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特開2024-68356取付治具、構造物組立方法、及び構造物解体方法
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  • 特開-取付治具、構造物組立方法、及び構造物解体方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068356
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】取付治具、構造物組立方法、及び構造物解体方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/24 20060101AFI20240513BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20240513BHJP
   F16B 2/12 20060101ALI20240513BHJP
   E04G 5/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
E04G3/24 302H
E04G21/16
F16B2/12 B
E04G5/00 301J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178736
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】利根川 大
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 勇
(72)【発明者】
【氏名】森崎 雄貴
【テーマコード(参考)】
2E174
3J022
【Fターム(参考)】
2E174CA01
2E174CA35
3J022DA12
3J022EA02
3J022EB04
3J022EC02
3J022EC03
3J022ED02
3J022FA01
3J022GA06
3J022GA12
3J022GB32
(57)【要約】
【課題】より安全かつ効率的に建設構造物を組立・解体することが可能な取付治具、構造物組立方法、及び構造物解体方法を提供する。
【解決手段】取付治具は、クランプ本体、及びボルトを有するクランプを飛行体によって建設構造物に取り付けるための取付治具であって、治具本体と、治具本体に対してクランプ本体を着脱可能に固定する固定部と、ボルトを中心軸回りに回転させることが可能なボルト回転部と、飛行体のアーム先端部に着脱可能に連結固定される連結部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側顎部、該上側顎部と対向する下側顎部、及び前記上側顎部と前記下側顎部を接続する接続部を有するクランプ本体、及び前記上側顎部を貫通するとともに先端が前記下側顎部に当接可能なボルトを有するクランプを飛行体によって建設構造物に取り付けるための取付治具であって、
治具本体と、
該治具本体に対して前記クランプ本体を着脱可能に固定する固定部と、
前記ボルトを該ボルトの中心軸回りに回転させることが可能なボルト回転部と、
前記飛行体のアーム先端部に着脱可能に連結固定される連結部と、
を備える取付治具。
【請求項2】
前記ボルト回転部は、
前記ボルトの頭部に嵌合する嵌合孔、及び該嵌合孔とは反対側に設けられて前記ボルトの中心軸に対する周方向に配列された複数の歯からなるクラウンギアを有する回転部本体と、
前記クラウンギアに螺合するピニオンギアと、
該ピニオンギアに挿通されたシャフトと、
該シャフト、及び前記ピニオンギアを回転駆動する駆動部と、
を有する請求項1に記載の取付治具。
【請求項3】
前記駆動部は、前記飛行体の前記アーム先端部に設けられ、
前記シャフトは、前記アーム先端部側と前記治具本体側との間で分離可能に連結されている請求項2に記載の取付治具。
【請求項4】
前記治具本体における前記シャフトから離間した位置に設けられ、前記治具本体を前記アーム先端部に対して前記シャフト回りに相対回転不能に固定するトルク支持突起をさらに備える請求項2又は3に記載の取付治具。
【請求項5】
前記治具本体の前記アーム先端部側の端面から突出することで、前記連結部に向けて前記アーム先端部を案内するガイド部をさらに備える請求項1に記載の取付治具。
【請求項6】
請求項1に記載の取付治具と、該取付治具が連結された前記アーム先端部を有する前記飛行体と、を用いて建設構造物に前記クランプを取り付ける構造物組立方法であって、
前記飛行体の前記アーム先端部に前記取付治具を取り付けるステップと、
前記取付治具に前記クランプを固定するステップと、
前記飛行体を所定の取付位置まで飛行させるステップと、
前記飛行体がホバリングしている状態で、前記ボルト回転部によって前記ボルトを回転させることで、前記建設構造物に対して前記クランプを取り付けるステップと、
前記取付治具から前記アーム先端部を取り外して、前記飛行体を退避させるステップと、
を含む構造物組立方法。
【請求項7】
請求項1に記載の取付治具と、該取付治具が連結された前記アーム先端部を有する前記飛行体と、を用いて前記クランプが取り付けられた前記建設構造物から前記クランプを取り外す構造物解体方法であって、
前記取付治具が取り付けられた状態の前記クランプの位置まで前記飛行体を飛行させるステップと、
前記飛行体がホバリングしている状態で、前記アーム先端部を前記取付治具に連結するステップと、
前記ボルト回転部によって前記ボルトを回転させることで、前記建設構造物と前記クランプとの締結を解除するステップと、
前記取付治具が前記アーム先端部に連結された状態で前記飛行体を退避させるステップと、
を含む構造物解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、取付治具、構造物組立方法、及び構造物解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、橋のような大型の構造物を建設する場合には、作業員の作業スペースを確保するための足場を、橋の桁に沿って構築する必要がある。足場板は、一対の桁に対して、幅方向の両側でクランプとチェーンを用いて吊架されることが一般的である(例えば下記特許文献1参照)。このような足場板を橋の延びる方向に複数配置することで、当該橋の下方に作業スペースが形成される。ここで、上記のような足場を組み立てる際、従来は人力による場合が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-13782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人力によって足場を組み立てる場合、高所作業が継続することに対する作業員の安全確保が問題となっていた。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、より安全かつ効率的に建設構造物を組立・解体することが可能な取付治具、構造物組立方法、及び構造物解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る取付治具は、上側顎部、該上側顎部と対向する下側顎部、及び前記上側顎部と前記下側顎部を接続する接続部を有するクランプ本体、及び前記上側顎部を貫通するとともに先端が前記下側顎部に当接可能なボルトを有するクランプを飛行体によって建設構造物に取り付けるための取付治具であって、治具本体と、該治具本体に対して前記クランプ本体を着脱可能に固定する固定部と、前記ボルトを該ボルトの中心軸回りに回転させることが可能なボルト回転部と、前記飛行体のアーム先端部に着脱可能に連結固定される連結部と、を備える。
【0007】
本開示に係る構造物組立方法は、上記の取付治具と、該取付治具が連結された前記アーム先端部を有する前記飛行体と、を用いて建設構造物に前記クランプを取り付ける構造物組立方法であって、前記飛行体の前記アーム先端部に前記取付治具を取り付けるステップと、前記取付治具に前記クランプを固定するステップと、前記飛行体を所定の取付位置まで飛行させるステップと、前記飛行体がホバリングしている状態で、前記ボルト回転部によって前記ボルトを回転させることで、前記建設構造物に対して前記クランプを取り付けるステップと、前記取付治具から前記アーム先端部を取り外して、前記飛行体を退避させるステップと、を含む。
【0008】
本開示に係る構造物解体方法は、上記の取付治具と、該取付治具が連結された前記アーム先端部を有する前記飛行体と、を用いて前記クランプが取り付けられた前記建設構造物から前記クランプを取り外す構造物解体方法であって、前記取付治具が取り付けられた状態の前記クランプの位置まで前記飛行体を飛行させるステップと、前記飛行体がホバリングしている状態で、前記アーム先端部を前記取付治具に連結するステップと、前記ボルト回転部によって前記ボルトを回転させることで、前記建設構造物と前記クランプとの締結を解除するステップと、前記取付治具が前記アーム先端部に連結された状態で前記飛行体を退避させるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、より安全かつ効率的に建設構造物を組立・解体することが可能な取付治具、構造物組立方法、及び構造物解体方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る建設構造物の一例を示す断面図である。
図2】本開示の実施形態に係る釣り具の構成を示す平面図である。
図3】本開示の実施形態に係る取付治具の構成を示す平面図である。
図4】本開示の実施形態に係る構造物組立方法の各ステップを示すフローチャートである。
図5】本開示の実施形態に係る構造物解体方法の各ステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(建設構造物の構成)
以下、本開示の実施形態に係る取付治具1、構造物組立方法、及び構造物解体方法について、図1から図5を参照して説明する。
【0012】
本実施形態に係る取付治具1は、ドローン等の無人の飛行体2によって、建設構造物を組み立てるために用いられる。以下では、一例として、橋100に足場101を吊架する作業を行う際の様子について説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る建設構造物は、橋100と、足場101と、を有する。橋100は、長手方向に延びる一対の桁102を有している。桁102は、橋100がかけ渡される二つの地点間にかけて延びている。桁102は、長手方向から見て、I字状の断面形状を有している。具体的には、桁102は、矩形断面を有する桁本体111と、この桁本体111の高さ方向両側にそれぞれ設けられた板状のフランジ部112と、を有する。フランジ部112は、桁本体111の幅方向両側に突出している。
【0014】
橋100を建設するに当たっては、このような一対の桁102の下方に、作業員が作業するための足場101を併設する必要がある。この足場101は、釣り具3と、足場板103と、を有する。釣り具3は、クランプ31と、索体32と、を有する。クランプ31から延びる索体32によって足場板103が桁102の下方に吊架されている。図2に示すように、クランプ31は、C字状のクランプ本体33と、ボルト34と、を有する。クランプ本体33は、互いに平行に延びる上側顎部35、及び下部顎部と、これら上側顎部35と下側顎部36とを接続する接続部37と、を有する。
【0015】
上側顎部35は、下側顎部36に対して間隔をあけて対向している。上側顎部35には、ボルト34が挿通される挿通孔38が形成されている。ボルト34の頭部は、挿通孔38の径寸法よりも大きく設定されている。ボルト34は、挿通孔38の内側で自身の中心軸X回りに回動自在に支持されている。また、挿通孔38の内周面には、ボルト34の雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。ボルト34を最大限に回転させた状態では、当該ボルト34の先端は下側顎部36の受け面39に当接可能である。つまり、受け面39とボルト34の先端との間に上記のフランジ部112を挟持させることで、クランプ本体33は桁102に固定される。
【0016】
下側顎部36における受け面39とは反対側の端面には、索体32が取り付けられている。索体32は、例えばチェーンやワイヤであり、足場板103にかかる荷重を負担するだけの引張強度を有している。図1に示すように、このような釣り具3が一対の桁102に取り付けられた状態で、桁102の幅方向に延びる足場板103が索体32の下端に吊架されている。桁102の延在寸法全域にわたって、この釣り具3、及び足場板103を連続して配置することで、足場101が構成される。なお、詳しくは図示しないが、足場板103の上面にさらに他の板材を配置することも可能である。
【0017】
(取付治具の構成)
次いで、図3を参照して取付治具1の構成について説明する。同図に示すように、取付治具1は、治具本体11と、固定部12と、ボルト回転部13と、連結部14と、トルク支持突起15と、ガイド部16と、を有する。
【0018】
治具本体11は、略L字状をなすことで、クランプ本体33の上側顎部35と接続部37とを外側から囲う。治具本体11は、第一部材17と、この第一部材17に交差する方向に延びる第二部材18と、を有する。第一部材17は、上側顎部35に沿って延び、第二部材18は、接続部37に沿って延びている。第一部材17と第二部材18によって囲まれる空間は、クランプ本体33が収容される収容部19とされている。第二部材18における収容部19とは反対側を向く面は、後述する飛行体2のアーム先端部21と連結するための連結面40とされている。
【0019】
第二部材18には、クランプ本体33の接続部37を当該第二部材18に対して固定するための固定部12が設けられている。固定部12は、接続部37の外周を囲うU字状をなすとともに、その両端部が第二部材18に着脱可能に固定されている。
【0020】
第一部材17には、ボルト回転部13の一部が内蔵されている。ボルト回転部13は、回転部本体41と、ピニオンギア42と、シャフト43と、駆動部44と、を有する。これらのうち、駆動部44を除いては、第一部材17の内部に設けられている。回転部本体41は、ボルト34の中心軸X回りに回転自在の状態で第一部材17の内部に支持されている。なお、駆動部44は、アーム先端部21に内蔵されていなくてもよく、飛行体2の機体に内蔵されていてもよい。
【0021】
回転部本体41は、クランプ本体33のボルト34の頭部に嵌合する嵌合孔51と、クラウンギア52と、を有する。嵌合孔51は、ボルト34の中心軸X方向に凹む孔であるとともに、その開口形状は、ボルト34の頭部に噛み合う六角形をなしている。
【0022】
ボルト34の中心軸X方向における嵌合孔51とは反対側の端面には、クラウンギア52が一体に設けられている。クラウンギア52は、中心軸X方向に突出するとともに、周方向に配列された複数の歯を有する。
【0023】
このクラウンギア52には、ピニオンギア42が螺合している。ピニオンギア42は、シャフト43の先端に固定されている。シャフト43は、ボルト34の中心軸Xに交差する方向に延びるシャフト軸Yに沿って延びている。シャフト43、及びピニオンギア42は、第一部材17の内部に設けられた状態で、シャフト軸Y回りに回転自在である。ピニオンギア42は、クラウンギア52の歯に螺合する平歯を有する歯車である。シャフト43の基端は、第一部材17の外部に突出している。シャフト43の基端には、後述する駆動部44の出力軸82(シャフト43の他の一部)と連結するための継手60が設けられている。出力軸82の先端には万能ソケットが設けられており、継手60に対して様々な角度から接続することが可能とされている。
【0024】
第二部材18の連結面40には、連結部14が設けられている。連結部14は、アーム先端部21から突出する嵌合突起71と、連結面40に設けられて、この嵌合突起71が挿入される嵌合凹部72と、を有する。嵌合突起71と嵌合凹部72は、一例として、キーとしてのボールと、このボールが係合する係合溝とによって構成されるスナップ機構である。つまり、嵌合突起71を嵌合凹部72に着脱する際には、ボールを支持する弾性力に抗して当該嵌合突起71を押し込むか、又は引き抜けばよい。
【0025】
さらに、第二部材18の連結面40には、嵌合凹部72、及びボルト回転部13に対して間隔をあけて、トルク支持突起15が挿入されるトルク支持孔73が形成されている。トルク支持突起15は、アーム先端部21から突出する突条である。トルク支持突起15は、上記のボルト回転部13のシャフト43を回転させた際に治具本体11に生じるシャフト軸Y回りのトルクに抗するために設けられている。つまり、トルク支持突起15をトルク支持孔73に挿入することで、治具本体11をアーム先端部21に対して相対回転不能な状態で固定することが可能となっている。
【0026】
アーム先端部21には、連結部14の嵌合突起71、及びトルク支持突起15に加えて、駆動部44が設けられている。駆動部44は、一例として電動モータであり、飛行体2に内蔵されたバッテリーから電力供給を受けることで駆動される。駆動部44は、コイルや磁石等を収容する駆動部本体81と、この駆動部本体81から突出する出力軸82と、を有する。出力軸82は、アーム先端部21に取付治具1を連結した状態では、シャフト軸Yと同軸上に延びている。出力軸82は、シャフト43の基端に設けられた継手60を介して、当該シャフト43に接続される。出力軸82が回転することでシャフト43もシャフト軸Y回りに回転駆動される。駆動部44は、飛行体2を操作する操縦者の発する指令信号に基づいて駆動と停止をコントロールすることが可能とされている。また、アーム先端部21自体も遠隔からの指令に基づいて、自在にその位置や角度を変えることが可能であってもよい。
【0027】
(構造物組立方法について)
次に、上述の取付治具1を用いた建設構造物の組立方法(構造物組立方法)について、図4を参照して説明する。同図に示すように、この方法は、取付治具1を飛行体2のアーム先端部21に連結するステップS1と、クランプ31を取付治具1に固定するステップS2と、飛行体2を所定の作業位置まで飛行させるステップS3と、ボルト34を回転させてクランプ31を桁102に固定するステップS4と、取付治具1からアーム先端部21を離脱させるステップS5と、を含む。
【0028】
ステップS1では、上記の連結部14を介して、当該取付治具1をアーム先端部21に連結する。ステップS2では、取付治具1の固定部12によってクランプ31と取付治具1とを固定する。なお、これらステップS1とステップS2の順番は前後してもよい。続くステップS3では、飛行体2を操縦して、所定の作業位置までアーム先端部21とクランプ31を移動させる。なお、この作業位置の情報は、三次元空間内における座標として予め飛行体2にインプットされていてもよいし、操縦者が都度飛行体2に座標を入力して飛行位置をコントロールしてもよい。このステップS3が完了すると、クランプ本体33の受け面39とボルト34の先端との間に桁102のフランジ部112が挟まれた状態となる。
【0029】
その後、クランプ本体33の受け面39とボルト34の先端との間にフランジ部112が挟まれた状態で、ボルト回転部13を駆動することで、ボルト34を中心軸X回りに回転させる(ステップS4)。具体的には、操縦者が駆動部44を駆動する信号を発出することでボルト34駆動部44が駆動し、ボルト34が回転する。ボルト34が回転すると、ボルト34の先端と受け面39との間で、桁102のフランジ部112が強固に挟み込まれ、クランプ本体33が桁102に固定された状態となる。次いで、ステップS5で、飛行体2のアーム先端部21をクランプ本体33から離れる方向に移動させることで、取付治具1をアーム先端部21との連結を解除する。つまり、取付治具1自体は、クランプ31とともに桁102に残置される。その後、飛行体2を所定の位置まで退避させる。以上のステップS1からS5を、複数のクランプ31に対して繰り返して行うことで、足場101が桁102に設置される。
【0030】
(構造物解体方法)
次に、図5を参照して、建設構造物の解体方法(構造物解体方法)について説明する。同図に示すように、この方法は、飛行体2をクランプ31が固定された桁102の所定位置まで飛行させるステップS6と、アーム先端部21と取付治具1とを連結するステップS7と、ボルト34を回転させることでフランジ部112と取付治具1との固定状態を解除するステップS8と、飛行体2を退避させるステップS9と、を含む。
【0031】
ステップS7では、アーム先端部21の嵌合突起71を、取付治具1の嵌合凹部72に挿入することで、アーム先端部21と取付治具1とを連結する。なお、この時、ガイド部16によってアーム先端部21が取付治具1に向けて誘導される。その後、ステップS8では、駆動部44に駆動信号を送信することで、ボルト回転部13を駆動する。ボルト回転部13は、上述のステップS4とは反対の方向にボルト34を回転させることで、当該ボルト34の締結状態を解除する。これにより、ボルト34の先端と受け面39との間の離間距離が拡大して、桁102のフランジ部112からクランプ31が取り外された状態となる。その後、ステップS9では、クランプ31が連結された状態の飛行体2を所定の位置まで退避させる。以上のステップS6からS9を繰り返すことによって、足場101が桁102から取り外される。
【0032】
(作用効果)
ここで、橋100のような大型の構造物を建設する場合には、作業員の作業スペースを確保するための足場101を、橋100の桁102に沿って構築する必要がある。足場101を組み立てる際、従来は人力による場合が一般的であった。しかしながら、人力によって足場101を組み立てる場合、高所作業が継続することに対する作業員の安全確保が問題となっていた。そこで、本実施形態では、上述した取付治具1、及びこの取付治具1を用いた各方法を採っている。
【0033】
上記構成によれば、取付治具1を飛行体2のアーム先端部21に連結固定した状態で、当該取付治具1にクランプ本体33を固定して所定の位置まで飛行体2を飛行させることができる。その後、ボルト回転部13によってボルト34を回転させることで、クランプ本体33を建設構造物に対して遠隔操作によって固定することができる。これにより、作業員が橋100の桁102のような高所で作業を行う必要がなくなり、作業をより安全かつ効率的に進めることが可能となる。また、足場101の組立のみならず解体の際にも、同様の遠隔操作を行うことができる。
【0034】
さらに、上記構成によれば、駆動部44がシャフト43、及びピニオンギア42を回転させることで、当該ピニオンギア42に螺合するクラウンギア52とともに回転部本体41が回転する。これにより、遠隔操作で駆動部44を単に回転・停止させることのみによって、ボルト34を締結方向、又は解除方向に自在に回転させることができる。したがって、装置の構成や制御フローを簡素なものとすることができ、装置の製造コストやメンテナンスコストを大きく削減することが可能となる。
【0035】
また、上記構成によれば、駆動部44が飛行体2側に設けられ、シャフト43がアーム先端部21側と治具本体11側とで分離可能であることから、取付治具1自体に駆動部44を内蔵した場合に比べて、当該取付治具1の寸法体格や重量を軽減することができる。これにより、取付治具1を手安価に大量生産することが可能となり、建設作業に要するコストをさらに削減することができる。
【0036】
ここで、ボルト回転部13によってボルト34を回転させる際には、治具本体11に対してシャフト軸Y回りにトルクが発生する。上記構成によれば、アーム先端部21にトルク支持突起15が設けられている。シャフト43から径方向に離れた位置でトルク支持突起15がトルク支持孔73に挿入されることで、シャフト軸Y回りのトルクに対して抗することができる。つまり、上記のトルクが生じても治具本体11をアーム先端部21に対して相対回転不能に支持することができる。したがって、空中で作業を行う際にも、飛行体2の姿勢が不安的になってしまう可能性を低減し、より円滑に作業を進めることが可能となる。
【0037】
加えて、上記構成によれば、取付治具1にガイド部16が設けられている。これにより、遠隔からアーム先端部21を取付治具1に接近させる際に、当該ガイド部16によって取付治具1との連結位置に向けてアーム先端部21を誘導することができる。したがって、アーム先端部21を操作するに当たって、過度な精度を要求されることがなくなり、作業の効率化や省力化を図ることが可能となる。
【0038】
また、上記方法によれば、取付治具1を飛行体2のアーム先端部21に連結固定した状態で、当該取付治具1にクランプ本体33を固定して所定の位置まで飛行体2を飛行させることができる。その後、ボルト回転部13によってボルト34を回転させることで、クランプ本体33を建設構造物に対して遠隔操作によって固定することができる。さらに、上記方法によれば、取付治具1が取り付けられたクランプ本体33に対して、飛行体2のアーム先端部21に取り付けられた取付治具1を連結して、ボルト回転部13によってボルト34を解除することで、遠隔操作によって取付治具1とクランプ本体33とを建設構造物から取り外すことができる。つまり、組立と解体とを、遠隔操作によって完結させることができる。これにより、作業の効率化と低コスト化とを両立することが可能となる。
【0039】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成・方法に種々の変更や改修を施すことが可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、各クランプ31が同型で、同一の寸法を有している場合を例に説明をした。しかしながら、桁102の形状や仕様によっては、場所ごとに異なる種類のクランプ31が必要となる場合がある。この場合には、クランプ31の個体情報と、当該クランプ31が取り付けられるべき位置情報とを紐づけた上で、飛行体2にインプットしたり指令を出したりする構成が考えられる。これにより、適切な位置に特定のクランプ31を取り付けることが可能となる。
【0041】
さらに、取付治具1の適用対象は、上述の橋100に限定されず、クランプ31が取り付け可能なものであれば、いかなるものでも適用対象となり得る。例えば、高層ビルにおける高所作業や、ドーム型球場の屋根の組立・補修等の作業が該当する。これにより、飛行体2、及び取付治具1の汎用性を向上させることが可能となる。
【0042】
また、上記実施形態では、1つの足場101を2機の飛行体2によって吊架して作業を行う例について説明した。しかしながら、飛行体2の数はこれに限定されず、1機の飛行体2によって1つの足場101を吊架して組立や解体の各作業を行うことが可能である。
【0043】
<付記>
各実施形態に記載の取付治具1、構造物組立方法、及び構造物解体方法は、例えば以下のように把握される。
【0044】
(1)第1の態様に係る取付治具1は、上側顎部35、該上側顎部35と対向する下側顎部36、及び前記上側顎部35と前記下側顎部36を接続する接続部37を有するクランプ本体33、及び前記上側顎部35を貫通するとともに先端が前記下側顎部36に当接可能なボルト34を有するクランプ31を飛行体2によって建設構造物に取り付けるための取付治具1であって、治具本体11と、該治具本体11に対して前記クランプ本体33を着脱可能に固定する固定部12と、前記ボルト34を該ボルト34の中心軸X回りに回転させることが可能なボルト回転部13と、前記飛行体2のアーム先端部21に着脱可能に連結固定される連結部14と、を備える。
【0045】
上記構成によれば、取付治具1を飛行体2のアーム先端部21に連結固定した状態で、当該取付治具1にクランプ本体33を固定して所定の位置まで飛行体2を飛行させることができる。その後、ボルト回転部13によってボルト34を回転させることで、クランプ本体33を建設構造物に対して遠隔操作によって固定することができる。
【0046】
(2)第2の態様に係る取付治具1は、(1)の取付治具1であって、前記ボルト回転部13は、前記ボルト34の頭部に嵌合する嵌合孔51、及び該嵌合孔51とは反対側に設けられて前記ボルト34の中心軸Xに対する周方向に配列された複数の歯からなるクラウンギア52を有する回転部本体41と、前記クラウンギア52に螺合するピニオンギア42と、該ピニオンギア42に挿通されたシャフト43と、該シャフト43、及び前記ピニオンギア42を回転駆動する駆動部44と、を有する。
【0047】
上記構成によれば、駆動部44がシャフト43、及びピニオンギア42を回転させることで、当該ピニオンギア42に螺合するクラウンギア52とともに回転部本体41が回転する。これにより、遠隔操作によって、ボルト34を締結方向、又は解除方向に自在に回転させることができる。
【0048】
(3)第3の態様に係る取付治具1は、(2)の取付治具1であって、前記駆動部44は、前記飛行体2の前記アーム先端部21に設けられ、前記シャフト43は、前記アーム先端部21側と前記治具本体11側との間で分離可能に連結されている。
【0049】
上記構成によれば、駆動部44が飛行体2側に設けられ、シャフト43がアーム先端部21側と治具本体11側とで分離可能であることから、取付治具1自体に駆動部44を内蔵した場合に比べて、当該取付治具1の寸法体格や重量を軽減することができる。
【0050】
(4)第4の態様に係る取付治具1は、(2)又は(3)の取付治具1であって、前記治具本体11における前記シャフト43から離間した位置に設けられ、前記治具本体11を前記アーム先端部21に対して前記シャフト43回りに相対回転不能に固定するトルク支持突起15をさらに備える。
【0051】
ここで、ボルト回転部13によってボルト34を回転させる際には、治具本体11に対してシャフト43回りのトルクが発生する。上記構成によれば、トルク支持突起15が設けられていることから、上記のトルクが生じても治具本体11をアーム先端部21に対して相対回転不能に支持することができる。
【0052】
(5)第5の態様に係る取付治具1は、(1)から(4)のいずれか一態様に係る取付治具1であって、前記治具本体11の前記アーム先端部21側の端面から突出することで、前記連結部14に向けて前記アーム先端部21を案内するガイド部16をさらに備える。
【0053】
上記構成によれば、ガイド部16が設けられていることによって、遠隔からアーム先端部21を取付治具1に接近させる際に、当該ガイド部16によって取付治具1との連結位置に向けてアーム先端部21を誘導することができる。
【0054】
(6)第6の態様に係る構造物組立方法は、(1)から(5)のいずれか一態様に係る取付治具1と、該取付治具1が連結された前記アーム先端部21を有する前記飛行体2と、を用いて建設構造物に前記クランプ31を取り付ける構造物組立方法であって、前記飛行体2の前記アーム先端部21に前記取付治具1を取り付けるステップと、前記取付治具1に前記クランプ31を固定するステップと、前記飛行体2を所定の取付位置まで飛行させるステップと、前記飛行体2がホバリングしている状態で、前記ボルト回転部13によって前記ボルト34を回転させることで、前記建設構造物に対して前記クランプ31を取り付けるステップと、前記取付治具1から前記アーム先端部21を取り外して、前記飛行体2を退避させるステップと、を含む。
【0055】
上記方法によれば、取付治具1を飛行体2のアーム先端部21に連結固定した状態で、当該取付治具1にクランプ本体33を固定して所定の位置まで飛行体2を飛行させることができる。その後、ボルト回転部13によってボルト34を回転させることで、クランプ本体33を建設構造物に対して遠隔操作によって固定することができる。
【0056】
(7)第7の態様に係る構造物解体方法は、(1)から(5)のいずれか一態様に係る取付治具1と、該取付治具1が連結された前記アーム先端部21を有する前記飛行体2と、を用いて前記クランプ31が取り付けられた前記建設構造物から前記クランプ31を取り外す構造物解体方法であって、前記取付治具1が取り付けられた状態の前記クランプ31の位置まで前記飛行体2を飛行させるステップと、前記飛行体2がホバリングしている状態で、前記アーム先端部21を前記取付治具1に連結するステップと、前記ボルト回転部13によって前記ボルト34を回転させることで、前記建設構造物と前記クランプ31との締結を解除するステップと、前記取付治具1が前記アーム先端部21に連結された状態で前記飛行体2を退避させるステップと、を含む。
【0057】
上記方法によれば、取付治具1が取り付けられたクランプ本体33に対して、飛行体2のアーム先端部21に取り付けられた取付治具1を連結して、ボルト回転部13によってボルト34を解除することで、遠隔操作によって取付治具1とクランプ本体33とを建設構造物から取り外すことができる。
【符号の説明】
【0058】
1…取付治具 2…飛行体 3…釣り具 11…治具本体 12…固定部 13…ボルト回転部 14…連結部 15…トルク支持突起 16…ガイド部 17…第一部材 18…第二部材 19…収容部 21…アーム先端部 31…クランプ 32…索体 33…クランプ本体 34…ボルト 35…上側顎部 36…下側顎部 37…接続部 38…挿通孔 39…受け面 40…連結面 41…回転部本体 42…ピニオンギア 43…シャフト 44…駆動部 51…嵌合孔 52…クラウンギア 60…継手 71…嵌合突起 72…嵌合凹部 73…トルク支持孔 81…駆動部本体 82…出力軸 100…橋 101…足場 102…桁 103…足場板 111…桁本体 112…フランジ部 X…中心軸 Y…シャフト軸
図1
図2
図3
図4
図5