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  • 特開-油性化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006834
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】油性化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/36 20060101AFI20240110BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240110BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240110BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240110BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61K8/36
A61K8/34
A61K8/44
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/92
A61Q5/00
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022115086
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】391066319
【氏名又は名称】高級アルコール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大杉 春香
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC251
4C083AC261
4C083AC342
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC391
4C083AC581
4C083AC582
4C083AD021
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD201
4C083AD211
4C083AD242
4C083AD532
4C083BB11
4C083CC11
4C083CC31
4C083DD23
4C083DD30
4C083DD41
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】肌へ塗布する際に流れ落ちにくくしながらも、塗り広げやすく、さらに塗布時における感触の変化(転相感)を感じられ、さらにTEWL抑制効果のある油性化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】下記成分(A)~(D)を含有することを特徴とした感触の変化(転相感)があり、TEWL抑制効果に優れた油性化粧料を提供する。
(A)液状高級脂肪酸
(B)多価アルコール
(C)塩基性アミノ酸
(D)油剤
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含有することを特徴とする油性化粧料。
(A)液状高級脂肪酸
(B)多価アルコール
(C)塩基性アミノ酸
(D)油剤
【請求項2】
成分(A)が油性化粧料に対して0.3~0.9重量%、成分(B)が9.5~28.5重量%、成分(C)が0.2~0.6重量%、成分(D)が70~90重量%の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の油性化粧料。
【請求項3】
成分(A)~(C):成分(D)が、15:85~20:80の割合で含有することを特徴とする請求項1または2に記載の油性化粧料。
【請求項4】
成分(A)の液状高級脂肪酸がイソステアリン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ヘキシルデカン酸、イソベヘン酸から選択される1種または2種以上の液状高級脂肪酸である、請求項1~3のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項5】
成分(B)の多価アルコールがエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、グルコース、マルトース、マルチトース、キシリトース、ソルビトール、エリスリトール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トレハロースから選択される1種または2種以上の多価アルコールである、請求項1~3のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項6】
成分(C)の塩基性アミノ酸がアルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチンから選択される1種または2種以上の塩基性アミノ酸である、請求項1~3のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項7】
成分(D)の油剤がスクワラン、水添ポリイソブテン、ラウリン酸イソアミル、エチルヘキサン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸イソノニル、エチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸トリデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、ジリノール酸ジイソプロピル、トリエチルヘキサノイン、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、ホホバ種子油、オリーブ油、グレープシード油、マカダミアナッツ油から選択される1種または2種以上の油剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の油性化粧料。
【請求項8】
成分(A)~(C)を混合させ40~50℃で加温し、成分(D)を約80℃で加温し、約80℃で加温した成分(A)~(C)を含む混合物へ成分(D)を徐々に添加しながら混合することを特徴とする請求項1~3に記載の油性化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
下記成分(A)~(D)を含有することを特徴とした油性化粧料に関する。
(A)液状高級脂肪酸
(B)多価アルコール
(C)塩基性アミノ酸
(D)油剤
【背景技術】
【0002】
クレンジングオイルや美容オイルは、粘度が低く肌へ塗布する際には塗り広げやすい特性を有するものが求められている。しかし、粘度が低く広がりやすい特性を有する化粧料は、逆に手に取り難く、流れて落ちてしまい、利用者には使いづらい課題を有しており、特許文献1、2、3にはそうした課題について記載されている。そのため、適度に粘度を調整するために、特許文献4ではゲル化剤などで増粘する方法が取られることが記載されているが、この場合は、べたつき感が強くなる傾向があり製造時においてゲル強度のコントロールが難しいなどの課題が指摘されていた。
【0003】
ゲル化剤を使わず増粘する方法として界面活性剤相(Detergent相、「D相」)乳化を用いた、界面活性剤相に油相(Oil相、「O相」)を分散させたO/D(Oil/Detergent)エマルションがある。O/Dエマルションの肌への効果について、特許文献5、6など調べられてはいるものの、乳化製剤のなかでは研究が進んでおらず、経表皮水分蒸散量(TEWL)抑制効果についての記述はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-150233号公報
【特許文献2】特開2014-058499号公報
【特許文献3】特開2022―021790号公報
【特許文献4】特開2007-161627号公報
【特許文献5】特開2016-169209号公報
【特許文献6】特開2015-91783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一般的なゲル化剤を使用せずに増粘させて、肌へ塗布する際に流れ落ちにくくしながらも、塗り広げやすく、さらに塗布時における感触の変化(転相感)を付与し、TEWL抑制効果のある油性化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、第一に、成分(A)としての液状高級脂肪酸が油性化粧料に対して0.3~0.9重量%、成分(B)としての多価アルコールが9.5~28.5重量%、成分(C)としての塩基性アミノ酸が0.2~0.6重量%、成分(D)としての油剤が70~90重量%の割合で含有する油性化粧料が提供される。第二に、成分(A)~(C):成分(D)が油性化粧料に対して、15:85~20:80の割合で含有する油性化粧料が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油性化粧料は、粘度が低いオイル製剤の使用感を損なうことなく粘度を上げることができ、さらに、塗布時の感触の変化(転相感)を付与し、肌への塗布によりTEWLを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1、比較例1、比較例2の美容オイル処方へせん断速度を加え、対数増加的にせん断を与えた際の応力値を示す。
図2】実施例1、比較例1、比較例2の美容オイル処方を皮膚へ塗布した際のTEWL増減率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
成分(A)の液状高級脂肪酸は、通常、炭素数9~25の直鎖型アルキル基及び分岐型アルキル基を含む飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸であり、特に炭素数11~22の脂肪酸が好ましく、その具体例として、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ヘキシルデカン酸、イソベヘン酸等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、また二種以上を併用してもよい。
【0010】
本発明の油性化粧料における液状高級脂肪酸の含有量は、0.3~0.9重量%であり、好ましくは0.4~0.8重量%、さらに好ましくは0.4~0.7重量%含有することで安定したエマルションを形成できる。
【0011】
成分(B)の多価アルコールは、特に制限はないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、グルコース、マルトース、マルチトース、キシリトース、ソルビトール、エリスリトール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トレハロース等の中から選ばれる少なくとも一種である。中でもグリセリンが特に好ましい。
【0012】
本発明の油性化粧料における多価アルコールの含有量は、9.5~28.5重量%であり、好ましくは10.0~28.0重量%、さらに好ましくは11.0~27.0重量%含有することで感触の変化(転相感)が得られる。
【0013】
成分(C)の塩基性アミノ酸は、特に限定されないが、アルギニン、リジン、ヒスチジン、及びオルニチンが挙げられ、中でもアルギニンがより好ましい。
【0014】
本発明の油性化粧料における塩基性アミノ酸の含有量は、0.2~0.6重量%であり、好ましくは0.2~0.55重量%、さらに好ましくは0.25~0.6重量%含有することで安定したエマルションが形成できる。
【0015】
成分(D)の油剤は、炭化水素油、液状エステル油、植物油など、液状の油剤であれば限定されないが、例えば、スクワラン、水添ポリイソブテン、ラウリン酸イソアミル、エチルヘキサン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸イソノニル、エチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸ヘキシルデシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸トリデシル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソステアリル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、ネオデカン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、ジリノール酸ジイソプロピル、トリエチルヘキサノイン、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、ホホバ種子油、オリーブ油、グレープシード油、マカダミアナッツ油等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、また二種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明の油性化粧料における油剤の割合は、70~90重量%であり、好ましくは73~87重量%、さらに好ましくは75~85重量%含有することでTEWL抑制効果が得られる。
【0017】
さらに、本発明の油性化粧料には、上記成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲で慣用の添加剤を加えることができる。例えば、水、シリコーン油、エタノール等のアルコール類、ラノリン等のペースト油、ワセリン等の半固体油、シア脂、水添パーム核油等の固体脂、エキス類、薬効剤、美容成分、美白剤、殺菌剤、抗菌剤、抗炎症剤、増粘ゲル化剤、界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、保湿剤、中和剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、ビタミン類、等の油性化粧料に通常配合されている物質を含めることができる。
【実施例0018】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。各成分の配合量は、特記しない限り「重量%」を表す。
【0019】
実施例1および比較例1、比較例2
表1に示す組成の美容オイル処方(O/Dエマルション処方:実施例1、オイル処方:比較例1、オイルゲル処方:比較例2)を下記の手順にしたがって調製した。
【0020】
調製方法
実施例1
(1)成分1~3を混合させ、40~50℃に加熱し、D相(a)を調製する。
(2)成分4~7を混合させ、約80℃に加温し、O相(b)を調製する。
(3)D相(a)を約80℃に加温し、撹拌しながら約80℃のO相(b)を少量ずつ添加して混合し、油性化粧料を調製する。
比較例1
(1)室温で成分4~7を混合させ、油性化粧料を調製する。
比較例2
(1)成分4~8を混合させ、約100℃に加熱溶解後、冷却固化し、油性化粧料を調製する。
【0021】
【表1】
【0022】
感触の変化(転相感)の評価
表1に示す3種の美容オイル(O/Dエマルション処方、オイル処方、オイルゲル処方)である油性化粧料は、いずれも保存安定性が良好であることを確認した。感触の変化(転相感)の評価を行なうため、粘弾性測定装置(アントンパール社製MCR302)を用い、35℃でのせん断速度1~1,000(1/s)の範囲におけるせん断応力を測定した。本測定に際しては、O/Dエマルション処方及びオイルゲル処方はサンドブラストプレート(直径25mm・平坦型)を使用し、オイル処方はコーンプレート(直径25mm・傾斜2度)を使用した。結果は図1に示した。実施例1では、せん断応力が増加した後、急激に減少しており、特徴的な変動をして、塗布時の感触の変化(転相感)に寄与していた。
【0023】
TEWL抑制効果の評価
皮膚粘弾性測定装置(Courage+Khazaka社製CutometerMPA580およびTewameterプローブ)を用いて、塗布前と塗布後のTEWL抑制効果を検証した。女性評価パネル(3名)の右腕を洗浄フォームで洗浄後、恒温恒湿室(21℃±1℃、50%±10相対湿度)で20分間安静にして環境に馴化させた後、測定を開始した。指サックを装着した指で、右腕の4cm×4cmのエリアに油性化粧料を4mg/cm塗布し、塗布前、塗布後15分、塗布後45分、塗布後1時間15分、塗布後1時間45分の各時間でのTEWL値を測定した。塗布前後でのTEWL増減率を算出し、その結果を図2に示した。比較例1や比較例2と比較して、実施例1では塗布後のTEWL値が最も減少し、TEWL抑制効果が高かった。
【0024】
実施例2、および実施例3
表2に示す組成のUV吸収剤配合ヘアオイルゲル(実施例2)、有効成分配合美容オイルゲル(実施例3)を下記の手順にしたがって調製した。これらの油性化粧料は、保存安定性が良く、実施例1と同様に塗布時の感触の変化(転相感)を有していた。
【0025】
調製方法
実施例2
(1)成分1~3を混合させ、40~50℃に加温し、D相(a)を調製する。
(2)成分5~10を混合させ、約80℃に加温し、O相(b)を調製する。
(3)D相(a)を約80℃に加温し、撹拌しながら約80℃のO相(b)を少量ずつ添加して混合し、油性化粧料を調製する。
【0026】
実施例3
(1)成分1~4を混合させ、40~50℃に加温し、D相(a)を調製する。
(2)成分11~15を混合させ、約80℃に加温し、O相(b)を調製する。
(3)D相(a)を約80℃に加温し、撹拌しながら約80℃のO相(b)を少量ずつ添加して混合し、油性化粧料を調製する。
【0027】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の油性化粧料は、製造が簡便なうえに保存安定性が良好である。さらに、塗布時の転相感やTEWL抑制効果を有する油性化粧料であるため、オイル状の製剤については、O/Dエマルション製剤として応用し、提供することが考えられる。
図1
図2