(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068290
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】刈取作業機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/63 20060101AFI20240513BHJP
A01D 34/82 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A01D34/63
A01D34/82
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178620
(22)【出願日】2022-11-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】397008775
【氏名又は名称】有限会社曽田農機設計事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】曽田 清
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA15
2B083CA10
2B083CA28
2B083HA60
(57)【要約】
【課題】前進走行時及び後進走行時の両方において円滑で且つ安定的な刈取作業を行うことができる刈取作業機を提供することを課題とする。
【解決手段】その間に対象物が通過する通過スペースが形成された左右のクローラ式走行装置と、それらに支持された走行機体と、通過スペースの前後一方の端側に位置するように走行機体に連結された刈取部と、走行機体の刈取部の反対側に設けられた当接部と、刈取部に設けられた当接部とを備え、当接部は対象物を走行方向に倒伏させるように構成され、各クローラ式走行装置に、それを前後進の両側に駆動させる走行駆動装置を設け、刈取部は対象物の刈り取る左右一対の刈取回転体を有し、左右の刈取回転体をその間から対象物を後方に掻き込む側と前方に掻き込む側との両方に駆動させることが可能な刈取駆動装置は、走行機体側における通過スペースに臨まない位置に配置された。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前進走行時と後進走行時の両方で対象物を刈り取る刈取作業を行うことが可能な刈取作業機であって、
左右一対のクローラ式走行装置と、
左右のクローラ式走行装置に支持された走行機体と、
前記走行機体の前側又は後側に連結され且つ刈取作業を行う刈取部と、
左右のクローラ式走行装置毎に設けられ且つ該クローラ式走行装置を走行駆動させる一対の走行駆動装置と、
前記刈取部を刈取駆動させる刈取駆動装置と、
前記刈取部側と、前記走行機体における前記刈取部が連結された側と反対の端側とに夫々設けられた前後の当接部と、を備え、
前記当接部は、走行機体の進行方向側に位置している際、対象物と当接し、該対象物を前記進行方向に倒伏させるように構成され、
各走行駆動装置は、駆動対象としたクローラ式走行装置側に配置され、且つ、該クローラ式走行装置を正転側に駆動させる前進状態と、逆転側に駆動させる後進状態と、駆動停止させる停止状態と、に切換可能に構成され、
前記刈取部は、回転作動によって対象物の刈り取りを行う左右一対の刈取回転体を有し、
前記刈取駆動装置は、刈取部の前側の対象物を左右の刈取回転体の間に掻き込んで後方に送る方向に各刈取回転体を回転駆動させる後方掻込状態と、刈取部の後側の対象物を左右の刈取回転体の間に掻き込んで前方に送る方向に各刈取回転体を回転駆動させる前方掻込状態と、に切換可能に該刈取部を駆動するように構成され、
前記走行機体の直下における左右のクローラ式走行装置の間には、未刈状態の対象物又は刈り取った対象物が通過する通過スペースが形成され、
前記刈取部は前記通過スペースの端側に配置され、
前記刈取駆動装置は前記走行機体における前記通過スペースに臨まない側に配置された
刈取作業機。
【請求項2】
前記走行駆動装置及び前記刈取駆動装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記走行機体の前進走行時に前記刈取部を後方掻込状態に切り換える一方で、前記走行機体の後進走行時に前記刈取部を前方掻込状態に切り換えるように構成された
請求項1に記載の刈取作業機。
【請求項3】
前記走行駆動装置は、前記通過スペースに臨むように、前記クローラ式走行装置の前後一方側の端部の内側側面側に配置され、
さらに、前記走行駆動装置は、走行駆動用の動力源と、該動力源をカバーするカバー体とを有し、
前記カバー体には前記当接部が形成された
請求項1に記載の刈取作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前進走行時と後進走行時の両方で対象物を刈り取る刈取作業を行うことが可能な刈取作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対のクローラ式走行装置と、左右のクローラ式走行装置に支持された走行機体と、前記走行機体側に連結され且つ刈取作業を行う刈取部と、左右のクローラ式走行装置を走行駆動させる走行駆動装置と、刈取部を刈取駆動させる刈取駆動装置と、を備えた刈取作業機が公知になっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような刈取作業機によれば、前進走行時と後進走行時の両方で草等の対象物を刈り取る刈取作業(具体的には、草刈作業)を行うことができるため、作業範囲の端まで走行した走行機体を、Uターンさせる必要がなく、迅速な作業を行うことが可能になる。Uターンが不要になるため、傾斜面での草刈作業も容易になる。
【0004】
その一方で、刈取部が走行機体の真下側に配置され、走行駆動装置が走行機体側に配置された動力源及び該動力源からクローラ式走行装置に動力を伝動する伝動機構を有し、前記動力源及び該動力源から刈取部に動力を伝動する伝動機構を有しているため、走行しながら草刈作業を行っている最中、刈り取った草や刈り取る前の草が左右のクローラ式走行装置の間を通過する過程で、走行駆動装置の一部、刈取駆動装置の一部又は刈取部等に当たり、その流れが阻害され、作業に支障をきたす場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前進走行時及び後進走行時の両方において円滑で且つ安定的な刈取作業を行うことができる刈取作業機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、前進走行時と後進走行時の両方で対象物を刈り取る刈取作業を行うことが可能な刈取作業機であって、左右一対のクローラ式走行装置と、左右のクローラ式走行装置に支持された走行機体と、前記走行機体の前側又は後側に連結され且つ刈取作業を行う刈取部と、左右のクローラ式走行装置毎に設けられ且つ該クローラ式走行装置を走行駆動させる一対の走行駆動装置と、前記刈取部を刈取駆動させる刈取駆動装置と、前記刈取部側と、前記走行機体における前記刈取部が連結された側と反対の端側とに夫々設けられた前後の当接部と、を備え、前記当接部は、走行機体の進行方向側に位置している際、対象物と当接し、該対象物を前記進行方向に倒伏させるように構成され、各走行駆動装置は、駆動対象としたクローラ式走行装置側に配置され、且つ、該クローラ式走行装置を正転側に駆動させる前進状態と、逆転側に駆動させる後進状態と、駆動停止させる停止状態と、に切換可能に構成され、前記刈取部は、回転作動によって対象物の刈り取りを行う左右一対の刈取回転体を有し、前記刈取駆動装置は、刈取部の前側の対象物を左右の刈取回転体の間に掻き込んで後方に送る方向に各刈取回転体を回転駆動させる後方掻込状態と、刈取部の後側の対象物を左右の刈取回転体の間に掻き込んで前方に送る方向に各刈取回転体を回転駆動させる前方掻込状態と、に切換可能に該刈取部を駆動するように構成され、前記走行機体の直下における左右のクローラ式走行装置の間には、未刈状態の対象物又は刈り取った対象物が通過する通過スペースが形成され、前記刈取部は前記通過スペースの端側に配置され、前記刈取駆動装置は前記走行機体における前記通過スペースに臨まない側に配置されたことを特徴とする。
【0008】
前記走行駆動装置及び前記刈取駆動装置を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記走行機体の前進走行時に前記刈取部を後方掻込状態に切り換える一方で、前記走行機体の後進走行時に前記刈取部を前方掻込状態に切り換えるように構成されたものとしてもよい。
【0009】
前記走行駆動装置は、前記通過スペースに臨むように、前記クローラ式走行装置の前後一方側の端部の内側側面側に配置され、さらに、前記走行駆動装置は、走行駆動用の動力源と、該動力源をカバーするカバー体とを有し、前記カバー体には前記当接部が形成されたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
左右のクローラ式走行装置の間に形成された通過スペースの端側に刈取部を配置し、走行機体からクローラ走行装置に至る範囲に設けられた走行駆動装置を、クローラ式走行装置側に配置し、しかも、対象物は、当接部との当接によって、走行機体の進行方向に倒伏されながら通過スペースに導入されるため、通過スペースにおける対象物の流れが良好になり、前進走行時と後進走行時の両方においてスムーズ且つ安定的な刈取作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用した草刈機の構造を示す斜視図である。
【
図2】本発明を適用した草刈機の構造を示す底面図である。
【
図3】本発明を適用した草刈機の構造を示す分解平面図である。
【
図4】本発明を適用した草刈機の構造を示す分解斜視図である。
【
図5】(A)は草刈装置の側面図であり、(B)は(A)のB-B断面図である。
【
図6】(A)は前進走行時における草刈作業の状態を一部破断して示す側面図であり、(B)は後進走行時における草刈作業の状態を一部破断して示す側面図である。
【
図8】走行停止制御手段の処理内容を示すフロー図である。
【
図9】本発明を適用した草刈方法の構成を示すフロー図である。
【
図10】
図9に示す草刈方法の構成を概念的に説明する説明図である。
【
図11】後進経路の方向復帰位置の変形例を説明する説明図である。
【
図12】前進経路の方向復帰位置の変形例を説明する説明図である。
【
図13】(A),(B)は夫々別実施形態に係る自動切替制御の内容を概念的に説明する説明図である。
【
図14】別実施形態に係る草刈方法の処理内容を示すフロー図である。
【
図15】
図14に示す草刈方法の構成を概念的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図4は本発明を適用した草刈機の構造を示す斜視図、底面図、分解平面図及び分解斜視図であり、
図5(A)は草刈装置の側面図であり、(B)は(A)のB-B断面図である。これらの図面に示された草刈機(刈取作業機)1は、左右一対のクローラ式走行装置(走行部)5,5と、左右のクローラ式走行装置5,5に支持された走行機体2と、該走行機体2の後側又は前側の何れか一方(図示する例では前側)に昇降可能に連結された草刈装置(刈取部)3とを備えている。
【0013】
草刈装置3は、走行機体2に上下揺動可能に連結され、その全てが正面視で左右のクローラ式走行装置5,5の間に収まるように、そのサイズ及び左右位置が設定されている。
【0014】
走行機体2は、方形枠状に成形されたシャーシである本体フレーム4と、該本体フレーム4上の後部に配置された複数のバッテリ6a,6b及び制御部7とを有している。バッテリ6a,6bは前後に並べて複数(本例では2つ)設けられている。後側のバッテリ6aは、左右のクローラ式走行装置5,5を駆動させるための走行用バッテリであり、前側のバッテリ6bは、草刈装置3を駆動させるための作業用バッテリである。制御部7は、一又は複数のマイコンから構成され、前後のバッテリ6a,6bの間に配置されている。
【0015】
本体フレーム4には、その前端側に配置された左右方向のサポート軸8を支点として、上下に回動可能に電動式のモーター(動力源)9が支持されている。このモーター9は、草刈装置3を正逆転駆動させる作業用モーターであり、作業用バッテリ6bからの電力供給によって回転駆動される。この作業用モーター9は、草刈作業時、前方に下方傾斜した状態になる。
【0016】
このモーター9には、該モーター9と同一軸心又は略同一軸心をなす筒状に形成され且つ該モーター9から前方に突出形成された縦ケース11が取り付け固定されている。この縦ケース11の前端部には、左右方向に延びる筒状に成形された横ケース12における左右中央部の背面側が連結して固定されている。縦ケース11及び横ケース12は、T字状をなし、その内部同士が連通している。
【0017】
横ケース12の左右の夫々の端部には、該横ケース12から下方に一直線状に突出する筒状に形成された駆動ケース13,13が一体的に設けられている。横ケース12と、左右の駆動ケース13,13とは、正面視で、下方が開放されたコの字状をなし、その内部同士が連通している。左右の駆動ケース13,13の下端側には、走行面に沿って回転してそこに生えている草(対象物)G(
図6参照)を刈り取る草刈作業(刈取作業)を行うロータリカッター(刈取回転体)14がそれぞれ配置されている。この左右のロータリカッター14,14が上述した草刈装置3を構成している。
【0018】
サポート軸8は、本体フレーム4の前部における左右の箇所の夫々から上方に突設された一対の支持部材であるブラケット16,16によって、自身の軸回りに回動可能に支持され、作業用モーター9と一体で上下に回動される。サポート軸8の一端側(図示する例では、右端側)には、側面視で、該サポート軸8から後方斜め上方に突出する調節レバー17が配置されている。
【0019】
この調節レバー17は、取付部材である取付プレート18によって、サポート軸8に取り付け固定されている。そして、調節レバー17を上下揺動させることにより、モーター9がサポート軸9を支点として上下回動される。モーター9のサポート軸9を支点とした上下回動により、縦ケース11も一体的に上下揺動され、これによって駆動ケース13,13及びロータリカッター14,14の高さが変更される。
【0020】
すなわち、調節レバー17の上下揺動は、草刈装置3を昇降させて草Gの刈取高さを調節する刈高さ調節操作になる。これを言い換えると、作業用モーター9,縦ケース11、横ケース12及び駆動ケース13と、サポート軸8及び左右のブラケット16,16は、草刈装置3を走行機体2に支持する支持機構として機能している。
【0021】
ちなみに、調節レバー17は、取付プレート18と、本体フレーム4における取付プレート18の後方に位置する部分との間に架設された固定シリンダ20の伸縮によって、その上下揺動位置が固定される。固定シリンダ20は、伸縮作動が規制される規制状態と、その規制が解除される解除状態とに切換可能である。
【0022】
調節レバー17の後端側に形成されたグリップ17aには、グリップレバー17bが配置されている。グリップレバー17bは、その前端部を支点として上下揺動可能に調整レバー17に支持され、ワイヤ等の連係機構19によって固定シリンダ20に機械的に接続されて下方揺動側に弾性付勢されている。
【0023】
この付勢力に抗してグリップレバー17bを、グリップ17aと共に把持し、上方に揺動させる操作を行うと、固定シリンダ20が規制状態から解除状態に切り換えられ、調整レバー17の上下揺動操作が可能になる一方で、グリップレバー17bから手は離すと、付勢力によって該グリップレバー17bが下方に揺動作動し、固定シリンダ20が解除状態から規制状態に切り換えられ、調整レバー17の上下揺動位置がその位置で固定され、これに伴って草刈装置3の昇降高さも固定される。
【0024】
各クローラ式走行装置5は、前後方向に長いプレート状に成形された走行フレーム21と、該走行フレーム21の前後一方の端部(本例では後端部)に回転駆動に支持された駆動輪22と、他方に回転可能に支持された従動輪23と、駆動輪22及び従動輪23に駆け回れた側面視で環状をなすクローラ24と、該走行フレーム21の左右の内側の側面における駆動輪22側に取り付け支持され且つ該駆動輪22を正逆転駆動させる電動式のモーター(動力源)26(
図7参照)とを有している。
【0025】
モーター26は、上述した走行用バッテリ6aから供給される電力によって回転駆動される走行用モーターであり、クローラ式走行装置5の前後一方の端部(本例では駆動輪22側の端部であり、後端部)における内側側方に突出しており、その突出した部分が保護カバー(カバー体)25によって覆われている。この走行用モーター26によってクローラ式走行装置5を前進側又は後進側の何れかに一方側に走行駆動させる。すなわち、走行モーター26及び保護カバー25は、それが設けられたクローラ式走行装置5を走行駆動させる走行駆動装置30を構成している。
【0026】
左右夫々のクローラ式走行装置5,5の走行フレーム21と、本体フレーム4との間には、左右のクローラ式走行装置5,5の夫々を本体2aに着脱可能に取り付けるジョイント部27,27が設けられている。図示する例では、各クローラ式走行装置5に設けられたジョイント部27が走行フレーム21と本体フレーム4との間における前寄りの位置に配置されている。
【0027】
各ジョイント部27は、走行フレーム21側から本体フレーム4側に突出する左右方向の前後一対の取付フレーム27a,27aと、本体フレーム4側から走行フレーム21側に突出する左右方向の前後一対の被取付フレーム27b,27bとを有している。左右のジョイント部27,27毎に設けられた前後に配置された前後の取付フレーム27a,27a,27a,27a同士の間隔は、前後に配置された被取付フレーム27b,27b,27b,27b同士の間隔と一致又は略一致しており、取付フレーム27aが左右方向に延びる棒状に成形されている。被取付フレーム27bが左右方向に延びる筒状に成形され且つその突出側端が開放され、前後の取付フレーム27a,27aは、対応する被取付フレーム27b,27bに嵌合して挿入可能な大きさ及び形状に成形されている。
【0028】
そして、クローラ式走行装置5の前後の取付フレーム27a,27aを、対応する被取付フレーム27b,27bの開放端側からその内周面側に嵌合状態で挿入して固定することによって、該クローラ式走行装置5を本体2aに着脱可能に取り付け固定している。取付フレーム27a,27aを被取付フレーム27b,27bの内周面側に挿入して固定する位置(挿入量)は、変更可能であり、この挿入量の変更によって左右のクローラ式走行装置5,5の間の間隔(クローラ幅)を適宜変更することが可能である。
【0029】
例えば、このクローラ幅を広くすることにより、傾斜地を、その傾斜方向に対して交差する方向(具体的には、直交する方向)に走行する際の走行機体2の転倒を適宜防止することが可能である。また、例えば、刈地の畝幅その他の条件に適合させ、クローラ幅を狭くすることや広くすることが可能である。また、アクチュエータによって、このクローラ幅の変更を自動的に実行することも可能である。
【0030】
ちなみに、上述した調節レバー17によって草刈装置3の刈高さを調節する機能との干渉を避けるため、
図4及び
図5に示す通り、調節レバー17側のジョイント部27は、その反対側のジョイント部27に対して後方にセットバックされ、本体フレーム4からの突出量も少なく設定されている。
【0031】
上述した作業用モーター9の回転動力は、縦ケース11、横ケース12及び駆動ケース13,13の内部の空間に設置された作業側伝動機構28によって、草刈装置3(ロータリカッター14)に伝動される(
図6参照)。すなわち、縦ケース11、横ケース12及び駆動ケース13,13は、作業用モーター9の動力を草刈装置3に伝動する空間を内部に有する伝動ケースとして機能する。これを言い換えると、作業用モーター9及びこれらの伝動ケース11,12,13,13は、草刈装置3を刈取駆動させる刈取駆動装置35として機能する。
【0032】
この作業側伝動機構28は、縦ケース11及び横ケース12の内部の夫々に回転可能に支持された伝動軸28a,28bと、左右の各駆動ケース13,13の内部に回転可能に支持され且つロータリカッター14と一体で回転する駆動軸28c,28cと、縦ケース11側の伝動軸28aの動力を横ケース12側の伝動軸28bに伝動する一対のベベルギヤ28d,28eと、横ケース12側の伝動軸28bを、左右の駆動軸28c,28cに伝動する一対のベベルギヤ28f,28f,28g,28gとを有している。
【0033】
駆動軸28cは、その上端から中途部に至る範囲が駆動ケース13の内部に位置し且つ該駆動ケース13の軸心上に配置され、その下端側にはロータリカッター14が取り付け固定されている。ロータリカッター14は、駆動軸28cに対して垂直な円板状に成形されたベースプレート14aと、駆動軸28cの軸心に向かって下方に膨出するドーム状に成形され且つベースプレート14aの真下側に配置されたガードケース14bと、ベースプレート14aとガードケース14bとの間に取り付けられ且つ駆動軸28cの軸方向視で放射状に外側に突出する刈刃14cとを有している。
【0034】
このロータリカッター14は、その回転によって草刈作業を行う。ちなみに、左右のロータリカッター14,14の刈刃14c,14cは、互いが回転時に干渉しないようにして、その回転軌跡が、駆動軸28cの軸方向視で重複するように配置構成されている。
【0035】
このように構成される作業側伝動機構28は、左右のロータリカッター14,14が平面視で互いに反対方向に同一の速度で回転するように、作業用モーター9の回転動力を左右のロータリカッター14,14の夫々に伝動する。さらに具体的には、作業側伝動機構28は、作業用モーター9の正転駆動時、左右のロータリカッター14,14が互いの間で後方に移動するように該ロータリカッター14,14を正転側に回転駆動させる一方で、作業用モーター9の逆転駆動時、左右のロータリカッター14,14が互いの間で前方に移動するように該ロータリカッター14,14を逆転側に回転駆動させる。
【0036】
また、作業側伝動機構28は、草刈機1(走行機体2)の前進又は後進側への走行時、該草刈機1が刈り取る対象の草Gに対して相対変位する速度と比較して、遥かに速い速度(例えば、100倍程度の速度)で、ロータリカッター14,14が草Gに対して変位するように、該ロータリカッター14,14を回転駆動させる。これによって草刈機1を走行させながら草刈作業をする際、左右のロータリカッター14,14が刈り取った草Gを、その間において走行方向と反対の方向に高速で掻き込み、草Gにより走行抵抗の増加や、作業負荷の増加が低減される。
【0037】
ところで、各ロータリカッター14には、その真上側及び外側側方をカバーするカッターカバー29が設けられている。左右のカッターカバー29,29は、対応する駆動ケース13,13の下端部外周面側に取り付け固定されている。
【0038】
また、左右のカッターカバー29,29(すなわち、草刈装置3)の真上の全体を覆う左右方向に長い単一の作業側カバー31が設けられている。この作業側カバー31は、正面視で逆U字状に屈曲形成され、縦ケース12及び横ケース13の一方又は両方に着脱可能に取り付け固定され、草刈装置3を一体で昇降される。ちなみに、走行機体2の周囲及び上方を覆う本体側カバー32も設けられている。
【0039】
さらに、草刈装置3には、回転駆動される左右一対のロータリカッター14の他、ロータリカッター14と一体で回転駆動される第1促進体43及び第2促進体44が設けられている。
【0040】
第1促進体43及び第2促進地44は、ロータリカッター14の真上側で且つ作業側カバー31の真下側の位置するスペースに配置される。第1促進体43及び第2促進地44は、駆動軸28cによって、ロータリカッター14と共にその軸回り方向に回転駆動される。
【0041】
第1促進体43は、ロータリカッター14のベースプレート14aに取り付け固定され且つ該ベースプレート14aから上方に突出形成される。ベースプレート14aは、駆動軸28cの軸方向視で、該駆動軸28cを中心とする円形の板状に成形され、第1促進体43は、ベースプレート14aの外縁部に配置され、該ベースプレート14aの円形の径方向に厚みを有する板状に成形されている。また、第1促進体43はロータリカッター14毎に複数設けられ、その複数の第1促進体43が駆動軸28cの軸回り方向に所定間隔(図示する例では1/4周)毎に等間隔で満遍なく並べて配置されている。
【0042】
第2促進体44は、第1促進体43の上方の空間において該第1促進体43から所定距離だけ離れた位置に配置されている。第2促進体44は、駆動軸28cと平行な方向に厚みを有する板状をなす且つ該駆動軸28c側からその径方向の外側に突出している。第2促進体44は、ロータリカッター14毎に複数設けられ、その複数の第2促進体44は、駆動軸28cの軸回り方向に所定間隔(図示する例では1/3周)毎に等間隔で満遍なく並べて配置されている。ちなみに、第2促進体44は、駆動軸28cの軸方向視で、ベースプレート14aや第1促進体43よりも、その径方向の外側に突出するとともに、刈刃14cよりは突出量が少ない。
【0043】
さらに詳細を説明すると、第2促進体44は、その上下位置が、草刈装置3の作業高さの範囲内において、クローラ式走行装置5の上下幅方向の中心と、本体フレーム4との間の範囲に設定されている。
【0044】
制御部7は、後述する構成によって、草刈装置3(ロータリカッター14)の駆動を制御可能であるとともに、クローラ式走行装置5,5の駆動も制御可能である。そして、制御部7は、走行機体2の前進走行時、左右のロータリカッター14,14(草刈装置3)を正転側に草刈駆動させる一方で、走行機体2の後進走行時、左右のロータリカッター14,14(草刈装置3)を逆転側に草刈駆動させるように構成されている。
【0045】
言い換えると、この草刈機1は、前進走行時には勿論、後進走行時にも草刈作業を行うことが可能に構成され、前進走行しながらの草刈作業時には、左右のロータリカッター14,14の間において刈り取った草Gを後方に掻き込む一方で、後進走行しながらの草刈作業時には、左右のロータリカッター14,14の間において刈り取った草Gを前方に掻き込む。すなわち、左右のロータリカッター14,14の間において走行方向の反対側に草Gを掻き込むように、該ロータリカッター14,14が回転駆動される。
【0046】
次に、
図1、
図2及び
図6に基づき草刈機1を用いた草刈作業について詳述する。
【0047】
図6(A)は前進走行時における草刈作業の状態を一部破断して示す側面図であり、(B)は後進走行時における草刈作業の状態を一部破断して示す側面図である。
【0048】
まず、走行機体2を前進走行させながら左右のロータリカッター14,14を正転駆動させた場合の草刈状態について、
図6(A)に基づき説明すると、この状態では、左右のロータリカッター14,14の前方に生えている草Gが、その間に掻き込まれ、該ロータリカッター14,14の後方に排出される。すなわち、左右のロータリカッター14,14を正転駆動させる状態は、刈り取った草Gを進行方向である前進側と反対の後方に掻き込む後方掻込状態に該当する。
【0049】
左右のロータリカッター14,14の後側の空間は、左右のクローラ式走行装置5の間に形成された通過スペースSであり、この通過スペースSに刈り取られた草Gが排出されてくる。この排出過程において、背の高い草Gは、倒れる方向が一定になり難く、その姿勢や流れに乱れが生じ易くなるのが一般的である。
【0050】
しかし、本例では、左右のロータリカッター14、14の後方への掻き込み作用によって、草Gの下端部から後方に掻き込まれることにより、該草Gが走行機体2の進行方向である前方に倒伏されるとともに、草Gの中途部が作業側カバー31の前端部31aと当接することによっても、該草Gの前方への倒伏が促進されるため、刈り取られた草Gは、前方に倒伏した姿勢で且つ流れの乱れも生じ難く状態で、通過スペースSに排出される。
【0051】
さらに、通過スペースSの中央側ではなく、その前後の端側の一方(図示する例では、草刈装置1を走行機体2の前側に連結しているので、前端側)に草刈装置3が配置されているので、草刈装置3自体が草Gの流れを阻害することもない。この他、草刈装置3を刈取駆動させる刈取駆動装置35は、従来のものとことなり、通過スペースSに臨む部分は無いので、草Gの乱れを発生させることもない。
【0052】
このようして、通過スペースSにおいて、草Gの姿勢や流れを安定させることによって、草刈作業を効率的に行うことが可能になる。
【0053】
ちなみに、上記草刈作業の内容によれば、作業側カバー31の前端部31aは、走行機体2の進行方向側に位置している状態(すなわち、前進走行状態)において、生えている草Gや刈り取り中の草Gと当接することによって、該草Gを前記進行方向に倒伏させる当接部を構成している。
【0054】
一方、走行機体2を後進走行させながら左右のロータリカッター14,14を逆転駆動させた場合の草刈状態について、
図6(B)に基づき説明すると、この状態では、左右のロータリカッター14,14の後方に生えている草Gが、その間に掻き込まれ、該ロータリカッター14,14の前方に排出される。すなわち、左右のロータリカッター14,14を逆転駆動させる状態は、刈り取った草Gを進行方向である後進側と反対の前方に掻き込む前方掻込状態に該当する。
【0055】
走行機体2の後進走行時、上述した通過スペースSには、未刈状態の草Gが流れてくることになるが、背の高い草Gは、倒れる方向が一定になり難く、その姿勢や流れに乱れが生じ易くなるのが一般的である。これに対応して、走行機体2における草刈装置3を連結した側と反対の端部(本例では、前側に草刈装置3が連結されているため、後端部)には、当接部材(当接部)40が設けられている。
【0056】
当接部40は、平断面視で後方が開放されたU字状をなす形状によって、その左右にサイド側ガイド部40a,40aが設けられている。また、当接部40は、側断面視で、垂直に切り立った上部に対して、中途部及び下部が後方に傾斜しており、この後方傾斜部分が倒伏ガイド部40bを構成している。
【0057】
走行機体2の後進走行時、左右のサイド側ガイド部40a,40aが生えている周囲の草Gを、倒伏ガイド部40b側である左右中央側に案内する。倒伏ガイド部40bは、案内されてきた草Gを、それとの当接によって、走行機体2の進行方向である後方に倒伏させつつ、通過スペースS側に案内する。
【0058】
また、当接部材40の作用によって、後方に倒伏しながら通過スペースS内に案内されてくる草Gは、左右のクローラ式走行装置5,5側に夫々配置され且つ該通過スペースS側に臨んだ上述の保護カバー25の後端部25aとの当接によっても、後方への倒伏が促進される。すなわち、この後端部25aも、当接部材40と共に、走行機体2の進行方向側に位置している場合(具体的には、後進走行時)、生えている草Gとの当接によって該草Gを進行方向に倒伏させる当接部を構成している。
【0059】
このように、後進走行時における草刈作業時、生えている草Gは後方に倒伏した姿勢で且つ流れの乱れも抑制された状態で、通過スペースSに案内され、この姿勢及び状態で草刈装置3に達するので、安定的且つ効率的に草刈作業を行うことが可能になる。
【0060】
続いて、第1促進体43及び第2促進体44の作用について説明すると、走行機体2の走行中、左右の刈刃14c,14cによって根本側から刈り取られて地面から浮いた草Gは、第1促進体43と第2促進体44の協働により下部と中途部が走行方向の反対側に送られるので、刈取部3が設けられた側に走行機体2が走行している間は、通過スペースSの左右中央側を通して地面や機体との抵抗が軽減された状態で送られることにより作業負荷の増加が抑制される。このため、出力の小さい電動式のモーターを作業用モーター9として採用することも可能となる。また、刈取部3が設けられた側と反対側に走行機体2
が走行している間は、作業側カバー31の左右方向中央側を通して走行方向反対側の方向に向けて草を排出するので、側草や石等の左右方向への跳ね飛ばしを軽減することができる。
【0061】
また、草刈機1を前進走行させながらの草刈作業時には、作業側カバー31が草Gその走行方向である前方に傾斜させて刈り取り易い状態への切替を行う一方で、草刈機1を後進走行させながらの草刈作業時には、走行機体2自体が草Gを後方に傾斜させて刈り取り易い状態への切替を行う。
【0062】
以上により、本草刈機1は、前進時及び後進時の両方において、さらに効率的且つ迅速に草刈作業を行うことが可能になる。
【0063】
ちなみに、本草刈機1は、その重心位置を、前寄りに設定してもよく、これによって前進走行時のヘッドアップを効率的に防止できる。
【0064】
なお、上述した通り、草刈装置3を走行機体2の後側に連結してもよく、この場合には、上述した当接部材40と前後対象な形状を有する当接部材を、走行機体2の前端側に設置する必要がある。また、各クローラ式走行装置5の前端部に従動輪23を配置し、その後端部に駆動輪22を配置し、その前端部の内側側面側に走行用モーター26及び保護カバー25を配置してもよい。
【0065】
また、当接部材40はバンパーとしても機能するが、走行機体2の後進走行時に草Gを後方に倒伏させる機能を省いてもよい。保護カバー25についても、走行機体2の後進走行時に草Gを後方に倒伏させる機能を省いてもよい。すなわち、当接部材40と保護カバー25の少なくとも一方に、行機体2の後進走行時に草Gを後方に倒伏させる機能を付与すればよい。
【0066】
次に、制御部7の構成について詳述する。
【0067】
図7は制御部の構成を示すブロック図である。上述した制御部7の入力側には、左右のクローラ式走行装置5,5毎に設けられ且つ走行用モーター26の回転を検出する回転センサ33,33と、走行機体2と位置を取得する位置取得手段の1つであるGPSセンサ34と、草刈機1(走行機体2、本体2a)が向いている方向(機体方法)やその左右傾斜や上下傾斜を検出するジャイロセンサ36と、草刈装置3の草刈作業負荷を検出する負荷検出手段37とが接続されている。
【0068】
また、制御部7の出力側には、左右のクローラ式走行装置5,5毎に設けられた上述の走行用モーター26,26と、上述した作業用モーター9とが接続され、この構成によって、制御部7は草刈機1の走行の制御が可能になるとともに草刈機1の草刈作業の制御が可能に構成される。
【0069】
また、制御部7には、インターネット等のグローバルなネットワークを介した無線通信を可能とする無線通信手段38と、コントローラ41によって草刈機1を遠隔操作できるように該コントローラ41との間で電波の送受信を行う送受信手段39とが入出力可能に接続されている。
【0070】
さらに、制御部7は、各種の情報を記憶する記憶部7aと、CPUのクロック数等を利用して時間を計測するタイマー7bとが設けられている他、後述するクイックターン制御を実行するクイックターン制御手段7cと、後述する自動切替制御を実行する自動切替制御手段7dと、後述する走行停止制御を実行する走行停止制御手段7eとを有している。
【0071】
回転センサ33は、クローラ式走行装置5の駆動の有無や駆動速度を検出可能である他、その継続的な検出によって駆動量も検出可能である。左右のクローラ式走行装置5,5の駆動速度や駆動量によって、草刈機1(走行機体2)の向いている方向(機体方向)や、草刈機1の初期位置からの相対的な位置も取得可能になる他、緯度や経度等の絶対的な初期位置を後述する記憶部7aにインプットしておくか、或いは無線通信手段38によって取得すれば、その後の草刈機1の絶対的な位置を取得することも可能になる。
【0072】
すなわち、この2つの回転センサ33,33は、草刈機1の走行の有無を検出する走行検出手段や走行速度を検出する走行速度検出手段として機能するのみではなく、機体方向を検出する機体方向検出手段や、草刈機1の相対的又は絶対的な位置を検出する自己位置取得手段として機能する。このため、左右の回転センサ33,33を設けることにより、自己位置取得手段として機能するGPSセンサ34と、機体方向検出手段として機能するジャイロセンサ36とを省略することも可能になる。
【0073】
負荷検出手段37は、本例では作業用モーター9に流れる電流を計測する電流計測センサであり、この電流計測によって草刈装置3の作業負荷(さらに具体的には草刈作業負荷)を検出する。
【0074】
左右のクローラ式走行装置5,5毎に設けられた走行用モーター26,26と、作業用モーター9とは、回転数を制御可能に構成されている。具体的には、モーター9,26をステッピングモーターとするか、或いはDCモーターとし且つPWM制御等によって回転数を制御可能に構成する。
【0075】
無線通信手段38は、制御部7がネットワークを介して情報端末やサーバから各種の情報を取得することが可能になる他、他の自走式の草刈機1との間で無線通信を行い、互いに協調して走行する制御や、互いに協調して草刈作業を行う制御を実行することを可能とする。
【0076】
コントローラ41は、草刈機1から離れた位置から該草刈機1を遠隔操作する。具体的には、コントローラ41によって、走行機体2(草刈機1)を前進側又は後進側に直進走行させる操作や、走行機体2を前進側又は後進側に走行しながら左右何れかに旋回走行させる操作や、走行機体2の走行中にその走行方向を前進から後進又は後進から前進に切り替える操作や、走行機体2の走行中にその走行速度を変更する操作や、草刈装置3の駆動の有無を切り替える操作や、草刈装置3の駆動中にその駆動方向の正逆転で切り替える操作や、草刈装置3の駆動中にその駆動スピードを変更する操作等の各種の操作を行う。
【0077】
また、コントローラ41による操作時にはコントローラ41から草刈機1に電波信号が送信される一方で、草刈機1側の各種の状態を示す情報が電波信号によって該草刈機1からコントローラ41に送信される。草刈機1から送信されてくる情報は、コントローラ41のモニタ等によって確認することができる。
【0078】
上述したクイックターン制御手段7cは、左右のクローラ式走行装置5,5の一方を前進側に走行駆動させ且つ他方を後進側に走行駆動させるか、或いは左右のクローラ式走行装置5,5の一方を走行駆動させ且つ他方を駆動停止させることによって、草刈機1をその場又は略その場で、左右に旋回させるクイックターン制御を実行する。
【0079】
具体的には、左側のクローラ式走行装置5を前進側に駆動させ且つ右側のクローラ式走行装置5を後進側に駆動させることによって、草刈機1がその場又は略その場で右(平面視で時計回り)に旋回する一方で、左側のクローラ式走行装置5を後進側に駆動させ且つ右側のクローラ式走行装置5を前進側に駆動させることによって、草刈機1がその場又は略その場で左(平面視で反時計回り)に旋回する。また、左側のクローラ式走行装置5を駆動停止させた状態で、右側のクローラ式走行装置5を前進側に駆動させれば草刈機1が左旋回する一方で、右側のクローラ式走行装置5を後進側に駆動させれば草刈機1が右旋回する。さらに、右側のクローラ式走行装置5を駆動停止させた状態で、左側のクローラ式走行装置5を前進側に駆動させれば草刈機1が右旋回する一方で、左側のクローラ式走行装置5を後進側に駆動させれば草刈機1が左旋回する。
【0080】
図8は、走行停止制御手段の処理内容を示すフロー図である。上述した走行停止制御手段7eは、所定時間の経過毎に同図に示すルーチン処理を実行する。具体的に説明すると、走行停止制御手段7eは、処理が開始されると、ステップS101に進む。ステップS101では、草刈装置3又は左右のクローラ式走行装置5,5の少なくとも一方に対して手動操作が行われた否かを確認し、この手動操作が行われている場合、その回のルーチン処理を終了させる。
【0081】
ステップS101において、上述の手動操作が検出されなかった場合、ステップS102に進む。ステップS102では、フラグの状態を確認し、OFF状態であればステップS103に進む。このフラグは、走行停止制御の実行時にはONにセットされる一方で、実行停止時にはOFFにリセットされ、初期状態ではOFFにリセットされている。
【0082】
ステップS103では、負荷検出手段37によって草刈装置3が予め定めた所定以上の負荷(高負荷)になっていることが検出されているか否かを確認し、高負荷が確認されればステップS104に進む一方で、確認されなければ、その回のルーチン処理を終了させる。具体的には、作業用モーター9に流れる電流の値が所定の値よりも大きくなっている場合に高負荷であると判断する。
【0083】
ステップS104では、フラグをONにセットし、走行停止制御の実行を開始し、ステップS105に進む。ステップS105では、タイマー7bを利用して、予め定めた所定の時間の走行停止時間(例えば2秒)から0へのカウントダウンを開始し、その回のルーチン処理を終了させる。
【0084】
ステップS102において、フラグのON状態が確認された場合、ステップS106に進む。ステップS106では、走行停止制御の実行開始から上述した走行停止時間が経過しているか否かをタイマー7bによる0へのカウントダウンが終了しているか否かによって確認し、カウント中であればステップS107に進む。ステップS107では、走行停止制御の実行を継続するため、各クローラ式走行装置5の駆動を停止させて草刈機1(走行機体2)をその場で走行停止させた状態で保持してステップS108に進む。ステップS108では、草刈装置3を正転側又は逆転側に草刈駆動させ、そのルーチンの処理を終了させる。
【0085】
ステップS106において、走行停止時間が経過してタイマー7bによる0へのカウントダウンが終了している状態が確認された場合、ステップS109に処理を進める。ステップS109では、フラグをOFFにリセットさせ、走行停止制御の実行を終了させる。
【0086】
以上のような構成によれば、ステップS101の処理によって、草刈装置3又は左右のクローラ式走行装置5,5の手動操作が走行停止制御に優先して実行される。
【0087】
また、後述する自動切替制御を実行中の草刈作業等によって、上述した高負荷の状態が発生した場合、ステップS101→ステップS102→ステップS103→ステップS104→ステップS105の順に処理が進み、走行停止制御が開始される。ちなみに、この場合は、走行停止制御の実行が、自動切替制御の実行よりも優先される。
【0088】
また、走行停止制御の実行中は、ステップS101→ステップS102→ステップS106→ステップS107→ステップS108と進むルーチン処理が繰り返され、草刈機1(走行機体2)がその場で走行停止し且つ草刈装置3が正転側又は逆転側に駆動される状態が維持される。この状態では、草刈装置3が左右のロータリカッター14,14が回転作動し、そこに絡まった草Gや付着した泥等が草刈装置3外に排出され、高負荷の状態が次第に改善する。そして、上述した走行停止時間が経過した場合、ステップS101→ステップS106→ステップS109と進むルーチン処理が1回実行され、走行停止制御の実行が終了する。
【0089】
ちなみに、走行停止制御手段7eは、走行停止制御の実行が終了した直後、次のルーチン処理において、ステップS101から処理を開始することになるが、その際、高負荷の状態が改善されていない場合には、ステップS101→ステップS102→ステップS103→ステップS104→ステップS105の順の処理が進み、再び、走行停止制御の実行が開始される。一方、高負荷の状態が改善されていれば、ステップS101→ステップS103の順の処理が進み、走行停止制御が再び実行されることはない。
【0090】
すなわち、高負荷の状態が改善するまでの間は、走行停止制御の走行停止時間の実行が繰り替えられる。一方、高負荷の状態が改善していれば、迅速に、高負荷が検出される前の作業が再開される。例えば、高負荷の検出する直前まで自動切替制御を実行していた場合、走行停止制御の実行が終了した段階で、直ちに自動切替制御の実行が再開される。
【0091】
なお、本例では、高負荷の状態が改善されるまで、走行停止時間が経過した場合でも、走行停止制御が繰り返し実行され、草刈機1が走行停止し且つ草刈装置3が駆動される状態が維持されるが、走行停止時間の経過のみをもって、草刈機1の走行が再開されるようにしてもよい他、走行停止時間の経過とは無関係に、高負荷状態が改善されたことのみをもって、草刈機1の走行が再開されるようにしてもよい。
【0092】
また、上述の例では、草刈機1が走行であることは、走行停止制御の実行の条件になっていないが、これを走行停止制御の実行開始の条件としてもよい。
【0093】
上述した自動切替制御は、草刈機1による傾斜地での草刈作業時に適宜実行され、その詳細は後述する。
【0094】
次に、
図7,
図9及び
図10に基づいて草刈機1を用いた傾斜地での草刈方法について説明する。
【0095】
図9は、本発明を適用した草刈方法の構成を示すフロー図であり、
図10は
図9に示す草刈方法の構成を概念的に説明する説明図である。草刈機1を用いた傾斜地での草刈方法は、草刈機(走行機体2,本体2a)を、その機体方向と同一の方向である前進側に直進走行させながら草刈作業を行う前進草刈工程(S1)と、草刈機1をその機体方向と反対の方向である後進側に直進走行させながら草刈作業を行う後進草刈工程(S3)と、前記自動切替制御を実行することによって前進草刈工程から後進草刈工程への切替及び後進草刈工程から前進草刈工程への切替を自動的に行う自動切替工程(S2)とを有している。
【0096】
前進草刈工程を行っている最中の機体方向と、後進草刈工程を行っている最中の機体方向とは、傾斜方向に対して交差(図示する例では、直交)する方向(基準方向)を基準とし、この基準方向と同一又は略同一の方向に設定されている。ちなみに、この基準方向はジャイロセンサ36や左右の回転センサ33,33によって検出することが可能である。
【0097】
前進草刈工程を行っている最中の草刈機1(走行機体2,本体2a)の走行経路である直線状の前進経路Aと、後進草刈工程を行っている最中の草刈機1(走行機体2,本体2a)の走行経路である直線状の後進経路Cとは、互いが平行又は略平行な状態で、傾斜方向に交互に並べて配置される。前進経路Aでは、その基準方向と反対の端(
図10における左端)が始端A1になり、その基準方向の端が終端A2になる。一方、後進経路Cでは、その基準方向の端(
図10における右端)が始端C1になり、その基準方向の反対の端が終端C2が配置されている。
【0098】
傾斜方向に隣接する前進経路Aと後進経路Bの間隔Lは、予め定められた所定の距離に設定される。すなわち、前進草刈工程と後進草刈工程が交互に実行される毎に、基準方向を向いた草刈機1の傾斜方向における位置が下り側又は上り側(
図10に示す例では上り側)に間隔Lだけ順位変位し、最終的に傾斜地の全体の草Gが刈り取られる。また、この間隔Lは、草刈機1の草Gの左右の刈幅と同一又は略同一の長さに設定されるか、或いはそれよりも若干短い長さに設定され、傾斜地における草Gの刈残しが極力防止される。ちなみに、
図10は、傾斜地での草刈作業を分かり易く概念的に示すものであるため、草刈機1のサイズは正確に示されていない。
【0099】
前進草刈工程から後進草刈工程への切替を目的として実行される自動切替工程での草刈機1の走行経路(切替経路B)は、該前進草刈工程の前進経路Aの終端A2と、該後進草刈工程の後進経路Cの始端C1とを結ぶ直線状をなしている。一方、後進草刈工程から前進草刈工程への切替を目的として実行される自動切替工程の切替経路Bは、該後進草刈工程の後進経路Cの終端C2と、該前進草刈工程の前進経路Aの始端A1とを結ぶ直線状をなしている。
【0100】
前進経路Aを複数列設ける場合、その始端A1の基準方向における位置は同一又は略同一に揃えられるとともに、その終端A2の基準方向における位置も同一又は略同一に揃えられる。同様に、後進経路Cを複数列設ける場合、その始端C1の基準方向における位置は同一又は略同一に揃えられるとともに、その終端C2の基準方向における位置も同一又は略同一に揃えられる。
【0101】
これに対して、切替経路Bを介して前進経路Aの終端A2と接続される後進経路Cの始端C1は、該終端A2に対して、その基準方向における位置が前進側又は後進側の何れか一方(
図10に示す例では、後進側)にずらして配置されている。同様に、切替経路Bを介して後進経路Cの終端C2と接続される前進経路Aの始端A1は、該終端C2に対して、その基準方向における位置が前進側又は後進側の何れか一方(
図10に示す例では、前進側)にずらして配置されている。
【0102】
このような始端A1,C1及び終端A2,C2の位置関係によれば、この切替経路Bは、互いに平行又は略平行な前進経路A及び後進経路Cに対して所定角度(切替角度α)傾いた状態になる。言い換えると、ある終端A2,C2に対して、該終端A2,C2と切替経路Bを介して接続される始端A1,C1は、基準方向に対して切替角度α傾いた方向又は180°から切替角度αを減算した角度傾いた方向に所定距離(切替距離)だけ離れた位置に配置されている。
【0103】
自動切替制御手段7d(制御部7)は、予め定めた所定の条件(切替条件)が満たされた場合、上述した自動切替制御の実行を開始する。切替条件について説明すると、例えば、草刈機1(走行機体2,本体2a)が前進経路A又は後進経路Cの終端A2,C2に達したことを、自動切替制御手段7dが位置取得手段として機能する左右の回転センサ33,33やGPSセンサ34によって検出した場合や、コントローラ41等によって自動切替制御の実行開始の手動操作が行われたことを自動切替制御手段7dが検出した場合や、その両方が自動切替制御手段7dによって検出した場合、自動切替条件が満たされたものとして、自動切替制御手段7dが自動切替制御の実行を開始する。
【0104】
自動切替制御手段7dは、自動切替制御の実行が開始された場合、まず、その機体方向が基準方向に向けられ且つ終端A2,C2に位置する草刈機1(走行機体2,本体2a)が、その場で1/4周未満の旋回角度である前記切替角度αだけ旋回するように、クイックターン制御を実行することによって、該草刈機1の機体方向を、該終端A2,C2と切替経路Bを介して接続される始端A1,C1又はその近傍側の方向に向けるか、或いは、その反対側の方向に向ける方向転換処理(S2-1)を行う。すなわち、この終端A2,C2は、草刈機1の方向を、始端A1,C1側又はその反対側に向ける方向転換位置になる。
【0105】
例えば、
図10に示す後進経路Cの始端C1は、前進経路Aの終端A2からみて、基準方向と反対の方向に向かって傾斜方向上り側に切替角度α傾いた方向に切替距離だけ離れた箇所に位置しているため、クイックターン制御を実行し、この終端A2に位置している草刈機1を、平面視で時計回りにその場で切替角度αだけ旋回させることにより、該草刈機1を、該始端C1と反対の方向に向ける。
【0106】
一方、同図に示す前進経路Aの始端A1は、後進経路Cの終端C2からみて、基準方向に向かって傾斜方向上り側に切替角度α傾いた方向に切替距離だけ離れた箇所に位置しているため、クイックターン制御を実行し、この終端C2に位置している草刈機1を、平面視で時計回りにその場で旋回させることにより、該草刈機1を、該始端C1の方向に向ける。
【0107】
自動切替制御手段7dは、自動切替制御の実行中、方向転換処理を終えると、続けて、終端A2,C2側に位置する草刈機1(走行機体2,本体2a)を、該終端A2,C2から切替経路B上を前進側又は後進側に直進走行させ、その切替経路Bのもう一端である始端A1,C1まで移動させる移動処理(S2-2)を行う。具体的には、方向転換処理によって機体方向が始端A1,C1側の方向を向けられた草刈機1は、移動処理によって、切替経路B上を前進側に直進走行する。一方、方向転換処理によって機体方向が始端A1,C1と反対側の方向を向けられた草刈機1は、移動処理によって、切替経路B上を後進側に直進走行する。ちなみに、移動処理を行って切替経路Bを前進側又は後進側に直進走行している最中は、草刈装置3も駆動されて草刈作業を行われる。
【0108】
自動切替制御手段7dは、自動切替制御の実行中、移動処理を終えると、始端A1,C1又はその近傍に位置する草刈機1(走行機体2,本体2a)を、その場で、方向転換処理の際に旋回させた側と反対側に切替角度αだけ旋回させるようにクイックターン制御を実行し、該草刈機1を基準方向に向ける方向復帰処理(S2-3)を行い、この自動切替制御の実行を終了する。すなわち、この始端A1,C1は、草刈機1の方向を、基準方向に復帰させる方向復帰位置になる。
【0109】
例えば、
図10に示す後進経路Cの始端C1又はその近傍に位置する草刈機1は、クイックターン制御を実行して平面視で反時計回りに切替角度αだけ旋回させることにより、その機体方向を基準方向に復帰させる。一方、同図に示す前進経路Aの始端A1又はその近傍に位置する草刈機1は、クイックターン制御を実行して平面視で時計回りに切替角度αだけ旋回させることにより、その機体方向を基準方向に復帰させる。
【0110】
このような自動切替制御を実行する自動切替工程を、前進草刈工程から後進草刈工程への切替と、後進草刈工程から前進草刈工程への切替との夫々で行うことによって、草刈機1を前進又は後進させながら左右に旋回させることなく、傾斜地の全体を満遍なく走行させ、草刈作業を行うことが可能になる。
【0111】
以上のように構成される本発明によれば、自動切替制御を実行することによって、前進草刈工程を実行する際の草刈機1の走行終了位置である終端A2から、後進草刈工程を実行する際の草刈機1の走行開始位置である始端C1への移動が自動的に行われるとともに、後進草刈工程を実行する際の草刈機1の走行終了位置である終端C2から、前進草刈工程を実行する際の草刈機1の走行開始位置である始端A1への移動も自動的に行われるため、誤操作に起因して草刈機1の転倒が防止される。また、草刈機1は1/4以上の旋回量では方向転換されないため、傾斜地での転倒の可能性がさらに低減される。
【0112】
なお、草刈作業のみならず、傾斜地の除雪作業等のその他の作業にも適用可能であり、この場合、前進草刈工程は前進作業工程になり、後進草刈工程は後進作業工程になる。
【0113】
また、
図10に示す例では、後進経路Bの方向復帰位置B1を、該方向復帰位置B1と切替経路Bを介して接続される方向転換位置A2に対して、基準方向と反対の方向に向かって上り側に傾斜した方向に切替距離だけ離間した位置に配置しているが、
図11に中心線で示す通り、この方向復帰位置C1を、該方向転換位置A2に対して、基準方向に向かって上り側に傾斜した方向に切替距離だけ離間した位置に配置しもよい。
【0114】
また、
図11に仮想線で示す通り、後進経路Bの方向復帰位置C1を、該方向復帰位置C1と切替経路Bを介して接続される方向転換位置A2に対して、基準方向と反対の方向に向かって下り側に傾斜した方向に切替距離だけ離間した位置に配置してもよい他、基準方向に向かって下り側に傾斜した方向に切替距離だけ離間した位置に配置してもよい。
【0115】
一方、
図10に示す例では、前進経路Aの方向復帰位置A1を、該方向復帰位置A1と切替経路Bを介して接続される方向転換位置B2に対して、基準方向に向かって上り側に傾斜した方向に切替距離だけ離間した位置に配置しているが、
図12に中心線で示す通り、この方向復帰位置A1を、該方向転換位置A2に対して、基準方向と反対の方向に向かって上り側に傾斜した方向に切替距離だけ離間した位置に配置しもよい。
【0116】
また、
図12に仮想線で示す通り、前進経路Aの方向復帰位置A1を、該方向復帰位置A1と切替経路Bを介して接続される方向転換位置C2に対して、基準方向と反対の方向に向かって下り側に傾斜した方向に切替距離だけ離間した位置に配置してもよい他、基準方向に向かって下り側に傾斜した方向に切替距離だけ離間した位置に配置してもよい。
【0117】
次に、
図13に基づき本発明の別実施形態について上述の形態と異なる点を説明する。
【0118】
図13(A),(B)は夫々別実施形態に係る自動切替制御の内容を概念的に説明する説明図である。
図10に示す例では、前進経路Aの方向転換位置A2に対して、後進経路Cの方向復帰位置C1を、基準方向と反対の方向に所定の距離だけずらした位置に配置しているため、上述の方向転換位置A2と比較して、この方向復帰位置C1から基準方向に前記所定の距離分だけ変位した位置までの範囲が草刈を行っていない未刈範囲Dになるが、
図12(A)に示す通り、草刈機1を未刈範囲Dで往復走行させて草刈作業を行う準備工程を、自動切替工程の後で且つ後進草刈工程の前に実行してもよい。
【0119】
また、上述した通り、後進経路Cの方向復帰位置C1に対して、前進経路Cの方向転換位置A2を、基準方向と反対の方向に所定の距離だけずらした位置に配置してもよいが、この場合、上述の方向復帰位置C1と比較して、この方向転換位置A2から基準方向に前記所定の距離分だけ変位した位置までの範囲が草刈作業を行っていない未刈範囲Dになるが、
図13(B)に示す通り、草刈機1を未刈範囲Dで往復走行させて草刈作業を行う準備工程を、前進草刈工程の後で且つ自動切替工程の前に実行してもよい。
【0120】
なお、本例では、切替経路Bを介して接続される前進経路Aの方向転換位置A2と後進経路Cの方向復帰位置C1との関係で発生する未刈地Dの処理について説明したが、切替経路Bを介して接続される後進経路Cの方向転換位置C2と後進経路Aの方向復帰位置A1との関係で発生する未刈地Dの処理についても、同様の考え方で、準備工程を導入可能である。
【0121】
次に、
図7、
図14及び
図15に基づき草刈方法の別実施形態について上述の形態と異なる点を説明する。
【0122】
図14は別実施形態に係る草刈方法の処理内容を示すフロー図であり、
図15は
図14に示す草刈方法の構成を概念的に説明する説明図である。
図14に示す草刈方向では、前進草刈工程と、草刈機1を前進経路Aの終端A2から前進側で且つ左右の一方側(図示する例では、上り側)に走行させてUターンさせるUターン旋回工程(S4)とを交互に実行する。
【0123】
また、このUターン旋回工程は、
図7に仮想線で示すUターン制御手段7fによって実行されるUターン制御によって自動的に行わせてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 草刈機(刈取作業機)
2 走行機体
3 草刈装置(刈取部)
5 クローラ式走行装置
7 制御部
14 ロータリカッター(刈取回転体)
25 保護カバー(カバー体)
25a 当接部
26 走行用モーター(動力源)
30 走行駆動装置
31a 当接部
35 刈取駆動装置
40 当接部材(当接部)
G 草(対象物)
S 通過スペース
【手続補正書】
【提出日】2024-02-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前進走行時と後進走行時の両方で対象物を刈り取る刈取作業を行うことが可能な刈取作業機であって、
左右一対のクローラ式走行装置と、
左右のクローラ式走行装置に支持された走行機体と、
前記走行機体の前側又は後側に連結され且つ刈取作業を行う刈取部と、
前記左右のクローラ式走行装置毎に設けられ且つ該クローラ式走行装置を走行駆動させる一対の走行駆動装置と、
前記刈取部を刈取駆動させる刈取駆動装置と、
前記刈取部側と、前記走行機体における前記刈取部が連結された側と反対の端側とに夫々設けられた前後の当接部と、を備え、
前記当接部は、走行機体の進行方向側に位置している際、対象物と当接し、該対象物を前記進行方向に倒伏させるように構成され、
各走行駆動装置は、駆動対象としたクローラ式走行装置側に配置され、且つ、該クローラ式走行装置を正転側に駆動させる前進状態と、逆転側に駆動させる後進状態と、駆動停止させる停止状態と、に切換可能に構成され、
前記刈取部は、回転作動によって対象物の刈り取りを行う左右一対の刈取回転体と、前記左右の刈取回転体の夫々の真上側に各別に設けられた左右一対の促進体と、を有し、
前記刈取駆動装置は、刈取部の前側の対象物を左右の刈取回転体の間に掻き込んで後方に送る方向に各刈取回転体を回転駆動させる後方掻込状態と、刈取部の後側の対象物を左右の刈取回転体の間に掻き込んで前方に送る方向に各刈取回転体を回転駆動させる前方掻込状態と、に切換可能に該刈取部を駆動するように構成され、
前記走行機体の直下における左右のクローラ式走行装置の間には、未刈状態の対象物又は刈り取った対象物が通過する通過スペースが形成され、
前記刈取部は前記通過スペースの端側に配置され、
前記刈取部は、前記走行機体の前方又は後方に配置され、
前記左右の促進体は、その夫々の真下側に配置された前記刈取回転体と一体的に回転作動するように構成され、
前記左右の促進体は、前記左右の刈取回転体が刈り取った対象物を前記通過スペースに掻き込む際には、該対象物を前記通過スペースに送るように構成され、
前記刈取駆動装置は、前記通過スペースに臨まない側である前記走行機体の上側から前記刈取部に至る範囲に配置された
刈取作業機。
【請求項2】
前記走行駆動装置及び前記刈取駆動装置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記走行機体の前進走行時に前記刈取部を後方掻込状態に切り換える一方で、前記走行機体の後進走行時に前記刈取部を前方掻込状態に切り換えるように構成された
請求項1に記載の刈取作業機。
【請求項3】
前記走行駆動装置は、前記通過スペースに臨むように、前記クローラ式走行装置の前後一方側の端部の内側側面側に配置され、
さらに、前記走行駆動装置は、走行駆動用の動力源と、該動力源をカバーするカバー体とを有し、
前記カバー体には前記当接部が形成された
請求項1に記載の刈取作業機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するため、前進走行時と後進走行時の両方で対象物を刈り取る刈取作業を行うことが可能な刈取作業機であって、左右一対のクローラ式走行装置と、左右のクローラ式走行装置に支持された走行機体と、前記走行機体の前側又は後側に連結され且つ刈取作業を行う刈取部と、前記左右のクローラ式走行装置毎に設けられ且つ該クローラ式走行装置を走行駆動させる一対の走行駆動装置と、前記刈取部を刈取駆動させる刈取駆動装置と、前記刈取部側と、前記走行機体における前記刈取部が連結された側と反対の端側とに夫々設けられた前後の当接部と、を備え、前記当接部は、走行機体の進行方向側に位置している際、対象物と当接し、該対象物を前記進行方向に倒伏させるように構成され、
各走行駆動装置は、駆動対象としたクローラ式走行装置側に配置され、且つ、該クローラ式走行装置を正転側に駆動させる前進状態と、逆転側に駆動させる後進状態と、駆動停止させる停止状態と、に切換可能に構成され、前記刈取部は、回転作動によって対象物の刈り取りを行う左右一対の刈取回転体と、前記左右の刈取回転体の夫々の真上側に各別に設けられた左右一対の促進体と、を有し、前記刈取駆動装置は、刈取部の前側の対象物を左右の刈取回転体の間に掻き込んで後方に送る方向に各刈取回転体を回転駆動させる後方掻込状態と、刈取部の後側の対象物を左右の刈取回転体の間に掻き込んで前方に送る方向に各刈取回転体を回転駆動させる前方掻込状態と、に切換可能に該刈取部を駆動するように構成され、前記走行機体の直下における左右のクローラ式走行装置の間には、未刈状態の対象物又は刈り取った対象物が通過する通過スペースが形成され、前記刈取部は前記通過スペースの端側に配置され、前記刈取部は、前記走行機体の前方又は後方に配置され、前記左右の促進体は、その夫々の真下側に配置された前記刈取回転体と一体的に回転作動するように構成され、前記左右の促進体は、前記左右の刈取回転体が刈り取った対象物を前記通過スペースに掻き込む際には、該対象物を前記通過スペースに送るように構成され、前記刈取駆動装置は、前記通過スペースに臨まない側である前記走行機体の上側から前記刈取部に至る範囲に配置されたことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
左右のクローラ式走行装置の間に形成された通過スペースの端側に刈取部を配置し、走行機体からクローラ式走行装置に至る範囲に設けられた走行駆動装置を、クローラ式走行装置側に配置し、しかも、対象物は、当接部との当接によって、走行機体の進行方向に倒伏されながら通過スペースに導入されるため、通過スペースにおける対象物の流れが良好になり、前進走行時と後進走行時の両方においてスムーズ且つ安定的な刈取作業を行うことができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
しかし、本例では、左右のロータリカッター14、14の後方への掻き込み作用によって、草Gの下端部から後方に掻き込まれることにより、該草Gが走行機体2の進行方向である前方に倒伏されるとともに、草Gの中途部が作業側カバー31の前端部31aと当接することによっても、該草Gの前方への倒伏が促進されるため、刈り取られた草Gは、前方に倒伏した姿勢で且つ流れの乱れも生じ難い状態で、通過スペースSに排出される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0113
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0113】
また、
図10に示す例では、後進経路Bの方向復帰位置B1を、該方向復帰位置B1と切替経路Bを介して接続される方向転換位置A2に対して、基準方向と反対の方向に向かって上り側に傾斜した方向に切替距離だけ離間した位置に配置しているが、
図11に中心線で示す通り、この方向復帰位置C1を、該方向転換位置A2に対して、基準方向に向かって上り側に傾斜した方向に切替距離だけ離間した位置に配置し
てもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0115
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0115】
一方、
図10に示す例では、前進経路Aの方向復帰位置A1を、該方向復帰位置A1と切替経路Bを介して接続される方向転換位置B2に対して、基準方向に向かって上り側に傾斜した方向に切替距離だけ離間した位置に配置しているが、
図12に中心線で示す通り、この方向復帰位置A1を、該方向転換位置A2に対して、基準方向と反対の方向に向かって上り側に傾斜した方向に切替距離だけ離間した位置に配置し
てもよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0124
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0124】
1 草刈機(刈取作業機)
2 走行機体
3 草刈装置(刈取部)
5 クローラ式走行装置
7 制御部
14 ロータリカッター(刈取回転体)
25 保護カバー(カバー体)
25a 当接部
26 走行用モーター(動力源)
30 走行駆動装置
31a 当接部
35 刈取駆動装置
40 当接部材(当接部)
43 第1促進体(促進体)
44 第2促進体(促進体)
G 草(対象物)
S 通過スペース