(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006831
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ペットボトル製金魚の製造方法およびペットボトル製金魚
(51)【国際特許分類】
A63H 33/16 20060101AFI20240110BHJP
A63H 33/22 20060101ALI20240110BHJP
A63H 33/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A63H33/16 D
A63H33/16 B
A63H33/22 A
A63H33/00 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022115083
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】522288212
【氏名又は名称】根本 進
(72)【発明者】
【氏名】根本 進
(72)【発明者】
【氏名】東江 正輝
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150BA41
2C150BC08
2C150CA02
2C150DD14
2C150DG01
2C150DG13
2C150EF16
2C150EF33
2C150FA03
2C150FB04
2C150FB22
2C150FB25
2C150FB30
2C150FB43
2C150FD12
2C150FD13
(57)【要約】
【課題】ペットボトルを再利用し、しかもペットボトルの形状を活かして金魚の特徴的な形態を的確に表現することができるペットボトル製金魚を提供すること。
【解決手段】ペットボトルから、左右対称的に展開可能な筒状体1を切り出す。筒状体1の一端部10は、それを展開したときの形状が、腹開きされたときの金魚の頭部の形状となるように、中間部20から離れるにしたがって幅を減少させる。筒状体1の中間部20には、それを展開したときの形状が、腹開きされたときの金魚の体幹部の形状となるように、本体部21とひれ部22を形成する。筒状体1の他端部30には、それを展開したときの形状が、腹開きされたときの金魚の尾部の形状となるように、尾びれ部31A,31Bを形成する。一端部10および中間部20は、母線L0を中心として内側に曲げ、他端部30は、母線L0を中心として外側に曲げる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップの取り付けが可能な口部、ネック部、胴部、および底部が順次一体に形成され、前記ネック部は、前記胴部から前記口部に向かって小径となるロート状であるペットボトルから、ペットボトル製金魚を製造する方法であって、
前記ペットボトルから前記口部と前記底部を切り外して、一端部に前記ネック部が位置し、かつ中間部と他端部に前記胴部が位置する筒状体を切り出す第1工程と、
前記筒状体が1つの母線を中心として左右対称的に展開可能となるように、前記母線の反対側に位置する前記筒状体の部分を前記一端部と他端部との間に亘って切断する第2工程と、
前記筒状体の前記一端部を部分的に切除して、前記母線を中心として前記一端部を展開したときの形状が、腹開きされたときの金魚の頭部の形状となるように、前記母線を中心とする前記一端部の幅を前記中間部から離れるにしたがって減少させる第3工程と、
前記筒状体の前記中間部を部分的に切除して、前記母線を中心として前記中間部を展開したときの形状が、腹開きされたときの金魚の体幹部の形状となるように、前記中間部に、前記母線を中心とする幅が前記一端部から前記他端部に向かうにしたがって一旦増大してから減少する第1形状部と、前記第1部分の外側に位置して金魚の胸びれ、腹びれ、および尻びれの少なくとも1つを模した形状の第2形状部と、を形成する第4工程と、
前記筒状体の前記他端部を部分的に切除して、前記母線を中心として前記他端部を展開したときの形状が、腹開きされたときの金魚の尾部の形状となるように、前記他端部に、金魚の左右対称に分かれた尾びれを模した形状の尾びれ部を形成する第5工程と、
前記母線を中心として前記一端部を内側に曲げて前記ペットボトル製金魚の頭部を形成する第6工程と、
前記母線を中心として前記中間部を内側に曲げて前記ペットボトル製金魚の体幹部を形成する第7工程と、
前記母線を中心として前記他端部を外側に曲げて前記ペットボトル製金魚の尾部を形成する第8工程と、
を含むペットボトル製金魚の製造方法。
【請求項2】
前記第2形状部は、金魚の左の胸ひれを模した形状であって前記第1形状部の左側に位置する左の胸ひれ部と、金魚の右の胸ひれを模した形状であって前記第1形状部の右側に位置する右の胸ひれ部と、を含み、
前記第7工程は、前記第1形状部と前記左の胸ひれ部との境界部分を中心として前記左の胸ひれ部を外側に曲げる工程と、前記第1形状部と前記右の胸ひれ部との境界部分を中心として前記右の胸ひれ部を外側に曲げる工程と、を含む請求項1に記載のペットボトル製金魚の製造方法。
【請求項3】
前記第2形状部は、金魚の左の腹ひれを模した形状であって前記第1形状部の左側に位置する左の腹ひれ部と、金魚の右の腹ひれを模した形状であって前記第1形状部の右側に位置する右の腹ひれ部と、を含み、
前記第7工程は、前記第1形状部と前記左の腹ひれ部との境界部分を中心として前記左の腹ひれ部を外側に曲げる工程と、前記第1形状部と前記右の腹ひれ部との境界部分を中心として前記右の腹ひれ部を外側に曲げる工程と、を含む請求項1に記載のペットボトル製金魚の製造方法。
【請求項4】
前記第2形状部は、金魚の尻ひれを模した形状であって前記第1形状部の左右両側のいずれか一方に位置する尻ひれ部を含む請求項1に記載のペットボトル製金魚の製造方法。
【請求項5】
前記第6工程は、前記一端部を曲げたときに互いに近接する前記一端部の左右の対向部分を接合する工程を含む請求項1に記載のペットボトル製金魚。
【請求項6】
前記第7工程は、前記中間部を曲げたときに互いに近接する前記中間部の左右の対向部分を接合する工程を含む請求項1に記載のペットボトル製金魚。
【請求項7】
前記第2工程において前記筒状体が切り出された後の前記ペットボトルの残りの部分、または前記ペットボトルとは異なる他のペットボトルから、金魚の背びれを模した形状の背びれ部材を切り出す第9工程と、
前記中間部における前記母線上の位置に前記背びれ部材を取り付ける第10工程と、
をさらに含む請求項1に記載のペットボトル製金魚の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程後における前記筒状体の前記一端部、前記第4工程後における前記筒状体の前記中間部、および前記第5工程後における前記筒状体の前記他端部のうちの少なくとも一部を着色する第11工程をさらに含む請求項1に記載のペットボトル製金魚の製造方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されるペットボトル製金魚。
【請求項10】
前記ペットボトル製金魚を吊り下げるための吊り下げ部材を備える請求項9に記載のペットボトル製金魚。
【請求項11】
前記ペットボトル製金魚における前記頭部、前記体幹部、および前記尾部の少なくとも1つの内側に位置する発光可能な発光部と、
前記発光部の発光に必要な電力を前記ペットボトル製金魚の外部から供給する外部電源と、
をさらに備える請求項9に記載のペットボトル製金魚。
【請求項12】
前記外部電源は、光を受けて電気を発生する受光部と、前記受光部からの電気を蓄える蓄電部と、周囲の明るさを検出する光センサと、前記光センサによって検出される明るさが所定程度以下であることを条件として前記蓄電部に蓄えられた電気を前記発光部に供給する制御部と、を含む請求項11に記載のペットボトル製金魚。
【請求項13】
前記外部電源を吊り下げる第1吊り下げ部材と、前記外部電源の下に前記ペットボトル製金魚を吊り下げる第2吊り下げ部材と、をさらに備える請求項12に記載のペットボトル製金魚。
【請求項14】
前記第2吊り下げ部材は、前記外部電源から前記発光部に電気を供給するための配線である請求項13に記載のペットボトル製金魚。
【請求項15】
少なくとも一部が透明であって、前記ペットボトル製金魚を収容可能な容器をさらに備える請求項9に記載のペットボトル製金魚。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金魚を模した造形物としてのペットボトル製金魚を製造するための製造方法およびペットボトル製金魚に関する。
【背景技術】
【0002】
金魚を模した造形物の製造方法として、特許文献1には、特別に用意された平面紙から複数のパーツを切り出して組み合わせる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境問題の観点から使用済みのペットボトルの再利用が求められている。造形物としての金魚を製造するためにもペットボトルを用いることが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、ペットボトルを再利用し、しかもペットボトルの形状を活かして、金魚の特徴的な形態を的確に表現することができるペットボトル製金魚の製造方法およびペットボトル製金魚を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のペットボトル製金魚の製造方法は、
キャップの取り付けが可能な口部、ネック部、胴部、および底部が順次一体に形成され、前記ネック部は、前記胴部から前記口部に向かって小径となるロート状であるペットボトルから、ペットボトル製金魚を製造する方法であって、
前記ペットボトルから前記口部と前記底部を切り外して、一端部に前記ネック部が位置し、かつ中間部と他端部に前記胴部が位置する筒状体を切り出す第1工程と、
前記筒状体が1つの母線を中心として左右対称的に展開可能となるように、前記母線の反対側に位置する前記筒状体の部分を前記一端部と他端部との間に亘って切断する第2工程と、
前記筒状体の前記一端部を部分的に切除して、前記母線を中心として前記一端部を展開したときの形状が、腹開きされたときの金魚の頭部の形状となるように、前記母線を中心とする前記一端部の幅を前記中間部から離れるにしたがって減少させる第3工程と、
前記筒状体の前記中間部を部分的に切除して、前記母線を中心として前記中間部を展開したときの形状が、腹開きされたときの金魚の体幹部の形状となるように、前記中間部に、前記母線を中心とする幅が前記一端部から前記他端部に向かうにしたがって一旦増大してから減少する第1形状部と、前記第1部分の外側に位置して金魚の胸びれ、腹びれ、および尻びれの少なくとも1つを模した形状の第2形状部と、を形成する第4工程と、
前記筒状体の前記他端部を部分的に切除して、前記母線を中心として前記他端部を展開したときの形状が、腹開きされたときの金魚の尾部の形状となるように、前記他端部に、金魚の左右対称に分かれた尾びれを模した形状の尾びれ部を形成する第5工程と、
前記母線を中心として前記一端部を内側に曲げて前記ペットボトル製金魚の頭部を形成する第6工程と、
前記母線を中心として前記中間部を内側に曲げて前記ペットボトル製金魚の体幹部を形成する第7工程と、
前記母線を中心として前記他端部を外側に曲げて前記ペットボトル製金魚の尾部を形成する第8工程と、
を含む。
本発明のペットボトル製金魚は、上記の製造方法によって製造される
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用済みのペットボトルを再利用して金魚の造形物を製造することができる。しかも、ペットボトルの展開形状と、金魚を腹開きしたときの形状と、を関連付けることにより、ペットボトルの形状を活かして、金魚の特徴的な形態を的確に表現したペットボトル製金魚を簡易に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態としてのペットボトル製金魚の側面図である。
【
図2】(a)および(b)は、それぞれ、
図1の金魚を異なる方向から視た斜視図である。
【
図3】(a)および(b)は、それぞれ、
図1の金魚の製造に用いるペットボトルの説明図である。
【
図4】
図3のペットボトルから切り出した筒状体の側面図である。
【
図5】(a)および(b)は、それぞれ、展開可能とされた
図4の筒状体と、その筒状体から切り出される第1部材および第2部材と、の関係の説明図である。
【
図6】(a)および(b)は、それぞれ、
図5の第1部材と第2部材とを組み合わせた形態の説明図である。
【
図7】(a)、(b)、(c)、および(d)は、それぞれ、
図6における第1部材と第2部材によって構成されたペットボトル製金魚の説明図である。
【
図8】
図1の金魚を吊り下げるための吊り下げ部材の一例の説明図である。
【
図9】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の第2の実施形態としてのペットボトル製金魚の説明図である。
【
図10】(a)、(b)、および(c)は、それぞれ、
図9の外部電源を覆うカバーの異なる例の説明図である。
【
図11】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の第3の実施形態としてのペットボトル製金魚の異なる例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1および
図2は、本発明の第1の実施形態におけるペットボトル製金魚の説明図である。
図1は、その金魚の側面図、
図2(a)は、その金魚を斜め上方から視た斜視図、
図2(b)は、その金魚を斜め下方から視た斜視図である。本例のペットボトル製金魚Gは、尾びれが左右対称に分かれ、かつ背びれをもつ金魚の造形物であり、後述するように、ペットボトルから切り出された第1部材100と第2部材200とを主体とするツーピース構造である。
【0010】
第1部材100は、金魚の頭部、体幹部、および尾部のそれぞれを模した形状の頭部110、体幹部120、および尾部130を含み、頭部110および体幹部120は中空である。頭部110は、体幹部120から先端の口部111に向かうにしたがってすぼむロート状である。体幹部120には、頭部110から尾部130に向かうにしたがって一旦拡径してから縮径する本体部121と、本体部121の外側に位置するひれ部122と、が形成されている。本例のひれ部122は、金魚の左右の胸びれを模した形状の左右の胸びれ部122A,122Bと、金魚の左右の腹びれを模した形状の左右の腹びれ部122C,122Dと、金魚の尻びれを模した形状の尻びれ部123Eと、を含む。尾部130は、左右対称に分かれた金魚の尾びれを模した形状の左右の尾びれ部131A,131Bを含む。第2部材200は、金魚の背びれを模した形状の背びれ部201を含み、第1部材100の体幹部120に取り付けられる。
【0011】
図3から
図7は、本実施形態における金魚Gの製造方法を説明するための図である。
【0012】
まずは、
図3のような流体を収容可能なペットボトルPを用意する。
図3(a)はペットボトルPの側面図、
図3(b)は、
図3(a)のIIIb-IIIb線に沿う断面図である。ペットボトルPには、キャップCの取り付けが可能な口部P1、ネック部P2、筒状の胴部P3、および胴部P3の下端を閉じる底部P4が順次一体に形成されている。ネック部P2は、胴部P3から口部P1に向かうにしたがって小径となるロート状である。より詳細には、ネック部P2は、その周面全体がペットボトルPの中心に向かってすぼむ形状である。
【0013】
次に、
図4のように、ペットボトルPから口部P1と底部P4を切り離して、筒状体1を切り出す(第1工程)。筒状体1において、その一端部10にはネック部P2が位置し、その中間部20と他端部30には胴部P3が位置する。この筒状体1から、後述するように金魚Gの第1部材100と第2部材200とを切り出す。
【0014】
次に、
図5(a)のように、筒状体1が1つの母線L0(
図4参照)を中心として左右対称的に展開可能となるように、母線L0と対向する筒状体1の周部の部分、つまり母線L0の反対側に位置する部分を筒状体1の長手方向全長に亘って切断する(第2工程)。
図5(a)は、展開可能とした筒状体1と、その筒状体から切り出される第1部材および第2部材と、の関係を説明するための平面図、
図5(b)は、
図5(a)のVb-Vb線に沿う断面図である。また、
図5(a)のように、母線L0を中心として筒状体1を展開したとき形状(以下、「筒状体の展開形状」ともいう)が金魚を腹開きしたときの形状となるように、筒状体1を部分的に切除する(第3,第4,第5工程)。ここで背開きとは、魚の腹側から包丁を入れて身を切り離さないように開く加工法であり、金魚を腹開きしたときの形状とは、金魚を全長に亘って腹側から切り開いたときの形状(以下、「金魚の展開形状」ともいう)である。
【0015】
第3工程においては、母線L0を中心として一端部10を展開したときの展開形状が、腹開きされた金魚の頭部の展開形状となるように、一端部10を部分的に切除する。具体的には、中間部20から
図5(a)中の上方に向かうにしたがって一端部10の幅を減少させるように切除する。第4工程においては、母線L0を中心として中間部20を展開したときの展開形状が、腹開きされたときの金魚の体幹部の展開形状となるように、中間部20を部分的に切除する。具体的には、一端部10から他端部30に向かうにしたがって幅が一旦増大してから減少する本体部(第1形状部)21と、本体部21の外側に位置するひれ部(第2形状部)22と、を形成する。本例のひれ部22は、金魚の左右の胸びれを模した形状の左右の胸びれ部22A,22Bと、金魚の左右の腹びれを模した形状の左右の腹びれ部22C,22Dと、金魚の尻びれを模した形状の尻びれ部23Eと、を含む。第5工程においては、母線L0を中心として他端部30を展開したときの展開形状が、腹開きされたときの金魚の尾部の展開形状となるように、他端部30を部分的に切除する。具体的には、金魚の左右対称に分かれた尾びれを模した形状の左右の尾びれ部31A,31Bを形成する。
【0016】
このように成形された後の一端部10、中間部20、および他端部30は、それぞれ、
図1の金魚Gにおける第1部材100の頭部110、体幹部120、および尾部130に対応する。以下、成形後における一端部10、中間部20、および他端部30のそれぞれを頭構成部10A、体幹構成部20A、および尾構成部30Aともいう。また、胸びれ部22A、22B、腹びれ部22C,22D、尻びれ部23E、および尾びれ部31A、31Bは、それぞれ、金魚Gの胸びれ部122A,122B、腹びれ部122C,122D、尻びれ部123E、および尾びれ部131A、131Bに対応する。
【0017】
本例においては、金魚Gとして、背びれをもつ金魚の造形物を製造するために、
図5(a)のように、筒状体1を切り出した後のペットボトルPの切り残り部分から、金魚の背びれを模した形状の背びれ部材40を切り出す(第9工程)。背びれ部材40は、金魚Gの第2部材200に対応する。背びれ部材40は、それを体幹構成部20Aに取り付けるためのフック部41,42を含む。また、体幹構成部20Aにおける母線L0上の位置には、フック部41,42を差し込んで抜け止めするためのスリット21A,21Bを形成する。背びれ部材40は、筒状体1を切り出したペットボトルPとは異なる別のペットボトルから切り出してもよく、また金魚Gとして、背びれをもたない金魚の造形物を製造する場合には、背びれ部材40は不要である。
【0018】
次に、
図6のように、体幹構成部20Aのスリット21A,21Bに、背びれ部材40のフック部41,42を外方から差し込んで抜け止めすることによって、背びれ部材40を取り付ける(第10工程)。
図6(a)は、背びれ部材40を取り付けた体幹構成部20Aの平面図、
図6(b)は、
図6(a)のVIb-VIb線に沿う断面図である。
【0019】
このような背びれ部材40の取り付けに前後して、
図7(a)のように、母線L0を中心として頭構成部10A、体幹構成部20A、および尾構成部30Aを曲げる(第6、第7、および第8工程)。
図7(b)は
図7(a)のVIIb-VIIb線に沿う断面図、
図7(c)は
図7(a)のVIIc-VIIc線に沿う断面図、
図7(d)は
図7(a)のVIId-VIId線に沿う断面図である。
【0020】
第6工程においては、
図7(b)のように、母線L0を中心として、頭構成部10Aの左右の部分を内側に曲げることによって、
図1における金魚Gの頭部110を形成する。第7工程においては、
図7(c)のように、母線L0を中心として、体幹構成部20Aの左右の部分を内側に曲げることによって、金魚Gの体幹部120を形成する。第8工程においては、
図7(d)のように、母線L0を中心として、尾構成部30Aの左右の部分を外側に曲げることによって、金魚Gの尾部130を形成する。
【0021】
さらに本例においては、
図7(b)のように、内側に曲げたときに近接する頭構成部10Aの左右の対向部分を接合する。具体的には、頭構成部10Aにおける
図7(b)中左右の下端部分を重ねて、その部分が離れないように、釣り具としての透明のテグスなどの糸Tによって縫い合わせる(
図2(b)参照)。
図6(a)のように、その糸Tを通すための穴H1を予め頭構成部10Aに形成しておいてもよい。
【0022】
同様に、内側に曲げたときに近接する体幹構成部20Aの左右の対向部分を接合する。具体的には、
図7(c)のように、本体部21と左の胸びれ部22Aとの間の境界線上の部分と、本体部21と右の胸びれ部22Bとの間の境界線上の部分と、を突き当てて、それらの部分が離れないように糸Tによって縫い合わせる(
図2(b)参照)。
図6(a)のように、その糸Tを通すための穴H2を予め体幹構成部20Aに形成しておいてもよい。さらに、それらの境界線上の部分を中心として、左右の胸びれ部22A,22Bを外側に曲げる。同様に、本体部21と左の腹びれ部22Cとの間の境界線上の部分と、本体部21と右の腹びれ部22Dとの間の境界線上の部分と、を突き当てて、それらの部分を糸Tによって縫い合わせる(
図2(b)参照)。
図6(a)のように、その糸Tを通すための穴H3を予め体幹構成部20Aに形成しておいてもよい。さらに、それらの境界線上の部分を中心として、左右の腹びれ部22C,22Dを外側に曲げる。また、体幹構成部20Aには、
図5(a)のように、予め、本体部21から外側に膨出する縫い代部22Fを形成しておく。そして、本体部21と尻びれ部22Eとの間の境界線上の部分と、本体部21と縫い代部22Fとの間の境界線上の部分と、を突き当てて、それらの部分を糸Tによって縫い合わせる(
図2(b)参照)。
図6(a)のように、その糸Tを通すための穴H4を予め体幹構成部20Aに形成しておいてもよい。
【0023】
頭構成部10Aにおける左右の対向部分の接合方法、および体幹構成部20Aにおける左右の対向部分の接合方法は、糸Tを用いる方法のみに限定されない。例えば、フック部41,42とスリット21A,21Bのようなフック部とスリットとによる機械的な結合、接着剤による接着、または熱溶着などの種々の方法を用いることができる。また、金魚Gの頭部110の形状を維持できるように頭構成部10Aを変形させることができれば、このような頭構成部10Aにおける接合は必要ない。同様に、金魚Gの体幹部120の形状を維持できるように体幹構成部20Aを変形させることができれば、このような体幹構成部20Aにおける接合は必要ない。
【0024】
金魚Gの内面および外面の少なくとも一部に対して、好みに応じて着色したり、文字を含む模様などを施すことができる(第10工程)。具体的には、布やシールなどを貼り付けたり、スプレーや筆などによって塗料を付与したりすることができる。金魚Gの目の部分E(
図1参照)は、例えば、黒色のシートを貼り付けることによって形成することができる。また、金魚Gの内面に着色や模様を施す場合には、母線L0を中心として頭構成部10A、体幹構成部20A、および尾構成部30Aを曲げる前に、その処理を施すことが望ましい。
【0025】
以上のような工程を経て、ペットボトルPから金魚Gを製造する。金魚Gは、その頭部110および体幹部120が中空であって軽いため、
図8のように吊り下げ部材51によって吊り下げることにより、風を受けて揺れ動く金魚の造形物として観賞することができる。本例の場合は、吊り下げ部材51として釣り用の透明のテグスを用い、さらに、そのテグスを室内の梁、室外の樹木、または移動可能なスタンドなどの支持部材(不図示)に止めるための紐52と、釣り用の寄り戻し52と、を備える。
【0026】
本例においては、ペットボトルPのネック部P2が口部P1に向かって全体的にすぼむ形状であることと、現実の金魚の頭部が口部に向かって全体的にすぼむ形態であること、との類似性に着目し、そのネック部P2によって金魚Gの頭部110を形成する。このようにネック部P2の特徴的な形状を活かすことによって、ペットボトルPに対する特別なすぼみ成形を要することなく、金魚Gの頭部110を簡易かつ的確に形成することができる。
【0027】
また本例においては、ペットボトルPの展開形状と、金魚を腹開きしたときの展開形状と、を関連付けることにより、ペットボトルPから切り出した1つの筒状体1から、金魚Gの頭部110、体幹部120、および尾部130を一体的に形成する。したがって、それらの部分を別々の部材により形成してから組み合わせる面倒がなく、魚Gを少部品によって製造することができる。また、共通の母線P0を中心として頭構成部10A、体幹構成部20A、および尾構成部30Aを曲げることによって、金魚Gの頭部110、体幹部120、および尾部130を簡易に形成することができる。さらに、母線P0を中心として尾部130を左右に大きく開くことにより、尾びれが左右対称に分かれた金魚の尾の特徴を的確に表現することができる。また、母線P0を中心として内側に曲げた体幹部120と、母線P0を中心として外側に曲げた尾部130と、の間に、
図1のような大きなくびれを形成して、体幹部と尾部との間の部位がくびれた金魚の特徴を的確に表現することができる。
【0028】
また本例においては、変形可能な薄肉のペットボトルPの特徴を活かして、ひれ部122、尾びれ部131A,131B、および背びれ部201を様々に変形させることにより、水中を泳ぐ金魚の特徴的な形態を様々に表現することができる。また、それらのひれ部は、強度、持ちやすさ、および意匠性などを考慮してペットボトルPの周部に形成されている様々な凹凸利用して、より多様に変形させることができる。また、このようなペットボトルPにおける凹凸は、変形された後のひれ部の形状を維持することにもなる。また、大きさや形状が異なる種々のペットボトルを用いることによって、大きさや全体のバランスが異なる種々の形態の金魚Gを製造することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
金魚Gの頭部110、体幹部120、および尾部130の少なくとも1つの内側には、発光可能な発光部を備えることができる。本例においては、
図9(a)のように、体幹部120の内部に発光部60を取り付け、金魚Gの外部に、発光部60の発光に必要な電力を供給するための外部電源70を備える。
【0030】
本例の外部電源70は、
図9(b)のブロック図のように、受光部71、蓄電部72、光センサ73、および制御部74を含む。受光部71は、周囲からの光を受けて電気を発生する受光素子を備え、蓄電部72は、受光部71からの電気を蓄えるための充電池などを備える。光センサ73は周囲の明るさを検出し、制御部74は、光センサ73によって検出される明るさが所定程度以下であることを条件として、蓄電部72に蓄えられた電気を、配線61を通して蓄電部72に供給する。外部電源には、光センサ73が検出する明るさの如何にかかわらず、発光部60を発光させないようにセット可能なスイッチを備えてもよい。また、受光部71は、光センサ73としての機能を兼有することもできる。
【0031】
外部電源70には、それを吊り下げるための第1吊り下げ部材62が取り付けられている。本例においては、第1吊り下げ部材62として釣り用の透明のテグスを用い、さらに、そのテグスを室内の梁、室外の樹木、または移動可能なスタンドなどの支持部材(不図示)に止めるための紐63と、釣り用の寄り戻し64と、を備えている。また、外部電源70には、その下方に金魚Gを吊り下げるための第2吊り下げ部材65が取り付けられている。本例においては、金魚Gが軽量であることを活かして、第2吊り下げ部材65として配線61を用いる。
【0032】
このように外部電源70の下に吊り下げられる金魚Gは、風を受けて揺れ動く金魚の造形物として観賞することができる。また、周囲が明るいときに受光部71が発電した電気を蓄電部72に蓄え、その後、周囲が暗くなったときに、蓄電部72に蓄えられた電気によって発光部60を発光させることができる。したがって、周囲が暗くなったときに発光部60が自動的に発光し、金魚Gは、蛍のような光を放って幻想的な雰囲気を醸し出すことができる。
【0033】
金魚Gと外部電源70は別々に吊り下げてもよく、また金魚Gを吊り下げ、かつ外部電源70を地上などにセットしてもよい。要は、外部電源70から金魚Gに対して発光エネルギーが供給できればよい。
【0034】
外部電源70には、
図10(a)のように、金魚Gとの意匠的なバランスを考慮したデザインのカバー80を取り付けることができる。本例のカバー80は、円柱状の外部電源70を覆う円筒形状であり、その上端部80Aは縮径されていて、その内径は、外部電源70の外径よりも小さく、かつ受光部71における受光面を上方に露出させることができる大きさである。上端部80Aには、第1吊り下げ部材62を通す穴81とスリット82が形成されている。カバー80には様々な意匠を施すことができる。本例の場合、その下端部80Bは、上下に波打つような形状であり、かつ複数の穴が形成されている。このようなカバー80を取り付ける際には、第1吊り下げ部材62が取り付けられた外部電源70に対して、
図10(a)中の上方からカバー80をはめ込むことにより、スリット82を通して、第1吊り下げ部材62を穴81内にガイドして位置決めすることができる。
【0035】
カバー80は、金魚Gと同様のペットボトルPから製造することができる。例えば、
図10(b)のように、ペットボトルPのネック部P2が上端部80Aとなるように、ペットボトルPからカバー80を切り出す。または、
図10(c)のように、ペットボトルPの底部P4が上端部80Aとなるように、ペットボトルPからカバー80を切り出す。そのペットボトルPは、金魚Gの製造に用いるペットボトルと同じである必要はなく、外部電源70の形状に応じたものを用いることができる。例えば、外部電源70が四角柱状である場合には、四角筒形状のペットボトルを用いればよい。カバー80は、外部電源70の少なくとも一部を覆うことができればよく、その形状および取り付け方は本例のみに特定されない。また、カバー80には、金魚Gと関連付けた色や模様を施すことができる。
【0036】
(第3の実施形態)
金魚Gは、少なくとも一部が透明な容器内に収容して、その容器の外から観賞できるようにしてもよい。例えば、
図11(a)のように、透明な容器本体90と、その上部開口部に取り付けられる蓋91と、を含む容器を用いる。蓋91には、受光部71の受光面が上方に露出するように外部電源70を備え、その外部電源70から、内部に発光部60が取り付けられた金魚Gを吊り下げる。そして、第2の実施形態と同様に、外部電源70から金魚G内の発光部60に発光エネルギーを供給する。発光部60は、
図11(a)のように蓋91に備えてもよい。この場合には、発光部60によって金魚Gを上方から照らすことになる。容器本体90は、金魚Gを支持する移動可能なスタンド、および金魚Gの保護ケースとして機能する。
【0037】
(他の実施形態)
金魚Gは、大きさや色が異なるものを上下に複数連ねるように吊り下げて観賞することもできる。また、芳香剤や防虫剤などを金魚G内に入れたり金魚Gから吊り下げることもできる。また、音楽や状況などに応じて、金魚G内に備えた発光部60を点滅させることによって、種々のイベントにおける演出効果を高めることができる。また、複数色に発光可能な発光部60を備えて、その発光色を状況に応じて制御することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1 筒状体
10 一端部
20 中間部
21 本体部(第1形状部)
22 ひれ部(第2形状部)
30 他端部
31A、31B 尾びれ部
110 頭部
120 体幹部
130 尾部
P ペットボトル
P1 口部
P2 ネック部
P3 胴部
P4 底部
L0 母線