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特開2024-68237ケミカルプレストレストコンクリート及びケミカルプレストレストコンクリートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068237
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ケミカルプレストレストコンクリート及びケミカルプレストレストコンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240513BHJP
   C04B 14/38 20060101ALI20240513BHJP
   C04B 14/48 20060101ALI20240513BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20240513BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20240513BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20240513BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240513BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/38 A
C04B14/48 C
C04B16/06 Z
C04B18/14 A
C04B18/08 Z
C04B18/14 Z
C04B22/06 Z
C04B22/14 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178531
(22)【出願日】2022-11-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】304000836
【氏名又は名称】学校法人 名古屋電気学園
(71)【出願人】
【識別番号】591121111
【氏名又は名称】株式会社安部日鋼工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉 承寧
(72)【発明者】
【氏名】劉 少龍
(72)【発明者】
【氏名】石井 豪
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MB33
4G112PA19
4G112PA20
4G112PA24
4G112PA27
4G112PA28
4G112PA29
4G112PB03
4G112PB12
(57)【要約】
【課題】コンクリートの全体に任意の向きでプレストレスが導入されるケミカルプレストレストコンクリートとその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のケミカルプレストレストコンクリートは、セメント、短繊維、膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤を含むコンクリートであって、拘束材のない状態で、1.20N/mm以上のケミカルプレストレスが導入されている。本発明のケミカルプレストレストコンクリートの製造方法は、セメント、短繊維、膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤からなる原料を混練する混練工程と、原料を型枠に充填して硬化する初期養生工程と、型枠を脱型してコンクリート部材を得る脱型工程と、コンクリート部材を水で2週間以上湿潤養生する養生工程と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、短繊維、膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤を含むコンクリートであって、
PC鋼材、鉄筋、もしくは連続繊維である内部拘束材及び外部拘束体のない状態で、1.20N/mm以上のケミカルプレストレスが導入されていることを特徴とするケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項2】
前記混和材が、
エトリンガイト系膨張材、石灰系膨張材、および酸化マグネシウム系膨張材からなる群から選択される一種又は二種以上の膨張材と、
高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、およびシリカフュームからなる群から選択される一種又は二種以上の組成物と、
の両方を含んでいることを特徴とする請求項1記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項3】
前記短繊維が、高強度鋼繊維、フック形状端部付き鋼繊維、合成繊維、および炭素繊維からなる群から選択される一種又は二種以上の短繊維であることを特徴とする請求項1記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項4】
前記短繊維が、直径0.2mm以下、長さ22mm以上80mm以下、アスペクト比110以上400以下、引張強度2000N/mm以上の高強度鋼繊維であることを特徴とする請求項3記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項5】
前記セメントが、早強ポルトランドセメント又は普通ポルトランドセメントであることを特徴とする請求項1記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項6】
前記骨材は、
コンクリート用天然骨材、コンクリート用砕石、砕砂、高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、および電気炉酸化スラグ骨材からなる群から選択される一以上の組成物であり、
圧縮強度が300N/mm以上、最大寸法5mm以下の高強度骨材であることを特徴とする請求項1記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項7】
前記混和剤が、コンクリート用化学混和剤であって、
高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE剤、および消泡剤からなる群から選択される一以上の組成物であることを特徴とする請求項1記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項8】
セメント5~40重量%、
混和材5~40重量%、
膨張材2~5重量%、
シリカフューム、高炉スラグ微粉末、及びフライアッシュから選択される一または二以上の組成物を5~40重量%含んでおり、
さらに、短繊維を、前記コンクリートの体積に対して1.0~2.5体積%となる割合で含んでおり、
単位水量(W)が175kg/m以下であり、且つ水結合材比(W/B)が25重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項9】
セメント、短繊維、膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤からなる原料を混練する混練工程と、
前記原料を型枠に充填して硬化する初期養生工程と、
型枠を脱型してコンクリート部材を得る脱型工程と、
前記コンクリート部材を水で2週間以上湿潤養生する養生工程と、
を備えていることを特徴とするケミカルプレストレストコンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルプレストレストコンクリート及びケミカルプレストレストコンクリートの製造方法に関する。特に、PC鋼材、鉄筋などの拘束材を適用することなく、コンクリート全体に圧縮応力を導入することのできるケミカルプレストレストコンクリートと、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なコンクリートは、収縮性があり、且つ引張強度が低く脆性的な材料であるため、ひび割れが発生しすいという問題がある。この問題を解決するために、コンクリートに鉄筋を配置する鉄筋コンクリートが従来から使用されている。鉄筋コンクリートに配置されている鉄筋はコンクリートの破断を防ぐことができるが、荷重またはコンクリートの収縮によって鉄筋コンクリートに発生する引張応力がコンクリートの引張強度を超えると、鉄筋コンクリートにひび割れが発生する。鉄筋コンクリートに発生したひび割れは、酸素、水分、および塩分などの侵食物質の侵入経路となり、コンクリート中の鉄筋を腐食させ、コンクリート構造物の耐久性を低下させる原因となっている。コンクリート構造物にひび割れの発生を防ぐための技術としてプレストレストコンクリートが開発されている。プレストレストコンクリートは、コンクリートの内部や周囲に、たとえばPCより線、PC鋼棒、連続合成繊維といった補強材を配置し、これらの補強材をジャッキで緊張し、コンクリートとの付着または定着具でコンクリートに定着した後に、補強材の緊張を開放して得られるコンクリートである。プレストレストコンクリートは、補強材の縮む力によってコンクリートに圧縮応力を与えることで、荷重やコンクリートの収縮によって後から発生する引張応力を打ち消すことができ、コンクリートにひび割れを発生させないという効果を有する。
【0003】
しかし、プレストレストコンクリートを得るためには、補強材の配置、緊張、定着という製造工程と専用の設備が必要であり、構造物を容易に得ることは困難である。そこで、より簡易な方法でコンクリートに圧縮応力を付与することのできるケミカルプレストレストコンクリートが検討されている。ケミカルプレストレストコンクリートは、膨張材を添加した膨張コンクリートの内部や周囲に、PCより線、PC鋼棒、支圧板、鉄筋等の拘束体を配置し、硬化時に膨張したコンクリートが拘束体を引っ張り、拘束体からの反力によってコンクリートに圧縮応力が与えられるコンクリートである。特許文献1には、膨張材を含むコンクリートを用い、PCより線やPC鋼棒及び支圧板を拘束体としたケミカルプレストレストコンクリートを適用することで、ジャッキによる緊張作業なしで、圧縮応力(プレストレス)を導入した軌道部材が開示されている。特許文献2には、ケミカルプレストレストコンクリートを用いた軌道スラブが開示されている。特許文献3にはケミカルプレストレストコンクリートに適用する膨張物質として、CaOとCaSOを用いる技術が開示されている。特許文献4には、CaO、Al2O3、及びCaSO4を配合し、CaO/Alモル比6.5~18、CaSO/Alモル比1.5~4で、最大粒径100μm以下とした膨張物質が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-172213号公報
【特許文献2】特開2019-148120号公報
【特許文献3】特開平11-012009号公報
【特許文献4】特開平11-012006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1と特許文献2で開示されているケミカルプレストレストコンクリートは、コンクリートにPCより線、PC鋼棒、支圧板、または鉄筋等の拘束体を配置して、膨張コンクリートを拘束する必要がある。このため、これらPCより線、PC鋼棒、鉄筋、および連続繊維などの拘束体が配置されている方向にのみ、プレストレスが導入される。一方、拘束体が配置されていない方向には、膨張コンクリートが自由に膨張し、過度に膨張することによってコンクリートの強度低下とひび割れが発生する恐れがある。また、特許文献3、4で開示されているケミカルプレストレストコンクリートに適用する膨張材は、拘束されていない膨張コンクリートの端部欠けにおいてある程度の改善があるとしているが、膨張コンクリートの膨張率が1000×10-6以上になると、膨張コンクリートの強度低下とひび割れの発生が著しくなる。
【0006】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、拘束体を用いることなくコンクリートの全体にプレストレスを導入することのできるケミカルプレストレストコンクリートと、ケミカルプレストレストコンクリートの製造方法の提供を解決すべき課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ケミカルプレストレストコンクリートに関する。本発明のケミカルプレストレストコンクリートは、セメント、短繊維、膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤を含むコンクリートである。本発明のケミカルプレストレストコンクリートは、PC鋼材、鉄筋、もしくは連続繊維補強材である内部拘束材も、外部拘束体もない状態で、1.20N/mm以上のケミカルプレストレスが導入されていることを特徴とする。
【0008】
発明者らは、短繊維と膨張材を含むコンクリートにおいて、短繊維が拘束材として作用し、膨張材によって膨張したコンクリートに圧縮応力を発生させることを見いだして、本発明をなすに至った。
【0009】
本発明のケミカルプレストレストコンクリートの混和材は、エトリンガイト系膨張材、石灰系膨張材、および酸化マグネシウム系膨張材からなる群から選択される一種又は二種以上の膨張材と、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、およびシリカフュームからなる群から選択される一種又は二種以上の組成物と、の両方からなることが好ましい。
【0010】
本発明のケミカルプレストレストコンクリートの短繊維は、高強度鋼繊維、フック形状端部付き鋼繊維、合成繊維、および炭素繊維からなる群から選択される一種又は二種以上の短繊維であることが好ましい。
【0011】
本発明のケミカルプレストレストコンクリートの短繊維は、直径0.2mm以下、長さ22mm以上80mm以下、アスペクト比110以上400以下、引張強度2000N/mm以上の高強度鋼繊維であることが好ましい。
【0012】
本発明のケミカルプレストレストコンクリートのセメントは、早強ポルトランドセメント又は普通ポルトランドセメントであることが好ましい。
【0013】
本発明のケミカルプレストレストコンクリートの骨材は、コンクリート用天然骨材、コンクリート用砕石、砕砂、高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、および電気炉酸化スラグ骨材からなる群から選択される一以上の組成物であり、圧縮強度が300N/mm以上、最大寸法5mm以下の高強度骨材であることが好ましい。
【0014】
本発明のケミカルプレストレストコンクリートの混和剤は、コンクリート用化学混和剤であって、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE剤、および消泡剤からなる群から選択される一以上の組成物であることが好ましい。
【0015】
本発明のケミカルプレストレストコンクリートの組成は、セメント5~40重量%、混和材5~40重量%、膨張材2~5重量%、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、及びフライアッシュから選択される一または二以上の組成物を5~40重量%含んでおり、さらに、短繊維を、前記コンクリートの体積に対して1.0~2.5体積%となる割合で含んでおり、単位水量(W)が175kg/m以下であり、且つ水結合材比(W/B)が25重量%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、ケミカルプレストレストコンクリートの製造方法を提供する。本発明のケミカルプレストレストコンクリートは、セメント、短繊維、膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤からなる原料を混練する混練工程と、原料を型枠に充填して硬化する初期養生工程と、型枠を脱型してコンクリート部材を得る脱型工程と、コンクリート部材を水で2週間以上湿潤養生する養生工程と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のケミカルプレストレストコンクリートは、従来のプレストレストコンクリートで必要であった拘束体や補強材を配置するための特有の作業を必要とせずに、短繊維が拘束体としての役割を果たす。そして本発明のケミカルプレストレストコンクリートは、短繊維と膨張剤を含むことによって、コンクリート全体に、従来のプレストレストコンクリートと同等の1.20N/mm以上のプレストレスを導入し、荷重やコンクリートの収縮によって後から発生する引張応力を打ち消すことができる。この結果、従来のコンクリートと比較すると、ひび割れが発生しにくいという特性を有する。
【0018】
本発明のケミカルプレストレストコンクリートは、万が一、ひび割れが発生してもひび割れを自己治癒することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明のケミカルプレストレストコンクリートの製造方法を示すフローチャートである。
図2図2は、実施例のケミカルプレストレストコンクリートと比較例のコンクリートのひび割れ発生曲げ強度を示す図である。
図3図3は、実施例のケミカルプレストレストコンクリートと比較例のコンクリートのケミカルプレストレス量を示す図である。
図4図4は、実施例のケミカルプレストレストコンクリートのひび割れ発生曲げ強度を示す図である。
図5図5は、実施例のケミカルプレストレストコンクリートのケミカルプレストレス量を示す図である。
図6図6は、実施例のケミカルプレストレストコンクリートのひび割れ発生曲げ強度を示す図である。
図7図7は、実施例のケミカルプレストレストコンクリートと比較例のコンクリートのコンクリート圧縮強度を示す図である。
図8図8は、実施例のケミカルプレストレストコンクリートと比較例のコンクリートの静弾性係数を示す図である。
図9図9は、実施例のケミカルプレストレストコンクリートと比較例のコンクリートの静弾性係数を示す図である。
図10図10は、実施例のケミカルプレストレストコンクリートと比較例のコンクリートの長さ変化率を示す図である。
図11図11は、実施例のケミカルプレストレストコンクリートと比較例のコンクリートのひび割れの自己治癒性を示す図である。
図12図12は、実施例のケミカルプレストレストコンクリートと比較例のコンクリートのフロー値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のケミカルプレストレストコンクリートを、「3次元ケミカルプレストレストコンクリート」とも称する。3次元ケミカルプレストレストコンクリートとは、3次元形状を有するコンクリート構造物において、任意の座標系で定義可能な全ての方向について、製造当初から均一にプレストレスを発生させているコンクリートのことである。本発明のケミカルプレストレストコンクリートは、特定の方向性を有さず任意の向きで含まれている短繊維が拘束材として作用し、コンクリート全体に任意の方向の圧縮応力を発生させる。
【0021】
本発明における短繊維とは、JIS A 6208に規定されるコンクリート及びモルタル用合成短繊維のことを指す。
【0022】
本発明における高強度鋼繊維とは、JIS G 3101に規定される鋼材を用いており、引張強度2000N/mm以上の強度を有する鋼繊維のことを指す。
【0023】
本発明における高強度骨材とは、JIS A 5011に規定される骨材のうち、圧縮強度が300N/mm以上の骨材のことを指す。
【0024】
本発明における高性能減水剤とは、JIS A 6208に規定されるコンクリート用化学混和剤であって、減水率が12%以上のものを指す。本発明における高性能AE減水剤とは、JIS A 6208に規定されるコンクリート用化学混和剤であって、減水率が18%以上のものを指す。
【0025】
以下、本発明の3次元ケミカルプレストレストコンクリートの好適な実施形態を説明する。ここで説明する3次元ケミカルプレストレストコンクリートとその製造方法は例示であって、特許請求の範囲を限定することをと意図したものではない。
【0026】
本実施形態の3次元ケミカルプレストレストコンクリートは、セメント、短繊維、膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤を原料とする。
【0027】
本実施形態で用いるセメントは、早強ポルトランドセメント又は普通ポルトランドセメントである。
【0028】
本実施形態で用いる短繊維は、高強度鋼繊維、フック形状端部付き鋼繊維、合成繊維、および炭素繊維から選択される一種または複数種類の混合物である。これらの短繊維は、直径0.2mm以下、長さ22mm以上80mm以下、アスペクト比110以上400以下、引張強度2000N/mm以上の特性を有する。
【0029】
混和材のうちの膨張材は、セメントおよび水とともに練り混ぜた場合、水和反応によってエトリンガイト(3CaO・Al・3CaSO・32HO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、又は水酸化マグネシウム(Mg(OH))の結晶を生成して、その結晶成長あるいは生成量の増大によりコンクリートを膨張させる作用を有する混和材である。エトリンガイトの結晶を生成する膨張材が、エトリンガイト系膨張材である。水酸化カルシウムの結晶を生成する膨張材が、石灰系膨張材である。また、エトリンガイド系膨張材と石灰系膨張材の両方を含む膨張材である、複合系膨張材が好適に使用される。
【0030】
膨張材以外の混和材として、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、およびシリカフュームからなる群から選択される一種類以上の組成物を用いる。骨材として、コンクリート用天然骨材、コンクリート用砕石、砕砂、高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、および電気炉酸化スラグ骨材からなる群から選択される一以上の組成物であって、圧縮強度が300N/mm以上、最大寸法5mm以下の高強度骨材を用いることができる。
【0031】
混和剤は、コンクリート用化学混和剤であって、高性能減水剤(以下、減水剤SPとも記載する)、高性能AE減水剤、AE剤、および消泡剤からなる群から選択される一つ以上の組成物とすることができる。
【0032】
好適な3次元ケミカルプレストレストコンクリートの組成は、セメント5~40重量%、膨張材4~10重量%、膨張材以外の混和材5~40重量%である。また、短繊維はコンクリート体積に対して1.0~2.5体積%となるように添加している。さらに、単位水量(W)が175kg/m以下であり、且つ水結合材比(W/B)が25重量%以下となるように、調整している。
【0033】
本実施形態の3次元ケミカルプレストレストコンクリートの製造方法は、セメント、短繊維、膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤からなる原料を混練する混練工程と、原料を型枠に充填して硬化する初期養生工程と、型枠を脱型してコンクリート部材を得る脱型工程と、コンクリート部材を水で2週間以上湿潤養生する養生工程と、を備えている。このような製造方法により製造した3次元ケミカルプレストレストコンクリートは、規則性のない任意の方向を向いている短繊維が均一に含まれるため、コンクリート全体に任意の方向の圧縮応力が発生する。
【実施例0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明を具現化した3次元ケミカルプレストレストコンクリートとその製造方法の実施例を示す。
【0035】
[3次元ケミカルプレストレストコンクリートの組成]
以下の表1に実施例1から実施例13の3次元ケミカルプレストレストコンクリートの組成を示す。各成分の含有量の単位は、全て、Kg/mである。実施例1~4、6、7は、セメントとして、密度=3.14g/cmの早強ポルトランドセメントを用いている。実施例5は、密度=3.23g/cmの低熱ポルトランドセメントを用いている。実施例8~13は、密度=3.16g/cmの普通ポルトランドセメントを用いている。
【0036】
短繊維としては、直径0.2mm、平均長さ22mm、引張強度2000N/mm、密度=7.85g/cmの高強度鋼繊維と、直径0.9mm、平均長さ60mm、引張強度2000N/mm、密度=7.85g/cmのフック形状端部付き鋼繊維と、直径0.2mm、平均長さ15mmと平均25mmの混合品であって、引張強度3500N/mm、密度=1.50g/cmの合成繊維、の一又は二以上を選択して適用した。
【0037】
なお、表1に示した実施例1から13は、短繊維の体積をコンクリート体積に対して1.5~1.75体積%となるように繊維混入率を調整し、その結果として実際に添加した重量を表に記載している。
【0038】
混和材のうち、膨張材としては、密度=3.1g/cmの石灰系膨張材と、密度=2.93g/cmのエトリンガイト系膨張材と、エトリンガイト系膨張材と石灰複合系膨張材の両方を含む密度=3.09g/cmの複合系膨張材のいずれかを適用した。また、膨張材以外の混和材としては、密度=2.20g/cmのシリカフュームと、密度=2.29g/cmのフライアッシュのいずれか一方もしくは両方を適用した。
【0039】
骨材として、密度=2.61g/cm、圧縮強度が300N/mm以上、最大寸法5mmの硬質砂岩砕砂を適用した。
【0040】
混和剤として、ポリカルボン酸系高性能減水剤と消泡剤を適用した。
【0041】
【表1】
【0042】
また、比較例として、膨張材を用いないコンクリートを3種類と、膨張材の配合量の少ないコンクリートを2種類製造し、特性を比較した。比較例1~5のコンクリートの組成を、以下に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表1の実施例及び表2の比較例に示した、水結合材比(W/B%)とは、セメントと混和材の合計量に対する水の割合を示した値である。
【0045】
[3次元プレストレストコンクリートの製造方法]
3次元ケミカルプレストレストコンクリートの製造方法は、セメント、短繊維、膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤からなる原料を混練する混練工程と、混練の完了した原料を型枠に充填して硬化する初期養生工程と、型枠を脱型してコンクリート部材を得る脱型工程と、コンクリート部材を水で2週間以上湿潤養生する養生工程と、を備えている。本実施例の3次元ケミカルプレストレストコンクリートの製造方法のうち、混練工程の詳細な内容を、図1に示す。本実施例では、1バッチの混練量を55リットルとして、最初にセメントと混和材を混練し、次に水と混和剤である減水剤と消泡剤を加えて混練し、さらに骨材を加えて混練し、最後に短繊維を加えて混練する。混練の完了したスラリー状の3次元ケミカルプレストレストコンクリートを型枠に打込み初期養生を行う。材齢1日で脱型し、さらに20℃の水中で2週間以上湿潤養生することで、3次元ケミカルプレストレストコンクリートが完成する。
【0046】
[3次元プレストレストコンクリートの諸特性]
【0047】
湿潤養生した実施例の3次元プレストレストコンクリートを、その後20℃、60%RHの室内で乾燥し、材齢4週コンクリートのひび割れ発生曲げ強度を、JIS1129-3 に規定されるひび割れ発生曲げ強度試験方法で試験した。膨張剤60kg/m(約2.4重量%)と、高強度鋼繊維137.4kg/m(約5.4重量%)を含む実施例1のコンクリートのひび割れ発生曲げ強度は16.86N/mmであった。膨張剤80kg/m(約3.2重量%)と、高強度鋼繊維137.4kg/m(約5.4重量%)を含む実施例2のコンクリートのひび割れ発生曲げ強度は20.67N/mmであった。これに対して、膨張材を含まず、高強度鋼繊維137.4kg/m(約5.4重量%)を含む比較例1のコンクリートのひび割れ発生曲げ強度は、15.38N/mmであり、膨張剤60kg/m(約1.6重量%)と、高強度鋼繊維137.4kg/m(約5.4重量%)を含む比較例2のコンクリートのひび割れ発生曲げ強度は15.66N/mmであった。この結果を元に算出した、実施例1、2と比較例1、2のそれぞれのコンクリートのケミカルプレストレスを図3に示す。実施例1のコンクリートのケミカルプレストレスは1.48N/mmであり、実施例3のコンクリートのケミカルプレストレスは5.28N/mmであった。これに対して、比較例1にはケミカルプレストレスが導入できておらず、比較例2のコンクリートのケミカルプレストレスは、0.28N/mmであった。この結果から、適切な組成比で膨張剤と短繊維を配合して製造されたコンクリートには、3次元でケミカルプレストレスが導入されることが明らかになった。また、導入されたプレストレス量は膨張材の使用量の増加につれて、増えることが明らかとなった。比較例2のように、膨張材の使用量が40kg/m以下の場合、コンクリートに導入されるケミカルプレストレス量が低く、コンクリートのひび割れ抑制に十分なプレストレスが導入されたとは言いがたい。
【0048】
膨張剤の種類と導入されるケミカルプレストレスの関係を検証した。石灰系の膨張剤60kg/mを含む実施例8のコンクリートと、エトリンガイド系の膨張剤60kg/mを含む実施例10のコンクリートと、複合系の膨張剤60kg/mを含む実施例12のコンクリートのそれぞれのひび割れ発生曲げ強度を、図4に示す。実施例8のコンクリートのひび割れ発生曲げ強度は、12.67N/mmであり、実施例10のコンクリートのひび割れ発生曲げ強度は、15.33N/mmであり、実施例12のコンクリートのひび割れ発生曲げ強度は、15.13N/mmであった。この結果に基づいて、算出された、実施例8、10、12のコンクリートのケミカルプレストレスを、図5に示す。それぞれのケミカルプレストレスは、1.50N/mm、4.17N/mm、3.97N/mmであった。この結果から、石灰系の膨張材に比べ、エトリンガイト系膨張材または複合系膨張材を用いたコンクリートは、導入されるケミカルプレストレス量が相対的に多く、3次元ケミカルプレストレストコンクリートの製造に適していることが明らかとなった。
【0049】
短繊維の種類と導入されるケミカルプレストレスの関係を検証した。結果を図6に示す。高強度鋼繊維137.4kg/mを含む実施例1のコンクリートと、合成繊維137.4kg/mを含む実施例3のコンクリートと、鋼繊維137.4kg/mを含む実施例4のコンクリートは、それぞれ異なるひび割れ発生曲げ強度を有していることが明らかとなった。すなわち、実施例1のコンクリートのひび割れ発生曲げ強度は16.87N/mmであり、実施例3のコンクリートのひび割れ発生曲げ強度は13.25N/mmであり、実施例4のコンクリートのひび割れ発生曲げ強度は13.14N/mmであった。高強度鋼繊維が他の繊維に比べて、ひび割れ発生曲げ強度が高く、3次元ケミカルプレストレストコンクリートの製造に適していることが明らかとなった。
【0050】
実施例1、2のコンクリートと、比較例1、2のコンクリートについて、JIS A1108に規定された方法に基づいて、材齢1週目、材齢4週目、材齢26週目の圧縮強度を測定した。結果を図7に示す。材齢4週目において、比較例1のコンクリートの圧縮強度は135N/mmであり、比較例2のコンクリートの圧縮強度は127N/mmであった、一方、実施例1のコンクリートの圧縮強度は124N/mmであり、実施例2のコンクリートの圧縮強度は109N/mmであった。すなわち、コンクリートの材齢28日の圧縮強度は、膨張材使用量の増加につれて、低くなった。一方で、実施例1および実施例2のコンクリートの圧縮強度は、いずれも100N/mm以上で、一定の強度を有していた。材齢7日と材齢182日の圧縮強度においても、材齢28日の圧縮強度と同様に、膨張材使用量の増加と圧縮強度の低減には相関関係が認められる一方で、材齢が増加するにつれて圧縮強度が増加した。実施例2の膨張材使用量が80kg/mのコンクリートにおいては、材齢182日の圧縮強度が130N/mmに達した。本実施例のコンクリートは、均一に分散されている高強度鋼繊維の拘束によってコンクリートの過度な膨張が抑えられ、極端な強度低下が防止されることが明らかとなった。
【0051】
実施例1、2のコンクリートと、比較例1、2のコンクリートについて、JIS A1149に規定された方法に基づいて、材齢1週目、材齢4週目、材齢26週目の静弾性係数を測定した。結果を図8に示す。比較例1のコンクリートの材齢28日の静弾性係数は、40.4kN/mmであり、比較例2のコンクリートの材齢28日の静弾性係数は39.1kN/mmであった。一方、実施例1のコンクリートの材齢28日の静弾性係数は38.5kN/mmであり、実施例2のコンクリートの材齢28日の静弾性係数は40.2kN/mmであった。圧縮強度と異なり、膨張材の使用量が増加しても静弾性係数が低下する傾向は見られなかった。また、コンクリートの材齢182日の静弾性係数は、材齢28日の静弾性係数からさらに増加し、実施例2のコンクリートで、47.3kN/mmという高い値が認められた。
【0052】
短繊維として高強度鋼繊維を適用し、膨張材としてエトリンガイト系、石灰系膨張材、複合系のそれぞれの膨張材を適用した実施例8から13のコンクリートについて、材齢28日と材齢182日に静弾性係数を測定した。そして、膨張剤を適用しなかった比較例5のコンクリートとの比較を行い、コンクリートの静弾性係数に及ぼす膨張材の種類の影響を確認した。結果を図9に示す。図9に示すように、石灰系膨張材とエトリンガイト系膨張材を用いた実施例8から11のコンクリートは、膨張材を使用しない比較例5のコンクリートと同等の静弾性係数を有することが確認された。また複合系膨張材を用いた実施例12,13のコンクリートは、比較例5のコンクリートと比較すると、材齢28日の静弾性係数はほぼ同等であったが、材齢182日の静弾性係数は低下することが確認された。その原因は、実施例12,13の複合系膨張材の添加量が、最適量よりも多かったために、コンクリートの過度膨張が発生したことが推定される。
【0053】
コンクリートの長さ変化率に及ぼす膨張材の種類と使用量の影響を調べるために、実施例8から13のと比較例5のコンクリートを用いて、材齢182日までの長さ変化率を測定した。その結果を図10に示す。この図から、コンクリートの膨張率は、膨張材の種類によって異なり、同じ膨張材使用量の場合、複合系膨張材を用いたコンクリートの膨張率が比較的高いことが分かる。複合系膨張材80kg/mを用いた実施例13のコンクリートは、材齢182日での膨張率が1970×10-6に達しており、過度膨張が静弾性係数低下の一因であったと考えられる。
【0054】
本実施例の3次元プレストレストコンクリートは、万一ひび割れが発生した場合でも、ひび割れの自己治癒性を有している。この自己治癒性は、コンクリートのひび割れの発生後、ひび割れ箇所に未水和セメントおよび膨張材の水和によって生成される水和物が詰まることで得られる特性である。実施例8から13のコンクリートと、と比較例5のコンクリートについて、ひび割れの自己治癒特性を測定した結果を説明する。自己治癒特性は、材齢4週のコンクリートを、JIS 1113に規定される割裂試験を行ってひび割れを生じさせた後に、それぞれのコンクリートをバンドで拘束し、20℃の水中で2週間または4週間保管して、ひび割れからの透水速度を測定することで定量化した。そして、ひび割れからの透水速度がゼロになった時点で、コンクリートが自己治癒したと定義した。自己治癒特性試験の結果を図11に示す。膨張材を使用しない比較例5のコンクリートに比べて、実施例8から実施例13の膨張材を使用したコンクリートは、いずれもひび割れから水漏れが止まるまでの日数が短かった。特に、石灰系膨張材を使用した実施例8,9のコンクリートの水漏れが止まるまでの期間は、有意に短かった。すなわち、本発明のコンクリートの自己治癒性が高いことが確認された。
【0055】
コンクリートの流動性に及ぼすセメント種類の影響を調べるために、混練工程後の実施例1,2と実施例10、11のコンクリートのフロー値を測定し、比較例1、2、5のコンクリートと比較した。フロー値はJIS R5201に規定される測定方法に従って測定した。その結果を図12に示す。図12に示したとおり、本実施例の3次元プレストレストコンクリートは、比較例と同等の流動性を有していることが確認された。
【0056】
以上説明したとおり、本発明の3次元ケミカルプレストレストコンクリートは、補強材を配置することなく、コンクリート全体にプレストレスが導入されており、従来のコンクリートと比較すると、ひび割れが発生しにくいという特性を有している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-06-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、短繊維、膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤を含むコンクリートであって、
PC鋼材、鉄筋、もしくは連続繊維である内部拘束材及び外部拘束体のない状態で、1.20N/mm以上のケミカルプレストレスが導入されていることを特徴とするケミカルプレストレストコンクリートであって、
前記膨張材を2~5重量%含み、
且つ短繊維を、前記コンクリートの体積に対して1.0~2.5体積%となる割合で含んでいることを特徴とするケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項2】
前記混和材が、
エトリンガイト系膨張材、石灰系膨張材、および酸化マグネシウム系膨張材からなる群から選択される一種又は二種以上の膨張材と、
高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、およびシリカフュームからなる群から選択される一種又は二種以上の組成物と、
の両方を含んでいることを特徴とする請求項1記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項3】
前記短繊維が、高強度鋼繊維、フック形状端部付き鋼繊維、合成繊維、および炭素繊維からなる群から選択される一種又は二種以上の短繊維であることを特徴とする請求項1記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項4】
前記短繊維が、直径0.2mm以下、長さ22mm以上80mm以下、アスペクト比110以上400以下、引張強度2000N/mm以上の高強度鋼繊維であることを特徴とする請求項3記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項5】
前記セメントが、早強ポルトランドセメント又は普通ポルトランドセメントであることを特徴とする請求項1記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項6】
前記骨材は、
コンクリート用天然骨材、コンクリート用砕石、砕砂、高炉スラグ骨材、フェロニッケルスラグ骨材、銅スラグ骨材、および電気炉酸化スラグ骨材からなる群から選択される一以上の組成物であり、
圧縮強度が300N/mm以上、最大寸法5mm以下の高強度骨材であることを特徴とする請求項1記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項7】
前記混和剤が、コンクリート用化学混和剤であって、
高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE剤、および消泡剤からなる群から選択される一以上の組成物であることを特徴とする請求項1記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項8】
セメント5~40重量%、
混和材5~40重量%、
シリカフューム、高炉スラグ微粉末、及びフライアッシュから選択される一または二以上の組成物を5~40重量%含んでおり
単位水量(W)が175kg/m以下であり、且つ水結合材比(W/B)が25重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のケミカルプレストレストコンクリート。
【請求項9】
セメント、コンクリート体積に対して1.0~2.5体積%の繊維混入率となる量の短繊維、コンクリートの総重量に対して2~5重量%となる量の膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤からなる原料を混練する混練工程と、
前記原料を型枠に充填して硬化する初期養生工程と、
型枠を脱型してコンクリート部材を得る脱型工程と、
前記コンクリート部材を水で2週間以上湿潤養生する養生工程と、
を備えていることを特徴とするケミカルプレストレストコンクリートの製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、ケミカルプレストレストコンクリートに関する。本発明のケミカルプレストレストコンクリートは、セメント、短繊維、膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤を含むコンクリートである。本発明のケミカルプレストレストコンクリートは、PC鋼材、鉄筋、もしくは連続繊維補強材である内部拘束材も、外部拘束体もない状態で、1.20N/mm以上のケミカルプレストレスが導入されており、膨張材を2~5重量%含み、且つ短繊維を、コンクリートの体積に対して1.0~2.5体積%となる割合で含んでいることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明のケミカルプレストレストコンクリートの組成は、セメント5~40重量%、混和材5~40重量%、シリカフューム、高炉スラグ微粉末、及びフライアッシュから選択される一または二以上の組成物を5~40重量%含んでおり単位水量(W)が175kg/m以下であり、且つ水結合材比(W/B)が25重量%以下であることが好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明はまた、ケミカルプレストレストコンクリートの製造方法を提供する。本発明のケミカルプレストレストコンクリートは、セメント、コンクリート体積に対して1.0~2.5体積%の繊維混入率となる量の短繊維、コンクリートの総重量に対して2~5重量%となる量の膨張材を含む混和材、骨材、および混和剤からなる原料を混練する混練工程と、原料を型枠に充填して硬化する初期養生工程と、型枠を脱型してコンクリート部材を得る脱型工程と、コンクリート部材を水で2週間以上湿潤養生する養生工程と、を備えていることを特徴とする。