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  • 特開-温度センサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068268
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/22 20060101AFI20240513BHJP
   G01K 1/16 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
G01K7/22 L
G01K1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178576
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】乾 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 達雄
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056DA02
2F056QF04
2F056QF08
(57)【要約】
【課題】 より高い温度測定性能(より小さい温度差、高い熱応答性及び熱追従性)を得ることができる温度センサを提供すること。
【解決手段】 筒状のセンサケース2と、センサケース内に収納されたセンサ本体3と、センサ本体に接続された一対のリード線4とを備え、センサ本体が、絶縁性フィルム5と、絶縁性フィルムの表面に設けられた感熱素子6と、絶縁性フィルムの表面に形成され一端が感熱素子に接続されていると共に他端が一対のリード線4に接続される一対の配線7とを備え、少なくとも感熱素子が設けられた部分の絶縁性フィルムが、センサケースの内面に密着して配されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のセンサケースと、
前記センサケース内に収納されたセンサ本体と、
前記センサ本体に接続された一対のリード線とを備え、
前記センサ本体が、絶縁性フィルムと、
前記絶縁性フィルムの表面に設けられた感熱素子と、
前記絶縁性フィルムの表面に形成され一端が前記感熱素子に接続されていると共に他端が前記一対のリード線に接続される一対の配線とを備え、
少なくとも前記感熱素子が設けられた部分の前記絶縁性フィルムが、前記センサケースの内面に密着して配されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記絶縁性フィルムの全体が、前記センサケースの内面に密着して配されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記絶縁性フィルムが、前記感熱素子が設置されている部分を有する素子設置部と、
前記一対のリード線が接続されている部分を有するリード線接続部とを有し、
前記素子設置部が、前記センサケースの先端側に配されて前記センサケースの内周面の少なくとも半周以上にわたって接触し、
前記リード線接続部が、前記素子設置部の基端側に先端が接続され前記センサケースの基端側に向けて軸線方向に沿って延在し、前記リード線接続部の基端側に前記一対のリード線が接続されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記センサケース内に充填され前記絶縁性フィルム及び前記感熱素子を樹脂で封止する樹脂封止部を備えていることを特徴とする温度センサ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記絶縁性フィルムの裏面かつ前記感熱素子の直下に設けられ前記絶縁性フィルムよりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱膜を備え、
前記集熱膜が、前記センサケースの内面に密着していることを特徴とする温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば大電力を給電するためのコネクタ等に使用される温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度センサとして、充電用のコネクタ部に用いられるピン状の充電プラグ等に内蔵されて温度を測定するものが知られている。例えば、特許文献1には、充電ピンのセンサ空洞に内蔵された円柱状又は円筒状の温度センサユニットが記載されている。この温度センサユニットは、セラミックス材料等の電気絶縁性の円筒状外被内に温度センサ素子が配置され、後方領域にリード線を有したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3225148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
充電用コネクタ部等の温度監視の目的は、コネクタ部の許容上限以下での運用とするための電流値の調整、接点の異常過熱時のシャットダウンなどがある。一般的に充電経路で最も抵抗値の高い端子の接触箇所から測温部が離れているため、発熱部と測温部との温度差や異常過熱の際の遅れ時間などを考慮して、温度のマージンを取る必要があり、最大電流値を低くせざるを得なかった。上記特許文献1では、充電ピンの中にセンサ空洞を形成して温度センサ素子を内蔵することで、発熱部と測温部との温度差を小さくしようとしている。しかしながら、円筒状外被内の中央に温度センサ素子が配置されているため、温度センサ素子が円筒状外被から離れていることで、円筒状外被と温度センサ素子との温度差が少なからず生じてしまうと共に、熱応答性や熱追従性も低下してしまう問題があった。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、より高い温度測定性能(より小さい温度差、高い熱応答性及び熱追従性)を得ることができる温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサは、筒状のセンサケースと、前記センサケース内に収納されたセンサ本体と、前記センサ本体に接続された一対のリード線とを備え、前記センサ本体が、絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの表面に設けられた感熱素子と、前記絶縁性フィルムの表面に形成され一端が前記感熱素子に接続されていると共に他端が前記一対のリード線に接続される一対の配線とを備え、少なくとも前記感熱素子が設けられた部分の前記絶縁性フィルムが、前記センサケースの内面に密着して配されていることを特徴とする。
【0007】
この温度センサでは、少なくとも感熱素子が設けられた部分の絶縁性フィルムが、センサケースの内面に密着して配されているので、フレキシブルで弾性を有する絶縁性フィルムを筒状のセンサケースの内面に沿って湾曲又は丸めて挿入し、感熱素子が設けられた部分をセンサケースに密着させることで、センサケースに感熱素子が近接する。したがって、センサケースと感熱素子との温度差をさらに低減することができると共に、高い熱応答性を得ることができる。
【0008】
第2の発明に係る温度センサは、第1の発明において、前記絶縁性フィルムの全体が、前記センサケースの内面に密着して配されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、絶縁性フィルムの全体が、センサケースの内面に密着して配されているので、センサケースに密着した絶縁性フィルム全体でセンサケースからの熱を感熱素子に伝達することができ、より高い精度で温度計測が可能になる。
【0009】
第3の発明に係る温度センサは、第1又は2の発明において、前記絶縁性フィルムが、前記感熱素子が設置されている部分を有する素子設置部と、前記一対のリード線が接続されている部分を有するリード線接続部とを有し、前記素子設置部が、前記センサケースの先端側に配されて前記センサケースの内周面の少なくとも半周以上にわたって接触し、前記リード線接続部が、前記素子設置部の基端側に先端が接続され前記センサケースの基端側に向けて軸線方向に沿って延在し、前記リード線接続部の基端側に前記一対のリード線が接続されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、素子設置部が、センサケースの先端側に配されてセンサケースの内周面の少なくとも半周以上にわたって接触しているので、素子設置部がセンサケースの先端側で内周面の半周以上から熱を受けることができ、センサケースの先端側からの熱を高い応答性を有して受けることができる。
また、リード線接続部が、素子設置部の基端側に先端が接続されセンサケースの基端側に向けて軸線方向に沿って延在し、リード線接続部の基端側に一対のリード線が接続されているので、リード線の接続部分が感熱素子から遠ざかり、センサケースから受けた熱がリード線を介して外部に放熱してしまうことを抑制できる。
【0010】
第4の発明に係る温度センサは、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記センサケース内に充填され前記絶縁性フィルム及び前記感熱素子を樹脂で封止する樹脂封止部を備えていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、センサケース内に充填され絶縁性フィルム及び感熱素子を樹脂で封止する樹脂封止部を備えているので、樹脂封止部によりセンサケース内の絶縁性フィルム及び感熱素子を固定、封止することができ、センサケースとの密着状態を安定して保持すると共に、センサケース内への水分の侵入を防ぎ高い絶縁性を保持することができる。
【0011】
第5の発明に係る温度センサは、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記絶縁性フィルムの裏面かつ前記感熱素子の直下に設けられ前記絶縁性フィルムよりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱膜を備え、前記集熱膜が、前記センサケースの内面に密着していることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、絶縁性フィルムの裏面かつ感熱素子の直下に設けられ絶縁性フィルムよりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱膜を備え、集熱膜が、センサケースの内面に密着しているので、熱伝導性の高い金属膜等の集熱膜を介してセンサケースの熱を絶縁性フィルム及び感熱素子に効率的にかつ高い応答性を有して伝えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、少なくとも感熱素子が設けられた部分の絶縁性フィルムが、センサケースの内面に密着して配されているので、センサケースに感熱素子が近接しており、センサケースと感熱素子との温度差をさらに低減することができると共に、高い熱応答性を得ることができる。
したがって、本発明の温度センサでは、例えば主な発熱部である充電ピンの温度上昇に対して、温度差を非常に小さくできると共に、より高い熱応答性での温度測定が可能になり、温度制御や異常過熱時のシャットダウンに関してマージンを大幅に減らすことができ、充電の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る温度センサの一実施形態において、内部を透視して示す温度センサの平面図(a)及び正面図(b)である。
図2】本実施形態において、センサ本体及びリード線を示す斜視図である。
図3】本実施形態において、温度センサを示す斜視図である。
図4】本実施形態において、リード線が接続されたセンサ本体を示す平面図である。
図5】本実施形態において、内部を透視して示す温度センサの要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る温度センサの一実施形態を、図1から図5を参照しながら説明する。
【0015】
本実施形態の温度センサ1は、図1から図5に示すように、筒状のセンサケース2と、センサケース2内に収納されたセンサ本体3と、センサ本体3に接続された一対のリード線4とを備えている。
上記センサ本体3は、絶縁性フィルム5と、絶縁性フィルム5の表面に設けられた感熱素子6と、絶縁性フィルム5の表面に形成され一端が感熱素子6に接続されていると共に他端が一対のリード線4に接続される一対の配線7とを備えている。なお、絶縁性フィルム5表面の感熱素子6及びリード線4の接続部以外の部分には、その上に絶縁性カバーフィルムが重ねて付設されている。
【0016】
上記少なくとも感熱素子6が設けられた部分の絶縁性フィルム5は、センサケース2の内面に密着して配されている。なお、本実施形態では、絶縁性フィルム5は、センサケース2の内周面に密着して設置されている。特に、本実施形態では、上記絶縁性フィルム5の全体が、センサケース2の内面に密着して配されている。
【0017】
すなわち、絶縁性フィルム5は、円筒状のセンサケース2内に丸めた形又は湾曲させた形で挿入され、絶縁性フィルム5は、センサケース2の内周面に密着して設置されている。
また、絶縁性フィルム5は、感熱素子6が設置されている部分を有する素子設置部5aと、一対のリード線4が接続されている部分を有するリード線接続部5bとを有している。
【0018】
上記素子設置部5aは、図5に示すように、センサケース2の先端側に配されてセンサケース2の内周面の少なくとも半周以上にわたって接触している。
上記リード線接続部5bは、素子設置部5aの基端側に先端が接続されセンサケース2の基端側に向けて軸線方向に沿って延在し、リード線接続部5bの基端側に一対のリード線4が接続されている。
【0019】
また、本実施形態の温度センサ1は、上記絶縁性フィルム5の裏面かつ感熱素子6の直下に設けられ絶縁性フィルム5よりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱膜9を備えている。
上記集熱膜9は、図5に示すように、センサケース2の内面に密着している。すなわち、集熱膜9は、センサケース2の先端側の内周面に密着している。
また、本実施形態の温度センサ1は、センサケース2内に充填され絶縁性フィルム5及び感熱素子6を樹脂で封止する樹脂封止部8を備えている。
【0020】
上記センサケース2は、先端が閉塞された円筒状であり、例えば銅やステンレス等の金属、セラミックス又は熱伝導性樹脂等で形成されている。
上記絶縁性フィルム5は、ポリイミドフィルム(ポリイミド樹脂シート)で形成され、センサケース2に挿入する前の状態では、図2及び図4に示すように、素子設置部5aとリード線接続部5bとにより略L字状とされている。
【0021】
上記集熱膜9は、例えば銅箔等の金属層で長方形状にパターン形成されている。
上記一対の配線7は、例えば銅箔等でパターン形成されている。
一対の配線7は、絶縁性フィルム5の延在方向に沿って延在し先端に感熱素子6が接続された一対の主配線部7aと、一対の主配線部7aの基端に接続されリード線4の芯線4aがはんだ付け部10で固定された一対のリード用パッド部7bとを有している。
上記一対のリード用パッド部7bは、リード線接続部5bの基端側に配されている。
【0022】
上記感熱素子6は、例えばチップサーミスタ、フレーク型サーミスタ、薄膜サーミスタ等である。なお、本実施形態では、チップサーミスタの感熱素子6を採用している。
この感熱素子6は、素子設置部5aの先端側かつ一対の主配線部4aの先端間にはんだ接合等で設置されている。
上記樹脂封止部8は、例えばエポキシ樹脂等で形成されている。
【0023】
このように本実施形態の温度センサ1では、少なくとも感熱素子6が設けられた部分の絶縁性フィルム5が、センサケース2の内面に密着して配されているので、フレキシブルで弾性を有する絶縁性フィルム5を筒状のセンサケース2の内面に沿って湾曲又は丸めて挿入し、感熱素子6が設けられた部分をセンサケース2に密着させることで、センサケース2に感熱素子6が近接する。したがって、センサケース2と感熱素子6との温度差をさらに低減することができると共に、高い熱応答性を得ることができる。
【0024】
特に、絶縁性フィルム5の全体が、センサケース2の内面に密着して配されていることで、センサケース2に密着した絶縁性フィルム5全体でセンサケース2からの熱を感熱素子6に伝達することができ、より高い精度で温度計測が可能になる。
また、素子設置部5aが、センサケース2の先端側に配されてセンサケース2の内周面の少なくとも半周以上にわたって接触しているので、素子設置部5aがセンサケース2の先端側で内周面の半周以上から熱を受けることができ、センサケース2の先端側からの熱を高い応答性を有して受けることができる。
【0025】
また、リード線接続部5bが、素子設置部5aの基端側に先端が接続されセンサケース2の基端側に向けて軸線方向に沿って延在し、リード線接続部5bの基端側に一対のリード線4が接続されているので、リード線4の接続部分が感熱素子6から遠ざかり、センサケース2から受けた熱がリード線4を介して外部に放熱してしまうことを抑制できる。
【0026】
また、センサケース2内に充填され絶縁性フィルム5及び感熱素子6を樹脂で封止する樹脂封止部8を備えているので、樹脂封止部8によりセンサケース2内の絶縁性フィルム5及び感熱素子6を固定、封止することができ、センサケース2との密着状態を安定して保持すると共に、センサケース2内への水分の侵入を防ぎ高い絶縁性を保持することができる。
【0027】
さらに、絶縁性フィルム5の裏面かつ感熱素子6の直下に設けられ絶縁性フィルム5よりも熱伝導率の高い材料で形成された集熱膜9を備え、集熱膜9が、センサケース2の内面に密着しているので、熱伝導性の高い金属膜等の集熱膜9を介してセンサケース2の熱を絶縁性フィルム5及び感熱素子6に効率的にかつ高い応答性を有して伝えることができる。
【0028】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、感熱素子が設けられた部分の絶縁性フィルムを、センサケースの内周面に密着させているが、感熱素子が設けられた部分の絶縁性フィルムを、センサケースの閉塞された先端の内面に密着させて配しても構わない。
【符号の説明】
【0029】
1…温度センサ、2…センサケース、3…センサ本体、4…リード線、5…絶縁性フィルム、5a…素子設置部、5b…リード線接続部、6…感熱素子、7…配線、8…樹脂封止部、9…集熱膜
図1
図2
図3
図4
図5