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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068364
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】手指動作支援機構
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/56 20060101AFI20240513BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
A61F2/56
B25J11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178750
(22)【出願日】2022-11-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年12月4日 日本人間工学会 関東支部第51回大会にて公開 令和4年3月14日 関東学生会第61回学生員卒業研究発表講演会にて公開 令和4年3月15日 日本機械学会 関東支部 第28期総会・講演会にて公開 令和4年9月6日 第40回日本ロボット学会学術講演会にて公開
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「複合束弾性ケーブル機構の機械的トルク制御を用いた安全な手指関節動作支援技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 正隆
(72)【発明者】
【氏名】福井 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】木澤 颯太
【テーマコード(参考)】
3C707
4C097
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707HS27
3C707HT04
3C707HT06
3C707HT11
3C707HT20
3C707XK03
3C707XK19
3C707XK42
3C707XK88
4C097AA12
4C097BB02
4C097BB09
4C097CC08
4C097CC14
4C097CC18
4C097TA03
4C097TB01
(57)【要約】
【課題】実用的な支援トルクを発現でき、且つ過剰な支援トルクが作用した際には、当該支援トルクを回避できるようにする。
【解決手段】手指動作支援機構は、人間の指部位の基端部が指関節にて連結部位に連結された手指の動作を支援する手指動作支援機構であって、前記連結部位の背方向側に配置された第一リンクと、前記指部位の背方向側に配置され、前記指関節の軸に沿った回転軸周りに回転可能に前記第一リンクに連結された第二リンクと、前記第一リンクに対して移動可能に前記第一リンクを貫通し、先端部が前記第二リンクに固定され、前記第一リンクと前記第二リンクとの間の空間で屈曲可能とされた複数のケーブルと、前記複数のケーブルにおける前記第一リンクに対する基端側の部分を押し引きする駆動機構と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の指部位の基端部が指関節にて連結部位に連結された手指の動作を支援する手指動作支援機構であって、
前記連結部位の背方向側に配置された第一リンクと、
前記指部位の背方向側に配置され、前記指関節の軸に沿った回転軸周りに回転可能に前記第一リンクに連結された第二リンクと、
前記第一リンクに対して移動可能に前記第一リンクを貫通し、先端部が前記第二リンクに固定され、前記第一リンクと前記第二リンクとの間の空間で屈曲可能とされた複数のケーブルと、
前記複数のケーブルにおける前記第一リンクに対する基端側の部分を押し引きする駆動機構と、
を備える手指動作支援機構。
【請求項2】
前記複数のケーブルは、前記指部位の左右方向に沿って並んで配置されている
請求項1に記載の手指動作支援機構。
【請求項3】
前記複数のケーブルは、前記指部位の左右方向に沿った列が、前記指部位の腹背方向に複数形成されるように、配置されている
請求項2に記載の手指動作支援機構。
【請求項4】
前記列を構成する前記ケーブルの数よりも、前記腹背方向に形成された前記列の数が少ない
請求項3に記載の手指動作支援機構。
【請求項5】
前記複数のケーブルは、前記列毎に、前記ケーブルの外径が異なっている
請求項3に記載の手指動作支援機構。
【請求項6】
前記指部位の背方向側に配置された前記列における複数の前記ケーブルの外径が、前記指部位の腹方向側に配置された列における複数の前記ケーブルの外径よりも大きくなっている
請求項5に記載の手指動作支援機構。
【請求項7】
前記複数のケーブルは、
前記先端部同士、及び、前記基端側の部分同士の少なくとも一方が固定され、
前記先端部と前記基端側の部分との間の中間部分は、各々が独立して、前記第一リンクを貫通している
請求項1~6のいずれか1項に記載の手指動作支援機構。
【請求項8】
前記複数のケーブルは、
前記先端部同士、及び、前記基端側の部分同士の少なくとも一方が前記指部位の左右方向に沿って並んだ状態で固定されている
請求項7に記載の手指動作支援機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手指動作支援機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、片麻痺患者や高齢者等の手指の動作を支援する手指動作支援機構の実現が求められている。こうした支援機構において、特に重要な課題が、支援機能の安全性の確保である。
【0003】
非特許文献1には、手指の背面側に配置されたリンクを押し引きするケーブルが座屈することで、機械的に過剰な支援トルクを回避する手指動作支援機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】村上智哉、中林正隆、嶋脇聡「複合金属ケーブルの押引駆動を用いた手指関節トルク支援機構の開発」日本機械学会 第32回バイオエンジニアリング講演会 2D13 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1の手指動作支援機構では、駆動力が小さく、実用的な支援トルクを発現することができない場合がある。
【0006】
本発明は、実用的な支援トルクを発現でき、且つ過剰な支援トルクが作用した際には、当該支援トルクを回避できる手指動作支援機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様は、人間の指部位の基端部が指関節にて連結部位に連結された手指の動作を支援する手指動作支援機構であって、前記連結部位の背方向側に配置された第一リンクと、前記指部位の背方向側に配置され、前記指関節の軸に沿った回転軸周りに回転可能に前記第一リンクに連結された第二リンクと、前記第一リンクに対して移動可能に前記第一リンクを貫通し、先端部が前記第二リンクに固定され、前記第一リンクと前記第二リンクとの間の空間で屈曲可能とされた複数のケーブルと、前記複数のケーブルにおける前記第一リンクに対する基端側の部分を押し引きする駆動機構と、を備える。
【0008】
第1態様によれば、複数のケーブルが、第一リンクに対して移動可能に第一リンクを貫通し、先端部が第二リンクに固定されており、第一リンクと第二リンクとの間の空間で屈曲可能とされている。この複数のケーブルにおける第一リンクに対する基端側の部分を駆動機構が押し引きする。
【0009】
このように、第1態様では、駆動機構が複数のケーブルを押し引きするので、単数のケーブルを押し引きする場合に比べ、支援トルクが高められ、実用的な支援トルクを発現できる。
【0010】
さらに、第1態様では、複数のケーブルが、第一リンクと第二リンクとの間の空間で屈曲可能とされているので、過剰な支援トルクが作用した際に、複数のケーブルが、当該空間で屈曲することで、機械的に過剰な支援トルクを回避することができる。
【0011】
第2態様では、第1態様において、前記複数のケーブルは、前記指部位の左右方向に沿って並んで配置されている。
【0012】
第2態様によれば、複数のケーブルが、指部位の左右方向に沿って並んで配置されているので、複数のケーブルが指部位の腹背方向のみに沿って並んで配置されている場合に比べ、第一リンク及び第二リンクの腹背方向の寸法を小さくしつつ、支援トルクが高められ、実用的な支援トルクを発現できる。
【0013】
第3態様では、第2態様において、前記複数のケーブルは、前記指部位の左右方向に沿った列が、前記指部位の腹背方向に複数形成されるように、配置されている。
【0014】
第3態様によれば、ケーブルの列が、指部位の腹背方向に複数形成されているので、列が一つのみで形成されている場合に比べ、支援トルクが高められ、実用的な支援トルクを発現できる。
【0015】
第4態様では、第3態様において、前記列を構成する前記ケーブルの数よりも、前記腹背方向に形成された前記列の数が少ない。
【0016】
第4態様によれば、列を構成するケーブルの数よりも、腹背方向に形成された列の数が少ないので、第一リンク及び第二リンクの腹背方向の寸法を小さくしつつ、支援トルクが高められ、実用的な支援トルクを発現できる。
【0017】
第5態様では、第3態様において、前記複数のケーブルは、前記列毎に、前記ケーブルの外径が異なっている。なお、第5態様は、第4態様を引用してもよい。
【0018】
第5態様によれば、複数のケーブルは、列毎に、ケーブルの外径が異なっているので、列毎の支援トルクが調整可能となる。
【0019】
第6態様は、第5態様において、前記指部位の背方向側に配置された前記列における複数の前記ケーブルの外径が、前記指部位の腹方向側に配置された列における複数の前記ケーブルの外径よりも大きくなっている。
【0020】
第6態様によれば、指部位の背方向側に配置された列における複数のケーブルの外径が、指部位の腹方向側に配置された列における複数のケーブルの外径よりも大きくなっているので、指部位の背方向側に配置された列による支援トルクを、指部位の腹方向側に配置された列による支援トルクよりも大きくできる。
【0021】
第7態様では、第1~6のいずれか1つの態様において、前記複数のケーブルは、前記先端部同士、及び、前記基端側の部分同士の少なくとも一方が固定され、前記先端部と前記基端側の部分との間の中間部分は、各々が独立して、前記第一リンクを貫通している。
【0022】
第7態様によれば、複数のケーブルは、先端部同士、及び、第一リンクに対する基端側の部分同士の少なくとも一方が固定されているので、ケーブルの先端部及び基端側の部分の少なくとも一方の配置スペースを小さくできる。このため、第二リンク及び駆動機構の少なくとも一方の小型化を図ることができる。
【0023】
第8態様では、第7態様において、前記複数のケーブルは、前記先端部同士、及び、前記基端側の部分同士の少なくとも一方が前記指部位の左右方向に沿って並んだ状態で固定されている。
【0024】
第8態様によれば、複数のケーブルは、先端部同士、及び、第一リンクに対する基端側の部分同士の少なくとも一方が指部位の左右方向に沿って並んだ状態で固定されているので、ケーブルの先端部及び基端側の部分の少なくとも一方の左右方向の配置スペースを小さくできる。このため、第二リンク及び駆動機構の少なくとも一方について、左右方向における小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上記構成としたので、実用的な支援トルクを発現でき、且つ過剰な支援トルクが作用した際には、当該支援トルクを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態に係る手指動作支援機構の概略を示す側面図である。
図2図1に示される手指動作支援機構において、手指の屈曲動作を支援した状態を示す側面図である。
図3】本実施形態に係る手指動作支援機構における第一リンク及び第二リンクを示す斜視図である。
図4】本実施形態に係る手指動作支援機構において、ケーブルの使用本数と配置例を示す図である。
図5】本実施形態に係る手指動作支援機構において、ケーブルの使用タイプの例を示す図である。
図6】ケーブルの第2変形例を示す側面図である。
図7】ケーブルの第2変形例を示す平面図である。
図8】本実施形態に係る手指動作支援機構における駆動機構を示す側面図である。
図9】本実施形態に係る手指動作支援機構の効果を評価した際の測定方法について説明するための斜視図である。
図10】本実施形態に係る手指動作支援機構の効果を評価した際の測定方法について説明するための平面図である。
図11】本実施形態に係る手指動作支援機構の効果を評価した際における関節回転半径の求め方を説明するための側面図である。
図12】本実施形態に係る手指動作支援機構の効果を評価した際における評価結果を示すグラフである。
図13】本実施形態に係る手指動作支援機構の適用例を示す平面図である。
図14】本実施形態に係る手指動作支援機構の適用例を示す側面図である。
図15図14に示される適用例において、手指の屈曲動作を支援した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0028】
<手指動作支援機構100>
本実施形態に係る手指動作支援機構100を説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る手指動作支援機構100を示す概略図である。
【0029】
なお、以下では、腹方向、背方向、先端方向、基端方向、右方向及び左方向を用いて説明する。腹方向は、手指200の腹側(すなわち、指紋がある側)の方向であり、各図において矢印VSで示される方向である。背方向は、手指200の背側(すなわち、爪がある側)の方向であり、各図において矢印BSで示される方向である。腹方向及び背方向の両方向を示す場合には、腹背方向という場合がある。
【0030】
先端方向は、手指200の先端(すなわち指先)側の方向であり、各図において矢印TSで示される方向である。基端方向は、手指200の基端(すなわち根元)側の方向であり、各図において矢印PSで示される方向である。先端方向及び基端方向の両方向を示す場合には、先後方向という場合がある。
【0031】
右方向は、手指動作支援機構100が右手に装着されたものとした場合の右方向であり、各図において矢印RHで示される方向である。左方向は、手指動作支援機構100が右手に装着されたものとした場合の左方向であり、各図において矢印LHで示される方向である。これらの方向は、説明の便宜上定めた方向であるから、機構の構成がこれらの方向に限定されるものではない。
【0032】
また、図中の「○」の中に「×」が記載された記号は、紙面の手前から奥へ向かう矢印を意味する。また、図中の「○」の中に「・」が記載された記号は、紙面の奥から手前へ向かう矢印を意味する。また、各図に示す各部分同士の各方向における寸法比は、実際の寸法比と異なる場合がある。
【0033】
図1及び図2に示される手指動作支援機構100は、人間の指部位202の基端部が指関節204にて連結部位206に連結された手指200の動作(具体的には伸展動作及び屈曲動作)を支援する機構である。
【0034】
指部位202には、四指(すなわち示指、中指、環指及び小指)の各々における基節骨、中節骨及び末節骨の各々で形作られる指の部位、並びに、母指における中手骨、基節骨、及び末節骨の各々で形作られる指の部位が含まれる。
【0035】
指部位202が、四指における基節骨で形作られる指の部位である場合には、指関節204は、中手指節関節(いわゆるMP関節)であり、連結部位206は、手の甲(具体的には中手骨を含んで形作られる部位)である。
【0036】
指部位202が、四指における中節骨で形作られる指の部位である場合には、指関節204は、近位指節間関節(いわゆるPIP関節)であり、連結部位206は、基節骨で形作られる指の部位である。
【0037】
指部位202が、四指における末節骨で形作られる指の部位である場合には、指関節204は、遠位指節間関節(いわゆるDIP関節)であり、連結部位206は、中節骨で形作られる指の部位である。
【0038】
指部位202が、母指における中手骨で形作られる指の部位である場合には、指関節204は、大菱中手関節(いわゆるCM関節)であり、連結部位206は、手の甲(具体的には手根骨を含んで形作られる部位)である。
【0039】
指部位202が、母指における基節骨で形作られる指の部位である場合には、指関節204は、中手指節関節(いわゆるMP関節)であり、連結部位206は、中手骨で形作られる部位である。
【0040】
指部位202が、母指における末節骨で形作られる指の部位である場合には、指関節204は、指節間関節(いわゆるIP関節)であり、連結部位206は、基節骨で形作られる部位である。
【0041】
以上のように、手指動作支援機構100は、四指及び母指におけるいずれかの指関節204の少なくとも1つに適用することが可能である。
【0042】
手指動作支援機構100は、図1及び図2に示されるように、手指200の背方向側に配置される機構であり、第一リンク10と、第二リンク20と、複数のケーブル50と、駆動機構60と、を備えている。以下、手指動作支援機構100の各部について説明する。
【0043】
<第一リンク10>
第一リンク10は、図1及び図2に示されるように、連結部位206の背方向側に配置されたリンク部材である。この第一リンク10は、図3に示されるように、本体部12と、連結部14と、を有している。
【0044】
本体部12は、ブロック状(具体的には直方体形状)に形成されている。本体部12には、複数のケーブル50を通すための複数の孔16が形成されている。この複数の孔16は、先後方向に沿って本体部12を貫通する円孔であり、ケーブル50と同数が設けられている。
【0045】
さらに、複数の孔16の各々には、ケーブル50が通されるチューブ17が設けられている。このチューブ17は、先後方向を軸方向とする円筒状に形成されており、孔16に対して挿入された状態で本体部12に対して固定されている。チューブ17は、ケーブル50を案内(すなわちガイド)する機能を有しており、例えば、樹脂材料にて形成されている。
【0046】
連結部14は、2つが備えられ、各々が、左右方向を厚み方向とする板状に形成されている。2つの連結部14の各々は、ネジ等の固定手段19により、本体部12の右側面及び左側面の各々に固定されている。
【0047】
2つの連結部14の各々は、本体部12から先端方向且つ腹方向側へ突出する突出部分18を有している。突出部分18は、第二リンク20と連結されている。
【0048】
なお、図1及び図2では、第一リンク10を簡略化して図示している。また、図2及び図3では、第一リンク10における各方向を符号10Aで示す矢印で示している。
【0049】
第一リンク10は、本体部12がブロック状とされ、連結部14が板状とされていたが、これに限られない。第一リンク10の各部の形状、及び全体の形状としては、種々の形状を用いることが可能である。
【0050】
<第二リンク20>
第二リンク20は、図1及び図2に示されるように、指部位202の背方向側に配置され、指関節204の軸204Aに沿った回転軸27周りに回転可能に第一リンク10に連結されたリンク部材である。この第二リンク20は、図3に示されるように、本体部22と、連結部24と、を有している。
【0051】
本体部22は、ブロック状(具体的には直方体形状)に形成されている。本体部22には、ケーブル50が挿入される孔26が形成されている。孔26は、先後方向に沿って本体部22を貫通している。
【0052】
連結部24は、2つが備えられ、各々が、左右方向を厚み方向とする板状に形成されている。2つの連結部24の各々は、ネジ等の固定手段29により、本体部22の右側面及び左側面の各々に固定されている。
【0053】
2つの連結部24の各々は、本体部22から基端方向且つ腹方向側へ突出する突出部分28を有している。突出部分28は、第一リンク10の突出部分18と、回転軸27によって回転可能に連結されている。回転軸27は、指関節204の軸204Aに対して同軸上に配置されており、左右方向に沿った回転軸とされている。なお、回転軸27と、指関節204の軸204Aとは、完全に一致している必要はなく、手指動作の支援に支障がない範囲でずれていてもよい。
【0054】
なお、図1及び図2では、第二リンク20を簡略化して図示している。また、図2及び図3では、第二リンク20における各方向を符号20Aで示す矢印にて示している。
【0055】
第二リンク20は、本体部22がブロック状とされ、連結部24が板状とされていたが、これに限られない。第二リンク20の各部の形状、及び全体の形状としては、種々の形状を用いることが可能である。
【0056】
<ケーブル50>
複数のケーブル50は、第二リンク20に駆動機構60の駆動力を伝達する機能を有する構成部である。複数のケーブル50の各々は、第一リンク10に対して移動可能に第一リンク10を貫通し、先端部が第二リンク20に固定されている。さらに、ケーブル50は、第一リンク10と第二リンク20との間の空間50Sで屈曲可能とされている。
【0057】
具体的には、複数のケーブル50の各々は、第一リンク10の複数の孔16の各々に設けられたチューブ17に対して摺動可能に通されている。これにより、複数のケーブル50の各々が、第一リンク10に対して移動可能に第一リンク10を貫通している。
【0058】
また、複数のケーブル50の各々は、先端部が第二リンク20の複数の孔26に挿入された状態で、当該先端部がねじ等の固定手段59にて第二リンク20に対して固定されている。
【0059】
さらに、ケーブル50は、第一リンク10と第二リンク20との間において露出しており、第一リンク10と第二リンク20との間の空間50Sで屈曲可能とされている。本実施形態では、ケーブル50は、空間50Sにおいて、少なくとも背方向側へ凸状に屈曲可能とされている。
【0060】
複数のケーブル50の本数は、図4(A)(B)(C)(D)に示されるように、例えば、2本、4本及び8本等の偶数に設定することが可能である。なお、図3では、ケーブル50を4本用いた例について、図示している。
【0061】
ケーブル50の本数が2本である場合には、2本のケーブル50は、図4(A)に示されるように、第一リンク10における腹背方向の中央部において、左右方向に沿って並んで配置されている。具体的には、2本のケーブル50の各々は、第一リンク10における腹背方向の中央部において、第一リンク10の左端部及び右端部の各々に配置されている。なお、2本のケーブル50は、第二リンク20においても、同じ位置に配置される。
【0062】
ケーブル50の本数が4本である場合には、4本のケーブル50は、図4(B)に示されるように、第一リンク10における腹背方向の中央部において、左右方向に沿って並んで配置されている。すなわち、4本のケーブル50が、第一リンク10における腹背方向の中央部において、左右方向に沿った列56を成している。なお、4本のケーブル50は、第二リンク20においても、同じ位置に配置される。
【0063】
ケーブル50の本数が8本である場合には、8本のケーブル50は、図4(C)(D)に示されるように、第一リンク10における腹背方向の一端部及び他端部において、4本ずつが左右方向に沿って並んで配置されている。すなわち、4本のケーブル50が、第一リンク10における腹背方向の一端部において、左右方向に沿った列56を成し、他の4本のケーブル50が、第一リンク10における腹背方向の他端部において、左右方向に沿った列56を成している。
【0064】
このように、8本のケーブル50は、左右方向に沿った列56が、腹背方向に複数形成されるように、配置されている。本例では、各列56を構成するケーブル50の数(具体的には4本)よりも、腹背方向に形成された列56の数(具体的には2列)が少なくなっている。なお、8本のケーブル50は、第二リンク20においても、同じ位置に配置される。
【0065】
なお、ケーブル50の本数は、前述した本数(具体的には、2本、4本及び8本)に限られず、例えば、奇数であってもよく、2本以上であればよい。
【0066】
ケーブル50の材料には、一例として、ステンレスなどの金属材料を用いることが可能である。なお、ケーブル50の材料としては、金属材料に限られず、樹脂材料等であってもよく、種々の材料を用いることが可能である。
【0067】
さらに、ケーブル50としては、図5(A)(B)に示されるように、複数の素線51が撚られたものを用いることが可能である。具体的には、ケーブル50としては、例えば、図5(A)に示されるように、19本の素線51が螺旋状に1本のケーブルに撚られたストランドタイプ(1×19)、及び図5(B)に示されるように、7本の素線51が撚られたストランドを7本撚って1本のケーブルとなったマルチストランドタイプ(7×7)などを用いることが可能である。
【0068】
また、ケーブル50としては、外径が例えば、0.3以上1.5以下の範囲のものを用いることが可能である。複数のケーブル50は、全てにおいて、一例として、同じ外径とされる。なお、ケーブル50の外径としては、前述の範囲に限られず、種々の外径サイズを用いることが可能である。
【0069】
<ケーブル50の第1変形例>
複数のケーブル50は、全てにおいて、同じ外径である構成に限られず、例えば、一部において、異なる外径のものを用いてもよい。
【0070】
例えば、図4(D)に示されるように、ケーブル50の本数が8本である場合において、列56毎に、ケーブル50の外径が異なる構成とすることが可能である。図4(D)に示される例では、背方向側に配置された列56における4本のケーブル50の外径が、腹方向側に配置された列56における4本のケーブル50の外径よりも大きくされている。
【0071】
<ケーブル50の第2変形例>
複数のケーブル50は、図6及び図7に示されるように、先端部及び、第一リンク10に対する基端側の部分(具体的には基端部)において、はんだ等の固定手段55により、ケーブル50同士を固定してもよい。すなわち、複数のケーブル50は、先端部及び基端部において、束ねられていてもよい。
【0072】
具体的には、図7に示されるように、複数のケーブル50は、先端部同士が左右方向に並んだ状態で固定されている。図4(A)に示されるように、ケーブル50の本数が2本である場合には、一例として、ケーブル50の先端部同士が左右方向に並んだ状態で固定され、第二リンク20における腹背方向の中央部であって、左右方向の中央部に配置される。
【0073】
図4(B)に示されるように、ケーブル50の本数が4本である場合には、一例として、ケーブル50の先端部同士が左右方向へ一列に並んだ状態で固定され、第二リンク20における腹背方向の中央部に配置される。
【0074】
図4(C)に示されるように、ケーブル50の本数が8本である場合には、一例として、背方向側に配置された4本のケーブル50について、ケーブル50の先端部同士が左右方向へ一列に並んだ状態で固定され、腹方向側に配置された4本のケーブル50について、ケーブル50の先端部同士が左右方向へ一列に並んだ状態で固定される。
【0075】
さらに、背方向側に配置された4本のケーブル50と、腹方向側に配置された4本のケーブル50と、が腹背方向に固定されていてもよい(図6参照)。
【0076】
本変形例の構成では、複数のケーブル50の先端部同士を固定した後、孔26に挿入される。したがって、孔26は、ケーブル50毎に形成されるのではなく、先端部同士が固定された複数のケーブル50が一括で挿入可能なサイズに形成される。
【0077】
なお、本変形例の構成においても、複数のケーブル50は、先端部と基端部との間の中間部分では、各々が独立しており、第一リンク10では、複数のケーブル50の各々が、孔16の各々を貫通している。
【0078】
<駆動機構60>
駆動機構60は、ケーブル50における第一リンク10に対する基端側の部分を押し引きする機構である。具体的には、駆動機構60は、図8に示されるように、支持体61と、駆動モータ62と、滑りネジ64と、移動体66と、着脱体68と、を備えている。
【0079】
支持体61は、駆動機構60の各部を支持する構造体である。具体的には、支持体61は、駆動モータ62を支持する支持部61A、61Bと、滑りネジ64を支持する支持部61Cと、を有している。
【0080】
駆動モータ62は、本体62Aと、本体62Aから突出し且つ駆動力(すなわち回転力)を出力する駆動軸62Bと、を有している。本体62Aは、支持体61の支持部61A、61Bにて支持されている。駆動モータ62としては、例えば、駆動軸62Bの回転位置が制御可能なサーボモータ等が用いられる。
【0081】
滑りネジ64は、外周にネジ溝(図示省略)が形成された軸部64Aと、ナット64Bと、有している。軸部64Aは、一端部が支持体61の支持部61Cに回転可能に支持され、他端部が接続部としてのカップリング64Cを介して、駆動モータ62の駆動軸62Bと軸方向に接続されている。これにより、軸部64Aは、回転可能に支持されている。
【0082】
ナット64Bは、軸部64Aにねじ込まれており、軸部64Aが一方へ回転することで、軸部64Aの軸方向の一方へ移動し、軸部64Aが他方へ回転することで、軸部64Aの軸方向の他方へ移動する。なお、図8を含む各図では、軸部64Aの外周に形成されたネジ溝の図示を省略している。
【0083】
移動体66は、ナット64Bに固定されており、ナット64Bと一体に軸部64Aの軸方向の一方及び他方へ移動する。移動体66は、左右方向視にてL字状に形成されており、固定部66Aと、取付部66Bと、を有している。固定部66Aは、ナット64Bに対して固定される部分であり、軸部64Aの軸方向を厚み方向とし且つ軸部64Aが通過する孔66Cが形成された板体で形成されている。
【0084】
取付部66Bは、着脱体68が取り付けられる部分であり、固定部66Aにおける腹方向側の端部から先端方向へ張り出している。取付部66Bは、腹背方向を厚み方向とする板体で形成され、固定部66Aと一体に構成されている。取付部66Bには、着脱体68が取り外し可能に取り付けるための溝66Dが、左右方向に沿って形成されている。
【0085】
着脱体68は、取付部66Bに対して着脱される構成部である。着脱体68には、ケーブル50における第一リンク10に対する基端側の部分(具体的には、ケーブル50の基端部)が固定されている。着脱体68には、溝66Dと嵌合される凸部68Aが形成されている。凸部68Aが溝66Dに対して左右方向へ抜き差しされることで、着脱体68が取付部66Bに対して着脱される。着脱体68は、取付部66Bに取り付けられた状態において、ナット64B及び移動体66と一体に軸部64Aの軸方向の一方及び他方へ移動する。
【0086】
駆動機構60では、駆動モータ62からの駆動力が、駆動軸62B及びカップリング64Cを介して、滑りネジ64の軸部64Aへ伝達されて、図2に示されるように、軸部64Aが正転すると、ナット64B、移動体66及び着脱体68が、軸部64Aの軸方向に沿って先端方向へ移動する。これにより、ケーブル50が先端方向へ移動して、第二リンク20を先端方向且つ腹方向へ押し、手指200の屈曲動作を支援する。
【0087】
駆動機構60では、駆動モータ62からの駆動力が、駆動軸62B及びカップリング64Cを介して、滑りネジ64の軸部64Aへ伝達されて、図1に示されるように、軸部64Aが逆転すると、ナット64B、移動体66及び着脱体68が、軸部64Aの軸方向に沿って基端方向へ移動する。これにより、ケーブル50が基端方向へ移動して、第二リンク20を基端方向且つ背方向へ引っ張り、手指200の伸展動作を支援する。
【0088】
<本実施形態の作用効果>
本実施形態に係る手指動作支援機構100では、複数のケーブル50が、第一リンク10に対して移動可能に第一リンク10を貫通し、先端部が第二リンク20に固定されており、第一リンク10と第二リンク20との間の空間で屈曲可能とされている。この複数のケーブル50における第一リンクに対する基端側の部分を駆動機構60が押し引きする。
【0089】
このように、本実施形態では、駆動機構60が複数のケーブル50を押し引きするので、単数のケーブル50を押し引きする場合に比べ、支援トルクが高められ、実用的な支援トルクを発現できる。
【0090】
さらに、本実施形態では、複数のケーブル50が、第一リンク10と第二リンク20との間の空間50Sで屈曲可能とされているので、過剰な支援トルクが作用した際に、複数のケーブル50が、当該空間50Sで屈曲することで、機械的に過剰な支援トルクを回避することができる。
【0091】
また、本実施形態では、複数のケーブル50が、左右方向に沿って並んで配置されている。このため、複数のケーブル50が腹背方向のみに沿って並んで配置されている場合に比べ、第一リンク10及び第二リンク20の腹背方向の寸法を小さくしつつ、支援トルクが高められ、実用的な支援トルクを発現できる。
【0092】
また、本実施形態では、例えば、ケーブル50の本数が8本である場合において、図4(C)(D)に示されるように、ケーブル50の列56が、腹背方向に複数形成されている。このため、列56が一つのみで形成されている場合に比べ、支援トルクが高められ、実用的な支援トルクを発現できる。
【0093】
また、本実施形態では、例えば、ケーブル50の本数が8本である場合には、図4(C)(D)に示されるように、各列56を構成するケーブル50のケーブル数(具体的には4本)よりも、腹背方向に形成された列56の列数(具体的には2列)が少なくなっている。このため、当該列数が当該ケーブル数よりも多い場合に比べ、第一リンク10及び第二リンク20の腹背方向の寸法を小さくしつつ、支援トルクが高められ、実用的な支援トルクを発現できる。
【0094】
本実施形態の第1変形例では、複数のケーブル50は、ケーブル50の列56毎に、ケーブル50の外径が異なっている。このため、列56毎の支援トルクが調整可能となる。
【0095】
さらに、第1変形例では、背方向側に配置された列56における複数のケーブル50の外径が、腹方向側に配置された列56における複数のケーブル50の外径よりも大きくなっている。このため、背方向側に配置された列56による支援トルクを、腹方向側に配置された列56による支援トルクよりも大きくできる。
【0096】
ここで、ケーブル50は、外径が大きいと曲げ剛性が高くなるため、曲げ難くなり、手指200の屈曲動作を支援する際に、ケーブル曲率を稼ぎにくくなる。列56が腹背方向に複数形成されるように、ケーブル50が配置される場合(図4(C)(D)参照)では、第1変形例のように、外径が大きいケーブル50を背方向側に配置することにより、安定した曲げを実現することができる。また、第二リンク20への入力位置(すなわちケーブル50の位置)が、回転軸27から背方向側へ離れるほど、回転トルクが大きくなる。そして、第1変形例のように、回転軸27から背方向側へ離れた位置に、曲げ剛性が高いケーブル50を配置することで、支援トルクを大きくすることが可能となる。
【0097】
また、本実施形態の第2変形例では、複数のケーブル50は、先端部同士、及び、第一リンクに対する基端側の部分(具体的には基端部)同士が固定されている。ケーブル50の先端部及び基端側の部分の配置スペースを小さくできる。このため、第二リンク20及び駆動機構60の小型化を図ることができる。
【0098】
本実施形態では、特に、複数のケーブル50は、先端部同士、及び、第一リンク10に対する基端側の部分(具体的には基端部)同士は、左右方向に沿って並んだ状態で固定されているので、ケーブル50の先端部及び基端側の部分の左右方向の配置スペースを小さくできる。このため、第二リンク20及び駆動機構60について、左右方向における小型化を図ることができる。
【0099】
なお、本実施形態の第2変形例では、複数のケーブル50は、先端部同士、及び、第一リンクに対する基端側の部分(具体的には基端部)同士が固定されていたが、これに限られない。複数のケーブル50は、先端部同士、及び、第一リンクに対する基端側の部分(具体的には基端部)同士の一方が、固定される構成であってもよい。すなわち、本実施形態では、複数のケーブル50は、先端部同士、及び、第一リンクに対する基端側の部分(具体的には基端部)同士の少なくとも一方が、固定されていればよい。
【0100】
<評価>
手指動作支援機構100によって、実用可能な支援トルクが得られるかについて評価を行った。また、過剰な支援トルクが作用した際に、ケーブル50が座屈し、支援トルクを回避できるかについて評価を行った。
【0101】
<評価方法>
測定関節角度θm(図9及び図10参照)から仮想関節動作角度θ(=Δθ-θm)を振幅40°にてケーブル50の押出動作を行う。その後、測定関節角度θmへ第二リンク20が伸展するように、ケーブル50の引張動作を行う。測定関節角度θmは、0°、30°、60°、90°とする。ケーブル50の一連の動作について、急激な運動方向の変化を避けるため制御波形は運動周期T=3sの正弦波とした。また、計測回数は5回とし、それらのアンサンブル平均を求めた。
【0102】
ケーブル50には、例えば、図5(A)に示されるように、19本の素線51が螺旋状に1本のケーブルに撚られたストランドタイプ(1×19)を用いた。
【0103】
ケーブル50の本数は、図4(A)(B)(C)(D)に示されるように、例えば、2本、4本及び8本に設定した。ケーブル50の本数を2本、及び4本とした場合には、ケーブル50の外径を1.0mmに設定した(図4(A)(B)参照)。
【0104】
また、ケーブル50の本数を8本した場合には、ケーブル50の外径を1.0mm、0.85mの2つのタイプを用いた(図4(C)参照)。
【0105】
さらに、ケーブル50の本数を8本した場合には、背方向側に配置された列56における4本のケーブル50の外径を1.0mmとし、腹方向側に配置された列56における4本のケーブル50の外径を0.85mmとしたタイプを用いた(図4(D)参照)。
【0106】
支援トルクτは、関節回転半径rj[mm]と動作支援力Fw[N]に基づき、以下の式(1)より算出した。
【0107】
式(1) τ=Fw・rj
【0108】
動作支援力Fw[N]は、図9及び図10に示される取付部302に取り付けたロードセル304を、第二リンク20の中央に配置し、当該ロードセル304によって測定した。
【0109】
関節回転半径r[mm]は、図11(A)に示されるように、第一リンク10と第二リンク20との間の距離r(具体的には第一リンク10と回転軸27の回転中心との距離)と、ケーブル50と連結部位206の骨との距離r(具体的にはケーブル50と指関節204の軸204Aとの距離)に基づき、図11(B)に示される式(2)により求められる。
【0110】
<評価結果>
図12に示されるように、いずれのタイプにおいても、測定関節角度θmを0°、30°、60°、90°とした場合に、実用的に最低限必要な支援トルク100Nmm以上を発現することが確認された。なお、いずれのタイプにおいても、仮想関節動作角度θが25°以上を超えると、ケーブル50の座屈により、支援トルクが収束又は減少することが確認された。これにより、過剰な支援トルクが作用した際に、ケーブル50が座屈し、支援トルクを回避できることが確認された。
【0111】
また、理学療法士が手指のリハビリに必要とする支援トルクは、150Nmm以上とされている。ケーブル50の本数を8本とし外径1.0mmであるタイプ、及びケーブル50の本数を8本とし外径0.85mmと1.0mmを組み合わせたタイプにおいて、測定関節角度θmを0°、30°、60°、90°とした場合に、支援トルク150Nmm以上を発現することが確認された。
【0112】
さらに、理学療法士が手指のリハビリに必要とする支援トルクは、300Nmm以下が望ましいとされている。ケーブル50の本数を8本とし外径0.85mmと1.0mmを組み合わせたタイプにおいては、測定関節角度θmを0°、30°、60°、90°とした場合に、支援トルクが300Nmm以下に収まることが確認された。
【0113】
<手指動作支援機構100の具体的な適用例>
本実施形態の手指動作支援機構100は、四指及び母指の各部位に適用することが可能である。図13~15には、手指動作支援機構100を四指の各部位に適用した適用例が示されている。本適用例では、四指の各々における基節骨、中節骨及び末節骨の各々で形作られる指の部位202A、202B、202Cの背方向側に対して、リンク材401、402、403が配置されている。さらに、リンク材404が手の甲206Aなどに配置されている。リンク材401、402、403、404は、一例として、面ファスナ等の取付手段により、取り付け対象(具体的には指の部位202A、202B、202C、及び手の甲206A)に対して取り付ける。
【0114】
リンク材401に対して複数のケーブル50の先端部が固定されており、リンク材401は、第二リンク20として機能する。リンク材402、403、404に対しては、複数のケーブル50の各々が、移動可能に貫通している。リンク材402、403、404は、第一リンク10として機能する。
【0115】
リンク材401、402、403は、指関節の軸に対して同軸上に配置され、左右方向に沿った回転軸410によって回転可能に連結されている。リンク材403とリンク材404とは、一例として、左右方向に沿った軸と、腹背方向に沿った軸との2軸に回転可能に連結されている。さらに、リンク材403は、リンク材404に対して、先後方向に移動可能に連結されている。なお、リンク材402、403、404は、左右方向の片側において、片持ちで連結する構成とされている。
【0116】
本適用例では、四指のうち、示指及び中指に対して、共通の駆動機構60が設けられており、示指及び中指のリンク材401、402、403を一括して動作させる。また、図13では、図示を省略しているが、四指のうち、環指及び小指示に対して、共通の駆動機構60が設けられており、環指及び小指のリンク材401、402、403を一括して動作させる。なお、示指、中指、環指及び小指の各々に、駆動機構60が設けて、示指、中指、環指及び小指のリンク材401、402、403をそれぞれに動作させてもよい。
【0117】
本適用例では、駆動機構60の駆動モータ62からの駆動力により、ケーブル50が先端方向へ移動すると、リンク材401を先端方向且つ腹方向へ押し、図15に示されるように、手指200の屈曲動作を支援する。
【0118】
駆動機構60の駆動モータ62からの駆動力により、ケーブル50が基端方向へ移動すると、リンク材401を基端方向且つ背方向へ引っ張り、図14に示されるように、手指200の伸展動作を支援する。
【0119】
なお、手指動作支援機構100を四指及び母指に対して適用する場合では、配置スペースの観点から、中指、環指及び小指においては、PIP関節及びDIP関節に対して手指動作支援機構100を適用することが考えられる。ただし、ケーブル50の本数の低減などにより、第一リンク10及び第二リンク20の小型化ができれば、四指及び母指における全ての指関節204に対して手指動作支援機構100を適用することも可能である。
【0120】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0121】
10 第一リンク
12 本体部
14 連結部
16 孔
17 チューブ
18 突出部分
19 固定手段
20 第二リンク
22 本体部
24 連結部
26 孔
27 回転軸
28 突出部分
29 固定手段
50 ケーブル
50S 空間
51 素線
55 固定手段
56 列
59 固定手段
60 駆動機構
61 支持体
61A、61B、61C 支持部
62 駆動モータ
62A 本体
62B 駆動軸
64 ネジ
64A 軸部
64B ナット
64C カップリング
66 移動体
66A 固定部
66B 取付部
66C 孔
66D 溝
68 着脱体
68A 凸部
100 手指動作支援機構
200 手指
202 指部位
204 指関節
204A 軸
206 連結部位
206A 手の甲
302 取付部
304 ロードセル
401、402、403、404 リンク材
410 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15