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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068370
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】加熱処理方法、及び、計数装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/16 20060101AFI20240513BHJP
   A61L 2/04 20060101ALI20240513BHJP
   A61L 2/24 20060101ALI20240513BHJP
   A23C 3/02 20060101ALN20240513BHJP
【FI】
A23L3/16
A61L2/04
A61L2/24
A23C3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178757
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】522437429
【氏名又は名称】今城 敏
(74)【代理人】
【識別番号】100146732
【弁理士】
【氏名又は名称】横島 重信
(72)【発明者】
【氏名】今城 敏
【テーマコード(参考)】
4B001
4B021
4C058
【Fターム(参考)】
4B001BC08
4B001CC01
4B001EC99
4B021LA41
4B021LA42
4B021LP01
4B021LT06
4B021LW04
4B021LW05
4B021LW10
4C058AA21
4C058BB02
4C058DD13
(57)【要約】
【課題】法令等に定められる加熱殺菌のための処理温度等の目標温度に対して、当該目標温度を越えて過剰に負荷される温度を低減しながら、法令等に定める加熱処理の条件を満たす加熱処理の方法を提供すること。
【解決手段】目標温度に加熱することにより非処理物中に存在する細菌を殺菌する加熱処理方法であって、非処理物の温度が当該目標温度未満である時間帯が、非処理物の温度が当該目標温度以上である時間帯の間に存在し、当該目標温度以上である時間帯の合計時間が目標時間になった際に処理を終了することを特徴とする加熱処理方法。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標温度に加熱することにより非処理物中に存在する細菌を殺菌する加熱処理方法であって、非処理物の温度が当該目標温度未満である時間帯が、非処理物の温度が当該目標温度以上である時間帯の間に存在し、
当該目標温度以上である時間帯の合計時間が目標時間になった際に処理を終了することを特徴とする加熱処理方法。
【請求項2】
上記非処理物の温度が上記目標温度未満である時間帯における最低温度と当該目標温度との温度差が10℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の加熱処理方法。
【請求項3】
上記非処理物が食品であり、上記目標温度、及び目標時間は、当該食品について法令によって定められる加熱殺菌における下限の温度及び時間であることを特徴とする請求項1に記載の加熱処理方法。
【請求項4】
加熱処理に係る基準温度を記憶する記憶部と、
非処理物の温度を測定する温度測定手段から入力される非処理物の温度を認識する温度測定部と、
当該非処理物の温度と記憶部に記憶した基準温度を比較する演算部と、
当該非処理物の温度が当該基準温度以上である旨を当該演算部が出力する時間を積算して計数する計数部を有することを特徴とする計数装置。
【請求項5】
上記計数部によって積算された時間を表示する表示部を有することを特徴とする請求項4に記載の計数装置。
【請求項6】
上記記憶部は、更に加熱殺菌のための基準時間を記憶可能であり、上記計数部によって積算された時間が当該基準時間を越えた際にアラームを発する出力部を有することを特徴とする請求項4に記載の計数装置。
【請求項7】
上記記憶部は、更に一つ又は複数の設定温度、及び当該各設定温度に対応したアラームの内容を記憶可能であり、上記非処理物の温度が当該設定温度のいずれかを超えて偏倚した際に対応するアラームを発することを特徴とする請求項6に記載の計数装置。
【請求項8】
上記記憶部は、更に一つ又は複数の設定温度と設定時間のセット、及び当該各設定温度と設定時間のセットに対応したアラームの内容を記憶可能であり、上記非処理物の温度が当該設定温度のいずれかを超えて偏倚する時間が該当する設定時間を越えて継続する際に対応するアラームを発することを特徴とする請求項6に記載の計数装置。
【請求項9】
上記非処理物の温度の時間変化を記録する記録部を有することを特徴とする請求項4に記載の計数装置。
【請求項10】
請求項4~9のいずれかに記載の計数装置を有することを特徴とする加熱殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の加熱処理方法、及び、その際に使用される計数装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
自然界の動植物から得られる各種の食品には、当該食品の種類や由来等に応じて各種の細菌等の微生物や寄生虫が含まれており、当該細菌等が含まれた状態の食品をヒトが摂取した際には、いわゆる食中毒として疾病を引き起こす場合があることが知られている。このため、特に自然界から得られた食品を他者に提供する場合については、各種の規則によって、その食品の種類に応じて加熱殺菌等の加熱処理方法が定められており、食品を他者に提供する業者等はその規則に従うことが求められている。
【0003】
上記のような殺菌を目的とする加熱処理の方法に関する規則の例として、例えば、牛乳については、「保持式により摂氏63度で30分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること。」(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)等のように規定されている。また、豚の食肉の調理等を行い直接消費者に販売する場合は、豚の食肉の中心部の温度を63℃で30分間以上加熱するか、これと同等以上の殺菌効果がある方法で加熱殺菌しなければならないことが定められる(食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号))と共に、当該同等以上の殺菌効果がある方法が、中心部の温度を75℃で1分間以上加熱殺菌すること等をいうことが厚生労働省によって公表されている(非特許文献1)。
【0004】
また、鶏肉に起因するカンピロバクター食中毒の防止のため、鶏肉についても中心部の温度を75℃で1分間以上の加熱殺菌を行うべきことが呼びかけられている(厚生労働省HP)。また、鶏卵から得られる卵液については、バッチ式によって加熱殺菌する際には、全卵、卵黄については58℃で10分間、卵白については54℃で10分間の加熱殺菌を行うことが定められている(衛食第116号、衛乳第190号)。
【0005】
上記のような各種の食品に求められる加熱殺菌は、当該加熱によって食品内に存在する細菌等を死滅させることにより、当該細菌がヒトの体内に取り混まれることを防止するものである。一方、例えば牛乳の殺菌においては、加熱殺菌の温度・時間による熱履歴の違いに起因して牛乳の風味等が変化し、当該殺菌の目的で食品に加えられる熱履歴は食品の品質にも影響することが知られている(例えば、非特許文献2を参照)。
【0006】
また、近年では、食味の多様化に伴って、一般に生食が可能な牛肉の調理法に倣って、加熱殺菌が必要とされる豚肉や鶏肉についても、より加熱の程度を抑制した低温調理により調理した食品が好まれる等、法規等で規定される殺菌の必要性の充足と、食品の品質向上のニーズとの間で、食品加工の現場で求められる加熱殺菌の精密性が高まっている。当該低温調理を行う際の手段として、例えば、特許文献1には、100℃よりも低温に加熱して調理するために、燃焼状態と消火状態とを繰り返す間欠燃焼を行うガスコンロが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-90544号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】食安発0602第1号
【非特許文献2】日本食品科学工学会誌,第46巻(1999),535-542頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
加熱殺菌に伴う食品への熱履歴を軽減しようとする際には、上記法令等で規定される範囲内で、例えば、牛乳を63℃で30分間のように、食品を法令等が定める下限の温度を目標温度として、当該目標温度に法令等が定める下限の処理時間だけ保持することが望まれる。
【0010】
一方、上記各種の被処理物に対して加熱処理する際には、被処理物の昇温、及び昇温された被処理物からの放熱に対抗して被処理物を目標温度又はその直上に維持するため、外部から所定の加熱を行うことが必要となる。当該昇温や目標温度での保持には、各種のフィードバック制御を使用して、被処理物に対して目標とする温度履歴を負荷することによって行われるが、現実にはフィードバックの時間遅れや、外乱による温度変化等により、数10分間にわたって被処理物を目標温度、又はその直上の温度に維持することは困難である。
【0011】
そして、特に当該被処理物の加熱条件を定める法令等に規定される処理時間内での加熱処理を行おうとする際に、当該処理時間内に被処理物の温度が法令等に定める処理温度を下回る時間帯が存在する場合には、当該法令等に定める殺菌条件が満たされず、顧客に販売できない等の問題を生じる。
【0012】
上記のような問題の発生を防止するため、一般には、処理時間での加熱処理を行う時間(処理時間)内に生じることが予想される温度揺らぎの幅に応じて、当該温度揺らぎを生じた場合にも法令等に定める下限の温度を下回ることがないように、予め法令等に定める処理温度に所定のマージン分を加えた温度を制御の目標温度として、当該目標温度に被処理物を維持するような温度制御を行うことにより、法令等に定める処理時間によって加熱処理を完了することが一般に行われる。
【0013】
しかしながら、上記のように、加熱処理において生じる温度揺らぎに応じた分の温度をマージン分として過剰に負荷する殺菌処理を行った際には、当該過剰の加熱によって食品の風味が損なわれる等の問題を生じることから、より望ましい加熱処理の方法が望まれている。
【0014】
本発明は、上記の問題を解決して、法令等に定められる加熱処理のための処理温度等の目標温度に対して、当該目標温度を越えて過剰に負荷される温度を低減しながら、法令等に定める加熱処理の条件を満たす加熱処理の方法を提供することを課題とする。また、当該加熱処理方法を行う際に、これを容易にする計数装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
(1)目標温度に加熱することにより非処理物中に存在する細菌を殺菌する加熱処理方法であって、非処理物の温度が当該目標温度未満である時間帯が、非処理物の温度が当該目標温度以上である時間帯の間に存在し、当該目標温度以上である時間帯の合計時間が目標時間になった際に処理を終了する加熱処理方法。
(2)上記非処理物の温度が上記目標温度未満である時間帯における最低温度と当該目標温度との温度差が10℃以下である加熱処理方法。
(3)上記非処理物が食品であり、上記目標温度、及び目標時間は、当該食品について法令によって定められる加熱殺菌における下限の温度及び時間である加熱処理方法。
(4)加熱処理に係る基準温度を記憶する記憶部と、非処理物の温度を測定する温度測定手段から入力される非処理物の温度を認識する温度測定部と、当該非処理物の温度と記憶部に記憶した基準温度を比較する演算部と、当該非処理物の温度が当該基準温度以上である旨を当該演算部が出力する時間を積算して計数する計数部を有する計数装置。
(5)上記計数部によって積算された時間を表示する表示部を有する計数装置。
(6)上記記憶部は、更に加熱殺菌のための基準時間を記憶可能であり、上記計数部によって積算された時間が当該基準時間を越えた際にアラームを発する出力部を有する計数装置。
(7)上記記憶部は、更に一つ又は複数の設定温度、及び当該各設定温度に対応したアラームの内容を記憶可能であり、上記非処理物の温度が当該設定温度のいずれかを超えて偏倚した際に対応するアラームを発する計数装置。
(8)上記記憶部は、更に一つ又は複数の設定温度と設定時間のセット、及び当該各設定温度と設定時間のセットに対応したアラームの内容を記憶可能であり、上記非処理物の温度が当該設定温度のいずれかを超えて偏倚する時間が該当する設定時間を越えて継続する際に対応するアラームを発する計数装置。
(9)上記非処理物の温度の時間変化を記録する記録部を有する計数装置。
(10)上記の計数装置を有する加熱殺菌装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る加熱処理方法によれば、法令等に定める条件を満たす加熱処理等を行う際に、加熱殺菌中に被処理物に加えられる温度の最大値を抑制可能であって、従来と比較して食品等の有する風味が維持されやすい等、必要以上の温度が付加されることの弊害を抑制しながら加熱処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】法令等に定められる加熱処理のための温度履歴を示す模式図である。
図2】フィードバック制御による温度制御の様子を示す模式図である。
図3】従来の食品等の加熱殺菌の際の温度管理の様子を示す模式図である。
図4】本発明に係る加熱殺菌方法の温度-時間管理の様子を示す模式図である。
図5】本発明に係る計数装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、食品等の加熱殺菌について、牛乳の殺菌処理を例にして説明を行うが、豚の食肉や鶏肉、卵液等の加熱殺菌についても同様の事情が存在する。
牛乳の加熱殺菌については、「保持式により摂氏六十三度で三十分間加熱殺菌するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること。」(食品衛生法、昭和二十六年厚生省令第五十二号;乳及び乳製品の成分規格等に関する省令。以下、「乳省令」と記載する場合がある。)等と規定されており、当該規定を満たさない牛乳を提供することはできない。
【0019】
上記の規定を受けて、一般に流通する牛乳の加熱殺菌方法については、殺菌処理に要するコストや牛乳に求められる品質等に応じて、生乳をタンク内で撹拌しながら一定の温度を保持して殺菌する方法(保持式)により加熱殺菌する際の温度と時間について、大きく以下のように分類されている。
【0020】
(1)低温殺菌(LTLT:Low Temperature Long Time):63~65℃で30分間加熱殺菌する。
(2)高温殺菌(HTLT:High Temperature Long Time):75℃以上で15分以上の加熱殺菌をする。
(3)超高温殺菌(UHT:Ultra High Temperature):120~150℃で1~3秒間の加熱殺菌をする。
【0021】
上記高温殺菌と超高温殺菌では、各殺菌温度に保持される時間が15分以上(高温殺菌)、1~3秒間(超高温殺菌)とされており、乳省令に定める30分間を満たしていない。このことは、殺菌温度が高まることによって細菌の死滅が促されるために短時間でも十分な殺菌が可能であることに基づくものであり、当該高温殺菌、超高温殺菌等は乳省令に記載の「同等以上の殺菌効果を有する方法」に相当するものである結果、殺菌温度に応じて乳省令に記載の殺菌時間(30分間)を短縮することが許容されているものと解される。
【0022】
一方、乳省令に記載の殺菌温度(63℃)については、当該殺菌温度が63℃未満である場合についての指針等は示されておらず、当該殺菌温度未満に保持することは殺菌処理とは見なされないものと解される。
【0023】
図1には、上記乳省令に規定される牛乳の加熱殺菌の際の温度履歴等を模式的に示す。図1中に実線で示すように、上記乳省令においては、63℃に加熱した状態で30分間保持すること、及び、殺菌後直ちに10℃以下に冷却して保存することが規定されている。そして、上記で説明したように、殺菌中の被処理物の温度が当該法令等の定める下限温度(T)の63℃を上回って偏倚した期間(例えば、図1中のA)が存在する場合にも、「同等以上の殺菌効果を有する方法」である範囲内において、当該処理は乳省令の規定を満たすものとして取り扱われている。
【0024】
一方、例えば、殺菌中の被処理物の温度が一次的に63℃未満に偏倚した期間(図1中のB)が存在する場合等については、乳省令の規定を満たさないものとして取り扱われる。
【0025】
図2には、PID制御等のフィードバック制御により、被処理物を加熱して、その後の所定時間tの間、温度Tに保持しようとした際に被処理物に生じる温度履歴について模式的に示す。図2に示すように、フィードバック制御によって被処理物の温度を目標温度(T)に保持しようとした際にも、被処理物や加熱のための加熱装置が有する熱容量や、外部からの影響などに起因して、被処理物の温度には目標温度(T)の周囲に所定の幅(ΔT)で揺らぎが発生することが避けられない。
【0026】
このため、所定の加熱処理装置等を使用して、例えば、上記牛乳等の食品を法令で定める温度に保持して加熱殺菌を行う等の目的で、当該加熱処理装置の目標温度(T)を当該殺菌の下限温度(T)に設定し、法令で定める保持時間(t)の保持を行った場合、例えば、図2中のD点のように、当該保持時間内に被処理物の温度が目標温度(T)を下回る時間帯が生じるため、法令で定める加熱殺菌の条件を満たさず、消費者への提供ができないという問題を生じることとなる。
【0027】
図3には、上記のように現実の加熱処理装置等が有する特性を考慮して、食品等の加熱殺菌についての法令を満たす殺菌処理を行う際の対処方法の一例を示す。乳省令には、保持式により63℃で30分間の加熱殺菌する旨が規定され、その処理温度や処理時間として許容される範囲等が特定されていない。一方、一般に処理温度を高めることで殺菌効果が向上することを利用して、上記高温殺菌等においては処理温度を63℃よりも高めた状態で所定時間だけ保持することによる加熱殺菌が行われている。つまり、加熱殺菌の処理温度を高めることは「同等以上の殺菌効果を有する方法」に相当する範囲で、一般に許容されていると考えられる。
【0028】
このため、目標温度に対して被処理物の温度に所定の揺らぎを生じる装置等を使用して加熱殺菌を行う際には、図3に示すように、法令等で定める処理時間(t)の間に、当該温度揺らぎの中で最も低温となった際(図3中のD点)にも、その温度が法令で定める温度(T)を下回らないように、目標温度を当該Tよりも高温のTとする操作を行うことが一般的である。当該操作によって、加熱殺菌中の被処理物の温度が法令で定める温度を下回ることが防止され、「同等以上の殺菌効果を有する方法」に相当することによって、当該食品の販売などが可能となる。
【0029】
一方、図3に示すように、加熱装置や加熱制御装置の性能等に由来して生じる温度揺らぎ(ΔT)の大きさを考慮して定まる所定のマージン温度(ΔT’)の分だけ、加熱装置の目標温度(T)を上記法令等の定める下限温度(T)よりも高く設定した場合には、非処理物には、法令等の定める下限温度(T)に対して最大でΔTだけ高い温度が加えられるため、当該過剰の加熱によって食品等の風味が損なわれ、食品の付加価値が低下するという問題を生じることとなる。
【0030】
上記のように、所定の温度揺らぎを有する現実の加熱処理装置を使用した加熱殺菌を行う場合において、法令等の定める加熱殺菌の下限温度(T)を越えて過剰に負荷される温度を低減して、食品の付加価値の低下を抑制する方法を発明者が種々検討したところ、意外にも、加熱殺菌中の被処理物の温度が法令等で定める下限温度(T)を下回る時間帯が存在する場合であっても、被処理物の温度が当該下限温度(T)を上回る時間帯の合計時間が法令等で定める処理時間(t)以上となるように加熱処理を行うことにより、法令等の定める下限温度(T)に法令等で定める処理時間(t)だけ保持する加熱殺菌と同等以上の殺菌効果を得られることを見出し、本発明に至ったものである。
【0031】
図4には、本発明に係る殺菌方法における非処理物の温度変化の例を模式的に示す。上記のように、現実の加熱処理装置を使用した加熱殺菌を行う場合には、目標とする加熱温度に対して、非処理物の温度には所定の幅で温度揺らぎを生じることが避けられない。例えば、非処理物について法令等の定める加熱殺菌の下限温度(T)を目標温度(T)とした際には、非処理物の温度は当該Tを中心として上下に揺らぎを有し、法令等で定める処理時間(t)の間、当該T以上の温度を維持することが困難である。
【0032】
一方、本発明は、図4に示すように、非処理物の温度が法令等の定める加熱殺菌の下限温度(T)等の目標温度(T)を下回る時間帯(t,t等)が存在する場合であっても、被処理物の温度が目標温度(T)を上回る時間帯(t,t等)を有効処理時間として、当該有効処理時間の合計時間が法令等で定める処理時間(t)以上となるように加熱処理を行うことにより、当該目標温度(T)に時間(t)だけ維持した場合と同等以上の殺菌効果を得られることを見出したことに基づくものである。
【0033】
つまり、本発明に係る加熱処理方法は、下記の評価結果に示されるように、法令等で定める処理時間(t)の間に、法令等の定める加熱処理の下限温度(T)を下回る時間帯が存在して下限温度(T)を上回る時間帯が断続的である場合にも、当該下限温度(T)を上回る時間帯の合計が法令等で定める処理時間(t)を上回ることによって、十分な殺菌が可能であることを利用するものである。
【0034】
上記の評価結果は、当該下限温度(T)を下回る時間帯は必ずしも殺菌処理を阻害せず、その温度低下の幅が所定の範囲内にある場合には、当該下限温度(T)を下回る時間帯においても殺菌が進行することを示すものと考えられる。
【0035】
本発明に係る加熱処理方法は、例えば、牛乳や液卵等を非処理物として当該方法を適用する際には、非処理物の食味の変化を抑制しながら主に殺菌を目的として実施することができる。また、例えば、豚の食肉や鶏肉等を非処理物として当該方法を適用する際には、当該非処理物に対して調味料等を混合した状態で加熱を加えることにより、加熱調理中に殺菌を行う方法として実施することができる。
【0036】
上記本発明に係る加熱処理方法によれば、加熱処理中の非処理物の温度が、当該非処理物について法令等の定める加熱処理の下限温度(T)等、処理の目標とする目標温度を下回る時間帯が存在する場合にも殺菌処理等が可能となることから、例えば、図3に示すように、全処理時間にわたって非処理物の温度が目標温度を下回らないように過剰な温度(ΔT’)を負荷する必要がなく、非処理物に対する温度履歴を緩和しながら、法令に定める加熱処理が可能となる。
【0037】
また、本発明に係る加熱処理方法によれば、特に非処理物の温度が設定された目標温度を下回る時間帯に相当する時間分だけ加熱処理時間が法令等で定める処理時間(t)よりも延長されるが、食品の食味は加熱処理中の最高温度によって大きく影響を受けることから、法令等の定める加熱殺菌の下限温度(T)等を越えて過剰に負荷される温度を減少させることによって、食品の付加価値を維持した状態での殺菌処理が可能となる。
【0038】
本発明に係る加熱処理方法は、食品等の加熱殺菌を主な目的として実施される他、食品等の加熱調理と同時に殺菌を行う手段として実施することができる。また、本発明に係る加熱処理方法は、食品等以外の生体由来物質についても適用することが可能であり、例えば、血液製剤の内で、アルブミン製剤等の血漿分画製剤におけるウイルスの不活性化のための手段として実施することができる。
【0039】
本発明に係る加熱処理方法の一実施形態として、以下のような操作によって食品などの非処理物の加熱処理が行われる。
(1)加熱処理しようとする非処理物に、非処理物の温度を測定するために熱電対等の温度計(測温用温度計)を設置する。その際には、非処理物を加熱した際の温度上昇が遅れる等により、非処理物内において最も温度が低いと思われる箇所、例えば、非処理物の内部(中心部)の温度が計測されるように測温用温度計を設置することが好ましい。また、非処理物が流動性を有する場合には、適宜の方法で非処理物を撹拌する等して非処理物内の温度の均一化を図ることが望ましい。
【0040】
(2)上記測温用温度計の指示値が、当該非処理物について法令等の定める加熱処理の下限温度(T)等の目標温度(又は、当該目標温度の直上の温度)になるように非処理物を加熱して、その状態で非処理物を維持しながら上記測温用温度計の指示値が当該目標温度以上である時間(有効処理時間)を計測する。
【0041】
(3)上記で計測された有効処理時間を合算し、当該有効処理時間の合算値が、法令等の定める加熱処理の処理時間(t)等の目標時間以上となった時点で加熱を停止して非処理物を冷却する。
【0042】
上記の加熱処理の操作において、法令等の定める加熱処理の下限温度(T)を加熱の目標温度とした場合には、非処理物に生じる温度揺らぎに起因して、一般的に全処理時間の50%程度が有効処理時間となり、法令等の定める加熱処理の処理時間(t)の2倍程度の時間で加熱処理を行うことができる。
【0043】
一方、法令等の定める加熱処理の下限温度(T)の直上の温度であって、例えば、当該下限温度(T)に所定のマージン温度を加えた温度を加熱の目標温度とした場合には、当該加えたマージン温度の大きさに応じて全処理時間に占める有効処理時間の割合が増加し、より法令等の定める加熱処理の処理時間(t)に近い時間で殺菌処理を行うことができる。
【0044】
また、上記加熱処理中の非処理物の温度の制御をPID制御等のフィードバック制御によって行い、その精度を高めることで非処理物に生じる温度揺らぎの幅を縮小させることにより、上記下限温度(T)に加えるマージン温度の大きさを縮小すると共に、全処理時間に占める有効処理時間の割合を増加させることが可能となり、非処理物に負荷される温度履歴を軽減することができる。
【0045】
上記法令等の定める加熱処理の下限温度(T)に加えるマージン温度は、非処理物の温度制御の精度に応じて、例えば、5℃以下とすることが望ましく、更に3℃以下、2℃以下とすることが望ましく、当該マージン温度を1℃程度以下にすると共に全処理時間に占める有効処理時間の割合を90%程度以上とすることにより、非処理物に対して過剰な温度履歴が負荷されることを回避しながら加熱処理を行うことが可能となる。
【0046】
上記のように、加熱殺菌中に非処理物の温度が法令等の定める加熱処理の下限温度(T)を下回る時間帯が存在し、非処理物の温度が当該温度以上である有効処理時間が断続的になった場合においても、当該有効処理時間の合計が法令等の定める加熱処理の処理時間(t)以上となるように処理することによって、法令等の定める加熱殺菌を行った場合と同等以上の殺菌効果を得ることが可能である。
【0047】
一方、加熱処理中の非処理物の温度が過剰に低下した場合、殺菌対象である細菌等の再増殖を生じるおそれがあるため、法令等の定める加熱殺菌の下限温度(T)を基準とした温度の低下幅が小さいことが望ましい。一般に、食中毒の原因となる細菌等の増殖は主に60℃以下、特に50℃以下において生じると考えられることから、加熱殺菌の過程で非処理物の温度が当該下限温度(T)に達した後、加熱処理の完了までの間は、その温度を少なくとも50℃以上、より望ましくは60℃以上に維持することが好ましい。
【0048】
更に、効率的な殺菌を行う観点からは、加熱処理中に当該下限温度(T)を下回って非処理物に生じる温度の最小値と、当該下限温度(T)の差は10℃以下とすることが好ましく、更に5℃以下にすることにより、再加熱に要する時間を短縮することができる。また、加熱処理中に当該下限温度(T)と非処理物の温度の最小値との差を1℃以下、より好ましくは0.1℃以下とすることにより、当該下限温度(T)を下回っている時間帯にも有効な殺菌を生じると考えられる点で望ましい。
【0049】
また、非処理物に負荷される熱履歴を軽減する観点からは、非処理物の温度が法令等の定める加熱処理の下限温度(T)を下回る時間帯の合計を、全処理時間の50%以下とすることが望ましく、特に30%以下、20%以下とすることが望ましい。また、当該下限温度(T)を下回る時間帯の合計を全処理時間の10%以下とすることにより、従来の大きな温度マージンを伴う殺菌処理と同等の時間で殺菌処理を行うことができる。
【0050】
また、加熱殺菌の過程で非処理物の温度が当該下限温度(T)に達した後、加熱殺菌の完了までの間に非処理物の温度が50℃以下に低下した場合には、上記有効処理時間の合算値をクリアーして、再度、非処理物の温度が法令等の定める加熱処理の下限温度(T)に達した時点を基準として加熱殺菌処理を再開する等により、法令等の定める加熱処理を行うことができる。
【0051】
本発明に係る加熱処理方法によれば、上記のように各種の食品について定められる加熱殺菌の条件に応じて、その加熱処理の下限温度(T)等を目標温度として、非処理物の温度が当該目標温度以上である有効処理時間を計数して、その合計時間が法令等の定める加熱処理の処理時間(t)以上とすることにより殺菌処理を行うことができる。当該有効処理時間の計数は、例えば、ストップウォッチ等を用いることで加熱処理を行う者が適宜行うことが可能である。
【0052】
一方、加熱殺菌に係る基準温度を記憶する記憶部と、非処理物の温度を測定する温度測定手段から入力される非処理物の温度を認識する温度測定部と、当該非処理物の温度と記憶部に記憶した基準温度を比較する演算部と、当該非処理物の温度が当該基準温度以上である旨を当該演算部が出力する時間を積算して計数する計数部を有し、非処理物の温度が予め設定した基準温度よりも高い時間の合計時間を表示等することが可能な計数装置を使用することにより、加熱殺菌を行う者は、当該計数装置の表示等する計数結果を参照することにより、簡便に法令等の定められる加熱処理の終点を知ることが可能となる。
本発明に係る計数装置の構成の概略を図5に示す。
【0053】
また、上記計数装置の記憶部が加熱殺菌に係る基準時間を記憶する機能を有すると共に、上記計数装置の演算部によって計数された時間が当該基準時間等に達したと判断した時点等にその旨のアラーム等を発する出力部を有することにより、加熱処理を行う者は、当該アラーム等に基づいて法令等の定めら加熱殺菌処理を終了することが可能となる。なお、上記「アラーム」の語は、ヒトが検知できる光や音等による信号、及び、加熱装置の機器等に対して各種の形式によって発せられる信号を含むものとする。
【0054】
PID制御等によって加熱処理される非処理物を所定の温度に維持する等が可能な加熱処理装置に対して、本発明に係る計数装置を組み合わせることによって、加熱殺菌を行う者は、加熱処理装置に適宜の温度設定を行うと共に、上記計数装置に基準温度等を入力して殺菌処理を開始することによって、当該計数装置の計数結果に基づいて加熱殺菌の進行の程度を認識しながら加熱処理を行うことができる。
【0055】
また、上記計数装置が発する、有効処理時間の合計が基準時間に達した旨のアラームに基づき、加熱処理装置が非処理物に対する加熱を終了することにより、人為的な介在を必要とせず、繰り返し精度良く加熱殺菌処理を行うことが可能となる。
【0056】
更に、本発明に係る計数装置を加熱処理装置に組み合わせる際に、例えば、非処理物が最初に基準温度(T)になった後の経過時間に対して、計数装置が計数した有効処理時間の合計時間が占める割合等に応じて、計数装置が加熱処理装置の目標温度を変化させる等、本発明に係る計数装置の計数結果に基づいて加熱処理装置の設定を変更することにより、非処理物に負荷される温度履歴の最小化を図ることができる。
【0057】
また、本発明に係る計数装置が有する記憶部には、計数の基準とする基準温度の他に、注意温度や回避温度等の各種の温度を設定温度として記憶可能とすることにより、殺菌処理中の温度変動に応じた対処を行うことが可能となる。
【0058】
例えば、非処理物の温度が基準温度未満で推移する期間は有効処理時間に計数されない一方で、加熱された状態に保持されることにより非処理物である食品等の品質の低下を招くおそれがある。また、非処理物の温度が基準温度を所定の幅を越えて高温になった場合にも非処理物の品質の低下を招くおそれがある。このような場合には、計数装置がアラームを発することにより、加熱殺菌を行う作業者に加熱条件の見直しを促し、又は、フィードバック制御等によって自動で温度制御を行う加熱処理装置に対して制御目標を変更させる等によって、非処理物の品質を維持することが望ましい。
【0059】
上記のように、加熱処理の過程において加熱条件の見直しを行う基準として、記憶部に注意を促す基準となる温度を設定することにより、非処理物の温度が当該設定した温度を越えて基準温度から偏倚した際にアラームを発する等により加熱条件等を変更等させることが可能となる。
【0060】
また、加熱処理装置への外部からの影響により、基準温度に対して非処理物が極端に低温や高温になった場合には、非処理物である食品の品質低下を生じることが考えられる。このような場合に対処するために、良好な加熱殺菌が困難になった旨の判断を行う基準として、処理の回避を行う基準となる温度を記憶部に設定して非処理物の温度が当該設定した温度を越えて基準温度から偏倚した際に加熱処理を中断し、又は、再度の加熱処理を開始させることによって、有効な加熱殺菌を行うことが可能となる。
【0061】
また、上記のように、非処理物の温度が基準温度の直下等で推移して有効処理時間が計数されない状態が継続する場合には、非処理物の加熱条件を積極的に見直すことにより良好な加熱処理を行うことが可能である。
本発明に係る計数装置が有する記憶部に、加熱条件の見直しを行う基準としての設定温度と設定時間のセットを記憶させ、非処理物の温度が基準温度に満たない等、当該設定された温度を越えて該当する設定時間を越えて継続する場合に、アラームを発する等により加熱条件等を変更等させることによって、非処理物の品質の低下を防止することが可能となる。
【0062】
本発明に係る計数装置において、上記非処理物の温度の時間変化や、加熱開始から処理終了までの全処理時間、計数装置が発した各種アラームなどを記録する記録部を設けることにより、加熱殺菌を行った食品などに負荷された温度履歴が記録され、非処理物の品質管理に有効である。
【0063】
上記のような本発明に係る計数装置は、計数装置を構成する各部分を構成する電気回路を組み合わせることによって構成可能である他、既存の電子計算機内で作用するプログラム(ソフトウェア)によって計数装置を構成する各部分を構成し、当該各部分を協調して作用させることによって構成することも可能である。
【実施例0064】
細菌を懸濁させた液体培地を使用して、以下に示す方法により、殺菌処理のための目標温度を58℃として、連続的に当該目標温度に細菌を晒した場合と、断続的に当該目標温度に晒した場合について、試験後に残存する細菌数を比較した。
【0065】
細菌を懸濁するための培地として、市販の緩衝ペプトン水(3M緩衝ペプトン水(BPW-ISO),BPW500,スリーエムジャパン製)を使用し、当該緩衝ペプトン水(25.5g)に対して精製水(1L)を混合して完全に溶解させた後、121℃に設定したオートクレーブに15分間保持することにより滅菌処理を行ったペプトン液体培地を使用した。当該ペプトン液体培地に、初発菌数が1.0×10個/mLになるように試験細菌として大腸菌(野生株)を懸濁させたものをサンプルとして使用した。
【0066】
滅菌したガラス製セルに上記大腸菌を懸濁させたペプトン液体培地(約2mL)を注いだ状態で、当該セルを58℃に温度調整された湯浴、又は55℃に温度調整された湯浴中に以下の条件で浸漬することにより、各サンプルがそれぞれ58℃に保持される時間の合計が2分間となるようにして、ペプトン液体培地中の大腸菌の加熱殺菌を行った。
【0067】
(1)連続法:58℃の湯浴に2分間保持後に、水浴中で冷却。
(2)断続法:58℃の湯浴に1分間保持した後、55℃の湯浴に移して1分間保持し、その後に再度58℃の湯浴に移して1分間保持後、水浴中で冷却。
【0068】
上記の各熱履歴を加えたペプトン液体培地中の大腸菌数を、腸内細菌科菌群集落計数法(NIHSJ-16:2020)に準じて、以下の方法により評価した。
23.5gの培地用の寒天(日水製薬社製、品番:05618)を水1Lに混合し、その後、121℃の高圧蒸気で15分間加熱して溶解させると共に滅菌した後、約50℃に保持して寒天培地とした。滅菌シャーレ中で、上記加熱殺菌を行ったペプトン液体培地(1g )に、上記で作成したペプトン液体培地(9g)を加えて10倍に希釈した後、上記寒天培地(約20mL)を注いで35℃に保持することで寒天培地を凝固させ、寒天培地が凝固した後にシャーレを倒置して、35℃で48時間、サンプルに含まれる大腸菌を培養した。
【0069】
表1には、上記熱履歴を加えた後の培地中の細菌濃度を示す。上記連続法で加熱殺菌を行ったペプトン液体培地を使用して上記のように培養を行ったところ、大腸菌の増殖に由来すると考えられる定型集落がシャーレ中に形成され、その定型集落の個数から、加熱殺菌後のペプトン液体培地中の残存細菌濃度が21000(cfu/mL)と見積もられた。一方、上記断続法で加熱殺菌を行ったペプトン液体培地を培養したところ、定型集落の形成は観察されず、加熱殺菌によって細菌の残存数が検出の下限以下となることが示された。
【0070】
【表1】
【0071】
上記のように、殺菌温度である58℃に保持する時間が同一の2分間であるにも関わらず、断続的に58℃に2分間保持した場合に高い殺菌効果が得られる理由は、処理中に55℃へ降温した時間帯においても細菌の死滅による現象を生じているためであり、当該降温によって殺菌が妨げられないことを示すものであると考えられる。
【0072】
上記知見に基づけば、例えば、「保持式により摂氏63度で30分間加熱殺菌」と定められる牛乳について、当該63℃以上に保持する時間が断続的であっても、その合計を30分間以上とすることにより、当該保持する時間内に非処理物が63℃未満となる時間帯が存在しても63℃に30分間保持した場合と同等以上の殺菌効果が得られると考えられ、法令に定める「保持式により摂氏63度で30分間加熱殺菌する…と同等以上の殺菌効果を有する方法」に該当するものである。
【0073】
また、牛乳以外の豚の食肉や鶏肉などの加熱殺菌が義務付けられている食品についても、本発明に係る殺菌方法により法令に定める方法と同等以上の殺菌効果を得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
加熱処理が義務付けられている食品について、食品に負荷される熱履歴を軽減しながら法令に定める方法と同等以上の殺菌効果を得ることが可能となり、特に加熱殺菌に伴う食味の変化を抑制するなどにより食品の付加価値を高めることができる。
図1
図2
図3
図4
図5