(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068291
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】電子機器の冷却装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240513BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20240513BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
H05K7/20 G
H05K7/20 H
H01L23/46 C
G06F1/20 B
G06F1/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178622
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞田 強
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AB01
5E322AB04
5E322BA01
5E322BA03
5E322BA04
5E322BB03
5F136CA03
5F136CA11
(57)【要約】
【課題】放熱のための送風を行うファンの風下に障害物がある場合に、良好な放熱性能を得られる電子機器の冷却装置を提供する。
【解決手段】電子機器の冷却装置は、ヒートシンク、ファン、ダクト、分岐壁、分岐リブおよび主要リブを備える。分岐壁は、前記ダクトに設けられて前記排気口からの排気方向を二分するものであって、互いの一辺で連続する2つの板状部が前記ファンの送風方向下流側へ向かって互いに離れるように前記送風方向に対して傾斜して構成されている。分岐リブは、厚さ方向に複数並んで前記分岐壁から突出して設けられ、最も突出した頂部が鋭角である山型の板状の形状を有し、前記フィンの隙間に差し込まれる。主要リブは、複数の前記分岐リブのうち、前記ベース部における前記電子部品が触れる位置の裏面に立つ前記フィンと隣り合うものであって、他の前記分岐リブよりも大きい体積を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の熱を受けるベース部に、複数のフィンが厚さ方向に並んで立てられたヒートシンクと、
回転による送風で、前記フィンの間に空気の流れをつくるファンと、
前記ヒートシンクおよび前記ファンを覆い、前記ファンの送風方向上流側の吸気口および下流側の排気口が設けられたダクトと、
前記ダクトに設けられて前記排気口からの排気方向を二分するものであって、互いの一辺で連続する2つの板状部が前記ファンの送風方向下流側へ向かって互いに離れるように前記送風方向に対して傾斜して構成された分岐壁と、
厚さ方向に複数並んで前記分岐壁から突出して設けられ、最も突出した頂部が鋭角である山型の板状の形状を有し、前記フィンの隙間に差し込まれる分岐リブと、
複数の前記分岐リブのうち、前記ベース部における前記電子部品が触れる位置の裏面に立つ前記フィンと隣り合うものであって、他の前記分岐リブよりも大きい体積を有する主要リブと、
を備える電子機器の冷却装置。
【請求項2】
前記主要リブは、隣り合う前記フィンに触れる厚さを有する
請求項1に記載の電子機器の冷却装置。
【請求項3】
前記主要リブの前記分岐壁からの突出長さは、他の前記分岐リブの突出長さよりも長い
請求項1に記載の電子機器の冷却装置。
【請求項4】
前記主要リブは、前記ヒートシンクの中央部に立つ前記フィンと隣り合うものである
請求項1に記載の電子機器の冷却装置。
【請求項5】
前記分岐リブの突出長さは、前記主要リブに近いものほど長く遠いものほど短く設定されて、前記分岐リブの頂部を連ねる仮想線は山型である
請求項1に記載の電子機器の冷却装置。
【請求項6】
前記分岐リブのうち少なくとも前記主要リブが、熱伝導率の高い材料で形成されている
請求項1に記載の電子機器の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PC(Personal Computer、パーソナルコンピュータ)などの電子機器は、CPU(Central Processing Unit)等、高温になる部品を含んでいる。そのような部品には、一般に、放熱のためにヒートシンクが取り付けられ、さらには、ヒートシンクの周囲の気体(空気)が適切に流れるよう、ファンおよびダクトが設置され(例えば特許文献1)、ダクトの吸排気孔の位置が定められる。
【0003】
ここで、電子機器の筐体が内蔵するものの量や配置等によっては、ファンの風下に、気体の円滑な通り抜けを妨げる部品(障害物)が配置されることがある。この場合、放熱性能が低下してしまい、好ましくない。
【0004】
また、こういった用途において一般的なファンは、軸流ファン(プロペラファン)であって、その機構の都合上、回転軸の下流側にあたる領域では風速が遅くなりがちである。或いは、ヒートシンクにより放熱する対象である電子部品は、一般に、ベース部の中央部に触れるよう配置され、当該箇所に立てられるフィンは他のフィンに比べて高温になりやすい。また、ベース部の複数箇所に電子部品が触れる場合、分散した箇所のフィンが高温になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、放熱のための送風を行うファンの風下に障害物がある場合に、良好な放熱性能を得られる電子機器の冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電子機器の冷却装置は、ヒートシンク、ファン、ダクト、分岐壁、分岐リブおよび主要リブを備える。ヒートシンクは、電子部品の熱を受けるベース部に、複数のフィンが厚さ方向に並んで立てられたものである。ファンは、回転による送風で、前記フィンの間に空気の流れをつくる。ダクトは、前記ヒートシンクおよび前記ファンを覆い、前記ファンの送風方向上流側の吸気口および下流側の排気口が設けられたものである。分岐壁は、前記ダクトに設けられて前記排気口からの排気方向を二分するものであって、互いの一辺で連続する2つの板状部が前記ファンの送風方向下流側へ向かって互いに離れるように前記送風方向に対して傾斜して構成されている。分岐リブは、厚さ方向に複数並んで前記分岐壁から突出して設けられ、最も突出した頂部が鋭角である山型の板状の形状を有し、前記フィンの隙間に差し込まれる。主要リブは、複数の前記分岐リブのうち、前記ベース部における前記電子部品が触れる位置の裏面に立つ前記フィンと隣り合うものであって、他の前記分岐リブよりも大きい体積を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態のダクトの外観の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、ダクトが取り付けられる電子機器の構造の一例を概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、電子機器に設けられた通風孔の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、ダクトの形状を説明する平面図である。
【
図5】
図5は、ダクトの形状を説明する縦断側面図である。
【
図6】
図6は、ダクトと排気口付近の部品との位置関係を説明する縦断側面図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態のダクトの形状を説明する平面図である。
【
図8】
図8は、第3の実施形態のダクトの形状を説明する平面図である。
【
図9】
図9は、第4の実施形態のダクトの形状を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
実施形態について図面を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態の冷却装置200の外観の一例を示す斜視図である。
図2は、冷却装置200が取り付けられる電子機器100の構造の一例を概略的に示す斜視図である。ここで、説明の便宜のため、図面には三次元座標系を併せて示した。三次元座標系は、冷却装置200および電子機器100の幅方向(左右方向)をX軸方向、奥行方向(前後方向)をY軸方向、高さ方向(上下方向)をZ軸方向とした。なお、Y軸の正方向は、電子機器100の背面側から正面側へ向かう方向であって、Y軸の正方向を「前方」とする。また、Z軸の正方向は下から上へ向かう方向である。
【0009】
まず
図1に示すように、冷却装置200は、ダクト1と、ヒートシンク2と、ファン3とを備える。ダクト1は、略箱型の形状を有し、ヒートシンク2と当該ヒートシンク2に送風するファン3とを覆う。ファン3は、Y軸の負方向(後方)に送風する。ダクト1の、ファン3の送風方向上流側となる位置には吸気口11が設けられ、下流側となる位置には排気口12が設けられている。
【0010】
以降、単に上流側と記載したものは、ファン3の送風方向(Y軸の負方向)に基づいた上流側(風上)を意図したものである。同様に、単に下流側と記載したものは、ファン3の送風方向に基づいた下流側(風下)を意図したものである。
【0011】
ヒートシンク2は、発熱する電子部品に取り付けられる。この「発熱する電子部品」は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。CPUが発する熱はヒートシンク2に伝導し、ヒートシンク2の熱は周囲の気体(空気)に放散される。これにより、CPUの過熱による誤作動等が防止される。
【0012】
ヒートシンク2は、ベース部21と複数枚のフィン22とを備える。ベース部21は、電子部品が発する熱の伝導を受ける。フィン22は、ベース部21の上に、厚さ方向に複数枚並んで、立てて設けられている。複数枚のフィン22は、互いに所定の間隔をあけて隣り合う。ベース部21はCPUに接し、CPUの熱が伝導される。フィン22は、自身と連続しているベース部21から伝導する熱を、空中に放散する(放熱)。
【0013】
なお、ヒートシンク2は、所定間隔で層をなすフレーム41~43の上に、弦巻バネ44およびねじ45で固定される。フレーム41とフレーム42との間には、マザーボード101(
図2参照)が挟まれる。
【0014】
ファン3は、軸流ファンであって、回転軸の周囲に1以上のプロペラを備えるプロペラファンである。ファン3は、回転するプロペラで、空気を連続的に送る。このファン3の回転による送風は、フィン22の間に空気の流れをつくる。ファン3で送られる空気は、フィン22やベース部21が放散する熱を下流側へ運び、放熱を促進する。このようにファン3はヒートシンク2を冷却する。
【0015】
本実施形態においては、ファン3の送風方向上流側から下流側へ向かって、吸気口11、ファン3、ヒートシンク2、排気口12の順に、配置されている。ファン3が吸気口11から取り込んで送る気体(空気)は、ヒートシンク2の主にフィン22の周囲を流れてフィン22の熱を奪い、排気口12から排出される。
【0016】
ダクト1は、ファン3による送風を、ヒートシンク2の放熱に効率的に作用させ、放熱効果を向上させる。具体的には、ダクト1は、ヒートシンク2の周りを囲み、ヒートシンク2を冷却するファン3が送る空気が流れる範囲を区切る。ダクト1内の気体は、ファン3の回転により吸気口11から取り込まれる気体と入れ替えられ、排気口12から押し出される。これにより、ヒートシンク2の周囲の気体が速やかに入れ替わる。
【0017】
上述のような冷却装置200の働きの都合上、排気口12の風下には、排気を妨げる部品(障害物)は存在しないことが望ましい。しかしながら、冷却装置200を備える電子機器100の大きさや内蔵物の配置等によっては、排気口12の下流側に障害物が配置されることがある。
【0018】
図2に示すように、電子機器100は、マザーボード101、CPU102、メモリー103、SSD(Solid State Drive)104、ライザーカード105、I/Oボードなどの拡張ボード106,107、筐体110を備えている。
【0019】
筐体110は、上記各部(マザーボード101、CPU102、メモリー103、SSD104、ライザーカード105、I/Oボードなどの拡張ボード106,107)を収納する。
【0020】
マザーボード101は、ヒートシンク2により放熱される電子部品(本実施形態ではCPU102)が実装された基板の一例である。また、メモリー103、SSD104も、動作に応じて発熱する。これらの熱も、ファン3の送風により作られる筐体110内の気体の流れで、放散される。
【0021】
拡張ボード106,107は、マザーボード101に直接接続することも可能であるが、その場合、拡張ボード106,107がマザーボード101に直立するため、筐体110の高さ方向の寸法を大きくする必要があり、電子機器100が大型化してしまう。これを防止するためにライザーカード105が用いられる。
【0022】
ライザーカード105は、拡張ボード106,107とマザーボード101との接続を仲介する。ライザーカード105は、拡張ボード106,107の差し込みを受け付ける1以上のスロットを備え、マザーボード101が備えるスロットに差し込まれる。ライザーカード105により、拡張ボード106,107は、マザーボード101に直立することなく、マザーボード101に略平行に位置し、接続される。これにより、筐体110の高さ寸法を抑えることが可能となる。
【0023】
上述のような配置により、拡張ボード106,107が、ファン3の送風方向において排気口12よりも下流側に位置している。この場合、仮に排気口12からの排気方向が後ろ向き(Y軸の負方向)であると、拡張ボード106,107が排気を妨げる障害物となってしまう。そこで本実施形態では、排気方向が拡張ボード106,107を避けるよう、構成している。
【0024】
図3は、電子機器100に設けられた通風孔161~167の一例を示す斜視図である。なお、この斜視図は電子機器100を背面側から見たものである。
【0025】
電子機器100は、ダクト1と、ダクト1に覆われるヒートシンク2およびファン3と、マザーボード101と、筐体110とを備える。筐体110は、マザーボード101およびダクト1が収納されるものであり、筐体110には、吸排気のための通風孔161~167が設けられている。
【0026】
筐体110は、前カバー111、後カバー112、I/Oパネル113を備えている。前カバー111は、筐体110の正面を構成するパーツである。前カバー111には、通風孔161~163が設けられている。後カバー112は、筐体110の背面を構成するパーツである。後カバー112には、通風孔164,165が設けられている。通風孔164は、筐体110の背面の上部に位置する。通風孔165は、筐体110の背面の下部に位置する。
【0027】
I/Oパネル113は、筐体110の背面の一部を構成するものである。I/Oパネル113には、通風孔166,167が設けられている。通風孔166,167は、筐体110の背面の下部に位置する。通風孔166は、I/Oボード(拡張ボード106,107)へのコネクタの差込みを受け付ける開口部である。
【0028】
各通風孔161~167は、気体(空気)を吸入または排出する。中でも、筐体110の背面側に設けられた通風孔164~166は、主に排気を担当する。
【0029】
本実施形態の電子機器100においては、CPU102の後方に拡張ボード106,107が配置されている。このため、ダクト1の排気口12は、排気が拡張ボード106,107を避けるよう、後ろ上方に向かって開口する排気口121と、後ろ下方に開口した排気口122とに、分岐壁13および分岐リブ14,15によって分けられている(
図1参照)。
【0030】
ここで、分岐壁13および分岐リブ14,15の形状について、
図4および
図5を参照してさらに詳しく説明する。
図4は、ダクト1の形状を説明する平面図である。
図5は、ダクト1の形状を説明する縦断側面図である。なお、
図5の断面位置は、
図4に示すA-A線の位置である。
【0031】
分岐壁13は、排気口12の縁の内側に配置され、排気口12を排気口121と排気口122とに二分する。分岐壁13は、側面視において断面が略V字型の形状を有し、屈曲部分はヒートシンク2側に突出している。これにより、ヒートシンク2を経た気体の流れ方向が二分される。
【0032】
より詳しくは、分岐壁13は、2つの板状部131,132を有している。板状部131,132は、互いの上流側の辺で連続している。また、板状部131,132は、下流側ほど互いの距離があくよう、ファン3の送風方向に対して傾斜している。第1の板状部131は、気体の流れ方向を斜め上向きに導く。第2の板状部132は、気体の流れ方向を斜め下向きに導く。これにより、分岐壁13は、自身の下流側の一部範囲を避けるよう排気を導き、排気を分岐させる。
【0033】
分岐壁13が有する2つの板状部131,132とファン3の送風方向(Y軸の負方向)とがなす角の角度はそれぞれ45°以上であり、2つの板状部131,132がなす角の角度は、直角(90°)或いはそれよりやや大きい程度の鈍角である。この分岐壁13の角度設定等は、金型の寿命や作りやすさ等が考慮されて、定められる。
【0034】
分岐リブ14,15は、分岐壁13のヒートシンク2側の面に立てられている。また、分岐リブ14,15は、複数枚が左右方向に並んで略一定の間隔で設けられている。より詳しくは、分岐リブ14,15は、フィン22の間に差し込まれる間隔で、自身の厚さ方向に複数枚並んで、設けられている。そして分岐リブ14,15は、少なくとも先端部分が、フィン22の間に差し込まれる。
【0035】
分岐リブ14,15は、分岐壁13のヒートシンク2に対向する側の面から、分岐壁13とヒートシンク2との間隔よりも大きく突出して設けられている。また、分岐リブ14,15は、ヒートシンク2のフィン22の間隔以下の厚さを有し、略山型の板状の形状を有している。分岐リブ14,15の山型の縁の形状は、直線状でもよいし、曲線状でもよい。
【0036】
分岐リブ14,15の山型の縁は、送風方向に対して傾斜している。分岐リブ14,15の山型の縁と、ファン3の送風方向(Y軸の負方向)とがなす角の角度は、20~45°の範囲であると効果的であり、さらに好ましくは30°程度である。また、最も突出した部分である頂部141における山型の角度は、鋭角である。
【0037】
上述の分岐リブ14,15の角度設定等は、冷却効果をシミュレーションした結果に基づいて、所望の効果が得られ、且つ金型として設計可能であるよう、定められる。
【0038】
例えば、分岐リブ14,15の山型の縁とファン3の送風方向とがなす角の角度は、大きすぎては所望の効果を得られず、所望の効果を得るためには少なくとも45°以下とすることが望ましい。
【0039】
また、分岐リブ14,15の山型の縁とファン3の送風方向とがなす角の角度が小さすぎると(例えば20°未満であると)、分岐リブ14,15の頂部141が鋭くなりすぎて金型成形時に充填不良が起こりやすくなってしまうので、好ましくない。さらにこの場合に、根元の高さ方向寸法を十分にとるために分岐リブ14,15を長く(頂部141から根元までの寸法が大きく)すると、分岐リブ14,15が平面視(Z軸負方向視点)において排気口121内に収まらなくなり、金型の構造が複雑化する。
【0040】
上述のような不都合を回避して所望の効果を得つつ、充填不良が起こりにくく構造がシンプルな金型で成形可能とするためには、分岐リブ14,15の山型の縁とファン3の送風方向とがなす角は、20°以上45°以下であることが望ましく、約30°前後であると好ましい。
【0041】
なお、分岐リブ14,15の根元の厚さは、3mm以下であればヒケが起こりにくく、金型で肉盗みを施す必要がない。また、分岐リブ14,15の上下は壁が無いので、通常のキャビティおよびコアで成形可能である。よって、分岐リブ14,15の先端は、鋭利な形状とすることができる。
【0042】
ここで、分岐リブ14と分岐リブ15との違いについて説明する。分岐リブ14は、ヒートシンク2のフィン22の間隔未満の厚さを有し、分岐リブ15は、ヒートシンク2のフィン22の間隔に略等しい厚さを有している。
【0043】
分岐リブ15は、主要リブの一例であって、他の分岐リブ14よりも大きい体積を有する。本実施形態の分岐リブ15は、隣り合うフィン22に触れる厚さを有する。また、分岐リブ15の分岐壁13からの突出長さは、他の分岐リブ14の突出長さよりも長い。
【0044】
分岐リブ15は、複数の分岐リブ14のうち、温度が高くなりやすいと考えられるフィン22と、隣り合う位置に設けられる。温度が高くなりやすいと考えられるフィン22は、ベース部21における、発熱する電子部品が触れる位置の裏面に立つものである。本実施形態は、ベース部21の中央部に電子部品が触れる想定のものであり、分岐リブ15は、分岐リブ14の並び方向(X軸方向)の中央部に設けられ、ヒートシンク2の中央部に立つフィン22と隣り合う。
【0045】
そして、分岐リブ14,15を含むダクト1は、熱伝導率の高い材料で形成されている。この熱伝導率の高い材料とは、例えば、高熱伝導樹脂と呼ばれるものである。高熱伝導樹脂は、熱伝導率が高い樹脂である。なお、ダクト1の全体でなくとも、一部分(例えば分岐壁13や分岐リブ14および分岐リブ15、或いは少なくとも分岐リブ15)が、熱伝導率の高い金属(例えば銅やアルミ)製であってもよい。熱伝導率が高い材料で形成された分岐リブ14,15とすることで、分岐リブ14,15やこれらに連なるダクト1の各部からの放熱も期待できる。
【0046】
図6は、ダクト1と排気口12(121,122)付近の部品(拡張ボード106,107)との位置関係を説明する縦断側面図である。なお、
図6の断面位置は、
図4に示すB-B線の位置である。ここに示すように、排気口121,122の排気方向は、付近の部品(拡張ボード106,107)を避け、それらの周囲を排気が通るように設定される。
【0047】
このような構成において、電子機器100が通電され稼働すると、CPU102やSSD104等は発熱して、温度が上昇する。ファン3が稼働し送風することにより、ダクト1および筐体110内の気体が流れて換気されるので、CPU102等の熱が奪われ、それらの過熱が防止される。
【0048】
分岐壁13および分岐リブ14,15は、ヒートシンク2を経て温まり排気口12から排出される空気の流れ方向を、排気口121と排気口122とに分ける。シミュレーションによれば、分岐壁13および分岐リブ14,15がなく障害物(拡張ボード106,107)が影響する場合に比べ、分岐壁13および分岐リブ14,15がある場合の方が、効率よく換気され、CPU102等の熱上昇が抑えられる。
【0049】
このように、ダクト1によれば、ダクト1の風下に障害物があってもそれを避けて排気させることができるので、電子機器100の内部に発生する熱を適切に放散することができる。
【0050】
また、上述のような冷却装置200において、分岐リブ14,15は、熱伝導率の高い材料でできているので、フィン22が放散する熱を受け取りやすい。これにより、フィン22による放熱を促進することができる。さらに、分岐リブ15は、他の分岐リブ14よりも体積が大きいので、近隣のフィン22の放熱を、より促進することができる。分岐リブ15に隣り合うフィン22は、ベース部21の発熱する電子部品が接する位置の裏面に立つものであるため放散を要する熱量も多くなりがちであるが、分岐リブ15による放熱促進により、過熱を回避しやすくなる。
【0051】
なお、上述した実施形態は、上述した各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については同じ符号を用い、詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0052】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態のダクト1の形状を説明する平面図である。本実施形態では、第1の実施形態の分岐リブ15に替えて分岐リブ16を、主要リブの一例として設けている。
【0053】
本実施形態は、ベース部21の中央部ではなく、端寄りの2箇所に、発熱する電子部品が触れる想定のものである。この想定では、端寄りのフィン22が高温になりやすい。そこで、主要リブである分岐リブ16を端寄りの2箇所に設け、端寄りのフィン22の放熱を促進する。
【0054】
本実施形態のように、ベース部21における発熱する電子部品が触れる位置に応じて、高温になりやすいと考えられるフィン22を想定し、当該フィン22に隣り合う分岐リブ16の体積を、他の分岐リブ14よりも厚くしたり長くしたりすることで大きくし、また、フィン22に分岐リブ16を触れさせることで、放熱性能を向上させることができる。
【0055】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態のダクト1の形状を説明する平面図である。本実施形態では、第1の実施形態の分岐リブ14,15に替えて、分岐リブ171~175を設けている。なお、本実施形態における主要リブの一例は、分岐リブ171である。
【0056】
分岐リブ171~175は、分岐壁13からの突出長さが、それぞれ異なる。分岐リブ171~175の突出長さは、主要リブである分岐リブ171が最も長く、他の分岐リブ172~175は、分岐リブ171に近いものほど長く遠いものほど短く設定されている。また、分岐リブ171は、対をなし、ヒートシンク2の中央部に立つフィン22に隣り合っている。つまり、分岐リブ171~175の頂部を連ねる仮想線は山型である。
【0057】
このような構成によれば、分岐リブ171~175がフィン22に触れない構造であるので、第1の実施形態のものに比べて組立てやすい一方、フィン22に触れないことで低下する放熱性能を、補うことができる。
【0058】
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態のダクト1の形状を説明する平面図である。本実施形態では、第3の実施形態の分岐リブ171~175に替えて、分岐リブ181~185を設けている。なお、本実施形態における主要リブの一例は、分岐リブ181である。他の分岐リブ182~185は、分岐リブ172~175と同じである。
【0059】
分岐リブ181は、第3の実施形態のものと異なり、フィン22に触れる厚さを有している。
【0060】
このような構成によれば、第3の実施形態のものに比べて、放熱性能を高くすることができる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
100…電子機器、
101…マザーボード、102…CPU、103…メモリー、
104…SSD、105…ライザーカード、106,107…拡張ボード、
110…筐体、111…前カバー、112…後カバー、
113…I/Oパネル、161~167…通風孔、
200…冷却装置、
1 …ダクト、11…吸気口、12,121,122…排気口、
13 …分岐壁、131,132…板状部、
14 …分岐リブ、141…頂部、
15 …分岐リブ(主要リブ)、151…頂部、
16 …分岐リブ(主要リブ)、
171…分岐リブ(主要リブ)、172~175…分岐リブ、
181…分岐リブ(主要リブ)、182~185…分岐リブ、
2 …ヒートシンク、21…ベース部、22…フィン、
3 …ファン、
41~43…フレーム、44…弦巻バネ、45…ねじ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2003-283171号公報
【特許文献2】特開2021-185592号公報