(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068335
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】アスファルト混合物の温度管理システムおよびアスファルト混合物の温度管理方法
(51)【国際特許分類】
E01C 19/26 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
E01C19/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178694
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000232508
【氏名又は名称】日本道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】浅井 友章
(72)【発明者】
【氏名】和田 勝利
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AA03
2D052AC01
2D052BB01
2D052CA09
2D052DA03
(57)【要約】
【課題】アスファルト混合物の転圧をするときにおけるアスファルト混合物の温度をできるだけ正確に知ることができるアスファルト混合物の温度管理システムを提供する。
【解決手段】敷き均しされたアスファルト混合物9の温度を測定する敷き均しアスファルト混合物温度測定装置3と、敷き均しアスファルト混合物温度測定装置3で測定されたアスファルト混合物9の温度を用いて、時刻の経過に伴って温度が低下する敷き均しされたアスファルト混合物9の温度を算出する温度算出装置5と、温度算出装置5で算出されたアスファルト混合物9の温度を出力する算出温度出力装置7とを有するアスファルト混合物の温度管理システム1である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
敷き均しされたアスファルト混合物の温度を測定する敷き均しアスファルト混合物温度測定装置と、
前記敷き均しアスファルト混合物温度測定装置で測定されたアスファルト混合物の温度を用いて、時刻の経過に伴って温度が低下する前記敷き均しされたアスファルト混合物の温度を算出する温度算出装置と、
前記温度算出装置で算出された前記アスファルト混合物の温度を出力する算出温度出力装置と、
を有するアスファルト混合物の温度管理システム。
【請求項2】
前記敷き均しアスファルト混合物温度測定装置で温度を測定した箇所の位置情報を入力する位置情報入力部を備え、
前記算出温度出力装置は、前記温度算出装置で算出された前記アスファルト混合物の温度と前記位置情報入力部で入力された位置情報とを関連づけて出力する請求項1に記載のアスファルト混合物の温度管理システム。
【請求項3】
前記温度算出装置が算出した温度の値と、転圧ローラによる転圧が可能な温度の下限値との差の値が所定の閾値以下になったときに、アラームを発するアラーム発生装置(33)を備え、
前記アラームには、前記転圧ローラによる転圧をしなければならない制限時間が含まれている請求項1または請求項2に記載のアスファルト混合物の温度管理システム。
【請求項4】
前記算出温度出力装置は、前記温度算出装置が算出した前記敷き均しがされたアスファルト混合物の温度が適正な温度になっていることを出力する請求項1または請求項2に記載のアスファルト混合物の温度管理システム。
【請求項5】
敷き均しされたアスファルト混合物の温度を測定する敷き均しアスファルト混合物温度測定段階と、
前記敷き均しアスファルト混合物温度測定段階で測定されたアスファルト混合物の温度を用いて、時刻の経過に伴って温度が低下する前記敷き均しされたアスファルト混合物の温度を算出する温度算出段階と、
前記温度算出段階で算出された前記アスファルト混合物の温度を出力する算出温度出力段階と、
を有するアスファルト混合物の温度管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト混合物の温度管理システムおよびアスファルト混合物の温度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルト混合物は、舗装道路に使用されるものであり、アスファルトプラントで生成され、ダンプトラックで運搬され、この後、アスファルトフィニッシャで敷き均しされ、転圧ローラによって転圧される。
【0003】
アスファルト混合物の出荷温度以外の到着温度、敷均し温度、転圧温度は温度測定係員が温度計をアスファルト混合物に差し込んで測定し確認している。そして、アスファルト混合物の出荷温度、到着温度、敷均し温度、転圧温度が適正であることを管理している。
【0004】
工事管理者は、アスファルト混合物の温度を、その都度、温度測定係員に聞くかまたは一緒に温度計を見ないと把握できない。転圧機械(転圧ローラ)のオペレータも、アスファルト混合物の適正な転圧温度、転圧タイミングが解らないため、温度測定係員にアスファルト混合物の温度を確認する必要がある。さらに、アスファルト混合物の各種温度は、人力で測定、記録し、後日、アナログでまとめる方法で対応している。
【0005】
また、従来、ダンプトラック、アスファルトフィニッシャ、転圧ローラに温度センサーを設け、アスファルト混合物の温度を自動的に計測し記録するシステムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、アスファルト混合物の敷設工事では、アスファルト混合物を転圧するときにおけるアスファルト混合物の温度をできるだけ正確に知ることが重要である。転圧をするときのアスファルト混合物の温度が不適正なものであると、アスファルト舗装の品質が悪化し、後日、アスファルト舗装のひび割れ等の不具合が発生しやすくなるからである。
【0008】
本発明は、アスファルト混合物を転圧するときにおけるアスファルト混合物の温度を予測できるアスファルト混合物の温度管理システムおよびアスファルト混合物の温度管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に係るアスファルト混合物の温度管理システムは、敷き均しされたアスファルト混合物の温度を測定する敷き均しアスファルト混合物温度測定装置と、前記敷き均しアスファルト混合物温度測定装置で測定されたアスファルト混合物の温度を用いて、時刻の経過に伴って温度が低下する前記敷き均しされたアスファルト混合物の温度を算出する温度算出装置と、前記温度算出装置で算出された前記アスファルト混合物の温度を出力する算出温度出力装置とを有するアスファルト混合物の温度管理システムである。
【0010】
また、本発明の態様に係るアスファルト混合物の温度管理システムは、前記敷き均しアスファルト混合物温度測定装置で温度を測定した箇所の位置情報を入力する位置情報入力部を備え、前記算出温度出力装置は、前記温度算出装置で算出された前記アスファルト混合物の温度と前記位置情報入力部で入力された位置情報とを関連づけて出力するアスファルト混合物の温度管理システムである。
【0011】
また、本発明の態様に係るアスファルト混合物の温度管理システムは、前記温度算出装置が算出した温度の値と、転圧ローラによる転圧が可能な温度の下限値との差の値が所定の閾値以下になったときに、アラームを発するアラーム発生装置を備え、前記アラームには、前記転圧ローラによる転圧をしなければならない制限時間が含まれているアスファルト混合物の温度管理システムである。
【0012】
また、本発明の態様に係るアスファルト混合物の温度管理システムは、前記算出温度出力装置は、前記温度算出装置が算出した前記敷き均しがされたアスファルト混合物の温度が適正な温度になっていることを出力するアスファルト混合物の温度管理システムである。
【0013】
本発明の態様に係るアスファルト混合物の温度管理方法は、敷き均しされたアスファルト混合物の温度を測定する敷き均しアスファルト混合物温度測定段階と、前記敷き均しアスファルト混合物温度測定段階で測定されたアスファルト混合物の温度を用いて、時刻の経過に伴って温度が低下する前記敷き均しされたアスファルト混合物の温度を算出する温度算出段階と、前記温度算出段階で算出された前記アスファルト混合物の温度を出力する算出温度出力段階とを有するアスファルト混合物の温度管理方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アスファルト混合物の転圧をするときにおけるアスファルト混合物の温度を予測できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るアスファルト混合物の温度管理システムで使用される搬送中アスファルト混合物温度測定装置を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るアスファルト混合物の温度管理システムでのアスファルト混合物の搬送に使用されるダンプトラック等を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアスファルト混合物の温度管理システムの全体像を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るアスファルト混合物の温度管理システムで、アスファルト混合物の敷き均しに使用されるアスファルトスプレッダーを示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るアスファルト混合物の温度管理システムで、アスファルト混合物の二次転圧に使用される二次転圧ローラを示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るアスファルト混合物の温度管理システムで、アスファルト混合物の一次転圧に使用される一次転圧ローラを示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るアスファルト混合物の温度管理システムで、アスファルト混合物の搬送に使用されるダンプトラックに関する情報を示す携帯端末を示す図である。
【
図8】(a)は搬送中アスファルト混合物温度測定装置で測定したアスファルト混合物の温度の変化を示す図であり、(b)は電子黒板として用いられる携帯端末を示す図である。
【
図9】(a)は本発明の実施形態に係るアスファルト混合物の温度管理システムで使用される敷き均しアスファルト混合物温度測定装置が、敷き均されたアスファルト混合物の温度を測定している状態を示す図である。(b)は(a)での測定結果を示している携帯端末である。
【
図10】アスファルト混合物を用いたアスファルト舗装がされる道路の平面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係るアスファルト混合物の温度管理システムでの作業情報等を示している携帯端末である。
【
図12】本発明の実施形態に係るアスファルト混合物の温度管理システムでの作業情報等を示している携帯端末である。
【
図13】
図3と同様に本発明の実施形態に係るアスファルト混合物の温度管理システムの全体像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係るアスファルト混合物の温度管理システム1は、
図3、
図9(a)、
図13等で示すように、敷き均しアスファルト混合物温度測定装置3と、温度算出装置5と、算出温度出力装置7とを備えて構成されている。なお、敷き均しアスファルト混合物温度測定装置3を敷き均しアスファルト混合物温度測定部と考えてもよく、温度算出装置5をアスファルト混合物温度算出部と考えてもよい。また、算出温度出力装置7を算出温度出力部と考えてもよい。
【0017】
敷き均しアスファルト混合物温度測定装置3は、
図9(a)で示すように、敷き均しされた直後のアスファルト混合物(アスファルト合材)9の温度(アスファルト混合物9の内部の温度)を測定するようになっている。アスファルト混合物9は、アスファルトプラント11(
図3、
図13参照)で生成される。アスファルト混合物9は、搬送装置(ダンプトラック)13(
図2、
図3、
図13参照)で搬送される。アスファルト混合物9は、アスファルトスプレッダー15(
図4、
図13参照)によって路盤上に所定の厚さで層状に敷き均しされる。
【0018】
敷き均しされた直後のアスファルト混合物9の温度は、
図9(a)で示すように、温度測定係員(図示せず)によって温度センサー19の温度検出部21をアスファルト混合物9に差し込むことにより測定される。当然のことではあるが、敷き均しされた直後のアスファルト混合物9の温度は、ダンプトラック13から降ろされるときのアスファルト混合物9の温度よりも僅かに低い温度になっている。
【0019】
温度算出装置5は、敷き均しアスファルト混合物温度測定装置3で測定されたアスファルト混合物9の温度を用いて、時刻の経過に伴って温度が低下する敷き均しされたアスファルト混合物9の温度を所定の計算式を用いて算出する。ここで、温度算出装置5をアスファルト混合物温度算出部と考えてもよい。
【0020】
所定の計算式として、数式f1を掲げる。数式f1は、「T=(To-Te)×e-kt+Te」で表される。数式f1は、アスファルト混合物9からの放射による温度の低下を示す式である。ここで、「T」は、アスファルト混合物9の温度(温度測定係員が測定した時刻から時間「t」が経過したときのアスファルト混合物9の温度)を示している。「To」は、アスファルト混合物9の初期の温度(温度測定係員が測定した敷き均し直後のアスファルト混合物9の温度)を示している。「Te」は気温を示している。「e」はネイピア数である。「k」は定数である。「t」は、上述したように、温度測定係員が測定したときからの経過時間を示している。
【0021】
また、所定の計算式として、放射に加えて、対流、熱伝導よる温度の低下を示す式f2を採用してもよい。数式f2は、「T=(To-Te)×e-kt+Te-Tv」で表される。Tvは補正項である。さらに、温度Tを時間tの関数としてもよい。すなわち、T=f(t)としてもよい。いずれにしても、定数k、補正項Tv、関数fは、たとえば、実験等で予めもとめられたものを使用する。また、定数k、補正項Tv、関数fを、天候等に応じて、適宜変えてもよい。
【0022】
算出温度出力装置7は、温度算出装置5で算出されたアスファルト混合物9の温度を出力する。算出温度出力装置7を算出温度出力部と考えてもよい。また、上記出力は、たとえば、転圧機(転圧ローラ)23、25(
図3、
図5、
図6、
図13参照)のオペレータが持っている転圧ローラ用温度出力装置27、29(
図5、
図6参照)でなされる。
【0023】
また、アスファルト混合物の温度管理システム1には、位置情報入力部31(
図9(a)参照)とアラーム発生装置33(
図5、
図6参照)とが設けられている。位置情報入力部31によって、敷き均しアスファルト混合物温度測定装置3で温度を測定した箇所の位置情報が入力されるようになっている。位置情報入力部31は、たとえば、敷き均しアスファルト混合物温度測定装置3に設けられている。温度測定係員が、温度を測定した箇所の位置情報を入力するようになっている。なお、位置情報入力部31を位置情報入力装置と考えてもよい。
【0024】
そして、算出温度出力装置7(転圧ローラ用温度出力装置27、29)が、温度算出装置5で算出されたアスファルト混合物9の温度と位置情報入力部31で入力された位置情報とを関連づけて出力するようになっている。転圧ローラ用温度出力装置27は、
図5で示されており、転圧ローラ用温度出力装置29は、
図6で示されている。
【0025】
アラーム発生装置(アラーム発生部)33は、たとえば、転圧ローラ用温度出力装置27、29に設けられている。アラーム発生装置33は、アスファルト混合物9の温度の差の値が所定の閾値以下になったときにアラームを発するようになっている。上記所定の閾値としてたとえば10℃を掲げることができる。アスファルト混合物9の温度の差の値とは、温度算出装置5が算出したアスファルト混合物9の温度の値と、一次転圧ローラ25もしくは二次転圧ローラ23による転圧が可能な温度の下限値との差の値である。
【0026】
なお、二次転圧ローラ23は、一次転圧ローラ25によるアスファルト混合物9の一次転圧がされた後に、アスファルト混合物9の二次転圧をするものである。二次転圧ローラ23による転圧が可能な温度(敷き均しされたアスファルト混合物9の温度)の下限値は、一次転圧ローラ25による転圧が可能な温度の下限値よりも低くなっている。
【0027】
アラーム発生装置33が発するアラームには、転圧ローラ23、25による転圧をしなければならない制限時間(
図12(c)参照)が含まれている。制限時間の値は、時刻の経過とともに減少するようになっている。たとえば、アラーム発生時の制限時間が「7分以内」であるとすると、上記制限時間は、たとえば、1秒毎の減少するようになっている。すなわち、1秒が経過する毎に、「7分以内」という表示が、「6分59秒以内」、「6分58秒以内」、「6分5秒以内」・・・というようにして減少するようになっている。
【0028】
また、算出温度出力装置7は、温度算出装置5が算出した敷き均しがされたアスファルト混合物9の温度が転圧に適正な温度になっている出力をするようになっている。すなわち、敷き均しがされた直後のアスファルト混合物9の温度は、転圧には高すぎるので、アスファルト混合物9の温度が転圧に適正な温度になっていることを出力すれば、舗装品質が高まるのである。なお、
図12(b)で示すように、アスファルト混合物9の温度が転圧には高すぎる場合に、この旨が出力されるようになっている。この場合、転圧可能となるまでに要する時間が表示される。この時間も、たとえば、上述した制限時間と同様に、時刻の経過とともに減少するようになっている。
【0029】
敷き均しがされる前のアスファルト混合物9は、アスファルトプラント11で生成され、この生成後にダンプトラック13によって、敷き均しがされる場所まで運搬される(
図2、
図3等参照)。アスファルト混合物の温度管理システム1は、搬送中アスファルト混合物温度測定装置(搬送中アスファルト混合物温度測定部)35(
図1、
図2参照)を備えて構成されている。搬送中アスファルト混合物温度測定装置35は、ダンプトラック13で搬送中のアスファルト混合物9の温度(低下する温度)を測定するようになっている。
【0030】
また、アスファルト混合物の温度管理システム1は、搬送温度出力装置(搬送温度出力部)37を備えて構成されている。搬送温度出力装置37として、たとえば、工事管理者39(
図2、
図13参照)が携帯している管理者温度出力装置を掲げることができる。工事管理者39は、敷き均しされたアスファルト混合物9の舗装工事の工事責任者である。搬送温度出力装置37は、たとえば、工事管理者39に知らせるために、搬送中アスファルト混合物温度測定装置35が測定したアスファルト混合物9の温度を出力するようになっている。
【0031】
ここで、アスファルト混合物の温度管理システム1について例を掲げてさらに詳しく説明する。アスファルト混合物の温度管理システム1における情報のやり取り等は、
図2、
図13で示すように、クラウドコンピューティング(クラウド)41によってなされる。
【0032】
温度算出装置5でのアスファル混合物9の温度の算出は、クラウドサービスによってされるようになっている。算出温度出力装置7等の装置として、クラウドコンピューティング41によって、通信可能なタブレット(携帯型タブレット;タブレット端末)43(43A、43B、43C、43D、43E)を掲げることができる。上記通信は、たとえば、インターネット等の通信ネットワークと無線LANによってされる。
【0033】
タブレット43Aは、
図3、
図13で示すように工事管理者39が携帯しているタブレットである。タブレット43B(
図9(a)参照)は、温度測定係員が携帯しているタブレットである。タブレット43Cは、
図5、
図13で示すように、二次転圧ローラ23のオペレータが携帯しているタブレットである。タブレット43Dは、
図3、
図6で示すように、一次転圧ローラ25のオペレータが携帯しているタブレットである。タブレット43Eは、
図3で示すように、アスファルトプラント11の管理者が携帯しているタブレットである。
【0034】
なお、図示していないが、その他のタブレット43として、ダンプトラック13の運転者が携帯しているタブレットを掲げることができる。また、二次転圧ローラ23や一次転圧ローラ25には、別途GPSが取り付けられており、このGPSで取得した位置情報は、アスファルト混合物の温度管理システム1と連動するようになっている。
【0035】
タブレット43C、43Dが、転圧ローラ用温度出力装置27、29として使用されている。たとえば、タブレット43Bが位置情報入力部31として使用されている。また、たとえば、タブレット43C、43Dが、アラーム発生装置33として使用されている。さらに、たとえば、タブレット43Aが、搬送温度出力装置37として使用されている。
【0036】
アスファルト混合物の温度管理システム1での、アスファルト混合物9の運搬開始から敷き均しする場所への到着まで温度管理を合材運搬温度管理システムとする。合材運搬温度管理システムでは、
図2で示すように、アスファルト混合物9の出荷時に温度計(搬送中アスファルト混合物温度測定装置)35を設置することで出荷直後~運搬時~現場到着までのアスファルト混合物9の温度を取得している。また、温度計にはGPS装置が付いており、ダンプトラック13の位置情報が確認できる。
【0037】
図7、
図8は、タブレット43とタブレット43の表示画面を示しており、
図7(a)は、初期画面を示しており、
図7(b)は、アスファルト混合物9を搬送しているダンプトラック13の位置を示している。アスファルト混合物9の温度はクラウド41で管理され、たとえば、工事管理者39のタブレット43Aにて、ダンプトラック13の1台毎の温度の経時変化を随時確認できる(
図8(a)参照)。アスファルト混合物9の温度の経時変化はタブレット43により誰でも(アスファルトプラント11やその他の者でも)確認できるようになっている。
【0038】
搬送中アスファルト混合物温度測定装置35は、
図1で示すように、本体部45と温度検出部47とを備えて構成されている。本体部45には、無線通信部と、たとえばマグネットで構成されている荷台設置部とが設けられている。そして、
図2で示すように、本体部45がダンプトラック13の荷台に設置され、温度検出部47が、ダンプトラック13の荷台に積まれたアスファルト混合物9に差し込まれ、アスファルト混合物9の温度が逐次測定されるようになっている。
【0039】
また、アスファルト混合物の温度管理システム1では、従来使用していた黒板の代わりにタブレット43を持って、アスファルト混合物9の到着温度等の写真を撮ることも可能である。この写真は、たとえば、タブレット43の画面のスクリーンショットを撮ることでされる。アスファルト混合物9の到着温度等の表示は、
図8(b)で示すようになっている。なお、
図8(b)で示す登録車両等の情報は事前に入力されたものである。
【0040】
図9(a)で示すように、敷き均しアスファルト混合物温度測定装置3は、温度測定係員が携帯しているタブレット43Bに取り付けできる専用の温度計(温度センサー)19を備えて構成されている。温度センサー19が取り付けられたタブレット43Bを、温度データ送信機能付きタブレット型温度計と呼んでもよい。
【0041】
温度測定係員は、タブレット43Bを用いて測点を入力後(温度測定した位置を入力後)、温度データ送信機能付きタブレット型温度計で敷均したアスファルト混合物9の温度を測定する。この測定した温度は、工事管理者39が携帯しているタブレット43A、転圧ローラ23、25が携帯しているタブレット43C、43D等に転送されるようになっている。
【0042】
ここで、アスファルト混合物9が敷設される道路について
図10を参照しつつ説明する。
図10は、アスファルト混合物9が敷設される道路の平面図であり、
図10の紙面の上下方向が道路の長手方向になっており、
図10の紙面の左右方向が道路の幅方向になっている。
図10で示す「No1」、「No2」等の表示は、温度の測点(より精確には測定箇所の近傍)を示している。温度測定係員は、アスファルト混合物9の測点として、たとえば、「No1」を、タブレット43Bを用いて入力するようになっている。測点は、たとえば、緯度、経度、道路の測点等の情報と予め関連付けられている。
【0043】
図10において、1台目のダンプトラック13が運んできたアスファルト混合物9は、「No1」の表示箇所と「No2」の表示箇所との間に敷設される。2台目のダンプトラック13が運んできたアスファルト混合物9は、「No2」の表示箇所と「No3」の表示箇所との間に敷設される。
【0044】
図9(b)で示す均し温度確認画面で、アスファルト混合物9が適正な温度であることを温度測定係員が確認し、敷き均しアスファルト混合物温度測定装置3(温度センサー19)に取付けられている所定のボタンまたは画面の「はい」を押す。なお、敷き均し直後のアスファルト混合物9の温度情報等は、
図8(b)で示す場合と同様に、写真で残される。温度情報等は、アスファルト混合物9の温度、測点、ダンプトラック13に関する情報等で構成されている。
【0045】
図5で示すように、二次転圧ローラ23にはタブレット43Cが設置される。また、
図6で示すように、一次転圧ローラ25にはタブレット43Dが設置される。
【0046】
図11、
図12は、タブレット43の表示画面を示している。
図11(a)は、アスファルト混合物9の適正温度等を示している。このような表示をする理由は、アスファルト混合物9の種類によって適正温度が異なるからである。
図11(a)で示す情報は予め登録されている。
【0047】
実績に基づいた温度予測式(式f1等)からアスファルト混合物9の温度の経時変化が計算され、この計算結果と
図11(a)で示した情報等に基づいて、二次転圧ローラ23、一次転圧ローラ25のタブレット43C、43Dに転圧可能範囲が示される。
【0048】
図11(b)では、二次転圧ローラ23よる転圧可能範囲が単に示されており、
図11(c)では、一次転圧ローラ25よる転圧可能範囲が単に示されている。
図12(a)では、アスファルト混合物9の温度とともに二次転圧ローラ23もしくは一次転圧ローラ25による転圧可能範囲が示されている。さらに、
図12(a)では、転圧ローラ23、25での転圧範囲が色分けして示されている。
図12(a)で示す矩形状のエリア49は、たとえば青色で示されており、エリア51は、たとえば緑色で示されており、エリア53は、たとえば、赤色で示されている。
図12(a)で示す斜線部55は、エリア51とエリア53とをしっかりと肉眼で見やすいように仕切る部位である。これにより、転圧禁止エリア53を転圧ローラ23、25のオペレータがしっかりと認識することができる。
【0049】
エリア53がタップされると、
図12(b)で示すような警告が現れる。この警告は、音声によっても、転圧ローラ23、25のオペレータに通知されるようになっている。エリア49がタップされると、
図12(c)で示すような警告が現れる。この警告は、音声によっても、転圧ローラ23、25のオペレータに通知されるようになっている。エリア51がタップされると、タブレット43により、転圧可能な温度に達した旨の表示がされ、音声でも転圧ローラ23、25のオペレータに通知されるようになっている。
【0050】
また、上述したアスファルト混合物9の温度等に関する情報は、クラウドサービス41によって、帳票形式で管理されるようになっている。帳票形式で管理されている情報も、タブレット43で表示することができる。また、転圧ローラ23、25には放射温度計57(
図13参照)を設置し、アスファルト混合物9の転圧時の表面温度を計測できるようにしてもよい。放射温度計57で測定したアスファルト混合物9の表面温度を、クラウドサービス41で記録しタブレット43で見ることができるようにしてもよい。
【0051】
ここで、アスファルト混合物の温度管理システム1の動作の概要を簡単に説明する。アスファルト混合物の温度管理システム1では、敷き均しされたアスファルト混合物9の温度を測定する。続いて、上記測定したアスファルト混合物の温度を用いて、時刻の経過に伴って温度が低下する敷き均しされたアスファルト混合物の温度を算出する。続いて、上上記算出された前記アスファルト混合物の温度を出力する。
【0052】
アスファルト混合物の温度管理システム1は、敷き均しアスファルト混合物温度測定装置3と時刻の経過に伴って温度が低下する敷き均しされたアスファルト混合物9の温度を算出する温度算出装置5と算出温度出力装置7とを備えて構成されている。これにより、転圧をするときにおけるアスファルト混合物9の温度を実際に測定することなく予測することができる。
【0053】
また、アスファルト混合物9はこの温度管理が重要である。アスファルト混合物の温度管理システム1により、アスファルト混合物9の運搬時の温度から転圧時の温度までを工事管理者39等のタブレット43に自動的データ転送させる。そして、アスファルト混合物9の温度を一元的に管理できるようになっている。
【0054】
また、従来、通常、温度測定者の合図がないとアスファルト混合物9の転圧ができなかった。また、温度管理者不在の場合は経験と勘で転圧していた。しかし、アスファルト混合物の温度管理システム1を用いることで、温度測定者が不要となるとともに適切な温度で転圧可能とともに省人化が図れる。また、タブレット43で管理することにより、工事管理者39等が一元的にアスファルト混合物9の温度を確認できる。また、確認した温度は帳票化が可能となり、データ作成の省力化が図れる。
【0055】
また、アスファルト混合物の温度管理システム1では、温度算出装置5で算出されたアスファルト混合物9の温度と位置情報入力部31で入力された位置情報とを関連づけて算出温度出力装置7で出力するようになっている。これにより、温度管理の対象であるアスファルト混合物9がいずれの場所で敷き均らされているかを容易に知ることができる。
【0056】
また、アスファルト混合物の温度管理システム1では、アラーム発生装置33が、温度算出装置5が算出した温度の値と、転圧ローラ23、25による転圧が可能な温度の下限値との差の値が所定の閾値以下になったときにアラームを発するように構成されている。また、アラームには、転圧ローラ23、25による転圧をしなければならない制限時間が含まれている。
【0057】
これにより、転圧ローラ23、25のオペレータが忘れることなく、慌てることなく、また、計画的に敷き均されたアスファルト混合物9の転圧をすることができる。
【0058】
また、アスファルト混合物の温度管理システム1では、算出温度出力装置7が、温度算出装置5が算出した敷き均しがされたアスファルト混合物9の温度が適正な温度になっていることを出力するようになっている。これにより、敷き均されたアスファルト混合物9の転圧を、温度が高すぎる等の状態でなく、適正な温度下ですることができ、アスファルト舗装の品質を良くすることができる。
【0059】
また、アスファルト混合物の温度管理システム1では、搬送温度出力装置37で、搬送中アスファルト混合物温度測定装置35が測定したアスファルト混合物9の温度を出力する。これにより、搬送温度出力装置37を携帯している工事管理者39が、アスファルト舗装における全体の流れを把握することができ、アスファルト舗装の工事関係者に適切な指示を出すことができる。
【0060】
ここで、上述した内容を方法の発明として把握してもよい。すなわち、敷き均しされたアスファルト混合物の温度を測定する敷き均しアスファルト混合物温度測定段階と、前記敷き均しアスファルト混合物温度測定段階で測定されたアスファルト混合物の温度を用いて、時刻の経過に伴って温度が低下する前記敷き均しされたアスファルト混合物の温度を算出する温度算出段階と、前記温度算出段階で算出された前記アスファルト混合物の温度を出力する算出温度出力段階とを有するアスファルト混合物の温度管理方法として把握してもよい。
【0061】
また、上記アスファルト混合物の温度管理方法において、前記敷き均しアスファルト混合物温度測定段階で温度を測定した箇所の位置情報を入力する位置情報入力段階を備え、前記算出温度出力段階が、前記温度算出段階で算出された前記アスファルト混合物の温度と前記位置情報入力段階で入力された位置情報とを関連づけて出力してもよい。
【0062】
また、上記アスファルト混合物の温度管理方法において、前記温度算出段階で算出した温度の値と、前記転圧ローラによる転圧が可能な温度の下限値との差の値が所定の閾値以下になったときに、アラームを発するアラーム発生段階を有し、前記アラームには、前記転圧ローラによる転圧をしなければならない制限時間が含まれているようにしてもよい。
【0063】
また、上記アスファルト混合物の温度管理方法において、前記算出温度出力段階で、前記温度算出段階で算出した前記敷き均しがされたアスファルト混合物の温度が適正な温度になっていることを出力してもよい。
【0064】
また、上記アスファルト混合物の温度管理方法において、前記敷き均しがされる前のアスファルト混合物は、アスファルトプラントで生成され、この生成後に搬送装置によって、前記敷き均しがされる場所まで運搬されるものであり、前記搬送装置で搬送中の前記アスファルト混合物の温度を測定する搬送中アスファルト混合物温度測定段階と、前記搬送中アスファルト混合物温度測定段階で測定したアスファルト混合物の温度を出力する搬送温度出力段階とを有することとしてもよい。
【0065】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 アスファルト混合物の温度管理システム
3 アスファルト混合物温度測定装置
5 温度算出装置
7 算出温度出力装置
9 アスファルト混合物
11 アスファルトプラント
13 搬送装置(ダンプトラック)
23 二次転圧ローラ
25 一次転圧ローラ
31 位置情報入力部
33 アラーム発生装置
35 搬送中アスファルト混合物温度測定装置
37 搬送温度出力装置