(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024068386
(43)【公開日】2024-05-20
(54)【発明の名称】垂直軸風車の過回転防止構造
(51)【国際特許分類】
F03D 7/06 20060101AFI20240513BHJP
F03D 3/06 20060101ALI20240513BHJP
【FI】
F03D7/06 C
F03D3/06 G
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178785
(22)【出願日】2022-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝重
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB08
3H178CC05
3H178DD12Z
3H178DD32X
(57)【要約】
【課題】電動機を用いずに機械的に制御でき且つ揚力ブレードの角度を直接変更する垂直軸風車の過回転防止構造を提供する。
【解決手段】通常風力での垂直回転軸5の安全回転数回転時は、リンクバー17がカム溝14と直交状態のため、最適角度に支持された揚力ブレード11から剛性シャフト15を介して押引力Fがカムプレート13に加わっても、カムピン19がストッパーとなり、カムプレート13が回転せず、揚力ブレード11の最適角度は維持される。
安全回転数を超えようとする際は、ウェイトWの遠心力によりリンクバー17が回転し、カムピン19とカム溝14との係合により、カムプレートを他方向させる。この時のカムプレート13の回転力が剛性シャフト15を介して揚力ブレード11に伝達され、揚力ブレード11が風に対して不適切角度となって十分な揚力が発生しないため回転数が抑えられる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直回転軸の上下方向複数位置にそれぞれ同一の上下位置から放射方向に延びる複数の水平フレームを形成し、各水平フレームの先端に該先端を中心に直線翼式の揚力ブレードを水平方向で回転自在に支持した垂直軸風車の過回転防止構造であって、
前記垂直回転軸に水平な支持板を一体的に形成し、該支持板に垂直回転軸に対して回転自在で且つ垂直回転軸を中心に放射方向に延びる直線状のカム溝が形成されたカムプレートを設け、該カムプレートと少なくとも1以上の揚力ブレードとの間を両端が回転自在な剛性シャフトにて連結し、支持板とカムプレートとの間にカムプレートを一方向に回転させる付勢手段を設け、先端にウェイトを有し且つ途中にカム溝内を移動自在なカムピンを有する少なくとも1以上のリンクバーをその基端で支持板に対して回転自在に取付け、
垂直回転軸が所定の安全回転数以内で回転している時は、付勢手段によりカムプレートが一方向に回転してリンクバーのカムピンがカム溝の基端に位置して、リンクバーがカム溝と直交状態になると共にその状態で揚力ブレードが最適角度となり、
垂直回転軸が安全回転数を超えようとする際は、遠心力によりリンクバーが基端を中心に回転し、カムピンがカム溝を押しながら円弧方向に移動することでカムプレートを他方向へ回転させ、該カムプレートの回転力が剛性シャフトにより揚力ブレードに伝達されることで、揚力ブレードが不適切角度となることを特徴とする垂直軸風車の過回転防止構造。
【請求項2】
2つのリンクバーが支持板に対して垂直回転軸を中心とした対称位置に設けられ、互いが連動して回転することを特徴とする請求項1記載の垂直軸風車の過回転防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は垂直軸風車の過回転防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電用の風車の形式として、垂直回転軸から放射方向に延びる複数の水平フレームを形成し、その先端に直線翼式の揚力ブレードを取付けた垂直軸風車がある。揚力ブレードに働く揚力の回転方向成分を回転力とし、エネルギー変換効率が良いという利点がある。
【0003】
しかしこのタイプの風車は、ひとたび回転を始めると、風を受けている限り回転トルクを発生し続け、回転が加速度的に上昇する。そのため台風等の強風時に、風車が安全回転数を超える過回転状態となってしまい、風車の故障・破壊を招くおそれがある。そのため垂直軸風車の回転を安全回転数以内に抑える過回転防止構造が必要とされる。
【0004】
従来は過回転防止構造として、揚力ブレードを支持する水平フレームを断面翼形状にして、その水平フレームの角度を電動機で変更することにより空気抵抗を発生させ、風車の過回転を防止していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、風車の過回転を防止するために、電動機で翼形の水平フレームの角度を変更しているため、何らかの原因で電気系トラブルが生じた場合に風車の回転抑制ができなくなる。また揚力ブレード自体でなく、それを支持する水平フレームの角度を変更する方式のため、過回転防止効果に限界がある。
【0007】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、電動機を用いずに機械的に制御でき且つ揚力ブレードの角度を直接変更する垂直軸風車の過回転防止構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の技術的側面によれば、垂直回転軸の上下方向複数位置にそれぞれ同一の上下位置から放射方向に延びる複数の水平フレームを形成し、各水平フレームの先端に該先端を中心に直線翼式の揚力ブレードを水平方向で回転自在に支持した垂直軸風車の過回転防止構造であって、前記垂直回転軸に水平な支持板を一体的に形成し、該支持板に垂直回転軸に対して回転自在で且つ垂直回転軸を中心に放射方向に延びる直線状のカム溝が形成されたカムプレートを設け、該カムプレートと少なくとも1以上の揚力ブレードとの間を両端が回転自在な剛性シャフトにて連結し、支持板とカムプレートとの間にカムプレートを一方向に回転させる付勢手段を設け、先端にウェイトを有し且つ途中にカム溝内を移動自在なカムピンを有する少なくとも1以上のリンクバーをその基端で支持板に対して回転自在に取付け、垂直回転軸が所定の安全回転数以内で回転している時は、付勢手段によりカムプレートが一方向に回転してリンクバーのカムピンがカム溝の基端に位置して、リンクバーがカム溝と直交状態になると共にその状態で揚力ブレードが最適角度となり、垂直回転軸が安全回転数を超えようとする際は、遠心力によりリンクバーが基端を中心に回転し、カムピンがカム溝を押しながら円弧方向に移動することでカムプレートを他方向へ回転させ、該カムプレートの回転力が剛性シャフトにより揚力ブレードに伝達されることで、揚力ブレードが不適切角度となることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の技術的側面によれば、2つのリンクバーが支持板に対して垂直回転軸を中心とした対称位置に設けられ、互いが連動して回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の技術的側面によれば、通常の風力で垂直回転軸が安全回転数以内で回転している時は、付勢手段によりカムプレートが一方向に回転してリンクバーのカムピンがカム溝の基端に位置して、リンクバーがカム溝と直交状態になる。そのため最適角度に支持された揚力ブレードから剛性シャフトを介して押引力がカムプレートに加わっても、カム溝に対してカムピンがストッパーとなり、カムプレートが回転しない。従って、揚力ブレードの最適角度は維持され垂直軸風車は確実に回転することができる。
【0011】
また垂直回転軸が安全回転数を超えようとする際は、ウェイトの遠心力によりリンクバーが基端を中心に回転し、それによりカムピンがカム溝を押しながら円弧方向に移動することでカムプレートを他方向へ回転させる。そしてカムプレートの回転力が剛性シャフトにより揚力ブレードに伝達されることで、揚力ブレードが風に対して不適切角度となり、垂直軸風車に回転トルクが発生しなくなって、垂直軸風車の回転数が抑えられ、垂直軸風車の過回転が防止される。垂直回転軸が安全回転数内に戻ったら、付勢手段によりカムプレートが一方向へ回転し、元の通常回転状態に戻る。
【0012】
このように電動機式でなく機械的に揚力ブレードの角度を直接変化させるため、電気系トラブルの影響を受けずに回転数を確実に抑制することができる。
【0013】
本発明の第2の技術的側面によれば、2つのリンクバーが互いに連動して回転するため、垂直回転軸が安全回転数を超えようとする際に、カムプレートを回転させるための遠心力がより確実に発生し、垂直軸風車の過回転を更に確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】外枠体に収納された垂直軸風車を示す斜視図。
【
図5】揚力ブレードの最適角度状態を示す垂直軸風車の要部説明図。
【
図6】揚力ブレードの不適切角度状態を示す垂直軸風車の要部説明図。
【
図7】カムプレートとリンクバーとの関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図7は本発明の好適な実施形態を示す図である。
【0016】
本実施形態に係る垂直軸風車1は外枠体2内に収納されている。外枠体2は全体として各辺が金属フレームにて形成された直方体で、側面は4本の支柱3のみで形成される。従って、この外枠体2は水平方向で全方向からの風が通過可能である。外枠体2の上下には中央部に四角形の支持部4が形成されている。
【0017】
外枠体2内には垂直軸風車1が収納されている。外枠体2の支持部4にはそれぞれ垂直回転軸5の上下端がベアリング6により回転自在に支持されている。垂直回転軸5には上下にボックス7、8が一体形成されており、垂直回転軸5と一緒に回転する。このボックス7、8からは放射方向に延びる4本の水平フレーム9がそれぞれ形成されている。水平フレーム9の先端10には、直線翼式の揚力ブレード11がそれぞれ先端10を中心に水平方向で回転自在に支持されている。
【0018】
下側のボックス8の底面は水平な支持板12として形成され、そのボックス8の内部における支持板12の上に垂直回転軸5に対して回転自在なカムプレート13が設けられている。このカムプレート13の垂直回転軸5を挟む対向位置には、それぞれ垂直回転軸5を中心に放射方向に延びる直線状のカム溝14が形成されている。
【0019】
カムプレート13の4箇所には、水平フレーム9と平行な剛性シャフト15の一端が回動自在に取付けられている。その剛性シャフト15の他端は、
図5及び
図6に示されるように、ボックス8から外に出て、揚力ブレード11に対して回動自在に取付けられている。尚、
図5及び
図6はボックス8内の構造を分かりやすくするため、ボックス8内の構造を揚力ブレード11及び水平フレーム9に比べて大きく図示している。
【0020】
カムプレート13と支持板12との間には、カムプレート13を一方向(図中反時計方向)に回転させる2つの引張バネ(付勢手段)16が垂直回転軸5を中心とした対称位置に設けられている。
【0021】
そして、ボックス8の上部には2本のリンクバー17が垂直回転軸5を中心にした対称位置に位置しており、このリンクバー17の先端にはウェイトWが取付けられている。リンクバー17の基端18はボックス8の上面部に形成された図示せぬ円孔からボックス8内に入り込み、支持板12に対して回動自在に支持されている。またリンクバー17には途中にカムピン19が形成され、このカムピン19もボックス8の上面部に形成された図示せぬ円弧孔からボックス8内に入り込み、カムプレート13のカム溝14内において移動自在に係合されている。
【0022】
ボックス8内におけるリンクバー17の基端18には延長方向に延びるレバー20が形成され、レバー20の先端ともう一方のリンクバー17の一部とは互いに平行な連結バー21により連結されている。従って、2本のリンクバー17と2本の連結バー21により平行四辺形が形成され、互いに連動する。
【0023】
この実施形態に係る垂直軸風車1は以上のような構造をしており、通常の風力の場合(台風等の強風時でない場合)、揚力ブレード11は最適角度に維持されて揚力を発生させ、その発生揚力の回転方向成分により、垂直軸風車1はR方向(
図3参照)に回転する。垂直回転軸5は所定の安全回転数内で回転し、その回転力を発電機に伝達して発電できるようになっている。
【0024】
通常の風力で垂直回転軸5が安全回転数以内で回転している時は、引張バネ16によりカムプレート13が一方向に回転してリンクバー17のカムピン19がカム溝14の基端に位置して、リンクバー17がカム溝14と直交状態になる。そのため、最適角度に支持された揚力ブレード11が風力から受ける不規則な外力により先端10を中心に回転しようとして、揚力ブレード11からの押引力Fが剛性シャフト15を介してカムプレート13に伝達されたとしても、カム溝14に対して直交するカムピン19がストッパーとなり、カムプレート13の回転は阻止される。従って、揚力ブレード11の最適角度は維持され垂直軸風車1は確実に回転して発電することができる。
【0025】
そして台風等の強風時において垂直回転軸5が安全回転数を超えようとする場合は、ウェイトWの遠心力によりリンクバー17が基端18を中心に回転し、それによりカムピン19がカム溝14を押しながら円弧方向に移動し、カムプレート13を他方向(時計方向)へ回転させる。この時のカムプレート13の回転力が剛性シャフト15により揚力ブレード11に伝達されて、揚力ブレード11が水平フレーム9の先端10を中心に回転し、風に対して不適切角度となる。従って、揚力ブレード11に回転トルクが発生しなくなり、垂直軸風車1の回転数が抑えられ、垂直軸風車1の過回転は防止されて、適切な回転数で発電を継続することができる。
【0026】
2つのリンクバー17が互いに連動して回転するため、垂直回転軸5が安全回転数を超えた際に、リンクバー17の遠心力がより確実に発生し、垂直軸風車1の過回転を更に確実に防止することができる。垂直回転軸5が安全回転数内に戻ったら、引張バネ16によりカムプレート13が一方向へ回転し、元の通常回転状態に戻る。
【0027】
このように電動機式でなく機械的に可動式揚力ブレード11の角度を直接変化させるため、電気系トラブルの影響を受けずに回転数を確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 垂直軸風車
5 垂直回転軸
9 水平フレーム
10 先端
11 揚力ブレード
12 支持板
13 カムプレート
14 カム溝
15 剛性シャフト
16 引張バネ(付勢手段)
17 リンクバー
18 基端
19 カムピン
R 回転方向
F 押引力
W ウェイト
【手続補正書】
【提出日】2024-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直回転軸の上下方向複数位置にそれぞれ同一の上下位置から放射方向に延びる複数の水平フレームを形成し、各水平フレームの先端に該先端を中心に直線翼式の揚力ブレードを水平方向で回転自在に支持した垂直軸風車の過回転防止構造であって、
前記垂直回転軸に水平な支持板を一体的に形成し、該支持板に支持板と垂直回転軸の両方に対して回転自在で且つ垂直回転軸を中心に放射方向に延びる直線状のカム溝が形成されたカムプレートを設け、該カムプレートと少なくとも1以上の揚力ブレードとの間を両端が回転自在な剛性シャフトにて連結し、支持板とカムプレートとの間にカムプレートを一方向に回転させる付勢手段を設け、先端にウェイトを有し且つ途中にカム溝内を移動自在なカムピンを有する少なくとも1以上のリンクバーをその基端で支持板に対して回転自在に取付け、
垂直回転軸が所定の安全回転数以内で回転している時は、付勢手段によりカムプレートが一方向に回転してリンクバーのカムピンがカム溝の基端に位置して、リンクバーがカム溝と直交状態になると共にその状態で揚力ブレードが最適角度となり、
垂直回転軸が安全回転数を超えようとする際は、遠心力によりリンクバーが基端を中心に回転し、カムピンがカム溝を押しながら円弧方向に移動することでカムプレートを他方向へ回転させ、該カムプレートの回転力が剛性シャフトにより揚力ブレードに伝達されることで、揚力ブレードが不適切角度となることを特徴とする垂直軸風車の過回転防止構造。
【請求項2】
2つのリンクバーが支持板に対して垂直回転軸を中心とした対称位置に設けられ、互いが連動して回転することを特徴とする請求項1記載の垂直軸風車の過回転防止構造。