(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068331
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】試料切断用治具、切断用具セット及び試料切断方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
G01N1/28 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178690
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】高島 徹
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AD32
2G052AD52
2G052EC02
2G052EC21
2G052GA03
2G052GA20
2G052JA09
(57)【要約】
【課題】安価かつ簡単に、試料の切断片を精度良く切り出すことができる試料切断用治具、切断用具セット及び試料切断方法を提供する。
【解決手段】切断刃10を用いて試料Sを切断する際に、試料S上に載置される試料切断用治具20であって、1対の幅用スリット32と、1対の長さ用スリット36とを備える。1対の幅用スリット32は、第1の間隔を隔てて互いに平行に延び、切断刃10を挿通しスライドさせて試料Sを切断することにより、第1の間隔に対応する幅で試料Sを切断するために用いられる。1対の長さ用スリット36は、第1の間隔とは異なる第2の間隔を隔てて互いに平行に延び、切断刃10を挿通しスライドさせて試料Sを切断することにより、第2の間隔に対応する長さで前記試料を切断するために用いられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断刃を用いて試料を切断する際に、前記試料上に載置される試料切断用治具であって、
第1の間隔を隔てて互いに平行に延び、前記切断刃を挿通しスライドさせて前記試料を切断することにより、前記第1の間隔に対応する幅で前記試料を切断するための1対の幅用スリットと、
前記第1の間隔とは異なる第2の間隔を隔てて互いに平行に延び、前記切断刃を挿通しスライドさせて前記試料を切断することにより、前記第2の間隔に対応する長さで前記試料を切断するための1対の長さ用スリットとを備える、試料切断用治具。
【請求項2】
前記1対の幅用スリットが2対以上備えられており、各対の前記幅用スリットにおける前記第1の間隔が異なる、請求項1に記載の試料切断用治具。
【請求項3】
前記1対の長さ用スリットが2対以上備えられており、各対の前記長さ用スリットにおける前記第2の間隔が異なる、請求項1に記載の試料切断用治具。
【請求項4】
2対以上の前記長さ用スリットにおいて、各対の一方の前記長さ用スリットが共用されている、請求項3に記載の試料切断用治具。
【請求項5】
前記1対の幅用スリットの延長線上に並べて形成され、当該1対の幅用スリットに対向している前記試料を視認するための幅用窓孔をさらに備える、請求項1に記載の試料切断用治具。
【請求項6】
前記1対の長さ用スリットに対して直交方向に並べて形成され、当該1対の長さ用スリットに対向している前記試料を視認するための長さ用窓孔をさらに備える、請求項1に記載の試料切断用治具。
【請求項7】
前記1対の幅用スリットは、前記1対の長さ用スリットに対して直交方向に延びている、請求項1に記載の試料切断用治具。
【請求項8】
前記1対の幅用スリットは、前記1対の長さ用スリットの延長線上に形成されている、請求項7に記載の試料切断用治具。
【請求項9】
前記1対の長さ用スリットに対して直交方向に並べて形成され、当該1対の長さ用スリットに対向している前記試料を視認するための長さ用窓孔をさらに備え、
前記長さ用窓孔は、前記1対の幅用スリットの端部に対して、前記1対の長さ用スリットが延びる方向の延長線上に形成されている、請求項8に記載の試料切断用治具。
【請求項10】
前記切断刃は、根元部と、当該根元部から先端に向かって先細りするように延びる1対の刃面とを有しており、
前記1対の幅用スリット及び前記1対の長さ用スリットの各スリット幅が、前記根元部の厚みよりも小さい、請求項1に記載の試料切断用治具。
【請求項11】
請求項1に記載の試料切断用治具と、
前記1対の幅用スリット及び前記1対の長さ用スリットに挿通される切断刃とを備え、
前記切断刃は、根元部と、当該根元部から先端に向かって先細りするように延びる1対の刃面とを有しており、
前記1対の幅用スリット及び前記1対の長さ用スリットの各スリット幅が、前記根元部の厚みよりも小さい、切断用具セット。
【請求項12】
請求項1に記載の試料切断用治具を用いた試料切断方法であって、
前記1対の幅用スリットに前記切断刃を挿通しスライドさせて前記試料を切断するとともに、前記1対の長さ用スリットに前記切断刃を挿通しスライドさせて前記試料を切断することにより、前記試料の切断片を切り出す、試料切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料切断用治具、切断用具セット及び試料切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1で開示されるような熱機械分析装置では、試料片に対して引張試験を実施することできる。引張試験では、試料片の両端部を保持し、試料片に引張方向の荷重を加えることで、試料片の寸法の変化を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような試験で用いられる試料片は、シート状の試料から切り出された切断片である。試料片の切り出し方法としては、二通り挙げられる。試料片の切り出し方法の一つ目として、定規及びカッターナイフを用いる方法が挙げられる。定規及びカッターナイフを用いる方法では、試料片のサイズを適宜調整することが容易である。しかしながら、この方法では、所定サイズの試料片を繰り返し切り出すことが困難であるため、試験の再現性が失われることがある。
【0005】
試料片の切り出し方法の二つ目として、プレス機を用いた打ち抜き加工による方法が挙げられる。プレス機を用いる方法では、所定サイズの試料片を繰り返し切り出すことが容易である。しかしながら、この方法では、試料の薄さに応じて、打ち抜き時に試料に重ねる台紙を用意する必要があるため、手間が生じることがある。また、この方法では、試料片のサイズが固定されるため、必要に応じてサイズ毎に高額なプレス機を用意する必要がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、安価かつ簡単に、試料の切断片を精度良く切り出すことができる試料切断用治具、切断用具セット及び試料切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、切断刃を用いて試料を切断する際に、前記試料上に載置される試料切断用治具であって、1対の幅用スリットと、1対の長さ用スリットとを備える。前記1対の幅用スリットは、第1の間隔を隔てて互いに平行に延び、前記切断刃を挿通しスライドさせて前記試料を切断することにより、前記第1の間隔に対応する幅で前記試料を切断するために用いられる。前記1対の長さ用スリットは、前記第1の間隔とは異なる第2の間隔を隔てて互いに平行に延び、前記切断刃を挿通しスライドさせて前記試料を切断することにより、前記第2の間隔に対応する長さで前記試料を切断するために用いられる。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記試料切断用治具と、前記1対の幅用スリット及び前記1対の長さ用スリットに挿通される切断刃とを備える切断用具セットである。前記切断刃は、根元部と、当該根元部から先端に向かって先細りするように延びる1対の刃面とを有する。前記1対の幅用スリット及び前記1対の長さ用スリットの各スリット幅が、前記根元部の厚みよりも小さい。
【0009】
本発明の第3の態様は、前記試料切断用治具を用いた試料切断方法であって、前記1対の幅用スリットに前記切断刃を挿通しスライドさせて前記試料を切断するとともに、前記1対の長さ用スリットに前記切断刃を挿通しスライドさせて前記試料を切断することにより、前記試料の切断片を切り出す。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1対の幅用スリットを用いて試料を第1の間隔に対応する幅で切断するとともに、1対の長さ用スリットを用いて試料を第2の間隔に対応する長さで切断することで、安価な試料切断用治具を用いて簡単に、試料の切断片を精度良く切り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の切断刃及び試料切断用治具を用いて試料を切断する際の様子を示す概略断面図である。
【
図2】本実施形態の試料切断用治具の構成の一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.試料切断用治具及び切断刃について
図1は、本実施形態の切断刃10及び試料切断用治具20を用いて試料Sを切断する際の様子を示す概略断面図である。本実施形態では、熱機械分析装置(TMA:Thermomechanical Analyzer)などの分析装置において分析対象となる試料Sを切断する場合について説明する。ただし、試料Sは、分析装置に限らず、例えば材料試験機などの各種装置において、試験、検査又は分析の対象となるものであってもよい。
【0013】
切断刃10は、根元部12及びその根元部12から先細りする先端部14を備える刃である。根元部12は、一定の厚みを有する薄い金属板である。先端部14は、根元部12から先端に向かって先細りするように延びる1対の刃面16(16a、16b)を含み、先端が鋭利に形成されている。切断刃10の一例としては、カッターナイフが挙げられる。
【0014】
試料切断用治具20は、切断刃10を用いてシート状の試料Sを切断する際に、その試料S上に載置される板状の部材であり、直線状のスリット22を複数備える。試料Sを切断する際には、いずれかのスリット22に切断刃10を挿通しスライドさせることにより、切断刃10の先端部14で試料Sを切断することができる。
【0015】
試料切断用治具20は、ステンレスなどの金属により形成されている。各スリット22の幅(スリット幅)Aは、切断刃10の根元部12の厚みB(例えば0.35mm)よりも小さく、試料切断用治具20の厚みCは、切断刃10の先端部14の長さよりも小さい。具体的には、切断刃10の先端部14におけるスリット22の幅と同じ厚みを有する位置から、その先端部14の先端までの距離Dが、試料切断用治具20の厚みCよりも大きく、試料切断用治具20の厚みCと試料Sの厚みの合計値以上である。なお、試料Sの厚みは、数μm~20μm程度である。
【0016】
各スリット22の幅Aは、例えば0.25mmである。また、試料切断用治具20の厚みCは、例えば0.2mmである。ただし、切断刃10の種類が異なれば、好ましいスリット22の幅A及び試料切断用治具20の厚みCも異なる。そのため、スリット22の幅A及び試料切断用治具20の厚みCに関しては、数値が限定されるものではない。
【0017】
このような切断刃10及びスリット22によれば、スリット22に切断刃10を挿通しスライドさせる際に、切断刃10の1対の刃面16(16a、16b)がスリット22に接する。そのため、切断刃10の移動方向は、スリット22の延長方向に限定される。したがって、切断刃10及びスリット22によれば、試料Sを精度良く切断することができる。
【0018】
2.試料切断用治具の構成
図2は、本実施形態の試料切断用治具20の構成の一例を示す概略平面図である。試料切断用治具20は、幅用スリットペア30を少なくとも1つ備える。
図2において、幅用スリットペア30は、第1の間隔を隔てて平行に延びる1対の幅用スリット32を指す。すなわち、幅用スリットペア30は、第1の間隔を隔てて互いに平行に延び、対を成す2つの幅用スリット32を含む。
【0019】
幅用スリットペア30は、切断刃10を挿通しスライドさせて試料Sを切断することで、第1の間隔に対応する幅で試料Sを切断するために用いられる。幅用スリットペア30に含まれる各幅用スリット32は、
図1に示したスリット22の一例である。なお、各幅用スリット32の延長方向の長さは同じである。
【0020】
試料切断用治具20は、幅用スリットペア30とは別に、長さ用スリットペア34を少なくとも1つ備える。
図2において、長さ用スリットペア34は、第1の間隔と異なる第2の間隔を隔てて平行に延びる1対の長さ用スリット36を指す。すなわち、長さ用スリットペア34は、第2の間隔を隔てて互いに平行に延び、対を成す2つの長さ用スリット36を含む。
【0021】
長さ用スリットペア34は、切断刃10を挿通しスライドさせて試料Sを切断することで、第2の間隔に対応する長さで試料Sを切断するために用いられる。長さ用スリットペア34に含まれる各長さ用スリット36は、
図1に示したスリット22の一例である。なお、各長さ用スリット36の延長方向の長さは同じであり、幅用スリットペア30の第1の間隔よりも大きい。
【0022】
このような幅用スリットペア30及び長さ用スリットペア34によれば、試料Sを第1の間隔に対応する幅で切断するとともに、第2の間隔に対応する長さで切断することで、矩形状(長方形状)の試料Sの切断片を精度良く切り出すことができる。
【0023】
また、
図2に示す例では、幅用スリットペア30については、長さ用スリットペア34に対して直交方向に延びる。そのため、幅用スリットペア30又は長さ用スリットペア34の一方を用いて試料Sを一方向に切断した後、試料切断用治具20を回転させることなくスライド移動させるだけで、試料Sの切断箇所を幅用スリットペア30又は長さ用スリットペア34の他方の位置に合わせて別方向に切断することができる。
【0024】
なお、幅用スリットペア30は、長さ用スリットペア34の延長方向と同一方向に延びていてもよい。ただし、この場合、幅用スリットペア30又は長さ用スリットペア34の一方を用いて試料Sを一方向に切断した後、試料切断用治具20をスライド移動させ、さらに、回転させなければ、試料Sを別方向に切断することができない。
【0025】
本実施形態では、幅用スリットペア30が2つ(2対)以上存在する場合、各幅用スリットペア30の第1の間隔は、それぞれ異なる。さらに、この場合、複数の幅用スリットペア30のそれぞれにおける一方の幅用スリット32が共用されてもよい。例えば、3つの幅用スリット32を設けて、そのうちの1つの幅用スリット32を共用すれば、3つの幅用スリット32で2つの幅用スリットペア30を構成することができる。複数の幅用スリットペア30のそれぞれにおける一方の幅用スリット32が共用される場合、複数の幅用スリットペア30の各幅用スリット32は、互いに平行に延びるように形成される。
【0026】
また、長さ用スリットペア34が2つ(2対)以上存在する場合は、各長さ用スリットペア34の第2の間隔が、それぞれ異なる。さらに、この場合、複数の長さ用スリットペア34のそれぞれにおける一方の長さ用スリット36が共用されてもよい。例えば、3つの長さ用スリット36を設けて、そのうちの1つの長さ用スリット36を共用すれば、3つの長さ用スリット36で2つの長さ用スリットペア34を構成することができる。複数の長さ用スリットペア34のそれぞれにおける一方の長さ用スリット36が共用される場合、複数の長さ用スリットペア34の各長さ用スリット36は、互いに平行に延びるように形成される。
【0027】
なお、複数の長さ用スリットペア34のそれぞれにおける一方の長さ用スリット36が共用される場合、共用される長さ用スリット36が基準となる。このことは、複数の幅用スリットペア30のそれぞれにおける一方の幅用スリット32が共用される場合も同様である。
【0028】
図2に示す例では、幅用スリットペア30が2つ存在し、一方の幅用スリットペア30における第1の間隔が4mmとされ、他方の幅用スリットペア30における第1の間隔が3mmとされている。ただし、幅用スリットペア30の数は、2つに限らず、1つだけであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0029】
また、
図2に示す例では、符号を一部省略しているが、長さ用スリットペア34が4つ存在する。各長さ用スリットペア34のそれぞれにおける一方の長さ用スリット36が共用され、その共用される長さ用スリット36を基準として、各長さ用スリットペア34における第2の間隔がそれぞれ5mm、10mm、15mm及び20mmとされている。ただし、長さ用スリットペア34の数は、4つに限らず、1~3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0030】
なお、試料切断用治具20には、
図2に示すように、第1の間隔を表す数値及び第2の間隔を表す数値のそれぞれが視認可能に表示されてもよい。
【0031】
このような試料切断用治具20によれば、幅用スリットペア30に切断刃10を挿通しスライドさせて試料Sを切断するとともに、長さ用スリットペア34に切断刃10を挿通しスライドさせて試料Sを切断することで、試料Sの切断片を精度良く切り出すことができる。
【0032】
試料切断用治具20は、各スリット22とは別に、幅用スリットペア30に対向する試料Sを視認するための幅用窓孔38を備える。幅用窓孔33は、矩形状であり、例えば5mm×8mmの角孔により構成される。幅用窓孔38は、幅用スリットペア30の延長線上に、その幅用スリットペア30と並べて形成される。
【0033】
1つの幅用スリットペア30に対応する幅用窓孔38は、2つ存在する。幅用窓孔38は、幅用スリットペア30の延長線上において、その幅用スリットペア30の各端部と並べて形成され、対を成す。2つの幅用窓孔38間の距離は、対応する幅用スリットペア30の延長方向の長さよりも大きく、2つの幅用窓孔38間に幅用スリットペア30が位置している。
【0034】
なお、複数の幅用スリットペア30のそれぞれにおける一方の幅用スリット32が共用される場合、その複数の幅用スリットペア30では、幅用窓孔38が共用されてもよい。
【0035】
このような幅用窓孔38によれば、試料Sの位置を確認した上で、幅用スリットペア30を用いて試料Sを切断することができる。例えば、幅用窓孔38で試料Sの端部近傍を確認した上で、幅用スリットペア30を用いて試料Sを切断すれば、試料Sの端部近傍を切断することができる。つまり、このような場合、試料Sの端部近傍から切断片を切り出すことができ、効率よく試料Sを使用することができる。
【0036】
幅用窓孔38は、対応する幅用スリットペア30に対する直交方向の幅が、少なくともその幅用スリットペア30の第1の間隔よりも大きい。このことによれば、幅用窓孔38を介して試料Sの位置を確認した上で、試料Sの幅用スリットペア30に対向する箇所が、その幅用スリットペア30の第1の間隔以上の幅を有するか否かを確認することができる。
【0037】
試料切断用治具20は、幅用窓孔38とは別に、長さ用スリットペア34に対向する試料Sを視認するための長さ用窓孔40を備える。長さ用窓孔40は、矩形状であり、例えば5mm×8mmの角孔により構成される。長さ用窓孔40は、長さ用スリットペア34に対して直交方向に、その長さ用スリットペア34と並べて形成される。
【0038】
1つの長さ用スリットペア34に対応する長さ用窓孔40は、2つ存在する。長さ用窓孔40は、長さ用スリットペア34に対して直交方向において、その長さ用スリットペア34と並べて形成され、対を成す。2つの長さ用窓孔40間の距離は、対応する長さ用スリットペア34の間隔よりも大きく、2つの長さ用窓孔40間に長さ用スリットペア34が位置している。
【0039】
なお、複数の長さ用スリットペア34のそれぞれにおける一方の長さ用スリット36が共用される場合、その複数の長さ用スリットペア34では、長さ用窓孔40が共用されてもよい。
【0040】
このような長さ用窓孔40によれば、試料Sの位置を確認した上で、長さ用スリットペア34を用いて試料Sを切断することができる。長さ用窓孔40は、対応する長さ用スリットペア34の延長方向の幅が、幅用スリットペア30の第1の間隔よりも大きい。このことによれば、幅用スリットペア30を用いて切断した試料Sの切断箇所を長さ用窓孔40で視認できるように試料切断用治具20を配置した上で、長さ用スリットペア34を用いて試料Sを切断することにより、試料Sの切断片を確実に切り出すことができる。
【0041】
長さ用窓孔40間の距離は、幅用スリットペア30の延長方向の長さ以下であることが好ましい。この場合、各長さ用窓孔40を介して幅用スリットペア30に対応する試料Sの切断箇所が視認可能となる。つまり、この場合、長さ用スリットペア34に対して、試料Sの幅用スリットペア30に対応する切断箇所が対向するか否かを確認することができる。
【0042】
幅用スリットペア30は、長さ用スリットペア34の延長線上に配置されていてもよい。また、長さ用スリットペア34は、幅用スリットペア30の延長線上に配置されていてもよい。これらの幅用スリットペア30及び長さ用スリットペア34の配置に合わせて、幅用窓孔38及び長さ用窓孔40が適宜配置されてもよい。幅用窓孔38及び長さ用窓孔40は、それぞれ幅用スリットペア30及び長さ用スリットペア34に対応付けて2つに限らず、1つだけ、あるいは3つ以上設けられてもよい。
【0043】
図2に示す例では、幅用スリットペア30が長さ用スリットペア34に対して直交方向に延び、幅用スリットペア30が長さ用スリットペア34の延長線上に配置される。この場合、幅用スリットペア30を用いて試料Sを切断した後、試料切断用治具20を長さ用スリットペア34の延長方向にスライド移動させるだけで、幅用スリットペア30に対応する試料Sの切断箇所に対して、長さ用スリットペア34の位置を合わせることができる。
【0044】
また、これらのことに加え、長さ用窓孔40間の距離が幅用スリットペア30の延長方向の長さ以下である場合、各長さ用窓孔40を介して幅用スリットペア30に対応する試料Sの切断箇所が確認できる位置に試料切断用治具20の位置を合わせるだけで、その切断箇所に対して、長さ用スリットペア34の位置を合わせることができる。
【0045】
さらに、
図2に示すように、長さ用窓孔40が、幅用スリットペア30の端部に対して、長さ用スリットペア34が延びる方向の延長線上に形成されている場合は、各長さ用窓孔40を介して幅用スリットペア30に対応する試料Sの切断箇所の端部が確認できる位置に試料切断用治具20の位置を合わせるだけで、その切断箇所に対して、長さ用スリットペア34の位置を合わせることができる。
【0046】
なお、本実施形態で挙げた具体的な構成は一例であり、同様の結果が得られるのであれば、実際の製品に応じて適宜変更することが可能である。
【0047】
3.態様
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0048】
(第1項)一態様に係る試料切断用治具は、
切断刃を用いて試料を切断する際に、前記試料上に載置される試料切断用治具であって、
第1の間隔を隔てて互いに平行に延び、前記切断刃を挿通しスライドさせて前記試料を切断することにより、前記第1の間隔に対応する幅で前記試料を切断するための1対の幅用スリットと、
前記第1の間隔とは異なる第2の間隔を隔てて互いに平行に延び、前記切断刃を挿通しスライドさせて前記試料を切断することにより、前記第2の間隔に対応する長さで前記試料を切断するための1対の長さ用スリットとを備えてもよい。
【0049】
第1項に記載の試料切断用治具によれば、1対の幅用スリットを用いて試料を第1の間隔に対応する幅で切断するとともに、1対の長さ用スリットを用いて試料を第2の間隔に対応する長さで切断することで、安価な試料切断用治具を用いて簡単に、試料の切断片を精度良く切り出すことができる。
【0050】
(第2項)第1項に記載の試料切断用治具において、
前記1対の幅用スリットが2対以上備えられており、各対の前記幅用スリットにおける前記第1の間隔が異なっていてもよい。
【0051】
第2項に記載の試料切断用治具によれば、異なる幅で試料を精度良く切断することができる。
【0052】
(第3項)第1項に記載の試料切断用治具において、
前記1対の長さ用スリットが2対以上備えられており、各対の前記長さ用スリットにおける前記第2の間隔が異なっていてもよい。
【0053】
第3項に記載の試料切断用治具によれば、異なる長さで試料を精度良く切断することができる。
【0054】
(第4項)第3項に記載の試料切断用治具において、
2対以上の前記1対の長さ用スリットにおいて、各対の一方の前記長さ用スリットが共用されていてもよい。
【0055】
第4項に記載の試料切断用治具によれば、各対の一方の長さ用スリットを共用することにより、当該一方の長さ用スリットを基準として、異なる長さで試料を精度良く切断することができる。
【0056】
(第5項)第1項に記載の試料切断用治具において、
前記1対の幅用スリットの延長線上に並べて形成され、当該1対の幅用スリットに対向している前記試料を視認するための幅用窓孔をさらに備えていてもよい。
【0057】
第5項に記載の試料切断用治具によれば、幅用窓孔を介して試料の位置を確認した上で、1対の幅用スリットを用いて試料を切断することができる。
【0058】
(第6項)第1項に記載の試料切断用治具において、
前記1対の長さ用スリットに対して直交方向に並べて形成され、当該1対の長さ用スリットに対向している前記試料を視認するための長さ用窓孔をさらに備えていてもよい。
【0059】
第6項に記載の試料切断用治具によれば、長さ用窓孔を介して試料の位置を確認した上で、1対の長さ用スリットを用いて試料を切断することができる。
【0060】
(第7項)第1項に記載の試料切断用治具において、
前記1対の幅用スリットは、前記1対の長さ用スリットに対して直交方向に延びていてもよい。
【0061】
第7項に記載の試料切断用治具によれば、1対の幅用スリット又は1対の長さ用スリットの一方を用いて試料を一方向に切断した後、試料切断用治具を回転させることなくスライド移動させるだけで、試料の切断箇所を1対の幅用スリット又は1対の長さ用スリットの他方の位置に合わせて別方向に切断することができる。
【0062】
(第8項)第7項に記載の試料切断用治具において、
前記1対の幅用スリットは、前記1対の長さ用スリットの延長線上に形成されていてもよい。
【0063】
第8項に記載の試料切断用治具によれば、1対の幅用スリットを用いて試料を切断した後、試料切断用治具を1対の長さ用スリットの延長方向にスライド移動させるだけで、1対の幅用スリットに対応する試料の切断箇所に対して、1対の長さ用スリットの位置を合わせることができる。
【0064】
(第9項)第8項に記載の試料切断用治具において、
前記1対の長さ用スリットに対して直交方向に並べて形成され、当該1対の長さ用スリットに対向している前記試料を視認するための長さ用窓孔をさらに備え、
前記長さ用窓孔は、前記1対の幅用スリットの端部に対して、前記1対の長さ用スリットが延びる方向の延長線上に形成されていてもよい。
【0065】
第9項に記載の試料切断用治具によれば、試料切断用治具を1対の長さ用スリットの延長方向にスライド移動させ、長さ用窓孔を介して1対の幅用スリットに対応する試料の切断箇所の端部が確認できる位置に試料切断用治具の位置を合わせるだけで、その切断箇所に対して、1対の長さ用スリットの位置を合わせることができる。
【0066】
(第10項)第1項に記載の試料切断用治具において、
前記切断刃は、根元部と、当該根元部から先端に向かって先細りするように延びる1対の刃面とを有しており、
前記1対の幅用スリット及び前記1対の長さ用スリットの各スリット幅が、前記根元部の厚みよりも小さくてもよい。
【0067】
第10項に記載の試料切断用治具によれば、スリットに切断刃を挿通しスライドさせる際に、切断刃の1対の刃面がスリットに接することから、切断刃の移動方向は、スリットの延長方向に限定される。したがって、切断刃及びスリットにより切り出される切断片の寸法のばらつきを低減することができる。
【0068】
(第11項)一態様に係る切断用具セットは、
第1項に記載の試料切断用治具と、
前記1対の幅用スリット及び前記1対の長さ用スリットに挿通される切断刃とを備え、
前記切断刃は、根元部と、当該根元部から先端に向かって先細りするように延びる1対の刃面とを有しており、
前記1対の幅用スリット及び前記1対の長さ用スリットの各スリット幅が、前記根元部の厚みよりも小さくてもよい。
【0069】
第11項に記載の切断用具セットによれば、切断刃及び1対の幅用スリットを用いて試料を第1の間隔に対応する幅で切断するとともに、切断刃及び1対の長さ用スリットを用いて試料を第2の間隔に対応する長さで切断することで、安価な試料切断用治具を用いて簡単に、試料の切断片を精度良く切り出すことができる。特に、スリットに切断刃を挿通しスライドさせる際に、切断刃の1対の刃面がスリットに接することから、切断刃の移動方向は、スリットの延長方向に限定される。したがって、切断刃及びスリットにより切り出される切断片の寸法のばらつきを低減することができる。
【0070】
(第12項)一態様に係る試料切断方法は、
第1項に記載の試料切断用治具を用いた試料切断方法であって、
前記1対の幅用スリットに前記切断刃を挿通しスライドさせて前記試料を切断するとともに、前記1対の長さ用スリットに前記切断刃を挿通しスライドさせて前記試料を切断することにより、前記試料の切断片を切り出してもよい。
【0071】
第12項に記載の試料切断方法によれば、1対の幅用スリットを用いて試料を第1の間隔に対応する幅で切断するとともに、1対の長さ用スリットを用いて試料を第2の間隔に対応する長さで切断することで、安価な試料切断用治具を用いて簡単に、試料の切断片を精度良く切り出すことができる。
【符号の説明】
【0072】
10 切断刃
12 根元部
14 先端部
16a 刃面
16b 刃面
20 試料切断用治具
22 スリット
30 幅用スリットペア
32 幅用スリット
34 長さ用スリットペア
36 長さ用スリット
38 幅用窓孔
40 長さ用窓孔
S 試料