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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068273
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】薬剤添加装置および薬剤添加方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/14 20190101AFI20240513BHJP
【FI】
C02F11/14 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178588
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】島本 仙
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 晃人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真祐子
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059BE01
4D059BE25
4D059BE46
4D059BE55
4D059BE56
4D059BJ00
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で、薬剤を安定的に供給することができる薬剤添加装置が提供される。
【解決手段】薬剤添加装置5は、複数のノズル孔11を有する薬剤注入管10と、薬剤を脱水ケーキに導くガイド12と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子凝集剤を添加した凝集汚泥を濃縮装置で重力ろ過または圧搾して脱水した脱水ケーキに薬剤を添加する装置において、
前記薬剤を均一に分配するための複数のノズル孔を有する薬剤注入管と、
前記複数のノズル孔の少なくとも1つから前記薬剤を前記脱水ケーキに導くガイドと、を備えている、薬剤添加装置。
【請求項2】
前記薬剤注入管は、
前記薬剤注入管の一方に形成された、前記薬剤を供給する供給部と、
前記薬剤注入管の他方に形成された閉止部と、を有しており、
前記複数のノズル孔は、前記供給部と前記閉止部との間に配置されている、請求項1に記載の薬剤添加装置。
【請求項3】
前記ガイドは、前記薬剤注入管の表面から突出した構造を有している、請求項1に記載の薬剤添加装置。
【請求項4】
前記ガイドは、前記薬剤注入管の延びる方向に移動可能に構成されている、請求項1に記載の薬剤添加装置。
【請求項5】
前記複数のノズル孔の穴径は、前記供給部から前記閉止部に向かって、大きくなっている、請求項2に記載の薬剤添加装置。
【請求項6】
前記ガイドは、前記複数のノズル孔の少なくとも1つの一部分を塞ぐ、および/または前記複数のノズル孔のいずれかの全体を塞ぐ巻き付け構造を有している、請求項1に記載の薬剤添加装置。
【請求項7】
前記ガイドは、前記複数のノズル孔の少なくとも1つに差し込まれた引っかけ構造を有している、請求項1に記載の薬剤添加装置。
【請求項8】
前記薬剤添加装置は、前記ガイドに取り付けられた、前記薬剤を前記脱水ケーキに導く分岐ガイドを備えている、請求項1に記載の薬剤添加装置。
【請求項9】
薬剤添加装置は、前記薬剤注入管の表面に洗浄水を散布する散水装置を備えている、請求項1に記載の薬剤添加装置。
【請求項10】
高分子凝集剤を添加した凝集汚泥を濃縮装置で重力ろ過または圧搾して脱水した脱水ケーキに薬剤を添加する方法において、
前記薬剤を均一に分配するための複数のノズル孔を有する薬剤注入管に前記薬剤を供給し、
前記薬剤を前記脱水ケーキに導くガイドを通じて、前記複数のノズル孔の少なくとも1つから前記薬剤を前記脱水ケーキに添加する、薬剤添加方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤添加装置および薬剤添加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュープレスやベルトプレスの脱水において、濃縮汚泥(すなわち、高分子凝集剤を加えて凝集撹拌を行った凝集汚泥を濃縮して得られた汚泥)に対し、例えば、高分子凝集剤や無機凝集剤などの液状の薬剤(すなわち、薬液)を注入することで、濃縮汚泥の脱水性が向上する。薬剤を注入する際、濃縮汚泥に対して均等に注入することでより効果が大きくなり、滴下時に斑が生じた際には脱水が不十分となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-142242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
越流堰を備える凝集剤添加装置(例えば、特許文献1参照)では、薬剤の流量と切り欠き部の数によっては、1か所当りにおける薬剤の流量が小さくなってしまい、薬剤を均一に流すためには非常に高い加工精度が要求される。また、乾燥による薬剤の固着等により、薬剤を均一に流し続けることは困難であり、やすりで削る等の不可逆な調整が要求されることもある。
【0005】
さらに、作業環境や希釈条件などによっては越流堰の堰部分に付着物やゴミの混入が生じ得る。一度、付着物が混入した場合、薬剤が越流堰のV字部分から流れにくくなり、薬剤の流量が偏ってしまう。流量の偏りを解消するためには、やすり等で付着物のみを物理的に取り去るか、洗浄液等で十分に洗浄する必要がある。越流堰は開放されているため、洗浄液の混入を防止するために越流堰内の薬剤の全量を排出する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構造で、薬剤を安定的に供給することができる薬剤添加装置および薬剤添加方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、高分子凝集剤を添加した凝集汚泥を濃縮装置で重力ろ過または圧搾して脱水した脱水ケーキに薬剤を添加する装置が提供される。薬剤添加装置は、前記薬剤を均一に分配するための複数のノズル孔を有する薬剤注入管と、前記複数のノズル孔の少なくとも1つから前記薬剤を前記脱水ケーキに導くガイドと、を備えている。
【0008】
一態様では、前記薬剤注入管は、前記薬剤注入管の一方に形成された、前記薬剤を供給する供給部と、前記薬剤注入管の他方に形成された閉止部と、を有しており、前記複数のノズル孔は、前記供給部と前記閉止部との間に配置されている。
一態様では、前記ガイドは、前記薬剤注入管の表面から突出した構造を有している。
一態様では、前記ガイドは、前記薬剤注入管の延びる方向に移動可能に構成されている。
【0009】
一態様では、前記複数のノズル孔の穴径は、前記供給部から前記閉止部に向かって、大きくなっている。
一態様では、前記ガイドは、前記複数のノズル孔の少なくとも1つの一部分を塞ぐ、および/または前記複数のノズル孔のいずれかの全体を塞ぐ巻き付け構造を有している。
一態様では、前記ガイドは、前記複数のノズル孔の少なくとも1つに差し込まれた引っかけ構造を有している。
【0010】
一態様では、前記薬剤添加装置は、前記ガイドに取り付けられた、前記薬剤を前記脱水ケーキに導く分岐ガイドを備えている。
一態様では、薬剤添加装置は、前記薬剤注入管の表面に洗浄水を散布する散水装置を備えている。
【0011】
一態様では、高分子凝集剤を添加した凝集汚泥を濃縮装置で重力ろ過または圧搾して脱水した脱水ケーキに薬剤を添加する方法が提供される。薬剤添加方法は、前記薬剤を均一に分配するための複数のノズル孔を有する薬剤注入管に前記薬剤を供給し、前記薬剤を前記脱水ケーキに導くガイドを通じて、前記複数のノズル孔の少なくとも1つから前記薬剤を前記脱水ケーキに添加する。
【発明の効果】
【0012】
薬剤添加装置は、ガイドによって、薬剤注入管のノズル孔から吐出された薬剤を脱水ケーキに導く構造を有している。このような簡単な構造により、薬剤添加装置は、薬剤を安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】汚泥処理装置の一実施形態を示す模式図である。
図2】汚泥処理装置に適用される汚泥処理方法を示すフローチャートである。
図3】薬剤添加装置の一実施形態を示す図である。
図4】薬剤注入管の他の実施形態を示す図である。
図5】薬剤注入管の適用例を示す図である。
図6】薬剤注入管の適用例を示す図である。
図7】ガイドの全体を示す図である。
図8】脱水ケーキに挿入された吊り下げ部を示す図である。
図9図9(a)および図9(b)は、薬剤注入管に巻き付けられたガイドを示す図である。
図10図10(a)および図10(b)は、薬剤注入管に巻き付けられたガイドを示す図である。
図11図11(a)乃至図11(e)は、ガイドの他の実施形態を示す図である。
図12】薬剤注入管の他の実施形態を示す図である。
図13】ガイドの、薬剤注入管への装着例を示す図である。
図14図14(a)乃至図14(c)は、ガイドの他の実施形態を示す図である。
図15図15(a)および図15(b)は、薬剤注入管の他の実施形態を示す図である。
図16図16(a)および図16(b)は、薬剤注入管の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。以下で説明する複数の実施形態において、特に説明しない一実施形態の構成は、他の実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、汚泥処理装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示すように、汚泥処理装置100は、高分子凝集剤を調製するための高分子凝集剤溶解槽1と、無機凝集剤を貯留する無機凝集剤貯留槽2と、有機性汚泥と高分子凝集剤とが混合される凝集槽3と、凝集槽3において形成された凝集汚泥を脱水することによって脱水ケーキを形成する濃縮装置4と、脱水ケーキに無機凝集剤を添加する薬剤添加装置5と、無機凝集剤が添加された脱水ケーキを機械的に脱水する脱水機6と、を備えている。
【0016】
本実施形態では、無機凝集剤は、脱水ケーキの脱水のために使用される液状の薬剤の一例である。薬剤の他の例として、高分子凝集剤を挙げることができる。したがって、無機凝集剤貯留槽2は、薬剤貯留槽2と呼ばれてもよい。
【0017】
薬剤添加装置5は、液状の薬剤(例えば、無機凝集剤、高分子凝集剤)を添加するように構成されているが、一実施形態では、薬剤添加装置5は、添加する薬剤として、水道水や二次処理水のような液体であってもよく、または、酸性や塩基性の液体であってもよい。
【0018】
図2は、汚泥処理装置に適用される汚泥処理方法を示すフローチャートである。図2に示すように、汚泥処理方法は、有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集汚泥を形成する凝集工程S101と、凝集工程で形成された凝集汚泥を脱水する凝集汚泥脱水工程S102と、凝集汚泥脱水工程S102で形成された脱水ケーキに無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加工程(薬剤添加工程)S103と、無機凝集剤が添加された脱水ケーキを機械的に脱水する機械脱水工程S104と、を備えている。
【0019】
図1に示すように、高分子凝集剤は、高分子凝集剤溶解槽1において調製され、調製された高分子凝集剤は高分子凝集剤溶解槽1から凝集槽3に供給される。有機性汚泥は、凝集槽3に投入される。有機性汚泥および高分子凝集剤は、凝集槽3において混合され、凝集汚泥が形成される。凝集汚泥は配管を通じて濃縮装置4に供給される。
【0020】
濃縮装置4では、凝集汚泥は、重力ろ過または圧搾などの方法によって脱水され、脱水ケーキが形成される。脱水ケーキの形状は、特に限定されないが、無機凝集剤の分散性を考慮すると、脱水ケーキは平板形状を有していることが好ましい。濃縮装置4で使用されるろ過材の一例として、ろ布またはスクリーンを挙げることができる。脱水ケーキは、直接(例えば、落下)、または搬送コンベヤ(図示しない)によって薬剤添加装置5に供給される。薬剤添加装置5は、無機凝集剤貯留槽2から供給された薬剤(本実施形態では、無機凝集剤)を脱水ケーキに連続的に添加する。
【0021】
薬剤が添加された脱水ケーキは、脱水機6に搬送され、機械的に脱水される。結果として、脱水処理物が得られる。本実施形態では、汚泥処理装置100は、薬剤添加装置5を備えているため、脱水処理物の含水率はより一層低減され、結果として、廃棄物量は削減される。以下、薬剤添加装置5の構造の詳細について図面を参照して説明する。
【0022】
図3は、薬剤添加装置の一実施形態を示す図である。図3に示すように、薬剤添加装置5は、液状の薬剤(本実施形態では、無機凝集剤)を均一に分配するための複数のノズル孔11を有する薬剤注入管10と、複数のノズル孔11の少なくとも1つから薬剤を脱水ケーキに導くガイド12と、を備えている。
【0023】
薬剤注入管10は、その一方に形成された、薬剤を供給する供給部10aと、他方に形成された閉止部10bと、を有している。本実施形態では、薬剤注入管10は、有底状の円筒形状を有している。薬剤注入管10の一例として、塩ビ管を挙げることができる。
【0024】
供給部10aは薬剤注入管10の開口端であり、閉止部10bは薬剤注入管10の閉塞端である。複数のノズル孔11は、供給部10aと閉止部10bとの間に配置されている。したがって、閉止部10bをキャップ、プラグ、バルブなどの閉塞部材で閉じた状態で、供給部10aを通じて薬剤を供給することにより、薬剤は、複数のノズル孔11のうちの少なくとも1つから吐出(滴下)される。
【0025】
複数のノズル孔11のそれぞれは、薬剤の吐出箇所の数と、薬剤の流量に応じた穴径を有している。図3に示す実施形態では、複数のノズル孔11は、薬剤注入管10の延びる方向(言い換えれば、薬剤注入管10の軸線方向)に沿って一直線上に、一列だけ配列されている。
【0026】
図4は、薬剤注入管の他の実施形態を示す図である。図4に示すように、複数のノズル孔11は、必要に応じて、薬剤注入管10の延びる方向に沿って一直線上に、二列だけ配列されてもよい。一実施形態では、複数のノズル孔11は、供給部10aと閉止部10bとの間において、ランダムに配置されてもよい。
【0027】
ノズル孔11の向きは特に限定されない。しかしながら、例えば、鉛直下方向を向くように、ノズル孔11を配置した場合、薬剤注入管10内の薬剤が重力の作用により、長時間に亘って滴下してしまう。そこで、水平よりも上方向(斜め上方や真上)を向くように、ノズル孔11を配置することが好ましい。このような配置により、薬剤の流れる方向を制御することができ、ノズル孔11から吐出する薬剤を容易にガイド12に接触させることができる。
【0028】
薬剤の、薬剤注入管10への供給により、薬剤は、供給部10aから閉止部10bに向かって流れる。したがって、ノズル孔11から吐出された薬剤の流量は、閉止部10b側の流量よりも供給部10a側の流量の方が大きい。したがって、閉止部10b側の流量と、供給部10a側の流量と、をバランスさせるために、複数のノズル孔11の穴径は、供給部10aから閉止部10bに向かって、大きくなってもよい。
【0029】
図5および図6は、薬剤注入管の適用例を示す図である。図5に示すように、薬剤添加装置5は、薬剤注入管10,10をチーズ管15Aに接続することによって、T字型に配置されてもよい。図6に示すように、薬剤添加装置5は、薬剤注入管10をエルボ管15Bに接続することによって、L字型に配置してもよい。
【0030】
図7は、ガイドの全体を示す図である。図7に示すように、ガイド12は、薬剤注入管10に巻き付けられた巻き付け部12aと、巻き付け部12aから脱水ケーキに向かって延びる吊り下げ部12bと、を有している。本実施形態では、巻き付け部12aおよび吊り下げ部12bは、同一の材質から構成されているが、異なる材質から構成されてもよい。一実施形態では、ガイド12は、巻き付け部12aを有しているが、吊り下げ部12bを有していなくてもよい。
【0031】
図7の矢印に示すように、ガイド12は、薬剤注入管10の延びる方向に移動可能に構成されている。より具体的には、ガイド12の巻き付け部12aは薬剤注入管10に緩やかに巻き付けられている。したがって、巻き付け部12aは、吊り下げ部12bとともに薬剤注入管10の延びる方向に移動可能であるし、もちろん、薬剤注入管10に対する垂直方向(すなわち、鉛直方向)に回転可能である。図7に示す実施形態では、吊り下げ部12bの下端は、搬送される脱水ケーキの上方に位置している。
【0032】
ノズル孔11から吐出された薬剤は、巻き付け部12aおよび吊り下げ部12bを伝わって流下し、脱水ケーキの表面に導入される。吊り下げ部12bを有するガイド12は、吊り下げ部12bを流下する一定量の薬剤を脱水ケーキの目標位置に確実に添加することができる。結果として、薬剤添加装置5は、最終的に得られる脱水処理物の含水率を効率よく低減することができ、廃棄物量を削減することができる。
【0033】
ガイド12は、細く、柔らかい素材(例えば、結束バンド)から構成されていることが好ましい。このような構成により、脱水ケーキの搬送を阻害することなく、局所的に精度よく、薬剤を脱水ケーキに添加することができる。薬剤を精度よく脱水ケーキに添加するために、ガイド12は、先細り形状を有してもよい。
【0034】
ガイド12は、単純な構造を有し、安価な汎用素材(例えば、結束バンド)から構成されていることが好ましい。このような構成により、ガイド12が汚れた場合には、ガイド12を取り外して、ガイド12を清掃することができ、ガイド12の汚れがひどい場合には、ガイド12を容易に交換することができる。
【0035】
図8は、脱水ケーキに挿入された吊り下げ部を示す図である。図8に示すように、吊り下げ部12bの下端は、搬送される脱水ケーキの内部に位置してもよい。このような構成により、薬剤添加装置5は、吊り下げ部12bによって搬送される脱水ケーキにスリットを形成しつつ、薬剤をスリットに添加することができる。結果として、薬剤添加装置5は、脱水ケーキの内部まで薬剤を浸透させることができる。
【0036】
図9(a)および図9(b)は、薬剤注入管に巻き付けられたガイドを示す図である。図9(a)に示すように、ガイド12は、複数のノズル孔11の少なくとも1つの一部分を塞ぐ巻き付け構造を有してもよい。ガイド12でノズル孔11の一部分を塞ぐことによって、ガイド12は、ノズル孔11から吐出された薬剤の流量を調整することができる。
【0037】
薬剤の、ノズル孔11からの吐出流量は、薬剤の、薬剤注入管10への供給量に比例し、ノズル孔11の面積に反比例する。したがって、ガイド12によってノズル孔11の一部分を塞ぐことにより、ノズル孔11の穴径を変更することなく、ノズル孔11の面積を調整することができる。ガイド12によってノズル孔11の一部分を塞ぐことにより、薬剤の吐出流量を調整すると同時に、薬剤を容易に、ガイド12(より具体的には、吊り下げ部12b)を伝って流下させることができる。
【0038】
ガイド12の巻き付け部12aの幅は、ノズル孔11の穴径よりも大きくてもよく、小さくてもよい。巻き付け部12aの幅を含むガイド12のサイズは、薬剤の種類や流量、薬剤添加装置5の運転方法や設置環境に応じて、選択される。
【0039】
図9(b)に示すように、ガイド12は、複数のノズル孔11のいずれかの全体を塞ぐ巻き付け構造を有してもよい。ガイド12でノズル孔11の全体を塞ぐことによって、ガイド12は、薬剤の、ノズル孔11からの吐出を防止することができる。図9(b)に示す実施形態では、巻き付け部12aの幅は、ノズル孔11の穴径よりも大きい。
【0040】
本実施形態によれば、薬剤添加装置5は、ガイド12によって、薬剤注入管10のノズル孔11から吐出された薬剤を脱水ケーキに導く構造を有している。このような簡単な構造により、薬剤添加装置5は、薬剤を安定的に供給することができる。
【0041】
薬剤添加装置5は、ガイド12の位置(および向き)の調整により、薬剤の、ノズル孔11からの流量を調整することができる。越流堰を備える凝集剤添加装置(例えば、特許文献1参照)では、薬剤は、その液位の上昇によって脱水ケーキに添加される。したがって、越流堰の加工精度が高くないと、脱水ケーキの目標位置に薬剤を確実に添加することができないおそれがある。その一方で、本実施形態では、薬剤は、薬剤注入管10に供給される薬剤の圧力によって脱水ケーキに添加される。このような構造により、ノズル孔の加工精度が低くても、脱水ケーキの目標位置に薬剤を確実に添加することができる。
【0042】
さらに、本実施形態によれば、越流堰を通じて薬剤を供給する構造とは異なり、管形状を有する薬剤注入管10は、開放されていない。したがって、ごみなどの異物の、薬剤注入管10への混入を防止することができる。
【0043】
さらに、越流堰を通じて薬剤を供給する構造では、薬剤の流量が小さい場合には、薬剤は、安定的に越流堰を越流しないおそれがあるが、本実施形態では、ノズル孔11のサイズを調整することにより、低流量の薬剤が供給された場合であっても、安定的に薬剤をノズル孔11から吐出させることができる。
【0044】
仮に、付着物(例えば、薬剤)の付着によって、薬剤の、ノズル孔11からの流出が阻害された場合であっても、治具(例えば、千枚通し、ノズル孔11の穴径に対応したドリルビット)を使用することにより、容易に、付着物をノズル孔11から除去することができる。
【0045】
薬剤注入管10におけるノズル孔11の面積は極めて小さいため、薬剤注入管10を容易に洗浄可能である。したがって、薬剤添加装置5は、薬剤注入管10の表面に洗浄水を散布する散水装置20を備えてもよい(図3参照)。散水装置20は、薬剤注入管10(およびガイド12)の上方に配置されており、洗浄水をシャワー状に噴射するように構成されている。
【0046】
洗浄水の一例として、水道水を挙げることができるが、薬剤との反応に起因する析出物の析出を防止するために、洗浄水は、析出物の基となる成分を含まないか、含有量の少ない液体、あるいは、薬剤と反応しにくい成分を有する液体であることが望ましい。
【0047】
散水装置20は、付着物が薬剤注入管10(およびガイド12)に付着したときに、洗浄水を散布してもよく、定期的に、洗浄水を散布してもよい。洗浄水を定期的に散布することにより、付着物の固着によって生じるリスクを低減することができる。洗浄水を散布しても、洗浄水は、ノズル孔11を通じて、薬剤注入管10内には浸入しないため、薬剤が洗浄水によって希釈されるおそれはない。
【0048】
散水装置20は、薬剤のノズル孔11からの吐出開始前に、洗浄水をガイド12に散布して、ガイド12を濡らしてもよい。ガイド12を濡らすことにより、薬剤は、ガイド12をスムーズに伝わることができる。
【0049】
薬剤添加装置5は、薬剤注入管10を閉止する構造として、薬剤注入管10の閉止部10bに配置された開閉バルブ(図示しない)を備えてもよい。開閉バルブを開いた状態で、洗浄水を勢いよく薬剤注入管10に供給することにより、薬剤注入管10の内部およびノズル孔11を洗浄することができる。このような洗浄は、薬剤添加装置5を長期間使用しない場合や、薬剤注入管10内の薬剤が劣化した場合に有効である。
【0050】
図10(a)および図10(b)は、薬剤注入管に巻き付けられたガイドを示す図である。図10(a)および図10(b)に示す実施形態では、ガイド12は、巻き付け部12aを有しているが、吊り下げ部12bを有していない。このように、ガイド12は、薬剤注入管10の表面から突出した構造(すなわち、巻き付け部12a)を有してもよい。このような構造によっても、ノズル孔11から吐出された薬剤は、ガイド12を伝わって、脱水ケーキの目標位置に添加される。
【0051】
一実施形態では、ガイド12は、薬剤注入管10に巻き付けられた構造を有さない、ノズル孔11に接触、または隣接して配置された突起であってもよい。このような構造によっても、ノズル孔11から吐出された薬剤は、ガイド12を伝わって、脱水ケーキの目標位置に添加される。
【0052】
図10(a)に示すように、薬剤注入管10のノズル孔11を跨ぐように、ガイド12を薬剤注入管10に巻き付ける。ガイド12は、その巻き付けにより、ガイド12に形成された結束部分13を有している。ガイド12の結束部分13をノズル孔11に合わせることにより、結束部分13とノズル孔11との間には、僅かな隙間が形成される。したがって、薬剤注入管10に薬剤を供給することにより、薬剤は、この隙間を通じて、ノズル孔11から吐出される。
【0053】
図10(b)に示すように、ガイド12を回転させて、結束部分13をノズル孔11からずらすことにより、ノズル孔11はガイド12の巻き付け部12aによって閉塞される。結果として、薬剤の、ノズル孔11からの吐出が防止される。
【0054】
上述したように、薬剤の、ノズル孔11からの吐出流量は、ノズル孔11の面積に反比例する。したがって、ガイド12を僅かに回転させて、結束部分13をノズル孔11から僅かにずらすことにより、ノズル孔11の一部は、ガイド12の巻き付け部12aによって閉塞される。結果として、僅かな薬剤がノズル孔11の一部から吐出される。このように、ノズル孔11の面積を調整することにより、薬剤の吐出流量を調整することができる。
【0055】
図11(a)乃至図11(e)は、ガイドの他の実施形態を示す図である。図11(a)に示すように、ガイド12は、巻き付け部12aと、巻き付け部12aから鉛直下方向に延びる吊り下げ部12bと、を有してもよい。図11(b)に示すように、ガイド12は、吊り下げ部12bを支持するサポータ21Aを有してもよい。サポータ21Aは、吊り下げ部12bの姿勢を固定するために巻き付け部12aおよび吊り下げ部12bに接続されている。
【0056】
図11(b)に示す実施形態では、サポータ21Aは巻き付け部12aおよび吊り下げ部12bと同一の素材から構成されているが、図11(c)に示すように、ガイド12は、巻き付け部12aおよび吊り下げ部12bとは異なる素材から構成されたサポータ21Bを有してもよい。
【0057】
図11(d)に示すように、吊り下げ部12bは、必ずしも、鉛直下方向に延びている必要はなく、斜め下方向に延びてもよい。作業者は、巻き付け部12aを回転させることにより、吊り下げ部12bの延びる方向を容易に変更することができる。
【0058】
図11(e)に示すように、薬剤添加装置5は、ガイド12に取り付けられた、薬剤を脱水ケーキに導く分岐ガイド22を備えてもよい。分岐ガイド22は、巻き付け部12aに接続されている。図11(e)に示す実施形態では、分岐ガイド22は、吊り下げ部12bと同一の方向に延びているが、吊り下げ部12bと異なる方向に延びてもよい。分岐ガイド22の一例として、結束バンド、針金、または釣り糸を挙げることができる。
【0059】
ノズル孔11から吐出された薬剤は、吊り下げ部12bを伝わって流下し、かつ分岐ガイド22を伝わって流下する。したがって、薬剤添加装置5は、脱水ケーキの複数の目標位置に薬剤を添加することができる。図11(e)に示す実施形態では、薬剤添加装置5は、単一の分岐ガイド22を備えているが、一実施形態では、複数の分岐ガイド22を備えてもよい。
【0060】
図12は、薬剤注入管の他の実施形態を示す図である。図12に示すように、薬剤注入管10は、その最も低い位置に形成された平坦部10cを有してもよい。このような構造により、薬剤注入管10と巻き付け部12aとの間に隙間が形成されるため、作業者は、分岐ガイド22(図11(e)参照)を容易に巻き付け部12aに装着することができる。
【0061】
図13は、ガイドの、薬剤注入管への装着例を示す図である。図13に示すように、ガイド12は、薬剤注入管10に対して垂直に装着されてもよく、薬剤注入管10に対して傾けて装着されてもよい。特に、ノズル孔11の最下部に重なるように、ガイド12を装着することにより、ガイド12は、ノズル孔11から吐出された薬剤を確実に巻き付け部12aに接触させることができる。
【0062】
図14(a)乃至図14(c)は、ガイドの他の実施形態を示す図である。図14(a)に示すように、薬剤添加装置5は、複数のノズル孔11の少なくとも1つに差し込まれた引っかけ構造を有するガイド32を備えてもよい。
【0063】
図14(a)および図14(b)に示すように、ガイド32は、ノズル孔11に引っかけられたフック部32aと、フック部32aから延びる吊り下げ部32bと、を有している。ガイド32の一例として、針金を挙げることができる。図14(b)に示す実施形態では、吊り下げ部32bは、フック部32aから直線的に延びているが、図14(c)に示すように、吊り下げ部32bは、薬剤注入管10の表面に沿って湾曲してもよい。図14(c)では、湾曲する吊り下げ部32bは、鉛直下方向に延びている。本実施形態においても、ガイド32は、単一の素材から構成される必要はなく、複数の素材から構成されてもよい。
【0064】
上述した実施形態では、1つのノズル孔11に対して、1つのガイド12が配置されているが、1つのノズル孔11に対して、複数のガイド12が配置されてもよい。さらに、上述した実施形態では、ガイド12は、少なくとも、薬剤注入管10の表面から突出した構造(すなわち、巻き付け部12a)を有しているが、必ずしも、このような構造には限定されない。一実施形態では、ガイド12は、薬剤注入管10の表面に形成された窪みであってもよい。
【0065】
図15(a)および図15(b)は、薬剤注入管の他の実施形態を示す図である。図15(a)および図15(b)に示すように、薬剤注入管10は、ノズル孔11(すなわち、ガイド12)に隣接して配置された目盛り40を有してもよい。目盛り40は、薬剤注入管10の表面に形成されている。本実施形態では、複数の目盛り40が形成されているが、少なくとも1つの目盛り40が形成されてもよい。
【0066】
目盛り40を形成することにより、作業者は、薬剤注入管10の表面に広がる薬剤の流量を目視することができ、流量に応じて、薬剤の流量を調整することができる。図15(a)に示す実施形態では、薬剤注入管10の表面に広がる薬剤は、概ね、ノズル孔11から数えて1.5目盛りである。図15(b)に示す実施形態では、薬剤注入管10の表面に広がる薬剤は、概ね、ノズル孔11から数えて2.5目盛りである。
【0067】
作業者は、薬剤注入管10の表面に広がる薬剤がノズル孔11から数えて所定の基準目盛りに達したか否かを判断し、薬剤が基準目盛りに達した場合には、ガイド12を調整して、薬剤の流量を調整してもよい。
【0068】
図16(a)および図16(b)は、薬剤注入管の他の実施形態を示す図である。図16(a)および図16(b)に示すように、薬剤注入管10は、その表面に形成された凹部10dを有してもよい。図16(a)および図16(b)に示す実施形態では、凹部10dは、V字形状を有しているが、凹部10dの形状は本実施形態には限定されない。凹部10dは、互いに隣接するノズル孔11(すなわち、ガイド12)の間に形成されている。
【0069】
互いに隣接するガイド12の間の距離が小さい場合、互いに隣接するノズル孔11から吐出された薬剤が一体化して流れる可能性がある。図16(a)および図16(b)に示すように、薬剤注入管10の表面に凹部10dを形成することにより、薬剤は、凹部10dを避けて流れる。したがって、薬剤の一体化を防止するために、薬剤注入管10は凹部10dを備えてもよい。
【0070】
図16(a)に示す実施形態では、凹部10dは、薬剤注入管10の最も低い位置に部分的に形成されている。図16(b)に示す実施形態では、凹部10dは、薬剤注入管10の全周に亘って形成されている。
【0071】
図1乃至図16を参照して説明した実施形態は、適宜、組み合わせてもよい。例えば、図9(a)および図9(b)に示す実施形態に係るガイド12と、図10(a)および図10(b)に示す実施形態に係るガイド12と、を組み合わせてもよい。
【0072】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
1 高分子凝集剤溶解槽
2 無機凝集剤貯留槽
3 凝集槽
4 濃縮装置
5 薬剤添加装置
6 脱水機
10 薬剤注入管
10a 供給部
10b 閉止部
10c 平坦部
10d 凹部
11 ノズル孔
12 ガイド
12a 巻き付け部
12b 吊り下げ部
13 結束部分
15A チーズ管
15B エルボ管
20 散水装置
21A サポータ
21B サポータ
22 分岐ガイド
32 ガイド
32a フック部
32b 吊り下げ部
40 目盛り
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
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