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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068271
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】レールの固定構造並びに枕木体装置
(51)【国際特許分類】
   E01B 23/04 20060101AFI20240513BHJP
   E01B 9/64 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
E01B23/04
E01B9/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178583
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】522435986
【氏名又は名称】株式会社中山商店
(74)【復代理人】
【識別番号】100136928
【弁理士】
【氏名又は名称】高宮 章
(74)【代理人】
【識別番号】100092163
【弁理士】
【氏名又は名称】穴見 健策
(72)【発明者】
【氏名】中山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西田 虎吉
(57)【要約】
【課題】水路トンネルで、簡単な構成で作業現場において短時間で簡単に枕木体設置と枕木体へのレール固定を完了させるレールの固定構造並びに枕木体装置を提供する。
【解決手段】鋼製板材からなりトンネルの長手に直交する方向に設置される枕木体2と、枕木体の上面に設けられた押え部3であって、枕木体上面で枕木体に交差するように配置されるレール4のレールフランジ43を挟んで両側に対向して設けられた一対の押え部3と、枕木体上に載置され一対の押え部間に挟装配置されるレール4と、を含む。押え部3は、一端を枕木体に支持されるとともに塑性変形によりレールのレールフランジに当着して枕木体とレールとを固定状態に保持する押え片31を含む。簡単な工程の組合せで円滑、確実に埋設管の埋設建込み作業を遂行し、かつ施工後に漏水等を生じることを確実に防止させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路トンネル内の底壁上に配置される一方向に長い枕木体であって、鋼製板材からなり水路トンネルの長手に直交する方向に設置される枕木体と、
枕木体の上面に設けられた押え部であって、枕木体上面で枕木体に交差するように配置されるレールのレールフランジを挟んで両側に対向して設けられた一対の押え部と、
枕木体上に載置され一対の押え部間に挟装配置されるレールと、を含み、
押え部は、一端を枕木体に支持されるとともに塑性変形によりレールのレールフランジに当着して枕木体とレールとを固定状態に保持する押え片を含むことを特徴とするレールの固定構造。
【請求項2】
押え部は、枕木体上面に固定され枕木体に対するレールの所定の挟装位置を決める固定支持部と、固定支持部に一体接続されて枕木体上面から上方に向けて立ち上がり形成された押え片であり、レールフランジ上に押し曲げ当着させて塑性変形により枕木体上にレールを固定させる押え片と、を有することを特徴とする請求項1記載のレールの固定構造。
【請求項3】
押え片は叩打されてレールフランジ上に押し曲げ当着されることを特徴とする請求項1又は2記載のレールの固定構造。
【請求項4】
押え部は、枕木体上面に固定される固定支持部としての固定板と、固定板に一体接続されレールフランジ上に押し曲げ当着される押え片としての立ち上がり板と、を含むL字アングル材からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のレールの固定構造。
【請求項5】
押え部の立ち上がり板は、枕木体上面に溶接固定されていることを特徴とする請求項4記載のレールの固定構造。
【請求項6】
枕木体は、一枚の帯状板材からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のレールの固定構造。
【請求項7】
枕木体は、Cチャンネル板材からなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のレールの固定構造。
【請求項8】
1ないし7のいずれかに記載のレールの固定構造に用いられる枕木体と、押え部と、を含む枕木体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの固定構造並びに枕木体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水路トンネル等の補修工事等では土砂運搬、資材運搬のためにトンネル底壁に仮設レールが敷設される場合がある。従来、仮設レール取付に際し、枕木としてのH形鋼のフランジに多数の取付孔を設けておきレールの台座上に係着する取付板をボルト、ナットの締め付けで枕木にレールを固定する装置等が公知である。これに対し、特許文献1のレール取付装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平2-66802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は略直交配置される枕木とレールであって枕木のフランジとレールの台座部にそれぞれ嵌合する嵌合溝を有する取付基体と、取付基体に設けられ枕木のフランジに先端が圧着する枕木押えボルトと、レールの台座部に先端が圧着するレール押えボルトを具備したレール取付装置を開示している。これによって、ボルト、ナット、ワッシャその他の部品の種類及び点数を少なくし、また、締結作業時のワッシャ取付、ボルト・ナットの回し作業、締め付け状態の確認等で要する作業時間短縮等を図ろうとするものである。
【0005】
しかしながら、この装置では、H鋼を枕木として使用しているので重量が大きく、設置現場までの運搬やトンネル内での位置決め設置作業が容易ではなく、作業時間がかかる。またレールの撤収時の回収作業が容易ではない。また、枕木のフランジとレールの台座部にそれぞれの嵌合溝を嵌合させた後に嵌合状態を確認して各押えボルトを締め付ける作業に時間を要するという問題がある。さらに、H型鋼と金属レールとの組付けであるからトンネルの屈曲部等の曲がり部においてレールとの組付け時にトンネル内の状況に応じた微調整が困難で、H型鋼の枕木としての機能を柔軟に果たすことが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、簡単な構成で作業現場において短時間で簡単に枕木体設置と枕木体へのレール固定を完了し作業時間短縮、労力軽減、作業コストの大幅な低減をはかることのできるレールの固定構造並びに枕木体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、水路トンネル100内の底壁(58)上に配置される一方向に長い枕木体であって、鋼製板材からなり水路トンネル100の長手に直交する方向に設置される枕木体2と、枕木体2の上面に設けられた押え部3であって、枕木体2上面で枕木体に交差するように配置されるレール4のレールフランジ34を挟んで両側に対向して設けられた一対の押え部3と、枕木体2上に載置され一対の押え部3間に挟装配置されるレール4と、を含み、押え部3は、一端を枕木体2に支持されるとともに塑性変形によりレール4のレールフランジ43に当着して枕木体2とレール4とを固定状態に保持する押え片31を含むレールの固定構造1から構成される。
【0008】
その際、押え部3は、枕木体2上面に固定され枕木体に対するレール4の所定の挟装位置を決める固定支持部35と、固定支持部に一体接続されて枕木体2上面から上方に向けて立ち上がり形成された押え片であり、レールフランジ43上に押し曲げ当着させて塑性変形により枕木体2上にレール4を固定させる押え片31と、を有するとよい。
【0009】
また、押え片31は叩打されてレールフランジ43上に押し曲げ当着されるとよい。
【0010】
さらに、押え部3は、枕木体2上面に固定される固定支持部35としての固定板36と、固定板36に一体接続されレールフランジ43上に押し曲げ当着される押え片31としての立ち上がり板37と、を含むL字アングル材40からなるとよい。
【0011】
また、押え部3の立ち上がり板37は、枕木体2上面に溶接固定されているとよい。
【0012】
また、枕木体2は、一枚の帯状板材からなるようにしてもよい。
【0013】
また、枕木体2は、Cチャンネル板材84からなるようにしてもよい。
【0014】
また、本発明は、1ないし7のいずれかに記載のレールの固定構造1、10に用いられる枕木体2,82と、押え部3と、を含む枕木体装置5,80から構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のレールの固定構造及び枕木体装置によれば、作業現場において短時間で簡単に枕木体設置と枕木体へのレール固定を完了し作業時間短縮、労力軽減、作業コストの大幅な低減をはかることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のレールの固定構造の第1実施形態に係る水路トンネル内に枕木体と押え部とレールとを含む枕木体装置を配置した状態の縦断面説明図である。
図2】本発明の実施形態にかかる枕木体上面に、固定板から直角に立ち上がる立ち上がり片を含む押え部間にレールを挟装させた状態の端面図である。
図3】(a)は、図2の一部省略平面説明図、(b)は、図3(a)のA-A線断面図である。
図4】枕木体上に固定した押え部間にレールを挟装させた状態から立ち上がり片をレールフランジ上に当着させる態様を示す一部省略拡大作用説明図である。
図5図1のレール上に走行車両等の荷重が負荷された状態の枕木体装置の一部省略断面説明図である。
図6】本発明のレールの固定構造の第2実施形態に係る水路トンネル内に枕木体と押え部とレールとを含む枕木体装置を配置した状態の縦断面説明図である。
図7図6の枕木体上面に取り付けた押え部間にレールを挟装させた状態の端面図である。
図8図7のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ本発明のレールの固定構造及びそれに用いられる枕木体と押え部とを含む枕木体装置の実施形態について説明する。
【0018】
本発明のレールの固定構造及び枕木体装置は、例えば水力発電システムにおいて、ダムの取水口から発電所近傍に設置される水槽までの水の流れを案内する導水路、水槽から発電所までを案内する水圧管路、発電所から放水口までを案内する放水路等に構築される水路トンネル内等で実施される。これらの水路トンネルは、断面で例えば横幅1.8メートル、高さ2メートル程度の小断面サイズのトンネルが多く含まれる。
【0019】
図1ないし図5は、本発明の第1実施形態に係るレールの固定構造及び枕木体装置について示している。図1は、本実施形態のレールの固定構造を実施した水路トンネル100の断面図であり、例えば内法サイズで横幅1.8メートル、高さ2メートル程度の小断面サイズのトンネルについて実施されている。図において、岩盤50の崩壊や落盤を防止するために柱材やアーチ構造体を形成して支保工52が内側にトンネル空隙Sを形成するように構築されている。そして、水路として機能させるために支保工52の内側に十分な厚さのコンクリートが吹付けられてコンクリート層54が設けられている。
【0020】
本実施形態において、水路トンネル100は、コンクリート層54の表面側において上下壁56,58及び左右壁60,62を含み、断面は縦型の俵形状で形成されている。図において、下壁58は断面で下向きに湾曲されて形成され、その中央部に水捌け用の溝部64が下向きに凹設されている。
【0021】
すなわち、本実施形態において、水路トンネル100は、トンネル壁内面全体にコンクリートが吹き付けられて塗装されて既に実用されているトンネルである。このトンネル内に車両用のレールを設置するものであって、車両用レールはトンネル内壁等の補修時に車両を用いて補修機材や補修材料等の搬送用の車両の走行案内に用いられる。
【0022】
図1において、下壁58上に本実施形態のレールの固定構造1が設けられている。レールの固定構造1は、枕木体2と、押え部3と、レール4と、を含み、搬送用台車等を走行案内させる線路を構築する。レールの固定構造1は、枕木体装置5を含み、該枕木体装置5は、枕木体2と押え部3とを含む。さらに押え部3は、押え片31を含む。
【0023】
本実施形態において、図2、3に示すように、枕木体2は一方向に長い鋼製板材からなり、トンネルの長手方向に直交する方向に数メートルあるいは数十メートル間隔で配置される。枕木体2は、トンネルの長手方向に沿って二本平行に敷設されるレールの下に敷きこまれてレールを下部で支持する支持手段である。本実施形態において、枕木体2は例えば、長さ1400ミリメートル、幅125ミリメートル、板厚12ミリメートルの長矩形鋼板からなり、下壁58の湾曲面59の途中に長手両端部を係止させるように配置される。
【0024】
図1ないし図3において、枕木体2の上面には一対の押え部3が取り付けられている。押え部3は、枕木体2に交差するように配置されるレール4の両側にそれぞれ一本のレールを挟むように対向して一対で設けられ、2本のレールについて計2対の押え部3が1つの枕木体2上に取り付け固定されている。押え部3は、鋼板製枕木体2上にレールを固定する固定手段であり、特に本実施形態において簡単な構成でかつ短時間で枕木体2とレール4を固定できる。すなわち、本実施形態においては押え部3の一部を例えば叩打するだけで枕木体とレールとを連結固定させることができる。
【0025】
一方、レール4は、資材等搬送用車両の車輪を支持しつつ車両進行を誘導案内する手段であり、重量に対応して1本の長さが20メートルあるいは25メートル長のレールが用いられ、これらが軌条に沿って連結されてトンネル内で敷設される。
【0026】
実施形態において、図1ないし図4に示すように、レール4は、車輪に接して車輪を直接に受ける頭部41と、頭部41から断面で下方に伸長する首部42と、首部42の下部途中から断面台形状に両側に拡幅したレールフランジ43と、を含む。首部42の長さがレール4の高さを決めている。図2ないし図4において、枕木体2上において枕木体の中央位置から等間隔を開けて2つのレール4a、4bが載置され、枕木体2に固定される前のレール4はそれぞれ対向配置された一対の押え部3間に挟み付けられるように配置される。
【0027】
図1ないし図4において、押え部3は、押え片31を含む。押え片31は、枕木体2と、レール4とを固定状態に保持する固定保持手段であり、実施形態において、一端部を枕木体2に支持された状態でレール4のレールフランジ43に当着して塑性変形により枕木体2とレール4とを固定状態に保持する。
【0028】
実施形態において、押え部3は、図に示すように固定支持部35と、押え片31と、を含む。固定支持部35は、押え片31を枕木体2に一体的に固定させる手段であり、製作上あるいは枕木体の幅方向のレールの位置決め設定作業等において枕木体2の上面に金属板材等を面合わせ状に配置して固定するのが有利である。すなわち、このように固定支持部35を枕木体2上に重ね合わせ状にして固定することにより、枕木体2に対するレールの所定の挟装位置を決める位置決め手段として機能し得る。実施形態において、固定支持部35は矩形の金属板である固定板36からなり、この固定板36が枕木体2の上面に面合わせ状態で溶接固定されている。固定支持部35は、枕木体2上においてトンネル内のレールの設置位置において対応するトンネルの直線度あるいは曲率に応じて予め枕木体2上の固定位置を設定しておき、その固定位置を挟装するように固定支持部35が予め枕木体上に溶接固定されている。
【0029】
押え片31は、固定支持部35に一体接続されて枕木体2上面から上方に向けて立ち上がり形成されたレール4の固定保持手段であり、押え片本体がレールフランジ上に当てられた状態を維持するように塑性変形してレール4を枕木体2上に固定させる。
【0030】
本実施形態において、図2ないし図4に示すように押え部3は、枕木体2上面に固定される固定板36と、固定板36に一体接続される立ち上がり板37と、を含むL字アングル材40から構成されている。立ち上がり板37は押え片31であり、レールフランジ43上に押し曲げられてレールフランジ上面に面合わせ状に当着する。
【0031】
本実施形態において、押え片31すなわち固定板36から垂直状に立ち上がる立ち上がり板37をハンマーその他の工具で横方向からレール側に向けて叩打することにより、押え片31は図4破線示状態からレールフランジ上に押し曲げられ、押え片31をレールフランジ上に当着させた状態で塑性変形する。これによって、押え部3とレール4、すなわち枕木体2とレール4とを塑性変形により連結固定状態に保持することとなる。立ち上がり板37のレールフランジ上への押し曲げは工具による叩打に限らず、押圧シリンダその他の押圧装置による押圧を介した押え片31の押圧当着を行うようにさせてもよい。
【0032】
実施形態において立ち上がり板すなわち押え片31は、横方向から叩打されて押し曲げ力を受け図4に示すように、レールフランジ43上に面合わせ状に押し曲げられて当着し枕木体2とレール4とを一体的に連結固定する。このとき、L字アングル材40の隅部が塑性変形して押え片31によるレールの押え固定状態を維持し得るように、叩打に耐え得るように、L字アングル材40は、弾性を有する機械的特性のSS材等が用いられている。
【0033】
前述のように、枕木体2は、一枚の帯状板材、すなわち金属平板から構成されている。このため、軽量で搬送が容易であり、また設置の際の作業労力負荷が軽い。
【0034】
本実施形態によるレールの固定構造1の設置に際しては、補修すべき水路トンネル内部の寸法より枕木体の長さ、幅を決め、設置すべきレール長などから枕木体の本数を決定する。そして予め各枕木体2にレールフランジを挟装し得る間隔をあけてL字アングル材40を対向させる状態で固定板36を枕木体2上面に溶接固定する。そして、それぞれ2対の押え部3を取り付けておき、レール敷設の作業現場のトンネルに枕木体装置5の枕木体を所要の間隔幅ごとに配置し、その状態で押え部3の対向間隔にレール4を挿入して枕木体2と直交方向にレール4を配置させる。その状態で、図4に示すように、作業者はそれぞれの側の横方向から押え片31をハンマー等で1,2回程度叩打するだけで瞬時に押え片31がレールフランジ43上に面合わせ状に当着し、押え部3はその塑性変形により枕木体2上にレール4を固定状態に保持する。
【0035】
枕木体装置5上にレール4を設置配置し固定した状態で、レール上に図示しない搬送用台車の車輪を懸架させると資材や機器類を搭載した台車全体の重量がレール上に負荷される。この時、図5に示すようにレール4よりも外側の枕木体2部分である両耳部がトンネル下壁58の湾曲部分に当たり、その湾曲に沿って枕木体の両端側も湾曲する。この時、L字アングル材40が溶接された部分の枕木体の強度が高くなっており、しかもこれらに支持される2本のレールに対し、略等しい負荷が上方から下方に向けて加わるから、レール間に対応する枕木体2の部分は下壁58の湾曲部分に支持されながら係止され安定する。これによって、レール上に搭乗する台車全体の下壁58からの高さが低く維持され、台車等搬送時に広範な種類の種々の搬送物を円滑に搬送することができる。
【0036】
なお、押え部の押え片は枕木体であってレールフランジの近傍に開口を設け、その開口に挿入されて下部を枕木体の下面側に当接するとともに、上部を枕木体の上面側に突出して外力によりレールフランジ面に当着し塑性変形により枕木体とレールとを固定状態に保持するようにしてもよい。
【0037】
次に、図6ないし図8に基づき、本発明の第2実施形態に係るレールの固定構造について説明するが、第1実施形態と同一構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。図6は、本発明の第2実施形態のレールの固定構造を実施した水路トンネル200の断面図であり、本実施形態では、山間部等に新規に水路トンネルを設ける場合等の例を示している。新規に水路トンネルを構築する場合、掘削した岩盤50の表面に沿って支保工52が組付けられ、小石や砂利等を敷いたバラスト底盤74上に枕木体10及びレール4を敷いて図示しない工事の切刃部分まで資材や機器類を搭載させた台車を走行させる。そして、切刃部分からコンクリート舗装等を行って仕上げながら入口側に戻る途中にレールや枕木等を撤去していく。図6は、水路トンネルの新設時の切刃に向かう往路での枕木体装置80を示しており、トンネルの底部は平面状のバラスト底盤74が敷設されている。
【0038】
第2実施形態のレールの固定構造10は、図7,8に示すように枕木体の構造が第1実施形態と異なる。第2実施形態の枕木体82は、鋼製のCチャンネル板材84で構成されており、枕木体以外の構成は第1実施形態と同様である。Cチャンネル板材84は、図8において長方形状の天板841と、その両幅端から直角方向に下方に向けて屈曲した側板842,843を含む。そして、Cチャンネル板材84の両端寄り位置において、天板841上面に第1実施形態と同様の固定支持部35及び押え片31を含む押え部3が設けられている。
【0039】
第2実施形態のレールの固定構造10では、水路トンネル200の新設時の切刃部分までの往路において、トンネル内の底部は小石や砂利等を含むバラスト底盤74の上に押え部3を天板841上面に取り付けたCチャンネル板材の枕木体82を設置する際、枕木体82を下方に押し込んでいくとCチャンネル板材84の両側板842,843がエッジとなってバラスト底盤74内に食い込んでいって押し込み、天板841の下面に底盤が当着するまで押し込んで安定する。また、枕木体自体がCチャンネル板材であるから単なる平板に対して強度が高く、それほど大きな重量とはならず、設置作業上の労力負荷も小さいものである。
【0040】
以上説明した本願発明に係るレールの固定構造によれば、水路トンネル内の底壁上に配置される一方向に長い枕木体であって、鋼製板材からなりトンネルの長手に直交する方向に設置される枕木体と、枕木体の上面に設けられた押え部であって、枕木体上面で枕木体に交差するように配置されるレールのレールフランジを挟んで両側に対向して設けられた一対の押え部と、枕木体上に載置され一対の押え部間に挟装配置されるレールと、を含み、押え部は、一端を枕木体に支持されるとともに塑性変形によりレールのレールフランジに当着して枕木体とレールとを固定状態に保持する押え片を含むことにより、押え片を含む押え部を取り付けた枕木体を計画した予定線路に沿って配置し、レールを各押え部間に挿入後、押え片をレール側に外力で押し込んでレールフランジに押し付け当着させ押え片の塑性変形により枕木体とレールとを連結固定させるから、レールの固定ための枕木体装置が飛躍的に軽量化され、トンネル内のレールの敷設作業を軽易な労力でかつ短時間で完了させることが可能である。また、材料コスト、作業コストを低廉に維持させることができる。特に、枕木体構成部材についての材料、取付装置等の設置現場までの運搬を容易に行える。また、レールの取り外し時の枕木体装置の回収を軽易な労力で簡単かつ短時間に行うことができる。さらに、枕木体へのレールの固定状態確認を容易に行うことができる。また、トンネル屈曲部等でのレール敷設も簡易かつ迅速に実現することができる。
【0041】
また、押え部は、枕木体上面に固定され枕木体に対するレールの所定の挟装位置を決める固定支持部と、固定支持部に一体接続されて枕木体上面から上方に向けて立ち上がり形成された押え片であり、レールフランジ上に押し曲げ当着させて塑性変形により枕木体上にレールを固定させる押え片と、を有することにより、押え片に外力を加えて例えば押し曲げることで極めて短時間に枕木体とレールとの固定作業を完了させることができる。
【0042】
また、押え片は叩打されてレールフランジ上に押し曲げ当着されることにより、瞬時に枕木体とレールとの固定作業を完了させることができる。
【0043】
また、押え部は、枕木体上面に固定される固定支持部としての固定板と、固定板に一体接続されレールフランジ上に押し曲げ当着される押え片としての立ち上がり板と、を含むL字アングル材から構成することにより、既成のL字アングル材等の加工により材料コストを安価に維持し得る。
【0044】
また、押え部の立ち上がり板は、枕木体上面に溶接固定されていることにより、溶接時に枕木体の取付箇所に応じたトンネル内の曲率やレールフランジの挟装間隔を勘案した枕木体への固定位置を個別に設定することができる。
【0045】
また、枕木体は、一枚の帯状板材からなることにより、枕木体を軽量化して設置作業性を向上させ、労力軽減、材料コスト低減に寄与し得る。
【0046】
枕木体は、Cチャンネル板材からなることにより、既成品等を用いて低廉なコストで枕木体を製作できるとともに、簡単な構造のわりに高い強度を保持し得る。
【0047】
また、上記のレールの固定構造に用いられる枕木体と、押え部と、を含む枕木体装置の発明とすることにより、押え片を含む押え部を取り付けた枕木体のみの簡単な構成で作業上の時間短縮、労力軽減、コスト低減、材料コスト低減等を達成することが可能である。
【0048】
以上説明した本発明のレールの固定構造並びに枕木体装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の本質を逸脱しない範囲において、他の実施形態を用いるようにしてもよい。例えば、枕木体並びに押え部のサイズは、上記実施形態に限定されることなく、実際の作業現場の状態に応じて任意に変更して実施することができる。また、水路トンネルのサイズや補修、新設の是非に拘わらず現実のトンネルの状況に応じて実施することができる。また、枕木体並びに押え部は鋼以外の他の金属あるいは合金材、さらに複合材料等を用いることができる。さらに、長期使用予定のレールの固定構造の場合でも、具体的な状況により実施可能である。また、水路トンネル以外の目的のトンネルで台車等の案内走行が必要な任意のトンネルについて適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のレールの固定構造並びに枕木体装置は、水路トンネルの軌条設備を必要とするトンネルにおいて、適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 レールの固定構造(第1実施形態)
2 枕木体
3 押え部
4 レール
5 枕木体装置
10 レールの固定構造(第2実施形態)
31 押え片
35 固定支持部
37 立ち上がり板
40 L字アングル材
43 レールフランジ
50 岩盤
58 下壁
74 バラスト底盤
80 枕木体装置
82 枕木体
84 Cチャンネル板材
841 天板
842,843 側板
100、200 水路トンネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8