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  • 特開-袋織エアバッグ 図1
  • 特開-袋織エアバッグ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068321
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】袋織エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/232 20110101AFI20240513BHJP
【FI】
B60R21/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178670
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池戸 友則
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA07
3D054AA16
3D054CC06
3D054CC30
3D054CC34
(57)【要約】
【課題】本体部から突出する突出部を有するエアバッグにおいて、膨張展開時の気密性を確保しながら歩留まりの向上を図ったエアバッグを提供する。
【解決手段】略矩形状の主体部2aと、主体部2aから矩形の短軸方向に突出し主体部2aと内部が連通する突出部8と、を有する袋織エアバッグ1である。突出部8は、主体部2aの矩形の長軸方向に延びるとともに、短軸方向に主体部2aの短軸方向の寸法より短い寸法分だけ延びて形成された補助部2bの前側部分が後側部分に対して折り重ねられ、前上コーナ部2b1を後下コーナ部2b2に略一致させて縫い線7で縫製して接合されて形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形状の主体部と、該主体部における矩形の短軸方向に突出し前記主体部と内部が連通する突出部と、を有する袋織エアバッグであって、
前記突出部は、前記主体部における矩形の長軸方向に延びるとともに、前記短軸方向に前記主体部の前記短軸方向の寸法より短い寸法分だけ延びて形成された補助部の一部分が、該一部分以外の前記補助部の他部分に対して折り重ねられ、前記補助部の前記短軸方向の寸法より大きい寸法分だけ前記主体部から前記短軸方向に突出した状態で部分的に接合されて形成されている袋織エアバッグ。
【請求項2】
請求項1において、前記突出部の前記主体部からの突出量は、前記補助部の前記主体部からの突出量の約2倍程度である袋織エアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋織エアバッグに関する。詳しくは、歩留まりを向上させた袋織エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に装備される、天井の車両幅方向外側の端部から垂直方向下方側に展開するエアバッグであるカーテンシールドエアバッグ等において、保護領域を拡大するために略矩形状の本体部から矩形の短軸方向に突出して延びる突出部を設けたい場合があった。特許文献1に記載されたカーテンシールドエアバッグにおいては、エアバッグの一面側を構成する第1基布体と他面側を構成する第2基布体を縫製によって接合して形成するものであり、第1基布体と第2基布体はいずれも主基布と突出部であるガス導入部とが縫製により接合して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-113056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載されたカーテンシールドエアバッグにおいては、第1基布体と第2基布体が、それぞれ主基布とガス導入部の基布片を別体として基布材料から切り抜いて、それらを縫製により接合して構成されている。これによって、基布材料から切り捨てられて使用されない不要部分を極力少なくして歩留まりの向上を図ることができる。しかし、エアバッグの膨張展開時に、主基布とガス導入部の基布片との縫製部分における気密性の確保が難しいという問題があった。
【0005】
このような問題に鑑み本発明の課題は、本体部から突出する突出部を有するエアバッグにおいて、膨張展開時の気密性を確保しながら歩留まりの向上を図ったエアバッグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、略矩形状の主体部と、該主体部における矩形の短軸方向に突出し前記主体部と内部が連通する突出部と、を有する袋織エアバッグであって、前記突出部は、前記主体部における矩形の長軸方向に延びるとともに、前記短軸方向に前記主体部の前記短軸方向の寸法より短い寸法分だけ延びて形成された補助部の一部分が、該一部分以外の前記補助部の他部分に対して折り重ねられ、前記補助部の前記短軸方向の寸法より大きい寸法分だけ前記主体部から前記短軸方向に突出した状態で部分的に接合されて形成されていることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、主体部と突出部は内部が連通した袋織エアバッグなので、主体部と突出部の間に縫製部分がなく気密性がよい。そして、補助部は主体部における矩形の長軸方向に延びるとともに、短軸方向に主体部の短軸方向の寸法より短い寸法分だけ延びて形成されており、短軸方向の突出量が少ないので歩留まりを向上させることができる。また、補助部の一部分を他部分に対して折り重ねられ、補助部の短軸方向の寸法より大きい寸法分だけ短軸方向に突出した状態で部分的に接合されて形成されていることにより突出部を形成するので突出部の突出量を確保することができる。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記突出部の前記主体部からの突出量は、前記補助部の前記主体部からの突出量の約2倍程度であることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、エアバッグ膨張展開時の突出部の突出量を確保しながら袋織エアバッグ製織時の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の袋織エアバッグの製織した状態を示す図である。
図2】上記実施形態の補助部を折り返して突出部を形成した袋織エアバッグの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2に基づき、本発明の一実施形態に係る袋織エアバッグ1について説明する。以下の説明において、方向に関する説明は、各図において矢印で示される袋織エアバッグ1が自動車室内で膨張展開したときの上下前後の各方向に基いて行うものとする。
【0012】
袋織エアバッグ1は、自動車用のカーテンシールドエアバッグ装置における布帛製のエアバッグ袋体である。袋織エアバッグ1は、図1に示す、製織されたのち所定形状に裁断された略矩形平面状の基布2の一部分を、図2に示すように折り返して部分的に縫製することによって形成される。必要に応じて、製織ののち裁断前に基布2の両面にシリコーン樹脂からなるコート剤を塗布してもよい。
【0013】
図1に示すように、基布2は、前後方向を長軸方向とする略矩形状の二重織部3と、二重織部3の外周に形成された一重織部4と、二重織部3と一重織部4との間に形成された第1接合部5と、二重織部3を構成する2枚の織物を部分的に厚み方向に連結した第2接合部6と、を有する。
【0014】
図1に示すように、基布2は、上側の、長軸方向を前後方向とし短軸方向を上下方向とする略矩形状の主体部2aと、下側の、長軸方向を前後方向とし短軸方向を上下方向とする略矩形状の補助部2bと、を有する。補助部2bの長軸方向の寸法は、主体部2aの長軸方向の寸法の1/2程度に設定され、補助部2bの短軸方向の寸法は、主体部2aの短軸方向の寸法の1/3程度に設定されている。補助部2bは、主体部2aの前後方向中央部の下側に配設されている。主体部2aの前後方向中央部の上側には、斜め後上方に向けて突出するガス導入部2cが配設されている。ガス導入部2cは、図示しないインフレータが気密状態で連結されて車両衝突時にインフレータから二重織部3の中にガスが導入される部分である。基布2は、当分野でOPW又はワンピース織りとして知られているものである。ここで、上下方向と前後方向が、それぞれ特許請求の範囲の「矩形の短軸方向」と「矩形の長軸方向」に相当する。
【0015】
図1に示すように、第1接合部5は、主体部2aの外周縁に沿って延びるメイン部5aと、補助部2bの外周縁に沿って延びるサブ部5bと、を有する。メイン部5aとサブ部5bは連続していて、前側の前連結部5cと、後側の後連結部5dで連結されている。前連結部5cと後連結部5dとの間の前後方向寸法は、補助部2bの前後方向寸法の1/2程度あって、この部分で主体部2aの二重織部3と補助部2bの二重織部3は連通している。主体部2aと補助部2bは、製織された時点では前後方向の全域にわたって接合された状態にあるが、裁断時において、前連結部5cより前側の一重織部4が前後方向に延びる裁断線2dで裁断され、補助部2bの前側部分は主体部2aから切り離された状態となる。この状態になっても、主体部2aの二重織部3と補助部2bの二重織部3は連通して気密状態は保たれている。
【0016】
図1に示すように、第2接合部6は、前側から後側に向かって、前接合部6aと、中前接合部6bと、中後接合部6cと、後接合部6dと、が形成されており、いずれも袋織エアバッグ1が膨張展開したときの厚み方向の形状を制御するためのものである。前接合部6a、中前接合部6b、中後接合部6c、後接合部6dのいずれも一端部側はループ形と状に形成され、他端部側は第1接合部5に連結されている。このループ形状は、いずれも袋織エアバッグ1が膨張展開したときの各第2接合部6の端部における過度な応力集中を回避し織物の目開きによるガス抜けを抑制するためのものである。
【0017】
図2に示すように、基布2の補助部2bの前側部分である主体部2aから切り離された部分を前連結部5cの近傍から後方に折返しの補助部2bの後側部分である主体部2aと連結された部分の上に重ね合わせる。そして、この状態で、補助部2bの前上コーナ部2b1を補助部2bの後下コーナ部2b2に略一致させて縫い線7で縫製して結合し、突出部8を形成して袋織エアバッグ1を得る。このとき、突出部8の主体部2aからの上下方向の突出量は、補助部2bの上下方向の寸法の2倍程度になる。補助部2bにおいて、前上コーナ部2b1と後下コーナ部2b2とは矩形の対角線上に位置する。袋織エアバッグ1は、主体部2aの二重織部3と補助部2bの二重織部3が気密状態を保って連結されている。ここで、補助部2bの前側部分と後側部分が、それぞれ特許請求の範囲の「一部分」と「他部分」に相当する。
【0018】
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。袋織エアバッグ1において、主体部2aと補助部2bは二重織部3で縫製部分がなく連結されているので気密性がよい。そして、補助部2bは主体部2aにおける矩形の長軸方向である前後方向に延びて形成されており矩形の短軸方向である上下方向の突出量が少ないので製織時に基布2を歩留まりよく配置でき歩留まり向上による材料費の低減を図ることができる。また、補助部2bの前側部分を後側部分に対して折り重ねた状態で、矩形の対角線上に位置する前上コーナ部2b1と後下コーナ部2b2とを縫製によって接合することにより下方向に向けて補助部2bの上下方向寸法の約2倍程度補助部2bを突出させ保護領域を拡大することができる。
【0019】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
【0020】
1.上記実施形態においては、袋織エアバッグ1を自動車用のカーテンシールドエアバッグ装置に適用したが、これに限らず、運転席と助手席との間に配置されるエアバッグ装置等他の自動車用エアバッグ装置に適用することもできる。また、自動車以外の飛行機、船、鉄道車両等において利用されるエアバッグ装置に適用してもよい。
【0021】
2.上記実施形態においては、補助部2bを略矩形状のものとして構成したが、これに限らず、歩留まりを向上させるものであるならば長円状等の他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 袋織エアバッグ
2 基布
2a 主体部
2b 補助部
2b1 前上コーナ部
2b2 後下コーナ部
3 二重織部
4 一重織部
5 第1接合部
5a メイン部
5b サブ部
5c 前連結部
5d 後連結部
6 第2接合部
7 縫い線
8 突出部
図1
図2