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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068316
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】媒体支持装置および記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/14 20060101AFI20240513BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240513BHJP
   D06B 11/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B41J11/14
B41J2/01 305
D06B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178665
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】宮本 悟
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠介
(72)【発明者】
【氏名】永島 裕
(72)【発明者】
【氏名】酒井 伸明
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
3B154
【Fターム(参考)】
2C056EA22
2C056FA03
2C056FA04
2C056FA10
2C056FB03
2C056HA27
2C058AB12
2C058AC07
2C058AF31
2C058DC04
2C058DC09
2C058DC22
3B154AB27
3B154AB31
3B154BA09
3B154BB33
3B154BB47
3B154BC07
3B154BC16
3B154BC29
3B154BD01
(57)【要約】
【課題】媒体着脱時の作業性を向上させる媒体支持装置および記録装置を提供すること。
【解決手段】媒体支持装置7は、TシャツFを支持する支持台5と、支持台5を鉛直方向に移動可能に支持する移動機構6と、移動機構6を支持可能な基部8と、基部8の凹凸箇所8aを覆うカバー101と、を備え、カバー101は、鉛直方向の下側へ向かうにつれて、奥行き方向の奥側へ向かう傾斜面101sを有することを特徴とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持する支持台と、
前記支持台を鉛直方向に移動可能に支持する移動機構と、
前記移動機構を支持可能な基部と、
前記基部の凹凸箇所を覆うカバーと、を備え、
前記カバーは、前記鉛直方向の下側へ向かうにつれて、前記鉛直方向と交差する奥行き方向の奥側へ向かう傾斜面を有することを特徴とする媒体支持装置。
【請求項2】
前記支持台に固定される防護壁を備え、
前記防護壁は、前記奥行き方向からの側面視にて、前記支持台と前記移動機構との間の隙間を覆うことを特徴とする、請求項1に記載の媒体支持装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記支持台を前記鉛直方向へ移動させるレバーを有し、
前記防護壁は、前記レバーの位置により前記鉛直方向に対する前記支持台の位置を示す目盛りを有することを特徴とする、請求項2に記載の媒体支持装置。
【請求項4】
前記レバーは、前記レバーの先端部を覆う把手部材を有し、
前記把手部材は、前記先端部に対して握りを太くすることを特徴とする、請求項3に記載の媒体支持装置。
【請求項5】
前記基部と前記移動機構とを挿通する柱状部を備え、
前記移動機構は、前記柱状部を中心に回転して、前記鉛直方向における前記支持台の位置を調整することを特徴とする、請求項3に記載の媒体支持装置。
【請求項6】
媒体にインクを塗布する記録ヘッドと、媒体支持装置と、を備え、
前記媒体支持装置は、
前記媒体を支持する支持台と、
前記支持台を鉛直方向に移動可能に支持する移動機構と、
前記移動機構を支持可能な基部と、
前記基部の凹凸箇所を覆うカバーと、を有し、
前記カバーは、前記鉛直方向の下側へ向かうにつれて、前記鉛直方向と交差する奥行き方向の奥側へ向かう傾斜面を有することを特徴とする記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体支持装置および記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Tシャツなどの布地の媒体に絵柄などを印刷する記録装置が知られていた。該記録装置には、媒体を支持する媒体支持装置を備えるものがある。例えば特許文献1には、媒体の厚さに応じて媒体支持部の高さ調整が可能な媒体支持装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-97585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の媒体支持装置では、媒体を着脱する際の作業性を向上させることが難しいという課題があった。詳しくは、媒体が基部などに引っ掛かり易く、媒体の着脱に支障をきたす場合があった。すなわち、媒体着脱時の作業性を向上させる媒体支持装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
媒体支持装置は、媒体を支持する支持台と、前記支持台を鉛直方向に移動可能に支持する移動機構と、前記移動機構を支持可能な基部と、前記基部の凹凸箇所を覆うカバーと、を備え、前記カバーは、前記鉛直方向の下側へ向かうにつれて、前記鉛直方向と交差する奥行き方向の奥側へ向かう傾斜面を有することを特徴とする。
【0006】
記録装置は、媒体にインクを塗布する記録ヘッドと、媒体支持装置と、を備え、前記媒体支持装置は、前記媒体を支持する支持台と、前記支持台を鉛直方向に移動可能に支持する移動機構と、前記移動機構を支持可能な基部と、前記基部の凹凸箇所を覆うカバーと、を有し、前記カバーは、前記鉛直方向の下側へ向かうにつれて、前記鉛直方向と交差する奥行き方向の奥側へ向かう傾斜面を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る記録装置の構成を示す斜視図。
図2】記録装置の構成を示す正面図。
図3】媒体支持装置の構成を示す斜視図。
図4】媒体支持装置の外観を示す側面図。
図5】移動機構などの配置を示す平面図。
図6】カバーおよび防護壁などを装着した媒体支持装置の外観を示す側面図。
図7】カバーおよび防護壁などを装着した媒体支持装置の外観を示す斜視図。
図8】防護壁における目盛りの配置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に述べる実施の形態では、Tシャツなどの布地の媒体に一品一葉で画像などの印刷を実行する記録装置、および該記録装置に備わる媒体支持装置を例示して、図面を参照して説明する。
【0009】
以下の各図においては、必要に応じて相互に直交する座標軸としてXYZ軸を付し、各矢印が指す方向を+方向とし、+方向と反対の方向を-方向とする。X軸は記録装置1の左右方向に沿い、記録装置1の+X方向を右方とし、-X方向を左方とする。
【0010】
鉛直方向とはZ軸に沿う方向である。記録装置1における+Z方向を上方とし、-Z方向を下方とする。鉛直方向と交差する奥行き方向とは、Y軸に沿う方向である。記録装置1の+Y方向を前方とし、-Y方向を後方とする。本明細書では、記録装置1を水平面に沿う面に設置した状態について述べることとする。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る記録装置1は、記録ヘッド2、搬送部3、トレイ4、媒体支持装置7、および外装18を備える。また、図示を省略するが、記録装置1は、各種構成の稼働を統合的に制御する制御部を外装18の内部に備える。記録装置1はインクジェットプリンターである。媒体支持装置7は、本発明の媒体支持装置の一例である。本発明の媒体支持装置の用途は、インクジェットプリンターなどに搭載されることに限定されない。
【0012】
図1は、媒体であるTシャツFがトレイ4にセットされた状態を示している。TシャツFは、任意の向きにセット可能であるが、上記の状態では、TシャツFの胸側が上方を向いている。トレイ4は、略平板状の部材であって、主面がXY平面に沿う。
【0013】
ここで、本明細書においてTシャツFをセットするとは、トレイ4の少なくとも一部をTシャツFの内部に入れた状態で媒体支持装置7に設置する場合と、トレイ4の上方の面にTシャツFを載置する場合と、を含む。以下の説明では、特に断りがない限り、トレイ4の一部をTシャツFの内部に入れた状態で媒体支持装置7に装着する場合について述べる。
【0014】
外装18は、略直方体状の筐体であって、記録ヘッド2、キャリッジ16、およびその他の各種構成を覆って内部に収納する。外装18の前方かつ上方には、操作パネル25が配置される。外装18は、+Y方向を向く側壁18S、および図示しないその他の複数の側壁を含む。
【0015】
操作パネル25は、記録装置1の稼働に関して、各種情報を表示する表示機能、および稼働条件などに対応する各種指示などを受け付ける入力機能を備える。操作パネル25は、例えばタッチパネル式の液晶表示装置を含む。操作パネル25は制御部と電気的に接続される。操作パネル25には、上記液晶表示装置とは別に、各種ボタンが備わってもよい。なお、記録装置1の稼働に関する各種指示は、例えばパーソナルコンピューターなどの情報端末を介して記録装置1に入力されてもよい。
【0016】
記録ヘッド2はキャリッジ16の下方に配置される。記録ヘッド2は、TシャツFの上方を向く表面にインクを塗布することにより印刷を行う。図示を省略するが、記録ヘッド2は、下方を向く位置にノズル面を有する。ノズル面は、記録装置1によって印刷が行われる際に、後述するプラテンと上下方向に対向する。ノズル面には複数のノズル列が配置される。
【0017】
複数のノズル列の各々は、複数のノズルから成り、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイトなどの色を呈するインクを個別に吐出する。これらのインクは、外装18内に収納される、図示しないインク容器から配管を介して記録ヘッド2に供給される。記録ヘッド2から吐出されるインクは、上述した各色のインクの他、クリアインクや処理液などの液体であってもよい。
【0018】
記録ヘッド2には、インク吐出の駆動手段であるアクチュエーターとして、圧電素子が適用されている。圧電素子以外の駆動手段として、例えば、アクチュエーターとしての振動板を静電吸着により変位させる電気機械変換素子や、加熱によって生じる気泡にてインクを吐出する電気熱変換素子を用いてもよい。
【0019】
図示を省略するが、キャリッジ16はタイミングベルトに接続され、タイミングベルトはキャリッジモーターに駆動される。タイミングベルトは、キャリッジモーターの駆動によってキャリッジ16を主走査方向である左右方向へ移動させる。
【0020】
外装18において、側壁18Sの下方には開口部18aが設けられる。開口部18aから前方へ突出して搬送部3が配置される。搬送部3の上方には、媒体支持装置7を介してトレイ4が設置される。
【0021】
上述したプラテンとは、記録装置1によって印刷が実行される際に、トレイ4の上方の主面において記録ヘッド2と対向する領域をいう。すなわち、トレイ4にセットされるTシャツFには、プラテンにおいて印刷が成される。
【0022】
図示を省略するが、搬送部3は、搬送モーターの駆動により、媒体支持装置7およびトレイ4をY軸に沿う方向に移動させる。換言すれば、トレイ4は、搬送部3により、記録ヘッド2に対向する位置を含む領域へ移動が可能である。
【0023】
トレイ4および媒体支持装置7が図1に示した位置から後退した状態にて、印刷が開始される。そして、記録ヘッド2に対して、トレイ4が+Y方向または-Y方向に相対的に移動すると共に、プラテンにおいて記録ヘッド2が左右方向へ往復移動する。これにより、トレイ4にセットされたTシャツFの上方を向く表面に、所望の画像などが印刷される。なお、印刷が成されるTシャツFの表面は、TシャツFの着用者の胸側に限らず、例えば背面側であってもよい。
【0024】
トレイ4および媒体支持装置7は、印刷時に外装18の後方を向く側面から後方へ突出する位置まで後退することが可能である。そのため、トレイ4にセットされたTシャツFにおいて、トレイ4の+Y方向の端部付近の領域にまで印刷が可能となる。なお、トレイ4および媒体支持装置7が、外装18の後方を向く側面よりも後方へ突出する位置は、図1に示すように、補助外装で覆っている。そのため、トレイ4および媒体支持装置7は、印刷時に外装18の後方を向く側面から後方へ突出する位置まで後退しても露出はしない。
【0025】
図2に示すように、搬送部3の上方には媒体支持装置7が設置される。媒体支持装置7の上方には、トレイ4が設置される。なお、図2は、TシャツFがセットされていない状態を示している。
【0026】
媒体支持装置7は、支持台5、移動機構6、図示しない基部およびカバーを備える。支持台5は、媒体支持装置7の最も上方に位置し、トレイ4の下面を支持する。つまり、支持台5は、トレイ4を介してTシャツFを支持する。トレイ4は支持台5に対して着脱可能である。
【0027】
図3に示すように、本実施形態に係る媒体支持装置7は、上述した支持台5および移動機構6に加えて、基部8、下部支持部材9、スペーサー10、ピン11、柱状部21、棒状部22を備える。媒体支持装置7は、上方から下方に向かって、支持台5、ピン11、移動機構6、スペーサー10、基部8、および下部支持部材9が、この順番で配置される。なお、図3および後に説明する図4では、媒体支持装置7の内部の構成を説明する便宜上、後述するカバー、防護壁、および把手部材を外した状態としている。
【0028】
支持台5は、上方からの平面視にて略矩形の板状である。支持台5の上方の主面は、XY平面に沿う。支持台5の下方には、3つのピン11が設置される。各々のピン11は、略円柱状の部材であり、設置された状態で軸心がZ軸に沿う。各ピン11の下方の端部は、移動機構6の後述する階段状部に接して支持される。
【0029】
移動機構6は、3つのピン11を介して、支持台5を鉛直方向に移動可能に支持する。詳しくは、移動機構6は、支持台5を鉛直方向に移動させるレバー13を有する。媒体支持装置7の使用者がレバー13を操作すると、3つのピン11の下方の端部が階段状部によって押し上げられたり、引き下ろされたりする。これにより、移動機構6および基部8などに対して、支持台5が鉛直方向に移動する。
【0030】
支持台5が鉛直方向に移動することによって、支持台5に支持される上記トレイ4も鉛直方向に移動して、さらにはトレイ4にセットされるTシャツFと記録ヘッド2との距離が変更される。そのため、例えば、TシャツFなどの媒体が厚手の場合には、上記距離を大きくする。また、媒体が薄手である場合などには上記距離を小さくする。このようにして上記距離を最適に設定することが可能となる。
【0031】
支持台5の下方には、3つのピン11の他に、柱状部21および棒状部22が設置される。3つのピン11、柱状部21および棒状部22は、支持台5と共に鉛直方向に移動可能である。柱状部21および棒状部22は略円柱状の部材であり、設置された状態で軸心がZ軸に沿う。柱状部21は、基部8、移動機構6、およびスペーサー10を挿通する。柱状部21の下方の端部は、基部8の図示しない開口と嵌合する。棒状部22は、柱状部21に対して-Y方向に配置される。棒状部22の下方の端部は、基部8の図示しない別の開口と嵌合する。これにより。支持台5のXY平面に沿う位置決めが成される。
【0032】
スペーサー10は、基部8の+Y方向の端部にて支持される。図示を省略するが、スペーサー10は、上方からの平面視にて略円状であり、中央に柱状部21が挿通する穴が設けられている。スペーサー10は媒体支持装置7に対して着脱可能である。TシャツFと記録ヘッド2との距離を、移動機構6による調整よりも大きく変えたい場合に、スペーサー10を着脱する。
【0033】
スペーサー10を装着すると、基部8に対して移動機構6が離れて配置されるため、支持台5が図示しない記録ヘッド2に近付く。スペーサー10を取り外すと、基部8に対して移動機構6が近づいて配置されるため、支持台5が記録ヘッド2から離れる。スペーサー10として、Z軸に沿う方向の厚さが異なるものを用いてもよく、2つ以上を媒体支持装置7に装着してもよい。
【0034】
基部8は移動機構6を支持可能である。詳しくは、基部8は、スペーサー10を用いる場合にはスペーサー10を介して移動機構6を支持し、スペーサー10を用いない場合には移動機構6に接して支持する。
【0035】
基部8は、上方からの平面視にてY軸に沿う細長い形状である。基部8の下方は、-Y方向の端部にて下部支持部材9に固定され、上記端部付近以外では下部支持部材9に対して離間する。TシャツFをセットする際には、基部8の下方と下部支持部材9とが離間する領域にTシャツFの背面側の布地を差し込む。すなわち、上記領域は、TシャツFの背面側の布地の逃げとなる。そのため、セットしたTシャツFの胸側に、皺が発生し難くなる。
【0036】
基部8は、上述したように、スペーサー10、移動機構6、支持台5、およびトレイ4などを支持する。そのため、基部8は、例えば金属などの強度に優れる材料で形成される。基部8は強度や製造方法などの理由から滑らかな形状とすることが難しく、基部8には凹凸箇所8a,8bなどが生じる。
【0037】
凹凸箇所8a,8bなどには、TシャツFを着脱する際に布地が引っ掛かり易く、作業の支障となる場合があった。また、レバー13の先端部13aは、比較的に尖った形状であるため、凹凸箇所8a,8bと同様に布地が引っ掛かり易かった。また、トレイ4にTシャツFをセットする際に、トレイ4より下方がTシャツFに隠れて見え難くなる。そのため、尚のこと凹凸箇所8a,8bなどが作業の支障となる場合があった。これに対して、媒体支持装置7は後述するカバーおよび把手部材を備えるため、TシャツFが引っ掛かり難くなり作業性が向上する。
【0038】
下部支持部材9は、上方の面にて基部8を支持し、下方にて図示しない搬送部3に支持される。搬送部3は、下部支持部材9をY軸に沿う方向へ移動させる。これにより、セットされたTシャツFも同方向へ移動される。
【0039】
図4に示すように、+X方向からの平面視にて、移動機構6の上方と支持台5の下方との間には隙間Gaが存在する。隙間Gaは、スペーサー10を取り外した場合でも存在する。Z軸に沿う方向の隙間Gaの距離は、レバー13の操作により支持台5の鉛直方向の位置が変化することで変わる。
【0040】
ここで、TシャツFをセットする場合には、以下の手順で行う。まず、図示しないトレイ4を支持台5に取付ける。次に、トレイ4の+Y方向の端部から、TシャツFをトレイ4に着せるように被せる。このとき、TシャツFの胸側の生地はトレイ4の表面に沿って皺を伸ばす。TシャツFの背面側の生地は、移動機構6、スペーサー10、および基部8の+Y方向の端部をTシャツFの内部に入れるように下方かつ-Y方向へ導いていく。そして、TシャツFの裾を、基部8と図示しない下部支持部材9との間に入れ込む。
【0041】
隙間Gaは、媒体支持装置7へのTシャツFの着脱時に布地が入り込み易く、作業の支障となる場合があった。これに対して、本実施形態に係る媒体支持装置7は後述する防護壁を備えるため、TシャツFが隙間Gaに入り込み難くなり作業性が向上する。
【0042】
図5に示すように、上方からの平面視にて、移動機構6は略円状であり、円の中心に相当する領域に柱状部21が貫通する。なお、以下の図5に関する説明では、特に断りがない限り上方から平面視した状態を述べることとする。
【0043】
移動機構6は、柱状部21に対して固定されず、柱状部21を中心に回動することが可能である。図示を省略するが、移動機構6は、ストッパーにより回転角が約120°以内に規制される。移動機構6の外周には、レバー13が突出して配置される。媒体支持装置7の使用者は、レバー13を介して移動機構6を回動させることが可能である。なお、図5は、移動機構6を最も時計回りに回動させた状態を示している。
【0044】
移動機構6の外周近傍の内側には、階段状部12が設けられる。階段状部12は、3つのピン11の下方の端部と接して、3つのピン11を介して上述した支持台5を支持する。3つのピン11は、移動機構6の回転角に対して、120°毎に配置される。階段状部12は、3つのピン11の各々に対応して3つの領域に分割される。
【0045】
上記3つの領域の各々には、Z軸方向の高さが異なる複数の段が設けられる。各階段状部12において、上記段のZ軸に沿う方向の高さは、3つのピン11に対応して同様となるように揃えられている。したがって、レバー13にて移動機構6を回転させると、各ピン11が階段状部12の段に乗り上げて、Z軸に沿う方向における支持台5の位置が調整される。そのため、支持台5の高さ、すなわち記録ヘッド2とTシャツFとの距離を容易に調整することができる。
【0046】
柱状部21の-X方向の基部8には、ロックレバー19が接続される。ロックレバー19は、図示しないネジ部が基部8にねじ込まれており、ロックレバー19のネジ部先端は柱状部21を横方向から押さえつけて固定する構造になっている。ロックレバー19のネジ部を緩めることにより、柱状部21が鉛直方向に移動可能なアンロック状態となる。ロックレバー19のネジ部を締めることにより、柱状部21が鉛直方向の移動を規制されるロック状態となる。ロックレバー19により、柱状部21において、アンロック状態とロック状態とが切り替わる。
【0047】
柱状部21と支持台5とは接続されており、柱状部21をアンロック状態にすることで、支持台5が鉛直方向に移動可能となる。すなわち、レバー13の操作により支持台5の鉛直方向の位置を変化させる場合は、柱状部21をアンロック状態にする。また、柱状部21をアンロック状態にして、支持台5および柱状部21を基部8から取り外すと、スペーサー10および移動機構6を取り外すことが可能となる。支持台5の鉛直方向の位置を固定したい場合は、柱状部21をロック状態にする。
【0048】
図6および図7に示すように、媒体支持装置7は、カバー101、防護壁103、および把手部材105を備える。なお、図6では、基部8とカバー101との配置を説明するために、カバー101に覆われた基部8を破線で示している。
【0049】
カバー101は、基部8の凹凸箇所8a,8bを含む基部8全体を覆う。カバー101は傾斜面101sを有する。傾斜面101sは、+X方向からの側面視にて、カバー101の+Y方向の端部にあり、Z軸に沿う方向の下側、すなわち-Z方向へ向かうにつれて、奥行き方向の奥側、つまり-Y方向へ向かって傾斜している。傾斜面101sによって、TシャツFをセットする際に、TシャツFの裾が凹凸箇所8aなどに引っ掛かり難くなる。
【0050】
カバー101には、例えば樹脂などの成形が容易な材質が適用される。カバー101は、基部8と比べて滑らかな外表面を有する。そのため、TシャツFをカバー101に沿って移動させ易くなる。
【0051】
防護壁103は、支持台5の下方かつ+Y方向に固定される。防護壁103は、+Y方向からの側面視にて、支持台5と移動機構6との間の隙間Gaを覆って配置される。詳しくは、防護壁103は、上方からの平面視にて円弧状であって、移動機構6より大きな半径を有し、移動機構6の+Y方向および左右方向に対応して配置される。
【0052】
防護壁103は、隙間Gaを覆うと共に、把手部材105およびレバー13の回動に干渉しない形状とされる。防護壁103により、支持台5と移動機構6との間の隙間GaにTシャツFが入り込み難くなる。そのため、TシャツFの着脱時の作業性がさらに向上する。
【0053】
把手部材105は、レバー13の先端部13aを覆う。把手部材105は、先端部13aに対して握りが太くなる形状を有する。詳しくは、把手部材105に、例えば樹脂などの成形が容易な材質が適用される。把手部材105は、細身のレバー13に比して、太く丸い形状を有する。そのため、先端部13a単体と比較して、TシャツFが引っ掛かり難くなり、TシャツFの着脱時の作業性がさらに向上する。把手部材105は、レバー13に対してねじ止めされる。
【0054】
図8に示すように、防護壁103は目盛り107を有する。目盛り107は、レバー13の位置により、Z軸に沿う方向に対する支持台5の位置を示す。詳しくは、目盛り107は、媒体支持装置7の略+Y方向に位置する使用者から視認可能なように、防護壁103の外側に設けられる。目盛り107は、防護壁103の外側の曲面において、一定の間隔で配置される。目盛り107は、上方からの平面視にて+Y方向を含むおよそ約120°の範囲に配置される。該範囲はレバー13が回動する範囲と略一致する。
【0055】
先端部13aの一部は、把手部材105から外側に露出している。そのため、露出する先端部13aの一部と、目盛り107とを対比させることにより、レバー13を細かく操作することが可能となる。これによって、移動機構6が定量的に回動されるため、支持台5のZ軸に沿う方向への移動を精密、かつ容易に行うことができる。
【0056】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。TシャツFを着脱する際の作業性を向上させることができる。詳しくは、基部8の凹凸箇所8aなどがカバー101によって覆われることから、凹凸箇所8aなどにTシャツFが引っ掛からなくなる。また、カバー101の傾斜面101sに沿ってTシャツFが案内されるため、着脱を円滑に行うことが可能となる。したがって、着脱時の作業性を向上させる媒体支持装置7および記録装置1を提供することができる。なお、TシャツFを例として説明したが、他の媒体であっても、トレイ4の少なくとも一部を内部に入れた状態で媒体支持装置7に装着する場合には、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1…記録装置、2…記録ヘッド、5…支持台、6…移動機構、7…媒体支持装置、8…基部、8a,8b…凹凸箇所、13…レバー、13a…先端部、21…柱状部、101…カバー、101s…傾斜面、103…防護壁、105…把手部材、107…目盛り、F…媒体としてのTシャツ、Ga…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8