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特開2024-68244ホイールナットの緩み検出装置及び緩み検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068244
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ホイールナットの緩み検出装置及び緩み検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/24 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
G01L5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178541
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 和樹
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA01
2F051AB06
2F051BA03
(57)【要約】
【課題】車両に用いられている状態のホイールナットに発生する緩みを、定量的に検出する。
【解決手段】緩み検出装置10は、ハブボルト6と螺合するホイールナット7によって車軸3に締結されるホイール4及びタイヤ5を有する車両1について、ホイールナット7の緩みを検出する。緩み検出装置10は、ハブボルト6の軸方向について、センサ自身の基準位置とホイールナット7との距離L1を検出する距離センサ20と、車両1の車体2に対して距離センサ20を固定する支持ステー15と、距離センサ20が検出した距離L1に基づいて緩み量Xを算出する演算部51と、算出した緩み量Xの経時的変化を表示する表示部52と、を含む演算装置50と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブボルトと螺合するホイールナットによって車軸に締結されるホイール及びタイヤを有する車両について、前記ホイールナットの緩みを検出する緩み検出装置であって、
前記ハブボルトの軸方向について、基準位置と前記ホイールナットとの距離を検出する距離センサと、
前記車両の車体に対して前記距離センサを固定する支持ステーと、
前記距離センサが検出した前記距離に基づいて緩み量を算出する演算部と、算出した前記緩み量の経時的変化を表示する表示部と、を含む演算装置と、
を備える、ホイールナットの緩み検出装置。
【請求項2】
前記車両の走行速度を検出する速度センサと、
前記車両の加速度を検出する加速度センサと、をさらに備え、
前記演算部が、前記速度センサ及び前記加速度センサの検出値に基づいて前記車両の走行モードを特定し、
前記表示部が、算出した前記緩み量と前記走行モードとの関係を表示する、請求項1に記載のホイールナットの緩み検出装置。
【請求項3】
ハブボルトと螺合するホイールナットによって車軸に締結されるホイール及びタイヤを有する車両において、前記ホイールナットの緩み量を前記車両の走行中に測定する第1のステップと、
前記緩み量の経時的変化を提示する第2のステップと、を含む、
ホイールナットの緩み検出方法。
【請求項4】
前記車両の走行モードと前記緩み量との関係を提示する第3のステップをさらに含む、請求項3に記載のホイールナットの緩み検出方法。
【請求項5】
前記第1のステップにおいて、前記車両の車体に固定された非接触型の距離センサを用いて、前記ハブボルトの軸方向についての基準位置から前記ホイールナットまでの距離を測定し、測定した前記距離に基づいて前記ホイールナットの緩み量を算出する、請求項3又は請求項4に記載のホイールナットの緩み検出方法。
【請求項6】
前記車両が有する車軸の本数が3本又は4本である場合において、
前記第1のステップにおいて、前記車両の後方側から2軸目の前記車軸に設置される前記タイヤについて前記ホイールナットの緩み量を測定する、請求項3又は請求項4に記載のホイールナットの緩み検出方法。
【請求項7】
前記車両の左側の前記タイヤにおける前記ホイールナットの緩み量を測定する、請求項6に記載のホイールナットの緩み検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールナットの緩み検出装置及び緩み検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック・バス等の大型車両について、日常実施すべき点検項目の一つに、ホイールナットの緩みの確認がある。このため従来、ホイールナットの緩みを検知する方法が、従来種々提案されており、例えば、特許文献1に示す技術が知られている。特許文献1に開示された技術では、ホイールナット及びハブボルトに対して、歪みセンサを含む装置を装着し、歪みセンサの検出値に基づいて、ホイールナットの緩みを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-188769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールナットの緩みを検出するための前記従来の手法では、ホイールナットやハブボルトに対して、何らかの別部材(装置、治具等)を装着することで、緩みの検出を実現している。つまり、前記従来の手法では、車両に用いられている状態そのままのホイールナットについては、緩みを検出することができなかった。また、前記従来の手法では、ホイールナットが緩んだか否かを検出することができるにとどまり、ホイールナットの緩みを定量的に検出することはできなかった。
【0005】
本発明は、車両に用いられている状態のホイールナットに発生する緩みを、定量的に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係るホイールナットの緩み検出装置は、ハブボルトと螺合するホイールナットによって車軸に締結されるホイール及びタイヤを有する車両について、前記ホイールナットの緩みを検出する緩み検出装置であって、前記ハブボルトの軸方向について、基準位置と前記ホイールナットとの距離を検出する距離センサと、前記車両の車体に対して前記距離センサを固定する支持ステーと、前記距離センサが検出した前記距離に基づいて緩み量を算出する演算部と、算出した前記緩み量の経時的変化を表示する表示部と、を含む演算装置と、を備える。
【0007】
上記構成のホイールナットの緩み検出装置によれば、車両に用いられている状態のホイールナットに発生する緩みを、定量的に検出することができる。
【0008】
(2)本発明の前記(1)の態様のホイールナットの緩み検出装置は、前記車両の走行速度を検出する速度センサと、前記車両の加速度を検出する加速度センサと、をさらに備え、前記演算部が、前記速度センサ及び前記加速度センサの検出値に基づいて前記車両の走行モードを特定し、前記表示部が、算出した前記緩み量と前記走行モードとの関係を表示すると好ましい。
上記構成のホイールナットの緩み検出装置によれば、車両に用いられている状態のホイールナットについて、緩み量と走行モードとの関係を把握することができる。
【0009】
(3)本発明に係るホイールナットの緩み検出方法は、ハブボルトと螺合するホイールナットによって車軸に締結されるホイール及びタイヤを有する車両において、前記ホイールナットの緩み量を前記車両の走行中に測定する第1のステップと、前記緩み量の経時的変化を提示する第2のステップと、を含む。
上記構成のホイールナットの緩み検出方法によれば、車両に用いられている状態のホイールナットに発生する緩みを、定量的に検出することができる。
【0010】
(4)本発明の前記(3)の態様のホイールナットの緩み検出方法は、前記車両の走行モードと前記緩み量との関係を提示する第3のステップをさらに含むと好ましい。
上記構成のホイールナットの緩み検出方法によれば、車両に用いられている状態のホイールナットについて、緩み量と走行モードとの関係を把握することができる。
【0011】
(5)本発明の前記(3)又は(4)の態様のホイールナットの緩み検出方法は、前記第1のステップにおいて、前記車両の車体に固定された非接触型の距離センサを用いて前記ホイールナットまでの距離を測定し、測定した前記距離に基づいて前記ホイールナットの緩み量を算出すると好ましい。
上記構成のホイールナットの緩み検出方法によれば、車両に用いられている状態のホイールナットの緩み量を精度よく検出することができる。
【0012】
(6)本発明の前記(3)~(5)の何れか1つの態様のホイールナットの緩み検出方法は、前記車両が有する車軸の本数が3本又は4本である場合において、
前記第1のステップにおいて、前記車両の後方側から2軸目の前記車軸に設置される前記タイヤについて前記ホイールナットの緩み量を測定すると好ましい。
上記構成のホイールナットの緩み検出方法によれば、緩みが生じやすい部分のホイールナットについて、緩みを検出することができる。
【0013】
(7)本発明の前記(6)の態様のホイールナットの緩み検出方法は、前記車両の左側の前記タイヤにおける前記ホイールナットの緩み量を測定すると好ましい。
上記構成のホイールナットの緩み検出方法によれば、緩みが生じやすい部分のホイールナットについて、緩みを検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両に用いられている状態のホイールナットに発生する緩みを、定量的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】車両を示す概略的な斜視模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るホイールナットの緩み検出装置の設置状況を示す模式図である。
図3】ホイールナットに対する距離センサの配置を車両の後方側から見た場合の模式図である。
図4】ホイールナットに対する距離センサの配置を車両の上方側から見た場合の模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係るホイールナットの緩み検出装置のブロック図である。
図6】本発明の一実施形態に係るホイールナットの緩み検出方法を示すフロー図である。
図7】緩み量の経時的変化を示すグラフである。
図8】緩み量と走行モードとの相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0017】
[車両の全体構成]
図1は、車両を示す概略的な斜視模式図である。図2は、本発明の一実施形態に係るホイールナットの緩み検出装置の設置状況を示す模式図である。図3は、ホイールナットに対する距離センサの配置を車両の後方側から見た場合の模式図である。図4は、ホイールナットに対する距離センサの配置を車両の上方側から見た場合の模式図である。図1には、本発明に係るホイールナットの緩み検出装置及び緩み検出方法の適用対象となる車両の一例である車両1を示している。図1に示すように、本実施形態で例示する車両1は、いわゆる大型トラックである。車両1は、車体2、車軸3、ホイール4、及びタイヤ5を備える。車両1は、運転手の運転操作(ハンドル、アクセル、ブレーキの各操作)により、走行速度及び走行方向を調整しつつ走行される。車両1は、図示されないエンジンの駆動力によって少なくとも一つの車軸3が回転駆動されることで走行し、ホイール4及びタイヤ5が回転する。なお、本説明では、図1の各矢印に示すように、車両1の走行方向の前方及び後方を基準として車両1の前後方向を規定し、車両1の走行方向の左方及び右方を基準として車両1の左右方向(幅方向とも称する)を規定する。車両1の上下方向は、前後方向及び左右方向に直交する方向であり、走行面(地面)側が車両1の下方である。
【0018】
図2に示すように、車両1は、左右方向に延びる車軸3の左右端部に設けられたハブ(図示せず)から車体2の幅方向外側に突設される複数のハブボルト6と、各ハブボルト6に螺合するホイールナット7と、をさらに備える。ホイール4及びタイヤ5は、ハブボルト6と螺合するホイールナット7によって、前記ハブに締結されている。なお、本説明で例示する車両1では、1つのホイール4について、ハブボルト6及びホイールナット7を周方向に等間隔で10個設けている。
【0019】
なお、本実施形態では、本発明の適用対象たる車両として、車軸3の本数が3本である車両(トラック)1を例示しているが、本発明の適用対象たる車両はこれに限定されず、例えば、車軸3の本数が4本以上のトラック及びバスや、車軸3の本数が2本の車両であってもよい。
【0020】
[緩み検出装置の構成]
図5は、本発明の一実施形態に係るホイールナットの緩み検出装置のブロック図である。図1図2及び図5には、本発明の一実施形態に係るホイールナットの緩み検出装置の一例である緩み検出装置10を示している。緩み検出装置10は、車両1のホイールナット7に生じる緩みを検出する装置であり、ホイールナット7の緩みを緩み量Xとして定量的に検出する。なお、本説明でいう「緩み量」は、ハブボルト6に対するホイールナット7の螺合位置が変わって変位した場合の、ハブボルト6の軸方向におけるホイールナット7の変位量である。なお、ホイールナット7を所定トルク以上の締付トルクで締め付けて、ホイール4及びタイヤ5が前記ハブの所定位置に締結されている場合、ホイールナット7の緩み量Xは「0」である。
【0021】
図1図2及び図5に示すように、緩み検出装置10は、支持ステー15、距離センサ20、速度センサ30、加速度センサ40、及び演算装置50を備える。
【0022】
支持ステー15は、距離センサ20を車体2に固定するための支持部材である。支持ステー15は、距離センサ20とホイール4との距離を一定に保持しつつ、距離センサ20を車体2より支持する。なお、支持ステー15は、車体2の振動が距離センサ20に伝達されるのを抑制するための減衰機構(図示せず)を含んでいてもよい。
【0023】
距離センサ20は、距離センサ20自身が有する基準位置と対象物との間の距離を検出するセンサである。本実施形態で示す距離センサ20は、いわゆるレーザ変位計であり、距離センサ20から対象物に向けてレーザ光を照射する。なお、距離センサ20は、非接触で距離を検出するセンサを採用することが好ましく、例えば、本実施形態のようなレーザ変位計や、超音波変位計であると好ましい。なお、距離センサ20は、接触式の距離センサであってもよい。
【0024】
速度センサ30は、車両1の走行速度を検出するセンサである。なお、車両1が、外部に速度を出力可能な速度計を有する場合は、速度センサ30を省略してもよい。この場合、車両1が有する前記速度計を演算装置50と接続し、前記速度計により検出する速度を演算装置50に出力する。
【0025】
加速度センサ40は、車両1の走行時における加速度を検出するセンサである。加速度センサ40は、車両1の前後方向、左右方向、及び上下方向における加速度を検出する。なお、加速度センサ40は、ジャイロセンサと組み合わせて用いてもよい。
【0026】
演算装置50は、緩み量Xの算出、及び車両1の走行モードMの特定に必要な演算を実行可能な装置である。演算装置50は、距離センサ20、速度センサ30、及び加速度センサ40が接続されると共に、各センサ20,30,40の検出値が入力される。演算装置50は、距離センサ20の検出値から緩み量Xを算出するためのプログラムや、速度センサ30及び加速度センサ40の検出値から車両1の走行モードMを特定するためのプログラムがインストールされたパーソナルコンピュータ等により構成される。なお、距離センサ20、速度センサ30、加速度センサ40、及び演算装置50は、図示されないケーブルによって適宜接続された状態で、車両1が有するキャビン、荷台等に設置される。
【0027】
演算装置50は、距離センサ20の検出値に基づいて、ホイールナット7の緩み量Xを算出し、速度センサ30の検出値に基づいて、車両1の走行距離を算出する。
【0028】
演算装置50は、加速度センサ40の検出値に基づいて、車両1の走行モードMを特定する。車両1の走行モードMには、車両1を一定速度で走行させるモードである「定速モードM1」、左右へのハンドル操作を繰り返しながら車両1を走行させる(蛇行させる)モードである「蛇行モードM2」、車両1を加速させるモードである「加速モードM3」、及び車両1を減速させるモードである「減速モードM4」が含まれる。
【0029】
[距離センサの設置状況]
図2図4に示すように、距離センサ20は、当該距離センサ20から照射するレーザ光がホイールナット7の頭頂面8にあたるように設置される。なお、本実施形態では、図3及び図4に示すように、距離センサ20のレーザ照射方向とハブボルト6の軸方向とが平行となるように距離センサ20を配置しているが、距離センサ20のレーザ照射方向とハブボルト6の軸方向とは必ずしも平行でなくてもよい。緩み検出装置10は、前後方向から見た場合の距離センサ20のレーザ照射方向とハブボルト6の軸方向とが成す角度、及び上下方向から見た場合の距離センサ20のレーザ照射方向とハブボルト6の軸方向とが成す角度が、いずれも±10°以下であると好ましい。
【0030】
図1及び図2に示すように、本実施形態では、3本の車軸3を有する車両1において、後方側から2本目の車軸3に対して距離センサ20を配置している。また、本実施形態では、車両1の左側に距離センサ20を配置している。3本又は4本の車軸3を有する大型車両では、後方から2本目の車軸3に配置されたホイールナット7に緩みが生じる例が多い。このため、本実施形態のように、車両1において、後方側から2本目の車軸3に対して距離センサ20を配置することによって、緩みが生じやすい部分のホイールナット7に発生する緩みを、効果的に検出することができる。また、車両1が走行する道路が左側通行である場合には、左折時及び右折時の旋回半径の差異に起因して、車両1の左側に位置するホイールナット7に緩みが生じる例が多い。このため、本実施形態のように、車両1の左側に距離センサ20を配置することによって、緩みが生じやすい部分のホイールナット7に発生する緩みを、効果的に検出することができる。
【0031】
[緩み検出方法]
図6は、本発明の一実施形態に係るホイールナットの緩み検出方法を示すフロー図である。以下、図6に基づいて、本発明の一実施形態に係るホイールナットの緩み検出方法を説明する。なお、本実施形態では、本発明に係るホイールナットの緩み検出方法の一例として、先に説明した緩み検出装置10を用いた場合の緩み検出方法を説明する。
【0032】
(緩みを検出する前の準備)
緩み検出装置10を用いた緩み検出方法では、緩みを検出する前の時点で、距離センサ20を支持ステー15で車体2に固定して準備しておく(図1及び図2参照)。また、緩み検出装置10を用いた緩み検出方法では、緩みを検出する前の時点で、緩みの検出対象たるホイールナット7のハブボルト6に対する締付トルクを、トルクレンチ等を用いて「0N」に調整しておく。なお、このときのホイールナット7の緩み量Xは、「0」である。
【0033】
(第1ステップ)
図6に示すように、本実施形態の緩み検出方法において、演算装置50は、まず第1ステップ(ST01)を実行する。第1ステップ(ST01)において、演算装置50は、車両1の走行中にホイールナット7の緩み量Xを測定する。演算装置50は、緩み量Xの測定結果を記憶部53に記憶する。なお、演算装置50は、車両1の走行時間を検知すると共に走行距離を算出し、これらを緩み量Xに関連付けて記憶部53に記憶する。
【0034】
本実施形態の緩み検出方法では、後で説明する第2ステップ(ST02)を実行する場合、車両1を所定の速度で連続運転して、走行中のホイールナット7の緩み量Xを測定する。本実施形態の緩み検出方法では、後で説明する第3ステップ(ST03)を実行する場合、車両1を連続運転すると共に、走行中に走行モードM(前記M1~M4)を変更して、各走行モードM1~M4での走行中にホイールナット7の緩み量Xを測定する。
【0035】
(第1ステップで行う測定内容について)
図2及び図3のように配置された距離センサ20は、車両1が走行した場合、ホイールナット7までの距離L1と、ホイール4までの距離L2とを交互に検出する。なお、この場合の距離L1と距離L2との関係は、常にL2>L1となる。演算装置50は、距離センサ20から入力される検出値から、それが距離L1に該当するか、又は距離L2に該当するかを区別する。
【0036】
本実施形態に示す車両1では、ホイールナット7及びハブボルト6を、周方向について等間隔で10個設けている。この場合、演算装置50は、時系列的に隣り合う10回分の距離L1の検出値を一区切りとして、各検出値を10個のホイールナット7に順番に振り分けていき、ホイールナット7ごとに距離L1の検出値を累積していく。なお、距離L1の検出値は、必ずしも10個のホイールナット7を区別して距離L1の検出値を累積していく必要はなく、例えば、時系列的に隣り合う10回分の距離L1の検出値を平均し、その平均値をその時点におけるホイールナット7の距離L1として扱って、緩み量Xを全ホイールナット7の平均値として算出してもよい。
【0037】
演算装置50は、緩み量Xが「0」である測定開始前の段階で距離L1を測定しておき、このときの距離L1の検出値を、初期値L0として記憶部53に記憶する。演算部51は、距離センサ20の検出値(距離L1)から初期値L0を減算して、ホイールナット7の緩み量Xを算出する(X=L1-L0)。なお、演算装置50には、緩み量Xの許容値Xhが設定されていると好ましい。演算装置50は、算出した緩み量Xが許容値Xhに達した場合、警報等を発して緩み量Xの計測を終了すると好ましい。そして、本実施形態の緩み検出方法では、後で説明する第2ステップ(ST02)を実行する場合、算出した緩み量Xが許容値Xhに達するまで車両1を所定の速度で連続運転して、走行中のホイールナット7の緩み量Xを測定すると好ましい。
【0038】
(第2ステップ)
本実施形態の緩み検出方法において、演算装置50は、次に第2ステップ(ST02)を実行する。第2ステップ(ST02)では、演算装置50の表示部52によって、測定した緩み量Xの経時的変化を表示する。
本実施形態の緩み検出方法では、緩み量Xの経時的変化を、車両1の走行距離と緩み量Xとの関係として表示する。なお、本実施形態の緩み検出方法では、緩み量Xの経時的変化を、車両1の走行時間と緩み量Xとの関係として表示してもよい。
【0039】
(第2ステップの表示内容について)
図7は、緩み量の経時的変化を示すグラフである。図7に示すように、演算装置50は、表示部52によって、算出した緩み量Xと走行距離との関係を表示する。本実施形態における表示部52は、ディスプレイ装置であり、緩み量Xと車両1の走行距離との関係を示すグラフを表示する。なお、表示部52は、プリンタ等であってもよく、紙媒体に前記グラフを印刷して表示してもよい。
【0040】
図7に示すグラフから判るように、車両1の走行距離と緩み量Xとの相関関係は、車両1ごとに異なる傾向を示す。換言すると、図7に示すように、第1の車両と第2の車両では、走行距離と緩み量Xとの相関関係が相違している。このため、ユーザは、車両1ごとに緩み量Xの測定を行い、車両1ごとに走行距離と緩み量Xとの相関関係を知得しておくと好ましい。この場合、車両1ごとにホイールナット7の緩みの進行速度の目安を把握することができ、これにより、車両1のメンテナンス計画(ホイールナット7の点検・増し締め等の時期)を車両1ごとに合理的に立案することが可能となる。
【0041】
(第3ステップ)
本実施形態の緩み検出方法において、演算装置50は、次に第3ステップ(ST03)を実行する。第3ステップ(ST03)において、演算装置50は、緩み量Xと車両1の走行モードMとの関係を表示する。本実施形態の緩み検出方法では、所定時間の間、車両10を連続走行させる(走行時間を増大させる)と共に、走行中に車両1の走行モードM(前記M1~M4)を変更し、各走行モードM1~M4において緩み量Xを測定する。演算装置10は、速度センサ30及び加速度センサ40の検出値から、各時点における車両1の走行モードMを特定する。演算装置50は、走行モードMの特定結果を、走行時間又は走行距離と関連付けた状態で記憶部53に記憶させる。本実施形態の緩み検出方法において、表示部52は、緩み量Xと走行モードM(M1~M4)との関係を表示する。なお、本実施形態の緩み検出方法では、ステップ(ST03)は省略してもよい。
【0042】
(第3ステップの表示内容について)
図8は、緩み量と走行モードとの相関関係を示すグラフである。図8に示すように、演算装置50は、表示部52によって、緩み量Xと走行モードMとの相関関係を表すグラフを表示する。
【0043】
図8に示すグラフから判るように、車両1においては、走行モードMの違いによって、緩みの進行度合い(緩み量Xの増加速度)に差異が生じる。このため、ユーザは、車両1において種々の走行モードMにおける緩み量Xの測定を行い、緩み量Xと走行モードMとの相関関係を知得しておくと好ましい。この場合、複数の各車両1について、どの走行モードMで走行した場合に、ホイールナット7に緩みが生じやすいのかを車両1ごとに把握することができる。そして、この相関関係を利用すれば、例えば、蛇行モードM2においてホイールナット7に緩みが生じやすい車両1については、山道(蛇行が多い道)を走行した場合には、その後速やかにホイールナット7の増し締めをする等、当該車両1が有する個別の特性に合わせて、ホイールナット7のメンテナンス計画を合理的に立案することが可能となる。
【0044】
以上により、本実施形態の緩み検出方法の一連の手順を完了する。なお、本実施形態では、第1ステップ(ST01)、第2ステップ(ST02)、及び第3ステップ(ST03)を一連で実行する場合を例示したが、本実施形態の緩み検出方法では、第1ステップ(ST01)のみを実行してもよく、あるいは、第1ステップ(ST01)及び第2ステップ(ST02)を実行してもよく、さらに、第1ステップ(ST01)及び第3ステップ(ST03)を実行してもよい。
【0045】
[各実施形態の作用効果]
(1)本実施形態のホイールナットの緩み検出装置10は、ハブボルト6と螺合するホイールナット7によって車軸3に締結されるホイール4及びタイヤ5を有する車両1について、ホイールナット7の緩みを検出する。緩み検出装置10は、ハブボルト6の軸方向について、センサ自身の基準位置とホイールナット7との距離L1を検出する距離センサ20と、車両1の車体2に対して距離センサ20を固定する支持ステー15と、距離センサ20が検出した距離L1に基づいて緩み量Xを算出する演算部51と、算出した緩み量Xの経時的変化(例えば、緩み量Xと車両1の走行時間との関係、図7参照)を表示する表示部52と、を含む演算装置50と、を備える。
上記構成の緩み検出装置10によれば、車両1に用いられている状態のホイールナット7に発生する緩み(緩み量X)を、定量的に検出することができる。
【0046】
(2)本実施形態の緩み検出装置10は、車両1の走行速度を検出する速度センサ30と、車両1の加速度を検出する加速度センサ40と、をさらに備える。緩み検出装置10は、演算部51が、速度センサ30及び加速度センサ40の検出値に基づいて車両1の走行モードM(M1~M4)を特定する。緩み検出装置10は、表示部52が、算出した緩み量Xと走行モードM(M1~M4)との関係を表示する。
上記構成の緩み検出装置10によれば、車両1に用いられている状態のホイールナット7について、緩み量Xと走行モードMとの関係を把握することができる。
【0047】
(3)本実施形態のホイールナットの緩み検出方法は、ハブボルト6と螺合するホイールナット7によって車軸3に締結されるホイール4及びタイヤ5を有する車両1において、ホイールナット7の緩み量Xを車両1の走行中に測定する第1のステップ(ST01)と、緩み量Xの経時的変化(走行距離と緩み量Xとの相関関係)を提示する第2のステップ(ST02)と、を含んでいる。
上記構成のホイールナットの緩み検出方法によれば、車両1に用いられている状態のホイールナット7に発生する緩みを、緩み量Xとして定量的に検出することができる。
【0048】
(4)本実施形態のホイールナットの緩み検出方法は、車両1の走行モードM(M1~M4)と緩み量Xとの関係を提示する第3のステップ(ST03)をさらに含んでいる。
上記構成のホイールナットの緩み検出方法によれば、車両1に用いられている状態のホイールナット7について、緩みと走行モードMとの関係を把握することができる。
【0049】
(5)本実施形態のホイールナットの緩み検出方法は、第1のステップ(ST01)において、車両1の車体2に固定された非接触型の距離センサ20を用いて、ハブボルト6の軸方向についての基準位置からホイールナット7までの距離L1を計測し、計測した距離L1に基づいてホイールナット7の緩み量Xを算出する。
本実施形態のホイールナットの緩み検出方法によれば、車両1に用いられている状態のホイールナット7に発生する緩みを、精度よく検出することができる。
【0050】
(6)本実施形態のホイールナットの緩み検出方法は、車両1が有する車軸3の本数が3本又は4本である場合において、第1のステップ(ST01)において、車両1の後方側から2軸目の車軸3に設置されるタイヤ5についてホイールナット7の緩み量を測定する。
上記構成の緩み検出方法によれば、緩みが生じやすい部分のホイールナット7に発生する緩みを、緩み量として定量的に検出することができる。
【0051】
(7)本実施形態の緩み検出方法は、車両1の左側のタイヤ5におけるホイールナット7の緩み量を測定する。
上記構成の緩み検出方法によれば、緩みが生じやすい部分のホイールナット7に発生する緩みを、緩み量として定量的に検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明されたホイールナットの緩み検出装置及び緩み検出方法は、大型のトラック・バスに適用するだけでなく、比較的小型のトラック・バスや普通乗用車についても、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1:車両
2:車体
3:車軸
4:ホイール
5:タイヤ
6:ハブボルト
7:ホイールナット
10:緩み検出装置
15:支持ステー
20:演算装置
21:演算部
22:記憶部
23:表示部
30:距離センサ
40:速度センサ
50:加速度センサ
M:走行モード
X:緩み量
L1:距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8