(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068300
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】窒化物半導体及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
H01L29/80 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178634
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 年輝
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102FA01
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GL07
5F102GM04
5F102GQ01
5F102GR01
(57)【要約】
【課題】特性の向上が可能な窒化物半導体及び半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、窒化物半導体は、窒化物部材を含む。前記窒化物部材は、第1窒化物領域及び第2窒化物領域を含む。前記第1窒化物領域は、Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含む。前記Al
x1Ga
1-x1Nは、Fe及びMnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む。前記第2窒化物領域は、前記Al
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含む。前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への方向は、第1方向に沿う。前記第1方向と交差する第1軸における前記第2窒化物領域の第2格子長は、前記第1軸における前記第1窒化物領域の第1格子長とは異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1窒化物領域であって、前記第1窒化物領域は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含み、前記Alx1Ga1-x1Nは、Fe及びMnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む、前記第1窒化物領域と、
第2窒化物領域であって、前記第2窒化物領域は、前記Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含み、前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への方向は、第1方向に沿う、前記第2窒化物領域と、
を含む窒化物部材を含み、
前記第1方向と交差する第1軸における前記第2窒化物領域の第2格子長は、前記第1軸における前記第1窒化物領域の第1格子長とは異なる、窒化物半導体。
【請求項2】
前記第2格子長と前記第1格子長との差の絶対値の前記第1格子長に対する格子長差比は、0.01%以上である、請求項1に記載の窒化物半導体。
【請求項3】
前記格子長差比は、0.035%以上である、請求項2に記載の窒化物半導体。
【請求項4】
前記第2格子長は前記第1格子長よりも長い、請求項1に記載の窒化物半導体。
【請求項5】
前記第1窒化物領域における前記第1元素の第1濃度は、前記第2窒化物領域における前記第1元素の第2濃度よりも高い、または、前記第2窒化物領域は、前記第1元素を含まない、請求項1に記載の窒化物半導体。
【請求項6】
前記第2濃度は、前記第1濃度の1/10以下である、請求項5に記載の窒化物半導体。
【請求項7】
前記第1窒化物領域における前記第1元素の第1濃度は、前記第2窒化物領域の前記第1方向における中間位置における前記第1元素の中間位置濃度よりも高い、または、前記中間位置は、前記第1元素を含まない、請求項1に記載の窒化物半導体。
【請求項8】
前記中間位置濃度は、前記第1濃度の1/10以下である、請求項7に記載の窒化物半導体。
【請求項9】
前記第1濃度は、1×1017cm-3以上である、請求項5に記載の窒化物半導体。
【請求項10】
前記第1方向に沿う前記第1窒化物領域の第1窒化物領域厚さは、10μm以上1000μm以下である、請求項1に記載の窒化物半導体。
【請求項11】
前記窒化物部材は、前記第1窒化物領域と前記第2窒化物領域との間に設けられた中間領域をさらに含み、
前記中間領域は、結晶欠陥を含む、請求項5に記載の窒化物半導体。
【請求項12】
前記第1方向に沿う前記中間領域の厚さは、10nm以上50nm以下である、請求項11に記載の窒化物半導体。
【請求項13】
前記第2窒化物領域における転位の密度は、前記第1窒化物領域における転位の密度よりも高い、請求項11に記載の窒化物半導体。
【請求項14】
前記中間領域は、Alz1Ga1-z1N(0≦z1<1)を含む、請求項11に記載の窒化物半導体。
【請求項15】
前記z1と前記x1との差の絶対値の前記x1に対する比は、0.7以下である、請求項14に記載の窒化物半導体。
【請求項16】
前記中間領域における前記第1元素の中間濃度は、前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への第1向きに沿って低下し、
前記第1向きに沿った位置の変化に対する前記中間濃度の変化率は、前記位置の前記変化に対する前記第1濃度の変化率よりも高く、前記位置の前記変化に対する前記第2濃度の変化率よりも高い、請求項11~15のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【請求項17】
前記x1は、0以上0.1以下である、請求項1に記載の窒化物半導体。
【請求項18】
第1窒化物領域であって、前記第1窒化物領域は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含み、前記Alx1Ga1-x1Nは、Fe及びMnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む、前記第1窒化物領域と、
第2窒化物領域であって、前記第2窒化物領域は、前記Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含み、前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への方向は、第1方向に沿う、前記第2窒化物領域と、
前記第1窒化物領域と前記第2窒化物領域との間に設けられAlz1Ga1-z1N(0≦z1<1)を含む中間領域と、
を含む窒化物部材を含み、
前記第1窒化物領域における前記第1元素の第1濃度は、前記第2窒化物領域における前記第1元素の第2濃度よりも高く、
前記中間領域における前記第1元素の中間濃度は、前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への第1向きに沿って低下し、
前記第1向きに沿った位置の変化に対する前記中間濃度の変化率は、前記位置の前記変化に対する前記第1濃度の変化率よりも高く、前記位置の前記変化に対する前記第2濃度の変化率よりも高い、窒化物半導体。
【請求項19】
前記窒化物部材は、Alx3Ga1-x3N(0<x3≦1、x1<x3)を含む第3窒化物領域をさらに含み、
前記第1窒化物領域と前記第3窒化物領域との間に前記第2窒化物領域がある、請求項1に記載の窒化物半導体。
【請求項20】
請求項19に記載の窒化物半導体と、
第1電極と、
第2電極と、
第3電極と、
を備え、
前記第1電極から前記第2電極への方向は、前記第1方向と交差する第2方向に沿い、
前記第3電極の前記第2方向における位置は、前記第1電極の前記第2方向における位置と、前記第2電極の前記第2方向における位置と、の間にあり、
前記第2窒化物領域は、第1部分領域、第2部分領域及び第3部分領域を含み、
前記第1部分領域から前記第1電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第2部分領域から前記第2電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第3部分領域は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第2部分領域との間にあり、前記第3部分領域から前記第3電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第1電極は、前記第3窒化物領域の一部と電気的に接続され、
前記第2電極は、前記第3窒化物領域の別の一部と電気的に接続された、半導体装置。
【請求項21】
前記第3電極は、前記第3窒化物領域と接した、請求項20に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、窒化物半導体及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、窒化物半導体に基づく半導体装置において、特性の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、特性の向上が可能な窒化物半導体及び半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、窒化物半導体は、窒化物部材を含む。前記窒化物部材は、第1窒化物領域及び第2窒化物領域を含む。前記第1窒化物領域は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む。前記Alx1Ga1-x1Nは、Fe及びMnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む。前記第2窒化物領域は、前記Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む。前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への方向は、第1方向に沿う。前記第1方向と交差する第1軸における前記第2窒化物領域の第2格子長は、前記第1軸における前記第1窒化物領域の第1格子長とは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示する模式的断面図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、窒化物半導体を例示するグラフである。
【
図3】
図3は、窒化物半導体の特性を例示するグラフである。
【
図4】
図4は、窒化物半導体の特性を例示するグラフである。
【
図5】
図5は、窒化物半導体の特性を例示するグラフである。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示するグラフである。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示する電子顕微鏡写真像である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示する模式的断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る窒化物半導体110は、窒化物部材10Mを含む。
【0009】
窒化物部材10Mは、第1窒化物領域11及び第2窒化物領域12を含む。窒化物部材10Mは、中間領域12Mをさらに含んでも良い。窒化物部材10Mは、例えば結晶である。第1窒化物領域11、第2窒化物領域12及び中間領域12Mは、例えば結晶である。
【0010】
第1窒化物領域11は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む。Alx1Ga1-x1Nは、第1元素を含む。第1元素は、Fe及びMnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0011】
組成比x1は、例えば、0以上0.1以下である。Alx1Ga1-x1Nは、例えば、GaNで良い。第1窒化物領域11は、例えば、第1元素を含むGaNで良い。第1窒化物領域11は、例えば、FeドープGaNまたはMnドープGaNである。
【0012】
第2窒化物領域12は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含む。第1窒化物領域11における第1元素の第1濃度は、第2窒化物領域12における第1元素の第2濃度よりも高い。または、第2窒化物領域12は、第1元素を含まない。第2窒化物領域12は、例えば、ノンドープGaNで良い。第2窒化物領域12における組成比は、第1窒化物領域11における組成比と実質的に同じである。
【0013】
第1窒化物領域11から第2窒化物領域12への方向は、第1方向D1に沿う。第1方向D1をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。第1窒化物領域11及び第2窒化物領域12は、X-Y平面に実質的に平行に広がる。
【0014】
実施形態において、第1方向D1と交差する第1軸における第2窒化物領域12の第2格子長は、第1軸における第1窒化物領域11の第1格子長とは異なる。第1軸は、例えば、窒化物部材10Mのa軸である。第1方向D1は、例えば、c軸に沿う。
【0015】
組成比が実質的に同じである第1窒化物領域11と第2窒化物領域12との間で、格子長が互いに異なる。これにより、例えば、第1窒化物領域11に含まれる第1元素が第2窒化物領域12またはその上に設けられる窒化物領域に向けて移動(例えば拡散)することが抑制できる。
【0016】
実施形態において、第1窒化物領域11が第1元素を含むことで、第1窒化物領域11において、高い電気抵抗が得られる。第1窒化物領域11は、例えば、絶縁性または半絶縁性の基体である。このような第1窒化物領域11が用いられることで、窒化物半導体110を用いた半導体装置において、安定した動作が得られる。例えば、電流リークが抑制される。
【0017】
第1窒化物領域11が第1元素を含む場合に、第1元素が第2窒化物領域12またはその上の窒化物領域に移動(例えば拡散)する場合がある。第1元素が移動すると、窒化物半導体110を用いた半導体装置において、目的とする特性が得難くなる場合がある。第1元素が移動すると、例えば、キャリア移動度が低下する。第1元素が移動すると、例えば、電流コラプスが大きくなり安定した動作が得難くなる。第1元素が移動すると、例えば、信頼性が低下する。
【0018】
実施形態においては、上記のように、第1窒化物領域11と第2窒化物領域12との間で、格子長が互いに異なる。例えば、第1窒化物領域11に含まれる第1元素が第2窒化物領域12またはその上に設けられる窒化物領域に向けて移動(例えば拡散)することが抑制できる。第1窒化物領域11が第1元素を含む場合においても、第2窒化物領域12またはその上の窒化物領域において、第1元素の低い濃度が得られる。実施形態によれば、特性の向上が可能な窒化物半導体を提供できる。実施形態によれば、例えば、高いキャリア移動度を実現可能な窒化物半導体を提供できる。
【0019】
格子長が互いに異なる第1窒化物領域11と第2窒化物領域12との間で、格子長の変化が緩和する緩和領域が設けられても良い。緩和領域を設けることで、第1窒化物領域11が第1元素を含む場合においても、第2窒化物領域12またはその上の窒化物領域において、第1元素の低い濃度が得られる。この緩和領域において、第1元素が捕獲されると考えられる。例えば、緩和領域に結晶欠陥が形成される。この結晶欠陥が第1元素のトラップとして機能すると考えられる。これにより、第1窒化物領域11に含まれる第1元素が第2窒化物領域12に向けて移動することが抑制されると考えられる。
【0020】
図1に示すように、窒化物部材10Mは、中間領域12Mをさらに含んでも良い。中間領域12Mは、第1窒化物領域11と第2窒化物領域12との間に設けられる。例えば、中間領域12Mは、結晶欠陥を含む。中間領域12Mが、上記の緩和領域として機能する。中間領域12Mは、第1窒化物領域11と接しても良い。中間領域12Mは、第2窒化物領域12と接しても良い。
【0021】
中間領域12Mは、Alz1Ga1-z1N(0≦z1<1)を含んで良い。中間領域12Mにおける組成比は、第1窒化物領域11における組成比、及び、第2窒化物領域12における組成比と実質的に同じで良い。
【0022】
例えば、組成比z1と組成比x1との差の絶対値の組成比x1に対する比は、0.7以下で良い。このような中間領域12M(例えば緩和領域)は、形成温度などの条件を制御することで得やすい。例えば、比較的低温(350℃~430℃)での結晶性成長により、緩和領域となる中間領域12Mが形成しやすい。例えば、結晶欠陥を含む中間領域12Mが形成しやすくなる。
【0023】
図1に示すように、この例では、窒化物部材10Mは、第3窒化物領域13をさらに含む。第3窒化物領域13は、Al
x3Ga
1-x3N(0<x3≦1、x1<x3)を含む。Al
x3Ga
1-x3Nにおいて、例えば、組成比z1は、0.05以上1以下である。組成比x3は、0.15以上0.3以下でも良い。第3窒化物領域13は、例えば、AlGaNである。
【0024】
第1窒化物領域11と第3窒化物領域13との間に第2窒化物領域12がある。第2窒化物領域12は、第3窒化物領域13と接して良い。
図1に示すように、第2窒化物領域12は、第3窒化物領域13と対向する領域を含む。この領域に、キャリア領域12Qが形成されて良い。キャリア領域12Qは、例えば、2次元電子ガスである。窒化物半導体110を用いた半導体装置の動作において、キャリア領域12Qが用いられる。
【0025】
図2(a)及び
図2(b)は、窒化物半導体を例示するグラフである。
図2(a)は、第1試料SP1に対応する。
図2(b)は、第2試料SP2に対応する。これらの図は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)分析結果の例である。第1試料SP1は、第1窒化物領域11の上に第2窒化物領域12が形成され、第2窒化物領域12の上に第3窒化物領域13が形成されることで得られる。これらの領域は、エピタキシャル成長により形成される。第1試料SP1において、第1窒化物領域11の上に、比較的低温での結晶成長の後に高温での結晶成長が行われることで、上記の中間領域12M及び第2窒化物領域12が得られる。第2試料SP2においては、比較的低温での結晶成長が行われず、高温での結晶成長により第2窒化物領域12が形成される。
【0026】
図2(a)及び
図2(b)には、窒化物部材10Mにおける第1元素のZ軸方向におけるプロファイルが示されている。この例では、第1元素は、Feである。これらの図の横軸は、Z軸方向における位置pZである。縦軸は、Feの濃度(C(Fe))である。
【0027】
図2(a)に示すように、第1試料SP1において、第1窒化物領域11は、高い濃度のFe(第1元素)を含む。中間領域12Mにおいて、Feの濃度が急激に低下する。中間領域12Mにおいて、Feが第1窒化物領域11から第2窒化物領域12に移動(例えば拡散)することが抑制される。第2窒化物領域12において、Feの濃度は、例えば、5×10
15cm
-3以下である。第2窒化物領域12は、実質的にFeを含まない。
【0028】
図2(b)に示すように、第2試料SP2においては、第2窒化物領域12も高い濃度でFeを含む。
【0029】
第1試料SP1及び第2試料SP2において、キャリア移動度の特性が異なることがわかった。第1試料SP1及び第2試料SP2において、ホール効果測定によりキャリア移動度が評価される。第1試料SP1において、1830cm2/Vsの高い移動度が得られる。第2試料SP2において、移動度は1650cm2/Vsと低い。このように、第2窒化物領域12において、第1元素の濃度が低いことで、高いキャリア移動度が得られる。
【0030】
図1及び
図2(a)に示すように、第2窒化物領域12は、第3窒化物領域13と接する領域12rを含む。この接する領域12rの第1方向D1における厚さは、例えば、第2窒化物領域12の第1方向D1における厚さの1/10である。この接する領域12rにおける第1元素(例えばFe)の濃度は、例えば、第1窒化物領域11における第1元素の濃度の1/20以下である。
【0031】
第1試料SP1及び第2試料SP2において、格子長の特性が異なることが分かった。第1試料SP1においては、第1軸における第2窒化物領域12の第2格子長は、第1軸における第1窒化物領域11の第1格子長とは異なる。第2試料SP2においては、第1軸における第2窒化物領域12の第2格子長は、第1軸における第1窒化物領域11の第1格子長と実質的に同じである。格子長に関する情報は、例えば、X線回折特性の逆格子空間マッピングなどに基づいて得ることができる。
【0032】
図3は、窒化物半導体の特性を例示するグラフである。
図3は、逆格子空間マッピング図である。
図3は、第1試料SP1の(10-14)非対称反射における逆格子空間マッピング図である。
図3の横軸は、<20-20>方向の格子長の逆数qxである。縦軸は、<0004>方向の格子長の逆数qzである。
図3の横軸は、例えば、X軸方向に沿う格子長の逆数qxである。
図3の縦軸は、例えば、Z軸方向に沿う格子長の逆数qzである。
図3において、横軸の左方向は、X軸方向に沿う格子長が長いことに対応する。
図3において、縦軸の下方向は、Z軸方向に沿う格子長が長いことに対応する。
図3には、第1窒化物領域11、第2窒化物領域12及び第3窒化物領域13の格子の測定結果が示されている。
【0033】
図3に示すように、第2窒化物領域12におけるX軸方向の格子長は、第1窒化物領域11におけるX軸方向の格子長よりも長い(
図3において左)。このように、第1試料SP1においては、格子長に差が存在する。
【0034】
窒化物部材10Mの形成条件を変更して作製された種々の試料に関して、格子長が測定される。種々の試料において、第2窒化物領域12における第1元素(Fe)の濃度が測定される。
【0035】
図4は、窒化物半導体の特性を例示するグラフである。
図4の横軸は、格子長差比LMRである。格子長差比LMRは、第2格子長と第1格子長との差の絶対値の第1格子長に対する比である。既に説明したように、第1格子長は、第1方向D1と交差する第1軸(例えばa軸)における第1窒化物領域11の格子長である。第2格子長は、第1軸における第2窒化物領域12の格子長である。第1試料SP1において、格子長差比LMRは、0.08%である。第2試料SP2において、格子長差比LMRは、0%である。
【0036】
図4の縦軸は、第2窒化物領域12におけるFeの濃度(C(Fe))である。この例では、濃度(C(Fe))は、第2窒化物領域12の第1方向D1(厚さ方向)における中間位置12p(
図2(a)及び
図2(b)参照)におけるFeの濃度である。
【0037】
図4に示すように、格子長差比LMRが高くなると、第2窒化物領域12におけるFeの濃度(C(Fe))が低くなる。第2格子長と第1格子長との差が大きくなることで、緩和領域(例えば中間領域12M)における第1元素(例えばFe)のトラップ効果が高くなると考えられる。
【0038】
実施形態において、格子長差比LMRは0.01%以上で良い。これにより、第2窒化物領域12においてFeの濃度を低くできる。格子長差比LMRは、0.035%以上でも良い。第2窒化物領域12においてFeの濃度をさらに低くできる。
【0039】
実施形態において、格子長差比LMRは0.5%以下で良い。これにより、第2窒化物領域12において結晶欠陥(例えば転位)の密度を低くできる。格子長差比LMRは、0.25%以下でも良い。第2窒化物領域12において結晶欠陥の密度をさらに低くできる。
【0040】
実施形態において、例えば、第2格子長は第1格子長よりも長い。実施形態において、第2格子長は第1格子長よりも短くても良い。格子長の差に起因する不連続な領域が第1元素のトラップとして機能する。第2格子長は第1格子長よりも短い場合においても、第2窒化物領域12にける第1元素の濃度を低くできる。
【0041】
第2窒化物領域12における第1元素の濃度(第2濃度)は、第1窒化物領域11における第1元素の濃度(第1濃度)の1/50以下である。
【0042】
第1窒化物領域11における第1元素の濃度(第1濃度)は、第2窒化物領域12の第1方向D1における中間位置12pにおける第1元素の濃度(中間位置濃度)よりも高い。または、中間位置12pは、第1元素を含まない。中間位置濃度は、例えば、第1濃度の1/50以下である。
【0043】
第1濃度は、例えば、1×1017cm-3以上である。これにより、第1窒化物領域11において、十分な絶縁性が得られる。第2濃度は、例えば、1×1017cm-3未満である。第2濃度は、例えば、5×1015cm-3以下でも良い。第2濃度は、例えば、第1濃度の1/100以下でも良い。中間位置12pにおける第1元素(例えばFe)の濃度は、第1濃度の1/100以下でも良い。第2濃度は、例えば、第1濃度の1/10以下でも良い。中間位置12pにおける第1元素(例えばFe)の濃度は、第1濃度の1/10以下でも良い。
【0044】
図1に示すように、第1方向D1に沿う中間領域12Mの厚さを中間領域厚さt12Mとする。中間領域厚さt12Mを変更することで、格子長差比LMRが変化することが分かった。
【0045】
図5は、窒化物半導体の特性を例示するグラフである。
図5の横軸は、中間領域12Mの厚さ(中間領域厚さt12M)である。縦軸は、格子長差比LMRである。
図5に示すように、中間領域厚さt12Mが厚くなると、格子長差比LMRが高くなる。中間領域厚さt12Mが厚くなると、格子が緩和しやすくなると考えられる。
【0046】
実施形態において、中間領域厚さt12Mは、例えば、10nm以上である。高い格子長差比LMRが得やすい。これにより、第2窒化物領域12における第1元素の濃度を低くできる。中間領域厚さt12Mは15nm以上でも良い。第2窒化物領域12における第1元素の濃度をさらに低くできる。
【0047】
中間領域厚さt12Mは、例えば、50nm以下である。高い結晶性を有する第2窒化物領域12が得やすい。中間領域厚さt12Mは25nm以下でも良い。第2窒化物領域12における第1元素の濃度をさらに低くできる。第2窒化物領域12における結晶性をさらに高くできる。
【0048】
図1に示すように、第1方向D1に沿う第1窒化物領域11の厚さを第1窒化物領域厚さt11とする。第1窒化物領域厚さt11は、例えば、10μm以上1000μm以下である。例えば、第1窒化物領域11はAl
x1Ga
1-x1N(0≦x1<1)を含む基板である。例えば、Al
x1Ga
1-x1NはFe及びMnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1窒化物領域厚さt11が10μm以上の場合に、電流リークが抑制されやすい。窒化物半導体110を用いた半導体装置において、安定した動作が得やすい。第1窒化物領域厚さt11が1000μmよりも厚い場合には、欠陥などによる動作不良が生じやすい。
【0049】
図1に示すように、第1方向D1に沿う第2窒化物領域12の厚さを第2窒化物領域厚さt12とする。第2窒化物領域厚さt12は、例えば、10nm以上1000nm以下である。第2窒化物領域厚さt12が10nmよりも薄い場合には、第2窒化物領域12またはその上の窒化物領域において、結晶品質が低下しやすい。第2窒化物領域厚さt12が1000nmよりも厚い場合には、第2窒化物領域12において、電気抵抗が低くなり、電流リークが生じやすい。
【0050】
図1に示すように、第1方向D1に沿う第3窒化物領域13の厚さを第3窒化物領域厚さt13とする。第3窒化物領域厚さt13は、例えば、10nm以上50nm以下である。第3窒化物領域厚さt13が10nmよりも薄い場合には、キャリア領域12Qが形成され難い。移動度が低下しやすい。第3窒化物領域厚さt13が50nmよりも厚い場合には、第3窒化物領域厚さt13において欠陥が増大しやすい。移動度が低下しやすい。
【0051】
第1元素がMnである場合も、第1窒化物領域11と第2窒化物領域12との間において格子長の差が設けられることで、Mn(第1元素)が第2窒化物領域12に移動(例えば拡散)することが抑制できる。第1元素がMnである場合も、格子長差比LMRが高くなると、第2窒化物領域12におけるのMnの濃度が低くなる。格子長の差が大きくなることで、緩和領域(例えば中間領域12M)におけるMn(第1元素)のトラップ効果が高くなると考えられる。
【0052】
第3試料において、第1窒化物領域11は、高い濃度のMn(第1元素)を含む。第3試料において、中間領域12Mにおいて、Mnの濃度が急激に低下する。第3試料においては、第2窒化物領域12において、実質的にMnを含まない。一方、第4試料においては、第2窒化物領域12も高い濃度でMnを含む。
【0053】
第3試料及び第4試料において、キャリア移動度の特性が異なる。第3試料SP3及び第4試料SP4において、ホール効果測定によりキャリア移動度が評価される。第3試料において、1850cm2/Vsの高い移動度が得られる。第4試料においては、移動度は1600cm2/Vsと低い。このように、第2窒化物領域12において、第1元素の濃度が低いことで、高いキャリア移動度が得られる。
【0054】
図6は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示するグラフである。
図6の横軸は、Z軸方向における位置pZである。縦軸は、第1元素の濃度(C(E1))の対数である。
【0055】
図6に示すように、中間領域12Mにおける第1元素の中間濃度C12Mは、第1窒化物領域11から第2窒化物領域12への第1向きに沿って低下する。第2窒化物領域12における第1元素の第2濃度C12は、第1窒化物領域11から第2窒化物領域12への第1向きに沿って低下する。第1窒化物領域11における第1元素の第1濃度C11は、第1窒化物領域11から第2窒化物領域12への第1向きに沿って低下しても良い。
【0056】
第1向きに沿った位置pZの変化に対する中間濃度C12Mの変化率は、位置pZの変化に対する第1濃度C11の変化率よりも高い。例えば、第1向きに沿った位置pZの変化に対する中間濃度C12Mの対数の変化率は、位置pZの変化に対する第1濃度C11の対数の変化率よりも高い。既に説明したように、第1濃度C11は、第1窒化物領域11における第1元素の濃度である。
【0057】
第1向きに沿った位置pZの変化に対する中間濃度C12Mの変化率は、位置pZの変化に対する第2濃度C12の変化率よりも高い。例えば、第1向きに沿った位置pZの変化に対する中間濃度C12Mの対数の変化率は、位置pZの変化に対する第2濃度C12の対数の変化率よりも高い。既に説明したように、第2濃度C12は、第2窒化物領域12における第1元素の濃度である。
【0058】
第1向きに沿った位置pZの変化に対する第2濃度C12の変化率は、位置pZの変化に対する第1濃度C11の変化率よりも高い。例えば、第1向きに沿った位置pZの変化に対する第2濃度C12の対数の変化率は、位置pZの変化に対する第1濃度C11の対数の変化率よりも高い。
【0059】
中間領域12Mにおいて、第1元素の濃度は、急激に低下する。第2窒化物領域12において、第1元素の低い濃度が得られる。
【0060】
図7は、第1実施形態に係る窒化物半導体を例示する電子顕微鏡写真像である。
図7は、上記の第1試料SP1のTEM(Transmission Electron Microscopy)像である。
図7に示すように、中間領域12Mにおいて、結晶欠陥10Dが存在する。第1窒化物領域11と第2窒化物領域12との間における格子長の差が、結晶欠陥10Dにより変化すると考えられる。
【0061】
図7に示すように、第2窒化物領域12において、転位10Lが存在しても良い。第2窒化物領域12における転位10Lの密度は、第1窒化物領域11における転位10Lの密度よりも高くて良い。これにより、第1窒化物領域11と第2窒化物領域12との間における格子長の差が大きくなりやすい。第2窒化物領域12において、第1元素の低い濃度が得られやすい。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態は、半導体装置に係る。
図8は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図8に示すように、実施形態に係る半導体装置120は、第1実施形態に係る窒化物半導体110と、第1電極51と、第2電極52と、第3電極53と、を含む。
【0063】
第1電極51から第2電極52への方向は、第2方向D2に沿う。第2方向D2は、第1方向D1と交差する。
【0064】
第3電極53の第2方向D2における位置は、第1電極51の第2方向D2における位置と、第2電極52の第2方向D2における位置と、の間にある。第2窒化物領域12は、第1部分領域12a、第2部分領域12b及び第3部分領域12cを含む。第1部分領域12aから第1電極51への方向は、第1方向D1に沿う。第2部分領域12bから第2電極52への方向は、第1方向D1に沿う。第3部分領域12cは、第2方向D2において第1部分領域12aと第2部分領域12bとの間にある。第3部分領域12cから第3電極53への方向は、第1方向D1に沿う。
【0065】
第1電極51は、第3窒化物領域13の一部と電気的に接続される。第2電極52は、第3窒化物領域13の別の一部と電気的に接続される。第1電極51、第2電極52、及び、第3電極53は、例えば、第3方向D3に沿って延びて良い。第3方向D3は、第1方向D1及び第2方向D2を含む平面と交差する。第3方向D3は、例えば、Y軸方向である。
【0066】
半導体装置120において、第1電極51と第2電極52との間に流れる電流は、第3電極53の電位により制御できる。第3電極53の電位は、例えば、第1電極51の電位を基準にした電位である。第1電極51は、例えば、ソース電極として機能する。第2電極52は、例えば、ドレイン電極として機能する。第3電極53は、例えば、ゲート電極として機能する。半導体装置120は、例えば、HEMT(High Electron Mobility Transistor)である。半導体装置120は、例えば、高周波用トランジスタである。
【0067】
図8に示すように、第1絶縁部材41が設けられて良い。第3窒化物領域13は、第2窒化物領域12と第1絶縁部材41との間に第3窒化物領域13が設けられる。
【0068】
この例では、第3電極53は、第3窒化物領域13と接する。高速のスイッチング特性が得られる。第3電極53と第3窒化物領域13の間に、第1絶縁部材41が設けられても良い。
【0069】
実施形態によれば、第2窒化物領域12において、第1元素の低い濃度が得られる。例えば、高いキャリア移動度が得られる。実施形態によれば、欠陥を抑制できる。例えば、第1元素に起因して発生する欠陥を抑制できる。例えば、ピットが抑制できる。これにより、例えば、電流のリークを抑制できる。実施形態によれば、特性の向上が可能な半導体装置を提供できる。
【0070】
半導体装置120は、例えば、高いキャリア移動度が得られる。例えば、電流コラプスが抑制できる。高い信頼性が得られる。
【0071】
実施形態において、窒化物領域の形状などに関する情報は、例えば、電子顕微鏡観察などにより得られる。窒化物領域における組成及び元素濃度に関する情報は、例えば、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)、または、SIMSなどにより得られる。窒化物領域における組成に関する情報は、例えば、X線逆格子空間マッピングまたはフォトルミネッセンスなどにより得られても良い。
【0072】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んで良い。
(構成1)
第1窒化物領域であって、前記第1窒化物領域は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含み、前記Alx1Ga1-x1Nは、Fe及びMnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む、前記第1窒化物領域と、
第2窒化物領域であって、前記第2窒化物領域は、前記Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含み、前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への方向は、第1方向に沿う、前記第2窒化物領域と、
を含む窒化物部材を含み、
前記第1方向と交差する第1軸における前記第2窒化物領域の第2格子長は、前記第1軸における前記第1窒化物領域の第1格子長とは異なる、窒化物半導体。
【0073】
(構成2)
前記第2格子長と前記第1格子長との差の絶対値の前記第1格子長に対する格子長差比は、0.01%以上である、構成1に記載の窒化物半導体。
【0074】
(構成3)
前記格子長差比は、0.035%以上である、構成2に記載の窒化物半導体。
【0075】
(構成4)
前記第2格子長は前記第1格子長よりも長い、構成1~3のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【0076】
(構成5)
前記第1窒化物領域における前記第1元素の第1濃度は、前記第2窒化物領域における前記第1元素の第2濃度よりも高い、または、前記第2窒化物領域は、前記第1元素を含まない、構成1~4のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【0077】
(構成6)
前記第2濃度は、前記第1濃度の1/10以下である、構成5に記載の窒化物半導体。
【0078】
(構成7)
前記第1窒化物領域における前記第1元素の第1濃度は、前記第2窒化物領域の前記第1方向における中間位置における前記第1元素の中間位置濃度よりも高い、または、前記中間位置は、前記第1元素を含まない、構成1~4のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【0079】
(構成8)
前記中間位置濃度は、前記第1濃度の1/10以下である、構成7に記載の窒化物半導体。
【0080】
(構成9)
前記第1濃度は、1×1017cm-3以上である、構成5~8のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【0081】
(構成10)
前記第1方向に沿う前記第1窒化物領域の第1窒化物領域厚さは、10μm以上1000μm以下である、構成1~9のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【0082】
(構成11)
前記窒化物部材は、前記第1窒化物領域と前記第2窒化物領域との間に設けられた中間領域をさらに含み、
前記中間領域は、結晶欠陥を含む、構成5に記載の窒化物半導体。
【0083】
(構成12)
前記第1方向に沿う前記中間領域の厚さは、10nm以上50nm以下である、構成11に記載の窒化物半導体。
【0084】
(構成13)
前記第2窒化物領域における転位の密度は、前記第1窒化物領域における転位の密度よりも高い、構成11~12のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【0085】
(構成14)
前記中間領域は、Alz1Ga1-z1N(0≦z1<1)を含む、構成11~13のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【0086】
(構成15)
前記z1と前記x1との差の絶対値の前記x1に対する比は、0.7以下である、構成14に記載の窒化物半導体。
【0087】
(構成16)
前記中間領域における前記第1元素の中間濃度は、前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への第1向きに沿って低下し、
前記第1向きに沿った位置の変化に対する前記中間濃度の変化率は、前記位置の前記変化に対する前記第1濃度の変化率よりも高く、前記位置の前記変化に対する前記第2濃度の変化率よりも高い、構成11~15のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【0088】
(構成17)
前記x1は、0以上0.1以下である、構成1~16のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【0089】
(構成18)
第1窒化物領域であって、前記第1窒化物領域は、Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含み、前記Alx1Ga1-x1Nは、Fe及びMnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む、前記第1窒化物領域と、
第2窒化物領域であって、前記第2窒化物領域は、前記Alx1Ga1-x1N(0≦x1<1)を含み、前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への方向は、第1方向に沿う、前記第2窒化物領域と、
前記第1窒化物領域と前記第2窒化物領域との間に設けられAlz1Ga1-z1N(0≦z1<1)を含む中間領域と、
を含む窒化物部材を含み、
前記第1窒化物領域における前記第1元素の第1濃度は、前記第2窒化物領域における前記第1元素の第2濃度よりも高く、
前記中間領域における前記第1元素の中間濃度は、前記第1窒化物領域から前記第2窒化物領域への第1向きに沿って低下し、
前記第1向きに沿った位置の変化に対する前記中間濃度の変化率は、前記位置の前記変化に対する前記第1濃度の変化率よりも高く、前記位置の前記変化に対する前記第2濃度の変化率よりも高い、窒化物半導体。
【0090】
(構成19)
前記窒化物部材は、Alx3Ga1-x3N(0<x3≦1、x1<x3)を含む第3窒化物領域をさらに含み、
前記第1窒化物領域と前記第3窒化物領域との間に前記第2窒化物領域がある、構成1~18のいずれか1つに記載の窒化物半導体。
【0091】
(構成20)
構成19に記載の窒化物半導体と、
第1電極と、
第2電極と、
第3電極と、
を備え、
前記第1電極から前記第2電極への方向は、前記第1方向と交差する第2方向に沿い、
前記第3電極の前記第2方向における位置は、前記第1電極の前記第2方向における位置と、前記第2電極の前記第2方向における位置と、の間にあり、
前記第2窒化物領域は、第1部分領域、第2部分領域及び第3部分領域を含み、
前記第1部分領域から前記第1電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第2部分領域から前記第2電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第3部分領域は、前記第2方向において前記第1部分領域と前記第2部分領域との間にあり、前記第3部分領域から前記第3電極への方向は、前記第1方向に沿い、
前記第1電極は、前記第3窒化物領域の一部と電気的に接続され、
前記第2電極は、前記第3窒化物領域の別の一部と電気的に接続された、半導体装置。
【0092】
(構成21)
前記第3電極は、前記第3窒化物領域と接した、構成20に記載の半導体装置。
【0093】
実施形態によれば、特性の向上が可能な窒化物半導体及び半導体装置を提供できる。
【0094】
本願明細書において、「電気的に接続される状態」は、複数の導電体が物理的に接してこれら複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。「電気的に接続される状態」は、複数の導電体の間に、別の導電体が挿入されて、これらの複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。
【0095】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、窒化物半導体に含まれる、窒化物領域及び基体などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0096】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0097】
その他、本発明の実施の形態として上述した窒化物半導体及び半導体装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての窒化物半導体及び半導体装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0098】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと解される。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
10D:結晶欠陥、 10L:転位、 10M:窒化物部材、 11~13:第1~第3窒化物領域、 12M:中間領域、 12Q:キャリア領域、 12a~12c:第1~第3部分領域、 12p:中間位置、 12r:領域、 41:第1絶縁部材、 51~53:第1~第3電極、 110:窒化物半導体、 120:半導体装置、 C11:第1濃度、 C12:第2濃度、 C12M:中間濃度、 D1~D3:第1~第3方向、 SP1、SP2:第1、第2試料、 t11:第1窒化物領域厚さ、 t12:第2窒化物領域厚さ、 t12M:中間領域厚さ、 t13:第3窒化物領域厚さ、