(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068274
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】ドラム状構造体及びこれを用いた交通安全ドラム
(51)【国際特許分類】
E01F 13/02 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
E01F13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178589
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】391007460
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516159504
【氏名又は名称】株式会社Amazing Day
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真奈
(72)【発明者】
【氏名】青山 幸晴
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴男
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 愛弓
(72)【発明者】
【氏名】樽井 眞哉
【テーマコード(参考)】
2D101
【Fターム(参考)】
2D101CA05
2D101DA00
2D101EA08
2D101FA13
2D101GA02
(57)【要約】
【課題】折り畳んで小型車両により容易に搬送可能なドラム状構造体と、これを用いた交通安全ドラムを提供する。
【解決手段】本発明のドラム状構造体は段ボールで構成され、折り畳み可能な多角形の筒状本体10と、この筒状本体の内部に配置された中蓋30と、この筒状本体の端面を覆う外蓋50とからなる。中蓋30は中央から二つ折り可能であって、その対向する2辺が筒状本体10の対向する2面に取付けられており、中蓋を開いたときにその外周が多角形の筒状本体の内面に当接して多角形の形状を保持する。これに安全色の樹脂製カバーを被せて交通安全ドラムとすることができる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールで構成されたドラム状構造体であって、
折り畳み可能な多角形の筒状本体と、この筒状本体の内部に配置された中蓋と、この筒状本体の端面を覆う外蓋とからなり、
前記中蓋は中央から二つ折り可能であって、その対向する2辺が前記筒状本体の対向する2面に取付けられており、中蓋を開いたときにその外周が多角形の筒状本体の内面に当接して多角形の形状を保持するものであることを特徴とするドラム状構造体。
【請求項2】
段ボールが耐水段ボールであり、筒状本体の内面に、上下方向に延びる補強リブを形成したことを特徴とする請求項1に記載のドラム状構造体。
【請求項3】
請求項1に記載のドラム状構造体を上下2段に積み重ね、連結部材を用いて接続したことを特徴とするドラム状構造体。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のドラム状構造体の外周に、安全色の樹脂製カバーを被せたことを特徴とする交通安全ドラム。
【請求項5】
ドラム状構造体の内部に、重しとしてプラスチックコーンを収納したことを特徴とする請求項4に記載の交通安全ドラム。
【請求項6】
樹脂製カバーにロープを挿通するための鳩目を設けたことを特徴とする請求項4に記載の交通安全ドラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳んで運搬可能な段ボール製のドラム状構造体と、これを用いた交通安全ドラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路の分岐点や急カーブの外縁などには、車両衝突時の衝撃を緩衝するためのクッションドラムが多数設置されている。その一例は特許文献1に記載されている。この特許文献1にも記載されている通り、従来のクッションドラムはブロー成型された樹脂製の筒状体からなり、その内部に水を入れたり、水袋を入れて緩衝効果を持たせたものであった。
【0003】
このようなクッションドラムと水袋の合計最大重量は100kgを超え、かつ大型である。このため、交通事故現場などに仮設したい場合には最低でも小型貨物車両(2tトラック以上必要)で搬送する必要がある。このように、従来のクッションドラムは大型であって、交通事故現場などに小型車両を用いて迅速に設置できないという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献2には布製で折り畳み可能なクッションドラムが記載されている。しかしこのクッションドラムは水を入れた樹脂製容器の外側に布製の袋を貼り付ける構造であるから、やはり大型の樹脂製容器を設置場所まで運搬しなければならず、手軽に搬送するには不向きなものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-298932号公報
【特許文献2】特開2010-13825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、折り畳んで小型車両により容易に搬送可能なドラム状構造体及びこれを用いた交通安全ドラムを提供することである。なお、本発明品は段ボール製であって衝撃緩衝機能を持たないため、クッションドラムではなく交通安全ドラムと呼ぶ。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明のドラム状構造体は、段ボールで構成されたドラム状構造体であって、折り畳み可能な多角形の筒状本体と、この筒状本体の内部に配置された中蓋と、この筒状本体の端面を覆う外蓋とからなり、前記中蓋は中央から二つ折り可能であって、その対向する2辺が前記筒状本体の対向する2面に取付けられており、中蓋を開いたときにその外周が多角形の筒状本体の内面に当接して多角形の形状を保持するものであることを特徴とする。
【0008】
なお、段ボールが耐水段ボールであり、多角形の筒状本体の内面に、上下方向に延びる補強リブを形成した構造とすることが好ましい。
【0009】
また、このようなドラム状構造体を上下2段に積み重ね、連結部材を用いて接続した構造とすることができ、より小型化を図ることができる。
【0010】
本発明の交通安全ドラムは、このようなドラム状構造体の外周に、安全色の樹脂製カバーを被せたことを特徴とするものである。
【0011】
なお、筒状本体の内部に、重しとしてプラスチックコーンを収納することが好ましく、樹脂製カバーにロープを挿通するための鳩目を設けた構造とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のドラム状構造体は、段ボール製であるため軽量で剛性がある。しかも中蓋を平らに開けば多角形の筒状本体の形状を保持することができ、中蓋を二つ折りにすれば筒状本体も二つ折りにして略平板状に折り畳むことができる。このため小型車両に積載して事故現場等に容易に運ぶことができる。
【0013】
また本発明の交通安全ドラムは、ドラム状構造体の外周に安全色の樹脂製カバーを被せたものであるから、道路の事故現場や工事中の箇所等に設置すれば走行車両に注意を促すことができ、復旧後は樹脂製カバーを外し、内部のドラム状構造体を折り畳むことによって容易に撤去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】筒状本体の組み立て工程を示す水平断面図である。
【
図3】筒状本体を平板状に折り畳んだ状態を示す断面図である。
【
図6】操作用平板による中蓋の開閉状態を示す説明図である。
【
図7】筒状本体に中蓋を取り付け、平板状に畳んだ状態の図である。
【
図8】中蓋が逆V字状に持ち上げられた状態の斜視図である。
【
図9】中蓋が平らに拡げられた状態の斜視図である。
【
図11】外蓋を筒状本体に取付ける状態の斜視図である。
【
図12】ドラム状構造体を上下2段に積層した状態を示す斜視図である。
【
図14】連結部材を取り付けた筒状本体の展開図である。
【
図15】プラスチックコーンを収納した状態を示す斜視図である。
【
図16】プラスチックコーンを収納した状態を示す斜視図である。
【
図17】樹脂カバーを装着した交通安全ドラムの外観図である。
【
図18】樹脂カバーを装着した交通安全ドラムの外観図である。
【
図19】第2の実施形態のドラム状構造体を示す外観図である。
【
図20】第2の実施形態のドラム状構造体を示す斜視図である。
【
図21】第2の実施形態のドラム状構造体の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明のドラム状構造体の好ましい実施形態を説明する。
第1の実施形態のドラム状構造体は、筒状本体10を上下に2分割し、連結するタイプである。以下に下側の筒状本体10につき説明するが、上側の筒状本体10は同一構造で、その上下を反転させたものである。実施形態のドラム状構造体全体の素材は軽量で強度のある段ボールであり、強度、剛性、耐水性等の観点から、耐水段ボールを用いることが好ましい。筒状本体10は8角形の筒状体であり、
図1の展開図に示した部材を2枚連結して8角形とするものである。
【0016】
図1において、11は中央の第1パネルであり、その左右両側に第1パネル11よりも幅が狭い第2パネル12が連接され、その外側に更に幅が狭い第3パネル13がそれぞれ連接されている。第1パネル11と第2パネル12との間には折曲線14が形成され、第2パネル12と第3パネル13との間には折曲線15が形成されている。第3パネル13の外側にはL字状の端部パネル16が折曲線17を介して連接されている。
【0017】
本実施形態の第1パネル11、第2パネル12、第3パネル13は何れも高さが400mm程度の長方形であり、第2パネル12の下端部には四角形のフラップ18が連接されている。端部パネル16の下部は水平方向に突出した突出部19となっており、その上方は折曲線17から50mm程度離れた縦長のリブ20となっている。また第1パネル11の中央部には、水平方向に延びる2つのスリット21、22が形成されている。
【0018】
上記の形状に段ボールを打ち抜いたもの2枚を
図2の水平断面図に示すように折り曲げ、対向させて端部パネル16どうしを貼り合わせて連結する。これにより8角形の筒状本体10が形成される。この筒状本体10は
図3に示すようにほぼ平板状に折り畳むことができる。例えば第1パネル11の幅が249mm、第2パネル12の幅が184mm、第3パネル13の幅が116mmであるとすれば、折り畳んだサイズは約400×850mmとなり、小型乗用車の座席にも容易に載せることができるサイズである。2枚の端部パネル16を貼り合わせた部分は2重構造となり、上下方向の補強リブとして機能する。
【0019】
しかしこのままでは8角形の形状を保持できないので、
図4に示す中蓋30が筒状本体10の内部に取付けられている。中蓋30は筒状本体10の内面形状に対応する8角形の平板であり、やはり段ボール製である。中蓋30は中央の折曲線31から折り曲げ可能である。また中蓋30の対向する2辺には折曲線32を介して差し込みフラップ33が設けられており、これらの差し込みフラップ33を前記した第1パネル11のスリット22に挿入し、接着して固定してある。このため、筒状本体10の対向する2枚の第1パネル11、11間は、中蓋30により連結された構造となっている。また中蓋30の折曲線31の両端に位置には、略V字状の切込み34が形成されている。その深さは前記した縦長のリブ20の幅とほぼ同一としてある。
【0020】
さらに中蓋30の片側の上面には、
図5に示す操作用平板40が取り付けてある。操作用平板40は中蓋30の約半分の形状であって、
図5の下辺部が中蓋30の中央部分に固定されているが、その他の部分は固定されていない。このため
図6(A)に示すように操作用平板40を引き上げれば中蓋30は中央部を持ち上げられて逆V字状に折り曲げられる。逆に操作用平板40を
図6(B)に示すように中蓋30に向かって押し下げれば、中蓋30は平面状に拡がることとなる。中蓋30は開いたときにその外周が多角形の筒状本体10の内面に当接して、多角形の形状を保持する。なお、中蓋30と操作用平板40には中心孔36が形成されているので、指先を入れて中蓋30の中央部を直接引き上げることもできる。
【0021】
図7に、操作用平板40を引き上げて中蓋30が折り畳まれた状態を示す。
図8に操作用平板40を引き上げて中蓋30が逆V字状に折り曲げられた様子を示す。
図9に中蓋30を平面状に開いてその外周が多角形の筒状本体10の内面に当接した状態を示す。中蓋30を押し下げて行くと折り畳まれていた筒状本体10は次第に拡がり8角形となる。中蓋30は平面状に拡がるとその底面が端部パネル16の下部に突設された突出部19に当接し、それよりは下がらないように保持される。また
図9に示されるように、8角形に拡がった筒状本体10の内面には端部パネル16を張り合わせた部分が補強リブとして内側に張り出しており、強度と剛性を高めている。
【0022】
このように構成された筒状本体10はそのままでは端部が開口しているので、
図10に示す外蓋50が取り付けられる。外蓋50は8角形であり、対向する2辺には先端に差込片51を備えた第1フラップ52が形成されており、これに直交する他の対向する2辺には先端に切込み53が入った第2フラップ54が形成されている。
【0023】
図11に示すように、これらのフラップは垂直に折り曲げられ筒状本体10に被せられる。このとき第2フラップ54は筒状本体10の内側に挿入され、先端の切込み53は端部パネル16の下部に突設された突出部19に嵌まり込む。また第1フラップ52は筒状本体10の外側にあり、その先端の差込片51は内側に折り曲げられて第1パネル11のスリット21に差し込まれる。この結果、筒状本体10の下部端面は外蓋50により覆われる。
【0024】
このように下側のドラム状構造体が形成されるが、上側のドラム状構造体も同様に形成し、上側のドラム状構造体を反転させて
図12に示すように上下2段に積み重ねる。積み重ねたドラム状構造体は、
図13に示す連結部材60により連結される。連結部材60は一方の筒状本体10の第1パネル11の外面に接着して用いられるもので、その先端の差し込み片61を相手方の筒状本体10の第1パネル11に形成されたスリット21に差し込み安定させる。なお、連結部材60は
図14に示すように最初から第1パネル11に貼り付けておくことが好ましく、
図7、
図8、
図9には連結部材60を貼り付けた状態が図示されている。
【0025】
このようにして上下2段型のドラム状構造体が得られるが、これを交通安全ドラムとして用いるために、
図15、16のようにその内部に重しとしてプラスチックコーン70を収納する。プラスチックコーン70は道路工事現場等で常用されているもので、適当な重さがあるため、これを下側のドラム状構造体の外蓋50の上に置けば、風によって倒れたりすることがないように全体を安定させることができる。なお重しは必ずしもプラスチックコーン70に限定されるものではないが、道路管理会社には多数のプラスチックコーン70があるため、これを利用すれば便利である。
【0026】
また、ドラム状構造体を交通安全ドラムとして用いるために、
図17、18に示されるように、ドラム状構造体の外周に赤色、黄色、黒色などの安全色の樹脂製カバー80を被せて使用する。図示のように市松模様とすることが好ましい。樹脂製カバー80の一部は透明部83として内部のドラム状構造体が観察できるようにしてもよい。樹脂製カバー80はファスナー81により簡便に開けるようにし、容易に着脱できるようにしておくものとする。また、樹脂製カバー80の上下に鳩目82を設け、これにロープを通して複数の交通安全ドラムを連結したうえで、現場のガードレールなどに縛り付けることができるようにすることが好ましい。なお、樹脂製カバー80で全体をカバーすれば全体の形状が安定するうえ、雨天時にも安心して使用できる効果もある。また、道路に雨水が溜まっているような場合には、樹脂製あるいは金属製の防水トレイを下部に装着してもよい。
【0027】
以上に説明した第1の実施形態の上下2段型のドラム状構造体は、上下に分割できるので折り畳めばサイズが小さくなり、前記したように小型車両の座席にも搭載できる利点がある。次に説明する第2の実施形態は
図19、
図20に示すようにドラム状構造体を縦長として一体型としたものである。その筒状本体10の展開図は
図21に示す通りであり、端部パネル16の形状が第1の実施形態とは異なり、上下に突出部19を備えている。また一体型であるため連結部材60は不要であるが、その他の構成は第1の実施形態とほぼ同様であるから対応する部分に同一の符号を付けて、説明を省略する。なお、第2の実施形態のドラム状構造体の高さは第1の実施形態の2倍となるが、小型車両のトランクには容易に積載可能なサイズである。
【0028】
以上に説明したように、本発明のドラム状構造体は軽量で折り畳み可能であるから小型車両によっても運搬が容易であり、これを利用した交通安全ドラムは事故現場などに迅速に設置できる利点がある。
【符号の説明】
【0029】
10 筒状本体
11 第1パネル
12 第2パネル
13 第3パネル
14 折曲線
15 折曲線
16 端部パネル
17 折曲線
18 フラップ
19 突出部
20 リブ
21 スリット
22 スリット
30 中蓋
31 折曲線
32 折曲線
33 差し込みフラップ
34 切込み
36 中心孔
40 操作用平板
50 外蓋
51 差込片
52 第1フラップ
53 切込み
54 第2フラップ
60 連結部材
61 差し込み片
70 プラスチックコーン
80 樹脂製カバー
81 ファスナー
82 鳩目
83 透明部