熱
部134、圧縮部139、タンク149を循環する。
【0118】
流出口154はタンク149に設けられ、タンク149の内部空間に流入した混練物を
含む気体を下流側に流通させるように構成している。流出口154は、本実施形態におい
図9に示すようにタンク149の下部に設けるように構成している。流入口147、1
48、および流出口153、154は流入口135などと同様に筒状に構成できる。
【0119】
検出部155は、第1乾燥部130を構成する撹拌部156の下流側において流出口1
54に隣接して配置され、撹拌部156によって撹拌・乾燥した樹脂組成物となる混練物
の含水率を測定可能に構成している。検出部155は流通する樹脂組成物の含水率を測定
できれば特に限定されないが、例示すればスイス ブライエアープロコン社製のBRYS
CANTMセンサーシリーズMoisture MinderTM M100等の近赤外
線を照射することで含水率を測定する機器を利用できる。
【0120】
(第2乾燥部160)
第2乾燥部160は、第1乾燥部130よりも下流側に設置している。第2乾燥部16
0は、図3図13に示すように気体発生部161と、除湿部162と、圧縮機163と
、撹拌部170と、検出部178と、を備える。
【0121】
気体発生部161は、配管p8、p9、p10、p11によって後述する撹拌部170
のタンク173と接続され、タンク173の内部空間に流入する混練物を乾燥させる気体
を発生可能に構成している。気体発生部161のその他の内容は気体発生部131と同様
であるため、詳細な説明を省略する。
【0122】
除湿部162は、配管p8、p9によって気体発生部161と接続され、気体発生部1
61から流通する気体を除湿するように設けている。除湿部162のその他の内容は除湿
部132と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0123】
圧縮機163は、図11に示すように圧縮機133と比較して加熱部134を備えない
一方で、圧縮部164を備える。圧縮部164は、配管p8、p9、p10によって気体
発生部161からの気体が流通可能であり、気体発生部161から流通する気体を圧縮可
能に構成している。圧縮部164は、流入口165と、圧縮チャンバ166と、圧縮弁1
67と、排水部168と、流出口169と、を備える。
【0124】
流入口165は、圧縮チャンバ166に設けられ、配管p10を介して除湿部162と
連通するように構成している。圧縮チャンバ166は、除湿部162から流通する気体が
圧縮弁167により圧縮される空間として構成している。圧縮弁167は、圧縮チャンバ
166に設けられ、除湿部162から流入する気体の圧力を調整することによって室内の
気体を圧縮可能に構成している。排水部168は、圧縮チャンバ166の下部において液
化した成分を圧縮チャンバ166から排出可能に構成している。流出口169は、配管p
11を介して圧縮チャンバ166において圧縮された気体を撹拌部170のタンク173
に流出可能に構成している。流入口165、圧縮チャンバ166、および流出口169の
形状などは、第1乾燥部130の流入口141、圧縮チャンバ142、流出口145の各
々と同様に構成できる。
【0125】
撹拌部170は、図12図13に示すように流入口171、172と、タンク173
と、回転軸174と、撹拌翼175と、流出口176、177と、を含む。撹拌部170
は、撹拌部146と異なり、ヒーターを備えない以外の構成は撹拌部146と同様である
【0126】
すなわち、流入口171はタンク173の上部に設けられ、配管p11を介して圧縮部
164の流出口169と連通するように構成している。流入口172は、流入口171と
別にタンク173の上部に設けられ、配管p7を介して第1乾燥部130からの混練物を
タンク173に流通可能に構成している。
【0127】
タンク173は、乾燥対象となる混練物と圧縮部164から流通する気体を流通させる
空間として構成している。タンク173は、樹脂組成物となる混練物を収容可能な内部空
間を設けるように構成している。また、タンク173は、タンク149と同様に配管p7
を介して乾燥対象となる混練物をタンク173の内部空間に吸引する吸引ブロワなどを設
置することができる。タンク173は、タンク149と同様に円筒と円錐台を組み合わせ
たような形状として構成しているが、混練物を含む気体を流通できれば具体的な形状は上
記に限定されない。
【0128】
回転軸174は、タンク173の内部空間を流通する混練物を撹拌させる撹拌翼175
の軸として構成している。撹拌翼175は、タンク173の内部空間に配置され、回転軸
174を中心に回転して内部空間を流通する混練物を乾燥させるように構成している。回
転軸174と撹拌翼175は、第1乾燥部130の回転軸151と撹拌翼152と同様で
あるため、詳細な説明を省略する。
【0129】
流出口176は、配管p12を介してタンク173と気体発生部161を連通するよう
に構成している。流出口177は、タンク173の下部に設けられ、タンク173の内部
空間に流入した混練物を含む気体を下流側に流通させるように構成している。
【0130】
検出部178は、第2乾燥部160を構成する撹拌部170の下流側において流出口1
77に隣接して配置され、撹拌部170によって撹拌・乾燥した樹脂組成物となる混練物
の含水率を測定可能に構成している。検出部178は、第1乾燥部130の検出部155
と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0131】
第2乾燥部160には、第1乾燥部130から流通し、樹脂組成物となる混練物を冷却
する冷却部179を設けている。冷却部179は、図3に示すように、混練物を乾燥させ
る気体の流路で見て、気体発生部131と除湿部132の間に配置している。冷却部17
9は、配管p8を通じて気体発生部131からの気体を流通させる流入口と、内部空間と
、内部空間に設けられる熱交換器と、配管p9を通じて冷却された材料を含む気体を除湿
部162に排出する流出口などを含む公知の冷却機を採用できる。冷却部179を流通す
る気体は、配管p8~p12を通じて気体発生部161、冷却部179、除湿部162、
圧縮機163、撹拌部170を循環するように構成している。
【0132】
第2乾燥部160の気体発生部161で発生した気体は配管p8を経て冷却部179で
冷却され、配管p9を経て除湿部162において除湿され、配管p10を経て圧縮機16
3により圧縮され、配管p11を経て撹拌部170のタンク173の内部空間に流通する
【0133】
(二軸混練装置100を用いた樹脂組成物の製造方法)
図14のフローチャートを参照しながら、二軸混練装置1を用いた場合の樹脂組成物の
製造方法について具体的に説明する。
【0134】
まず、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤
とを含む原料と、を投入する(ST1)。この時点で第1収容部10の第1収容空間S1
に配置された回転部材31~39、41、42は所定の温度に加温した状態(例えば、1
20~190℃)に設定することができる。回転部材31~39、41、42の温度は全
て同じでも行っていてもよい。
【0135】
次に、含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤
とは、投入部20のホッパーから投入される。バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを
含む原料は、回転部材31に送られて樹脂溶解部に相当する回転部材32、33に搬送さ
れる。本発明の一実施形態において、第1収容空間S1における樹脂溶解部に相当する部
位の温度は、樹脂を溶融させる観点で、例えば120~190℃、130~170℃、1
32~165℃、あるいは、135~150℃である。このように加温された状態におい
て、回転部材32、33によって上述した原料が混練され、樹脂が溶解する(ST2)。
【0136】
そして、投入された原料由来の物は混練部に相当する回転部材34へと送られ、混練が
行われる(ST3)。混練部に相当する回転部材34では、上述のように回転部材34が
樹脂溶解部に相当する回転部材32よりも薄く構成されることによって分散と撹拌が促進
される。回転部材34を通過し、さらに回転部材35に送られる。
【0137】
なお、本発明の一実施形態において、第1収容空間S1における混練部に相当する部位
の温度は、効率的に混練する観点で、例えば130~195℃、150~190℃、ある
いは、160~185℃である。
【0138】
また、回転部材33から回転部材34へ送られる際に水分は脱水部50によって脱水さ
れる。このとき、スクリュー51が脱水部50の入り口付近で回転することによって原料
由来の固形成分は第1収容空間S1に残ったまま下流側に送られ、水分等が第2収容部5
2の開口部からある程度排出される。
【0139】
回転部材35では、投入された原料由来の物が回転部材35によって下流側に送られつ
つ、第1脱気部60によって水分がさらに排出される(ST4)。第1脱気部60は、ポ
ンプ等に接続されて原料に含まれる水分が吸引される一方で、スクリュー61によって原
料の固形成分は第1収容空間S1に残り、圧縮部に相当する回転部材36~39に送られ
る。
【0140】
圧縮部に相当する回転部材36~39では回転部材37、39の位置において上記原料
が上流側に送り戻されたうえで下流側に送られることによって、原料の密度が高くなるよ
うに圧縮の工程が行われる(ST5)。本発明の一実施形態において、第1収容空間S1
における圧縮部に相当する部位の温度は、効率的に圧縮する観点で、例えば125~19
3℃、145~188℃、あるいは、155~182℃である。
【0141】
回転部材36~39を通過した原料由来の物は、回転部材41、42において排出部8
0に向けてさらに送られる。第2脱気部70では、ピッチの異なる回転部材41、42の
うち、回転部材41の位置においてポンプ等によって水分がさらに吸引されて脱気される
(ST6)。原料は、回転部材42によって回転部材41よりも送り速度が上昇しつつ、
排出部80において複数の紐形状の混練物となって第1収容空間S1の外部に排出される
。本発明の一実施形態において、排出部に相当する部位の温度は、効率的に排出する観点
で、例えば125~193℃、145~188℃、あるいは、155~182℃である。
【0142】
本発明の一実施形態において、回転部材31~39、41、42の回転数は、100~
300rpm、150~295rpm、あるいは、200~290rpmである。
【0143】
冷却部90では、紐状の混練物がコンベヤー91によって切断部110に向けて搬送さ
れる。この間に混練物は、液体供給部92によって冷却水を吹きかけられて冷却され、そ
の後、気体供給部93において冷却風に曝されることによって冷却される(ST7)。
【0144】
冷却部90を経た紐状の混練物は、送りローラー111によって搬送され、切断ローラ
ー112によって所定の長さに切断される(ST8)。切断部110によってペレット状
に切断された混練物は平面状に引き延ばし、乾燥工程(ST9)を経る。
【0145】
ペレット状に切断された混練物は、乾燥工程(ST9)において、選別部120で所定
の大きさ以下のものに選別され、吸引ブロワ等の機械によって吸引されて配管p1を通じ
て第1乾燥部130に流通する。第1乾燥部130では気体発生部131、除湿部132
、圧縮機133、撹拌部146のタンク149を循環する気体によってペレット状に切断
された混練物がタンク149の内部空間において除湿・加熱・撹拌・乾燥され、吸引ブロ
ワ等によって配管p7を通じて第2乾燥部160に流通する。第1乾燥部130ではタン
ク149内の温度がおよそ60~120℃程度で、1~3時間程度で乾燥が行われる。
【0146】
第2乾燥部160では気体発生部161、冷却部179、除湿部162、圧縮機163
、撹拌部170のタンク173を循環する気体によって混練物がタンク173の内部空間
において除湿・冷却・撹拌・乾燥される。第2乾燥部160において除湿・冷却・撹拌・
乾燥された気体は、配管(図示省略)を通じて最終的に樹脂組成物を収容する容器(スト
ックタンク)に収容される。第2乾燥部160からストックタンクまでにおいても第1乾
燥部130のタンク149等と同様に吸引ブロワ等を配管に接続して樹脂組成物を流通さ
せることができる。第2乾燥部160ではタンク173内の温度がおよそ25~50℃程
度、1~3時間程度で乾燥が行われる。
【0147】
本発明の一実施形態において、第1乾燥部130および第2乾燥部160を含む乾燥装
置を用いて前記混練物を乾燥する工程をさらに有する。本発明の一実施形態において、第
1乾燥部130はタンク149と、気体発生部131と、撹拌翼152と、を備える撹拌
部146と、圧縮部139と、を備える。第2乾燥部160は、タンク173と、気体発
生部161と、撹拌翼175と、を備える撹拌部170と、圧縮部164と、を備える。
【0148】
(樹脂組成物のメルトフローレイト)
本発明の一実施形態において、樹脂組成物のメルトフローレイト(JIS K7210
:1999、温度190℃、荷重10.0kgf;MFRともいう)は、加工性の観点か
ら10g/10min~30g/10minであることが好ましい。
【0149】
<成形品の製造方法>
本発明の一態様は、上記の製造方法によって樹脂組成物を得、当該樹脂組成物を成形す
ることを有する、成形品の製造方法である。当該樹脂組成物を成形することにより、湾曲
部や凹凸部を有する複雑な形状の成形品を成形することが容易となる。
【0150】
成形を行う際の温度は、得られる成形品の退色抑制と強度とを両立する観点から、12
0~190℃であることが好ましく、140~180℃であることが好適である。
【0151】
本発明の一実施形態に係る成形品の用途としては、例えば、電子機器や家電製品などの
筐体、補強材、建材用部品、自動車部品、二輪車用部品、航空機用部品、鉄道車両用部品
、日用雑貨品、等が挙げられる。
【0152】
本発明の一実施形態において、前記成形は、ブロー成形、射出成形などの種々の方法が
挙げられる。
【0153】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これは説明的かつ例示的なものであって限定的
ではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって解釈されるべきであることは明
らかである。
【0154】
本発明は、下記態様および形態を包含する。
【0155】
1.含水率が8質量%超60質量%未満であるバイオマス材料を準備する工程と、前記
バイオマス材料と、樹脂と、相溶化剤とを含む原料を、水を排出する脱水部を備える混練
装置において混練することによって混練物を得る工程と、を有し、前記バイオマス材料が
、セルロース系の食品系バイオマスを含む、樹脂組成物の製造方法。
【0156】
2.前記バイオマス材料を準備する工程が、前記食品系バイオマスを予め自然乾燥して
おく工程を有する、上記1.に記載の製造方法。
【0157】
3.前記バイオマス材料を準備する工程が、前記食品系バイオマスを含水率が15質量
%以下の別のバイオマスと予め混合しておく工程を有する、上記1.または2.に記載の
製造方法。
【0158】
4.前記食品系バイオマスが、野菜、果実、コーヒー滓および茶殻からなる群から選択
される少なくとも1種を含む、上記1.~3.のいずれかに記載の製造方法。
【0159】
5.前記食品系バイオマスが、野菜および果実からなる群から選択される少なくとも1
種を含む、上記4.に記載の製造方法。
【0160】
6.前記別のバイオマスが、木質系バイオマス、穀物系バイオマスおよび籾殻からなる
群から選択される少なくとも1種を含む、上記3.に記載の製造方法。
【0161】
7.前記バイオマス材料の嵩密度が、0.1g/cm以上である、上記1.~6.の
いずれかに記載の製造方法。
【0162】
8.前記バイオマス材料の含水率が、50質量%未満である、上記1.~7.のいずれ
か記載の製造方法。
【0163】
9.前記樹脂が、非生分解性樹脂または生分解性樹脂である、上記1.~8.のいずれ
かに記載の製造方法。
【0164】
10.前記樹脂の融点が、120℃以下である、上記1.~9.のいずれかに記載の製
造方法。
【0165】
11.前記混練物を乾燥装置において乾燥する工程をさらに有する、上記1.~10.
のいずれかに記載の製造方法。
【0166】
12.前記乾燥装置が、内部に撹拌機能と圧力調整機能を有する、上記11.に記載の
製造方法。
【0167】
13.上記1.~12.のいずれかに記載の製造方法によって樹脂組成物を得、前記樹
脂組成物を成形することを有する、成形品の製造方法。
【0168】
14.前記成形が、射出成形を含む、上記13.に記載の製造方法。
【実施例0169】
(実施例1)
食品加工工場から出たキャベツの芯残渣(サイズ:10~20mm 粗粉砕物、含水率
90質量%)と、ヒノキ間伐材木粉(サイズ:1~2mm 粗粉砕物、含水率10質量%
)とを質量比2:1で秤取り、非加熱簡易ミキサー(コンクリートミキサー)で20分間
撹拌・混合したのちに、風のない室内のシートの上に拡散して緩やかな条件(室温(20
~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件)で一昼夜(つまり24時間)かけて食品
残渣・木粉混合物中の水分を低減させる自然乾燥を行った。
【0170】
一昼夜後の食品残渣・木粉混合物(バイオマス材料)の含水率は、40質量%であり、
嵩密度は0.5g/cmであった。
【0171】
続いて、PP(日本ポリプロピレン ウインテック WSX03 サイズ:4mm 融
点 114℃ 47質量部と、上記の食品残渣・木粉混合物50質量部(水を除いた固形
分の換算量。水の量を考慮すると約83.3質量部)と、無水マレイン酸変性ポリプロピ
レン(理研ビタミン MG-441P)3質量部(MAPP3wt%/全量(固形物換算
))とを、フィード20を通じて二軸混練装置1に投入した。
【0172】
含水率の測定は、水分測定装置(日東精工アナリテック株式会社社製 CA-310
電量滴定法 CAモード)を用いて、カールフィッシャー電量滴定法にて行った。また融
点の測定は、株式会社 島津製作所社製の定試験力押出形 細管式レオメータ フローテ
スタ(CFT-500EX)を用いて行った。
【0173】
なお、二軸混練装置1における回転部材のL/D(図5中の(x方向のスクリュー全体
長さ)÷(スクリュー1つの断面直径長さ))は50とした。
【0174】
回転部30の回転部材は上述した回転部材31~39、41、42を用いた。回転部材
31~39、41、42の長手方向Xの全体長さに対する回転部材32、34の比率(ニ
ーディングブロック比率)は25%とした。
【0175】
回転部材31~39、41、42の回転数は、280rpmとした。そして、第1収容
空間S1における投入部に相当する部位を80℃、樹脂溶解部に相当する部位を140℃
、混練部に相当する部位を180℃に加温した。なお材料が回転部材33から回転部材3
4へ送られる際に材料に含まれる水分を脱水部50によって脱水した。
【0176】
また、第1収容空間S1における第1脱気部60と第2脱気部70との接続部を160
℃、圧縮部に相当する部位を170℃、排出部80を170℃に加温し、混練物を得た。
【0177】
得られた混練物を、図6図7図11図12に示すような撹拌部146と圧縮部1
39を備える第1乾燥部130および撹拌部170と圧縮部164とを備える第2乾燥部
160に係る高効率乾燥設備を用いて乾燥を行った。第1乾燥部130ではタンク149
の内部空間を105℃に設定して混練物の乾燥を2時間実施し、第2乾燥部160での乾
燥を40℃2時間実施して実施例1に係る樹脂組成物を得た。
【0178】
(実施例2~10および比較例)
他の実施例においては、a)主たる食品残渣(食品系バイオマス)、それとは別のバイ
オマスであるb)含水率調整用フィラー、それらの混合比を表1に示されるように変更し
、含水率を必要に応じて自然乾燥の時間を変更することで調整した以外は、実施例1と同
様に樹脂組成物を得た。なお実施例10については、実施例1においてb)含水率調整用
フィラーを添加せず、また、実施例1における自然乾燥の条件を以下のように変更した。
すなわち、実施例1と同様のキャベツの芯残渣を、気温20~25℃、相対湿度40~5
0%RHの条件で、上部のみが解放された囲いの中に入れ、キャベツの芯残渣に1時間日
光を当てた。なお、実施例および比較例ともにa)食品残渣(食品系バイオマス)と、b
)含水率調整用フィラーとの合計量は全て同じにした。
【0179】
比較例においては、比較例1ではb)含水率調整用フィラーを添加せず、比較例2では
自然乾燥を行わず、比較例3、4では自然乾燥の代わりに送風乾燥機(ヤマト科学社製
型番DNG810)による120℃8時間での乾燥に変更し、比較例5では相溶化剤を添
加しない以外は実施例1と同様に樹脂組成物を作製した。また、比較例6では脱水部50
を備えない以外は実施例1と同様の二軸混練装置を用いて、実施例1と同様に樹脂組成物
を得た。
【0180】
(実施例11)
食品加工工場から出たキャベツの芯残渣(サイズ:10~20mm 粗粉砕物、含水率
90質量%)と、ヒノキ間伐材木粉(サイズ:1~2mm 粗粉砕物、含水率10質量%
)とを質量比2:1で秤取り、非加熱簡易ミキサー(コンクリートミキサー)で20分間
撹拌・混合したのちに、風のない室内のシートの上に拡散して緩やかな条件(室温(20
~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件)で一昼夜(つまり24時間)かけて食品
残渣・木粉混合物中の水分を低減させる自然乾燥を行った。
【0181】
一昼夜後の食品残渣・木粉混合物(バイオマス材料)の含水率は、40質量%であり、
嵩密度は0.5g/cmであった。
【0182】
続いて、PLA(トタルコービオン社製ルミニー L130 サイズ:4mm 融点
159℃) 47質量部と、上記の食品残渣・木粉混合物50質量部(水を除いた固形分
の換算量。水の量を考慮すると約83.3質量部)と、ポリグリセリン脂肪酸エステル(
理研ビタミン ポエム J-4081V)3質量部(PGFE 3wt%/全量(固形物
換算))とを、フィード20を通じて二軸混練装置1に投入した。
【0183】
含水率の測定は、水分測定装置(日東精工アナリテック株式会社社製 CA-310
電量滴定法 CAモード)を用いて、カールフィッシャー電量滴定法にて行った。また融
点の測定は、株式会社 島津製作所社製の定試験力押出形 細管式レオメータ フローテ
スタ(CFT-500EX)を用いて行った。
【0184】
なお、二軸混練装置1における回転部材のL/D(図5中の(x方向のスクリュー全体
長さ)÷(スクリュー1つの断面直径長さ))は50とした。
【0185】
回転部30の回転部材は上述した回転部材31~39、41、42を用いた。回転部材
31~39、41、42の長手方向Xの全体長さに対する回転部材32、34の比率(ニ
ーディングブロック比率)は25%とした。
【0186】
回転部材31~39、41、42の回転数は、260rpmとした。そして、第1収容
空間S1における投入部に相当する部位を80℃、樹脂溶解部に相当する部位を160℃
、混練部に相当する部位を180℃に加温した。なお材料が回転部材33から回転部材3
4へ送られる際に材料に含まれる水分を脱水部50によって脱水した。
【0187】
また、第1収容空間S1における第1脱気部60と第2脱気部70との接続部を160
℃、圧縮部に相当する部位を180℃、排出部80を180℃に加温し、混練物を得た。
【0188】
得られた混練物を、図6図7図11図12に示すような撹拌部146と圧縮部1
39を備える第1乾燥部130および撹拌部170と圧縮部164とを備える第2乾燥部
160に係る高効率乾燥設備を用いて乾燥を行った。第1乾燥部130ではタンク149
の内部空間を110℃に設定して混練物の乾燥を3時間実施し、第2乾燥部160での乾
燥を40℃2時間実施して実施例1に係る樹脂組成物を得た。
【0189】
<プレスシートの製造>
実施例、比較例の樹脂組成物を170℃ 15MPaで熱圧プレスし、プレスシートを
製造した。プレスシートをサンプルとして作製しそれを評価することは、樹脂組成物を成
形することによりなる成形品の評価を行うことと同視できる。
【0190】
以下、各樹脂組成物を作製するに際しての混練複合化が適正であったかの評価と、得ら
れたプレスシートの外観評価とを行った。各基準は以下のとおりである。
【0191】
<混練複合化適性の規準>
良好:安定的に混練複合化できる。
【0192】
やや良好:混練はできるが、脱水量が多い為に、生産処理能力を低下させる必要がある
【0193】
不安定:混練はできるが、樹脂組成物が均一に複合化されていない、または、溶融粘度
が高く安定生産に不向き。
【0194】
不適:過剰水分、脱水不足により水の影響を大きく受け混練による複合化が難しく、材
料が均一に混ざらない。
【0195】
<組成物の外観の規準>
良好:a)およびb)の少なくとも一方に由来する物の凝集物が殆どない。
【0196】
やや良好:a)およびb)の少なくとも一方に由来する物の凝集物が若干観察される。
【0197】
不良:a)およびb)の少なくとも一方に由来する物の凝集が多く観察される。
【0198】
なお、図15に、実施例1、比較例2および比較例3のプレスシートの写真を示した。
図15の下の定規に示される数値はセンチメートルを示している。
【0199】
【表1】
【0200】
<考察>
実施例では、混練複合化適性の評価、外観評価ともに、良好またはやや良好との結果を
得ることができた。
【0201】
実施例の全体から評価すると、食品系バイオマスとしては、コーヒー滓や緑茶出し殻よ
りも、キャベツやいちごのような野菜や果実(果実的野菜)が良好であることが示唆され
た。コーヒー滓や、緑茶出し殻は、繊維質が比較的固いため(茶葉の場合、特に茎部、コ
ーヒー滓であれば豆の一部が固い)、それが一部表面凝集として現れた結果と考えられる
。また、実施例1~6の比較から、混練複合化適性の観点で、バイオマス材料の含水率は
50質量%未満であることが好適であると示唆される。実施例10では直射日光によりバ
イオマスの表面のみが局所的に乾燥されてその局所的に乾燥された部分起因と思われる凝
集がやや発生し外観の悪化が少し観察された。
【0202】
一方、比較例では、混練複合化適性の評価においては、不適または不安定であり、外観
評価も不良であった。
【0203】
比較例1、2は、水分過剰であるため、剪断応力が不十分で混練不足となり、ダイヘッ
ド(符番:80)から水分が突沸して扱いが難しく、また得られた樹脂組成物中に水分由
来の気泡、鬆が入り、外観が悪い結果であった。
【0204】
比較例3、4は、水分過少であるため、材料投入が不安定で、得られた樹脂組成物中に
凝集が存在し、外観が悪い結果であった。
【0205】
比較例5では、相溶化剤が入っていないので、混練が不安定(バイオマス材料と樹脂と
が均一に相溶していない)ため、悪い結果となり、MFRが1g/10minと低い結果
となった。
【0206】
比較例6では、混練装置中に脱水部がないため、水分過剰となり、比較例1、2と同様
の結果となった。
【0207】
なお、自然乾燥のみで比較例3、4のように含水率を8質量%にすることも試みたが、
長時間放置により食品系バイオマスの腐敗・劣化が進み、バイオマス材料として不適切と
なると判断した。
【符号の説明】
【0208】
1 二軸混練装置(樹脂組成物の製造装置)、
10 第1収容部、
20 投入部(フィード)、
30 回転部、
31 回転部材(第1スクリュー)、
32 回転部材(第1パドル)、
33 回転部材(第2スクリュー)、
34 回転部材(第2パドル)、
35 回転部材(第4スクリュー)、
41 回転部材(第6スクリュー)、
42 回転部材(第7スクリュー)、
50 脱水部、
51 スクリュー(第3スクリュー)、
52 第2収容部、
60 第1脱気部、
61 スクリュー(第5スクリュー)、
62 第3収容部、
70 第2脱気部、
71 スクリュー(第8スクリュー)、
72 第4収容部、
80 排出部(ダイヘッド)、
90 冷却部、
91 コンベヤー、
92 液体供給部、
93 気体供給部、
110 切断部、
111 送りローラー
112 切断ローラー、
130 第1乾燥部(乾燥装置)、
131、161 気体発生部、
139、164 圧縮部、
149、173 タンク、
152、175 撹拌翼、
160 第2乾燥部(乾燥装置)、
S1 第1収容空間、
S2 第2収容空間、
S3 第3収容空間、
S4 第4収容空間、
X 長手方向、
Y 幅方向(回転軸と交差する方向)、
Z 高さ方向(長手方向X及び幅方向Yと交差する方向)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15