(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068276
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】モータ駆動方法
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20240513BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240513BHJP
【FI】
H02P27/08
H02M7/48 F
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178592
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 貴明
(72)【発明者】
【氏名】竜野 仁一
(72)【発明者】
【氏名】平地 栄二
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA06
5H505BB04
5H505CC01
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE50
5H505HA09
5H505HB01
5H770AA07
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA41
5H770EA01
5H770EA21
5H770EA27
5H770GA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】三相モータをパルス幅変調方式で三相変調運転モードと二相変調運転モードで運転を切り替える際に、三相変調信号と二相変調信号が混在する比率を変化させる遷移運転モードを設けて運転切替えがスムーズに行えるモータ駆動方法を提供する。
【解決手段】制御回路は、パルス幅変調信号として三相変調信号をインバータ回路に出力する三相変調運転モードと、パルス幅変調信号として二相変調信号をインバータ回路に出力する二相変調運転モードと、三相変調運転モードと二相変調運転モードとを相互に切り替える遷移運転モードを有し、制御回路は、予め設定された基準信号に応じて遷移運転モードに移行し、所定電気角単位で三相変調信号と二相変調信号が混在する比率を漸進変化させた遷移変調信号をインバータ回路に出力して運転切り替えが行われる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相コイルを有する固定子を備える三相モータをパルス幅変調方式にて正弦波通電して駆動するモータ駆動方法であって、
一対のハイサイドアーム及びローサイドアームを備えた出力素子を三相分備え前記三相コイルのうち二相に出力するインバータ回路と、
外部指令装置からの出力指令に基づいて所定のデューティ比でパルス幅変調通電方式にて前記インバータ回路へ出力を制御する制御回路と、を備え、
前記制御回路は、パルス幅変調信号として三相変調信号を前記インバータ回路に出力する三相変調運転モードと、パルス幅変調信号として二相変調信号を前記インバータ回路に出力する二相変調運転モードと、前記三相変調運転モードと前記二相変調運転モードとを相互に切り替える遷移運転モードを有し、
前記制御回路は、予め設定された基準信号に応じて前記遷移運転モードに移行し、所定電気角単位で三相変調信号と二相変調信号が混在する比率を漸進変化させた遷移変調信号を前記インバータ回路に出力して運転切り替えが行われることを特徴とするモータ駆動方法。
【請求項2】
前記制御回路は、遷移運転モードにおいて、所定の通電区間単位で三相変調信号と二相変調信号が交互に出力され、所定の通電区間の中央を基準として出力される三相変調信号又は二相変調信号の通電波形が対称となるように出力される請求項1記載のモータ駆動方法。
【請求項3】
前記制御回路は、起動運転時には三相変調信号を生成して前記インバータ回路に出力し、高回転、高負荷又は高温になると、遷移運転モードを経て、二相変調信号を前記インバータ回路に出力する請求項1又は請求項2記載のモータ駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相モータをパルス幅変調方式で三相変調運転モードと二相変調運転モードで切り替えて駆動可能なモータ駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三相ブラシレスモータなどの三相モータの駆動をPWM(パルス幅変調)制御で行う場合、各相コイルへの通電のタイミングの差異により三相変調モードと二相変調モードとで何らかの基準信号(モータ回転数やデューティ比等)によりヒシテリシスを設けて運転を切り替える場合がある。PWM制御は、スイッチング素子のスイッチングパルス幅を可変として、出力波形の1サイクル中に多数のパルス列を作りパルス幅の平均電圧が正弦波状に出力される。
三相変調モードは、三相インバータ回路におい三相コイルに対する出力電圧を同時に変調させるものであり、二相変調モードは三相コイルのうち、一相の出力がハイ若しくはローに固定され、他の二相コイルの出力電圧を同時に変調させている。
【0003】
二相変調モードは三相変調モードに比べてFETなどのスイッチング素子のスイッチング回数を低減させることができ、スイッチング素子の発熱量を減らすなどエネルギー効率の点では有利である。しかしながら、二相変調モードの場合、低速駆動の時の制御性が悪く騒音が大きいことやブースストラップ回路を使用している場合、起動時にハイ側FETの連続ON時間に制約が発生するという問題がある。
【0004】
PWM制御信号として二相変調信号を用いる場合、モータの起動時や低速度回転時など、PWM信号のパルス幅がその最小パルス幅を下回った場合には、スイッチング素子を的確にオン,オフできなくなり、モータを安定して駆動できない状態となる。これを改善するため、コントローラは、二相変調形式のパルス幅変調信号を算出し、算出したパルス幅変調信号の最短パルス幅が設定値未満となる場合には、算出したパルス幅変調信号を、最小パルス幅が設定値以上でかつ算出したパルス幅変調信号と相間電圧が同じとなる三相変調形式のパルス幅変調信号に補正し、補正したパルス幅変調信号によりスイッチング素子をオン,オフ駆動するモータ駆動装置が提案されている(WO2018/047236号公報;特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような不具合をなくすため、モータ起動時は、三相変調運転にて起動運転し、高回転や高負荷や高温での運転に移行すると、二相変調運転に切り替えて運転することが考えられる。この三相変調モードと二相変調モードの運転の切り替えを行う場合、切り替え時に出力差が発生し、電流変動や騒音が発生するおそれがある。
また、運転切り替えのための基準信号(モータ回転数やデューティ比等)に十分なヒシテリシスを設けないと運転切り替えが頻繁に発生したり、負荷状態でもモータ駆動状態が異なったりするおそれがある。
特にモータの負荷やインバータ回路の動作状況によっては、二相変調と三相変調とで切り替える前後でモータの回転数やトルクなどに急激な変動(振動や機械構造的な損傷)が発生してしまうおそれがある。このため、精度の高い回転センサを設けるとすればコストが嵩み、運転切り替えの条件を厳しく設定するとすれば運転切り替えが柔軟に実行できないという課題も生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述した様々な課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、三相モータをパルス幅変調方式で三相変調運転モードと二相変調運転モードで運転を切り替える際に、三相変調信号と二相変調信号が混在する比率を変化させる遷移運転モードを設けて運転切替えがスムーズに行えるモータ駆動方法を提供することにある。
【0008】
三相コイルを有する固定子を備える三相モータをパルス幅変調方式にて正弦波通電して駆動するモータ駆動方法であって、一対のハイサイドアーム及びローサイドアームを備えた出力素子を三相分備え前記三相コイルのうち二相に出力するインバータ回路と、外部指令装置からの出力指令に基づいて所定のデューティ比でパルス幅変調通電方式にて前記インバータ回路へ出力を制御する制御回路と、を備え、前記制御回路は、パルス幅変調信号として三相変調信号を前記インバータ回路に出力する三相変調運転モードと、パルス幅変調信号として二相変調信号を前記インバータ回路に出力する二相変調運転モードと、前記三相変調運転モードと前記二相変調運転モードとを相互に切り替える遷移運転モードを有し、前記制御回路は、予め設定された基準信号に応じて前記遷移運転モードに移行し、所定電気角単位で三相変調信号と二相変調信号が混在する比率を漸進変化させた遷移変調信号を前記インバータ回路に出力して運転切り替えが行われることを特徴とする。
これにより、三相モータをパルス幅変調方式で三相変調運転モードと二相変調運転モードで運転を切り替える際に、制御回路は、予め設定された基準信号に応じて遷移運転モードに移行し、所定電気角単位で三相変調信号と二相変調信号が混在する比率を漸進変化させた遷移変調信号をインバータ回路に出力するので、運転切替えがスムーズに行え、負荷状態でも安定したモータ駆動を実現することができる。
【0009】
前記制御回路は、遷移運転モードにおいて、所定の通電区間単位で三相変調信号と二相変調信号が交互に出力され、所定の通電区間の中央を基準として三相変調信号及び二相変調信号の通電波形が対称となるように出力されるようにしてもよい。
これにより、遷移運転モードにおいて、切り替え時における三相コイルの相間電圧の差異による変動のバランスが取れるため、モータ駆動状態が安定したまま運転を切り替えることができる。
【0010】
前記制御回路は、起動運転時には三相変調信号を生成して前記インバータ回路に出力し、高回転、高負荷又は高温になると、遷移運転モードを経て二相変調信号を前記インバータ回路に出力するようにしてもよい。
これにより、低速駆動の時は制御性の良い三相変調とし、高回転、高負荷又は高温になった場合にはエネルギー利用効率の良い二相変調とすることで、低速駆動時の安定運転と高回転高負荷高音時の省エネルギー性を両立し、運転全体として低騒音化とスイッチング素子の発熱量を減らすなどのエネルギー利用効率向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
三相モータをパルス幅変調方式で三相変調運転モードと二相変調運転モードで運転を切り替える際に、三相変調信号と二相変調信号が混在する比率を変化させる遷移運転モードを設けて運転切替えがスムーズに行え、負荷状態でも安定したモータ駆動状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は三相変調運転モードの電圧波形である。
【
図2】
図2は二相変調運転モードの電圧波形である。
【
図3】
図3は遷移変調運転モードの電圧波形である。
【
図4】
図3の遷移変調運転モードの電圧波形の構成図である。
【
図5】遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率100対0の電圧波形である。
【
図6】遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率90対10の電圧波形である。
【
図7】遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率50対50の電圧波形である。
【
図8】遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率10対90の電圧波形である。
【
図9】遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率0対100の電圧波形である。
【
図10】モータ駆動回路の一例を示すブロック構成図である。
【
図11】電気角30度を単位とした遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率50対50の電圧波形である。
【
図12】電気角120度を単位とした遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率50対50の電圧波形である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るモータ駆動方法の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。モータ駆動装置の一例について、
図10を参照して説明する。煩雑化を避けるため、クロック発生部、通信部、モータ電流検出回路等の記載は省略する。また、三相モータの一例として、三相ブラシレスモータを例示して説明する。
【0014】
図10において、三相ブラシレスモータ1は、例えば回転子に永久磁石界磁を備え、固定子に機械角120°位相差で極歯が永久磁石に対向配置された固定子コアを有し、各極歯にはモータコイルが巻かれており、U相、V相、W相の各相端がインバータ回路2に接続されている。インバータ回路2は、直流電源2aから電源供給されている。尚、モータコイルは隣接相を接続し中性点を持たないデルタ結線されていてもよい。三相ブラシレスモータ1は、インナーローター型でもアウターローター型でもいずれでもよい。また、永久磁石型界磁としては永久磁石埋め込み型(IPM)モータや表面永久磁石型(SPM)モータのいずれであってもよい。
【0015】
外部指令装置3は回転指令(RUN)を制御回路4(MPU)に送出する。制御回路4は、図示しない論理回路(LOGIC)やPWMコントローラ、電流アンプ及びADコンバータ回路等を内蔵している。論理回路は、電気角180°通電の通電パターンを記憶している。PWMコントローラは、通電パターンに基づいたPWM制御信号を生成する。
【0016】
制御回路4は、外部指令装置3から回転指令を受け取ると論理回路(LOGIC)やPWMコントローラを通じてPWM制御信号を生成する。PWMコントローラは直流のゲート信号をゲートドライバ5へ送出する。ゲートドライバ5はゲート信号を受けて、電圧増幅したゲート出力をインバータ回路2へ送出する。ゲートドライバ5には、ゲート出力電圧を昇圧するチャージポンプ回路や貫通電流防止回路などが内蔵されている。インバータ回路2は、三相ハーフブリッジ構成のインバータ回路であり、ゲートドライバ5からゲート出力が入力されると各相のハイサイドアームまたはローサイドアームのスイッチング素子(FET)がオンとなり、電力増幅されたコイル電圧が三相コイルU,V,Wに出力される。スイッチング素子はFETが用いられ、ボディーダイオードが内蔵されている。
【0017】
次に、上述したモータ駆動装置を用いたモータ駆動方法の一例について説明する。モータ駆動方法は、モータ起動時に三相変調モードにて起動運転し、予め設定された基準信号(例えばモータ回転数)に応じて、遷移運転モードを経て、二相変調モード運転に切り替える場合を例示する。この三相変調運転モードから二相変調運転モードの運転に移行する間の遷移運転モードについて、
図1乃至
図9の電圧波形図を参照して説明する。
【0018】
三相ブラシレスモータ1は、モータ起動時に三相変調運転モードで起動運転し、高回転や高負荷や高温状態になると、遷移変調運転モードを経て二相変調運転モードに切り替えられる。
図1は、三相変調運転モードにおけるモータコイルに印加されるコイル電圧波形(PWM変調された電圧の微小時間平均値の波形)である。実線はU相コイル電圧、点線はV相コイル電圧、破線はW相コイル電圧を示し、各相それぞれに微小時間平均値が正弦波となるようにPWM変調された電圧が供給される。以降、この「モータコイルに印加されるPWM変調された電圧の微小時間平均値」のことを「コイル平均印加電圧」と表現する。
【0019】
図2は、二相変調運転モードにおけるモータコイルに印加されるコイル平均印加電圧の波形である。二相変調方式(上下方式)は、PWM制御において、変調波と比較する信号波の1周期のうちで、特定の区間だけ1相の電圧がハイ又はローに固定され、他の2相の電圧が変調される方式である。例えば、電気角60度から120度区間においてU相電圧がハイに固定され、V相及びW相はU相に対して電気角120度、電気角240度遅れた信号が出力される。同様に電気角120度から180度区間においてはV相電圧がローに固定され、U相及びW相はV相に対して電気角120度、電気角240度遅れた信号が出力される。
【0020】
次に遷移運転モードについて
図2乃至
図9のコイル平均印加電圧の波形図を参照して説明する。
図2に示すように二相変調運転時はコイル平均印加電圧が100%若しくは0%となる区間が電気角60度ごとに変化する。このため、遷移運転モードの一例である
図4に示すように、電気角60度区間単位で1回転する間に、三相変調信号と二相変調信号を合わせて12回コイル平均印加電圧の波形が切り替えられる。このように遷移運転モードにおいては三相変調信号と二相変調信号の波形が混在することになる。このとき、電気角60度区間単位で三相変調信号の比率を減らし二相変調信号の比率を増加させるように変化させるのが遷移運転モードとなる。具体的には、電気角60度回転するごとに、三相変調信号と二相変調信号の混在比率を漸進変化させる。尚、二相変調運転モードから三相変調運転モードに移行する場合には、遷移運転モードにおいて電気角60度区間単位で二相変調信号の比率を減らし三相変調信号の比率を増加させるように変化させる。
【0021】
以下、遷移運転モード具体例について説明する。
図5は、三相ブラシレスモータが1回転する間の三相変調信号と二相変調信号の混在比率が100対0であるコイル平均印加電圧波形である。電気角60度単位で三相変調信号のみが出力されている。
【0022】
図6は、三相ブラシレスモータが1回転する間の三相変調信号と二相変調信号の混在比率が90対10であるコイル平均印加電圧波形である。電気角60度単位で三相変調信号の割合が多いが、二相変調信号がわずかであるが混在している。
【0023】
図7は、三相ブラシレスモータが1回転する間の三相変調信号と二相変調信号の混在比率が50対50であるコイル平均印加電圧波形である。電気角60度単位で三相変調信号が半分で二相変調信号が半分となるように出力される。
【0024】
図8は、三相ブラシレスモータが1回転する間の三相変調信号と二相変調信号の混在比率が10対90であるコイル平均印加電圧波形である。電気角60度位で二相変調信号の割合が多いが、三相変調信号がわずかであるが混在している。
【0025】
図9は三相ブラシレスモータが1回転する間の三相変調信号と二相変調信号の混在比率が0対100であるコイル平均印加電圧波形である。電気角60度単位で二相変調信号のみが出力されている。
【0026】
図3及び
図4のコイル平均印加電圧波形図に示すように、遷移運転モードにおいて、電気角60度通電区間単位で三相変調信号と二相変調信号が交互に出力され、電気角60度通電区間の中央を基準として三相変調信号及び二相変調信号の通電波形が対称波形となるように出力される。
これにより、遷移運転モードにおいて三相変調信号と二相変調信号の切り替え時における三相コイルの相間電圧の差異による変動のバランスが取れるため、モータ駆動状態が安定したまま運転を切り替えることができる。
【0027】
上述した遷移運転モードにおいては、三相変調信号と二相変調信号の混在比率を、100対0,90対10、50対50,10対90,0対100のように変化させたが、これに限定されるものではなく、混在比率を任意に設定することで、さらに急速に変化させることも或いはゆっくり変化させることも可能である。また、遷移運転中のコイル平均印加電圧波形のままモータを駆動することができるため、全体としてつなぎ目のない遷移動作を実現することができる。
【0028】
以上説明したように、三相モータをパルス幅変調方式で三相変調運転モードと二相変調運転モードで運転を切り替える際に、制御回路4は、予め設定された基準信号に応じて遷移運転モードに移行し、所定電気角単位で三相変調信号と二相変調信号が混在する比率を漸進変化させた遷移変調信号をインバータ回路2に出力するので、運転切替えがスムーズに行え、負荷状態でも安定したモータ駆動を実現することができる。
【0029】
モータ駆動方法は、三相変調運転モードにて起動運転し、予め設定された基準信号(例えばモータ回転数)に応じて、遷移運転モードを経て、高速或いは高負荷に対応する二相変調運転モードに運転を切り替える場合を例示したが、二相変調運転モードから基準信号に応じて遷移運転モードを経て、三相変調運転モードに遷移する場合であってもよい。
また、運転切り替えを行う基準信号はモータ回転数に限らず、三相変調信号或いは二相変調信号のPWM制御パルスのデューティ比、(図示していない)温度センサにより取得されるモータ温度、などを基準に行ってもよい。
【0030】
モータ1は三相であり、コイル平均印加電圧波形は正弦波を基本としていることより正負の位相範囲が存在することから、前述の実施例では所定電気角として電気角60度(=電気角一周360度÷3相÷2)を単位として選択し、電気角60度通電区間の中央を基準として三相変調信号及び二相変調信号の通電波形が対称波形となるように出力される。
【0031】
(変形例1)
電気角60度以外の所定電気角を単位通電区間としても良い。例えば
図11に示すような電気角30度を単位通電区間とすることも可能である。このように、電気角60度を単位通電区間とする場合と比較して二相変調と三相変調の切り替えをより頻繁に実行することで、変調の切り替え前後の微細なトルクリプルをより低減させ滑らかなモータ回転を実現でき、不要な振動周波数をより高い帯域へシフトさせることができ、固有振動数を持つ負荷との共振を回避することができる。
【0032】
(変形例2)
さらに別の例として、
図12に示すような電気角120度を単位通電区間とすることも可能である。このように、電気角60度を単位通電区間とする場合と比較して二相変調と三相変調の切り替えをより粗に実行することで、変調の切り替え前後の微細なトルクリプルの1回転あたりの回数が減り、不要な振動周波数をより低い帯域へシフトさせることができ、固有振動数を持つ負荷との共振を回避することができる。また、二相変調と三相変調の切り替え頻度の低減によりモータコイル電流の高調波を原因とする不要輻射を低減することができる。
【0033】
このように、単位通電区間とする所定電気角は60度以外に、30度、90度、120度、180度、360度、などの任意の角度を採用することもできる。モータの制御に求められる特性や、モータの極数,巻線,結線方法,などの違いに応じて適宜選択することができる。
【0034】
上述したモータ駆動方法は、例えば、インバータエアコンやインバータ家電製品、圧縮機など電圧型インバータ制御システムに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0035】
1 三相ブラシレスモータ 2 インバータ回路 2a 直流電源 3 外部指令装置 4 制御回路 5 ゲートドライバ
【手続補正書】
【提出日】2023-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
【
図1】
図1は三相変調運転モードの電圧波形である。
【
図2】
図2は二相変調運転モードの電圧波形である。
【
図3】
図3は遷移変調運転モードの電圧波形である。
【
図4】
図3の遷移変調運転モードの電圧波形の構成図である。
【
図5】遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率100対0の電圧波形である。
【
図6】遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率90対10の電圧波形である。
【
図7】遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率50対50の電圧波形である。
【
図8】遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率10対90の電圧波形である。
【
図9】遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率0対100の電圧波形である。
【
図10】モータ駆動回路の一例を示すブロック構成図である。
【
図11】電気角
120度を単位とした遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率50対50の電圧波形である。
【
図12】電気角
30度を単位とした遷移変調運転モードにおける三相変調電圧と二相変調電圧の混在比率50対50の電圧波形である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
(変形例1)
電気角60度以外の所定電気角を単位通電区間としても良い。例えば
図11に示すような電気角
120度を単位通電区間とすることも可能である。このように、電気角60度を単位通電区間とする場合と比較して二相変調と三相変調の切り替えをより
粗に実行することで、
変調の切り替え前後の微細なトルクリプルの1回転あたりの回数が減り、不要な振動周波数をより低い帯域へシフトさせることができ、固有振動数を持つ負荷との共振を回避することができる。また、二相変調と三相変調の切り替え頻度の低減によりモータコイル電流の高調波を原因とする不要輻射を低減することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
(変形例2)
さらに別の例として、
図12に示すような電気角
30度を単位通電区間とすることも可能である。このように、電気角60度を単位通電区間とする場合と比較して二相変調と三相変調の切り替えをより
頻繁に実行することで、
変調の切り替え前後の微細なトルクリプルをより低減させ滑らかなモータ回転を実現でき、不要な振動周波数をより高い帯域へシフトさせることができ、固有振動数を持つ負荷との共振を回避することができる。