(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068325
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】防護用シート部材およびそれを備えるバッテリーユニット
(51)【国際特許分類】
H01M 50/293 20210101AFI20240513BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20240513BHJP
H01M 50/24 20210101ALI20240513BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20240513BHJP
【FI】
H01M50/293
H01M50/242
H01M50/24
H01M50/291
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178677
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】安藤 均
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA07
5H040AA31
5H040AA37
5H040AS07
(57)【要約】
【課題】
バッテリーセルの外部または内部からの金属片の進行を抑制すると共に、定常走行時の振動からバッテリーセルを保護する。
【解決手段】
本発明は、複数のバッテリーセル20を格納したバッテリーユニット内において1または2以上のバッテリーセル20を包むための防護用シート部材30であって、合成繊維製または合成繊維含有の繊維部材32と、繊維部材32の少なくとも一方の面に固定されるゴム状弾性シート31と、を備える防護用シート部材30および当該防護用シート部材30を備えるバッテリーユニットに関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリーセルを格納したバッテリーユニット内において1または2以上のバッテリーセルを覆うための防護用シート部材であって、
合成繊維製または合成繊維含有の繊維部材と、
前記繊維部材の少なくとも一方の面に固定されるゴム状弾性シートと、
を備えることを特徴とする防護用シート部材。
【請求項2】
前記ゴム状弾性シートは、前記繊維部材の両面に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の防護用シート部材。
【請求項3】
1または2以上の前記バッテリーセルの底部以外を覆う逆さカップ形状の成形体であることを特徴とする請求項1に記載の防護用シート部材。
【請求項4】
1または2以上の前記バッテリーセルの上部および1または2以上の外側面を覆う成形体であることを特徴とする請求項1に記載の防護用シート部材。
【請求項5】
前記合成繊維は、変性ポリフェニレンエーテル樹脂の繊維またはアラミド繊維であることを特徴とする請求項1に記載の防護用シート部材。
【請求項6】
前記ゴム状弾性シートは、シリコーンゴムシートであることを特徴とする請求項1に記載の防護用シート部材。
【請求項7】
前記シリコーンゴムシートは、多孔質のシートであることを特徴とする請求項6に記載の防護用シート部材。
【請求項8】
容器と、
前記容器を覆う蓋と、
前記容器と前記蓋とで内部に形成される空間内に格納される複数のバッテリーセルと、
を少なくとも備えるバッテリーユニットであって、
1または2以上の前記バッテリーセルの上部と前記蓋との隙間と、1つの前記バッテリーセルの外側面若しくは2以上の前記バッテリーセルから成るバッテリーセル群の1または2以上の外側面とに、請求項1から7のいずれか1項の防護用シート部材を配置していることを特徴とするバッテリーユニット。
【請求項9】
前記防護用シート用部材は、前記バッテリーセルまたは前記バッテリーセル群の全体を包んでいることを特徴とする請求項8に記載のバッテリーユニット。
【請求項10】
1または2以上の前記バッテリーセルの上部と前記防護用シート部材との間に、1または2以上の絶縁シート部材を配置していることを特徴とする請求項8に記載のバッテリーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護用シート部材およびそれを備えるバッテリーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の動力は、ガソリンや軽油などの化石燃料を用いたエンジンから、バッテリーからの電気を用いたモータへと移行しつつある。バッテリーの1種であるリチウムイオンバッテリーでは、一般的に、複数個のバッテリーセル(単に「セル」ともいう。)が筐体内に配置されている。
【0003】
電気自動車においてバッテリーセルを複数個搭載したバッテリーユニットは、一般的には、車体の底部、すなわち座席の下方位置に配置される。バッテリーセルを、道路から巻き上げられる小石等から保護するべく、バッテリーユニットと道路との間に保護プレートを設置する方法が知られている(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車が事故を起こした際に、バッテリーセルを保護する方法として、バッテリーセルを格納したボックスの強度を上げる方法の他、大きな衝撃を検知して電源を落とすサーキットブレーカー機能を付与する方法が従来から知られている。そのような方法を採った場合でも、自動車事故に伴うボックスの破損により、ボックスの一部が鋭利な刃物となってバッテリーセルの容器を突き破り、内部の電解質の流出を招き、その結果として、バッテリーセルが破裂する二次災害のリスクは依然として残る。
【0006】
また、バッテリーセルは、充電時および放電時に異常高温になると、バッテリーセルを構成する容器が膨張することが知られている。当該容器の膨張は、容器の破裂によるバッテリーユニット外部への破片の飛散という事態を招く虞がある。
【0007】
上記特許文献1に開示される保護プレートは、車外(例えば道路)からの小石等からバッテリー全体を保護するための部材に過ぎない。このため、かかる保護プレートでは、自動車事故やバッテリーセルの過熱膨張に伴う容器の破損を防止することはできない。加えて、定常走行時の振動からバッテリーセルを保護することも重要である。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するべくなされたものあり、バッテリーセルの外部または内部からの破片の進行を抑制すると共に、定常走行時の振動からバッテリーセルを保護することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る防護用シート部材は、複数のバッテリーセルを格納したバッテリーユニット内において1または2以上のバッテリーセルを覆うための防護用シート部材であって、
合成繊維製または合成繊維含有の繊維部材と、
前記繊維部材の少なくとも一方の面に固定されるゴム状弾性シートと、
を備える。
(2)別の実施形態に係る防護用シート部材において、好ましくは、前記ゴム状弾性シートは、前記繊維部材の両面に固定されていても良い。
(3)別の実施形態に係る防護用シート部材は、上述のいずれかの実施形態に係る防護用シート部材において、好ましくは、1または2以上の前記バッテリーセルの底部以外を覆う逆さカップ形状の成形体であっても良い。
(4)別の実施形態に係る防護用シート部材は、上述のいずれかの実施形態に係る防護用シート部材において、好ましくは、1または2以上の前記バッテリーセルの上部および1または2以上の外側面を覆う成形体であっても良い。
(5)別の実施形態に係る防護用シート部材において、上述のいずれかの実施形態に係る防護用シート部材において、好ましくは、前記合成繊維は、変性ポリフェニレンエーテル樹脂の繊維またはアラミド繊維であっても良い。
(6)別の実施形態に係る防護用シート部材において、上述のいずれかの実施形態に係る防護用シート部材において、好ましくは、前記ゴム状弾性シートは、シリコーンゴムシートであっても良い。
(7)別の実施形態に係る防護用シート部材において、好ましくは、前記シリコーンゴムシートは、多孔質のシートであっても良い。
(8)上記目的を達成するための一実施形態に係るバッテリーユニットは、
容器と、
前記容器を覆う蓋と、
前記容器と前記蓋とで内部に形成される空間内に格納される複数のバッテリーセルと、
を少なくとも備えるバッテリーユニットであって、
1または2以上の前記バッテリーセルの上部と前記蓋との隙間と、1つの前記バッテリーセルの外側面若しくは2以上の前記バッテリーセルから成るバッテリーセル群の1または2以上の外側面とに、上述のいずれか1つの防護用シート部材を配置している。
(9)別の実施形態に係るバッテリーユニットにおいて、好ましくは、前記防護用シート用部材は、前記バッテリーセルまたは前記バッテリーセル群の全体を包んでいても良い。
(10)別の実施形態に係るバッテリーユニットは、上述のいずれかの実施形態に係るバッテリーユニットにおいて、好ましくは、1または2以上の前記バッテリーセルの上部と前記防護用シート部材との間に、1または2以上の絶縁シート部材を配置していても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バッテリーセルの外部または内部からの破片の進行を抑制すると共に、定常走行時の振動からバッテリーセルを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るバッテリーユニットの内部を部分的に開示した斜視図を示す。
【
図2】
図2は、
図1のバッテリーセル群を防護用シート部材で覆う状況の斜視図および防護用シート部材の側端面の一部Aの拡大図を示す。
【
図3】
図3は、
図2の状況から進んで、バッテリーセル群の底部以外を防護用シート部材で覆った状態の斜視図を示す。
【
図4】
図4は、
図2と異なる防護用シート部材を用いて
図1のバッテリーセル群を覆う状況の斜視図を示す。
【
図5】
図5は、
図4の状況から進んで、バッテリーセル群の底部以外を防護用シート部材で覆った状態の斜視図を示す。
【
図6】
図6は、
図5の成形済みの防護用シート部材をバッテリーセル群の上部から被せた構造体の変形例の縦断面図および一部Bの拡大図を示す。
【
図7】
図7は、
図6の構造体の変形例1の縦断面図および一部Cの拡大図(7A)と、
図6の構造体の変形例2の縦断面図および一部Dの拡大図(7B)と、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るバッテリーユニットの内部を部分的に開示した斜視図を示す。
図1では、蓋の一部を省略して、バッテリーユニットの内部を視認可能としている。
【0014】
この実施形態に係るバッテリーユニット1は、例えば、電気自動車用のバッテリーであって、多数のバッテリーセル(単に「セル」と称しても良い。)20を備える。バッテリーユニット1は、金属製の容器10と、金属製の蓋11と、容器10と蓋11とで内部に形成される空間内に格納される複数のバッテリーセル20と、を少なくとも備える。容器10と蓋11とは、両者10,11の開口周縁部にシール部材を挟んで閉鎖可能である。容器10および蓋11は、この実施形態では金属材料で構成されているが、金属以外の材料、例えば、樹脂あるいはセラミックスの材料で構成されていても良い。バッテリーユニット1は、さらに、1または2以上のバッテリーセル20の上部と蓋11との隙間と、1つのバッテリーセル20の外側面若しくは2以上のバッテリーセル20から成るバッテリーセル群25の外側面とに、防護用シート部材30(または40)を配置している。防護用シート部材30は、柔軟なシートの形態を有する。防護用シート部材40は、シートを賦形した成形体の形態を有する。バッテリーユニット1は、防護用シート部材30,40のいずれのタイプの部材を備えていても良い。
【0015】
防護用シート部材30(または40)は、複数のバッテリーセル20を格納したバッテリーユニット1内において1または2以上のバッテリーセル20を覆うための部材である。なお、防護用シート部材30(または40)は、バッテリーセル20の全ての外側面またはバッテリーセル群25の全ての外側面を覆っていなくとも良く、バッテリーセル20またはバッテリーセル群25の1または2以上の一部の外側面を覆っていても良い。さらに、防護用シート部材30(または40)は、バッテリーセル20またはバッテリーセル群25の他に、バッテリーセル20またはバッテリーセル群25の底部に配置される冷却板も含めて包むようにバッテリーユニット1内に配置されていても良い。このように、防護用シート用部材30(または40)は、バッテリーセル20またはバッテリーセル群25の全体を包んでいても良い。
【0016】
図2は、
図1のバッテリーセル群を防護用シート部材で覆う状況の斜視図および防護用シート部材の側端面の一部Aの拡大図を示す。
図3は、
図2の状況から進んで、バッテリーセル群の底部以外を防護用シート部材で覆った状態の斜視図を示す。
【0017】
バッテリーセル群25は、2以上のバッテリーセル20を並べた集合体である。バッテリーセル20は、その幅方向に1列に並べられていても良く、また、2列以上に並べられていても良い。この実施形態では、バッテリーセル20とバッテリーセル20との間に延焼防止シート21が配置されている。延焼防止シート21は、1つのバッテリーセル20が過熱状態となり、最悪、発火した場合でも隣のバッテリーセル20への延焼を最小限に抑えるためのシートである。延焼防止シート21は、耐熱性の高いシリコーンゴムのみ、または当該シリコーンゴムの片面または両面に、当該シリコーンゴムより耐熱性に優れた板状部材を備えたシートでも良い。しかし、延焼防止シート21は、バッテリーセル群25にとって必須の構成要素ではなく、バッテリーセル群25に備えられなくとも良い。
【0018】
本願では、バッテリーセル20は、その上面に2つの電極22を備える。電極22の存在する側を、バッテリーセル20またはバッテリーセル群25の「上部」または「上面」と称する。また、バッテリーセル20またはバッテリーセル群25の上部または上面と反対側を「底部」または「底面」と称する。バッテリーセル20またはバッテリーセル群25の上部(または上面)、および底部(または底面)以外を「外側面」という。
【0019】
図2の防護用シート部材の側端面の一部Aの拡大図に示すように、防護用シート部材30は、合成繊維製または合成繊維含有の繊維部材32と、繊維部材32の両面に固定されるゴム状弾性シート31と、を備える。繊維部材32は、合成繊維で織った織布、合成繊維を織ることなく絡めた不織布、合成繊維を樹脂中に分散させた合成繊維分散樹脂のいずれでも良く、強度向上の観点で好ましくは織布である。防護用シート部材30は、1枚の柔軟なシートであって、バッテリーセル群25の底部以外、すなわち、上部および4つの外側面を覆うことを可能とするシートである。
【0020】
繊維部材32を構成する合成繊維は、ゴム状弾性シート31よりも強靭な繊維であれば、如何なる繊維をも含む。合成繊維としては、アラミド繊維(特にパラ系アラミド繊維)、ポリアリレート繊維、変性ポリフェニレンエーテル樹脂の繊維または超高強力ポリエチレン繊維を例示できる。これら例示の繊維の中でも、変性ポリフェニレンエーテル樹脂の繊維またはアラミド繊維がより好ましい。変性ポリフェニレンエーテル樹脂の繊維としては、PPE/PS系アロイ、PA/PPE系アロイ、PP/PPE系アロイ、PPS/PPE系アロイを例示できる。PPE/PS系アロイは完全相溶系のアロイである。PA/PPE系アロイ、PP/PPE系アロイおよびPPS/PPE系アロイは、非相溶系のアロイである。
【0021】
ゴム状弾性シート31は、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。ゴム状弾性シート31としては、エチレンプロピレンゴムの他、耐熱性に優れるシリコーンゴムシートが好ましい。また、ゴム状弾性シート31としては、伸縮性に富む多孔質のシート(スポンジシートともいう。)が好ましい。この実施形態では、ゴム状弾性シート31のより好ましい形態として、シリコーンゴム製の多孔質のシートを用いている。
【0022】
防護用シート部材30は、繊維部材32の両面にゴム状弾性シート31を固定した3層構造を有しているため、次のような効果を発揮する。まず、防護用シート部材30にゴム状弾性シート31を備えることにより、定常走行時の振動をゴム状弾性シート31によって低減でき、バッテリーセル20を振動から保護できる。ゴム状弾性シート31の硬度としては、JIS K 6253による硬度で10°~80°が好ましい。また、ゴム状弾性シート31としては、比重0.2~0.6の発泡弾性体を用いるのも好ましい。また、潰したときの応力が0.1~0.2MPaの範囲の硬度が望ましい。この結果、衝撃発生時にバッテリーセル20を保護するための十分な柔らかさと十分な衝撃吸収とを実現できる。バッテリーセル20に近い側のゴム状弾性シート31(セル側弾性体という。)の好適な厚さは、7~15mm、より好適には9~12mmである。セル側弾性体は、バッテリーセル20の電極22との絶縁距離を十分に保つことが要求され、かつ電極22と電極22とを連結するバスバー(不図示)の凹凸を吸収することも要求される。かかる観点では、セル側弾性体の厚さとしては、上記範囲が好ましい。一方、蓋11側のゴム状弾性シート31は、外部から伝わる振動を吸収でき、また、軽度な衝撃に対しての緩衝機能を満たせれば良い。このため、その厚さとしては、好ましくは2~7mm、より好ましくは4~6mmである。
【0023】
繊維部材32は、ゴム状弾性シート31では防ぎきれないリスクを低減する作用効果を有する。その1つは、自動車事故等によってバッテリーユニット1が破損し、その一部が金属片等の破片となってバッテリーセル20の容器を突き破るリスクである。もう1つは、バッテリーセル20が異常過熱により膨張して、容器が破裂して金属片等の破片として、別のバッテリーセル20の容器を突き破るリスクである。繊維部材32は、ゴム状弾性シート31に比べて強靭であるため、かかる破片が防護用シート部材30を貫通するリスクを低減できる。繊維部材32の厚さには、特に制約はない。繊維部材32の厚さがゴム状弾性シート31の厚さよりも小さくても、十分な防刃効果が得られる。防護用シート部材30をできるだけ薄くする観点では、繊維部材32の好ましい厚さは、0.3~1.0mm、より好ましい厚さは0.4~0.6mmである。
【0024】
繊維部材32とゴム状弾性シート31との固定方法には、特に制約はない。好ましい固定方法は、接着である。接着剤としては、硬化後にゴム状弾性シート31を保持できる接着剤、例えば、シリコーンRTV接着剤が好ましい。これにより、接着剤が繊維部材32の繊維に絡み、高強度の接着が可能となる。接着方法としては、ゴム状弾性シート31にシルクスクリーン法で接着剤を印刷し、そこに繊維部材32を貼り付けて放置して接着硬化させる方法を例示できる。接着剤は、アセトンなどの溶剤で希釈して使用することができる。
【0025】
図4は、
図2と異なる防護用シート部材を用いて
図1のバッテリーセル群を覆う状況の斜視図を示す。
図5は、
図4の状況から進んで、バッテリーセル群の底部以外を防護用シート部材で覆った状態の斜視図を示す。
【0026】
図4および
図5に示す防護用シート部材40は、前述の防護用シート部材30のような1枚の柔軟なシートではなく、1または2以上のバッテリーセル20(2以上のバッテリーセル群25も含む。)の底部以外を覆う逆さカップ形状の成形体である。防護用シート部材40は、成形済みの形態という相違点を除き、材質や厚さ等に関しては防護用シート部材30と共通する。ゴム状弾性シート31と繊維部材32との固定方法は、接着剤レスでも良い。防護用シート部材40は、バッテリーセル群25を入れるための開口部45を有する。
【0027】
図6は、
図5の成形済みの防護用シート部材をバッテリーセル群の上部から被せた構造体の変形例の縦断面図および一部Bの拡大図を示す。
【0028】
図6の構造体における防護用シート部材40は、
図5の防護用シート部材40と共通する。
図6の構造体は、バッテリーセル群25の上部(電極22の上)に、絶縁フィルム50と絶縁シート51を備える点で、
図5の構造体と異なる。絶縁フィルム50は、電極22を被覆している。絶縁シート51は、絶縁フィルム50上に重ねて配置されている。絶縁シート51は、好ましくは、絶縁フィルム50よりも厚い。絶縁フィルム50および絶縁シート51は、電極22同士の電気的な接触、および電極22と外部構成部材との間の意図しない通電を防止するために、バッテリーセル群25と防護用シート部材40との間に配置されている。絶縁フィルム50および絶縁シート51は、それぞれ、絶縁シート部材の一例である。絶縁フィルム50としては、ポリイミドのフィルムを例示できる。絶縁シート51としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの樹脂シートを例示できる。このように、
図1のバッテリーユニット1は、1または2以上のバッテリーセル20の上部と防護用シート部材40との間に、絶縁フィルム50および/または絶縁シート51のような1または2以上の絶縁シート部材を配置可能である。
【0029】
図7は、
図6の構造体の変形例1の縦断面図および一部Cの拡大図(7A)と、
図6の構造体の変形例2の縦断面図および一部Dの拡大図(7B)と、を示す。
【0030】
(7A)の構造体において
図6の構造体と異なる点は、防護用シート部材40aが繊維部材32と1枚のゴム状弾性シート31との2層構造を有している点である。同様に、(7B)の構造体において
図6の構造体と異なる点は、防護用シート部材40bが繊維部材32と1枚のゴム状弾性シート31との2層構造を有している点である。防護用シート部材40aは、バッテリーセル群25側に繊維部材32を備えている。一方、防護用シート部材40bは、バッテリーセル群25側にゴム状弾性シート31を備えている。
【0031】
このように、防護用シート部材40a,40bは、
図2の防護用シート部材40と異なり繊維部材32と1枚のゴム状弾性シート31との2層構造を有している。かかる2層構造の防護用シート部材40a,40bであっても、定常運転時の振動がバッテリーセル20に伝わるのを低減する効果と、自動車事故やバッテリーセルの異常膨張に伴う金属片等の破片の進行抑止効果とを発揮し得る。ただし、防護用シート部材40のような3層構造の方が好ましい。
【0032】
図1のバッテリーユニット1は、1または2以上のバッテリーセル20の上部と防護用シート部材40a(または防護用シート部材40b)との間に、絶縁フィルム50および/または絶縁シート51のような1または2以上の絶縁シート部材を配置可能である。
【0033】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、種々変形可能である。
【0034】
防護用シート部材30,40,40a,40b(防護用シート部材30等という。)は、1または2以上のバッテリーセル20の上部および1または4つの外側面を覆うシートまたは成形体である。防護用シート部材30等は、4つの外側面を覆うシートまたは成形体に限定されず、バッテリーセル20の上部と1つ、2つまたは3つの外側面を覆うシートまたは成形体でも良い。さらに、バッテリーセル20が直方体ではなく、五角以上の天面と底面を有する多角柱形状を有する場合には、外側面の数が5つ以上となる。そのような場合には、防護用シート部材30等は、それら外側面の全てまたは一部を覆うものでも良い。なお、防護用シート部材30等により覆われるバッテリーセル20は、2以上のバッテリーセル20の集合体であるバッテリーセル群25と読み替えても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば、自動車用のバッテリーに利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1・・・バッテリーユニット、10・・・容器、11・・・蓋、20・・・バッテリーセル、21・・・延焼防止シート、22・・・電極、25・・・バッテリーセル群、30,40,40a,40b・・・防護用シート部材、31・・・ゴム状弾性シート、32・・・繊維部材、50・・・絶縁フィルム(絶縁シート部材の一例)、51・・・絶縁シート(絶縁シート部材の一例)。