(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068330
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】トレー
(51)【国際特許分類】
B65D 1/36 20060101AFI20240513BHJP
B65D 21/032 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
B65D1/36
B65D21/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178689
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】小林 章一
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 正裕
【テーマコード(参考)】
3E006
3E033
【Fターム(参考)】
3E006AA01
3E006BA10
3E006CA02
3E006DA03
3E006DB05
3E033AA10
3E033BA15
3E033DA10
3E033DD13
3E033FA04
3E033GA03
(57)【要約】
【課題】物品の誤った姿勢での収容を抑制することのできるトレーを提供する。
【解決手段】トレー1は、ベース部32と、ベース部32から突出し、その先端部側に開口する第1筒状部33とを具備する物品31を収容可能な収容部4を備えている。収容部4は、物品31を第1筒状部33が下方に開口する姿勢を正規の姿勢として収容可能に構成されている。また、収容部4は、正規の姿勢の物品31を収容部4に収容した場合に第1筒状部33の内側に挿入され、かつ、正規の姿勢とは異なる誤った姿勢の物品31を収容部4に収容した場合に当該物品31と当接して、誤った姿勢の物品31の高さ方向が、物品31を正規の姿勢として収容部4に収容した場合の物品31の高さ方向に対して傾斜する傾斜姿勢で物品31を支持可能な誤収容防止部15を備えている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、前記ベース部から突出し、その先端部側に開口する筒状部とを具備する物品を収容可能な収容部を備えるトレーにおいて、
前記収容部は、前記物品を前記筒状部が下方に開口する姿勢を正規の姿勢として収容可能に構成され、
前記収容部は、前記正規の姿勢の前記物品を前記収容部に収容した場合に前記筒状部の内側に挿入され、かつ、前記正規の姿勢とは異なる誤った姿勢の前記物品を前記収容部に収容した場合に当該物品と当接して、前記誤った姿勢の前記物品の高さ方向が、前記物品を前記正規の姿勢として前記収容部に収容した場合の前記物品の高さ方向に対して傾斜する傾斜姿勢で前記物品を支持可能な誤収容防止部を備えていることを特徴とするトレー。
【請求項2】
前記収容部は、前記正規の姿勢にある前記物品の前記筒状部と当接して支持する底部を備え、
前記誤収容防止部は、前記底部から上方に突出して、前記底部と一体的に形成され、
前記誤収容防止部は、前記誤った姿勢で前記収容部に収容される前記物品と当接可能な当接部を備え、当該当接部のうち最も上方に位置する頂部が、平面視で前記収容部の中心から離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトレー。
【請求項3】
前記誤収容防止部の前記当接部は、前記頂部が設けられた端部から、反対側の端部に向けて下方傾斜する傾斜部を有し、
前記傾斜部の下端部は、平面視で前記収容部の中心を挟んで前記頂部の反対側に位置することを特徴とする請求項2に記載のトレー。
【請求項4】
前記収容部は、
前記傾斜姿勢にある前記物品の側面上部と当接して前記収容部の外周側への変位を規制可能な規制部と、
前記物品が前記傾斜姿勢とされ、かつ、前記規制部により変位が規制された状態において前記物品の下面側の一部を収容可能な干渉回避部とを備えていることを特徴とする請求項3に記載のトレー。
【請求項5】
複数の前記収容部を備え、
前記収容部の下面側に設けられる位置決め凹部と、
前記収容部の間に設けられ、上方に突出する位置決め凸部とを備え、
下側の前記トレーに対して水平に特定角度回転させた向きで上側の前記トレーを載置した場合に、上側の前記トレーの前記位置決め凹部の内側に下側の前記トレーの前記位置決め凸部が位置し、上下の前記トレーの水平方向における位置ずれが規制される段積み状態とすることが可能な構成であり、
前記傾斜部から下方に突出し、前記段積み状態において下側の前記トレーの前記位置決め凸部の上面側に当接可能な下方突部を備えていることを特徴とする請求項3又は4に記載のトレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の運搬等に使用されるトレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物品をトレーに設置して運搬等することが知られている。また、トレーは、物品を収容可能な収容部を備え、収容部は、物品を支持するとともに物品の水平方向における相対変位を防止するべく、物品の形状に合わせて凹凸形状とされている。さらに、物品を運搬等する場合に、物品を収容部に収容したトレー同士を上下に積重ねることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、物品が収容部に対して正規の姿勢とは異なる誤った姿勢で収容された状態でトレーが積重ねられた場合に、物品が破損したり、積重ねられたトレーが傾いたりしてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、物品の誤った姿勢での収容を抑制することのできるトレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0007】
手段1.ベース部と、前記ベース部から突出し、その先端部側に開口する筒状部とを具備する物品を収容可能な収容部を備えるトレーにおいて、
前記収容部は、前記物品を前記筒状部が下方に開口する姿勢を正規の姿勢として収容可能に構成され、
前記収容部は、前記正規の姿勢の前記物品を前記収容部に収容した場合に前記筒状部の内側に挿入され、かつ、前記正規の姿勢とは異なる誤った姿勢の前記物品を前記収容部に収容した場合に当該物品と当接して、前記誤った姿勢の前記物品の高さ方向が、前記物品を前記正規の姿勢として前記収容部に収容した場合の前記物品の高さ方向に対して傾斜する傾斜姿勢で前記物品を支持可能な誤収容防止部を備えていることを特徴とするトレー。
【0008】
手段1によれば、物品を誤った姿勢で収容部に収容すると、当該誤った姿勢の物品が傾斜姿勢とされて(誤った姿勢で収容された物品の高さ方向が正規の姿勢で収容された物品の高さ方向、例えば、鉛直方向に対して傾いて)支持される。このため、物品が誤った姿勢で収容されていることを作業者に認識させ易くすることができる。従って、物品が誤った姿勢で収容されることに起因して物品の収容状態が不安定となり、トレーが運搬等される場合に物品が変位して損傷等する、或いは、物品を収容したトレーを上下に積重ねた場合に、誤った姿勢で収容された物品やトレーが損傷したり、積重ねられたトレーが傾いたりしてしまうといった事態を防止することができる。
【0009】
手段2.前記収容部は、前記正規の姿勢にある前記物品の前記筒状部と当接して支持する底部を備え、
前記誤収容防止部は、前記底部から上方に突出して、前記底部と一体的に形成され、
前記誤収容防止部は、前記誤った姿勢で前記収容部に収容される前記物品と当接可能な当接部を備え、当該当接部のうち最も上方に位置する頂部が、平面視で前記収容部の中心から離れた位置に設けられていることを特徴とする手段1に記載のトレー。
【0010】
手段2によれば、物品を誤った姿勢で収容部に収容した場合に、当該物品をランダムではなく、予め定められた方向に傾斜する傾斜姿勢とすることができる。従って、物品が誤った姿勢で収容されていることを作業者により認識させ易くしたり、傾斜姿勢とされる物品を傾斜させたくない側には傾斜させないようにしたりすることができる。
【0011】
手段3.前記誤収容防止部の前記当接部は、前記頂部が設けられた端部から、反対側の端部に向けて下方傾斜する傾斜部を有し、
前記傾斜部の下端部は、平面視で前記収容部の中心を挟んで前記頂部の反対側に位置することを特徴とする手段2に記載のトレー。
【0012】
手段3によれば、傾斜姿勢とした物品を誤収容防止部でより安定して支持することができる。また、傾斜姿勢とした物品を傾斜部の下流側に向けて(変位が規制される位置となるまで)比較的安定して案内することができる。
【0013】
手段4.前記収容部は、
前記傾斜姿勢にある前記物品の側面上部と当接して前記収容部の外周側への変位を規制可能な規制部と、
前記物品が前記傾斜姿勢とされ、かつ、前記規制部により変位が規制された状態において前記物品の下面側の一部を収容可能な干渉回避部とを備えていることを特徴とする手段3に記載のトレー。
【0014】
手段4によれば、物品が誤った姿勢で収容され、傾斜姿勢とされた(傾斜部に案内される格好で下方に変位した)場合に、当該物品の下面側のエッジと収容部の底部とが接触することを回避することができ、接触により底部が削れて物品に付着するといった事態を回避することができる。尚、「前記正規の姿勢で前記収容部に収容された前記物品は前記干渉回避部に収容されないように構成されていること」としてもよい。
【0015】
手段5.複数の前記収容部を備え、
前記収容部の下面側に設けられる位置決め凹部と、
前記収容部の間に設けられ、上方に突出する位置決め凸部とを備え、
下側の前記トレーに対して水平に特定角度回転させた向きで上側の前記トレーを載置した場合に、上側の前記トレーの前記位置決め凹部の内側に下側の前記トレーの前記位置決め凸部が位置し、上下の前記トレーの水平方向における位置ずれが規制される段積み状態とすることが可能な構成であり、
前記傾斜部から下方に突出し、前記段積み状態において下側の前記トレーの前記位置決め凸部の上面側に当接可能な下方突部を備えていることを特徴とする手段3又は4に記載のトレー。
【0016】
手段5によれば、物品を収容したトレーの上側にトレーを設置し、当該上側のトレーに物品を収容する作業を行う場合に、物品が誤った姿勢で収容された際に、誤収容防止部(傾斜部)が物品により下方に変形等させられてしまうといった事態を抑止することができる。従って、誤収容防止部の形状の保護が図られ、誤収容防止部により、誤った姿勢で収容された物品を傾斜姿勢とする作用効果がより確実に奏される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図7】正規の姿勢の物品を収容した収容部を示す部分拡大断面図である。
【
図8】誤った姿勢の物品を収容した収容部を示す部分拡大断面図である。
【
図10】収容部の下面側を示す部分拡大斜視図である。
【
図11】段積状態とされたトレーの位置決め凹部、及び、位置決め凸部等を示す部分拡大断面図である。
【
図13】別の実施形態における物品及び収容部を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、トレー1は、平面視略矩形状の基部2と、基部2の外周縁部から下方に延出する縁壁部3と、基部2を下方に凹ませるようにして形成され、物品31を収容可能な収容部4とを備えている。本実施形態の収容部4は、トレー1の短手幅方向において互いに所定距離を隔てて並ぶ2つの収容部4によって構成される列が、トレー1の長手幅方向において3列形成され、真ん中の列の収容部4は、端の列の収容部4に対し、トレー1の短手幅方向において半ピッチずれて配置されている。また、本実施形態のトレー1は、ポリエチレンを素材として真空成形により一体的に形成されている。
【0019】
図5、
図6に示すように、物品31は、円盤状のベース部32と、ベース部32の一方側の面(表面)から突出する円筒状の第1筒状部33と、ベース部32の前記一方側の面とは反対側の面(裏面)から突出する円筒状の第2筒状部34とを備えている。第1筒状部33は、その中心軸線がベース部32の中心軸線の延長線上に位置するとともに、ベース部32の外周縁部よりもベース部32の内周側に設けられている(ベース部32の外径よりも小径となっている)。第1筒状部33の内側には空間部35が形成され、第1筒状部33の先端部側には開口部36が設けられている。第2筒状部34は、その中心軸線がベース部32の中心軸線の延長線上に位置するとともに、第1筒状部33よりもベース部32の内周側に設けられている(第1筒状部33よりも小径となっている)。本実施形態では、第1筒状部33が「筒状部」を構成する。
【0020】
図2~
図4に示すように、収容部4は、平面視略円環状の下段底部11と、下段底部11の外周縁部から上方に延びる下段壁部12と、下段壁部12の上縁部から収容部4の外周側に延出する上段底部13と、上段底部13の外周縁部から上方に延出する上段壁部14とを備え、上段壁部14の上縁部が基部2と連結されている。
図7に示すように、本実施形態の収容部4は、物品31を第1筒状部33(空間部35)が下方に開口する姿勢を正規の姿勢として収容可能に構成されている(
図1の収容部4X参照)。物品31が正規の姿勢で収容部4に収容された状態では、正規の姿勢にある物品31の下端部に相当する第1筒状部33の開口部36の周縁部が下段底部11と当接して、物品31の中心軸線が略鉛直方向に延在するように支持される。また、正規の姿勢にある物品31のベース部32の下面(表面)が、上段底部13と当接して支持されるようになっている。さらに、物品31が正規の姿勢で収容部4に収容された状態では、物品31が所定の水平方向に変位した場合に下段壁部12が第1筒状部33の外周面と当接可能に構成され、物品31のそれ以上の前記所定の水平方向への変位が規制されるようになっている。尚、物品31が正規の姿勢で収容部4に収容された場合に、第1筒状部33、及び、ベース部32のうち一方だけが、収容部4の下段底部11、及び、上段底部13に当接して支持される構成としてもよい。
【0021】
また、
図2~
図4に示すように、収容部4は、下段底部11の内周側において下段底部11から上方に突出する誤収容防止部15を備えている。誤収容防止部15は、下段底部11の内周縁部から上方に延びる周壁部16と、周壁部16の上縁部間を塞ぐようにして設けられる当接部17とを備えている。当接部17は、当該当接部17のうち最も上方に位置する頂部18(
図4参照)が平面視で収容部4の中心から離れた位置に設けられ、頂部18が設けられた端部から、反対側の端部に向けて全体的に下方傾斜している。さらに、傾斜する当接部17の下端部は、平面視で収容部4の中心を挟んで頂部18の反対側に位置しており、当接部17は、頂部18から下端部にかけて連続する面を有している。本実施形態では、当接部17のほぼ全体(後述する下方突部25を除く部位)が傾斜部を構成している。尚、誤収容防止部15の頂部18は、上段底部13よりも下方に位置している。
【0022】
また、誤収容防止部15(当接部17)の外径は、第1筒状部33の内径よりも小さく構成されている。このため、
図7に示すように、誤収容防止部15は、正規の姿勢の物品31を収容部4に収容した場合に開口部36を介して空間部35(第1筒状部33の内側)に挿入される。その一方で、誤収容防止部15(当接部17)の外径は、第2筒状部34の外径よりも大きく構成されている。このため、
図8に示すように、誤収容防止部15は、正規の姿勢の物品31を上下に180度回転させた姿勢(以下、「誤った姿勢」と称する)の物品31を収容部4に収容した場合に、当接部17において当該物品31の第2筒状部34と当接する。このとき、当接部17は、下段底部11等に対して傾斜しているため、誤収容防止部15(当接部17)は、誤った姿勢の物品31の高さ方向(中心軸線方向)が、物品31を正規の姿勢として収容部4に収容した場合の物品31の高さ方向(中心軸線方向)に対して傾斜する傾斜姿勢で物品31を支持するようになっている(
図1の収容部4Y参照)。本実施形態では、正規の姿勢の物品31の高さ方向(本例では、略鉛直方向)に対する傾斜姿勢の物品31の高さ方向の傾斜角度が約8度となるように構成されている。また、本実施形態では、いずれの収容部4の当接部17も同じ方向に傾いている。
【0023】
尚、収容部4の平面視の形状は、正規の姿勢で収容部4に収容される物品31の外形状に合わせて形成されている。すなわち、本実施形態では、収容部4の平面視の形状は、物品31のベース部32よりも一回り大きな円形状をなしており、例えば、正規の姿勢にある物品31が所定の水平方向に延びる軸線を中心として90度回転した姿勢とされた場合に、当該物品31の姿勢は収容部4と合致しないことが明らかである。このため、本実施形態における物品31の「誤った姿勢」としては、基本的に、正規の姿勢の物品31を上下に180度回転させた姿勢(天地反転させた姿勢)を意図している。
【0024】
さらに、
図8に示すように、本実施形態では、物品31を誤った姿勢で収容部4に収容した場合に、上段壁部14が、傾斜姿勢にある物品31の側面上部と当接して収容部4の外周側への変位を規制可能に構成されている。本実施形態では、上段壁部14が規制部を構成する。また、上段壁部14は、上段底部13から上方に向けて、収容部4の外周側に若干傾斜して延在している。
【0025】
加えて、収容部4は、物品31が傾斜姿勢とされ、かつ、上段壁部14と当接した状態(上段壁部14により変位が規制された状態)において、物品31の下面側(下面視した場合に視認可能とされる部位)の一部を収容可能な干渉回避部19を備えている。本実施形態では、干渉回避部19は、上段底部13のうち外周側の部位を1段低くすることで構成され、物品31が傾斜姿勢、かつ、上段壁部14と当接した状態において、ベース部32の下面側(裏面)のエッジが干渉回避部19に収容されるようになっている。尚、
図7に示すように、正規の姿勢で収容部4に収容された物品31は干渉回避部19に収容されず、ベース部32の下面側(表面)のエッジが干渉回避部19の上方に位置するようになっている。加えて、
図8に示すように、物品31が傾斜姿勢とされ、かつ、上段壁部14により変位が規制された状態において、第2筒状部34の下縁部は、当接部17の上方に位置する範囲に収まる(当接部17の外周縁部よりも外方側に突出しない)ようになっている。
【0026】
また、
図10に示すように、トレー1は、各収容部4の下面側に設けられる位置決め凹部21を備えている。さらに、
図1等に示すように、トレー1は、収容部4の間に設けられ、上方に突出し、上面が平坦な略円盤状(高さが低く、上側が閉塞された略円筒状)をなす位置決め凸部22を備えている。
図2等に示すように、本実施形態の収容部4の下段底部11は、正規の姿勢で収容部4に収容された物品31の第1筒状部33の下縁部に当接して支持する支持部23と、支持部23よりも下方に膨出する膨出部24とを備え、支持部23は、平面視で干渉回避部19から四方に延出して下段壁部12と連結されており、支持部23間の部位が膨出部24となっている。当該下段底部11の構成により、
図10に示すように、下段底部11の下面側において、4つの略円弧状の膨出部24により囲まれている部位が位置決め凹部21となっている。そして、
図9に示すように、下側のトレー1に対して水平に180度回転させた向きで上側のトレー1を載置した場合に、
図11、
図12に示すように、上側のトレー1の位置決め凹部21の内側に下側のトレー1の位置決め凸部22が位置することとなり、上下のトレー1の水平方向における位置ずれが規制される段積み状態とされる。
【0027】
さらに、
図11等に示すように、トレー1は、当接部17(傾斜部)から下方に突出し、段積み状態において下側のトレー1の位置決め凸部22の上面側に当接可能な下方突部25を備えている。尚、下方突部25は、当接部17の中央部を含む範囲において、平面視で第2筒状部34の外径よりも径の小さい円形状、かつ、有底状の凹部を形成することにより構成されるとともに、位置決め凸部22の上面と当接する下面は、位置決め凸部22の上面と略平行するようにして略水平方向に延在する。
【0028】
尚、本実施形態では、トレー1を床面等の設置面に設置した場合に、膨出部24の下面が設置面に接地して支持されるようになっている。また、トレー1の段積み状態においても、上側のトレー1の膨出部24の下面が下側のトレー1の基部2の上面に当接して支持される。加えて、下段壁部12のうち少なくとも支持部23と連結されている部位から下段壁部12の上縁部に至る範囲は、収容部4の外周側に部分的に広く構成された部位となっており、当該部位は、正規の姿勢で収容部4に収容された物品31の第1筒状部33との当接が回避されるようになっている。
【0029】
以上詳述したように、本実施形態によれば、物品31を誤った姿勢で収容部4に収容すると、当該誤った姿勢の物品31が傾斜姿勢とされて(誤った姿勢で収容された物品31の高さ方向が、正規の姿勢で収容された物品31の高さ方向、本例では、略鉛直方向に対して傾いて)支持される。このため、物品31が誤った姿勢で収容されていることを作業者に認識させ易くすることができる。従って、物品31が誤った姿勢で収容されることに起因して物品31の収容状態が不安定となり、トレー1が運搬等される場合に物品31が変位して損傷等する、或いは、物品31を収容したトレー1を段積みした場合に、誤った姿勢で収容された物品31やトレー1が損傷したり、段積みされたトレー1が傾いたりしてしまうといった事態を防止することができる。
【0030】
また、誤収容防止部15のうち、誤った姿勢で収容部4に収容される物品31と当接可能な当接部17は、当該当接部17のうち最も上方に位置する頂部18が、平面視で収容部4の中心から離れた位置に設けられている。このため、物品31を誤った姿勢で収容部4に収容した場合に、当該物品31をランダムではなく、予め定められた方向に傾斜する傾斜姿勢とすることができる。従って、物品31が誤った姿勢で収容されていることを作業者により認識させ易くしたり、傾斜姿勢とされる物品31を傾斜させたくない側には傾斜させないようにしたりすることができる。
【0031】
さらに、誤収容防止部15の当接部17は、頂部18が設けられた端部から、反対側の端部に向けて下方傾斜しており、当接部17の下端部は、平面視で収容部4の中心を挟んで頂部18の反対側に位置している。このため、傾斜姿勢とした物品31を誤収容防止部15でより安定して支持することができる。また、傾斜姿勢とした物品31を当接部17の下流側に向けて、当該物品31の側面上部が上段壁部14に当接してそれ以上の変位が規制されるまで、比較的安定して案内することができる。
【0032】
加えて、収容部4は、物品31が傾斜姿勢とされ、かつ、物品31の側面上部が上段壁部14に当接した状態において、物品31(本例では、ベース部32)の下面側の一部を収容可能な干渉回避部19を備えている。このため、物品31が誤った姿勢で収容され、傾斜姿勢とされた(傾斜した当接部17に案内される格好で下方に変位した)場合に、当該物品31(ベース部32)の下面側のエッジと収容部4の底部(上段底部13)とが接触することを回避することができ、接触により上段底部13が削れて物品31に付着するといった事態を回避することができる。尚、規制部を構成する上段壁部14は、上方、かつ、収容部4の外周側に向けて傾斜して延在している。このため、上段壁部14と、傾斜姿勢の物品31とが接触した際に上段壁部14が削れるといった事態をより一層抑制することができる。
【0033】
また、トレー1は、収容部4の下面側に設けられる位置決め凹部21と、収容部4の間に設けられ、上方に突出する位置決め凸部22とを備え、トレー1を段積状態とした場合に、上側のトレー1の位置決め凹部21の内側に下側のトレー1の位置決め凸部22が位置する。さらに、トレー1は、当接部17から下方に突出し、段積み状態において下側のトレー1の位置決め凸部22の上面側に当接可能な下方突部25を備えている。このため、物品31を収容したトレー1の上側にトレー1を設置し、当該上側のトレー1に物品31を収容するといった作業を行う場合に、物品31が誤った姿勢で収容された際に、誤収容防止部15(当接部17)が物品31により下方に変形等させられてしまうといった事態を抑止することができる。従って、誤収容防止部15の形状の保護が図られ、誤収容防止部15により、誤った姿勢で収容された物品31を傾斜姿勢とする作用効果がより確実に奏される。
【0034】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0035】
(a)上記実施形態において、収容部4の数、及び、収容部4の配置等は特に限定されるものではなく、例えば、収容部4を7つ以上としたり、5つ以下としたりしてもよい。さらに、トレー1に収容される物品としては、ベース部と、ベース部から突出する筒状部とを具備する形状であればよく、当該物品を収容するトレーとして具体化することが可能である。例えば、上記実施形態の第2筒状部34を省略したような形状とすることも可能である。また、例えば、
図13に示すように、円盤状のベース部52と、ベース部52の外周縁部から突出し、ベース部52とは反対側に開口する円筒状の筒状部53とを備える物品51を収容可能とする収容部41において、物品51が誤った姿勢(筒状部53が上方に開口する姿勢)で収容部41に収容されることで誤収容防止部42により傾斜姿勢とされて支持され、かつ、当該物品51の側面上部が、収容部41の底部43の外周縁から上方に延出する壁部44に当接して、それ以上の変位が規制された場合に、物品51の下面側(ベース部52)のエッジを収容可能な干渉回避部45を(底部43のうち正規の姿勢の物品51を支持する支持部46の間に)設ける(傾斜姿勢にある物品51は支持部46に接触しないように構成する)こととしてもよい。尚、上記実施形態において、例えば、第2筒状部34の径がより大きく構成されたり、上段壁部14がより収容部4の外周側に配置されたりすることによって、物品31が傾斜姿勢、かつ、上段壁部14に当接して変位が規制された状態において、第2筒状部34が当接部17の外周縁部よりも収容部4の外周側に突出する場合には、下段底部11に干渉回避部19を設けて、第2筒状部34と下段底部11との接触を回避することが望ましい。加えて、干渉回避部19は、凹部ではなく、孔部により構成することも可能である。
【0036】
尚、正規の姿勢の物品31の高さ方向に対する傾斜姿勢の物品31の高さ方向の傾斜角度としては、例えば、3度~45度の範囲内で設定されることとしてもよい。ここで、物品31が誤った姿勢で収容部4に収容される場合に誤収容防止部15(当接部17の傾斜)によって物品31が勢いよく所定方向に変位する等の事態を抑制する観点からすれば、傾斜角度は極力小さい方(例えば、15度以下)が望ましく、誤った姿勢で収容部4に収容されていることを認識し易くする観点からすれば、傾斜角度は小さ過ぎないこと(例えば、5度以上)が望ましい。
【0037】
(b)上記実施形態において誤収容防止部15の形状は特に限定されるものではなく、例えば、下段底部11の内周側、かつ、収容部4の中心から離れた位置から上方に突出する突起により誤収容部4を構成することとしてもよい。また、上記実施形態では、いずれの収容部4に対して物品31を誤った姿勢で収容しても、傾斜姿勢とされる物品31はいずれも同じ向きに傾くように構成されているが、異なる向きに傾くような構成としてもよい。さらに、上段壁部14(規制部)の形状を、傾斜姿勢とされた物品31とは異なる向きに傾斜した場合には、物品31の側面上部と当接し得ないように構成してもよい。
【0038】
(c)上記実施形態では、トレー1はポリエチレンにより構成されているが、ポリプロピレン、PET、ポリアミド、他のポリオレフィン等その他の樹脂材料により構成されることとしてもよい。また、上記実施形態のトレー1は、真空成形によって構成されているが、圧縮成形や射出成形等、その他の方法で形成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…トレー、4…収容部、11…下段底部、12…下段壁部、13…上段底部、14…上段壁部、15…誤収容防止部、17…当接部、18…頂部、19…干渉回避部、21…位置決め凹部、22…位置決め凸部、25…下方突部、31…物品、32…ベース部、33…第1筒状部、35…空間部、36…開口部。