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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068346
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】車体下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240513BHJP
【FI】
B62D25/20 G
B62D25/20 F
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178721
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】江原 義明
(72)【発明者】
【氏名】細部 智章
(72)【発明者】
【氏名】齊木 皓平
(72)【発明者】
【氏名】田邉 僚太
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB07
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB22
3D203BB35
3D203BB54
3D203BB55
3D203CA25
3D203CA33
3D203CA37
3D203CA52
3D203CB34
3D203DA08
3D203DB05
3D203DB10
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で側突によるフロアパネルの変形から保護対象部品を保護することが可能な車体下部構造を提供する。
【解決手段】フロアパネル2は、燃料タンク1の上方に配置され、燃料タンク1に対応する位置に開口部としての点検口9を有するフロアパネル2と、前後方向に延設され、フロアパネル2の車幅方向の端部2aを支持するサイドシル4と、を備える。フロアパネル2の上面2bには補強部材5が備えられ、点検口9とサイドシル4との間で車幅方向に延設されて取付られている。フロアパネル2は、前後方向で補強部材5に対応する位置であってサイドシル4に隣接する位置に下向きに凹む凹溝部7を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の上方に配置され、前記部品に対応する位置に開口部を有するフロアパネルと、
前後方向に延設され、前記フロアパネルの車幅方向の端部を支持するサイドシルと、
前記フロアパネルの上面に取り付けられ、前記開口部と前記サイドシルとの間で車幅方向に延設された補強部材と、を備え、
前記フロアパネルは、前後方向で前記補強部材に対応する位置であって前記サイドシルに隣接する位置に、下向きに凹む凹溝部を有する、
ことを特徴とする車体下部構造。
【請求項2】
前記補強部材は、前記サイドシル側の端部から前記開口部側に向かうにつれて高くなるように傾斜している、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項3】
前記開口部は、平面視で略円形を呈し、
前記補強部材は、前記開口部の車幅方向の間隔が最も大きくなる位置に隣接して設置されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体下部構造。
【請求項4】
前記補強部材の前記サイドシル側の端部は、前記凹溝部よりも車幅方向内側で前記フロアパネルに接合されている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体下部構造としては、フロアパネルの下側に燃料タンク(部品)が配置され、燃料タンクの上方位置にメンテナンスホール(フロア開口部)が形成されているものが知られている(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6923597号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車体下部構造などでは、側突によって変形したフロアパネルが燃料タンクに干渉しないように周囲を補強部材で補強して剛性を向上させることが考えられている。
しかしながら、フロア開口部周縁の変形を抑制するため、補強部材による補強量を増やすと重量が増大してしまう虞があった。また、補強部材の設置スペースは限られているため、更なる改良の余地があった。
この発明は、簡易な構成で側突によるフロアパネルの変形から保護対象部品を保護することが可能な車体下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の車体下部構造は、部品の上方に配置され、部品に対応する位置に開口部を有するフロアパネルと、前後方向に延設され、フロアパネルの車幅方向の端部を支持するサイドシルと、を備える。車体下部構造は、フロアパネルの上面に取り付けられ、開口部と前記サイドシルとの間で車幅方向に延設された補強部材を備える。フロアパネルは、前後方向で補強部材に対応する位置であってサイドシルに隣接する位置に、下向きに凹む凹溝部を有する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡易な構成で側突によるフロアパネルの変形から保護対象部品を保護することが可能な車体下部構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態の車体下部構造で内装材を取り除いてフロアパネルを上方から見た全体の構成を示す平面図である。
図2】フロアパネルの左側部分の構成を示す要部の斜視図である。
図3】フロアパネルの構成を説明する図2中III-III線に沿った位置での断面図である。
図4】フロアパネルに側突の荷重の入力が加わった状態を説明し、図2中III-III線に対応する位置での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。説明において、同一の要素には同一の番号を付し、重複する説明は省略する。また、方向を説明する場合は、車両の運転者から見た前後左右上下に基づいて説明する。なお、車幅方向と左右方向は同義である。
【0009】
図1は、本発明が適用される実施形態の車両下部構造を示すものである。実施形態の車両10は、主に保護対象の部品である燃料タンク1の上方に配置され、燃料タンク1に対応する位置に開口部としての点検口9を有するフロアパネル2を備えている。また、フロアパネル2の前方にはダッシュロアパネル11が配置されている。
【0010】
このうち、フロアパネル2は、乗員室の下部に設けられる上面視略方形形状の平板部材を有していて、車幅方向中間位置には、車両前後方向に沿って上方へ膨出形成されたフロアトンネル部16が設けられている。フロアトンネル部16の前部は、ダッシュロアパネル11の車幅方向中間の下部に接続されている。
なお、実施形態の車両10の下部構造は、フロアトンネル部16を挟んで左右ほぼ対称形状に形成されている。このため、主にフロアトンネル部16に沿う車両中心線から左側の構成を説明し、左側と同様に構成される右側の説明を省略する。
【0011】
ダッシュロアパネル11は、車両前方に向かうにつれて上方へ位置させる湾曲形状に形成されたパネル面材を有していて、上縁部を図示しないダッシュアッパパネルに接続することにより車両10の乗員室と、車両前部の動力室と、を隔てている。ダッシュロアパネル11の車幅方向の左,右端部には、それぞれ左,右一対のフロントピラー12,12が設けられている。フロントピラー12は、水平方向の断面形状が中空方形状を呈しており、上下方向に延設されている。
【0012】
また、車両10は、前後方向に延設され、フロアパネル2の車幅方向の端部2a,2aをそれぞれ支持する左,右一対のサイドシル4,4を備えている。サイドシル4は、前端部をフロントピラー12の下部に接続している。サイドシル4は、車幅方向断面形状をハット状とするサイドシルインナ4a(図3参照)と、サイドシルインナ4aの車両外側に位置するサイドシルアウタ4bと、を有している。サイドシルインナ4aおよびサイドシルアウタ4bは、上フランジ部4c,4d間および下フランジ部間(図示せず)をそれぞれ車幅方向で接合してロ字状の中空閉断面が形成されている。
【0013】
さらにサイドシルインナ4aは、上フランジ部4cの下端からほぼ水平に車両内側に向けて延設された上壁部4eを有している。上壁部4eの上側面には、フロアパネル2の車幅方向の端部2aが上下方向で接合されている。端部2aには周囲より一段高い膨出面2eが形成されている。そして、フロアパネル2の車幅方向における左,右各端部2aは、左,右のサイドシル4によってそれぞれ下方から支持される。これにより、フロアパネル2は、左,右のサイドシル4,4間で乗員室の下部に面外方向を車両上下方向に向けた状態で配置される。
【0014】
また、図1に示すようにサイドシル4の車両前後方向で中間部位には、左,右一対のセンタピラー14がそれぞれ上下方向へ延設されている。センタピラー14は、中空の水平閉断面を有してフロントピラー12から前後方向で一定寸法離間して配置されている。
これらのフロントピラー12とセンタピラー14との中間位置でサイドシル4の車幅方向外側面には、ポール100の側突が想定される入力箇所INが設けられている。そして、燃料タンク1の点検口9の開口中心Sは、側突が想定される入力箇所INの付近から車幅方向内側へ向けて延びる仮想の延長線L上に配置されている。
【0015】
フロアパネル2の下面側には、保護対象部品としての燃料タンク1が配置されている。
燃料タンク1は、扁平の横長形状を呈していて助手席側の左端部にメインタンク1aを設けるとともに運転席側の右端部にサブタンク1bを設けている。そして、これらのメインタンク1aおよびサブタンク1bは、それぞれの内部空間を連通させている。
【0016】
メインタンク1aの上部1cおよびサブタンク1bの上部1dは、それぞれ上方に向けて凸設されていて上面視略円形または長円形形状に形成されている。
また、燃料タンク1の上方に配置されたフロアパネル2には、メインタンク1aの上部1cおよびサブタンク1bの上部1dにそれぞれ対応する位置に点検口9,9が形成されている。
【0017】
点検口9は、平面視円形で車両上下方向にフロアパネル2を貫通して形成されている。それぞれの点検口9には、蓋体9aが着脱可能に設けられている。蓋体9aは、平面視略円形の軽金属製で、乗員室側から点検口9を閉じて燃料タンク1の上部1cを覆うように装着されている。
さらに、フロアパネル2の上面2b側には、図示しないフロアカーペット等の内装材が敷設されるとともに、前席の運転席および助手席がそれぞれ配置される。運転席および助手席は、フロアトンネル部16を挟んで左右対称位置で各点検口9の上方にほぼ対応してそれぞれ固定されている。
【0018】
また、車両10は、フロアパネル2の上面2bに取り付けられて点検口9とサイドシル4との間で車幅方向に延設された補強部材5を備えている。本実施形態の補強部材5は、フロアパネル2の上面2bでフロアトンネル部16の左側の助手席に対応する点検口9と、サイドシル4との間で車幅方向に延設されている。補強部材5は、上面視で点検口9の周縁側からサイドシル4に向かうにつれて車両前後方向の幅寸法を徐々に狭くする略台形形状に形成されている。
図2に示すように、補強部材5の開口部側の端部5bは、サイドシル4側の端部5aと比して大きな車両前後方向の幅寸法を有している。そして、開口部側の端部5bは、点検口9の車幅方向の間隔Wが最も大きくなる位置に配置されて、フロアパネル2の上面2bに対して上下方向から接合されている。
【0019】
また、補強部材5のサイドシル4側から突設された幅狭の端部5aは、車両前後方向の幅寸法をほぼ一定とした舌片形状となるように形成されている。そして、サイドシル4側の端部5aは、フロアパネル2の接合座面2cに上下方向で接合されている。
接合座面2cは、車幅方向中間位置でサイドシル4に近接した位置から上方へ膨出形成されている。一方、上壁部4eの上側面に支持されるフロアパネル2の左外側の端部2aには、接合座面2cが形成されている。
【0020】
フロアパネル2の膨出面2eおよび接合座面2c間には、凹溝部7aが形成されている。
凹溝部7は、フロアパネル2のうち、前後方向で補強部材5に対応する位置であってサイドシル4に隣接する内側縁の車幅方向内側に下向きに山型に突設され、上面2b側では凹状に窪んで形成されている。
実施形態の凹溝部7の下端は、図3に示すように端部2aと比して車両上下方向下方位置で、サイドシルインナ4aの上壁部4e内側縁および内側壁の上縁間に形成されている角部の車幅方向内側に隣接して配置されている。
そして、図4に示すように、凹溝部7は、車幅方向に押しつぶされるとフロアパネル2の下面側よりさらに下方へ向けてV字型に変形しながら下端を突設させる。突設された下端は、フロアパネル2の折り曲げの起点となるように構成されている。
【0021】
なお、実施形態の延長線L上には、さらに凹溝部7、および補強部材5が配列されている。補強部材5は、サイドシル4側の端部5aおよび開口部側の端部5bを延長線L上に配列している。そして、補強部材5は、凹溝部7よりも車幅方向内側でフロアパネル2の接合座面2cに上下方向で接合されて固定される。
また、補強部材5のサイドシル4側の端部5aと、開口部側の端部5bとの間には、補強部材5をフロアパネル2の上面2bに接合する複数の接合点が設けられている。そして、これらの複数の接合点は、延長線L上に配置された各端部5a,5bの接合点とともに、車幅方向に延設された補強部材5をフロアパネル2の上面2bに重ね合わせた状態で上下方向に接合して固定している。
【0022】
さらに、図3に示すように、補強部材5は、サイドシル4側の端部5aから開口部側の端部5bに向かう方向で、端部5aから開口部側の端部5bまでの間に頭頂部5cを形成している。
頭頂部5cは、サイドシル側の端部5aより所定の寸法h1、高く形成されていてサイドシル4側の端部5aから開口部側の端部5bに向かうにつれて頭頂部5cの位置まで高くなるように一部傾斜している。
【0023】
なお、補強部材5は、車幅方向の全ての範囲で開口部側の端部5bほど高くなるように傾斜してなくてもよい。すなわち、実施形態のように補強部材5は、端部5aから端部5bまでの間の何れかに設定された所定の高い寸法h1を有する位置まで、開口部側の端部5bに向かうほど高くなるように傾斜していればよい。
【0024】
次に、実施形態の車体下部構造の作用効果について説明する。
実施形態の車体下部構造では、図4に示すように車両側方からポール100がサイドシル4の車幅方向外側面に側突する場合が想定されている。この場合、サイドシル4は、荷重の入力F1により、フロントピラー12とセンタピラー14との中間位置に設定された入力箇所IN(図1参照)を中心として車両10の内側に向けて移動する。
【0025】
この際、サイドシル4は、凹溝部7を押し潰しながら車両10の内側に向けてフロアパネル2の下方に向けて矢印Dに示すように車両10内側へ侵入する。サイドシル4のフロアトンネル側側壁部および角部は、フロアパネル2の凹溝部7の車外側側面に当接して、凹溝部7を押圧して下方に略V字状に折れ曲げる。そして、下方に変形した凹溝部7により、車両前後方向で補強部材5に対応する位置にフロアパネル2の変形の起点が形成される。
実施形態では、凹溝部7が押し潰されることにより、さらに下方に移動した下端が起点となって、フロアパネル2の点検口9側を上方へ向けて跳ね上げる。
【0026】
一方、フロアパネル2の点検口9側とサイドシル4との間は、板状の補強部材5によって面外方向上下へ曲がりにくくなるように複数の接合点にて上下方向で接合されることにより補強されて面外方向への曲げ剛性を増大させている。したがって、側突による荷重の入力F1がサイドシル4から車両内側方向へ加わると、フロアパネル2は、平坦なパネル面形状を維持した状態で点検口9の周縁部9cを分力F2が作用する上方へ移動させることができる。
すなわち、凹溝部7がV字に変形することで補強部材5の端部5aが下方に変位しやすい。下方に変位した端部5aが車幅内側に押されることで、開口部側の端部5bが上方に変位しやすい。さらに補強部材5は、サイドシル4側の端部5aから開口部側の端部5bに向かって上方に傾斜しているので端部5aよりも5b側が上方へ移動しやすい。
これにより、点検口9の周縁部9cは、フロアパネル2の変形により燃料タンク1の上部1cから離間して、上部1cに周縁部9cが干渉しない。したがって、実施形態の車両下部構造は、簡易な構成で側突によるフロアパネル2の変形から燃料タンク1を保護することが可能となる。
【0027】
上述してきたように、本実施形態の車体下部構造の車両10は、部品としての燃料タンク1の上方に配置され、燃料タンク1に対応する位置に開口部としての点検口9を有するフロアパネル2と、前後方向に延設され、フロアパネル2の車幅方向の端部2aを支持するサイドシル4と、を備える。また、車両10は、フロアパネル2の上面2bに取り付けられ、点検口9とサイドシル4との間で車幅方向に延設された補強部材5を備える。フロアパネル2は、前後方向で補強部材5に対応する位置であってサイドシル4に隣接する位置に、下向きに凹む凹溝部7を有している。
【0028】
このように構成された実施形態の車両下部構造は、簡易な構成で側突によるフロアパネル2の変形から保護対象部品である燃料タンク1を保護することが可能となる。
詳しくは、側突によりサイドシル4が凹溝部7を押し潰しながら車両10の内側に向けて侵入する。これにより凹溝部7が下方に折れ曲がり、前後方向で補強部材5に対応する位置のフロアパネル2に変形の起点が形成される。
このため、フロアパネル2は、下方に変形した凹溝部7を起点として点検口9側が上方へ向けて跳ね上げられる。
【0029】
また、フロアパネル2の点検口9とサイドシル4との間は、板状の補強部材5によって面外方向上下へ部分的に曲がりにくくなるように補強されている。
したがって、フロアパネル2は、側突による荷重の入力F1がサイドシル4から車両内側方向へ加わると、パネル面形状が平坦状に維持された状態で、点検口9側を上方へ移動させることができる。
これにより点検口9の周縁部9cは、フロアパネル2の変形が生じても燃料タンク1の上部1dから離間して干渉しない。
したがって、簡易な構成で側突によるフロアパネル2の変形から保護対象部品を保護することが可能となる。
【0030】
さらに、変形の起点となる凹溝部7は、サイドシル4に隣接する位置に形成されている。例えば凹溝部7がサイドシル4から車幅方向に離間する構成と比して、実施形態の車両下部構造は、サイドシル4に隣接する凹溝部7を起点とすることにより、補強部材5の車幅方向寸法を大きく拡大して設定できる。
このため、凹溝部7を起点として同じ角度で上方へフロアパネル2を揺動させた場合、タンク1の上部1cからの周縁部9cの離間寸法が大きくなる。したがって、さらに確実に燃料タンク1を保護することができる。
【0031】
また、補強部材5は、サイドシル4側の端部5aから開口部側の端部5bに向かうにつれて高くなるように傾斜して上方へオフセットされている。このため、さらに確実に点検口9の周縁部9cを上方へ揺動させて燃料タンク1の上部1cから離間させることができる。
実施形態では、図3に示すように、補強部材5の点検口9側に形成された頭頂部5cがサイドシル4側の端部5aと比べて上方へ所定の寸法h1、高く形成されている。
【0032】
また、図1に示すように、側突の想定される入力箇所INから点検口9の開口中心Sまで車幅方向へ延びる延長線L上に、補強部材5が複数の接合点で固定されて面外方向の曲げ剛性が向上している。このため、図4に示すように側突による荷重の入力F1は点検口9側の端部5b方向へ伝達されて点検口9の周縁部9cを上方へ揺動させる分力F2となり、燃料タンク1の上部1cから周縁部9cをさらに確実に離間させることができる。
【0033】
さらに、図1に示すように、平面視で略円形を呈する点検口9のうち車幅方向の間隔が最も大きくなる位置に隣接して補強部材5が設置されている。
このため、側突、例えばフロントピラー12とセンタピラー14との間のポール衝突が生じて車幅方向へ荷重の入力F1が作用する際、補強部材5によって点検口9の周縁部9cの部分的な変形が抑制される。したがって、さらに変形形状のコントロール性を向上させることができる。
【0034】
そして、補強部材5のサイドシル4側の端部5aは、凹溝部7よりも車幅方向内側でフロアパネル2に接合されている。これによりフロアパネル2は、補強部材5により補強されている部分から車幅方向外側に剛性が比較的小さな凹溝部7が設定されて、起点に荷重の入力F1を集中させることができる。
この際、実施形態の凹溝部7は、フロアパネル2の下面側よりさらに下方位置で、サイドシルインナ4aの内側壁部および上壁部4eとこの内側壁部間の比較的高剛性の角部により車幅方向に押圧される。このため、凹溝部7は、サイドシル4の角部等と補強部材5の端部5aとの間に挟持された状態で確実に押圧されて潰れ変形することができる。
【0035】
このように、本願発明は、一枚の補強部材5を車幅方向に延設する簡易な構成で、凹溝部7を揺動中心の起点として所望の方向にフロアパネル2の変形をさせることができる。このため、側突によるフロアパネル2の変形から保護対象部品を保護することが可能となる、といった実用上有益な作用効果を発揮できる。
【0036】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば、以下のようなものである。
【0037】
本実施形態では、保護対象の部品として燃料タンク1を用いたものを示して説明してきたが特にこれに限らない。例えば、保護対象の部品は、蓄電池や制御装置等他の部品であってもよい。すなわち、部品の上方に部品に対応する位置に開口部が形成されているフロアパネル2が配置されるものであればよく、部品の形状、数量、材質および種類が特に限定されるものではない。
【0038】
さらに実施形態では、端部5aから端部5bまでの間の何れかの位置に、所定の寸法h1を有する頭頂部5cを設定している。このように、補強部材5は車幅方向の全ての範囲で開口部側の端部5bほど高くなるように傾斜してなくてもよい。すなわち、実施形態のように端部5aから端部5bまでの間の何れかの位置に上下方向で高い部分を設定して、その位置に至るまで、点検口9側が高くなるように傾斜していればよい。
すなわち、補強部材5は、フロアパネル2の上面2bに取り付けられ、点検口9とサイドシル4との間で車幅方向に延設されるものであればよい。すなわち、補強部材5の形状、数量および材質が特に限定されるものではない。
【0039】
また、実施形態の凹溝部7のように、車幅方向の断面形状が山型となるように突設されて形成されているものに限らず、例えば、半円形状あるいは三角形等の多角形形状の断面形状を呈するものであってもよい。
さらに、凹溝部7は、車両前後に所定寸法上方へ膨出する膨出面2eおよび接合座面2c間に形成されるものに限らず、フロアパネル2の一般面から下向きに凹む溝形状等、どのような断面形状であってもよい。
すなわち、凹溝部7は、フロアパネル2のうち前後方向で補強部材5に少なくとも一部が対応する位置に形成されていてサイドシル4に隣接する位置で下向きに凹む形状であればよい。このように凹溝部7の形状、数量および車両前後方向の長さ寸法あるいは、車幅方向寸法が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 燃料タンク(部品)
1c 上部
2 フロアパネル
2a 端部
2b 上面
4 サイドシル
5 補強部材
7 凹溝部
9 点検口(開口部)
10 車両
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の上方に配置され、前記部品に対応する位置に開口部を有するフロアパネルと、
前後方向に延設され、前記フロアパネルの車幅方向の端部を支持するサイドシルと、
前記フロアパネルの上面に取り付けられ、前記開口部と前記サイドシルとの間で車幅方向に延設された補強部材と、を備え、
前記フロアパネルは、前後方向で前記補強部材に対応する位置であって前記サイドシルに隣接する位置に、下向きに凹む凹溝部を有し、
前記補強部材の前記サイドシル側の端部は、前記凹溝部よりも車幅方向内側で前記フロアパネルに接合され
前記サイドシルから前記開口部まで車幅方向へ延びる延長線上に、前記補強部材が複数の接合点でフロアパネルの上面に固定されている、ことを特徴とする車体下部構造。
【請求項2】
前記補強部材は、前記サイドシル側の端部より高い位置にある頭頂部を、前記サイドシルから開口部までの間に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項3】
前記補強部材は、前記サイドシル側の端部から前記開口部側に向かうにつれて高くなるように傾斜している、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体下部構造。
【請求項4】
前記開口部は、平面視で略円形を呈し、
前記補強部材は、前記開口部の車幅方向の間隔が最も大きくなる位置に隣接して設置されている、ことを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載の車体下部構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の車体下部構造は、部品の上方に配置され、部品に対応する位置に開口部を有するフロアパネルと、前後方向に延設され、フロアパネルの車幅方向の端部を支持するサイドシルと、フロアパネルの上面に取り付けられ、開口部とサイドシルとの間で車幅方向に延設された補強部材と、を備える。フロアパネルは、前後方向で補強部材に対応する位置であってサイドシルに隣接する位置に、下向きに凹む凹溝部を有し、補強部材のサイドシル側の端部は、凹溝部よりも車幅方向内側でフロアパネルに接合され、サイドシルから開口部まで車幅方向へ延びる延長線上に、補強部材が複数の接合点でフロアパネルの上面に固定されている、ことを特徴としている。