(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068358
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】抗がん剤の評価方法及び抗がん剤評価用キット
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20240513BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20240513BHJP
C12N 15/57 20060101ALI20240513BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20240513BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20240513BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240513BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240513BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12Q1/37
C12N15/57
C12M1/34 E
C12M1/34 A
C12M3/00 Z
C12N15/09 110
C12N5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178739
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】塚本 圭
(72)【発明者】
【氏名】北野 史朗
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029BB11
4B029CC02
4B029FA01
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB06
4B029GB10
4B063QA06
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ96
4B063QR54
4B063QR66
4B063QR77
4B063QS03
4B063QS33
4B063QS36
4B063QX02
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】in vitroの系を用いて精度良く、且つ、非破壊で抗がん剤を評価する方法を提供する。
【解決手段】抗がん剤の評価方法は、生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞と、がん細胞と、を含む細胞構造体を、抗がん剤存在下で培養することと、前記生細胞マーカータンパク質の発現量を指標として、前記抗がん剤を評価することと、をこの順に含み、前記評価において、前記生細胞マーカータンパク質の発現量を、培養上清を用いて測定する、又は、前記評価において、前記生細胞マーカータンパク質との反応により蛍光発色又は着色する物質を添加し、前記生細胞マーカータンパク質の発現量を、前記物質の蛍光又は着色の量に基づいて測定する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞と、がん細胞と、を含む細胞構造体を、抗がん剤存在下で培養することと、
前記生細胞マーカータンパク質の発現量を指標として、前記抗がん剤を評価することと、
をこの順に含み、
前記評価において、前記生細胞マーカータンパク質の発現量を、培養上清を用いて測定する、又は、
前記評価において、前記生細胞マーカータンパク質との反応により蛍光発色又は着色する物質を添加し、前記生細胞マーカータンパク質の発現量を、前記物質の蛍光又は着色の量に基づいて測定する、抗がん剤の評価方法。
【請求項2】
前記生細胞マーカータンパク質がセリンプロテアーゼである、請求項1に記載の抗がん剤の評価方法。
【請求項3】
前記セリンプロテアーゼがトリペプチジルペプチダーゼ1である、請求項2に記載の抗がん剤の評価方法。
【請求項4】
前記物質が基質である、請求項2又は3に記載の抗がん剤の評価方法。
【請求項5】
生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞を含む細胞構造体と、前記細胞構造体を収容する細胞培養容器と、を備える、抗がん剤評価用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗がん剤の評価方法及び抗がん剤評価用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
抗がん剤の開発又はがん治療における適切な抗がん剤の選択のために、in vitroのアッセイ系により、がん細胞に対する抗がん剤の作用を評価することが行われている。また、国内製薬企業における薬剤承認率は0.1%ときわめて低く、その成功率を上げるために、薬剤候補物質が所望の薬効を有することが確からしいかを早期判断する必要があり、信頼性の高い薬効評価方法が求められている。特に、従来の動物モデルの限界も製薬企業から新薬がなかなか出てこない一つの理由とされており、製薬企業は、動物モデルに代わるより生体内の環境を再現した薬剤評価モデルを求めている。
【0003】
しかし、従来のin vitroの系で行う抗がん剤の評価方法では、生体内に投与した時には優れた抗がん作用を発揮できる薬剤について低い評価しか得られない場合がある等、得られる評価が必ずしも実際の臨床効果に結び付かないと言う不具合が生じている。このため、従来のin vitroの評価方法では、がん治療において適切な抗がん剤を選択することができず、がん治療の成績向上が果せないことがある。
【0004】
抗がん剤の薬効評価として、臨床的には、遺伝子検査による薬剤奏功性予測も行われている。例えば、大腸がんにおけるKRAS遺伝子変異は、セツキシマブの治療効果予測因子である。また、肺がんにおけるEGFR遺伝子変異は、ゲフィチニブの治療効果予測因子である。しかしながら、多くの分子標的薬は、普遍的な遺伝子変異にしか対応していない。さらに、まだ同定されていない体細胞変異も数多く存在する。このため、遺伝子検査による薬剤奏功性予測では、充分な薬効評価ができない場合がある。さらに、抗がん剤の研究開発においても、多数の薬剤の中から、従来の評価方法で薬剤の有効性を決定した場合でも、得られた有効性評価が実際の臨床における成績とは一致しないことが多く、研究開発に大きな障害となっている。
【0005】
最近、大腸がん患者のデータを解析して、転帰不良の患者において高発現する遺伝子の多くが、間質細胞で発現している可能性が明らかにされている。また、ヒトのがん細胞を移植したマウスから得たデータを用いて、この可能性を検証し、転帰不良の患者において高発現する遺伝子が、ヒトのがん組織ではなくその周囲のマウスの組織に由来することも見いだされている(非特許文献1)。特に悪性度が高いがんでは、異常に活性化した特殊な線維芽細胞が多く出現することが報告され、「がん関連線維芽細胞(Cancer Associated Fibroblast:CAF)」と呼ばれている。これらのCAFは、血管新生やがん細胞の増殖・浸潤などを促進することも既に報告されている(非特許文献2)。したがって、がん微小環境(生体内におけるがん細胞とその周辺環境)において、間質ががん細胞に与える影響は非常に大きく、がん細胞と間質とを共存させることにより、より生体内に近い環境を構築できると考えられる。
【0006】
近年、がん治療薬として、これまで用いられていた一般的な細胞障害性を有する抗がん剤に加え、よりがん細胞及びその周辺組織(固形腫瘍)に特異的に治療効果を発揮することができる分子標的薬が注目を浴びている。その中でも、2004年に米国で承認されたAvastin(登録商標)(Genentech社製、別名ベバシズマブ)等の血管新生阻害剤は、従来の直接的に殺細胞効果を発揮する抗がん剤とは異なり、固形腫瘍周辺の血管新生能を阻害することによって、がん自身に栄養を供給する術を断ち、がん増殖速度を低下させることで間接的に抗腫瘍効果を発揮する薬剤である。
【0007】
血管新生阻害剤は、血管形成に必須となる因子やその受容体等の血管形成に必須となるタンパク質シグナルパスウェイを阻害することによって血管新生を抑制、阻害する薬剤である。治療法としては、血管新生阻害剤は単独使用だけではなく、細胞障害性を有する従来の抗がん剤と併用して用いられる場合が多い。血管新生阻害剤と抗がん剤との併用治療は、一般的な細胞障害性を有する抗がん剤の単独使用による治療に比べてより奏功性の高い結果が得られている。日本国内においても、治癒切除不能な進行性及び再発性の結腸・直腸癌患者に対して、血管新生阻害剤と様々な薬剤との併用治療法が承認されている。
抗がん治療においては、単独投与時よりも高い治療効果が得られることを期待して、作用機序の異なる薬剤同士を併用投与する治療法が一般的に行われている。併用投与を行う場合には、実際に併用投与した場合に、単独使用時よりもどの程度高い治療効果が得られるのかどうかがきちんと評価されていることが好ましい。
【0008】
発明者らは、血管新生阻害剤と抗がん剤との併用治療における薬効を、in vitroの系を用いて精度良く評価する方法を開発している(特許文献1)。該方法では、抗がん剤の薬効を、生体内の状態により近い間質を含む細胞構造体に含まれるがん細胞、又は前記間質を含む細胞構造体から半透膜によって分離された状態のがん細胞に対する影響を指標として評価する。そのため、in vitroの評価系であるにもかかわらず、信頼性の高い評価を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Isella C et al., “Stromal contribution to the colorectal cancer transcriptome.”, Nature Genetics, Vol. 47, Issue 4, pp. 312-319, 2015.
【非特許文献2】Shimoda M et al., “Carcinoma-associated fibroblasts are a rate-limiting determinant for tumour progression.”, Seminars in Cell & Developmental Biology Vol. 21, Issue 1, pp. 19-25, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1等に記載の方法では、抗がん剤処理後の組織を固定し、がん細胞のみを免疫染色して評価を行っており、評価のために組織を破壊する必要がある。また、がん細胞に予め蛍光タンパク質をコードする遺伝子を導入する等、非破壊で評価する方法もあるが、全ての細胞に遺伝子導入を行うことは難しく、細胞差によって事前処理をうまくできない場合がある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、in vitroの系を用いて精度良く、且つ、非破壊で抗がん剤を評価する方法及び前記方法に用いられる抗がん剤評価用キットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) 生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞と、がん細胞と、を含む細胞構造体を、抗がん剤存在下で培養することと、
前記生細胞マーカータンパク質の発現量を指標として、前記抗がん剤を評価することと、
をこの順に含み、
前記評価において、前記生細胞マーカータンパク質の発現量を、培養上清を用いて測定する、又は、
前記評価において、前記生細胞マーカータンパク質との反応により蛍光発色又は着色する物質を添加し、前記生細胞マーカータンパク質の発現量を、前記物質の蛍光又は着色の量に基づいて測定する、抗がん剤の評価方法。
(2) 前記生細胞マーカータンパク質がセリンプロテアーゼである、(1)に記載の抗がん剤の評価方法。
(3) 前記セリンプロテアーゼがトリペプチジルペプチダーゼ1である、(2)に記載の抗がん剤の評価方法。
(4) 前記物質が基質である、(2)又は(3)に記載の抗がん剤の評価方法。
(5) 生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞を含む細胞構造体と、前記細胞構造体を収容する細胞培養容器と、を備える、抗がん剤評価用キット。
【発明の効果】
【0014】
上記態様の抗がん剤の評価方法及び抗がん剤評価用キットによれば、in vitroの系を用いて精度良く、且つ、非破壊で抗がん剤を評価することができる。また、非破壊の評価系であるため、同一サンプルからより多くのデータを長期間に亘って連続的に取得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪抗がん剤の評価方法≫
本実施形態の抗がん剤の評価方法(以下、単に「本実施形態の評価方法」と称する場合がある)は、
生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞と、がん細胞と、を含む細胞構造体を、抗がん剤存在下で培養すること(以下、「培養工程」と称する場合がある)と、
前記生細胞マーカータンパク質の発現量を指標として、前記抗がん剤を評価すること(以下、「抗がん剤評価工程」と称する場合がある)と、
をこの順に含む。
【0016】
また、抗がん剤評価工程において、前記生細胞マーカータンパク質の発現量を、培養上清を用いて測定する、又は、前記生細胞マーカータンパク質との反応により蛍光発色又は着色する物質を添加し、前記生細胞マーカータンパク質の発現量を、前記物質の蛍光又は着色の量に基づいて測定する。
【0017】
従来の評価方法は、組織の固定を必須とする免疫染色法等、破壊的な評価方法であった。これに対して、本実施形態の評価方法では、組織を固定することなく、非破壊で抗がん剤の薬効評価を行うことができる。また、本実施形態の評価方法は、非破壊な評価系であることから、細胞構造体の培養を維持しながら、連続的且つ経時的にデータを取得することができる。よって、本実施形態の評価方法によれば、がん細胞の代謝物等、挙動が早い成分の評価も併せて行うことができる。
【0018】
次いで、本実施形態の評価方法の各工程について、以下に詳細を説明する。
【0019】
<培養工程>
培養工程では、生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞と、がん細胞と、を含む細胞構造体(以下、単に「細胞構造体」と称する場合がある)を、抗がん剤存在下で培養する。
【0020】
具体的には、1種又は2種以上の抗がん剤を混合した培養培地中で、細胞構造体を培養する。
【0021】
培養培地に混合する抗がん剤の量は、抗がん剤の種類、細胞構造体を構成する細胞の種類や数、がん細胞の種類や量、培養培地の種類、培養温度、培養時間等の培養条件を考慮して実験的に決定することができる。
【0022】
培養時間は、特に限定されるものではなく、例えば、24時間以上96時間以下とすることができ、48時間以上96時間以下であることが好ましく、48時間以上72時間であることがより好ましい。また、培養環境を著しく変化させない限り、必要に応じて還流等の流体力学的な付加を加えてもよい。
【0023】
[細胞構造体]
本発明及び本願明細書において、「細胞構造体」とは、複数の細胞層が積層された3次元構造体である。本実施形態において用いられる細胞構造体は、生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞と、がん細胞と、を含む。細胞構造体としては、がん細胞が構造体全体に散在している細胞構造体であってもよく、がん細胞が特定の層にのみ存在している細胞構造体であってもよい。
【0024】
或いは、細胞構造体は、三次元構造を構築している間質細胞から分泌される成分が接触可能なように、間質細胞層とがん細胞層とが半透膜で仕切られたものであってもよい。すなわち、細胞構造体は、がん細胞を含む層と間質細胞を含む層とが半透膜により仕切られたものであってもよい。該細胞構造体において、がん細胞を含む層は、単層であってもよく、多層であってもよい。同様に、間質細胞を含む層は、単層であってもよく、多層であってもよい。また、間質細胞を含む細胞層は、1種又は2種以上の間質細胞のみから形成される層であってもよく、間質細胞以外の細胞を含んでいてもよい。同様に、がん細胞を含む細胞層は、がん細胞のみから形成される層であってもよく、がん細胞以外の細胞を含んでいてもよい。
【0025】
間質細胞を、生体内の間質組織のような三次元構造に形成させ、この間質細胞から分泌された成分が半透膜を介してがん細胞へ接触可能にした細胞構造体を用いることによって、生体内の間質組織の影響下にあるがん細胞と同じ環境を再現し、生体内における抗がん作用を適切に評価できるようになる。このため、該細胞構造体を用いることによって、in vitroの評価系であっても、ヒトの臨床結果をより反映した抗がん剤の評価が可能となり、信頼性の高い評価が得られる。
【0026】
がん患者からがん細胞を採取する場合、がん細胞と共に大量の線維芽細胞も採取されるが、このがん細胞と線維芽細胞とを分離することは困難である。例えば、がん患者から採取したがん組織から線維芽細胞を除く方法としては、がん組織の細胞を全て無血清培地で培養することにより線維芽細胞が死滅させた後、線維芽細胞塊とがん細胞とを半透膜で分離する方法がある。しかし、一度半透膜を透過させることによって、がん細胞からcell-cellコンタクトが失われ、正常な薬剤評価ができない懸念がある。
【0027】
そこで、多くの場合において、がん患者から採取されたがん細胞を含む細胞群は、細胞種を問わず同様に標識された後、細胞構造体の構築に用いられる。しかし、がん細胞を線維芽細胞と区別して標識することも困難であるため、がん患者から採取された細胞群に線維芽細胞が大量に含まれていた場合には、薬効評価を誤ってしまうおそれがある。特に、本実施形態において用いられる細胞構造体は、大量の間質細胞を含むため、その中で、正確に薬剤標的であるがん細胞に対する薬剤効果を評価する必要がある。本実施形態の評価方法においては、間質細胞を含む層を構成する間質細胞と、がん患者に由来する間質細胞とが混在しないよう半透膜によって分離しておくことにより、がん細胞と共に多量の間質細胞が細胞構造体に含まれている場合であっても、がん患者由来の間質細胞の影響を抑え、より信頼性の高い評価を得ることができる。
【0028】
(間質細胞)
生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞は、公知の遺伝子改変技術を用いて、間質細胞における生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトすることで作製することができる。
【0029】
生細胞マーカータンパク質としては、生細胞でのみ発現が認められるタンパク質であって、間質細胞及びがん細胞のいずれにおいても発現が認められ、且つ、該タンパク質をコードする遺伝子の欠損が間質細胞の生存に影響を及ぼさないものであれば、特に限定されない。
【0030】
このような生細胞マーカータンパク質として具体的には、例えば、A4GNT、AAAS、AADAC、ABCA1、ABCA2、ABCA3、ABCA7、ABCB1、ABCB11、ABCB4、ABCB7、ABCB8、ABCC1、ABCC2、ABCC3、ABCC4、ABCC5、ABCC6、ABCD2、ABCD3、ABCD4、ABCF2、ABCG1、ABCG2、ABRA、ACCN1、ACCN2、ACCN3、ACCN4、ACE、ACP2、ACP5、ACTL6A、ACTN1、ACTN2、ACTN3、ACVR1、ACVR1B、ACVR1C、ACVR2A、ACVR2B、ACVRL1、ADAM11、ADAM12、ADAM17、ADAM2、ADAM23、ADAM29、ADAM30、ADAM8、ADAM9、ADCY3、ADCY7、ADCY8、ADCY9、ADCYAP1R1、ADI1、ADORA1、ADORA2A、ADORA2B、ADORA3、ADRA1A、ADRA1B、ADRA1D、ADRA2A、ADRA2B、ADRA2C、ADRB1、ADRB2、ADRB3、ADRM1、AFTPH、AGER、AGPAT3、AGTR1、AGTR2、AGTRL1、AIFM2、AIFM3、AKAP7、AKT1、AKTIP、ALAS2、ALG3、ALK、ALOX12、AMBP、AMFR、AMOTL1、AMTN、ANKFY1、ANKH、ANKRA2、ANKRD20A1、ANPEP、ANXA2、AOC3、AP1G2、AP1GBP1、AP1S1、AP2S1、AP3S1、APC、APC2、APH1A、APH1B、APOM、APP、AQP1、AQP2、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、AQP8、AQP9、ARCN1、ARF1、ARF6、ARFGEF2、ARFIP1、ARFIP2、ARHGEF1、ARL6、ARL6IP5、ARRB1、ARRB2、ART1、ART3、ASGR1、ASH1L、ASPH、ATF6、ATP12A、ATP1A1、ATP1A2、ATP1A3、ATP1A4、ATP1B1、ATP1B3、ATP1B4、ATP2A2、ATP2B1、ATP2B3、ATP2B4、ATP2C1、ATP4A、ATP5A1、ATP5B、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5G3、ATP5J、ATP5O、ATP6AP1、ATP6AP2、ATP6V0A4、ATP6V0B、ATP6V0C、ATP6V1A、ATP6V1B1、ATP6V1C1、ATP6V1E1、ATP6V1F、ATP7A、ATP7B、ATP8B1、ATRN、AVPR1A、AVPR1B、AVPR2、AXIN1、AXL、B3GAT1、B3GNT3、B4GALT1、B4GALT4、B4GALT7、BACE1、BAI1、BAI2、BAI3、BAIAP2、BAK1、BAMBI、BASP1、BAX、BCAM、BCAP31、BCAR1、BCL10、BCL2、BCL2L13、BCS1L、BDKRB1、BDKRB2、BEST1、BET1、BET1L、BFAR、BMPR1A、BMPR2、BNIP1、BNIP2、BNIP3、BNIP3L、BPI、BRS3、BSCL2、BSND、BST1、BST2、BTK、BTN1A1、BTN2A1、C11orf2、C1GALT1、C1QBP、C3AR1、C3orf31、C5AR1、C6orf25、C7、C8A、C8B、C9、C9orf127、C9orf58、CA12、CA14、CA9、CACNA1A、CACNA1B、CACNA1C、CACNA1D、CACNA1E、CACNA1F、CACNA1G、CACNA1H、CACNA1S、CACNA2D1、CACNB1、CACNB2、CACNB3、CACNB4、CACNG1、CACNG2、CACNG4、CADM1、CADM3、CALCRL、CALM3、CALY、CAPRIN1、CARD11、CASK、CASP7、CASR、CAV1、CAV2、CAV3、CBL、CBX5、CCBP2、CCDC70、CCDC8、CCDC88A、CCKAR、CCKBR、CCR1、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCRL1、CCRL2、CD14、CD151、CD160、CD163、CD164、CD19、CD1B、CD1C、CD1D、CD200、CD22、CD226、CD24、CD247、CD28、CD300C、CD33、CD36、CD37、CD38、CD3E、CD4、CD40、CD40LG、CD46、CD47、CD48、CD5、CD52、CD53、CD55、CD6、CD63、CD68、CD69、CD7、CD70、CD72、CD74、CD79A、CD79B、CD81、CD82、CD83、CD84、CD8B、CD96、CD97、CD99、CDC42、CDC42BPA、CDC42BPB、CDC42EP2CDC42SE1、CDC42SE2、CDH1、CDH13、CDH15、CDH24、CDH5、CDK5、CDK5R1CEACAM4、CEACAM5、CEACAM6、CEACAM7、CEACAM8、CELSR1、CELSR3、CENPF、CENTA1、CENTA2、CEPT1、CFTR、CHL1、CHMP1A、CHRM1、CHRM2、CHRM3、CHRM4、CHRM5、CHRNA1、CHRNA2、CHRNA3、CHRNA4、CHRNA6、CHRNA7、CHRNB2、CHRNB3、CHRNB4、CHRND、CHRNE、CHRNG、CHST7、CIB1、CKAP4、CKLF、CLCA1、CLCA2、CLCA4、CLCN1、CLCN3、CLCN5、CLCNKA、CLCNKB、CLDN1、CLDN10、CLDN11、CLDN12、CLDN14、CLDN15、CLDN16、CLDN17、CLDN18、CLDN19、CLDN2、CLDN20、CLDN22、CLDN23、CLDN3、CLDN4、CLDN5、CLDN6、CLDN7、CLDN8、CLDN9、CLEC10A、CLEC1A、CLEC1B、CLEC2B、CLEC2D、CLEC4A、CLEC4M、CLEC5A、CLEC7A、CLN3、CLN5、CLNS1A、CLPTM1、CMKLR1、CNGA1、CNIH2、CNKSR1、CNN2、CNPY2、CNR1、CNR2、CNTFR、CNTN2、CNTNAP1、COG2、COL13A1、COL17A1、COLEC12、COPA、COPB1、COPB2、COPE、COPG、COPG2、COPZ1、CORIN、CORO1A、COX15、COX18、COX6B2、CPE、CPM、CR1、CRHR1、CRHR2、CRIM1、CRIPAK、CRNN、CRTAM、CSF1R、CSF2RA、CSF2RB、CSF3R、CSK、CSNK2A1、CSPG4、CSPG5、CTGF、CTLA4、CTNNA3、CTNNB1、CTNS、CUBN、CUTA、CUZD1、CX3CL1、CX3CR1、CXADR、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CYB561、CYB5R2、CYB5R3、CYBB、CYSLTR1、
DAB2、DAD1、DAG1、DARC、DC2、DCBLD2、DCLK1、DCT、DDOST、DDR1、DDR2、DDX19B、DEGS1、DERL1、DERL2、DERL3、DGKD、DGKK、DHCR7、DHRS9、DKK1、DLG1、DLG2、DLG4、DLK1、DMBT1、DMD、DNER、DNM2、DOLPP1、DOPEY1、DOPEY2、DPM1、DPM2、DPM3、DRD1、DRD2、DRD3、DRD4、DRD5、DSC1、DSC3、DSCAM、DST、DTNBP1、DULLARD、DYSF、EBI2、EBI3、EBP、ECE1、ECE2、ECEL1、EDA、EDEM1、EDG1、EDG2、EDG3、EDG4、EDG6、EDG7、EDNRA、EDNRB、EEA1、EFNA1、EFNA3、EFNA4、EFNA5、EFNB1、EFNB2、EFNB3、EGF、EGFR、EIF2B1、EIF5A、ELMO1、ELTD1、EMCN、EMD、EMP1、EMP2、EMR1、EMR2、EMR3、EMR4、ENG、ENOX2、ENPEP、ENPP1、ENPP2、ENPP3、ENTPD1、ENTPD4、EPB41、EPB41L2、EPB41L3、EPB42、EPC1、EPGN、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA8、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPOR、EPS15、ERBB2IP、ERBB3、ERBB4、ERC1、ERC2、EREG、ERLIN1、ERLIN2、ERMAP、ERN1、EVI2B、EVL、EXT1、EXT2、EZR、F11R、F2R、F2RL1、F2RL2、F2RL3、F3、FADS2、FAM84B、FASLG、FAT、FCAR、FCER1A、FCER1G、FCER2、FCGR3A、FDFT1、FER1L3、FFAR1、FFAR2、FFAR3、FGFR1、FGFR3、FGFR4、FIS1、FLOT1、FLT1、FLT3、FLT4、FLVCR1、FOLH1、FOLR1、FOLR3、FPR1、FPRL1、FPRL2、FRAG1、FRAP1、FRS2、FRZB、FSHR、FUT1、FUT7、FXYD1、FXYD3、FXYD5、FXYD6、FYN、FZD10、FZD2、FZD3、FZD4、FZD5、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、GABARAP、GABBR1、GABBR2、GABRA1、GABRA2、GABRA3、GABRA4、GABRA5、GABRA6、GABRB1、GABRB2、GABRB3、GABRD、GABRE、GABRG2、GABRQ、GABRR1、GABRR2、GAL3ST1、GAL3ST2、GALNT3、GALR1、GALR2、GALR3、GAS1、GBA2、GBAS、GCA、GCGR、GCNT1、GFRA2、GFRA3、GGCX、GGTLA1、GHR、GHRHR、GHSR、GIPC1、GIPR、GJA1、GJA4、GJA8、GJB1、GJB2、GJD3、GLE1、GLG1、GLP1R、GLP2R、GLRA1、GML、GNA11、GNA14、GNA15、GNAI1、GNAQ、GNAS、GNAZ、GNG4、GNRHR、GOLGA3、GOLGA5、GOLGB1、GOLIM4、GOLM1、GOSR1、GOT2、GP1BA、GP5、GP6、GP9、GPA33、GPAA1、GPC1、GPC3、GPC4、GPC5、GPC6、GPER、GPNMB、GPR1、GPR109B、GPR110、GPR111、GPR112、GPR113、GPR114、GPR115、GPR116、GPR12、GPR123、GPR124、GPR125、GPR126、GPR128、GPR133、GPR135、GPR137B、GPR143、GPR144、GPR15、GPR17、GPR175、GPR176、GPR182、GPR19、GPR20、GPR21、GPR22、GPR23、GPR25、GPR3、GPR31、GPR32、GPR34、GPR35、GPR37、GPR39、GPR4、GPR42、GPR44、GPR45、GPR50、GPR52、GPR55、GPR56、GPR6、GPR64、GPR65、GPR68、GPR75、GPR97、GPR98、GPRC5A、GPRC5C、GRB10、GRIA1、GRIA2、GRIA3、GRIA4、GRID2、GRIK1、GRIK2、GRIK3、GRIK4、GRIN1、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2C、GRINL1A、GRM1、GRM2、GRM3、GRM4、GRM5、GRM6、GRM7、GRM8、GRPR、GUCY2D、GUCY2F、GYPA、GYPB、GYPC、GYPE、GZMA、GZMB、
HAS1、HAS2、HAS3、HBEGF、HCCS、HCN2、HCRTR1、HCRTR2、HDAC11、HDLBP、HERPUD1、HFE、HLA-DOA、HLA-DRA、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HMGCR、HNRPM、HOMER1、HPN、HPS1、HRAS、HRB、HRH1、HRH2、HRH3、HS3ST1、HS3ST2、HS3ST3A1、HS3ST3B1、HS6ST1、HSD17B10、HSD17B2、HSD3B1、HSD3B2、HSP90B1、HTATIP2、HTR1A、HTR1B、HTR1D、HTR1E、HTR1F、HTR2A、HTR2B、HTR3A、HTR3B、HTR4、HTR5A、HTR6、HTR7、HTRA2、HVCN1、ICA1、ICAM1、ICAM2、ICAM3、ICAM4、ICAM5、IFITM1、IFITM3、IFNAR1、IFNAR2、IFNGR1、IFNGR2、IGF2R、IGSF1、IGSF2、IGSF6、IGSF8、IL10RA、IL10RB、IL11RA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL15、IL17RB、IL18R1、IL1R1、IL1RAP、IL1RL2、IL27RA、IL28RA、IL29、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL4R、IL5RA、IL6R、IL6ST、IL8RB、IL9R、IMMT、INSR、IPO7、IRS4、ITGA1、ITGA10、ITGA11、ITGA2、ITGA3、ITGA5、ITGA8、ITGA9、ITGAD、ITGAE、ITGAM、ITGAX、ITGB1、ITGB3、ITGB4、ITGB6、ITGB7、ITGB8、ITLN1、ITPR1、ITPR2、IPR3、IZUMO1、JAG2、JTB、KCNA1、KCNA2、KCNA3、KCNA4、KCNA5、KCNA6、KCNB2、KCNC1、KCNC3、KCNC4、KCND3、KCNE1、KCNE1L、KCNE2、KCNG2、KCNG3、KCNH1、KCNH2、KCNH4、KCNJ1、KCNJ10、KCNJ11、KCNJ14、KCNJ15、KCNJ2、KCNJ3、KCNJ4、KCNJ5、KCNJ6、KCNJ8、KCNK1、KCNK3、KCNK5、KCNK6、KCNMA1、KCNMB2、KCNMB3、KCNMB4、KCNN1、KCNN3、KCNN4、KCNQ1、KCNQ2、KCNQ3、KCNQ5、KCNS1、KDELR1、KDELR2、KDR、KEL、KHDRBS1、KIF1B、KIR2DL1、KIR2DL3、KIR2DL4、KIR2DS3、KIR2DS4、KIR3DL2、KIRREL3、KISS1R、KL、KLRA1、KLRB1、KLRC1、KLRC2、KLRD1、KLRF1、KLRG1、KLRK1、KPNA1、KPNA3、KPNB1、KRT1、KRTCAP2、KTN1、L2HGDH、L3MBTL4、LAMB1、LAMC3、LAMP1、LAMP2、LAMP3、LANCL1、LANCL2、LAPTM5、LARGE、LAT、LAT2、LAX1、LAYN、LBR、LCK、LCT、LDLR、LDLRAP1、LEMD3、LETM1、LGALS3、LGALS4、LGICZ1、LGR5、LHCGR、LIFR、LILRA3、LILRB1、LILRB2、LILRB3、LIMA1、LMAN1、LMAN2L、LMNB1、LMTK2、LNPEP、LPHN1、LPHN2、LPHN3、LRIT1、LRMP、LRP1、LRP12、LRP3、LRP5、LRP6、LRPAP1、LRRC32、LRRC4C、LSR、LST1、LTB4R、LTB4R2、LTC4S、LTK、LY6E、LY75、LY86、LY96、LYN、LYPD3、LYVE1、M6PR、MADD、MAEA、MAGEA1、MAGEE1、MAGI1、MAGT1、MAL、MALL、MAN1A2、MAN1B1、MAN1C1、MAP1LC3A、MAP1LC3B、MAP1LC3C、MAP3K12、MAP4K2、MAPT、MARCKSL1、MARCO、MAS1、MATR3、MBTPS2、MC1R、MC2R、MC3R、MC4R、MC5R、MCHR1、MCL1、MCTP1、MCTP2、MDGA1、MEP1A、MEP1B、MERTK、MET、MFI2、MFN2、MFRP、MGAT1、MGAT3、MIP、MIR16、MLANA、MLLT4、MLNR、MMD、MME、MMP14、MMP15、MMP16、MMP17、MMP24、MPL、MPP1、MPP2、MPP3、MPV17、MPZ、MPZL1、MRAS、MRC1、MRPL19、MRPL32、MRVI1、MS4A1、MS4A2、MSN、MSR1、MST1R、MSTO1、MTFR1、MTNR1A、MTNR1B、MTX1、MTX2、MUC1、MUC16、MUC20、MUC4、MUSK、MYH9、MYO16、MYO1A、MYO1C、MYO6、MYO7A、
NAGPA、NAPSB、NARF、NBEA、NCAM1、NCAM2、NCF4、NCKAP1L、NCR2、NCR3、NCSTN、ND1、NDST2、NDUFA1、NDUFA13、NDUFA2、NDUFA6、NDUFA9、NDUFAB1、NDUFB6、NDUFS1、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS7、NDUFS8、NDUFV1、NECAB3、NECAP2、NEO1、NEU3、NEU4、NEXN、NF2、NFAM1、NGFR、NINJ2、NKG7、NLGN1、NMBR、NMUR1、NNT、NOD2、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、NOX4、NPC1、NPFFR2、NPHS1、NPHS2、NPLOC4、NPR2、NPTN、NPY1R、NPY2R、NPY5R、NPY6R、NRAP、NRBP1、NRM、NRSN1、NRSN2、NRXN1、NRXN3、NTNG1、NTNG2、NTRK1、NTRK2、NTRK3、NTSR1、NTSR2、NUCB2、NUMB、NUP107、NUP133、NUP153、NUP160、NUP214、NUP50、NUP54、NUP62、NUP85、NUP88、NUP98、NUTF2、NXT1、OAS2、OCA2、OCLN、OGDH、OLR1、OPA1、OPCML、OPN1LW、OPN1MW、OPN1SW、OPN3、OPN4、OPRD1、OPRK1、OPRL1、OPRM1、OPRS1、OR10J1、OR1D2、OR1D4、OR1E2、OR3A2、OR52A1、ORAI1、ORMDL1、OSMR、OSTalpha、OSTbeta、OTOF、OXA1L、OXGR1、OXTR、P11、P2RX1、P2RX3、P2RX4、P2RX5、P2RX7、P2RXL1、P2RY1、P2RY11、P2RY2、P2RY4、P2RY6、PAG1、PAK1、PALM、PAMCI、PARD3、PARD6A、PARD6B、PARP1、PCDH1、PCDH11X、PCDH12、PCDH24、PCDH7、PCDH8、PCDHA1、PCDHA10、PCDHA11、PCDHA2、PCDHA3、PCDHA4、PCDHA5、PCDHA6、PCDHA7、PCDHA8、PCDHAC1、PCDHAC2、PCDHB11、PCDHB12、PCDHB15、PCDHB17、PCDHB2、PCDHB3、PCDHB4、PCDHB6、PCSK7、PDGFRA、PDPK1、PDPN、PDYN、PDZD2、PDZD3、PECAM1、PEX1、PEX11A、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、PEX3、PGM5、PGRMC1、PGRMC2、PHB、PHB2、PHEX、PI4K2A、PICALM、PICK1、PIGA、PIGB、PIGC、PIGF、PIGK、PIGO、PIGR、PIGS、PIGT、PIGU、PIGV、PIGY、PIP5K3、PITPNM3、PKD1、PKD1L1、PKD2、PKD2L2、PKDREJ、PKHD1、PKP2、PKP4、PLA2G4C、PLA2R1、PLAUR、PLCE1、PLD1、PLD2、PLEKHB1、PLP2、PLSCR1、PLXNA3、PMPCA、PNN、PNPLA3、PNPLA8、PODXL、PODXL2、POLA1、POMT1、PPAP2A、PPAP2C、PPOX、PPP2R5C、PPT1、PPYR1、PRAF2、PREX1、PRICKLE1、PRKAR2A、PRKCB1、PRKCZ、PRKD1、PRLHR、PRMT8、PRNP、PROCR、PROM1、PRPH2、PRRG1、PRRG2、PRSS21、PRSS8、PSAP、PSCA、PSCD1、PSCD2、PSCD3、PSEN1、PSEN2、PSENEN、PSMG1、PTAFR、PTCH1、PTCH2、PTGER1、PTGER2、PTGER3、PTGER4、PTGFR、PTGIR、PTH2R、PTHR1、PTK7、PTPN5、PTPN6、PTPRA、PTPRB、PTPRC、PTPRCAP、PTPRD、PTPRF、PTPRG、PTPRH、PTPRJ、PTPRK、PTPRM、PTPRN、PTPRN2、PTPRO、PTPRS、PTPRT、PTPRU、PTPRZ1、PTRF、PVR、PVRL1、PVRL2、PVRL3、PXMP3、PXMP4、QSOX1、
RAB11FIP5、RAB13、RAB14、RAB22A、RAB26、RAB35、RAB5B、RAC3、RAE1、RAF1、RALBP1、RAMP1、RAMP2、RAMP3、RANBP2、RANBP5、RANGAP1、RAPGEF6、RARRES1、RASA3、RASGRP4、RCE1、RDH8、RER1、RETSAT、RGMB、RGR、RGS1、RGS19、RHAG、RHBDL1、RHBG、RHCE、RHCG、RHD、RHO、RHOB、RHOT1、RHOT2、RIC8B、RIMS1、RIN1、RIT1、RIT2、RND1、RNF139、RNF144B、RNPEP、ROBO1、ROBO4、ROM1、ROR1、ROR2、ROS1、RP1-21O18.1、RP5-886K2.1、RPN1、RPN2、RRH、RTN1、RTN4、RTN4RL1、RTN4RL2、RXFP3、RYK、RYR1、RYR2、SBF1、SBF2、SC4MOL、SCARB1、SCARB2、SCARF1、SCN2B、SCN3B、SCN4B、SCN8A、SCNN1G、SCRN1、SCTR、SCUBE1、SDC1、SDCBP、SDHA、SDHC、SDHD、SEC14L1、SEC22A、SEC22C、SEC23B、SEC24B、SECTM1、SELE、SELL、SELP、SELPLG、SELS、SEMA4F、SENP2、5-Sep、SERINC1、SERINC3、SERPINA5、SGCA、SGCB、SGCD、SGCE、SGCG、SGMS1、SGMS2、SH2B2、SHC1、SHH、SHROOM2、SHROOM3、SIGIRR、SIGLEC6、SIGLEC7、SIGLEC8、SILV、SIRPA、SIRPB1、SIRPG、SIT1、SKAP2、SLA2、SLC10A1、SLC10A2、SLC11A1、SLC11A2、SLC12A1、SLC12A2、SLC12A3、SLC12A4、SLC12A6、SLC12A7、SLC12A9、SLC13A2、SLC13A4、SLC14A1、SLC14A2、SLC15A1、SLC15A2、SLC16A1、SLC16A10、SLC16A2、SLC16A3、SLC16A4、SLC16A5、SLC16A6、SLC16A7、SLC16A8、SLC17A1、SLC17A2、SLC17A3、SLC17A4、SLC17A5、SLC17A7、SLC18A2、SLC18A3、SLC19A1、SLC1A1、SLC1A4、SLC1A5、SLC1A6、SLC20A1、SLC20A2、SLC22A1、SLC22A11、SLC22A12、SLC22A13、SLC22A14、SLC22A16、SLC22A18、SLC22A2、SLC22A3、SLC22A4、SLC22A5、SLC22A6、SLC22A7、SLC22A8、SLC23A1、SLC23A2、SLC24A1、SLC25A1、SLC25A11、SLC25A13、SLC25A14、SLC25A15、SLC25A17、SLC25A22、SLC25A3、SLC25A4、SLC25A5、SLC25A6、SLC26A1、SLC26A2、SLC26A4、SLC28A1、SLC28A2、SLC29A1、SLC29A2、SLC2A2、SLC2A4、SLC2A5、SLC2A8、SLC30A3、SLC30A5、SLC31A1、SLC31A2、SLC33A1、SLC34A1、SLC34A2、SLC34A3、SLC35A1、SLC35B2、SLC38A3、SLC39A1、SLC39A2、SLC3A1、SLC40A1、SLC43A1、SLC44A1、SLC44A2、SLC46A1、SLC4A1、SLC4A11、SLC4A3、SLC4A4、SLC5A1、SLC5A2、SLC5A3、SLC5A5、SLC5A6、SLC5A7、SLC6A2、SLC6A20、SLC6A3、SLC6A4、SLC6A7、SLC6A9、SLC7A1、SLC7A10、SLC7A11、SLC7A2、SLC7A4、SLC7A6、SLC7A7、SLC7A8、SLC7A9、SLC8A1、SLC9A1、SLC9A2、SLC9A3R2、SLC9A5、SLC9A6、SLC9A7、SLCO1B1、SLCO1B3、SLCO2A1、SLMAP、SLN、SMO、SMPD2、SNAP23、SNAP29、SNIP、SNTB1、SNTB2、SNTG1、SNTG2、SNUPN、SOAT1、SOD1、SORBS1、SORBS3、SORCS1、SORL1、SP140、SPAG9、SPAM1、SPAR、SPCS1、SPINK5、SPINT2、SPN、SREBF1、SRP9、SRPR、SRPX、SSH1、SSPN、SSR1、SSR2、SSTR1、SSTR2、SSTR3、SSTR4、SSTR5、ST14、ST3GAL5、ST3GAL6、ST6GALNAC6、ST8SIA1、STAB1、STAB2、STBD1、STEAP1、STEAP2、STEAP4、STIM1、STOM、STS、STT3A、STT3B、STX10、STX12、STX16、STX1B、STX2、STX3、STX4、STX5、STX6、STX8、STYK1、SUMO1、SURF1、SVIL、SYK、SYNE1、SYNGR1、SYNGR2、SYNGR3、SYPL1、SYTL1、SYTL2、SYTL4、TAAR5、TACR1、TACR2、TACR3、TACSTD1、TACSTD2、TAPBP、TAPT1、TAS2R16、TBC1D8、TBXA2R、TCIRG1、TDGF1、TEGT、TEK、TETRAN、TFRC、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR3、TGFBRAP1、TGM1、TGM3、THBD、THY1、TIE1、TIMM10、TIMM13、TIMM17A、TIMM17B、TIMM23、TIMM50、TIMM8B、TIMM9、TJP1、TLOC1、TLR1、TLR10、TLR2、TLR3、TLR4、TLR6、TM4SF1、TM4SF4、TM4SF5、TM7SF2、TM9SF1、TM9SF2、TMED10、TMED2、TMEM1、TMEM11、TMEM16G、TMEM2、TMEM29、TMEM47、TMEM48、TMEM5、TMEM50B、TMEM59L、TMPO、TMPRSS11D、TMPRSS11E、TMPRSS2、TMPRSS3、TMPRSS6、TNFRSF10C、TNFRSF13B、TNFRSF17、TNFRSF1A、TNFRSF25、TNFRSF4、TNFRSF9、TNFSF10、TNFSF12、TNFSF15、TNFSF4、TNFSF8、TNK1、TOM1、TOMM22、TOMM34、TPBG、TPO、TPP1、TPR、TPSG1、TPTE、TRAK2、TRAM1、TRAT1、TRDN、TREH、TRHDE、TRHR、TRIM23、TRIM27、TRIP6、TRO、TRPA1、TRPC1、TRPC3、TRPC4、TRPC5、TRPC6、TRPM1、TRPM2、TRPM5、TRPV1、TRPV2、TRPV4、TRPV5、TRPV6、TSHR、TSPAN1、TSPAN12、TSPAN13、TSPAN15、TSPAN16、TSPAN2、TSPAN3、TSPAN31、TSPAN4、TSPAN7、TSPAN9、TTYH1、TUSC3、TXNDC1、TXNDC4、TYRO3、TYROBP、UBIAD1、UBQLN4、UCP3、UMOD、UNC93A、UPK1A、UPK2、UQCRB、UQCRC1、UQCRH、USO1、UST、UTRN、VAMP1、VAMP2、VAMP3、VAMP4、VAMP5、VANGL2、VAPA、VAPB、VAT1、VCL、VDAC1、VDAC2、VDAC3、VIPR1、VIPR2、VLDLR、VSIG2、VTI1A、WFS1、WNK4、WTAP、XCR1、XK、XPO1、XPO7、XPR1、YKT6、ZAP70、ZYX等が挙げられる。
【0031】
中でも、生細胞マーカータンパク質としては、A4GNT、AAAS、AADAC、ABCA1、ABCA2、ABCA3、ABCA7、ABCB1、ABCB11、ABCB4、ABCB7、ABCB8、ABCC1、ABCC2、ABCC3、ABCC4、ABCC5、ABCC6、ABCD2、ABCD3、ABCD4、ABCF2、ABCG1、ABCG2、ABRA、ACCN1、ACCN2、ACCN3、ACCN4、ACE、ACP2、ACP5、ACTL6A、ACTN1、ACTN2、ACTN3、ACVR1、ACVR1B、ACVR1C、ACVR2A、ACVR2B、ACVRL1、ADAM11、ADAM12、ADAM17、ADAM2、ADAM23、ADAM29、ADAM30、ADAM8、ADAM9、ADCY3、ADCY7、ADCY8、ADCY9、ADI1、ADORA1、ADORA2A、ADORA2B、ADORA3、ADRA1A、ADRA1B、ADRA1D、ADRA2A、ADRA2B、ADRA2C、ADRB1、ADRB2、ADRB3、ADRM1、AFTPH、AGER、AGPAT3、AGTR1、AGTR2、AGTRL1、AIFM2、AIFM3、AKAP7、AKT1、AKTIP、ALAS2、ALG3、ALK、ALOX12、AMBP、AMFR、AMTN、ANKFY1、ANKH、ANKRA2、ANKRD20A1、ANPEP、ANXA2、AOC3、AP1G2、AP1GBP1、AP1S1、AP2S1、AP3S1、APC2、APH1A、APH1B、APOM、APP、AQP1、AQP2、AQP4、AQP5、AQP6、AQP7、AQP8、AQP9、ARCN1、ARF1、ARF6、ARFGEF2、ARFIP1、ARFIP2、ARHGEF1、ARL6、ARL6IP5、ARRB1、ARRB2、ART1、ART3、ASGR1、ASPH、ATF6、ATP12A、ATP1A1、ATP1A2、ATP1A3、ATP1A4、ATP1B1、ATP1B3、ATP1B4、ATP2A2、ATP2B1、ATP2B3、ATP2B4、ATP2C1、ATP4A、ATP5A1、ATP5B、ATP5C1、ATP5D、ATP5E、ATP5G1、ATP5G2、ATP5G3、ATP5J、ATP5O、ATP6AP1、ATP6AP2、ATP6V0A4、ATP6V0B、ATP6V0C、ATP6V1A、ATP6V1B1、ATP6V1C1、ATP6V1E1、ATP6V1F、ATP7A、ATP8B1、ATRN、AVPR1A、AVPR1B、AVPR2、AXIN1、AXL、B3GAT1、B3GNT3、B4GALT1、B4GALT4、B4GALT7、BACE1、BAI1、BAI2、BAI3、BAIAP2、BAK1、BAMBI、BASP1、BAX、BCAM、BCAP31、BCAR1、BCL10、BCL2、BCL2L13、BCS1L、BDKRB1、BDKRB2、BEST1、BET1、BET1L、BFAR、BMPR1A、BMPR2、BNIP1、BNIP2、BNIP3、BNIP3L、BPI、BRS3、BSCL2、BSND、BST1、BST2、BTK、BTN1A1、BTN2A1、C11orf2、C1GALT1、C1QBP、C3AR1、C3orf31、C5AR1、C6orf25、C7、C8A、C8B、C9、C9orf127、C9orf58、CA12、CA14、CA9、CACNA1A、CACNA1B、CACNA1C、CACNA1D、CACNA1E、CACNA1F、CACNA1G、CACNA1H、CACNA1S、CACNA2D1、CACNB1、CACNB2、CACNB3、CACNB4、CACNG1、CACNG2、CACNG4、CADM1、CADM3、CALCRL、CALM3、CALY、CAPRIN1、CARD11、CASK、CASP7、CASR、CAV1、CAV2、CAV3、CBL、CBX5、CCBP2、CCDC70、CCDC8、CCDC88A、CCKAR、CCKBR、CCR1、CCR10、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCRL1、CCRL2、CD14、CD151、CD160、CD163、CD164、CD19、CD1B、CD1C、CD1D、CD200、CD22、CD226、CD24、CD247、CD28、CD300C、CD33、CD36、CD37、CD38、CD3E、CD4、CD40、CD40LG、CD46、CD47、CD48、CD5、CD52、CD53、CD55、CD6、CD63、CD68、CD69、CD7、CD70、CD72、CD74、CD79A、CD79B、CD81、CD82、CD83、CD84、CD8B、CD96、CD97、CD99、CDC42、CDC42BPA、CDC42BPB、CDC42EP2、CDC42SE1、CDC42SE2、CDH1、CDH13、CDH15、CDH24、CDK5、CDK5R1CEACAM4、CEACAM5、CEACAM6、CEACAM7、CEACAM8、CELSR1、CELSR3、CENPF、CENTA1、CENTA2、CEPT1、CFTR、CHL1、CHMP1A、CHRM1、CHRM2、CHRM3、CHRM4、CHRM5、CHRNA1、CHRNA2、CHRNA3、CHRNA4、CHRNA6、CHRNA7、CHRNB2、CHRNB3、CHRNB4、CHRND、CHRNE、CHRNG、CHST7、CIB1、CKAP4、CKLF、CLCA1、CLCA2、CLCA4、CLCN1、CLCN3、CLCN5、CLCNKA、CLCNKB、CLEC10A、CLEC1A、CLEC1B、CLEC2B、CLEC2D、CLEC4A、CLEC4M、CLEC5A、CLEC7A、CLN3、CLN5、CLNS1A、CLPTM1、CMKLR1、CNGA1、CNIH2、CNKSR1、CNN2、CNPY2、CNR1、CNR2、CNTFR、CNTN2、COG2、COL13A1、COL17A1、COLEC12、COPA、COPB1、COPB2、COPE、COPG、COPG2、COPZ1、CORIN、CORO1A、COX15、COX18、COX6B2、CPE、CPM、CR1、CRHR1、CRHR2、CRIM1、CRIPAK、CRNN、CRTAM、CSF1R、CSF2RA、CSF2RB、CSF3R、CSK、CSNK2A1、CSPG4、CSPG5、CTGF、CTLA4、CTNNA3、CTNS、CUBN、CUTA、CUZD1、CX3CL1、CX3CR1、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、CYB561、CYB5R2、CYB5R3、CYBB、CYSLTR1、
DAB2、DAD1、DAG1、DARC、DC2、DCBLD2、DCLK1、DCT、DDOST、DDR1、DDR2、DDX19B、DEGS1、DERL1、DERL2、DERL3、DGKD、DGKK、DHCR7、DHRS9、DKK1、DLG2、DLG4、DLK1、DMBT1、DMD、DNER、DNM2、DOLPP1、DOPEY1、DOPEY2、DPM1、DPM2、DPM3、DRD1、DRD2、DRD3、DRD4、DRD5、DSC1、DSC3、DSCAM、DST、DTNBP1、DULLARD、DYSF、EBI2、EBI3、EBP、ECE1、ECE2、ECEL1、EDA、EDEM1、EDG1、EDG2、EDG3、EDG4、EDG6、EDG7、EDNRA、EDNRB、EEA1、EFNA1、EFNA3、EFNA4、EFNA5、EFNB1、EFNB2、EFNB3、EGF、EGFR、EIF2B1、EIF5A、ELMO1、ELTD1、EMCN、EMD、EMP1、EMP2、EMR1、EMR2、EMR3、EMR4、ENG、ENOX2、ENPEP、ENPP1、ENPP2、ENPP3、ENTPD1、ENTPD4、EPB41、EPB41L2、EPB41L3、EPB42、EPC1、EPGN、EPHA1、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA8、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPOR、EPS15、ERBB2IP、ERBB3、ERBB4、ERC1、ERC2、EREG、ERLIN1、ERLIN2、ERMAP、ERN1、EVI2B、EVL、EXT1、EXT2、EZR、F2R、F2RL1、F2RL2、F2RL3、F3、FADS2、FAM84B、FASLG、FAT、FCAR、FCER1A、FCER1G、FCER2、FCGR3A、FDFT1、FER1L3、FFAR1、FFAR2、FFAR3、FGFR1、FGFR3、FGFR4、FIS1、FLOT1、FLT1、FLT3、FLT4、FLVCR1、FOLH1、FOLR1、FOLR3、FPR1、FPRL1、FPRL2、FRAG1、FRAP1、FRS2、FRZB、FSHR、FUT1、FUT7、FXYD1、FXYD3、FXYD5、FXYD6、FYN、FZD10、FZD2、FZD3、FZD4、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、GABARAP、GABBR1、GABBR2、GABRA1、GABRA2、GABRA3、GABRA4、GABRA5、GABRA6、GABRB1、GABRB2、GABRB3、GABRD、GABRE、GABRG2、GABRQ、GABRR1、GABRR2、GAL3ST1、GAL3ST2、GALNT3、GALR1、GALR2、GALR3、GAS1、GBA2、GBAS、GCA、GCGR、GCNT1、GFRA2、GFRA3、GGCX、GGTLA1、GHR、GHRHR、GHSR、GIPC1、GIPR、GJA4、GJA8、GJB1、GJB2、GJD3、GLE1、GLG1、GLP1R、GLP2R、GLRA1、GML、GNA11、GNA14、GNA15、GNAI1、GNAQ、GNAS、GNAZ、GNG4、GNRHR、GOLGA3、GOLGA5、GOLGB1、GOLIM4、GOLM1、GOSR1、GOT2、GP1BA、GP5、GP6、GP9、GPA33、GPAA1、GPC1、GPC3、GPC4、GPC5、GPC6、GPER、GPNMB、GPR1、GPR109B、GPR110、GPR111、GPR112、GPR113、GPR114、GPR115、GPR116、GPR12、GPR123、GPR124、GPR125、GPR126、GPR128、GPR133、GPR135、GPR137B、GPR143、GPR144、GPR15、GPR17、GPR175、GPR176、GPR182、GPR19、GPR20、GPR21、GPR22、GPR23、GPR25、GPR3、GPR31、GPR32、GPR34、GPR35、GPR37、GPR39、GPR4、GPR42、GPR44、GPR45、GPR50、GPR52、GPR55、GPR56、GPR6、GPR64、GPR65、GPR68、GPR75、GPR97、GPR98、GPRC5A、GPRC5C、GRB10、GRIA1、GRIA2、GRIA3、GRIA4、GRID2、GRIK1、GRIK2、GRIK3、GRIK4、GRIN1、GRIN2A、GRIN2B、GRIN2C、GRINL1A、GRM1、GRM2、GRM3、GRM4、GRM5、GRM6、GRM7、GRM8、GRPR、GUCY2D、GUCY2F、GYPA、GYPB、GYPC、GYPE、GZMA、GZMB、
HAS1、HAS2、HAS3、HBEGF、HCCS、HCN2、HCRTR1、HCRTR2、HDAC11、HDLBP、HERPUD1、HFE、HLA-DOA、HLA-DRA、HLA-DRB3、HLA-DRB4、HLA-DRB5、HMGCR、HNRPM、HOMER1、HPN、HPS1、HRAS、HRB、HRH1、HRH2、HRH3、HS3ST1、HS3ST2、HS3ST3A1、HS3ST3B1、HS6ST1、HSD17B10、HSD17B2、HSD3B1、HSD3B2、HSP90B1、HTATIP2、HTR1A、HTR1B、HTR1D、HTR1E、HTR1F、HTR2A、HTR2B、HTR3A、HTR3B、HTR4、HTR5A、HTR6、HTR7、HTRA2、HVCN1、ICA1、ICAM1、ICAM2、ICAM3、ICAM4、ICAM5、IFITM1、IFITM3、IFNAR1、IFNAR2、IFNGR1、IFNGR2、IGF2R、IGSF1、IGSF2、IGSF6、IGSF8、IL10RA、IL10RB、IL11RA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL15、IL17RB、IL18R1、IL1R1、IL1RAP、IL1RL2、IL27RA、IL28RA、IL29、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL4R、IL5RA、IL6R、IL6ST、IL8RB、IL9R、IMMT、INSR、IPO7、IRS4、ITGA1、ITGA10、ITGA11、ITGA2、ITGA3、ITGA5、ITGA8、ITGA9、ITGAD、ITGAE、ITGAM、ITGAX、ITGB1、ITGB3、ITGB4、ITGB6、ITGB7、ITGB8、ITLN1、ITPR1、ITPR2、IPR3、IZUMO1、JAG2、JTB、KCNA1、KCNA2、KCNA3、KCNA4、KCNA5、KCNA6、KCNB2、KCNC1、KCNC3、KCNC4、KCND3、KCNE1、KCNE1L、KCNE2、KCNG2、KCNG3、KCNH1、KCNH2、KCNH4、KCNJ1、KCNJ10、KCNJ11、KCNJ14、KCNJ15、KCNJ2、KCNJ3、KCNJ4、KCNJ5、KCNJ6、KCNJ8、KCNK1、KCNK3、KCNK5、KCNK6、KCNMA1、KCNMB2、KCNMB3、KCNMB4、KCNN1、KCNN3、KCNN4、KCNQ1、KCNQ2、KCNQ3、KCNQ5、KCNS1、KDELR1、KDELR2、KDR、KEL、KHDRBS1、KIF1B、KIR2DL1、KIR2DL3、KIR2DL4、KIR2DS3、KIR2DS4、KIR3DL2、KIRREL3、KISS1R、KL、KLRA1、KLRB1、KLRC1、KLRC2、KLRD1、KLRF1、KLRG1、KLRK1、KPNA1、KPNA3、KPNB1、KRT1、KRTCAP2、KTN1、L2HGDH、L3MBTL4、LAMB1、LAMC3、LAMP1、LAMP2、LAMP3、LANCL1、LANCL2、LAPTM5、LARGE、LAT、LAT2、LAX1、LAYN、LBR、LCK、LCT、LDLR、LDLRAP1、LEMD3、LETM1、LGALS3、LGALS4、LGICZ1、LGR5、LHCGR、LIFR、LILRA3、LILRB1、LILRB2、LILRB3、LIMA1、LMAN1、LMAN2L、LMNB1、LMTK2、LNPEP、LPHN1、LPHN2、LPHN3、LRIT1、LRMP、LRP1、LRP12、LRP3、LRP5、LRP6、LRPAP1、LRRC32、LRRC4C、LST1、LTB4R、LTB4R2、LTC4S、LTK、LY6E、LY75、LY86、LY96、LYN、LYPD3、LYVE1、M6PR、MADD、MAEA、MAGEA1、MAGEE1、MAGT1、MAL、MALL、MAN1A2、MAN1B1、MAN1C1、MAP1LC3A、MAP1LC3B、MAP1LC3C、MAP3K12、MAP4K2、MAPT、MARCKSL1、MARCO、MAS1、MATR3、MBTPS2、MC1R、MC2R、MC3R、MC4R、MC5R、MCHR1、MCL1、MCTP1、MCTP2、MDGA1、MEP1A、MEP1B、MERTK、MET、MFI2、MFN2、MFRP、MGAT1、MGAT3、MIP、MIR16、MLANA、MLLT4、MLNR、MMD、MME、MMP14、MMP15、MMP16、MMP17、MMP24、MPL、MPP1、MPP2、MPP3、MPV17、MPZ、MPZL1、MRAS、MRC1、MRPL19、MRPL32、MRVI1、MS4A1、MS4A2、MSN、MSR1、MST1R、MSTO1、MTFR1、MTNR1A、MTNR1B、MTX1、MTX2、MUC1、MUC16、MUC20、MUC4、MUSK、MYH9、MYO16、MYO1A、MYO1C、MYO6、MYO7A、
NAGPA、NAPSB、NARF、NBEA、NCAM1、NCAM2、NCF4、NCKAP1L、NCR2、NCR3、NCSTN、ND1、NDST2、NDUFA1、NDUFA13、NDUFA2、NDUFA6、NDUFA9、NDUFAB1、NDUFB6、NDUFS1、NDUFS2、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS7、NDUFS8、NDUFV1、NECAB3、NECAP2、NEO1、NEU3、NEU4、NEXN、NF2、NFAM1、NGFR、NINJ2、NKG7、NLGN1、NMBR、NMUR1、NNT、NOD2、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、NOX4、NPC1、NPFFR2、NPHS1、NPHS2、NPLOC4、NPR2、NPTN、NPY1R、NPY2R、NPY5R、NPY6R、NRAP、NRBP1、NRM、NRSN1、NRSN2、NRXN1、NRXN3、NTNG1、NTNG2、NTRK1、NTRK2、NTRK3、NTSR1、NTSR2、NUCB2、NUMB、NUP107、NUP133、NUP153、NUP160、NUP214、NUP50、NUP54、NUP62、NUP85、NUP88、NUP98、NUTF2、NXT1、OAS2、OCA2、OGDH、OLR1、OPA1、OPCML、OPN1LW、OPN1MW、OPN1SW、OPN3、OPN4、OPRD1、OPRK1、OPRL1、OPRM1、OPRS1、OR10J1、OR1D2、OR1D4、OR1E2、OR3A2、OR52A1、ORAI1、ORMDL1、OSMR、OSTalpha、OSTbeta、OTOF、OXA1L、OXGR1、OXTR、P11、P2RX1、P2RX3、P2RX4、P2RX5、P2RX7、P2RXL1、P2RY1、P2RY11、P2RY2、P2RY4、P2RY6、PAG1、PAK1、PALM、PAMCI、PARP1、PCDH1、PCDH11X、PCDH12、PCDH24、PCDH7、PCDH8、PCDHA1、PCDHA10、PCDHA11、PCDHA2、PCDHA3、PCDHA4、PCDHA5、PCDHA6、PCDHA7、PCDHA8、PCDHAC1、PCDHAC2、PCDHB11、PCDHB12、PCDHB15、PCDHB17、PCDHB2、PCDHB3、PCDHB4、PCDHB6、PCSK7、PDGFRA、PDPK1、PDPN、PDYN、PDZD2、PDZD3、PECAM1、PEX1、PEX11A、PEX12、PEX13、PEX14、PEX16、PEX19、PEX3、PGM5、PGRMC1、PGRMC2、PHB、PHB2、PHEX、PI4K2A、PICALM、PICK1、PIGA、PIGB、PIGC、PIGF、PIGK、PIGO、PIGR、PIGS、PIGT、PIGU、PIGV、PIGY、PIP5K3、PITPNM3、PKD1、PKD1L1、PKD2、PKD2L2、PKDREJ、PKHD1、PKP2、PKP4、PLA2G4C、PLA2R1、PLAUR、PLCE1、PLD1、PLD2、PLEKHB1、PLP2、PLSCR1、PLXNA3、PMPCA、PNN、PNPLA3、PNPLA8、PODXL、PODXL2、POLA1、POMT1、PPAP2A、PPAP2C、PPOX、PPP2R5C、PPT1、PPYR1、PRAF2、PREX1、PRICKLE1、PRKAR2A、PRKCB1、PRKD1、PRLHR、PRMT8、PRNP、PROCR、PROM1、PRPH2、PRRG1、PRRG2、PRSS21、PRSS8、PSAP、PSCA、PSCD1、PSCD2、PSCD3、PSEN1、PSEN2、PSENEN、PSMG1、PTAFR、PTCH1、PTCH2、PTGER1、PTGER2、PTGER3、PTGER4、PTGFR、PTGIR、PTH2R、PTHR1、PTK7、PTPN5、PTPN6、PTPRA、PTPRB、PTPRC、PTPRCAP、PTPRD、PTPRF、PTPRG、PTPRH、PTPRJ、PTPRK、PTPRM、PTPRN、PTPRN2、PTPRO、PTPRS、PTPRT、PTPRU、PTPRZ1、PTRF、PVR、PVRL1、PVRL2、PVRL3、PXMP3、PXMP4、QSOX1、
RAB11FIP5、RAB14、RAB22A、RAB26、RAB35、RAB5B、RAC3、RAE1、RAF1、RALBP1、RAMP1、RAMP2、RAMP3、RANBP2、RANBP5、RANGAP1、RAPGEF6、RARRES1、RASA3、RASGRP4、RCE1、RDH8、RER1、RETSAT、RGMB、RGR、RGS1、RGS19、RHAG、RHBDL1、RHBG、RHCE、RHCG、RHD、RHO、RHOB、RHOT1、RHOT2、RIC8B、RIMS1、RIN1、RIT1、RIT2、RND1、RNF139、RNF144B、RNPEP、ROBO1、ROBO4、ROM1、ROR1、ROR2、ROS1、RP1-21O18.1、RP5-886K2.1、RPN1、RPN2、RRH、RTN1、RTN4、RTN4RL1、RTN4RL2、RXFP3、RYK、RYR1、RYR2、SBF1、SBF2、SC4MOL、SCARB1、SCARB2、SCARF1、SCN2B、SCN3B、SCN4B、SCN8A、SCNN1G、SCRN1、SCTR、SCUBE1、SDC1、SDCBP、SDHA、SDHC、SDHD、SEC14L1、SEC22A、SEC22C、SEC23B、SEC24B、SECTM1、SELE、SELL、SELP、SELPLG、SELS、SEMA4F、SENP2、5-Sep、SERINC1、SERINC3、SERPINA5、SGCA、SGCB、SGCD、SGCE、SGCG、SGMS1、SGMS2、SH2B2、SHC1、SHH、SHROOM3、SIGIRR、SIGLEC6、SIGLEC7、SIGLEC8、SILV、SIRPA、SIRPB1、SIRPG、SIT1、SKAP2、SLA2、SLC10A1、SLC10A2、SLC11A1、SLC11A2、SLC12A1、SLC12A2、SLC12A3、SLC12A4、SLC12A6、SLC12A7、SLC12A9、SLC13A2、SLC13A4、SLC14A1、SLC14A2、SLC15A1、SLC15A2、SLC16A1、SLC16A10、SLC16A2、SLC16A3、SLC16A4、SLC16A5、SLC16A6、SLC16A7、SLC16A8、SLC17A1、SLC17A2、SLC17A3、SLC17A4、SLC17A5、SLC17A7、SLC18A2、SLC18A3、SLC19A1、SLC1A1、SLC1A4、SLC1A5、SLC1A6、SLC20A1、SLC20A2、SLC22A1、SLC22A11、SLC22A12、SLC22A13、SLC22A14、SLC22A16、SLC22A18、SLC22A2、SLC22A3、SLC22A4、SLC22A5、SLC22A6、SLC22A7、SLC22A8、SLC23A1、SLC23A2、SLC24A1、SLC25A1、SLC25A11、SLC25A13、SLC25A14、SLC25A15、SLC25A17、SLC25A22、SLC25A3、SLC25A4、SLC25A5、SLC25A6、SLC26A1、SLC26A2、SLC26A4、SLC28A1、SLC28A2、SLC29A1、SLC29A2、SLC2A2、SLC2A4、SLC2A5、SLC2A8、SLC30A3、SLC30A5、SLC31A1、SLC31A2、SLC33A1、SLC34A1、SLC34A2、SLC34A3、SLC35A1、SLC35B2、SLC38A3、SLC39A1、SLC39A2、SLC3A1、SLC40A1、SLC43A1、SLC44A1、SLC44A2、SLC46A1、SLC4A1、SLC4A11、SLC4A3、SLC4A4、SLC5A1、SLC5A2、SLC5A3、SLC5A5、SLC5A6、SLC5A7、SLC6A2、SLC6A20、SLC6A3、SLC6A4、SLC6A7、SLC6A9、SLC7A1、SLC7A10、SLC7A11、SLC7A2、SLC7A4、SLC7A6、SLC7A7、SLC7A8、SLC7A9、SLC8A1、SLC9A1、SLC9A2、SLC9A3R2、SLC9A5、SLC9A6、SLC9A7、SLCO1B1、SLCO1B3、SLCO2A1、SLMAP、SLN、SMO、SMPD2、SNAP23、SNAP29、SNIP、SNTB1、SNTB2、SNTG1、SNTG2、SNUPN、SOAT1、SOD1、SORBS1、SORBS3、SORCS1、SORL1、SP140、SPAG9、SPAM1、SPAR、SPCS1、SPINK5、SPINT2、SPN、SREBF1、SRP9、SRPR、SRPX、SSH1、SSPN、SSR1、SSR2、SSTR1、SSTR2、SSTR3、SSTR4、SSTR5、ST14、ST3GAL5、ST3GAL6、ST6GALNAC6、ST8SIA1、STAB1、STAB2、STBD1、STEAP1、STEAP2、STEAP4、STIM1、STOM、STS、STT3A、STT3B、STX10、STX12、STX16、STX1B、STX2、STX3、STX4、STX5、STX6、STX8、STYK1、SUMO1、SURF1、SVIL、SYK、SYNE1、SYNGR1、SYNGR2、SYNGR3、SYPL1、SYTL1、SYTL2、SYTL4、TAAR5、TACR1、TACR2、TACR3、TACSTD1、TACSTD2、TAPBP、TAPT1、TAS2R16、TBC1D8、TBXA2R、TCIRG1、TDGF1、TEGT、TEK、TETRAN、TFRC、TGFBR2、TGFBR3、TGFBRAP1、TGM1、TGM3、THBD、THY1、TIE1、TIMM10、TIMM13、TIMM17A、TIMM17B、TIMM23、TIMM50、TIMM8B、TIMM9、TLOC1、TLR1、TLR10、TLR2、TLR3、TLR4、TLR6、TM4SF1、TM4SF4、TM4SF5、TM7SF2、TM9SF1、TM9SF2、TMED10、TMED2、TMEM1、TMEM11、TMEM16G、TMEM2、TMEM29、TMEM47、TMEM48、TMEM5、TMEM50B、TMEM59L、TMPO、TMPRSS11D、TMPRSS11E、TMPRSS2、TMPRSS3、TMPRSS6、TNFRSF10C、TNFRSF13B、TNFRSF17、TNFRSF1A、TNFRSF25、TNFRSF4、TNFRSF9、TNFSF10、TNFSF12、TNFSF15、TNFSF4、TNFSF8、TNK1、TOM1、TOMM22、TOMM34、TPBG、TPO、TPP1、TPR、TPSG1、TPTE、TRAK2、TRAM1、TRAT1、TRDN、TREH、TRHDE、TRHR、TRIM23、TRIM27、TRIP6、TRO、TRPA1、TRPC1、TRPC3、TRPC4、TRPC5、TRPC6、TRPM1、TRPM2、TRPM5、TRPV1、TRPV2、TRPV4、TRPV5、TRPV6、TSHR、TSPAN1、TSPAN12、TSPAN13、TSPAN15、TSPAN16、TSPAN2、TSPAN3、TSPAN31、TSPAN4、TSPAN7、TSPAN9、TTYH1、TUSC3、TXNDC1、TXNDC4、TYRO3、TYROBP、UBIAD1、UBQLN4、UCP3、UMOD、UNC93A、UPK1A、UPK2、UQCRB、UQCRC1、UQCRH、USO1、UST、UTRN、VAMP1、VAMP2、VAMP3、VAMP4、VAMP5、VANGL2、VAPB、VAT1、VCL、VDAC1、VDAC2、VDAC3、VIPR1、VIPR2、VLDLR、VSIG2、VTI1A、WFS1、WTAP、XCR1、XK、XPO1、XPO7、XPR1、YKT6、ZAP70、及びZYXからなる群より選ばれる1種であることが好ましい。
【0032】
また、中でも、生細胞マーカータンパク質としては、トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)等のセリンプロテアーゼであることがより好ましく、市販のキットを用いて簡便に検出することができることから、TPP1であることがさらに好ましい。
【0033】
生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトするために用いられる間質細胞としては、例えば、内皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、樹状細胞、マクロファージ、肥満細胞、上皮細胞、心筋細胞、肝細胞、膵島細胞、組織幹細胞、平滑筋細胞等が挙げられる。細胞構造体に含まれる間質細胞は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。細胞構造体に含まれる間質細胞の細胞種としては、特に限定されるものではなく、がん細胞の由来や種類や、評価に使用される抗がん剤の種類、目的の抗がん活性が奏される生体内の環境等を考慮して、適宜選択することができる。
【0034】
血管網構造やリンパ管網構造は、がん細胞の増殖や活性に重要である。このため、細胞構造体は、脈管網構造を備えるものが好ましい。すなわち、細胞構造体としては、脈管を形成していない細胞の積層体の内部に、リンパ管及び血管等の少なくとも一方の脈管網構造が三次元的に構築され、より生体内に近い組織を構築しているものが好ましい。脈管網構造は、細胞構造体の内部にのみ形成されていてもよく、少なくともその一部が細胞構造体の表面又は底面に露出されるように形成されていてもよい。
なお、本発明及び本願明細書において、「脈管網構造」とは、生体組織における血管網やリンパ管網のような、網状の構造を指す。
【0035】
脈管網構造は、間質細胞として脈管を構成する内皮細胞を含むことにより形成させることができる。細胞構造体に含まれる内皮細胞としては、血管内皮細胞であってもよく、リンパ管内皮細胞であってもよい。また、血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞との両方を含んでいてもよい。
【0036】
細胞構造体が脈管網構造を備える場合、該細胞構造体中の内皮細胞以外の細胞としては、内皮細胞が脈管網を形成することを阻害しないものであれば特に限定されるものではない。しかしながら、内皮細胞が本来の機能及び形状を保持する脈管網を形成しやすいことから、生体内において脈管の周辺組織を構成する細胞であることが好ましい。さらに、生体内のがん微小環境とより近似させられることから、内皮細胞以外の細胞として少なくとも線維芽細胞を含む細胞構造体がより好ましく、血管内皮細胞と線維芽細胞とを含む細胞構造体、リンパ管内皮細胞と線維芽細胞とを含む細胞構造体、又は血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞と線維芽細胞とを含む細胞構造体がさらに好ましい。なお、細胞構造体に含まれる内皮細胞以外の細胞としては、内皮細胞と同種の生物種由来の細胞であってもよく、異種の生物種由来の細胞であってもよい。また、細胞構造体に含まれる内皮細胞以外の細胞は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0037】
細胞構造体中の内皮細胞の数は、脈管網構造が形成されるのに充分な数であれば特に限定されるものではなく、細胞構造体の大きさや、内皮細胞や内皮細胞以外の細胞の細胞種等を考慮して適宜決定することができる。例えば、細胞構造体を構成する全細胞に対する内皮細胞の存在比(細胞数比)を0.1%以上に設定することによって、脈管網構造が形成された細胞構造体を調製できる。内皮細胞以外の細胞として線維芽細胞を用いる場合、本実施形態に係る細胞構造体における内皮細胞数は、線維芽細胞数の0.1%以上であることが好ましく、0.1%以上10.0%以下であることがより好ましく、0.1%以上5.0%以下であることがさらに好ましい。内皮細胞として血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞との両方を含む場合、血管内皮細胞及びリンパ管内皮細胞の総細胞数が、線維芽細胞数の0.1%以上であることが好ましく、0.1%以上10.0%以下であることがより好ましく、0.1%以上5.0%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
(がん細胞)
がん細胞としては、株化された培養細胞であってもよく、がん患者から採取されたがん細胞であってもよい。がん患者から採取されたがん細胞は、予め培養して増殖させたものであってもよい。具体的には、がん患者から採取された初代がん細胞、人工培養がん細胞、iPSがん幹細胞、がん幹細胞、がん治療の研究や抗がん剤の開発に利用するために予め準備されている株化がん細胞等が挙げられる。また、ヒト由来のがん細胞であってもよく、ヒト以外の動物由来のがん細胞であってもよい。なお、がん細胞ががん患者から採取されたがん細胞である場合、がん患者から採取されたがん細胞以外の細胞も、がん細胞と共に含んでいてもよい。がん細胞以外の細胞としては、例えば、術後摘出した固形組織内に含まれる1種類又は2種類以上の細胞が挙げられる。
【0039】
がん細胞とは、体細胞から派生して無限の増殖能を獲得した細胞である。がん細胞の由来となるがんとしては、例えば、乳がん(例えば、浸潤性乳管がん、非浸潤性乳管がん、炎症性乳がん等)、前立腺がん(例えば、ホルモン依存性前立腺がん、ホルモン非依存性前立腺がん等)、膵がん(例えば、膵管がん等)、胃がん(例えば、乳頭腺がん、粘液性腺がん、腺扁平上皮がん等)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、悪性中皮腫等)、結腸がん(例えば、消化管間質腫瘍等)、直腸がん(例えば、消化管間質腫瘍等)、大腸がん(例えば、家族性大腸がん、遺伝性非ポリポーシス大腸がん、消化管間質腫瘍等)、小腸がん(例えば、非ホジキンリンパ腫、消化管間質腫瘍等)、食道がん、十二指腸がん、舌がん、咽頭がん(例えば、上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん等)、頭頚部がん、唾液腺がん、脳腫瘍(例えば、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫等)、神経鞘腫、肝臓がん(例えば、原発性肝がん、肝外胆管がん等)、腎臓がん(例えば、腎細胞がん、腎盂と尿管の移行上皮がん等)、胆嚢がん、胆管がん、膵臓がん、肝がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、卵巣がん(例、上皮性卵巣がん、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍等)、膀胱がん、尿道がん、皮膚がん(例えば、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞がん等)、血管腫、悪性リンパ腫(例えば、細網肉腫、リンパ肉腫、ホジキン病等)、メラノーマ(悪性黒色腫)、甲状腺がん(例えば、甲状腺髄様がん等)、副甲状腺がん、鼻腔がん、副鼻腔がん、骨腫瘍(例えば、骨肉腫、ユーイング腫瘍、子宮肉腫、軟部組織肉腫等)、転移性髄芽腫、血管線維腫、隆起性皮膚線維肉腫、網膜肉腫、陰茎癌、精巣腫瘍、小児固形がん(例えば、ウィルムス腫瘍、小児腎腫瘍等)、カポジ肉腫、AIDSに起因するカポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、慢性骨髄増殖性疾患、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病等)等が挙げられ、これらに限定されない。
【0040】
間質細胞やがん細胞等の細胞構造体に含まれる細胞の種類は特に限定されるものではなく、動物から採取された細胞であってもよく、動物から採取された細胞を培養した細胞であってもよく、動物から採取された細胞に各種処理を施した細胞であってもよく、培養細胞株であってもよい。動物から採取された細胞の場合、採取部位は特に限定されず、骨、筋肉、内臓、神経、脳、皮膚、血液等に由来する体細胞であってもよく、生殖細胞であってもよく、胚性幹細胞(ES細胞)であってもよい。
【0041】
また、間質細胞やがん細胞等の細胞構造体に含まれる細胞が由来する生物種は特に限定されるものではなく、例えば、ヒトや、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、マウス、ラット等の動物に由来する細胞を用いることができる。動物から採取された細胞を培養した細胞としては、初代培養細胞であってもよく、継代培養細胞であってもよい。また、各種処理を施した細胞としては、誘導多能性幹細胞細胞(iPS細胞)や、分化誘導後の細胞が挙げられる。また、細胞構造体は、同種の生物種由来の細胞のみから構成されていてもよく、複数種類の生物種由来の細胞により構成されていてもよい。
【0042】
細胞構造体中のがん細胞の数は、特に限定されるものではないが、間質細胞として内皮細胞を含む細胞構造体を用いる場合には、より生体内のがん微小環境とより近似させられることから、細胞構造体中のがん細胞数に対する内皮細胞数の比率([内皮細胞数]/[がん細胞数])が0超1.5以下であることが好ましい。また、内皮細胞と線維芽細胞とがん細胞とを含む細胞構造体を用いる場合には、細胞構造体中のがん細胞数に対する線維芽細胞数の比率([線維芽細胞数]/[がん細胞数])が0.6以上100以下であることが好ましく、50以上100以下であることがより好ましい。
【0043】
(細胞構造体の特性)
細胞構造体の大きさや形状は、特に限定されるものではない。より生体内の組織に形成された脈管と近い状態の脈管網構造が形成可能であり、より精度の高い評価が可能であることから、該細胞構造体の厚さは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましく、100μm以上がよりさらに好ましい。該細胞構造体の厚さとしては、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下がさらに好ましい。細胞構造体の細胞層の数としては、2層以上60層以下程度が好ましく、5層以上60層以下程度がより好ましく、10層以上60層以下程度がさらに好ましい。
【0044】
なお、本発明及び本願明細書において、細胞構造体を構成する細胞層数は、三次元構造を構成する細胞の総数を、1層当たりの細胞数(1層を構成するために必要な細胞数)で除することにより測定される。1層当たりの細胞数は、細胞構造体を構成させる際に使用する細胞容器に、予め細胞をコンフルエントになるように平面的に培養して調べることができる。具体的には、ある細胞容器に形成された細胞構造体の細胞層数は、該細胞構造体を構成する全細胞数を計測し、該細胞容器の1層当たりの細胞数で除することにより算出できる。
【0045】
(細胞構造体の作製方法)
一般的に、細胞構造体は、細胞培養容器中に構築される。該細胞培養容器としては、細胞構造体の構築が可能であり、且つ構築された細胞構造体の培養が可能な容器であれば特に限定されるものではない。該細胞培養容器としては、具体的には、ディッシュ、セルカルチャーインサート(例えば、Transwell(登録商標)インサート、Netwell(登録商標)インサート、Falcon(登録商標)セルカルチャーインサート、Millicell(登録商標)セルカルチャーインサート等)、チューブ、フラスコ、ボトル、プレート等が挙げられる。細胞構造体の構築においては、該細胞構造体を用いた評価をより適正に行うことができるため、ディッシュ又は各種セルカルチャーインサートが好ましい。
【0046】
細胞構造体は、間質細胞を含む多層の細胞層から形成される構造体であればよく、その構築方法は特に限定されるものではない。例えば、一層ずつ構築して順次積層させて構築する方法であってもよく、2層以上の細胞層を一度に構築する方法であってもよく、両構築方法を適宜組み合わせて多層の細胞層を構築する方法であってもよい。また、細胞構造体は、各細胞層を構成する細胞種が層ごとに異なる多層構造体であってもよく、各細胞層を構成する細胞種が、構造体の全層で共通するものであってもよい。例えば、細胞種毎に層を形成し、この細胞層を順次積層させることによって構築する方法であってもよく、複数種類の細胞を混合した細胞混合液を予め調製し、この細胞混合液から多層構造の細胞構造体を一度に構築する方法であってもよい。
【0047】
一層ずつ構築して順次積層させて構築する方法としては、例えば、参考文献1(特許第4919464号公報に記載されている方法、すなわち、細胞層を形成する工程と、形成された細胞層をECM(細胞外マトリックス)の成分を含有する溶液に接触させる工程と、を交互に繰り返すことにより、連続的に細胞層を積層する方法が挙げられる。例えば、該方法を行うに際し、予め、細胞構造体を構成する全ての細胞を混合した細胞混合物を調製しておき、この細胞混合物によって各細胞層を形成することによって、構造体全体に脈管網構造が形成されており、かつがん細胞が構造体全体に散在している細胞構造体が構築できる。また、各細胞層を、細胞種ごとに形成することによって、内皮細胞から形成された層にのみ脈管網構造が形成されており、がん細胞が特定の層にのみ存在している細胞構造体が構築できる。
【0048】
2層以上の細胞層を一度に構築する方法としては、例えば、参考文献2(特許第5850419号公報)に記載されている方法、すなわち、予め細胞の表面全体をインテグリンが結合するアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)配列を含む高分子と、前記RGD配列を含む高分子に対する相互作用をする高分子と、によって被覆しておき、この接着膜で被覆された被覆細胞を細胞培養容器に収容した後、遠心処理等によって被覆細胞同士を集積させることにより、多層の細胞層を有する細胞構造体を構築する方法が挙げられる。
【0049】
例えば、該方法を行うに際し、予め、細胞構造体を構成する全ての細胞を混合した細胞混合物を調製しておき、この細胞混合物に接着性成分を添加することによって調製された被覆細胞を用いることができる。これにより、1度の遠心処理によって、構造体全体にがん細胞が散在する細胞構造体が構築できる。同様に、予め、細胞構造体を構成する全ての細胞を混合した細胞混合物を調製しておき、この細胞混合物に接着性成分を添加することによって調製された被覆細胞を用いることにより、1度の遠心処理によって、構造体全体に脈管網構造が形成されている細胞構造体が構築できる。また、例えば、内皮細胞を被覆した被覆細胞と、線維芽細胞を被覆した被覆細胞と、がん患者から採取された細胞群を被覆した被覆細胞とを、それぞれ別個に調製し、線維芽細胞の被覆細胞から構成される多層を形成させた後、その上に内皮細胞の被覆細胞から形成される1層を積層させ、さらにその上に線維芽細胞の被覆細胞から形成される多層を積層させ、さらにその上にがん細胞を含む細胞の被覆細胞から形成される1層を積層させることもできる。これにより、厚みのある線維芽細胞層に挟まれた脈管網構造を備える細胞構造体が構築できる。
【0050】
また、例えば、内皮細胞を被覆した被覆細胞と、線維芽細胞を被覆した被覆細胞と、がん患者から採取された細胞群を被覆した被覆細胞とを、それぞれ別個に調製し、線維芽細胞の被覆細胞から多層を形成させた後、その上に内皮細胞の被覆細胞から形成される1層を積層させ、さらにその上に線維芽細胞の被覆細胞から形成される多層を積層させ、さらにその上に、がん細胞を含む細胞の被覆細胞から形成される1層を積層させることもできる。これにより、厚みのある線維芽細胞層に挟まれた脈管網構造を備え、且つ、がん患者から採取されたがん細胞を含む層を備える細胞構造体が構築できる。
【0051】
また、細胞構造体は、例えば、下記工程(A)~工程(C)を有する方法を用いて作製することもができる。本方法では、工程(A)及び工程(B)を少なくとも1回行った後、工程(C)を行う。
細胞が、カチオン性物質、細胞外マトリックス成分、及び高分子電解質を少なくとも含む溶液に懸濁されている混合物を得る工程(A);
得られた前記混合物から前記細胞を集め、基材上に細胞集合体を形成する工程(B);
前記細胞を培養し、細胞構造体を得る工程(C)。
【0052】
本明細書及び本願明細書において、「細胞集合体」とは細胞の集団を意味する。細胞集合体には、遠心分離や濾過などによって得られる細胞の沈殿体(細胞を沈殿させることにより形成された細胞の集合体)も含まれる。ある実施形態では、細胞集合体はスラリー状の粘稠体である。本明細書において、「スラリー状の粘稠体」とは、Akihiro Nishiguchi et al., Macromol Biosci. 2015 Mar;15(3):312-7に記載されるようなゲル様の細胞集合体を指す。
【0053】
工程(A)は、カチオン性物質、細胞外マトリックス成分、及び高分子電解質を少なくとも含む溶液(以下、「細胞懸濁用溶液」ということがある。)に、細胞構造体の構築に使用する細胞を懸濁させることにより行う。細胞懸濁用溶液に懸濁させる細胞集団は、細胞構造体の構築に使用する全細胞であってもよく、その一部であってもよい。細胞懸濁用溶液に懸濁させる細胞集団が細胞構造体の製造に使用する全細胞である場合には、脈管内皮細胞と脈管内皮細胞以外の細胞を含み、NE比率が10~25%となる細胞集団を、細胞懸濁用溶液に懸濁させて混合物を得ることが好ましい。本実施形態に係る方法に用いられる細胞は、前記の本発明に係る細胞構造体を構成する細胞と同様の細胞を用いることができる。
【0054】
本実施形態で用いられるカチオン性物質としては、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、任意の正電荷を有する物質を用いることができる。カチオン性物質には、トリス-塩酸緩衝液、トリス-マレイン酸緩衝液、ビス-トリス-緩衝液、及びHEPESなどのカチオン性緩衝液や、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリリシン、ポリヒスチジン、及びポリアルギニン等が挙げられる。本実施形態で用いられるカチオン性物質はカチオン性緩衝液であることが好ましい。
【0055】
カチオン性物質の濃度は、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。本実施形態で用いられるカチオン性物質の濃度は10~100mMであることが好ましい。例えば、本実施形態で用いられるカチオン性物質の濃度は、20~90mM、30~80mM、40~70mM、45~60mMであることが好ましい。本実施形態で用いられるカチオン性物質の濃度は50mMであることがより好ましい。
【0056】
カチオン性物質としてカチオン性緩衝液が用いられる場合、カチオン性緩衝液のpHは、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。本実施形態で用いられるカチオン性緩衝液のpHは6.0~8.0であることが好ましい。例えば、本実施形態で用いられるカチオン性緩衝液のpHは、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、又は8.0である。本実施形態で用いられるカチオン性緩衝液のpHは7.2~7.6であることがより好ましい。本実施形態で用いられるカチオン性緩衝液のpHは7.4であることがさらに好ましい。
【0057】
本発明及び本願明細書において、「高分子電解質」とは、高分子鎖中に解離可能な官能基を有する高分子を意味する。本実施形態で用いられる高分子電解質としては、細胞の生育及び細胞構造体の形成に悪影響を及ぼさない限り、任意の高分子電解質を用いることができる。高分子電解質には、ヘパリンや、コンドロイチン硫酸(例えば、コンドロイチン4-硫酸、コンドロイチン6-硫酸)、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸等のグリコサミノグリカン;デキストラン硫酸や、ラムナン硫酸、フコイダンや、カラギナン、ポリスチレンスルホン酸、及びポリアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリアクリル酸等が挙げられるが、これらに限定されない。工程(A)において調製される混合物には、高分子電解質を1種類のみ混合させてもよく、2種類以上を組み合わせて混合させてもよい。本発明に係る細胞構造体の製造においては、グリコサミノグリカンを用いることが好ましく、ヘパリン及び/又はデキストラン硫酸を用いることがより好ましい。
【0058】
前記細胞懸濁用溶液に混合する高分子電解質の量は、細胞の生育及び細胞構造体の製造に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、細胞懸濁用溶液中の高分子電解質の濃度は、0mg/mL超であればよく、0.010mg/mL以上が好ましく、0.020mg/mL以上がより好ましく、0.025mg/mL以上がさらに好ましく、0.05mg/mL以上がよりさらに好ましい。また、細胞懸濁用溶液中の高分子電解質の濃度は、1.0mg/mL未満が好ましく、0.75mg/mL以下がより好ましく、0.5mg/mL以下がさらに好ましく、0.25mg/mL以下がよりさらに好ましく、0.1mg/mL以下が特に好ましい。
【0059】
本実施形態で用いられる細胞外マトリックス成分としては、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、細胞外マトリックス(ECM)を構成する任意の成分を用いることができる。コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、エラスチン、テネイシン、エンタクチン、フィブリリン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、又はこれらの改変体若しくはバリアント等が挙げられる。プロテオグリカンには、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ケラタン硫酸プロテオグリカン、デルマタン硫酸プロテオグリカン等が挙げられる。グリコサミノグリカンには、ヒアルロン酸、コンドロイチン4-硫酸、コンドロイチン6-硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン等が挙げられる。工程(A)において調製される混合物には、細胞外マトリックス成分を1種類のみ混合させてもよく、2種類以上を組み合わせて混合させてもよい。本発明に係る細胞構造体の製造においては、コラーゲン、ラミニン、及びフィブロネクチンからなる群より選択される1種以上を用いることが好ましく、中でもコラーゲンであることが好ましい。
【0060】
前記細胞懸濁用溶液に混合する細胞外マトリックス成分の量は、細胞の生育及び細胞構造体の製造に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、細胞懸濁用溶液中の細胞外マトリックス成分の濃度は、0mg/mL超であればよく、0.010mg/mL以上が好ましく、0.020mg/mL以上がより好ましく、0.025mg/mL以上がさらに好ましく、0.05mg/mL以上がよりさらに好ましい。また、細胞懸濁用溶液中の細胞外マトリックス成分の濃度は、1.0mg/mL未満が好ましく、0.75mg/mL以下がより好ましく、0.5mg/mL以下がさらに好ましく、0.25mg/mL以下がよりさらに好ましく、0.1mg/mL以下が特に好ましい。
【0061】
前記細胞懸濁用溶液に混合する高分子電解質と細胞外マトリックス成分の配合比は、1:2~2:1である。本発明に係る細胞構造体の製造においては、高分子電解質と細胞外マトリックス成分の配合比が、1:1.5~1.5:1であることが好ましく、1:1であることがより好ましい。
【0062】
本発明に係る細胞構造体は、工程(A)及び工程(B)を少なくとも1回行った後、工程(C)を行う。工程(A)~工程(C)を繰り返す、具体的には、工程(C)で得られた細胞構造体の上に、工程(B)として工程(A)で調製した混合物を播種した後、工程(C)を行うことを繰り返すことにより、充分な厚みの細胞構造体を構築することができる。工程(C)で得られた細胞構造体の上に新たに播種する混合物の細胞組成は、既に構築されている細胞構造体を構成する細胞組成と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0063】
本実施形態に係る方法では、工程(A)の後に、(A’-1)得られた混合物から液体部分を除去し、細胞集合体を得る工程、及び(A’-2)細胞集合体を溶液に懸濁する工程、を含み、かつ工程(B)に代えて、(B’)得られた懸濁液から細胞を沈殿し、基材上に細胞の沈殿体を形成する工程を含んでもよい。
【0064】
本実施形態の方法において、細胞と細胞懸濁用溶液との混合は、ディッシュ、チューブ、フラスコ、ボトル、プレートなどの適当な容器中で行われてもよく、工程(B)において用いられる基材上で行われてもよい。工程(A’-2)における懸濁もまた、ディッシュ、チューブ、フラスコ、ボトル、プレートなどの適当な容器中で行われてもよく、工程(B’)において用いられる基材上で行われてもよい。
【0065】
本実施形態の上記方法では、工程(A’-1)における液体部分を除去する手段として、当業者に公知の手法を用いることができる。例えば、遠心分離や濾過によって、液体部分を除去してもよい。遠心分離の条件は、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、混合物の入ったマイクロチューブを室温、400×gで1分間の遠心分離に供して液体部分と細胞集合体とを分離することによって、液体部分を除去する。あるいは、自然沈降によって細胞を集めた後、液体部分を除去してもよい。
【0066】
本実施形態の上記方法の工程(A’-2)において用いられる溶液は、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、使用される細胞に適した細胞培養培地又は緩衝液が用いられる。
【0067】
本実施形態の上記方法の工程(B)又は(B’)において用いられる基材には、細胞の培養に用いるための培養容器が挙げられる。培養容器は、細胞や微生物の培養に通常用いられている素材、形状を有する容器であってよい。培養容器の素材としては、ガラスや、ステンレス、プラスチックなどが挙げられるが、これらに限定されない。培養容器としては、ディッシュや、チューブ、フラスコ、ボトル、プレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。基材は、例えば、液体中の細胞を通過させず、液体を通すことが可能な材料である。
【0068】
本実施形態で用いられる基材は透過膜であることが好ましい。かかる透過膜を有する容器としては、Transwell(登録商標)インサート、Netwell(登録商標)インサート、Falcon(登録商標)セルカルチャーインサート、Millicell(登録商標)セルカルチャーインサートなどのセルカルチャーインサートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
本実施形態の上記方法では、工程(B)又は(B’)における細胞を集める手段として、当業者に公知の手法を用いることができる。例えば、遠心分離、磁性分離、又は濾過によって、細胞を集めてもよい。遠心分離の条件は、細胞の生育に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、混合物又は懸濁液をセルカルチャーインサートに播種し、室温(25℃)、400×gで1分間の遠心分離に供することで、細胞を集める。あるいは、自然沈降によって細胞を集めてもよい。工程(B’)では、例えば遠心分離や濾過によって懸濁液から液体部分を除去することで、基材上に細胞の沈殿体を形成してもよい。
【0070】
あるいは、自然沈降によって基材上に細胞の沈殿体を形成してもよい。工程(B)における細胞集合体又は工程(B’)における細胞の沈殿体は層状であってもよい。
【0071】
本実施形態の上記方法の工程(C)における培養により、基材上に、表面が前記脈管内皮細胞からなる内皮細胞層であり、内部に前記脈管内皮細胞以外の細胞が存在している細胞構造体が、1個又は複数個形成される。工程(C)における細胞の培養は、培養される細胞に適した培養条件下で行うことができる。当業者は、細胞の種類や所望の機能に応じて適切な培地を選択することができる。培養温度や培養時間等の諸条件もまた、当業者が容易に定めうる。
【0072】
工程(C)における培養に用いる培養培地としては、細胞構造体を構成する細胞が生育可能な培地であれば特に限定されるものではないが、上皮成長因子(EGF)、血管上皮成長因子(VEGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)、インスリン様成長因子(IGF)等の成長因子の含有量が低い、又は含有していない培地や、血清の含有量が低い、又は含有していない培地が好ましい。各種成長因子等の含有量が多い場合には、脈管形成が促進される場合がある。本実施形態においては、成長因子が添加されていない培地が好ましく、無血清培地がより好ましい。
【0073】
また、細胞構造体は、例えば、下記工程(1)~工程(3)を有する方法を用いて作製することもができる。
(1)細胞、カチオン性物質、細胞外マトリックス成分及び高分子電解質を含む混合物を得る工程;
(2)前記混合物をゲル化させてゲル状組成物を得る工程;
(3)前記ゲル状組成物をインキュベートして細胞構造体を得る工程。
【0074】
なお、ここでいう細胞は、細胞構造体の形成に用いられる細胞であり、生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞と、がん細胞と、を含む。
【0075】
また、細胞構造体の形態に特に制限は無く、例えば、セルカルチャーインサート等の容器の内部で細胞を培養して形成した細胞構造体であってもよいし、コラーゲン等の天然生体高分子や合成高分子によって構成されたスキャフォールド内で細胞を培養して形成した細胞構造体であってもよいし、細胞凝集体(スフェロイド)であってもよいし、シート状の細胞構造体であってもよい。
【0076】
以下、各工程について説明する。
【0077】
まず、工程(1)において、細胞、カチオン性物質、細胞外マトリックス成分及び高分子電解質を含む混合物を得る。細胞、カチオン性物質、細胞外マトリックス成分、高分子電解質の混合は、水性溶媒中で行ってもよい。水性溶媒の例としては、水、緩衝液及び培地が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
工程(1)においては、生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞及びがん細胞を用いる。生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞及びがん細胞としては、上述した細胞をそれぞれ用いることができる。生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞及びがん細胞を共に用いて細胞構造体を製造することで、種々のがんモデル組織を製造することが可能になる。例えば、NHDF、HUVEC及びがん細胞を用いた場合、がん細胞を含み、且つ、内部に毛細血管を有する細胞構造体を得ることが可能になる。NHDF及び大腸がん細胞を用いた場合、大腸がんのモデル組織を得ることが可能になる。また、NHDF、ヒトiPS細胞由来心筋細胞(iPS-CM)及びがん細胞を用いた場合、同期拍動を示す心筋のがんモデル組織を得ることが可能になる。
【0079】
工程(1)における生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞:がん細胞の比率(細胞数)は、99:1~9:1であってもよいし、80:20~50:50であってもよいし、20:80~50:50であってもよいし、10:90~50:50であってもよい。
【0080】
カチオン性物質としては、細胞の生育及び後述する細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、任意の正電荷を有する物質を用いることができる。カチオン性物質には、トリス-塩酸、トリス-マレイン酸、ビス-トリス、HEPES等のカチオン性緩衝剤、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリリシン、ポリヒスチジン、ポリアルギニン等が挙げられるが、これらに限定されない。なかでもカチオン性緩衝剤が好ましく、トリス-塩酸がより好ましい。
【0081】
工程(1)における混合物中のカチオン性物質の濃度は、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。本実施形態で用いられるカチオン性物質の濃度は10~100mMであることが好ましく、例えば20~90mMであってもよく、例えば30~80mMであってもよく、例えば40~70mMであってもよく、例えば45~60mMであってもよい。
【0082】
カチオン性物質としてカチオン性緩衝剤を用いる場合、カチオン性緩衝液のpHは、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。本実施形態で用いられるカチオン性緩衝液のpHは6.0~8.0であることが好ましい。例えば、本実施形態で用いられるカチオン性緩衝液のpHは、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0であってよい。本実施形態で用いられるカチオン性緩衝液のpHは7.2~7.6であることがより好ましく、約7.4であることが更に好ましい。
【0083】
細胞外マトリックス成分としては、細胞の生育及び後述する細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、細胞外マトリックス(ECM)を構成する任意の成分を用いることができる。細胞外マトリックス成分としては、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、エラスチン、テネイシン、エンタクチン、フィブリリン、プロテオグリカン、これらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。細胞外マトリックス成分は、上述したものの改変体、バリアント等であってもよい。細胞外マトリックス成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
プロテオグリカンとしては、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ケラタン硫酸プロテオグリカン、デルマタン硫酸プロテオグリカンが挙げられる。細胞外マトリックス成分としては、なかでも、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチンが好ましく、コラーゲンが特に好ましい。
【0085】
工程(1)における混合物中の細胞外マトリックス成分の含有量の合計は、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されず、0.005mg/mL以上1.5mg/mL以下であってもよく、0.005mg/mL以上1.0mg/mL以下であってもよく、0.01mg/mL以上1.0mg/mL以下であってもよく、0.025mg/mL以上1.0mg/mL以下であってもよく、0.025mg/mL以上0.1mg/mL以下であってもよい。細胞外マトリックス成分は、適切な溶媒に溶解して用いることができる。溶媒としては、水、緩衝液、酢酸等が挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、緩衝液又は酢酸が好ましい。
【0086】
本明細書において、高分子電解質とは、高分子鎖中に解離可能な官能基を有する高分子を意味する。本実施形態で用いられる高分子電解質としては、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、任意の高分子電解質を用いることができる。高分子電解質としては、ヘパリン、コンドロイチン硫酸(例えば、コンドロイチン4-硫酸、コンドロイチン6-硫酸)、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸等のグリコサミノグリカン;デキストラン硫酸、ラムナン硫酸、フコイダン、カラギナン、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ポリアクリル酸、これらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない。高分子電解質は、上述したものの誘導体であってもよい。これらの高分子電解質は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
高分子電解質は、グリコサミノグリカンであることが好ましい。なかでも、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸が好ましく、ヘパリンが特に好ましい。
【0088】
工程(1)における混合物中の高分子電解質の濃度は、細胞の生育及び細胞集合体の形成に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。細胞外マトリックス成分と異なり、高分子電解質は溶解の限界以下であれば、どのような濃度であっても効果があり、また、細胞外マトリックス成分による効果を阻害しない。高分子電解質の濃度は0.005mg/mL以上であることが好ましく、0.005mg/mL以上1.0mg/mL以下であってもよく、0.01mg/mL以上1.0mg/mL以下であってもよく、0.025mg/mL以上1.0mg/mL以下であってもよく、0.025mg/mL以上0.1mg/mL以下であってもよい。
【0089】
高分子電解質は、適切な溶媒に溶解して用いることができる。溶媒の例としては、水及び緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。上述のカチオン性物質としてカチオン性緩衝液が用いられる場合、高分子電解質をカチオン性緩衝液に溶解して用いてもよい。
【0090】
工程(1)における混合物中の高分子電解質と細胞外マトリックス成分との配合比(終濃度比)は1:2~2:1であることが好ましく、1:1.5~1.5:1であってもよく、1:1であってもよい。
【0091】
工程(1)において、細胞、カチオン性物質、細胞外マトリックス成分、高分子電解質の混合は、ディッシュ、チューブ、フラスコ、ボトル、ウェルプレート、セルカルチャーインサート等の適当な容器中で行うことができる。これらの混合は、工程(2)で使用する容器中で行ってもよい。
【0092】
また、工程(1)における混合物は、細胞、カチオン性物質、細胞外マトリックス成分、高分子電解質以外の、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、工程(2)においてゲル状組成物を得るために必要なゲル化剤、細胞培養用培地等が挙げられる。
【0093】
ゲル化剤としては、細胞外マトリックス成分;アガロース;ペクチン;フィブリノゲン及びトロンビンの組み合わせ等が挙げられる。ゲル化剤は、予め工程(1)における混合物中に含有させていてもよいし、以下に説明する工程(2)において、工程(1)における混合物に添加してもよい。
【0094】
工程(1)の後、工程(2)において、工程(1)で得た混合物をゲル化させてゲル状組成物を得る。ゲル化の方法は、用いるゲル化剤によって異なり、例えば、工程(1)で得た混合物をゲル化条件下に置くことであってもよい。あるいは、工程(1)で得た混合物にゲル化剤を添加した後、ゲル化条件下に置くことであってもよい。
【0095】
例えば、ゲル化剤として細胞外マトリックス成分を用いる場合、ゲル化条件としては、例えば、工程(1)で得た混合物を約37℃で静置する条件が挙げられる。この結果、工程(1)における混合物に含まれていた細胞外マトリックス成分がゲル化し、ゲル状組成物が得られる。あるいは、工程(1)で得た混合物に、細胞外マトリックス成分を更に添加したうえで、約37℃で静置してゲル化してもよい。
【0096】
また、ゲル化剤としてアガロースを用いる場合、工程(1)で得た混合物にアガロースを添加して、使用するアガロースの融点以上の温度条件下でアガロースを溶解させた後、使用するアガロースの凝固点以下の温度条件下で静置してゲル化してもよい。
【0097】
また、ゲル化剤としてペクチンを用いる場合、工程(1)で得た混合物にペクチンを添加してもよい。その結果、混合物中に含まれるカルシウムイオン等の2価のイオンによりペクチンがゲル化し、ゲル状組成物が得られる。
【0098】
また、ゲル化剤として、フィブリノゲン及びトロンビンを使用してもよい。セリンプロテアーゼの1種であるトロンビンが、フィブリノゲンを切断することにより、フィブリン・モノマーが形成される。フィブリン・モノマーは、カルシウムイオンの作用により互いに重合して難溶性のフィブリン・ポリマーを形成する。生体内では、第XIII因子(フィブリン安定化因子)の作用でフィブリン・ポリマー間が架橋結合することにより安定化フィブリンと呼ばれるメッシュ状の繊維が形成され、血液凝固を引き起こす。本明細書では、フィブリン・ポリマーによりゲル化したゲル状組成物をフィブリンゲルということがある。
【0099】
すなわち、ゲル状組成物を得る工程(2)が、工程(1)で得た混合物に、トロンビン及びフィブリノゲンを混合する工程を含んでいてもよい。そして、工程(2)におけるゲル状組成物は、ゲル状成分としてフィブリンゲルを含んでいてもよい。
【0100】
この場合、ゲル状組成物を得る工程(2)が、工程(1)で得た混合物にトロンビンを添加する工程(2-1)と、トロンビンを添加した混合物にフィブリノゲンを添加し、その結果、フィブリンゲルが形成されて混合物がゲル化する工程(2-2)とを含むことが好ましい。
【0101】
ゲル化剤としてフィブリノゲン及びトロンビンを使用する場合には、工程(2)において、混合物中のフィブリノゲン濃度が0.5mg/mL以上25mg/mL以下であることが好ましい。0.5mg/mL以上であることにより、トロンビンと混合されることでゲル化しやすくなる。また、25mg/mL以下であることにより、混合物中に溶解しやすくなる。また、トロンビンは、工程(b)において混合物中に溶解あるいは分散していることが好ましい。
【0102】
混合物が、抗凝固作用を有する物質(代表的には、高分子電解質としてヘパリンを選択した場合)を含む場合には、フィブリンがポリマー化しないことが考えられる。このため、通常は抗凝固作用を有する物質とフィブリンとを同時に使用することはない。これに対し、本実施形態では、材料の組み合わせによるものか、濃度が薄いことによるものか、理由は不明であるが、フィブリンのポリマー化が阻害されることがない。
【0103】
また、発明者らは、工程(1)で得た混合物に先にフィブリノゲンを添加すると、条件によっては、それのみでゲル化してしまう場合があることを見出した。これは、工程(1)で得た混合物中に含まれる何らかのプロテアーゼによりフィブリノゲンが切断され、フィブリン・モノマーが形成されることによるものと推察している。このため、工程(1)で得た混合物にトロンビン及びフィブリノゲンを混合する場合には、先にトロンビンを混合し、その後にフィブリノゲンを混合することが好ましい。あるいは、工程(2)において、ゲル化剤としてフィブリノゲンのみを添加しても、ゲル状組成物を得ることができる。
【0104】
このように、工程(2)で形成されるゲル状組成物は、細胞外マトリックス成分、アガロース、ペクチン、フィブリン・モノマーのうちの少なくとも1種がゲル化したゲル状成分を含んでいてもよい。
【0105】
続いて、工程(3)において、工程(2)で得たゲル状組成物をインキュベートして細胞構造体を得る。細胞構造体を得るためにゲル状組成物を培養する時間は、5分~72時間であってよい。工程(3)により、ゲル状組成物に含まれる細胞同士の接着が促進されて細胞構造体として安定的なものになるという効果が得られる。
【0106】
工程(3)における細胞の培養は、培養される細胞に適した培養条件下で行うことができる。当業者は、細胞の種類や所望の機能に応じて適切な培地を選択することができる。
【0107】
培地としては特に限定されないが、例えば、DMEM、EMEM、MEMα、RPMI-1640、McCoy’s 5A、Ham’s F-12等、これらに血清を1~20容量%程度添加した培地が挙げられる。血清としては、ウシ血清(CS)、ウシ胎児血清(FBS)、ウマ胎児血清(HBS)等が挙げられる。培養環境の温度や大気組成等の諸条件も、培養される細胞に適した条件に調整すればよい。
【0108】
工程(3)で用いる容器としては、工程(2)で用いる容器と同様のものが挙げられる。工程(3)において、工程(2)で用いた容器をそのまま用いてもよいし、別の容器に移し替えてもよい。
【0109】
細胞の培養時に、得られた細胞構造体の変形(例えば、組織の収縮、組織末端の剥離等)を抑制するための物質を培地に添加してもよい。このような物質としては、Rho-associated coiled-coil forming kinase/Rho結合キナーゼ(ROCK)阻害剤であるY-27632等が挙げられるが、これに限定されない。
【0110】
工程(1)及び工程(2)を2回以上行った後に工程(3)を行ってもよい。工程(1)及び工程(2)を繰り返すことにより、複数の層を有する細胞構造体を製造することができる。すなわち、厚さの大きい細胞構造体を製造することができる。
【0111】
また、工程(1)及び工程(2)を繰り返し、繰り返すたびに異なる細胞集団を使用して、異なる種類の細胞によって構成される細胞構造体を積層してもよい。
【0112】
本実施形態の製造方法は、ゲル状組成物を得る工程(2)の前に、工程(1)で得た混合物に外力を加えて、細胞、カチオン性物質、細胞外マトリックス成分及び高分子電解質を含む細胞集合体を得る工程(1’)を更に含み、ゲル状組成物を得る工程(2)において、工程(1)で得た混合物に代えて工程(1’)で得た細胞集合体をゲル化させてゲル状組成物を得るものであってもよい。
【0113】
この場合、本実施形態の細胞構造体の製造方法は、細胞、カチオン性物質、細胞外マトリックス成分及び高分子電解質を含む混合物を得る工程(1)と、前記混合物に外力を加えて、細胞、カチオン性物質、細胞外マトリックス成分及び高分子電解質を含む細胞集合体を得る工程(1’)と、前記細胞集合体をゲル化させてゲル状組成物を得る工程(2’)と、前記ゲル状組成物をインキュベートして細胞構造体を得る工程(3)とを含むことになる。
【0114】
本明細書において、「細胞集合体」とは、細胞が集合して一体となった構造体を意味する。細胞集合体には、遠心分離やろ過等によって得られる細胞の沈殿体も含まれる。ある実施形態では、細胞集合体はスラリー状の粘稠体である。「スラリー状の粘稠体」とは、Akihiro Nishiguchi et al., Cell-cell crosslinking by bio-molecular recognition of heparin-based layer-by-layer nanofilms, Macromol Biosci., 15 (3), 312-317, 2015. に記載されるようなゲル状の細胞集合体を指す。
【0115】
細胞集合体は、工程(1)で得た混合物を適切な容器に入れて静置することによって形成することもできるし、工程(1)で得た混合物を適切な容器に入れて、例えば、遠心分離、磁性分離、ろ過等によって、細胞を集めて細胞集合体を形成してもよい。すなわち、工程(1’)における、外力を加えるとは、静置して重力を作用させること、遠心分離、磁性分離、ろ過等を行うこと等であってよい。静置、遠心分離、磁性分離、ろ過等によって細胞を集めた場合、液体部分は除去してもよいし、除去しなくてもよい。
【0116】
工程(1’)で用いる容器としては、細胞の培養に用いるための培養容器が挙げられる。培養容器は、細胞や微生物の培養に通常用いられている素材、形状を有する容器であってよい。培養容器の素材としては、ガラス、ステンレス、プラスチック等が挙げられるが、これらに限定されない。培養容器としては、ディッシュ、チューブ、フラスコ、ボトル、ウェルプレート、セルカルチャーインサート等が挙げられるが、これらに限定されない。容器は、少なくともその一部が、液体中の細胞を通過させず、液体を通すことが可能な材料で形成されていることが好ましい。このような容器としては、Transwell(登録商標)インサート、Netwell(登録商標)インサート、Falcon(登録商標)セルカルチャーインサート、Millicell(登録商標)セルカルチャーインサート等のセルカルチャーインサートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
遠心分離の条件は、細胞の生育に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。例えば、混合物をセルカルチャーインサートに入れ、10℃、400×gで1分間の遠心分離に供することで、細胞を集め、細胞集合体を得ることができる。
【0118】
細胞集合体をゲル化させてゲル状組成物を得る工程(2’)は、上述した、工程(1)で得た混合物をゲル化させてゲル状組成物を得る工程(2)と同様にして行うことができる。
【0119】
例えば、ゲル化剤として細胞外マトリックス成分を用いる場合、工程(1’)で得た細胞集合体を約37℃で静置してもよいし、工程(1’)で得た細胞集合体に、細胞外マトリックス成分を更に添加したうえで、約37℃で静置してゲル化してもよい。
【0120】
また、ゲル化剤としてアガロースを用いる場合、工程(1’)で得た細胞集合体にアガロースを添加して、使用するアガロースの融点以上の温度条件下でアガロースを溶解させた後、使用するアガロースの凝固点以下の温度条件下で静置してゲル化してもよい。
【0121】
また、ゲル化剤としてペクチンを用いる場合、工程(1’)で得た細胞集合体にペクチンを添加してもよい。その結果、混合物中に含まれるカルシウムイオン等の2価のイオンによりペクチンがゲル化し、ゲル状組成物が得られる。
【0122】
また、ゲル化剤として、フィブリノゲン及びトロンビンを使用してもよい。すなわち、ゲル状組成物を得る工程(2’)が、工程(1’)で得た細胞集合体に、トロンビン及びフィブリノゲンを混合する工程を含んでいてもよい。そして、工程(2’)におけるゲル状組成物は、ゲル状成分としてフィブリンゲルを含んでいてもよい。
【0123】
この場合、ゲル状組成物を得る工程(2’)が、工程(1’)で得た細胞集合体にトロンビンを添加する工程(2-1’)と、トロンビンを添加した細胞集合体にフィブリノゲンを添加し、その結果、フィブリンゲルが形成されて混合物がゲル化する工程(2-2’)とを含むことが好ましい。
【0124】
続いて、工程(3)において、工程(2’)で得たゲル状組成物をインキュベートして細胞構造体を得る。工程(3)については上述したものと同様である。
【0125】
[抗がん剤]
抗がん剤としては、がん治療に用いられる薬剤であればよく、細胞障害性を有する薬剤のようにがん細胞に直接的に作用する薬剤のみならず、細胞障害性を有さないが、がん細胞の増殖等を抑制する薬剤も含まれる。細胞障害性を有さない抗がん剤としては、がん細胞を直接的に攻撃することはせず、生体内の免疫細胞やその他の薬剤との協働的な作用によって、がん細胞の増殖を抑制したり、がん細胞の活動を鈍らせたり、がん細胞を死滅させたりする機能を発揮する薬剤や、がん細胞以外の細胞や組織を障害することによってがん細胞の増殖を抑制する薬剤が挙げられる。本実施形態において用いられる抗がん剤は、抗がん作用を有することが既知である薬剤であってもよく、新規な抗がん剤の候補化合物であってもよい。
【0126】
細胞障害性を有する抗がん剤としては、特に限定されないが、例えば、分子標的薬や、アルキル化剤、5-FU系抗がん剤に代表される代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗がん性抗生物質、プラチナ誘導体、ホルモン剤、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、生物学的応答調節剤に分類される化合物等が挙げられる。
【0127】
細胞障害性を有さない抗がん剤としては、特に限定されないが、例えば、脈管新生阻害剤や、抗がん剤のプロドラッグ、抗がん剤若しくはそのプロドラッグの代謝に関連する細胞内代謝酵素活性を調整する薬剤(以下、明細書中では、「細胞内酵素調整剤」という)、免疫療法剤等が挙げられる。その他にも、抗がん剤の機能を高めたり、生体内の免疫機能を向上させたりすることによって最終的に抗がん作用に関与する薬剤も挙げられる。
【0128】
脈管新生阻害剤は、脈管新生阻害活性を有することが期待される化合物であればよく、既知の脈管新生阻害剤であってもよく、新規な脈管新生阻害剤の候補化合物であってもよい。既知の脈管新生阻害剤としては、Avastin、EYLEA、Suchibaga、CYRAMZA(登録商標)(Eli Lilly社製、別名ラムシルマブ)、BMS-275291(Bristol-Myers社製)、Celecoxib(Pharmacia/Pfizer社製)、EMD121974(Merck社製)、Endostatin(EntreMed社製)、Erbitaux(ImCloneSystems社製)、Interferon-α(Roche社製)、LY317615(Eli Lilly社製)、Neovastat(Aeterna Laboratories社製)、PTK787(Abbott社製)、SU6688(Sugen社製)、Thalidomide(Celgene社製)、VEGF-Trap(Regeneron社製)、Iressa(登録商標)(Astrazeneca社製、別名ゲフィチニブ)、Caplerusa(登録商標)(Astrazeneca社製、別名パンデタニブ)、Recentin(登録商標)(Astrazeneca社製、別名セディラニブ)VGX―100(Circadian Technologies社製)、VD1andcVE199、VGX-300(Circadian Technologies社製)、sVEGFR2、hF4-3C5、Nexavar(登録商標)(Bayer Yakuhin社製、別名ソラフェニブ)、Vortrient(登録商標)(GlaxoSmithKline社製、別名パゾパニブ)、Sutent(登録商標)(Pfizer社製、別名スニチニブ)、Inlyta(登録商標)(Pfizer社製、別名アキシチニブ)、CEP-11981(Teva Pharmaceutical Industries社製)、AMG-386(Takeda Yakuhin社製、別名トレバナニブ)、anti-NRP2B(Genentech社製)、Ofev(登録商標)(boehringer-ingelheim社製、別名ニンタテニブ)、AMG706(Takeda Yakuhin社製、別名モテサニブ)等が挙げられる。
【0129】
抗がん剤のプロドラッグは、肝臓等の臓器やがん細胞の細胞内酵素によって、抗がん作用を有する活性体に変換される薬剤である。サイトカインネットワークがこの酵素活性を上昇させることにより、活性体量が増し、抗腫瘍効果の増強をもたらすことから、抗がん作用に関与する薬剤として挙げられる。
【0130】
細胞内酵素調整剤としては、例えば、単剤では直接的な抗腫瘍効果をもたないが、5-FU系抗がん剤の分解酵素(Dihydropyrimidine dehydrogenase:DPD)を阻害することにより抗がん作用に関与するギメラシルなどが挙げられる。
【0131】
免疫療法剤としては、クレスチン、レンチナン、OK-432等の生体応答調節剤療法に用いられる薬剤(以下、「BRM製剤」と略記する。)、インターロイキン類やインターフェロン類等のサイトカイン系製剤等が挙げられる。
【0132】
本実施形態の評価方法においては、1種類の抗がん剤を用いてもよく、2種類以上の抗がん剤を組み合わせて用いてもよい。また、抗がん剤を抗がん剤以外の薬剤と組み合わせて用いてもよい。例えば、単独で投与された場合でも抗がん効果を奏する抗がん剤であっても、実際の臨床現場では他の薬剤と併用投与される場合には、本実施形態の評価方法は、該抗がん剤と該他の薬剤とを併用して行ってもよい。
【0133】
<抗がん剤評価工程>
抗がん剤評価工程では、生細胞マーカータンパク質の発現量を指標として、抗がん剤を評価する。
【0134】
細胞構造体において、間質細胞の生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子は欠損している。そのため、細胞構造体で発現している生細胞マーカータンパク質は、がん細胞に由来するものであり、該生細胞マーカータンパク質の発現量を測定することで、がん細胞の生細胞数を算出することができる。
【0135】
具体的には、抗がん剤非存在下で培養した場合と比較して、生細胞マーカータンパク質の発現量が有意に少ない場合に、該抗がん剤は、該細胞構造体に含まれるがん細胞に対して抗がん効果を有すると評価する。一方で、抗がん剤非存在下で培養した場合と比較して、生細胞マーカータンパク質の発現量が同程度又は有意に多い場合には、該抗がん剤は、該細胞構造体に含まれるがん細胞に対して抗がん作用はないと評価する。
【0136】
抗がん剤評価工程において、生細胞マーカータンパク質が分泌タンパク質である場合には、生細胞マーカータンパク質の発現量を、培養上清を用いて測定する(以下、「第1の測定方法」と称する場合がある)。
【0137】
一方で、生細胞マーカータンパク質が分泌タンパク質ではない場合には、生細胞マーカータンパク質との反応により蛍光発色又は着色する物質を添加し、生細胞マーカータンパク質の発現量を、前記物質の蛍光又は着色の量に基づいて測定する(以下、「第2の測定方法」と称する場合がある)。
【0138】
抗がん剤評価工程では、上記のように、細胞構造体を破壊することなく、生細胞マーカータンパク質の発現量を測定する。これにより、細胞構造体の培養を維持しながら、連続的且つ経時的にデータを取得することができる。よって、本実施形態の評価方法によれば、がん細胞の代謝物等、挙動が早い成分の評価も併せて行うことができる。
【0139】
[第1の測定方法]
生細胞マーカータンパク質が分泌タンパク質である場合には、例えば、生細胞マーカータンパク質に特異的に結合する物質を用いたウエスタンブロッティング法、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法、CLEIA(Chemiluminescent Enzyme Immuno Assay)法(化学発光酵素免疫測定法)、免疫沈降法等の公知のタンパク質検出法を用いることで、培養上清中に含まれる生細胞マーカータンパク質の発現量を測定することができる。
【0140】
ウエスタンブロッティング法では、例えば、まず、生細胞マーカータンパク質を含有する培養上清をサンプルとして、アクリルアミドゲル電気泳動により生細胞マーカータンパク質を分離する。次いで、分離後のアクリルアミドゲルをメンブランに転写し、生細胞マーカータンパク質を認識しうる抗体(一次抗体)と反応させる。次いで、生細胞マーカータンパク質と結合していない一次抗体を洗浄等により除去した後、生成した生細胞マーカータンパク質と一次抗体との免疫複合体を、標識した二次抗体を用いて検出する。生成した免疫複合体と結合した標識二次抗体の標識量を測定することにより、存在する生細胞マーカータンパク質の量を測定できる。
【0141】
生細胞マーカータンパク質に特異的に結合する物質は、生細胞マーカータンパク質に対する特異的抗体(以下、「生細胞マーカータンパク質特異的抗体」と称する場合がある。)、アプタマー等が挙げられる。
【0142】
生細胞マーカータンパク質特異的抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよく、さらに抗体の機能的断片であってもよい。中でも、特異性が高く、定量性が優れていることから、生細胞マーカータンパク質特異的抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。
【0143】
生細胞マーカータンパク質特異的抗体は、市販のものであってもよく、以下に示す方法を用いて作製したものであってもよい。
【0144】
抗体の作製方法としては、生細胞マーカータンパク質特異的抗体がポリクローナル抗体である場合、抗原(例えば、生細胞マーカータンパク質若しくはその断片、又はこれらを発現する細胞等)で免疫動物を免疫し、その抗血清から、従来の手段(例えば、塩析、遠心分離、透析、カラムクロマトグラフィー等)によって、精製して取得することができる。
【0145】
抗原として使用する生細胞マーカータンパク質、又はその一部のアミノ酸配列を有するペプチド断片は、化学的に合成してもよく、生細胞マーカータンパク質の既知の塩基配列情報にも基づいて既知の遺伝子工学的手段によって製造してもよい。
【0146】
また、生細胞マーカータンパク質特異的抗体がモノクローナル抗体である場合は、ハイブリドーマ法や組換えDNA法によって作製することができる。
【0147】
本明細書中において、「特異的に結合」とは、抗体が標的タンパク質(抗原)にのみ結合することを意味し、例えば試験管内におけるアッセイ、好ましくは精製した野生型抗原を用いたプラズモン共鳴アッセイ(例えば、BIAcore、GE-Healthcare Uppsala, Sweden等)における抗体の抗原のエピトープへの結合等により定量することができる。結合の親和性は、ka(抗体-抗原複合体からの抗体結合に関する速度定数)、kD(解離定数)、及びKD(kD/ka)によって規定することができる。抗体が抗原に特異的に結合している場合の結合親和性(KD)は、10-8mol/L以下であることが好ましく、10-13mol/L以上10-9mol/L以下であることがより好ましい。
【0148】
本実施形態において、「ポリクローナル抗体」とは、異なるエピトープに対する異なる抗体を含む抗体調製物を意味する。すなわち、抗体がポリクローナル抗体である場合、生細胞マーカータンパク質に対し、特異的に結合する異なる抗体を含み得る。
【0149】
また、「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体(抗体断片を含む)を意味する。また、ポリクローナル抗体とは対照的に、モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を認識するものを意味する。
【0150】
本実施形態において、抗体の「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、標的タンパク質を特異的に認識するものを意味する。具体的には、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ダイアボディー、多特異性抗体、及びこれらの重合体等が挙げられる。
【0151】
アプタマーとは、標的物質に対する特異的結合能を有する物質である。アプタマーとしては、核酸アプタマー、ペプチドアプタマー等が挙げられる。抗原に特異的結合能を有する核酸アプタマーは、例えば、systematic evolution of ligand by exponential enrichment(SELEX)法等により選別することができる。また、抗原に特異的結合能を有するペプチドアプタマーは、例えば酵母を用いたTwo-hybrid法等により選別することができる。
【0152】
また、生細胞マーカータンパク質に特異的に結合する物質は標識物質や修飾物質が結合していてもよい。
【0153】
前記抗体の標識物質としては、例えば、安定同位体、放射性同位体、蛍光物質、酵素、磁性体等が挙げられる。中でも、前記抗体の標識物質としては、検出が容易且つ高感度であることから、蛍光物質又は酵素であることが好ましい。生細胞マーカータンパク質に特異的に結合する物質は標識物質を備えることで、生細胞マーカータンパク質を簡便且つ高感度に検出及び定量することができる。
【0154】
安定同位体としては、例えば13C、15N、2H、17O、18Oが挙げられ、これらに限定されない。
【0155】
放射性同位体としては、例えば3H、14C、13N、32P、33P、35Sが挙げられ、これらに限定されない。
【0156】
蛍光物質としては、例えばシアニン色素(例えばCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、その他公知の蛍光色素(例えば、GFP、FITC(Fluorescein)、TAMRA等)等が挙げられ、これらに限定されない。
【0157】
酵素としては、例えばアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ(HRP)等が挙げられる。標識物質が酵素である場合、酵素基質を使用することが好ましい。酵素基質としては、アルカリホスファターゼの場合、p-ニトロフェニルリン酸(p-nitropheny phosphase;pNPP)、4-メチルウンベリフェリルリン酸(4-MUP)等を用いることができ、酵素がペルオキシダーゼの場合、3,3’-diaminobenzidine(DAB)、3,3’,5,5’-tetramethylbenzidine(TMB)、o-phenylenediamine(OPD)、2,2-アジノ-ジ-(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)、10-アセチル-3,7-ジヒドロキシフェノキサジン(ADHP)等を用いることができる。
【0158】
磁性体としては、例えばガドリニウム、Gd-DTPA、Gd-DTPA-BMA、Gd-HP-DO3A、ヨード、鉄、酸化鉄、クロム、マンガン、又はその錯体、或いはキレート錯体等が挙げられ、これらに限定されない。
【0159】
修飾物質としては、例えば、ビオチン、Fc断片等が挙げられる。生細胞マーカータンパク質に特異的に結合する物質は修飾物質を備えることで、標識物質が結合した、該修飾物質に対する特異的結合物質(例えば、特異的抗体や、ビオチンに対する特異的結合物質であれば、アビジン又はストレプトアビジン)を用いて、生細胞マーカータンパク質を簡便且つ高感度に検出及び定量することができる。
【0160】
また、培養上清中の生細胞マーカータンパク質の発現量は、生細胞マーカータンパク質をコードするmRNA、又はその部分配列を有するヌクレオチド断片を検出する方法によって測定することもできる。より具体的には、例えば、定量RT-PCR法、ノーザンブロット法、In situ hybridization法等が挙げられ、これらに限定されない。
【0161】
このような検出方法には、生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子の既知の塩基配列情報に基づいて作成したプローブやプライマー、又はそれらを組み合わせて用いることができる。
【0162】
[第2の測定方法]
生細胞マーカータンパク質が分泌タンパク質ではなく、酵素である場合には、生細胞マーカータンパク質との反応により蛍光発色又は着色する物質として、基質を用いることができる。該基質には色原体が結合しており、生細胞マーカータンパク質である酵素との反応により、色原体が解離することで、発光(蛍光発色)又は発色(着色)する。色原体としては、基質から解離することで、発光(蛍光発色)又は発色するものであれば、特に限定されない。
【0163】
また、生細胞マーカータンパク質が細胞内で発現している場合には、基質は、細胞膜透過性を有することが好ましい。
【0164】
このような基質として具体的には、例えば、生細胞マーカータンパク質がTPP1である場合に、グリシル-フェニルアラニル-アミノフルオロクマリン(GF-AFC)等が挙げられる。該GF-AFCを含む市販のアッセイキットとして、例えば、Promega社製のCellTiter-FluorTM Cell Viability Assay等を用いることもできる。
【0165】
本実施形態の評価方法によれば、実際の生体内におけるがん細胞の周辺組織の構造に近い間質を備え、間質が分泌する成分ががん細胞に影響を与えられる細胞構造体を用いており、さらに、間質に加えて実際の生体内における脈管構造に近い脈管網構造を備える細胞構造体を用いることもできる。このように、本実施形態の評価方法では、よりin vivoに近い環境をin vitroで再現した状態で評価を行うため、薬効について信頼性の高い評価を得ることができる。本実施形態の評価方法により抗がん効果があると評価された抗がん剤は、実際にがん患者に投与した場合でも、充分な抗がん効果が得られることが期待できる。同様に、本実施形態の評価方法により併用効果があると評価された脈管新生阻害剤と細胞障害性を有する抗がん剤の組み合わせは、実際にがん患者に投与した場合でも、抗がん剤単独投与の場合よりも高い抗がん効果が得られることが期待できる。このため、本実施形態の評価方法は、創薬現場における抗がん剤候補化合物のスクリーニングやドラッグリポジショニングスクリーニング、臨床現場における抗がん剤治療法(単剤又は併用)の選別及び決定(抗がん剤感受性試験)等において、これまでにないin vitro薬剤評価ツールとして利用することができる。特に、がん患者から採取されたがん細胞を含む細胞構造体を用いて本実施形態の評価方法を行い、これにより抗がん効果があると評価された抗がん剤は、実際に該がん患者に投与された場合に適切な抗がん効果を奏することが期待できる。
【0166】
<変形例>
また、本実施形態の評価方法においては、細胞構造体として、脈管網構造が形成された多層の細胞から構成され、かつその構成細胞の一部ががん細胞である細胞構造体を用い、抗がん剤として、細胞障害性を有する抗がん剤と脈管新生阻害剤とを用いることにより、細胞障害性を有する抗がん剤と脈管新生阻害剤との併用効果を評価することもできる。該方法により、生体内の状態により近い三次元構造内に脈管網構造を含む細胞構造体を用いるため、動物モデルを用いることなく、脈管新生阻害剤と抗がん剤とを併用使用することにより得られる薬効を精度良く評価することができる。
【0167】
細胞障害性を有する抗がん剤と脈管新生阻害剤との併用効果を評価する場合には、培養工程後の生細胞マーカータンパク質の発現量を指標として、脈管新生阻害剤と抗がん剤とを併用した場合の抗がん効果を評価する。具体的には、抗がん剤のみの存在下で培養した場合と比較して、生細胞マーカータンパク質の発現量が有意に少ない場合に、該抗がん剤は該脈管新生阻害剤と併用することにより、該抗がん剤を単独使用した場合よりも高い抗がん効果が得られること、つまり、併用効果が得られると評価する。一方で、抗がん剤のみの存在下で培養した場合と比較して、生細胞マーカータンパク質の発現量が同程度である場合に、該抗がん剤は該脈管新生阻害剤と併用しても該抗がん剤を単独使用した場合よりも高い抗がん効果は得られないこと、つまり併用効果は得られないと評価する。さらに、抗がん剤のみの存在下で培養した場合と比較して、生細胞マーカータンパク質の発現量が有意に多い場合には、該抗がん剤は該脈管新生阻害剤と併用することによってかえって抗がん効果が減弱してしまうと評価する。
【0168】
細胞障害性を有する抗がん剤としては、細胞障害性を有することが期待される化合物であればよく、既知の抗がん剤であってもよく、新規な抗がん剤の候補化合物であってもよい。
【0169】
具体的には、がん細胞を含み、脈管網構造を備える細胞構造体を、脈管新生阻害剤及び細胞障害性を有する抗がん剤の存在下で培養する培養工程と、前記培養工程後の前記細胞構造体中の生細胞マーカータンパク質の発現量を指標として、前記脈管新生阻害剤と前記抗がん剤とを併用した場合の抗がん効果を評価する評価工程と、を有する。
【0170】
該細胞構造体は、脈管網構造を備えており、脈管を構成する内皮細胞と、脈管を構成していない細胞(内皮細胞以外の細胞)と、により構成される。
【0171】
該細胞構造体に含まれる内皮細胞以外の細胞の細胞種としては、内皮細胞が脈管網を形成することを阻害しないものであれば特に限定されるものではなく、含まれるがん細胞の由来や種類、評価に使用される脈管新生阻害剤や抗がん剤の種類、目的の抗がん活性が奏される生体内の環境等を考慮して、適宜選択することができる。
【0172】
≪抗ガン剤評価用キット≫
本実施形態の抗ガン剤評価用キット(以下、単に「本実施形態のキット」と称する場合がある)は、生細胞マーカータンパク質をコードする遺伝子をノックアウトした間質細胞を含む細胞構造体と、前記細胞構造体を収容する細胞培養容器と、を備える。
【0173】
上記評価方法に用いられる試薬等をキット化した抗がん剤評価用キットを用いることにより、上記評価方法をより簡便に実施することができる。
【0174】
例えば、本実施形態のキットに含まれる細胞構造体は、がん細胞を含まない、脈管網構造を備える細胞構造体であってもよい。
【0175】
本実施形態のキットに含まれる細胞構造体の厚みは、5μm以上であるものが好ましい。
【0176】
本実施形態のキットに含まれる細胞構造体としては、がん細胞を含む細胞構造体であってもよいが、がん細胞を含まず、間質を構成する細胞を含む細胞構造体をキットに備え、実際に評価方法を行う直前に、該細胞構造体の表面にがん細胞層を形成させてもよい。また、該キットには、細胞構造体に代えて、細胞構造体を構成する細胞のうち、がん細胞以外の細胞を備えることもできる。
【0177】
本実施形態のキットに含まれる細胞構造体は、少なくも間質細胞を含み、天面に半透膜を備えていてもよい。該キットに含ませる細胞構造体としては、半透膜の上にがん細胞層が積層されたものであってもよいが、がん細胞を含まず、間質細胞を含む細胞層に半透膜が載せられている細胞構造体をキットに備え、実際に評価方法を行う直前に、該細胞構造体の半透膜の上にがん細胞層を形成させてもよい。
【0178】
該キットは、さらに、上記評価方法において用いられるその他の物質を備えることもできる。該その他の物質としては、例えば、抗がん剤、細胞構造体の培養培地、生細胞マーカータンパク質の検出用試薬(例えば、生細胞マーカータンパク質との反応により蛍光発色又は着色する物質等)、細胞構造体を構築する際に使用する物質(例えば、カチオン性緩衝液、強電解質高分子、細胞外マトリックス成分等)等が挙げられる。
【0179】
また、抗がん剤として、細胞障害性を有する抗がん剤と血管新生阻害剤とを組み合わせることにより、細胞障害性を有する抗がん剤と脈管新生阻害剤との併用効果の評価をより簡便に実施することができる。
【実施例0180】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0181】
[実施例1]
TPP1遺伝子をノックアウトした線維芽細胞とがん細胞と含む細胞構造体を用いて、抗がん剤5-フルオロウラシル(5-FU)及びトラメチニブそれぞれの抗がん効果を評価した。細胞培養容器としては、トランズウェルセルカルチャーインサート(Corning社製、製品番号:#3391)を用い、培養培地としては、10容量%ウシ胎児血清(FBS)(Thermo Fisher Scientific社製、PO241817)含有D-MEM(富士フィルム和光純薬工業社製、043-30085)を用いた。
【0182】
1.TPP1遺伝子をノックアウトした線維芽細胞の作製
TPP1 Human Gene Knockout Kit(Origene社製、KN404471)を用いて、所定のプロトコルでヒト新生児由来皮膚線維芽細胞(Lonza社製、CC-2509、Normal Human Dermal Fibroblasts:NHDF)を処理して、TPP1遺伝子をノックアウトしたNHDF(以下、「TPP1KONHDF」と称する場合がある)を得た。
【0183】
2.細胞構造体の作製
まず、2×106個のTPP1KONHDFを、ヘパリン(Sigma社製、H3149-100KU)とコラーゲン(Sigma社製、ASC-1-100-100)を含有するトリス-塩酸緩衝液(富士フィルム和光純薬工業社製、166-23555)(0.1mg/mL ヘパリン、0.1mg/mL コラーゲン、50mM トリス、pH7.4)に懸濁し、細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を、室温(25℃程度)、400×gで1分間、遠心処理し、上清を取り除いた後、適量の培養培地で再懸濁した。次いで、この細胞懸濁液を、トランズウェルセルカルチャーインサート内に播種した後、該トランズウェルセルカルチャーインサートを室温(25℃程度)、400×gで1分間、遠心処理した。その後、該トランズウェルセルカルチャーインサートに、適量の培養培地を追加した後、CO2インキュベーター(37℃、5v/v%CO2)にて96時間培養した。なお、比較対照として、通常のNHDFを用いたものも作製した。
【0184】
3.がん細胞の播種
上記「2.」で得られた培養物の天面に、1×103個のヒト結腸直腸腺がん細胞株であるHT29(ATCC番号:HTB-38TM)を播種して、37℃、5v/v%CO2にて4日間培養して、細胞構造体を得た。
【0185】
4.薬効評価
次いで、がん細胞の播種後、培養4日目に、5-FU(Selleck社製、S1209)の最終濃度が1、10、100、若しくは1000μM、又は、トラメチニブ(Selleck社製、S2807)の最終濃度が0.01.0.1、1、若しくは10μMである培養培地に交換し、37℃、5v/v%CO2にて72時間培養した。コントロールとして、5-FU及びトラメチニブ非添加の条件下で培養したものも準備した。
【0186】
次いで、がん細胞の播種後、培養7日目に、CellTiter-FluorTM Cell Viability Assay(Promega社製、G6080)を用いて、生細胞数を測定した。測定結果から、以下の式を用いて、残存細胞率を算出した。結果を表1(5-FU)及び表2(トラメチニブ)に示す。なお、上記方法による薬効評価をこれ以降、「薬効評価1」と称する場合がある。
【0187】
(残存細胞率)(%)
={(抗がん剤各濃度条件の生細胞数)/(抗がん剤非添加条件の生細胞数)}×100
【0188】
また、比較対照として、従来法である、免疫染色法による薬効評価も実施した。
具体的には、がん細胞の播種後、培養4日目に、5-FU(Selleck社製、S1209)の最終濃度が1、10、100、若しくは1000μM、又は、トラメチニブ(Selleck社製、S2807)の最終濃度が0.01.0.1、1、若しくは10μMである培養培地に交換し、37℃、5v/v%CO2にて72時間培養した。コントロールとして、5-FU及びトラメチニブ非添加の条件下で培養したものも準備した。
【0189】
次いで、がん細胞の播種後、培養7日目に、組織を固定後、Alexa647結合抗EpCAM抗体を用いて免疫蛍光染色法で染色し、染色細胞をがん細胞として顕微鏡システム(OperettaCLS、PerkinElmer社)の蛍光モード(Alexa647の蛍光検出)でがん細胞由来蛍光発光面積を算出した。測定結果から、以下の式を用いて、残存細胞率を算出した。結果を表1(5-FU)及び表2(トラメチニブ)に示す。なお、上記方法による薬効評価をこれ以降、「薬効評価2(従来法)」と称する場合がある。
【0190】
(残存細胞率)(%)
={(抗がん剤各濃度条件のがん細胞由来蛍光発光面積)/(抗がん剤非添加条件のがん細胞由来蛍光発光面積)}×100
【0191】
【0192】
【0193】
表1及び表2に示すように、本実施形態の抗がん剤の評価方法(TPP1KONHDF×薬効評価1)では、2種類の抗がん剤いずれも、薬剤濃度依存的な残存細胞率の減少傾向が確認され、従来の薬効評価方法(通常NHDF×薬効評価2(従来法))とほぼ等しい結果が得られた。
【0194】
以上のことから、本実施形態の抗がん剤の評価方法によれば、簡便且つ非破壊的に、従来の薬効評価方法とほぼ同様の抗がん剤評価が可能であることが示唆された。
本実施形態の抗がん剤の評価方法によれば、in vitroの系を用いて精度良く、且つ、非破壊で抗がん剤を評価することができる。また、非破壊の評価系であるため、同一サンプルからより多くのデータを長期間に亘って連続的に取得することができる。