(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068339
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】車両用看板組立システム、車両用看板キット
(51)【国際特許分類】
G09F 21/04 20060101AFI20240513BHJP
G09F 25/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
G09F21/04 G
G09F21/04 E
G09F25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178699
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】522437359
【氏名又は名称】株式会社プットアップ・スタイル
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】大工原 秀則
(72)【発明者】
【氏名】鳥嶋 浩延
(57)【要約】
【課題】車両の屋根部分に対する大掛かりで煩雑な取付作業を要することなく、比較的簡単な作業で取付可能な車両用看板組立システム(組立キット)を提供する。
【解決手段】車両Cの屋根部分Rに取り付けられる看板組立システムSであり、看板本体1と、看板本体1を保持する保持フレーム2と、保持フレーム2に設けられ且つ保持フレーム2よりも下方に突出する取付部3と、取付部3の下端部に取り付けられ且つ屋根部分Rに磁力で張り付くベースプレート4とを備え、看板本体1、保持フレーム2、取付部3及びベースプレート4を1ユニットUとし、複数のユニットUを相互に組み立てた複数ユニット組立状態Yで各ユニットUにおけるベースプレート4の磁力によって屋根部分Rに設置可能に構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根部分に取り付けられる看板の組立システムであり、
看板本体と、
前記看板本体を保持する保持フレームと、
前記保持フレームに設けられ且つ前記保持フレームよりも下方に突出する取付部と、
前記取付部の下端部に取り付けられ且つ前記屋根部分に磁力で張り付くベースプレートとを備え、
前記看板本体、前記保持フレーム、前記取付部及び前記ベースプレートを1ユニットとし、複数の前記ユニットを相互に組み立てた状態で前記各ユニットにおける前記ベースプレートの磁力によって前記屋根部分に設置可能に構成していることを特徴とする車両用看板組立システム。
【請求項2】
前記取付部が高さ調整可能なアジャスタ機構部を有するものである請求項1に記載の車両用看板組立システム。
【請求項3】
前記ベースプレートがゴム磁石と磁性を有する金属板とを層状に重ねたものである請求項1に記載の車両用看板組立システム。
【請求項4】
前記各保持フレームが、前記看板本体の周囲に配置されるバー部分と、前記看板本体の角部に配置される継手部分とにより組立分解可能な構成であり、組み立てた状態の前記保持フレームに対して前記看板本体を着脱可能としている請求項1に記載の車両用看板組立システム。
【請求項5】
相互に組み立てた状態にある複数の前記ユニットを前記屋根部分側に引き込む形態で車内を通過する脱落防止ベルトを備えている請求項1に記載の車両用看板組立システム。
【請求項6】
前記看板本体が網目状の空気孔を有するメッシュ構造の部材で構成されたものである請求項1に記載の車両用看板組立システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の車両用看板組立システムと、前記屋根部分に磁力によって着脱可能に取り付けられるスピーカと、車内に設置されて前記スピーカに接続されるアンプと、前記アンプに接続されるマイクとを備えていることを特徴とする車両用看板キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の屋根上に設置される看板に関するものであり、具体的には、車両用看板組立システム、及びそのシステムを用いた車両用看板キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
選挙期間中は、候補者の名前と所属する党等を明記した看板を車両の屋根部分に取り付けたいわゆる選挙カーが街中を走行している。選挙カーのように広告となる看板を屋根上に取り付けた車両が走行することで看板の文字や図案を街行く人々に印象付けることができる。
【0003】
このような看板を車両の屋根部分に取り付ける態様としては、先ず専用のキャリア(台板)を車両の屋根部分に固定し、このキャリアに看板を支持する概略箱状のフレーム構造体を取り付け、フレーム構造体に形成される看板収容溝に、板材に印刷済みの塩化ビニル樹脂製シールを貼付した看板の両縁を差し込む態様(例えば下記特許文献1)や、軽量化を図るべくターポリン製の布看板を採用して、前後左右の四面において布看板を括り付けた状態で保持する矩形状フレームを平面視矩形状(環状)に相互に組み付け、その組み付けたフレーム構造体を屋根上の専用キャリアに取り付ける態様が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記2つの態様を含む周知の車両用広告看板は、屋根部分(ルーフパネル)に専用のキャリア(台板)を固定する必要があり、屋根部分の平面サイズや形状(丸みの程度等)が異なればキャリアのサイズや形状もそれに応じたものを用意しなければならず、このようなことが車両広告看板のコスト増につながっている。特に選挙カーは、選挙候補者自身の所有物として保有しているものではなく、レンタカーとして貸し出される車両に車両用広告看板が取り付けられる大掛かりな施工を経て使用されるケースがほとんどであり、選挙期間という比較的短い期間のレンタルでありながら候補者にとっては大きな費用負担を強いられているのが実状である。加えて、レンタル期間終了後はレンタル元に返却し、次の選挙期間でまたレンタルするという利用サイクルであるため、利用者(候補者)にとっては前回と同等の取付作業費を含むコストの支払いが発生することになる。
【0006】
このようなコスト面を含む選挙カー利用時の問題の主たる要因として、屋根部分に固定する作業自体が簡単な作業ではなく、この煩雑な作業に係る負担がコスト面にも反映されているという点が挙げられる。
【0007】
本発明の主たる目的は、このような問題の解消を図るべく、車両の屋根部分に対する大掛かりで煩雑な取付作業を要することなく、利用者側でも比較的簡単な作業で取付可能な車両用看板組立システム(組立キット)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、車両の屋根部分に取り付けられる看板の組立システムに関するものであり、看板本体と、看板本体を保持する保持フレームと、保持フレームに設けられ且つ保持フレームよりも下方に突出する取付部と、取付部の下端部に取り付けられ且つ屋根部分に磁力で張り付くベースプレートとを備え、少なくとも保持フレーム、取付部及びベースプレートを1ユニットとし、複数のユニットを相互に組み立てた状態で各ユニットにおけるベースプレートの磁力によって車両の屋根部分に設置可能に構成していることを特徴としている。
【0009】
このような本発明に係る看板組立システムであれば、保持フレーム、取付部及びベースプレートを1ユニットとして、複数のユニットを相互に組み立てた状態(複数ユニット組立状態)で各ユニットにおけるベースプレートの磁力によって車両の屋根部分に設置可能に構成しているため、作業者は複数ユニット組立状態のまま車両の屋根部分に載せ置くことで、各ユニットのベースプレートが屋根部分に磁力で吸着して張り付き、良好な取付状態を維持することができる。したがって、従来のようなキャリア(台板)を車両の屋根部分に工具を用いて固定する作業が不要であり、複数のユニットを相互に組み立てた複数ユニット組立状態のまま屋根部分に載せ置くという簡単な作業で済むため、取付作業をスムーズ且つ簡易に行うことができ、この作業に要する手間及び費用の負担軽減化を図ることができる。特に、本発明に係る看板組立システムであれば、利用者自身によって車両の屋根部分への取付作業を比較的簡単に行うことができるため、例えば自家用車を選挙カーとして使用することも可能になり、選挙の度に選挙カーをレンタルするというこれまでの慣習に従うことなく、利用者が一度所有すれば選挙のように期間を隔てて利用する機会の度に繰り返し利用することができ、選挙の度に選挙カーに関するレンタル費用の支払いが発生する事態も回避することが期待できる。
【0010】
本発明において、取付部が高さ調整可能なアジャスタ機構部を有するものであれば、車種ごとに異なる屋根部分の形状に応じて取付部の高さ調整をすることによって、各ユニットのベースプレート全体が屋根部分に磁力で張り付いた良好な取付状態にすることができる。
【0011】
また、本発明におけるベースパネルとして、ゴム磁石を相対的に下側に配置し、鉄板(磁性を有する金属板)を相対的に上側に配置して相互に貼り合わせた層状のパネルを適用すれば、鉄板である屋根部分とベースパネルの鉄板とでゴム磁石を挟んだ形態になり、磁力の向上と補強の両立を図ることが可能である。
【0012】
加えて、本発明における各保持フレームが、看板本体の周囲に配置されるバー部分と、看板本体の角部に配置される継手部分とにより組立分解可能な構成であり、組み立てた状態の保持フレームに対して看板本体を着脱可能とすれば、同じ保持フレームに対して装着する看板本体自体を交換したり、あるいは保持フレームのバー部分または継手部分の交換・補修を個別に行うことができ、好適である。また、保持フレームと看板本体とを別々にした状態や、保持フレーム自体を部分ごと(バー部分と継手部分)に分解した状態で提供された場合にも、利用者側で容易に組み立てることができ、提供時の梱包サイズを抑制することを優先したい要求に応えることができる。また、本発明の車両用看板組立システムを使用しない期間は、保持フレームと看板本体とを別々にした状態や、保持フレーム自体を部分ごと(バー部分と継手部分)に分解した状態にしておくことで、保管スペースの省スペース化を図ることができる。
【0013】
さらに、本発明に係る車両用看板組立システムが、相互に組み立てた状態に複数のユニットを屋根部分側に引き込む形態で車内を通過する脱落防止ベルトを備えたものであれば、ベースプレートが屋根部分から不意に脱落する事態を防止・抑制することができる。
【0014】
本発明における看板本体には、板状のタイプも生地タイプも含まれるが、風通りを良くして車両走行時の風の抵抗を低減させるには、網目状の空気孔を有するメッシュ構造の部材(素材)で構成された看板本体がよい。この場合、車両の屋根部分にスピーカを設置すれば、メッシュ構造の看板本体を通して音声を看板外へ届けることができる。
【0015】
また、本発明に係る車両用看板キットは、上述の車両用看板組立システムと、屋根部分に磁力によって着脱可能に取り付けられるスピーカと、車内に設置されてスピーカに接続されるアンプと、アンプに接続されるマイクとを備えていることを特徴とする。
【0016】
このような本発明に係る車両用看板キットであれば、上述の作用効果を奏する車両用看板組立システムの取付作業とともに、スピーカ、アンプ及びマイクの取付・配線作業も利用者自身で行うことが可能になり、利用者にとって便利なキットとして有効活用できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ベースプレートの磁力によって車両の屋根部分に取り付けることができ、屋根部分に対する大掛かりで煩雑な取付作業を要することなく、比較的簡単な作業で取付可能な車両用看板組立システム及び車両用看板組立キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用看板組立システム及び看板キットを適用した車両を示す図。
【
図2】同実施形態に係る看板キットの内容を示す図。
【
図5】同実施形態における複数ユニット組立状態及びユニット同士の連結構造を示す図。
【
図6】同実施形態におけるベースプレート吸着処理を示す図。
【
図7】同実施形態における脱落防止ベルトを装着した車両を示す図。
【
図8】同実施形態における係る車両用看板組立システム及びスピーカの取付状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態に係る車両用看板組立システムSは、
図1に示すように、車両Cの屋根部分Rに取り付けられるものである。また、
図2に示すように、この看板組立システムSと、スピーカ7等の音響設備に関する機器・パーツとからなる車両看板キットKを例にして以下に説明する。
【0021】
本実施形態に係る車両用看板組立システムSは、
図3に示すように、看板本体1と、看板本体1を保持する保持フレーム2と、保持フレーム2に設けられ且つ保持フレーム2よりも下方に突出する取付部3と、取付部3の下端部に取り付けられ且つ屋根部分Rに磁力で張り付くベースプレート4とを備えたものである。本実施形態に係る車両用看板組立システムSは、これら看板本体1、保持フレーム2、取付部3及びベースプレート4を1ユニットUとし、複数のユニットUを相互に組み立てた状態(複数ユニット組立状態Y、
図1参照)で各ユニットUにおけるベースプレート4の磁力によって屋根部分Rに設置することができる。
【0022】
ここで
図1(a)は、車両用看板組立システムSを含む車両看板キットKを実際に取り付けた車両C(選挙カー)を斜め前方から見た全体図であり、同図(b)は斜め後方から見た全体図であり。本実施形態では、看板本体1の広告表示面が車両Cの前方を向く姿勢で配置される前方ユニットU1(
図2(a)参照)と、看板本体1の広告表示面が車両Cの後方を向く姿勢で配置される後方ユニットU2(同図(b)参照)と、看板本体1の広告表示面が車両Cの左右それぞれの方向を向く姿勢で配置される側方ユニットU3とを矩形状に組み立てた状態(複数ユニット組立状態Y)で車両Cの屋根部分Rに設置している。
【0023】
看板本体1は、矩形状をなし、文字や写真等が表示されているものである。本実施形態では、前方ユニットU1及び後方ユニットU2の看板本体1として、網目状の空気孔を有するメッシュ構造の部材(素材)で構成された看板本体1を適用している。具体的には、例えばメッシュターポリン製の幕に適宜の印刷処理を施した看板本体1を適用している。なお、側方ユニットU3の看板本体3は、ターポリン製の幕に適宜の印刷処理を施したものである。
【0024】
保持フレーム2は、
図3に示すように、看板本体1の周囲に配置されるバー部分21と、看板本体1の角部に配置される継手部分22とにより組立分解可能な構成である。バー部分21は、何れも同一径である円筒状の2本の横バー21a及び2本の縦バー21bからなる部分であり、継手部分22は、横バー21aと縦バー21bの接続箇所に配置される筒状L字形の継手22aからなる部分である。各バー(横バー21a、縦バー21b)及びL字形継手22aは何れもいわゆる塩ビ管と同等品またはそれに準じた汎用品で構成することができる。
【0025】
本実施形態では、全体として矩形状に組み立てた状態の保持フレーム2に対して看板本体1を着脱可能としている。看板本体1の四隅には補強シールを貼り付けて、その部分にハトメ12を取り付けておき、ハトメ12に通した結束バンド13を継手部分22にも通して留めることで看板本体1を保持フレーム2に取り付けることができる。また、留めている結束バンド13を鋏等で切断することで看板本体1を保持フレーム2から取り外すことができる。
【0026】
取付部3は、
図4に示すように、保持フレーム2のうちバー部分21を挟み込んだ状態で支持する円筒状のバー支持部31と、バー支持部31から下方に延出する円筒状の取付本体部32と、取付本体部32に入れ子状に出し入れ可能に挿入されている昇降部33とを備え、昇降部33の下端部をベースプレート4にボルト34(ベースプレート固定用ボルト34)で固定して取り付けたものである。なお、
図4(a)は取付部3の全体図であり、同図(b)は取付部3のうち後述するジョイントパーツ3Jを取り外した状態を示す図であり、同図(c)は取付部3の分解図である。昇降部33の軸心部には高さ方向に貫通する孔が形成され、この貫通孔にボルト34を挿通している(同図(b)参照)。後述ベースプレート4の固定孔41側から貫通孔に挿通したボルト34を、昇降部33の上端に配置したナット35に螺合することで、取付部3の下端部にベースプレート4を取り付けている。
【0027】
本実施形態では、取付部3のバー支持部31及び取付本体部32を、バー部分21を挟み込むことが可能な2つの分割パーツ3Jaからなるジョイントパーツ3Jによって構成している。ジョイントパーツ3Jは、いわゆる塩ビ管をT字状にジョイントすることが可能な汎用品であり、2つの分割パーツ3Jaを接合した状態でこれら分割パーツ3Jに挿し通したボルト3bによって、バー部分21に対する締め付け強度を調整することができる。本実施形態の取付部3は、バー部分21に対する締め付け強度を調整するボルト3bによって、取付本体部32の内部に収容している昇降部33に対する締め付け強度も調整可能であり、ボルト3bを緩めると昇降部33を取付本体部32に対して昇降させることができる。そして、昇降部33を取付本体部32に対して昇降させることで、取付部3全体の高さを調整することができ、高さを調整し終えた時点でボルト3bを締め付けることでその高さを維持することができる。このように、本実施形態における取付部3は、高さ調整可能なアジャスタ機構部3Aを有するものである。このような取付部3をバー部分21のうち下側の横バー21aに取り付けている(
図3参照)。具体的には、下側の横バー21aのうち一方の端部から中央部までの中間位置と、他方の端部から中央部までの中間位置にそれぞれ取付部3を取り付けている。
【0028】
ベースプレート4は、保持フレーム2の長手寸法よりも若干短い寸法に設定された長尺の帯状をなし、適宜の箇所に取付部3を固定するための固定孔41(
図4(c)参照)を有するものである。固定孔41の周囲には、ベースプレート固定用ボルト34のねじ頭を収容可能な座刳りが形成されている。本実施形態では、ベースプレート4のうち車両Cの屋根部分Rに直に接触する面をゴム磁石42で構成し、このゴム磁石42の上面に磁性を有する金属板43(鉄板)を層状に貼り合わせている。つまり、本実施形態では、高い磁性を有するゴム磁石42(例えば異方性ゴム磁石)と、高い剛性及び磁性を有する鉄板43の二層状をなすベースプレート4を適用している。ベースプレート4は、宙にぶら下がっている状態では、鉄板43の剛性により一定の形状に保たれるものの、自重やゴム磁石42の弾性により全体的または部分的に撓んだ形状になる。
【0029】
本実施形態に係る車両用看板組立システムSは、このような看板本体1、保持フレーム2、取付部3及びベースプレート4を1つのユニットUとし、前方ユニットU1及び後方ユニットU2を相互に同一サイズのものとし、2つの側方ユニットU3同士も相互に同一サイズのものである。
図3に示すように、側方ユニットU3の長手方向の寸法は、前方ユニットU1及び後方ユニットU2の長手寸法よりも大きく設定されている。そして、
図5(a)に示すように、前方ユニットU1と後方ユニットU2の左右両端部同士をそれぞれ繋ぐライン上に側方ユニットU3を配置し、隣り合うユニットUのバー部分21(具体的には隣り合う縦バー21b)同士を適宜の連結具5によって連結することで、複数ユニット組立状態Yの形態を維持することができる。なお、
図5(a)は、片方の側方ユニットU3のみを前方ユニットU1と後方ユニットU2の端部同士を繋ぐライン上に配置して連結具5で連結した組立状態を示す図である。本実施形態では、連結具5として、
図5(b),(c)に示すように、いわゆる塩ビ管を2列状にジョイントすることが可能なジョイントパーツ5Jを適用している。ジョイントパーツ5Jは、バー部分21を挟み込むことが可能な2つの分割パーツ5jaからなり、これら2つの分割パーツ3Jを接合した状態でボルト5bによりバー部分21に対する締め付け強度を調整することができる。ボルト5bを締め付ける処理は、ボルト5bの頭部に形成されている六角形状の穴に六角棒レンチWを差し込んで適宜の方向に回す処理で簡単に行うことができる。このような連結具5を隣り合うユニットUのバー部分21の高さ方向における任意の複数箇所(例えば2箇所)に設けることで、隣り合うユニットU同士を強固に連結することができる。
【0030】
次に、このような本実施形態に係る看板組立システムSを車両Cの屋根部分Rに取り付ける処理手順について説明する。
【0031】
看板組立システムSを提供する側において、看板組立システムSを利用者の手元に届けるまでの時点で、予め1つの前方ユニットU1、1つの後方ユニットU2、2つの側方ユニットU3をそれぞれユニット化した状態にしておく。すなわち、保持フレーム2に看板本体1を取り付けて、取付部3によってベースプレート4も保持フレーム2に取り付けておく。
図2に示すように、相対的に長手寸法の短い2つのユニットUが前方ユニットU1、後方ユニットU2であり、相対的に長手寸法の長い2つのユニットUが側方ユニットU3である。
【0032】
利用者は、手元に届いた前方ユニットU1、後方ユニットU2及び側方ユニットU3を枠状に配置して、隣り合うユニットU同士を連結具5で連結すると、四角筒状の形態をなす複数ユニット組立状態Yにすることができる。この組立作業時は、
図5(a)に示すように、地面や床などに敷いた例えばダンボール等の敷物Dの上で、ベースプレート4が上側で保持フレーム2が下側となる姿勢(看板本体1の表示内容が天地逆となる姿勢)で行うことが好ましい。
【0033】
次いで、複数ユニット組立状態Yのまま前後左右の向きが正しい向きとなる姿勢で車両Cの屋根部分Rの上方まで複数人により持ち上げる。この持ち上げ処理を行う時点では、ベースプレート4が下側になり、保持フレーム2が上側となる姿勢(看板本体1の表示内容が天地逆ではない正常姿勢)にしておく。引き続いて、複数ユニット組立状態Yにある看板組立システムS全体を車両Cの屋根部分Rに載置できるように位置調整をして、そのままユニットUベースプレート4が屋根部分Rに接触する位置まで下方に移動させる(降ろす)と、各ユニットUのベースプレート4が磁力によって屋根部分Rに張り付き、ある程度以上の大きな力が作用しない限り屋根部分Rから離脱しない仮置きセット状態にすることができる。なお、ベースプレート4のうち車両Cの屋根部分Rに接触する面に保護材を塗布または貼付しておくことで、屋根部分Rへ不要なダメージを与えてしまう事態を回避・低減することができる。
【0034】
本出願人が検証した結果、複数ユニット組立状態Yのまま屋根部分Rの上方まで持ち上げる作業から仮置きセット状態にするまでの作業は、左右の側方ユニットU3をそれぞれ1名または2名が持って行うことができ、車高によっては脚立等の踏み台を用いて行うことでスムーズに作業が進むことがわかった。また、側方ユニットU3に加えて後方ユニットU2も1名が持って作業を行うと、より一層スムーズに作業を進めることができる。なお、前方ユニットU1についても1名が持って作業をすることは可能であるが、車両Cのフロント部分が邪魔となり、却って作業効率が悪くなる。
【0035】
仮置きセット状態では、
図6(a)に示すように、ベースプレート4のうち取付部3の取付箇所及び取付箇所周辺領域が屋根部分Rの形状(カーブ)に沿わずに宙に浮いている(ベースプレート部分的離反状態)。そこで、取付部3のアジャスタ機構部3Aを操作してベースプレート部分的離反状態を解消する。具体的には、
図6(b)に示すように、本実施形態の取付部3に付帯のボルト3bの強固な締付状態を一旦緩める。すると、同図(c)に示すように、取付本体部32に収容されている昇降部33が自重及びベースプレート4の磁力によって、屋根部分Rに接触する方向に降下する。その結果、ベースプレート4のうち屋根部分Rから離れていた領域が屋根部分Rの形状(カーブ)に沿うように多少の変形を伴いながら屋根部分Rに吸着(接触)して、ベースプレート部分的離反状態が解消される。最後にボルト3bを締め付け直すことで昇降部33の高さ位置(取付本体部32に対する昇降部33の下方への突飛び出し量)を固定することができ、取付部3の高さ調整処理、換言すればベースプレート吸着調整処理を完了することができる(同図(d)参照)。ボルト3bを締め付けたり、緩める処理は、ボルト3bの頭部に形成されている六角形状の穴に六角棒レンチWを差し込んで適宜の方向に回す処理で簡単に行うことができる。この六角棒レンチWは連結具5でユニットU同士を連結する処理に用いるものと同じものである。
【0036】
以上の作業を経ることで、複数ユニット組立状態Yの看板を車両Cの屋根部分Rに取り付けることができ、この取付状態においては、各ユニットUのベースプレート4がそれぞれ下向き面全体を屋根部分Rに接触した状態で磁力により張り付いている(吸着している)ため、仮置きセット状態よりも強力な磁力が作用し、不意な力を受けても屋根部分Rに対する取付位置が変わらない強固で良好な取付状態を維持することができる。
【0037】
また、本実施形態に係る看板組立システムSは、
図7に示すように、複数ユニット組立状態Yの看板を屋根部分R側に引き込む姿勢で車内を通過する脱落防止ベルト6を備えている。この脱落防止ベルト6を左右の側方ユニットU3の適宜箇所(例えば下側の横バー21a)に引っ掛けて屋根部分R側に引き込むようにして車内で留めることによって、看板組立システムSが車両Cの屋根部分Rから脱落する事態を防止することができる。
図7(a)は、脱落防止ベルト6を装着した車両を斜め後方から見た図であり、同図(b)は、脱落防止ベルト6を装着した車両の車内の様子を示す図である。この脱落防止ベルト6を留める作業は、全ての取付部3の高さ調整処理を完了した後に行う。
【0038】
本実施形態に係る車両看板キットKは、
図2に示すように、看板組立システムSの他に、屋根部分Rに磁力によって着脱可能に取り付けられるスピーカ7と、車内に設置されてスピーカ7に接続されるアンプ88と、アンプ8に接続されるマイク9とを備えている。
【0039】
スピーカ7は、
図8に示すように、スピーカ本体71と、スピーカ本体71を角度調整可能に支持するサポート部72とを備え、サポート部72のうち屋根部分Rに接触する部分に設けた円板状の磁性体73(例えばネオジム磁石)によって、屋根部分Rに直接張り付けることができる。同図(a)は車両の屋根部分Rにスピーカを取り付けた状態を上方から見た図であり、同図(b)はスピーカ7を上方から見た図であり、同図(c)はスピーカ7を裏返した状態を示す図である。本実施形態では、屋根部分Rのうち4つのユニットUで囲まれた領域における所定の2箇所、具体的には前方ユニットU1から後方に所定寸法離間した位置と、後方ユニットU2から前方に所定寸法離間した位置にそれぞれスピーカ7を配置している。これにより、スピーカ7からの発生音を通気性の高い素材からなる看板本体1越しに、車両Cの周辺に報知することができる。
【0040】
アンプ8は車内の適宜の位置に設置され、配線81でスピーカ7に接続されている。本実施形態におけるアンプ8は、電源を車両Cのシガーソケット(図示省略)から供給できるように、アンプ8にはシガーソケット用の電源プラグ82(
図2参照)を設けている。このアンプ8にマイク9を接続することで、マイク9に入力された音声をスピーカ7から発する音響設備になる。音響設備に関するこれらのセッティング作業は有資格者でなくても簡単に行うことができる。
【0041】
このような処理手順で看板組立システムSを含む車両看板キットKを取り付けた車両Cを走行させたところ、走行中に看板組立システムSが屋根部分Rから取り外れたり、取付位置がずれることもなく、取付完了時の状態を維持できることを本発明者は実証実験により確認した。なお、脱落防止ベルト6を取り外した状態であれば、複数ユニット組立状態の所定箇所に対して下方から押し上げる操作力を付与することで屋根部分Rに対するベースプレート4の吸着状態を一部解除することができ、さらに押し上げ操作を継続することで吸着解除領域が徐々に広がり、やがてベースプレート4の吸着状態を全て解除することができることも本発明者は実証実験により確認した。したがって、例えば選挙期間が終了した時点以降等、看板を利用しない場合には、看板組立システムSを含む車両看板キットKを車両Cから取り外しておくことができる。
【0042】
以上に述べた本実施形態に係る看板組立システムSによれば、保持フレーム2、取付部3及びベースプレート4を1つのユニットUとして、複数のユニットUを相互に組み立てた状態(複数ユニット組立状態Y)で各ユニットUにおけるベースプレート4の磁力によって車両Cの屋根部分Rに設置可能に構成しているため、作業者は複数ユニット組立状態Yのまま車両Cの屋根部分Rに載せ置くことで、各ユニットUのベースプレート4が屋根部分Rに磁力で張り付き、良好な取付状態を維持することができる。したがって、従来のようなキャリア(台板)を車両Cの屋根部分Rに工具を用いて固定する作業が不要であり、複数ユニット組立状態Yのまま屋根部分Rに載せ置くという簡単な作業で済むため、取付作業をスムーズ且つ簡易に行うことができ、この作業に要する手間及び費用の負担軽減化を図ることができる。特に、本実施形態に係る看板組立システムSによれば、車両Cの屋根部分Rへの取付作業を利用者自身が比較的簡単に行うことができるため、例えば自家用車に看板組立システムSを取り付けて選挙カーとして使用することも可能になり、選挙の度に看板が屋根に組み付けられた選挙カーをレンタルするというこれまでの慣習に従うことなく、利用者が一度看板組立システムSを所有すれば期間を隔てて利用する機会の度に繰り返し利用することができ、選挙の度に選挙カーに関するレンタル費用の支払いが発生する事態も回避することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る看板組立システムSによれば、取付部3として高さ調整可能なアジャスタ機構部3Aを有するものを適用しているため、車種ごとに異なる屋根部分Rの形状に応じて取付部3の高さ調整をすることによって、各ユニットUのベースプレート4全体を屋根部分Rが磁力で張り付いた良好な取付状態(吸着状態)にすることができる。
【0044】
さらに、本実施形態に係る看板組立システムSによれば、ベースプレート4として、ゴム磁石42を相対的に下側に配置し、鉄板(磁性を有する金属板43)を相対的に上側に配置して相互に貼り合わせた層状のものを適用しているため、鉄板である屋根部分Rとベースプレート4の鉄板43とでゴム磁石42を挟んだ形態になり、磁力の向上と補強の増大の両立を図ることができる。特に、最近では軽量化等の観点から屋根部分Rの鉄板が薄く設定された車両が流通しているが、このような磁石が吸着し難い薄板状の屋根部分Rに対しても、ゴム磁石42及び鉄板43の二層状をなす本実施形態の帯状のベースプレート4であれば、強い磁力が作用する吸着面積を比較的大きく確保することができ、良好な吸着状態を実現できる。
【0045】
加えて、本実施形態係る看板組立システムSでは、各保持フレーム2が、看板本体1の周囲に配置されるバー部分21と、看板本体1の角部に配置される継手部分22とにより組立分解可能な構成であるため、保持フレーム2のバー部分21または継手部分22の交換・補修を個別に行うことができ、さらにまた、組み立てた状態の保持フレーム2に対して看板本体1を着脱可能に構成しているため、同じ保持フレーム2に対して装着する看板本体1だけを交換することもでき、看板本体1に表示している内容を変更したい利用者にとってはユニットU全体を交換することなく、看板本体1だけを交換することで済み、コスト面でのメリットを享受することができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係る車両用看板組立システムSは、複数ユニット組立状態Yの看板を屋根部分R側に引き込む形態で車内を通過する脱落防止ベルト6を備えたものであるため、複数ユニット組立状態Yの看板が屋根部分Rから不意に脱落する事態を防止・抑制することができる。
【0047】
特に、本実施形態に係る看板組立システムSでは、看板本体1として、網目状の空気孔を有するメッシュ構造の部材(素材)で構成されたものを適用しているため、風通りを良くして車両走行時の風の抵抗を低減させることができるとともに、看板本体1の背面側(印刷が施されていない側)に配置したスピーカ7からの音の通りが、板状タイプの看板やメッシュではない生地タイプの看板と比較して良くなる。なお、看板本体1として、メッシュではない生地タイプのものや、板状タイプのものを適用することも可能である。
【0048】
また、本実施形態に係る車両看板キットKは、車両用看板組立システムSに加えて、スピーカ7、アンプ8及びマイク9を備え、これらの機器についても利用者自身でセッティング可能に構成しているため、利用者にとって便利なキットとして有効活用できる。
【0049】
上述した本実施形態に係る車両用看板組立システムSは、特に軽自動車やコンパクトカー、あるいはトールワゴン(3列シートを持たない、おおむね4人乃至5人乗りタイプのミニバン)のような比較的小回りが利く車両に適用することで、地域の隅々まで走行して回ることが必要となる地方選挙等の選挙運動時の選挙カー導入時のコストを抑えつつ候補者サイドで比較的簡単にセッティングすることができ、好適である。
【0050】
また、サイズの異なる複数パターンのユニットUを用意しておき、取付対象である車両の屋根部分の平面サイズに応じて適宜選択したサイズのユニットUを提供・利用することで種々の要望に対応できるようにすることも可能である。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、取付部のアジャスタ機構部の具体的な構成は上述の実施形態の構成に限らず、周知のアジャスタ機構を採用することができる。
【0052】
また、ベースプレートとして、ゴム磁石と鉄板の二層構造のものに代えて、磁性を有する材料から構成された一層状のもの、あるいは隣り合う層ごとに磁性体の種類等を異ならせた三層以上のものであってもよい。
【0053】
また、保持フレームのバー部分や継手部分をいわゆる塩ビ管以外のものを用いて構成することも可能である。保持フレームが枠状に成形された一体成型品であっても構わない。
【0054】
さらにまた、本発明の看板組立システムは、看板本体、保持フレーム、取付部及びベースプレートを1つのユニットとするものであり、上述の実施形態で述べた平面視矩形状に組み立てた看板組立システムであれば、前後左右の合計4つのユニットを必要するものである。しかしながら、例えば2つのユニットを相互に組み立てた状態(T字状、L字状等)で利用可能に構成したり、3つのユニット、あるいは5つ以上のユニットを相互に組み立てた状態(多角形状等)で利用可能に構成することもできる。
【0055】
本発明の車両用看板組立システムは選挙カーに適用する以外にも、看板本体の表示内容を変更すれば、例えばイベントの告知カーや、自治体の広報カー等にも適用することができる。また、大型の車両や特殊車両にも本発明の車両用看板組立システム、看板キットを適用することができる。
【0056】
また、本発明に係る車両看板キットは、上述の車両用看板組立システムをメインとして、スピーカ、アンプ、マイクも付属する一式であればよく、その他の音響設備等をオプションで追加した内容も本発明の車両看板キットに含まれる。
【0057】
その他、各部の具体的構成や処理内容についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…看板本体
2…保持フレーム
3…取付部
4…ベースプレート
6…脱落防止ベルト
7…スピーカ
8…アンプ
9…マイク
C…車両
R…屋根部分
S…看板組立システム