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  • 特開-RFIDタグ 図1
  • 特開-RFIDタグ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068250
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】RFIDタグ
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20240513BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20240513BHJP
   H01Q 9/04 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
G06K19/077 248
G06K19/077 144
G06K19/077 252
H01Q1/22 Z
H01Q9/04
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178548
(22)【出願日】2022-11-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-09
(71)【出願人】
【識別番号】000230216
【氏名又は名称】日本ミクロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 隆次
(72)【発明者】
【氏名】野田 達郎
【テーマコード(参考)】
5J047
【Fターム(参考)】
5J047AA02
5J047AA03
5J047AA07
5J047EF00
(57)【要約】
【課題】小型でも無線通信性能が高く、高信頼性を有する金属対応RFIDタグを提供する。
【解決手段】RFIDタグチップ14と、外部とのデータの送受信に用いるアンテナ回路16と、が多層プリント配線板12に配置されるとともに、多層プリント配線板12が一体的に樹脂封止され、アンテナ回路16は、RFIDリーダーライター装置から送信された電波が金属体30に衝突することで発生する表面波を取り込む第一のアンテナ回路16aと、第一のアンテナ回路16aによって取り込まれた表面波のうち、特定の周波数の電波のみを抽出して共振させる第二のアンテナ回路16b及び第三のアンテナ回路16cと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属体に取り付けられて用いるRFIDタグであって、
RFIDタグチップと、外部とのデータの送受信に用いるアンテナ回路と、が多層プリント配線板に配置されるとともに、前記多層プリント配線板が一体的に樹脂封止され、
前記アンテナ回路は、RFIDリーダーライター装置から送信された電波が前記金属体に衝突することで発生する表面波を取り込む第一のアンテナ回路と、前記第一のアンテナ回路によって取り込まれた前記表面波のうち、特定の周波数の電波のみを抽出して共振させる第二のアンテナ回路及び第三のアンテナ回路と、を備えることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記RFIDタグチップと、前記第一のアンテナ回路と、前記第二のアンテナ回路は、前記多層プリント配線板の内部に配置され、
前記第三のアンテナ回路は、前記多層プリント配線板の表層に配置されていることを特徴とする請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記金属体に発生する表面波を収集し、共振させ利用することで、金属体が無い場合よりも良好な通信利得を得ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記金属体の表面に、接着剤、ビス、ボルト、粘着テープ、又は半田で取り付けられることを特徴とする請求項1又は2記載のRFIDタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属対応RFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(radio frequency identifier)タグを使用した部材管理への要望が高まり、市場として急速な伸びを見せている。アパレル業界などでは、棚卸作業をRFIDタグで簡易化し、人手不足への対応を進める動きが活発になってきており、今後ますます需要が伸びていくと見られている。
また、従来のRFIDタグでは対応できなかった、金属製品へ取り付けても動作可能な金属対応タイプ、小さな対象物への埋め込みが可能な超小型タイプ、長距離通信への要求に対応したタイプなど、更なる高機能化への要望も高い。
【0003】
しかし、RFIDタグにおいては、製品サイズを小型化するとアンテナサイズも同時に小さくなってしまうため、小型化と通信性能の両立が困難である。
また、一般的なラベルやテープタイプのRFIDタグは、構造が単純であり安価で製造できるが、取り付け対象が金属体である場合、金属体による電波の反射及び/又は吸収の影響を受けて通信できなくなってしまうため、利用環境が限られている。
さらに、耐衝撃性や対湿度性など、製品信頼性に不安があるといった点も利用上の課題となっている。
【0004】
バッテリーを搭載することで通信性能を向上させたアクティブタイプのRFIDタグも存在するが、一般的なパッシブタイプのRFIDタグに比べ、製品単価が高額であり多量に使用する場合にはコストが問題となる。また、バッテリー交換が必要なため、交換作業の可能な場所にしか設置できない、交換コストがかかる、バッテリーがあるため製品全体のサイズが小型・軽量化できず取り付け場所が限定されてしまう、といった制限もある。
【0005】
前記問題点の改善策として、タグアンテナに隣接した無給電素子を設けることで、金属体と非金属体のどちらに取り付けても利用可能なアンテナ装置及びRFIDタグのようなものが知られている(例えば、特許文献1:特開2017-092536号公報)。
また、2種類のループアンテナ構造を持たせることで、金属体に取り付けた場合でも、通信利得の良好なRFIDタグのようなものが知られている(例えば、特許文献2:特許6079932号公報)。
また、RFIDタグを金属面に対して垂直に設置することで、金属面上でも通信可能な小型の金属対応RFIDタグが知られている(例えば、特許文献3:特許4796180号公報)。
また、RFIDチップとアンテナを有するインレットを金属ホルダー内に埋設することで、金属体に取り付けても利用できる金属一体型RFIDタグのようなものが知られている(例えば、特許文献4:特許4271205号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-092536号公報
【特許文献2】特許6079932号公報
【特許文献3】特許4796180号公報
【特許文献4】特許4271205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1の技術では、アンテナ素子の長手方向に隣接して無給電素子を設けるため製品サイズが大きくなり、取り付け対象が小型の場合に取り付けが困難になるといった課題がある。
【0008】
上記特許文献2の技術では、RFIDタグを取り付ける金属体を放射体又は放射素子として機能させるため、タグを金属体の端付近に取り付ける必要があり、また、機能を発揮するためには金属体のサイズを半波長の整数倍にする必要がある、といった利用上の制限ができてしまう。
【0009】
上記特許文献3の技術では、RFIDタグのループアンテナを金属面に垂直に立てる必要があるため、人が触れる工具のように、表面に凸部ができることを嫌う環境では利用できない。
また、製品の取り付け面積が小さくなると脱落のリスクが高くなるため、水平面方向の製品サイズの小型化に制限を受けるといった課題がある。
【0010】
上記特許文献4の技術では、RFIDタグ本体部を埋め込む金属ホルダーサイズを半波長共振の寸法とする必要があるため、小型化が困難となるといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために発明者らが鋭意研究した結果、金属体に取り付けられたRFIDタグに対してRFIDリーダーライター装置から電波を送信すると、金属体への電波の反射・干渉が発生する一方、金属体の表面に表面波が発生し、その表面波のうち特定の周波数の電波を共振させ利用することで、良好な通信利得が得られることを見出した。
【0012】
そこで、本発明は、小型でも無線通信性能が高く、高信頼性を有する金属対応RFIDタグの提供を目的とする。
【0013】
本発明にかかるRFIDタグによれば、金属体に取り付けられて用いるRFIDタグであって、RFIDタグチップと、外部とのデータの送受信に用いるアンテナ回路と、が多層プリント配線板に配置されるとともに、前記多層プリント配線板が一体的に樹脂封止され、前記アンテナ回路は、RFIDリーダーライター装置から送信された電波が前記金属体に衝突することで発生する表面波を取り込む第一のアンテナ回路と、前記第一のアンテナ回路によって取り込まれた前記表面波のうち、特定の周波数の電波のみを抽出して共振させる第二のアンテナ回路及び第三のアンテナ回路と、を備えることを特徴としている。
この構成によれば、金属体に発生する表面波を収集し、共振させ利用することで金属体が無い場合よりも良好な通信利得を得ることができる。
また、多層プリント配線板を一体的に樹脂封止したことで密閉構造となり、水分やほこりの侵入を防ぎ信頼性を高めることができる。
【0014】
また、前記RFIDタグチップと、前記第一のアンテナ回路と、前記第二のアンテナ回路は、前記多層プリント配線板の内部に配置され、前記第三のアンテナ回路は、前記多層プリント配線板の表層に配置されていることを特徴としてもよい。
このように、多層プリント配線板内にRFIDタグチップとアンテナ回路を立体的に配置したことで小型化を図るとともに、多層プリント配線板の表層にアンテナ面積を確保することができ、通信性能を向上させることができる。
【0015】
また、前記金属体の表面に、接着剤、ビス、ボルト、粘着テープ、又は半田で取り付けられることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、小型でも無線通信性能が高く、高信頼性を有する金属対応RFIDタグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】RFIDタグの実施形態を示す断面図である。
図2】RFIDタグを金属体及び非金属体に取り付けた場合の通信評価結果を示す図である。
図3】粘着テープによってRFIDタグを金属体に取り付けた状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本実施形態におけるRFIDタグについて説明する。なお、本発明のRFIDタグは下記の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1に本実施形態におけるRFIDタグ10の断面図を示す。なお、図1のRFIDタグ10は、取り付け対象である金属体30の表面に取り付けられている状態である。
RFIDタグ10は、多層プリント配線板12と、多層プリント配線板12に内蔵されたRFIDタグチップ14と、多層プリント配線板12の内層に形成されたアンテナ回路16と、を具備する。
【0020】
多層プリント配線板12には、金属体30に面する第一のアンテナ回路16aと、第一のアンテナ回路16aの上方に離間して位置する第二のアンテナ回路16bと、第二のアンテナ回路16bに配置されるRFIDタグチップ14と、が立体的に配置されている。
なお、RFIDタグ10の表面及び裏面には、防錆や表面保護のために、ソルダーレジスト層を形成してもよいし、めっき処理や防錆処理を施してもよい。
【0021】
表面実装製品のような平面的な部品配置では、部品間の配線が冗長になりやすいが、本発明のように多層プリント配線板によるRFIDタグでは、多層板の層間を利用して配線長を短くすることができるため、配線抵抗による電力ロスを低減することができる。これにより、RFIDタグ10の小型化と通信性能の維持が可能となる。
【0022】
ここで、RFIDタグ10のデータ通信原理について説明する。
RFIDタグ10の識別データを読み書きするために、RFIDリーダーライター装置(不図示)から、RFIDタグ10へ電波が送信されると、RFIDタグ10が取り付けられた金属体30によって電波は反射、干渉が生じる。その際、電波が衝突した金属体30の表面には表面波が発生し、当該表面波は、誘電的作用により第一のアンテナ回路16aへと収集される。第一のアンテナ回路16aによって収集された表面波は、スルーホール18を介して第二のアンテナ回路16b及び第三のアンテナ回路16cへ送り出され、特定の周波数の電波が共振し利用される。共振し増幅された特定の周波数の電波は、RFIDタグチップ14へ送り込まれる。電波を受信したRFIDタグチップ14は、RFIDタグチップ14内に格納されたデータを電波に乗せて第二のアンテナ回路16b及び第三のアンテナ回路16cからRFIDリーダーライター装置へ返信し、RFIDリーダーライターが返信された電波を受信することで、データ通信が完了する。
すなわち、第一のアンテナ回路16aは、金属体30で発生した表面波を取り込むためのアンテナ回路であり、第二のアンテナ回路16b及び第三のアンテナ回路16cは、第一のアンテナ回路16aによって収集された電波を特定の周波数で共振させてRFIDタグチップ14へ送り出すとともに、RFIDタグチップ内のデータを乗せた電波を発信するためのアンテナ回路である。
【0023】
また、RFIDタグ10は、金属体30をRFIDリーダーライター装置から送信される電波を収集するアンテナ回路であるかのように利用しているため、取り付け対象が非金属体である場合よりも通信利得が上がる。
図2に、複数種類の本実施形態のRFIDタグに対して、取り付け対象が金属体である場合と、取り付け対象が非金属体である場合について、通信距離がどの程度変化したかの比率を示す。
RFIDタグSは、取り付け対象が非金属体である場合の通信距離を1.0とした場合、取り付け対象が金属体である場合は通信距離が2.5倍となった。
RFIDタグMは、取り付け対象が非金属体である場合の通信距離を1.0とした場合、取り付け対象が金属体である場合は通信距離が約2.6倍となった。
RFIDタグMは、取り付け対象が非金属体である場合の通信距離を1.0とした場合、取り付け対象が金属体である場合は通信距離が約3.5倍となった。
このように、本発明のRFIDタグ10の取り付け対象が金属体である場合の通信距離は、非金属体である場合の2倍以上に向上することが確認されている。
【0024】
さらに、RFIDタグチップ14を多層プリント配線板12に内蔵する構成としたことで、多層プリント配線板12の表層に形成する第三のアンテナ回路16cの面積を確保することができる。また、スルーホール18を介して第三のアンテナ回路16c、第二のアンテナ回路16b、第一のアンテナ回路16aは電気的に接続されている。これにより、アンテナを多層間で折り込むような構造とすることで製品の小型化を図りつつ、アンテナ面積を確保し、通信性能をより向上させることできる。
なお、スルーホール18の端部にはランド20が形成されているが、ランド20が金属体30と電気的に接触する必要は無く、表面保護のためのソルダーレジスト層をRFIDタグ10の表面及び裏面に形成してもよい。また、同様の理由からRFIDタグ10の裏面に固定のための接着層が設けられていてもよい。
【0025】
多層プリント配線板12の内部には、樹脂が充填されており、実装された部品が樹脂封止されている。これにより、多層プリント配線板12内部が密封されることになるので、後工程でフタのようなものを被せる構造の製品に比べ、空洞がなく湿度やほこりなど外部環境による影響をより受けにくく、高い信頼性を持たせることができる。
【0026】
樹脂封止に用いる材料は、エポキシ樹脂のようなプリント配線板材料を用いてもよいしそれ以外の樹脂でもよい。また、複数の樹脂の組み合わせでもよい。
樹脂封止は、部品の実装後に行ってもよいし、プリント配線板の多層化時に同時に行ってもよい。
【0027】
なお、多層プリント配線板12と封止樹脂は、低誘電材料や高誘電材料を用いることで、通信性能を向上させたり、小型化したりすることができる。
【0028】
RFIDタグチップ14の部品実装は、半田ペースト、半田ボール、異方性樹脂ペースト、異方性樹脂フィルムなどを用いたフリップチップ実装としてもよい。これにより、最短距離で部品と回路を接続し、実装部のインピーダンスを小さくすることで、通信性能を向上させることができる。
【0029】
ここで、RFIDタグ10の取り付けについて説明する。
RFIDタグ10は、機械、設備、構造体などの金属体に取り付けることができる。金属体の材質としては、銅、アルミ、チタン、ステンレス、鉄といった材質を採用することができる。ただし、金属体としては、これらに限定するものではない。
【0030】
図3にRFIDタグ10を金属体30に取り付けた状態の概略図を示す。
RFIDタグ10と金属体30は、両面テープ40を利用し固定することができる。
なお、RFIDタグ10の金属体30への固定方法としては、両面テープ40に限定されるものではなく、例えば、RFIDタグ10を金属体30にボルト・ビスなどで直接固定してもよい。また、接着剤や半田を利用して固定してもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 RFIDタグ
12 多層プリント配線板
14 RFIDタグチップ
16 アンテナ回路
16a 第一のアンテナ回路
16b 第二のアンテナ回路
16c 第三のアンテナ回路
18 スルーホール
20 ランド
30 金属体
40 両面テープ
図1
図2
図3