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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068236
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】電力変換装置及び電力変換方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240513BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/48 E
H02M3/155 Z
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178530
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】槇尾 大介
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB61
5H730DD04
5H730DD16
5H730FD01
5H730FD11
5H730FG01
5H770AA02
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA44
5H770EA30
5H770GA13
5H770GA17
5H770HA03W
5H770HA03Y
5H770KA00W
(57)【要約】
【課題】スイッチング損失の低減された電力変換装置および電力変換方法を提供する。
【解決手段】電力変換装置は、主回路と、主回路と電源との間に配置される補助回路と、主回路と補助回路との間に配置されたインダクタを備えている。主回路は、直列接続された主回路ハイサイドスイッチ及び主回路ローサイドスイッチと、第一のコンデンサ及び第二のコンデンサを備えており、補助回路は、一以上のダイオードと、一以上のスイッチとを備えている。インダクタは、一端が主回路ハイサイドスイッチとローサイドスイッチとの接続点に接続されており、他端が前記補助回路に接続されている。電力変換装置は、主回路ローサイドスイッチをオンにする前に、補助回路の下側回路に配置された補助回路ローサイドスイッチと、補助回路の上側回路に配置されたハイサイドのダイオードを交互にオンにすることで前記インダクタに通電して出力電流の変化量を調整し、第一のコンデンサと第二のコンデンサを充電する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主回路と、前記主回路と電源との間に配置される補助回路と、前記主回路と前記補助回路との間に配置されたインダクタを備えた電力変換装置であって、
前記主回路が、
直列接続された主回路ハイサイドスイッチ及び主回路ローサイドスイッチと、
前記ハイサイドスイッチと並列に接続された第一のコンデンサと、
前記ローサイドスイッチと並列に接続された第二のコンデンサと、
を備えており、
前記補助回路が、一以上のダイオードと、一以上のスイッチとを備えており、
前記インダクタは、一端が前記主回路ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチとの接続点に接続されており、他端が前記補助回路に接続されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記補助回路が、
直列接続されたハイサイドのダイオード及びローサイドのダイオードと、
前記ハイサイドのダイオードに対応する補助回路ハイサイドスイッチと、
前記ローサイドのダイオードに対応する補助回路ローサイドのスイッチと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のハイサイドのスイッチ及びローサイドのスイッチと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記補助回路が、
上側回路に配置された補助回路ハイサイドスイッチと、
下側回路に配置されたローサイドのダイオードと、
で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記補助回路が、
上側回路に配置されたハイサイドのダイオードと、
下側回路に配置された補助回路ローサイドスイッチと、
で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
主回路と、前記主回路と電源との間に配置される補助回路と、前記主回路と前記補助回路との間に配置されたインダクタを備えた電力変換装置の電力変換方法であって、
前記主回路が、直列接続された主回路ハイサイドスイッチ及び主回路ローサイドスイッチと、前記主回路ハイサイドスイッチと並列に接続された第一のコンデンサと、前記主回路ローサイドスイッチと並列に接続された第二のコンデンサと、を備えており、
前記補助回路が、一以上のダイオードと、一以上のスイッチとを備えており、
前記主回路ハイサイドスイッチをオンにする前に、前記補助回路の上側回路に配置された補助回路ハイサイドスイッチと、前記補助回路の下側回路に配置された補助回路ローサイドスイッチと、を交互にオンにすることで前記インダクタに通電して出力電流の変化量を調整し、
前記第一のコンデンサおよび前記第二のコンデンサを充電するまで、前記補助回路ハイサイドスイッチをオンにする期間と、前記補助回路ローサイドスイッチをオンにする期間を調整し、
前記主回路ハイサイドスイッチにかかる電圧が約0Vになった後に、主回路ハイサイドスイッチをオンにすることを特徴とする電力変換方法。
【請求項6】
主回路と、前記主回路と電源との間に配置される補助回路と、前記主回路と前記補助回路との間に配置されたインダクタを備えた電力変換装置の電力変換方法であって、
前記主回路が、直列接続された主回路ハイサイドスイッチ及び主回路ローサイドスイッチと、前記主回路ハイサイドスイッチと並列に接続された第一のコンデンサと、前記主回路ローサイドスイッチと並列に接続された第二のコンデンサと、を備えており、
前記補助回路が、一以上のダイオードと、一以上のスイッチとを備えており、
前記主回路ハイサイドスイッチをオンにする前に、前記補助回路の上側回路に配置された補助回路ハイサイドスイッチと、前記補助回路の下側回路に配置されたローサイドのダイオードと、を交互にオンにすることで前記インダクタに通電して出力電流の変化量を調整し、
前記第一のコンデンサおよび前記第二のコンデンサを充電するまで、前記補助回路ハイサイドスイッチをオンにする期間と、前記ローサイドのダイオードをオンにする期間を調整し、
前記主回路ハイサイドスイッチにかかる電圧が約0Vになった後に、前記主回路ハイサイドスイッチをオンにすることを特徴とする電力変換方法。
【請求項7】
主回路と、前記主回路と電源との間に配置される補助回路と、前記主回路と前記補助回路との間に配置されたインダクタを備えた電力変換装置の電力変換方法であって、
前記主回路が、直列接続された主回路ハイサイドスイッチ及び主回路ローサイドスイッチと、前記主回路ハイサイドスイッチと並列に接続された第一のコンデンサと、前記主回路ローサイドスイッチと並列に接続された第二のコンデンサと、を備えており、
前記補助回路が、一以上のダイオードと、一以上のスイッチとを備えており、
前記主回路ローサイドスイッチをオンにする前に、前記補助回路の下側回路に配置された補助回路ローサイドスイッチと、前記補助回路の上側回路に配置された補助回路ハイサイドスイッチを交互にオンにすることで前記インダクタに通電して出力電流の変化量を調整し、
前記第一のコンデンサおよび前記第二のコンデンサを充電するまで前記補助回路ローサイドスイッチをオンにする期間と前記補助回路ハイサイドスイッチをオンにする期間を調整し、
前記主回路ローサイドスイッチにかかる電圧が約0Vになった後に主回路ローサイドスイッチをオンすることを特徴とする電力変換方法。
【請求項8】
主回路と、前記主回路と電源との間に配置される補助回路と、前記主回路と前記補助回路との間に配置されたインダクタを備えた電力変換装置の電力変換方法であって、
前記主回路が、直列接続された主回路ハイサイドスイッチ及び主回路ローサイドスイッチと、前記主回路ハイサイドスイッチと並列に接続された第一のコンデンサと、前記主回路ローサイドスイッチと並列に接続された第二のコンデンサと、を備えており、
前記補助回路が、一以上のダイオードと、一以上のスイッチとを備えており、
前記主回路ローサイドスイッチをオンにする前に、前記補助回路の下側回路に配置された補助回路ローサイドスイッチと、前記補助回路の上側回路に配置されたハイサイドのダイオードを交互にオンにすることで前記インダクタに通電して出力電流の変化量を調整し、
かつ第一のコンデンサおよび第二のコンデンサを充電するまで前記補助回路ローサイドスイッチをオンにする期間と前記ハイサイドのダイオードをオンにする期間を調整し、
かつ主回路ローサイドスイッチにかかる電圧が約0Vになった後に主回路ローサイドスイッチをオンすることを特徴とする電力変換方法。
【請求項9】
電源から主回路の方向に電流を通電させる場合に適用することを特徴とする請求項5又は6記載の電力変換方法。
【請求項10】
主回路から電源の方向に電流を通電させる場合に適用することを特徴とする請求項7又は8記載の電力変換方法。
【請求項11】
前記主回路ハイサイドスイッチと前記主回路ローサイドスイッチの間の中点電圧と、
前記補助回路ハイサイドのスイッチと、前記補助回路ローサイドのスイッチの中点電圧と、をトリガーとして、前記主回路ハイサイドスイッチ、前記主回路ローサイドスイッチ、前記補助回路ハイサイドスイッチ、及び前記補助回路ローサイドスイッチのタイミングを生成することを特徴とする請求項5又は7に記載の電力変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、電力変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図17に、従来から知られている電力変換装置の三相インバータの一相分の出力回路図を示す。電力変換装置100は、負荷に対してハイサイド側(上流側、上側)に配置されたスイッチング素子と、負荷に対してローサイド側(下流側、下側)に配置されたスイッチング素子とからなるハーフブリッジ回路で構成されており、これらのスイッチング素子のオンオフのタイミングをずらして駆動することで直流電圧を交流電圧に変換した電力を供給する。
【0003】
スイッチング素子は、スイッチング状態が切り替えられるターンオン時とターンオフ時にそれぞれスイッチング損失が発生する。スイッチング損失は動作周波数が高くなるほど大きくなり、また、電源電圧と出力電流が大きくなるに従って増大する。近年では、高電圧、高電流を供給する電力変換装置の需要が高まっており、電力変換装置の高効率化のためにスイッチング損失を低減する試みが種々なされている。
【0004】
特許文献1には、損失の増加を抑制しつつ、電流のリンギングを抑制する電力変換装置が開示されている。特許文献1の電力変換装置は、ワイドバンドギャップ半導体で構成されたハイサイドスイッチとローサイドスイッチとを備えた電力変換装置であって、いずれか一方のスイッチのみに逆並列接続されたダイオード素子と、他方のスイッチに、ボディダイオードが形成された電力変換装置が開示されている。ダイオード素子は、ナローバンドギャップ半導体で構成されており、ボディダイオードにリカバリ電流が流れることで発生する電流のリンギングの周波数よりも、自身にリカバリ電流が流れることで発生する電流のリンギングの周波数が低くなる特性を有している。
【0005】
特許文献2には、交流端側と直流端側との間にブリッジ回路とコンバータ回路とを備えた電力変換装置を開示している。特許文献2の電力変換装置の制御装置は、交流電圧の周期に同期して、周期内の所定の期間を、スイッチングを停止する停止期間として規定しており、スイッチング回数を減らすことによって、スイッチング損失を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-54061号公報
【特許文献2】特開2013-255413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高電圧、高電流を供給する電力変換装置のDCDCコンバータや、インバータのスイッチング損失を低減する方法の一つに、スイッチング素子間の電圧がゼロボルトのときにターンオンとターンオフを行う、ゼロボルトスイッチングがある。本発明は、ゼロボルトスイッチングを行うための電力変換装置と電力変換方法の提供を、解決すべき課題としてなされた発明である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1にかかる発明は、主回路と、主回路と電源との間に配置される補助回路と、主回路と補助回路との間に配置されたインダクタを備えた電力変換装置に関する。請求項1の電力変換装置は、主回路が、直列接続された主回路ハイサイドスイッチ及び主回路ローサイドスイッチと、主回路ハイサイドスイッチと並列に接続された第一のコンデンサと、主回路ローサイドスイッチと並列に接続された第二のコンデンサと、を備えている。補助回路は、一以上のダイオードと、一以上のスイッチとを備えている。インダクタは、一端が主回路ハイサイドスイッチと主回路ローサイドスイッチとの接続点に接続されており、他端が補助回路に接続されている。
【0009】
本発明の電力変換装置の補助回路は、直列接続されたハイサイドのダイオード及びローサイドのダイオードと、ハイサイドのダイオードに対応する補助回路ハイサイドスイッチと、ローサイドのダイオードに対応する補助回路ローサイドのスイッチとを備えていることが好ましい。
【0010】
本発明の電力変換装置の補助回路は、上側回路に配置された補助回路ハイサイドスイッチと、下側回路に配置されたローサイドのダイオードとで構成することができる。
【0011】
本発明の電力変換装置の補助回路は、上側回路に配置されたハイサイドのダイオードと、下側回路に配置された補助回路ローサイドスイッチと、で構成することができる。
【0012】
本発明は、電力変換方法を提供する。本発明の電力変換方法は、主回路と、主回路と電源との間に配置される補助回路と、主回路と補助回路との間に配置されたインダクタを備えた電力変換装置の電力変換方法である。電力変換装置の主回路は、直列接続された主回路ハイサイドスイッチ及び主回路ローサイドスイッチと、主回路ハイサイドスイッチと並列に接続された第一のコンデンサと、主回路ローサイドスイッチと並列に接続された第二のコンデンサと、を備えており、補助回路は、一以上のダイオードと、一以上のスイッチとを備えている。本発明の電力変換方法は、主回路ハイサイドスイッチをオンにする前に、補助回路の上側回路に配置された補助回路ハイサイドスイッチと、補助回路の下側回路に配置された補助回路ローサイドスイッチと、を交互にオンにすることでインダクタに通電して出力電流の変化量を調整し、第一のコンデンサおよび第二のコンデンサを充電するまで、補助回路ハイサイドスイッチをオンにする期間と、補助回路ローサイドスイッチをオンにする期間を調整し、主回路ハイサイドスイッチにかかる電圧が約0Vになった後に、主回路ハイサイドスイッチをオンにすることを特徴とする。
【0013】
本発明は又、主回路ハイサイドスイッチをオンにするときの代替的な電力変換方法を提供する。本発明の電力変換方法は、主回路と、主回路と電源との間に配置される補助回路と、主回路と補助回路との間に配置されたインダクタを備えた電力変換装置の電力変換方法である。電力変換装置の主回路は、直列接続された主回路ハイサイドスイッチ及び主回路ローサイドスイッチと、主回路ハイサイドスイッチと並列に接続された第一のコンデンサと、主回路ローサイドスイッチと並列に接続された第二のコンデンサと、を備えており、補助回路は、一以上のダイオードと、一以上のスイッチとを備えている。本発明の代替的な電力変換方法は、主回路ハイサイドスイッチをオンにする前に、補助回路の上側回路に配置された補助回路ハイサイドスイッチと、補助回路の下側回路に配置されたローサイドのダイオードと、を交互にオンにすることでインダクタに通電して出力電流の変化量を調整し、第一のコンデンサおよび第二のコンデンサを充電するまで、補助回路ハイサイドスイッチをオンにする期間と、ローサイドのダイオードをオンにする期間を調整し、主回路ハイサイドスイッチにかかる電圧が約0Vになった後に、主回路ハイサイドスイッチをオンにすることを特徴とする。
【0014】
本発明は、更なる電力変換方法を提供する。本発明の電力変換方法は、主回路と、主回路と電源との間に配置される補助回路と、主回路と補助回路との間に配置されたインダクタを備えた電力変換装置の電力変換方法である。電力変換装置の主回路は、直列接続された主回路ハイサイドスイッチ及び主回路ローサイドスイッチと、主回路ハイサイドスイッチと並列に接続された第一のコンデンサと、主回路ローサイドスイッチと並列に接続された第二のコンデンサと、を備えており、補助回路は、一以上のダイオードと、一以上のスイッチとを備えている。本発明の電力変換装置は、主回路ローサイドスイッチをオンにする前に、補助回路の下側回路に配置された補助回路ローサイドスイッチと、補助回路の上側回路に配置された補助回路ハイサイドスイッチを交互にオンにすることでインダクタに通電して出力電流の変化量を調整し、第一のコンデンサおよび第二のコンデンサを充電するまで補助回路ローサイドスイッチをオンにする期間と補助回路ハイサイドスイッチをオンにする期間を調整し、主回路ローサイドスイッチにかかる電圧が約0Vになった後に主回路ローサイドスイッチをオンすることを特徴とする。
【0015】
本発明は又、主回路ローサイドスイッチをオンにするときの代替的な電力変換方法を提供する。本発明の電力変換方法は、主回路と、主回路と電源との間に配置される補助回路と、主回路と補助回路との間に配置されたインダクタを備えた電力変換装置の電力変換方法である。電力変換装置の主回路は、直列接続された主回路ハイサイドスイッチ及び主回路ローサイドスイッチと、主回路ハイサイドスイッチと並列に接続された第一のコンデンサと、主回路ローサイドスイッチと並列に接続された第二のコンデンサと、を備えており、補助回路は、一以上のダイオードと、一以上のスイッチとを備えている。本発明の電力変換装置は、主回路ローサイドスイッチをオンにする前に、補助回路の下側回路に配置された補助回路ローサイドスイッチと、補助回路の上側回路に配置されたハイサイドのダイオードを交互にオンにすることでインダクタに通電して出力電流の変化量を調整し、第一のコンデンサおよび第二のコンデンサを充電するまで補助回路ローサイドスイッチをオンにする期間とハイサイドのダイオードをオンにする期間を調整し、主回路ローサイドスイッチにかかる電圧が約0Vになった後に主回路ローサイドスイッチをオンすることを特徴とする。
【0016】
本発明の電力変換方法は、電源から主回路の方向に電流を通電させる場合と、主回路から電源の方向に電流を通電させる場合のいずれか一方もしくは両方に適用することができる。
【0017】
本発明の電力変換方法は、主回路ハイサイドスイッチと主回路ローサイドスイッチの間の中点電圧と、補助回路ハイサイドのスイッチと、補助回路ローサイドのスイッチの中点電圧とをトリガーとして、主回路ハイサイドスイッチと主回路ローサイドスイッチのターンオンタイミングを生成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電力変換装置および電力変換方法は、主回路のスイッチング損失を低減可能な補助回路を備えている。補助回路によって、主回路のゼロボルトスイッチングを達成することにより、補助回路を追加しているにも拘わらず、従来よりも高効率で稼働することのできる電力変換装置および電力変換方法を提供することができる。
【0019】
本発明に係る電力変換装置および電力変換方法は、主回路のスイッチング損失を低減可能な補助回路を備えている。補助回路は、通電時間が短時間であり、主回路と比較してより小型化することができる。そのため、補助回路によって、主回路のゼロボルトスイッチングを達成することにより、補助回路を追加しているにも拘わらず、従来よりも安価な電力変換装置および電力変換方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に従った電力変換装置の基本的な回路構成の概要を示す回路図である。
図2図2は、電源から負荷に電力を供給する場合の電力変換装置の各部の電流と電圧の制御内容を時系列で示した図である。
図3図3は、電力変換装置の主回路ローサイドスイッチのオン状態から主回路ハイサイドスイッチのオン状態に切り替える期間の、各部の電流と電圧の制御内容を時系列で示した図である。
図4図4は、電力変換装置の主回路ハイサイドスイッチのオンから主回路ローサイドスイッチのオンに切り替える期間の、各部の電流と電圧の制御内容を時系列で示した図である。
図5図5は、電力変換装置を通る電流の経路を矢印で示した図である。
図6図6は、電力変換装置を通る電流の経路を矢印で示した図である。
図7図7は、電力変換装置を通る電流の経路を矢印で示した図である。
図8図8は、電力変換装置の第一の代替例の回路図である。
図9図9は、外部から主回路側に電力を供給する場合の電力変換装置の各部の電流と電圧の制御内容を時系列で示した図である。
図10図10は、電力変換装置の主回路ハイサイドスイッチのオン状態から主回路ローサイドスイッチのオン状態に切り替える期間の、各部の電流と電圧の制御内容を時系列で示した図である。
図11図11は、電力変換装置の主回路ローサイドスイッチのオン状態から主回路ハイサイドスイッチのオン状態に切り替える期間の、各部の電流と電圧の制御内容を時系列で示した図である。
図12図12は、電力変換装置を通る電流の経路を矢印で示した図である。
図13図13は、電力変換装置を通る電流の経路を矢印で示した図である。
図14図14は、電力変換装置を通る電流の経路を矢印で示した図である。
図15図15は、電力変換装置の第二の代替例の回路図である。
図16図16は、主回路スイッチの中点電圧および補助回路スイッチの中点電圧をトリガーとして、スイッチオンのタイミングを生成する回路の例を示した図である。
図17図17は、従来の電力変換装置の基本的な回路構成の概要を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の電力変換装置1の好適な実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に、電力変換装置1の基本的な回路構成を示す。電力変換装置1は、直流の電源2と、交流を供給する負荷3との間に配置される装置であって、主回路11と、主回路11と電源2との間に配置される補助回路12とを備えている。主回路11と補助回路12との間には、インダクタL1が配置されている。
【0022】
主回路11は、直列接続された主回路ハイサイドスイッチQ1と主回路ローサイドスイッチQ2を備えている。また主回路は、主回路ハイサイドスイッチQ1と並列に接続された第一のコンデンサC1と、主回路ローサイドスイッチQ2と並列に接続された第二のコンデンサC2を備えている。
【0023】
本実施形態における補助回路12は、直列接続されたハイサイドのダイオードD1とローサイドのダイオードD2を備えている。さらに、ハイサイドのダイオードD1に対応する補助回路ハイサイドスイッチQ3と、ローサイドのダイオードD2に対応する補助回路ローサイドスイッチQ4とを備えている。
【0024】
インダクタL1は、一端が主回路ハイサイドスイッチQ1と主回路ローサイドスイッチQ2との接続点に接続されており、他端が補助回路のダイオードD1とダイオードD2との接続点に接続されている。
【0025】
主回路ハイサイドスイッチQ1、主回路ローサイドスイッチQ2、補助回路ハイサイドスイッチQ3、補助回路ローサイドスイッチQ4は、たとえば、MOSFETなどのトランジスタを適用することができる。主回路と補助回路のスイッチング素子は全て、図示されない制御手段によってオンオフのタイミング制御が行われる。
【0026】
次に、本発明の電力変換方法を説明する。図2は、電源2から負荷3に電力を供給するときの電力変換装置1の各部の電流と電圧の制御内容を時系列で示した図である。図2の最上段のグラフは、主回路ローサイドスイッチQ2のソースドレイン間電圧V2と、電流値A2の制御内容を示している。図2の上から2段目のグラフは、主回路ハイサイドスイッチQ1のソースドレイン間電圧V1と、電流値A1の制御内容を示している。図2の上から3段目のグラフは、補助回路ハイサイドスイッチQ3と補助回路ローサイドスイッチQ4の接続点における電圧V3と、インダクタL1の電流値A3を示している。最下段のグラフは、主回路ハイサイドスイッチQ1と主回路ローサイドスイッチQ2の接続点における電圧V4と、電力変換装置1の出力電流値A4を示している。
【0027】
以下の電力変換方法の説明では、主回路ローサイドスイッチQ2のオンから主回路ハイサイドスイッチQ1のオンに切り替える期間を期間1、主回路ハイサイドスイッチQ1から負荷への電力供給を継続する期間を期間2、主回路ハイサイドスイッチQ1のオンから主回路ローサイドスイッチQ2のオンに切り替える期間を期間3、主回路ローサイドスイッチQ2から電力を供給する期間を期間4として、それぞれの制御内容について説明する。図3に、期間1における電力変換装置1の各部の電流と電圧の制御内容を、時系列で示す。図4に、期間3における電力変換装置1の各部の電流と電圧の制御内容を、時系列で示す。
【0028】
期間1において、主回路ハイサイドスイッチQ1をオンにするときのスイッチング損失を低減するソフトスイッチングの制御内容を、図面を参照しつつ説明する。図3中の符号1-1で示した期間は、主回路ハイサイドスイッチQ1がオフで、主回路ローサイドスイッチQ2側から負荷に電流が出力されている(図5(a))。主回路ハイサイドスイッチQ1をオンにするときのスイッチング損失を低減するためには、主回路ローサイドスイッチQ2側から供給される余剰電流と、補助回路12から供給される電流で、主回路11の第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2を充電する必要がある。
【0029】
主回路11の第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2を充電するために、補助回路ハイサイドスイッチQ3のオンとオフの状態と、補助回路ローサイドスイッチQ4のオンとオフの状態を交互に切り替える。補助回路ハイサイドスイッチQ3のオン期間を、図3中の符号1-2、補助回路ローサイドスイッチQ4のオン期間を、図3中の符号1-3の期間として示す。補助回路ハイサイドスイッチQ3と補助回路ローサイドスイッチQ4の交互の切り替えによって、インダクタL1の通電が行われる。補助回路12からインダクタL1を経て出力される電力によって、主回路11の第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2が、主回路ハイサイドスイッチQ1をオンにする電源電圧に達するまで充電される。補助回路ハイサイドスイッチQ3のオン状態の時の電力供給状態を図5(b)に示し、補助回路ローサイドスイッチQ4のオン状態の時の電力供給状態を図6(a)に示す。
【0030】
補助回路ハイサイドスイッチQ3をオンにした時点より、補助回路ハイサイドスイッチQ3のからインダクタL1を通して、負荷3に電流が供給される。インダクタL1から電流の供給が始まると、負荷3には、主回路ローサイドスイッチQ2とインダクタL1から電流が供給される。このため、主回路ローサイドスイッチQ2の電流は、インダクタL1通電分減少する。インダクタL1の通電電流が負荷3の通電電流を上回ると、第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の充電が開始される。
【0031】
第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の充電電圧が1/2に等しい時点で、補助回路ハイサイドスイッチQ3と主回路ローサイドスイッチQ2をオフし、補助回路ローサイドスイッチQ4をオンする。第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の充電開始から、第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2とインダクタL1はLC共振をしているとみなすことができるため、インダクタL1のエネルギーを利用して第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2を充電し、第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の充電完了時点でインダクタL1の電流は0となる。この時点で補助回路ローサイドスイッチQ4をオフする。
【0032】
第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の充電が完了した時点で、主回路ハイサイドスイッチQ1にかかる電圧が約0Vになるため、主回路ハイサイドスイッチQ1をオンにすることで、主回路ハイサイドスイッチQ1のソフトスイッチングが完了する。主回路ハイサイドスイッチQ1をオン状態にした時の電力供給状態を図6(b)に示す。電力変換装置1の制御は、所定の電圧を維持する期間2に移り、負荷3への電力供給が行われる。
【0033】
ここで、補助回路ハイサイドスイッチQ3と補助回路ローサイドスイッチQ4をオフにしたあと、図7(a)に示すように、主回路ハイサイドスイッチQ1からインダクタL1を通過して補助回路11を充電する残留ループ電流が発生する。残留ループ電流を減少させるためには、補助回路ハイサイドスイッチQ3と補助回路ローサイドスイッチQ4のソースドレイン電圧が等しくなるタイミングで補助回路ハイサイドスイッチQ3をオンにし、電流値を0に固定することが効果的である。補助回路ハイサイドスイッチQ3と補助回路ローサイドスイッチQ4の容量の小さいスイッチ素子を使用することと、インダクタンスL1を追加することもまた、有効である。
【0034】
次に、主回路ハイサイドスイッチQ1のオンから主回路ローサイドスイッチQ2のオンに切り替える期間を期間3において、主回路ローサイドスイッチQ2をオンにするときのスイッチング損失を低減するソフトスイッチングの制御内容を、図面を参照しつつ説明する。図4中の符号3-1で示した期間の最初は、ひきつづき主回路ローサイドスイッチQ2がオフで、主回路ハイサイドスイッチQ1側から負荷に電流が出力されている(図6(b))。主回路ローサイドスイッチQ2をオンにするときのスイッチング損失を低減するためには、負荷電流と補助回路12に供給される電流で、主回路11の第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2を放電させる必要がある。
【0035】
主回路11の第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2を放電させるために、補助回路ハイサイドスイッチQ3のオンとオフの状態と、補助回路ローサイドスイッチQ4のオンとオフの状態を交互に切り替える。補助回路ローサイドスイッチQ4のオン期間を、図4中の符号3-2、補助回路ハイサイドスイッチQ3のオン期間を、図4中の符号3-3の期間として示す。交互の切り替えによって、インダクタL1の通電が行われる。補助回路12にインダクタL1を経て入力される電力によって、主回路11の第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2が、主回路ローサイドスイッチQ2をオンにするグランド電圧に達するまで放電することができる。補助回路ローサイドスイッチQ4のオン状態の時の電力供給状態を図7(b)に示し、補助回路ハイサイドスイッチQ3のオン状態の時の電力供給状態を図7(c)に示す。
【0036】
主回路ハイサイドスイッチQ1をオフし、補助回路ローサイドスイッチQ4をオンした時点より、第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2からインダクタL1を通して補助回路ローサイドスイッチQ4と負荷に電流が供給されるため、第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の放電が開始される。
【0037】
第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の放電電圧が1/2に等しい時点で、補助回路ローサイドスイッチQ4をオフし、補助回路ハイサイドスイッチQ3をオンする。第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の放電開始から、第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2とインダクタL1はLC共振をしているとみなすことができるため、インダクタL1のエネルギーを利用して第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2が放電し、第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の放電完了時点でインダクタL1の電流は0となる。この時点で補助回路ハイサイドスイッチQ3をオフする。
【0038】
第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の放電が完了した時点で、主回路ローサイドスイッチQ2にかかる電圧が約0Vになるため、主回路ローサイドスイッチQ2をオンにすることで、主回路ローサイドスイッチQ2のソフトスイッチングが完了する。主回路ローサイドスイッチQ2をオン状態にした時の電力供給状態を図5(a)に示す。電力変換装置1の制御は、所定の電圧を維持する期間4に移り、負荷3への電力供給が行われる。
【0039】
ただし、主回路ハイサイドスイッチQ1側から電力が供給されている場合、負荷に供給される電流自体が主回路ローサイドスイッチQ2にかかる電圧を約0Vとすることに寄与する。そのため、電力の供給量によっては、期間3の補助回路12の稼働が不要となる場合もある。
【0040】
このように、本実施形態の電力変換装置1を用いた電力変換方法によって、主回路ハイサイドスイッチQ1と主回路ローサイドスイッチQ2のソフトスイッチングを交互にくりかえすことができ、負荷3への高効率な電力の供給を行うことができる。
【0041】
電流を電源2から負荷3に出力する場合の電力変換装置の代替例を図8に示す。電力変換装置21において、補助回路のローサイドスイッチQ4はローサイドのダイオードD2に置き換えられている。また、ハイサイドのダイオードD1は、省略されている。このような電力変換装置21においては、インダクタL1電流の0検出が不要となる。電力変換装置21は、電流がゼロとなるゼロクロス(ZCS)操作を自動でできるため、制御が容易である。また、MOSFET等の一般的なスイッチング素子の損失よりもダイオードの方が電力損失が少ないため、より高効率な電力変換が可能となる。
【0042】
次に、外部2から主回路側に電力を供給するときの電力変換装置1の動作を、図面を参照しつつ説明する。図9は、電力変換装置1の各部の電流と電圧の制御内容を、時系列で示した図である。図9の最上段のグラフは、主回路ローサイドスイッチQ2のソースドレイン間電圧V2と、電流値A2と、ゲート電圧G2の制御内容を示している。図2の上から2段目のグラフは、主回路ハイサイドスイッチQ1のソースドレイン間電圧V1と、電流値A1と、ゲート電圧G1の制御内容を示している。図2の上から3段目のグラフは、補助回路ハイサイドスイッチQ3と補助回路ローサイドスイッチQ4の接続点における電圧V3と、インダクタL1の電流値A3と、ゲート電圧G3を示している。最下段のグラフは、主回路ハイサイドスイッチQ1と主回路ローサイドスイッチQ2の接続点における電圧V4と、電力変換装置1の出力電流値A4を示している。
【0043】
以下の電力変換方法の説明では、主回路ハイサイドスイッチQ1のオンから主回路ローサイドスイッチQ2のオンに切り替える期間を期間5、主回路ローサイドスイッチQ2がオン状態を継続する期間を期間6、主回路ローサイドスイッチQ2のオンから主回路ハイサイドスイッチQ1のオンに切り替える期間を期間7、主回路ローサイドスイッチQ2から電力を供給する期間を期間8として、それぞれの制御内容について説明する。図10に、期間5における電力変換装置1の各部の電流と電圧の制御内容を、時系列で示す。図11に、期間6における電力変換装置1の各部の電流と電圧の制御内容を、時系列で示す。
【0044】
主回路ハイサイドスイッチQ1のオンから主回路ローサイドスイッチQ2のオンに切り替える期間5において、スイッチング損失を低減するソフトスイッチングの制御内容を、図面を参照しつつ説明する。図10中の符号5-1で示した期間は、主回路ローサイドスイッチQ2がオフで、主回路ハイサイドスイッチQ1側から負荷に電流が出力されている(図12(a))。主回路ローサイドスイッチQ2をオンにするときのスイッチング損失を低減するためには、主回路ハイサイドスイッチQ1側から供給される電流と、補助回路12の電流で、主回路11の第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2を充電する必要がある。充電のために、補助回路ハイサイドスイッチQ3のオンとオフの状態と、補助回路ローサイドスイッチQ4のオンとオフの状態を交互に切り替える。補助回路ローサイドスイッチQ4のオン期間を、図10中の符号5-2、補助回路ハイサイドスイッチQ3のオン期間を、図10中の符号5-3の期間として示す。補助回路ハイサイドスイッチQ3と補助回路ローサイドスイッチQ4を交互に通過した電力によって、主回路11の第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2が、主回路ローサイドスイッチQ2をオンにする電源電圧0Vに達するまで充電される。補助回路ローサイドスイッチQ3のオン状態の時の電力供給状態を図12(b)に示し、補助回路ハイサイドスイッチQ4のオン状態の時の電力供給状態を図13(a)に示す。
【0045】
第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の充電が完了した時点で、主回路ローサイドスイッチQ2にかかる電圧が約0Vになるため、主回路ローサイドスイッチQ2をオンにすることで、主回路ローサイドスイッチQ2のソフトスイッチングが完了する。主回路ローサイドスイッチQ2をオン状態にした時の電力供給状態を図13(b)に示す。電力変換装置1の制御は、所定の電圧を維持する期間6に移る。
【0046】
ここで、補助回路ハイサイドスイッチQ3と補助回路ローサイドスイッチQ4をオフにしたあと、図14(a)に示すように、補助回路ローサイドスイッチQ4からインダクタL1を通過して主回路ローサイドスイッチQ2側へ流れる残留ループ電流が発生する。残留ループ電流を減少させるためには、補助回路ハイサイドスイッチQ3と補助回路ローサイドスイッチQ4のソースドレイン電圧が等しくなるタイミングで補助回路ローサイドスイッチQ4をオンにし、電流値を0に固定することが効果的である。補助回路ハイサイドスイッチQ3と補助回路ローサイドスイッチQ4の容量の小さいスイッチ素子を使用することと、インダクタンスL1を追加することもまた、有効である。
【0047】
次に、主回路ローサイドスイッチQ2のオンから主回路ハイサイドスイッチQ1のオンに切り替える期間を期間7において、スイッチング損失を低減するソフトスイッチングの制御内容を、図面を参照しつつ説明する。図11中の符号7-1で示した期間の最初は、ひきつづき主回路ハイサイドスイッチQ1がオフで、主回路ローサイドスイッチQ2側から負荷に電流が出力されている(図13(b))。主回路ハイサイドスイッチQ1をオンにするときのスイッチング損失を低減するためには、外部から供給される電流で、主回路11の第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2を放電させる必要がある。
【0048】
主回路11の第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2を放電させるために、補助回路ハイサイドスイッチQ3のオンとオフの状態と、補助回路ローサイドスイッチQ4のオンとオフの状態を交互に切り替える。補助回路ハイサイドスイッチQ3のオン期間を、図11中の符号7-2、補助回路ローサイドスイッチQ4のオン期間を、図11中の符号7-3の期間として示す。交互の切り替えによって、インダクタL1の通電が行われ、補助回路12にインダクタL1を経て入力される電力によって、主回路11の第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2が、主回路ハイサイドスイッチQ1をオンにするグランド電圧に達するまで放電することができる。補助回路ローサイドスイッチQ4のオン状態の時の電力供給状態を図14(b)に示し、補助回路ハイサイドスイッチQ3のオン状態の時の電力供給状態を図14(c)に示す。
【0049】
第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2からインダクタL1を通して補助回路ハイサイドスイッチQ3に電流が供給され、第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の放電が開始される。第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の放電電圧が1/2に等しい時点で、補助回路ローサイドスイッチQ4をオフし、補助回路ハイサイドスイッチQ3をオンする。第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の放電開始から、第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2とインダクタL1はLC共振をしているとみなすことができるため、インダクタL1のエネルギーを利用して第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2が放電し、第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の放電完了時点でインダクタL1の電流は0となる。この時点で補助回路ローサイドスイッチQ4をオフする。
【0050】
第一のコンデンサC1と第二のコンデンサC2の放電が完了した時点で、主回路ハイサイドスイッチQ1にかかる電圧が約0Vになるため、主回路ハイサイドスイッチQ1をオンにすることで、主回路ハイサイドスイッチQ1のソフトスイッチングが完了する。電力変換装置1の制御は、所定の電圧を維持する期間8に移る。
【0051】
このように、本実施形態の電力変換装置1を用いた電力変換方法によって、主回路ハイサイドスイッチQ1と主回路ローサイドスイッチQ2のソフトスイッチングを交互にくりかえすことができ、外部から主回路側への高効率な電力の供給を行うことができる。
【0052】
電流を外部2から主回路11側に出力する場合の電力変換装置の代替例を図15に示す。電力変換装置31において、補助回路のハイサイドスイッチQ3はハイサイドのダイオードD1に置き換えられている。また、ローサイドのダイオードD2は、省略されている。このような電力変換装置31においては、インダクタL1電流の0検出が不要となる。電力変換装置31は、電流がゼロとなるゼロクロス(ZCS)操作を自動でできるため、制御が容易である。また、MOSFET等の一般的なスイッチング素子の損失よりもダイオードの方が電力損失が少ないため、より高効率な電力変換が可能となる。
【0053】
図16に、主回路ハイサイドスイッチと主回路ローサイドスイッチの間の中点電圧と、補助回路ハイサイドのスイッチと、補助回路ローサイドのスイッチの中点電圧と、をトリガーとして、主回路ハイサイドスイッチ、前記主回路ローサイドスイッチ、前記補助回路ハイサイドスイッチ、及び前記補助回路ローサイドスイッチのタイミングを生成するための論理回路の一例を示す。この論理回路を加えることによって、よりスイッチング素子のオンとオフのタイミング制御が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の電力変換装置は、昇降圧コンバータ、三相交流インバータ、単相インバータ、双方向に回転するモータや単相モータの駆動、降圧型DCDCコンバータ、昇圧型DCDCコンバータ等に適用が可能である。特に、電源側から負荷の一方向のみに電力を供給する電力変換装置は、降圧コンバータや接地された単相モータの駆動に好適に適用される。外部から主回路側に電力を供給する電力変換装置の場合は、昇圧型コンバータや、電源に接続された単相モータに好適に適用される。
【符号の説明】
【0055】
1 電力変換装置
2 電源
3 負荷
11 主回路
12 補助回路
L1 インダクタ
Q1 主回路ハイサイドスイッチ
Q2 主回路ローサイドスイッチ
Q3 補助回路ハイサイドスイッチ
Q4 補助回路ローサイドスイッチ
C1 第一のコンデンサ
C2 第二のコンデンサC2
D1,D2 ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17